科研費 - 豊國 伸哉
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発がん過程におけるDNA損傷・修復のゲノム内分布動態の解明
研究課題/研究課題番号:22500997 2010年 - 2012年
赤塚 慎也
担当区分:研究分担者 資金種別:競争的資金
免疫沈降の原理に基づき、DNA損傷の存在部位をゲノム全体にわたって検出する方法を新たに開発し、実用性を評価した。鉄ニトリロ三酢酸誘発げっ歯類腎発がんモデルの標的細胞より抽出したゲノムDNAについて、代表的な酸化修飾塩基である8-OHdGおよびacrolein-dAに対する抗体を用いて免疫沈降を施行し、それらの酸化的DNA損傷のゲノム内分布をアレイCGHにより解析した
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転写と染色体領域の視点から見たゲノムDNA損傷位置情報の解析
2008年4月 - 2010年3月
科学研究費補助金 特定領域研究 研究種目コード:034 20012026
担当区分:研究代表者
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転写と染色体領域の視点から見たゲノムDNA損傷位置情報の解析
研究課題/研究課題番号:20012026 2008年 - 2009年
豊國 伸哉
担当区分:研究代表者 資金種別:競争的資金
配分額:11200000円 ( 直接経費:11200000円 )
ゲノム情報の変化は発がん過程で重要な役割を果たしている。本研究においては、培養細胞や個体各臓器の細胞のゲノム配列において、紫外線・放射線あるいは鉄を介した酸化ストレスによってDNA塩基への傷害が起こりやすい部位をアレイ技術の応用により網羅的に同定し、その法則性を見いだすことを目的とした。これまでに、私たちは鉄ニトリロ三酢酸(Fe-NTA)腹腔内投与による腎発がんモデルを開発し、その病態に酸化ストレスが関与すること、主要な標的遺伝子にCDKN2Aがん抑制遺伝子やptprz1遺伝子などがあることを示し、ゲノムに酸化ストレスに対して欠損・増幅しやすい領域があることを報告した。今年度は遺伝解析より新たにalninoacylase-1にがん抑制遺伝子としての作用があることを見いだした。昨年度に引き続き、モノクローナル抗体で修飾塩基を含むDNA断片を免疫沈降する技術とマイクロアレイ技術を組み合わせることにより、ゲノム内の酸化ストレスに対する脆弱部位を網羅的に解析した。Fe-NTA腹腔内投与による腎癌モデル初期において代表的な酸化修飾塩基である8-hydroxy-2'-deoxyguanosine(8-OHdG)に対するモノクローナル抗体を使用した実験を反復した。対照のラット腎臓ならびにFe-NTA投与3時間後の腎臓からゲノムDNAを抽出し、制限酵素BmgT120Iで切断後,DNA断片の免疫沈降を行い,8-OHdGを含むDNA断片を回収した。DNA断片を蛍光色素でラベルした後CCGHのアレイにハイブリダイゼーションし解析を行った。すると、8-OHdGは非遺伝子領域に高密度に分布し、遺伝子領域には相対的に低密度に分布することが判明した。ゲノムの遺伝子密度と8-OHdGの存在頻度に有意な負の相関を認めた。分布のパターンそのものは対照と酸化ストレスのかかった状態でほとんど差が見られなかった。CDKN2A部位では酸化ストレス時に8-OHdGの増加を認めた。
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臓器の酸化ストレスを予知する血清検査法の開発
2006年4月 - 2008年3月
科学研究費補助金
担当区分:研究代表者
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転写と染色体領域の視点から見たゲノムDNA損傷位置情報の解析
2006年4月 - 2008年3月
科学研究費補助金 特定領域研究 研究種目コード:034 18012023
担当区分:研究代表者
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臓器の酸化ストレスを予知する血清検査法の開発
研究課題/研究課題番号:18659160 2006年 - 2007年
萌芽研究
豊國 伸哉
担当区分:研究代表者 資金種別:競争的資金
配分額:3300000円 ( 直接経費:3300000円 )
