科研費 - 豊國 伸哉
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鉄ニトリロ三酢酸によるrasおよびp53遺伝子の突然変異と腎発癌
1994年4月 - 1995年3月
科学研究費補助金 奨励研究(A) 研究種目コード:210 06770151
担当区分:研究代表者
フリ-ラジカルによる生体高分子損傷は変異、発癌、老化、放射線効果、坑癌剤活性等の種々の生物学的過程で重要な役割を果たす。低分子鉄キレ-ト化合物である鉄ニトリロ三酢酸の投与はラットやマウスに高率に腎癌を誘発する。本研究代表者はこれまでに脂質過酸化物の測定等により、この発癌系でフリ-ラジカルが深く関与することを示してきた。今回新たに腎クロマチンにおいてヒドロキシラジカルに特徴的なDNA修飾塩基の生成をガスクロマトグラフィ-・マススペクトロメトリ-による測定で証明し、また変異原性の確立された過酸化脂質である4-hydroxy-2-nonenal修飾蛋白に対する抗体を使用しその存在を証明した。更に誘発された腎原発腫瘍12例において癌遺伝子であるrasおよび癌抑制遺伝子であるp53の突然変異の検索を行った。rasについてはH-ras,K-ras,n-rasいずれにおいてもcodon12,13,61において変異を認めなかった。p53は1例においてcodon246で変異を認め(CGC to CTC;Arg to Leu)、蛋白レベルでその異常蛋白の発現が高いことを確認した。この変異パタ-ンはヒドロキシラジカルに特徴的な修飾塩基である8-hydroxyguanineにより引き起こされたものとして矛盾しない。本研究では、この腎発癌モデルにおいてはras,p53はフリ-ラジカルによる変異の主要な標的となっていないことが明らかとなった。これはヒト腎癌の報告とも一致し、臓器特異的な事実である可能性もあり、現在新たな標的遺伝子を検索している。
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腎がんの進展と予後に関与する宿主側要因の研究
研究課題/研究課題番号:06671587 1994年 - 1995年
一般研究(C)
寺地 敏郎
担当区分:研究分担者 資金種別:競争的資金
本研究課題による研究成果は以下の通りである。
1:腎細胞癌の生物学的特性。1)腎細胞癌では内因性活性酵素の被爆程度が正常部よりも大きく、発生に関与することが示唆された。2)腎細胞癌は抗癌剤に対して耐性を持つものが多いが、mdr1、MRP、トポイソメレースII、の発現パターンのについてRT-PCRを用いて検討したところ、papillaryタイプの腎細胞癌ではMRPの発現が有意に低かった。3)シスプラチン耐性の腎細胞癌癌細胞に対し、Interleukin6またはその受容体に対する抗体を投与した場合、癌細胞のシスプラチンに対する感受性が上昇することが明らかになった。4)腎細胞癌の組織型、によりE-カドヘリンの発現に差が認められた。papillaryタイプ、chromophobeタイプではE-カドヘリンの発現が保たれているものが多かった。5)約80%の腎細胞癌でo-met遺伝子の過剰発現を認めた。悪性度の高いもの、papillaryタイプの腎細胞癌で高い発現を示すものが多かった。6)腎細胞癌において、MAPカイネースおよびその上流にあるMEK、Raf-1の活性化について検討したところ、約半数の症例でMAPの恒常的活性化を認めた。7)腎細胞癌を手術時の転移の有無により2群に分けた場合、9p21-22のLOHは転移を有する群で有意に高かった。
2:宿主側の因子。8)p53遺伝子にはwild typeにおいてもコドン75に多型が存在するが、腎細胞癌罹患者ではArg/Argの頻度は比較的低く、Pro/Proの頻度が高っくなる傾向が認められた。9)腎細胞癌の発生、進展とHLAタイプとの相関関係を検討したところ、腎細胞癌罹患者ではHLA class II DRB 1の0404,0120アレル頻度が有意に低かった。
以上、腎細胞癌に対する広範かつ多角的なデータを得ることができた。 -
鉄ニトリロ三酢酸によるrasおよびp53遺伝子の突然変異と腎発癌
研究課題/研究課題番号:06770151 1994年
奨励研究(A)
豊國 伸哉
担当区分:研究代表者 資金種別:競争的資金
配分額:900000円 ( 直接経費:900000円 )
フリーラジカルによる生体高分子損傷は変異、発癌、老化、放射線効果、坑癌剤活性等の種々の生物学的過程で重要な役割を果たす。低分子鉄キレート化合物である鉄ニトリロ三酢酸の投与はラットやマウスに高率に腎癌を誘発する。本研究代表者はこれまでに脂質過酸化物の測定等により、この発癌系でフリーラジカルが深く関与することを示してきた。今回新たに腎クロマチンにおいてヒドロキシラジカルに特徴的なDNA修飾塩基の生成をガスクロマトグラフィー・マススペクトロメトリーによる測定で証明し、また変異原性の確立された過酸化脂質である4-hydroxy-2-nonenal修飾蛋白に対する抗体を使用しその存在を証明した。更に誘発された腎原発腫瘍12例において癌遺伝子であるrasおよび癌抑制遺伝子であるp53の突然変異の検索を行った。rasについてはH-ras,K-ras,n-rasいずれにおいてもcodon12,13,61において変異を認めなかった。p53は1例においてcodon246で変異を認め(CGC to CTC;Arg to Leu)、蛋白レベルでその異常蛋白の発現が高いことを確認した。この変異パターンはヒドロキシラジカルに特徴的な修飾塩基である8-hydroxyguanineにより引き起こされたものとして矛盾しない。本研究では、この腎発癌モデルにおいてはras,p53はフリーラジカルによる変異の主要な標的となっていないことが明らかとなった。これはヒト腎癌の報告とも一致し、臓器特異的な事実である可能性もあり、現在新たな標的遺伝子を検索している。
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食品因子による生体防御を目的としたDNA障害マ-カ-の開発と応用
1993年4月 - 1996年3月
科学研究費補助金 試験研究(B) 研究種目コード:122 05556021
大澤 俊彦
担当区分:研究分担者
最近、がんの発生におけるフリ-ラジカルの役割については多くの注目を集めてきているが科学的な根拠については未知の点も多い。特に、防御機構が正常に機能しない状態に陥ったときに生体内では過剰な活性酸素が生成し、フリ-ラジカル連鎖反応が誘発される。その結果、生体膜での障害や生体重要物質での損傷にもとずく機能障害の蓄積と共に遺伝子レベルにおける障害が「遺伝毒性」を発現し、「がんの発生」を誘発したり「がん化の促進」に大きな役割をはたしているのではないかと考えられてきている。このような遺伝子レベルにおける酸化的障害を抑制すること、特に食品成分が抑制因子となりうるかについてを評価するために、老化に関連した疾病のマ-カ-として酸化修飾塩基の代表である8-デオキシグアノシンのモノクロ-ナル抗体よる検出法の応用を日本老化制御研究所(越智)との共同研究で開発することができた。そこで本年度は、まず、ゴマ種子中に大量に含まれている新規な抗酸化前駆体であるリグナン配糖体の持つ酸化障害予防効果の検討を行った。方法は、ゴマ脱脂粕をビタミンE欠乏飼料中に10%加えてラットに2ヵ月間投与し、四塩化炭素で過酸化障害を与えた。その結果、ビタミンE欠乏食だけの場合に較べてゴマ脱脂粕の場合は肝臓や血液中の過酸化度と共に尿中での過酸化度、さらに8-デオキシクアノシン量を有意に低下させた。これらの結果より、セサミノ-ル配糖体が腸内細菌により加水分解を受けた後に生体内に吸収され抗酸化的な防御効果を示すという新しい機構を提出することができた。また、本年は、生体膜の酸化的障害物質として代表的な4-ヒドロキシノネナ-ルのモノクロ-ナル抗体の作製に成功し、さらに最近マロンジアルデヒドにより修飾されたタンパク質に対するポリクロ-ナル抗体の作製にも成功している。これらの抗体による組織染色、特に酸化障害により生じた腎臓がん部位での検出への応用にも成功している。さらに、培養細胞系、特に、チャイニ-ズハムスタ-や大腸由来の細胞で過酸化水素を中心とした酸化的障害の保護効果についても、新しい機構を提出することができた。また、ゴマ油中の抗酸化成分として抗酸化的な防御効果の検討を行ったセサミノ-ルについては、ビタミンEに対して強い相乗的な効果が見られるという新しいメカニズムを明らかにすることができたので、これらのリグナンを食品因子として代謝も含めた新しい研究へのアプロ-
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鉄によるDNA損傷とその癌遺伝子、癌抑制遺伝子への影響
1993年4月 - 1994年3月
科学研究費補助金 奨励研究(A) 研究種目コード:210 05770149
担当区分:研究代表者
ヒトにおいて体内の鉄貯蔵量増加は発癌のリスクとなることが明らかとなったため、鉄による発癌機構の分子病理学的解明をめざした。この際、中性で自由鉄でありうる鉄キレ-ト化合物が重要となる。鉄ニトリロ三酢酸の反復投与はラット、マウスで高率に胃癌を発生させる。また、鉄クエン酸はヒトのヘモクロマト-シスにおける血中の自由鉄である。両鉄キレ-ト化合物は本研究者らの開発したsupercoiled plasmidを使用したin vitroの系でDNAを切断し修飾塩基を生成した。この反応は、温度、還元剤、pH、鉄とキレ-ト剤の比率に依存した。次に、鉄ニトリロ三酢酸を投与したラット腎において、ガスクロマトグラフィ-/マススぺクトロメトリ-によりDNA修飾塩基を検討し、癌遺伝子であるc-fos、c-junの蛋白について酵素抗体法により解析を加えた。投与後1-3hrsをピ-クとして、8-hydroxyguanine(8-OH-Gua)をはじめとする7種のDNA修飾塩基の増加を認めた。8-OH-GuaはG:C to T:A transversionの原因として注目されるが、生成修飾塩基の中には変異原性に関するデ-タがいまだ報告のないものもある。近位尿細管の変性壊死再生に伴い、修飾塩基が存在することは変異を誘発し固定するという意味において発癌過程で重要な役割を果たしていると考えられる。投与後16hrs以後再生上皮にc-fos、c-jun蛋白の増加がみられ、これらの蛋白の発癌過程への関与が示唆された。
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リンパ腫発生に先立つ骨髄内pre-B細胞の異常分化
1993年4月 - 1994年3月
科学研究費補助金 がん特別研究 研究種目コード:021 05152060
日合 弘
担当区分:研究分担者
リンパ腫好発系近交系マウスSL/Kh系の前リンパ腫期骨髄におけるB細胞分化を検討した。BP-1抗原陽性前B細胞が生後4-6週を中心に著明にポリクロ-ナルに増殖し15-18週令ころより急速にモノクロ-ナル増殖に転化した。他の大部分の近交系マウスでは前B細胞のレベルははるかに低かった。SL/KhとのF1では前B細胞の増殖がみられこの形質は遺伝的に優性とみなされた。SL/Khのリンパ腫発生には内在性レトロウイルスが必要であるが、前リンパ腫期の前B細胞の増殖にはウイルスは関与していないことがウイルス抵抗性遺伝子FV-4^Rcongenic C4WとのF1においても前B細胞の増殖があること、母系抵抗因子の投与によっても減少しないことから証明された。一方、放射線キメラを作成したところ、骨髄細胞ドナ-によって前B細胞のレベルは決定されており、SL/Kh系の幹細胞の性質に基づくものと思われた。これらの所見から、SL/Kh系の前Bリンパ腫の発生は多段階過程を経て発生することが示された。
自然発生リンパ腫をみないNFS/N系とのF1、退交配系についてリンパ腫の発生、病型を観察し、プロウイルスとその発現、生化学的遺伝子マ-カ-、マイクロサテライトマ-カ-を全個体について解析した。すべてのリンパ腫の発生には内在性ウイルスのうちAkv-1(第7染色体)の存在と発現が必要であった。リンパ腫の発生は遺伝的に優性であるが、MHCと連関したEsl-1座位がSL/Kh由来のアレルを持つ場合には急性の前Bリンパ腫が発生し、第4染色体上のfoc-1座位がNFS/N由来の劣性アレルのホモの場合にはより成熟したB細胞腫瘍であるろ胞中心細胞リンパ腫が発生した。これらの所見はウイルスによる腫瘍の病型は宿主の遺伝的感受性により決定されていることを示すものである。 -
食品因子による生体防御を目的としたDNA傷害マーカーの開発と応用
研究課題/研究課題番号:05556021 1993年 - 1995年
試験研究(B)
大澤 俊彦
担当区分:研究分担者 資金種別:競争的資金
最近、がんの発生におけるフリーラジカルの役割については多くの注目を集めてきているが科学的な根拠については未知の点も多い。特に、防御機構が正常に機能しない状態に陥ったときに生体内では過剰な活性酸素が生成し、フリーラジカル連鎖反応が誘発される。その結果、生体膜での傷害や生体重要物質での損傷にもとずく機能傷害の蓄積と共に遺伝子レベルにおける傷害が「遺伝毒性」を発現し、「がんの発生」を誘発したり「がん化の促進」に大きな役割をはたしているのではないかと考えられてきている。このような遺伝子レベルにおける酸化的傷害を抑制すること、特に食品成分が抑制因子となりうるかについてを評価するために、老化に関連した疾病のマーカーとして酸化修飾塩基の代表である8-デオキシグアノシンのモノクローナル抗体による検出法の応用を日本老化制御研究所(越智)との共同研究で開発することができた。そこで本年度は、まず、ゴマ種子中に大量に含まれている新規な抗酸化前駆体であるリグナン配糖体の持つ酸化傷害予防効果の検討を行った。方法は、ゴマ脱脂粕をビタミンE欠乏飼料中に10%加えてラットに2ケ月間投与し、四塩化炭素で過酸化傷害を与えた。その結果、ビタミンE欠乏食だけの場合に較べてゴマ脱脂粕の場合は肝臓や血液中の過酸化度と共に尿中での過酸化度、さらに8-デオキシグアノシン量を有意に低下させた。これらの結果より、セサミノール配糖体が腸内細菌により加水分解を受けた後に生体内に吸収され抗酸化的な防御効果を示すという新しい機構を提出することができた。また、本年は、生体膜の酸化的傷害物質として代表的な4-ヒドロキシノネナ-ルのモノクロナール抗体の作製に成功し、さらに最近マロンジアルデヒドにより修飾されたタンパク質に対するポリクローナル抗体の作製にも成功している。これらの抗体による組織染色、特に酸化傷害により生じた腎臓がん部位での検出への応用にも成功している。さらに、培養細胞系、特に、チャイニーズハムスターや大腸由来の細胞で過酸化水素を中心とした酸化的傷害の保護効果についても、新しい機構を提出することができた。また、ゴマ油中の抗酸化成分として抗酸化的な防御効果の検討を行ったセサミノールについては、ビタミンEに対して強い相乗的な効果が見られるという新しいメカニズムを明らかにすることができたので、これらのリグナンを食品因子として代謝も含めた新しい研究へのアプローチが期待される。
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リンパ腫発生に先立つ骨髄内pre-B細胞の異常分化
研究課題/研究課題番号:05152060 1993年
がん特別研究
日合 弘
担当区分:研究分担者 資金種別:競争的資金
リンパ腫好発系近交系マウスSL/Kh系の前リンパ腫期骨髄におけるB細胞分化を検討した。BP-1抗原陽性前B細胞が生後4-6週を中心に著明にポリクローナルに増殖し15-18週令ころより急速にモノクローナル増殖に転化した。他の大部分の近交系マウスでは前B細胞のレベルははるかに低かった。SL/KhとのF1では前B細胞の増殖がみられこの形質は遺伝的に優性とみなされた。SL/Khのリンパ腫発生には内在性レトロウイルスが必要であるが、前リンパ腫期の前B細胞の増殖にはウイルスは関与していないことがウイルス抵抗性遺伝子FV-4^Rcongenic C4WとのF1においても前B細胞の増殖があること、母系抵抗因子の投与によっても減少しないことから証明された。一方、放射線キメラを作成したところ、骨髄細胞ドナーによって前B細胞のレベルは決定されており、SL/Kh系の幹細胞の性質に基づくものと思われた。これらの所見から、SL/Kh系の前Bリンパ腫の発生は多段階過程を経て発生することが示された。
自然発生リンパ腫をみないNFS/N系とのF1、退交配系についてリンパ腫の発生、病型を観察し、プロウイルスとその発現、生化学的遺伝子マーカー、マイクロサテライトマーカーを全個体について解析した。すべてのリンパ腫の発生には内在性ウイルスのうちAkv-1(第7染色体)の存在と発現が必要であった。リンパ腫の発生は遺伝的に優性であるが、MHCと連関したEsl-1座位がSL/Kh由来のアレルを持つ場合には急性の前Bリンパ腫が発生し、第4染色体上のfoc-1座位がNFS/N由来の劣性アレルのホモの場合にはより成熟したB細胞腫瘍であるろ胞中心細胞リンパ腫が発生した。これらの所見はウイルスによる腫瘍の病型は宿主の遺伝的感受性により決定されていることを示すものである。 -
鉄によるDNA損傷とその癌遺伝子、癌抑制遺伝子への影響
研究課題/研究課題番号:05770149 1993年
奨励研究(A)
豊國 伸哉
担当区分:研究代表者 資金種別:競争的資金
配分額:900000円 ( 直接経費:900000円 )
ヒトにおいて体内の鉄貯蔵量増加は発癌のリスクとなることが明らかとなったため、鉄による発癌機構の分子病理学的解明をめざした。この際、中性で自由鉄でありうる鉄キレート化合物が重要となる。鉄ニトリロ三酢酸の反復投与はラット、マウスで高率に胃癌を発生させる。また、鉄クエン酸はヒトのヘモクロマトーシスにおける血中の自由鉄である。両鉄キレート化合物は本研究者らの開発したsupercoiled plasmidを使用したin vitroの系でDNAを切断し修飾塩基を生成した。この反応は、温度、還元剤、pH、鉄とキレート剤の比率に依存した。次に、鉄ニトリロ三酢酸を投与したラット腎において、ガスクロマトグラフィー/マススぺクトロメトリーによりDNA修飾塩基を検討し、癌遺伝子であるc-fos、c-junの蛋白について酵素抗体法により解析を加えた。投与後1-3hrsをピークとして、8-hydroxyguanine(8-OH-Gua)をはじめとする7種のDNA修飾塩基の増加を認めた。8-OH-GuaはG:C to T:A transversionの原因として注目されるが、生成修飾塩基の中には変異原性に関するデータがいまだ報告のないものもある。近位尿細管の変性壊死再生に伴い、修飾塩基が存在することは変異を誘発し固定するという意味において発癌過程で重要な役割を果たしていると考えられる。投与後16hrs以後再生上皮にc-fos、c-jun蛋白の増加がみられ、これらの蛋白の発癌過程への関与が示唆された。
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非胸腺リンパ腫実験モデル系によるウイルス-宿主相互関係の解析
1992年4月 - 1995年3月
科学研究費補助金 一般研究(B) 研究種目コード:080 04454187
日合 弘
担当区分:研究分担者
リンパ腫の発生はマウスでは内在性レトロウイルスによるが、多くの宿主要因の関与する多段階過程で、いわば多因子遺伝病のモデルともみなされる。当研究室で樹立したPre-Bリンパ腫好発系SL/Khを材料として詳細な宿主遺伝要因の解析を行ってきた。まず、ウイルスゲノムを持たずリンパ腫の自然発生のないNFS/N系との交配実験から、SL/KhマウスのPre-Bリンパ腫に対する遺伝的感受性はプロウイルスEmv-11の存在に依存し、SL/Kh由来MHCをもつ場合はPre-Bリンパ腫を、これをもたず第4染色体上のfoc-1座位がNFS/N由来アレルのホモである場合には濾胞中心細胞リンパ腫を発生することを発見し報告した。本年度は、標的細胞の異なるTリンパ腫好発系AKR/Msとの交配実験を行い、SL/Khへの退交配、F2世代ではTリンパ腫の発生は常染色体単一優性遺伝子Tlsm-1 により決定されていること、同遺伝子はマイクロサテライト法による解析から第7染色体のセントロメアより62cMにマップされることを明らかにした。AKRとDBA/2との組み替え近交系AKXDの第7染色体を精査し、Tリンパ腫発生はこの系でもTlsm-1と相同な遺伝子によって決定されていることを示した。この部位にはラットの化学発癌剤誘発Tリンパ腫の感受性遺伝子も我々の手でマップされている。これらの一連の知見はリンパ腫病型は宿主遺伝子型の組み合わせにより決定されることを示唆し、ヒトのリンパ腫についても相同遺伝子を中心にこの考えを拡大適用できる可能性を示すものである。
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非胸腺リンパ腫実験モデル系によるウイルス-宿主相互関係の解析
研究課題/研究課題番号:04454187 1992年 - 1994年
一般研究(B)
日合 弘
担当区分:研究分担者 資金種別:競争的資金
リンパ腫の発生はマウスでは内在性レトロウイルスによるが、多くの宿主要因の関与する多段階過程で、いわば多因子遺伝病のモデルともみなされる。当研究室で樹立したPre-Bリンパ腫好発系SL/Khを材料として詳細な宿主遺伝要因の解析を行ってきた。まず、ウイルスゲノムをもたずリンパ腫の自然発生のないNFS/N系との交配実験から、SL/KhマウスのPre-Bリンパ腫に対する遺伝的感受性はプロウイルスEmv-11の存在に依存し、SL/Kh由来MHCをもつ場合はPre-Bリンパ腫を、これをもたず第4染色体上のfoc-1座位がNFS/N由来アレルのホモである場合には濾胞中心細胞リンパ腫を発生することを発見し報告した。本年度は、標的細胞の異なるTリンパ腫好発系AKR/Msとの交配実験を行い、SL/Khへの退交配、F2世代ではTリンパ腫の発生は常染色体単一優性遺伝子Tlsm-1により決定されていること、同遺伝子はマイクロサテライト法による解析から第7染色体のセントロメアより62cMにマップされることを明らかにした。AKRとDBA/2との組み替え近交系AKXDの第7染色体を精査し、Tリンパ腫発生はこの系でもTlsm-1と相同な遺伝子によって決定されていることを示した。この部位にはラットの化学発癌剤誘発Tリンパ腫の感受性遺伝子も我々の手でマップさている。これらの一連の知見はリンパ腫病型は宿主遺伝子型の組合せにより決定されることを示唆し、ヒトのリンパ腫についても相同遺伝子を中心にこの考えを拡大適用できる可能性を示すものである。