制限酵素で断片化したゲノムDNAを用いて、特定の修飾塩基を含む断片を特異的に免疫沈降する方法の開発を行った。酸化ストレスにより生成する修飾塩基として、8-hydroxy(oxo)guanine, acrolein-modified adenine, thymine glycolを選出し、それぞれ特異性を確認したモノクローナル抗体を使用した。二本鎖オリゴDNAで修飾塩基をひとつ含む断片を作成し、システムが稼働することを確認した。次に制限酵素で切断したゲノムDNAを使用し、負荷DNA量・修飾塩基の含量と正の量依存性があることを確認した。マウスに鉄キレート化合物を投与し、酸化ストレス傷害を起こした腎臓を使用して以下の実験を行った。対照として、未処置動物腎臓を使用し、ゲノムに存在する8-hydroxyguanineの除去修復を行う酵素OGG1のノックアウト動物も使用した。酸化ストレスを与えると、免疫沈降されたDNA断片量は8-hydroxyguanine, acrolein-modified adenineに関して有意に増加した。回収DNA断片をライブラリーとみなしてクローニングし、未処置コントロール群と酸化ストレス群の両修飾塩基について、各群約300クローンの塩基配列決定を行い、データベースで染色体上の位置を確認し、マッピングを行った。染色体分布に関して検討すると、各群において有意に高頻度・低頻度を示す染色体が存在した。特に、8-hydroxyguanine/controlで多い16番染色体とacrolein-modifiedadenine/oxidative stressで多い15番染色体に注目した。ペインティング・プローブを使用してFISH解析を行うと、15番は核膜の近傍に、16番は核中心部に存在する確率の高いことが判明した。また、ヒト線維芽細胞を使用し紫外線を照射する系においても、thymine glycolに関して同様の方法論の有効性を確認した。また、本法の応用として、免疫沈降したDNA断片を増幅し、注目するゲノム領域でPCR解析ができるプロトコールも開発した。結論として、今回検討したDNA修飾塩基のゲノム内分布はランダムではないことが判明し、新たな血清検査法への基礎となるデータを得ることが出来た。
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転写と染色体領域の視点から見たゲノムDNA損傷位置情報の解析
研究課題/研究課題番号:18012023 2006年 - 2007年
豊國 伸哉
担当区分:研究代表者 資金種別:競争的資金
配分額:10900000円 ( 直接経費:10900000円 )
新たに開発したDNA断片の免疫沈降法により、酸化ストレスによるゲノムDNA傷害部位がランダムではないことを、ラット鉄ニトリロ三酢酸誘発腎癌モデルを使用して初めて明らかにした。その片寄りを決定する要素は、当該ゲノム部位が遺伝子か否か、その発現量、核内位置(染色体領域)、反応化学種などが想定された。gpt delta transgenic mouseを使用して、酸化ストレス発がんにおける変異スペクトラムを評価した。点突然変異はG:Cを標的とするもの(特にG:C to C:G)が多いことが判明し、1kb以上の欠損を比較的高頻度に認めた。この傾向は放射線や紫外線と異なり、正常の大腸粘膜に類似していた。鉄ニトリロ三酢酸誘発腎癌においてCGH解析を行い、動物モデルとしては初めて、共通した領域で高頻度のアレル損失や、染色体領域の増幅を認めた。ほとんどアレル増減のないEkerラット腎癌や他の発癌モデルと対照を呈した。この結果は染色体レベルの異常が高頻度に見られるヒトの発がんにおいても酸化ストレスが関与していることを示唆する。ヒトの染色体座標ヘデータを変換し種々のヒト癌のデータと比較検討も試みた。更に、アレイCGHと発現マイクロアレイの データから、本発癌モデルにおいて増幅する癌遺伝子を同定した。染色体全領域の中で、ラット染色体4番短腕(ヒト染色体7番)で高頻度の遺伝子増幅を認め、その部位に存在するptprzlに着目し た。これまで、phosphataseは癌抑制遺伝子とみなされる場合が多かったが、今回は転写因子であるβカテニンが分解されないよう核への移行を促進する癌遺伝子としての新たなメカニズムを解明した。
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遺伝的負荷の高い脳血管疾患の遺伝疫学と高リスク者戦略による2次予防
2005年4月 - 2009年3月
科学研究費補助金 基盤研究(S) 研究種目コード:330 17109007
小泉昭夫
担当区分:研究分担者
我々は、遺伝的負荷のとして家族性脳動脈瘤、家族性もやもや病および家族性の脳動静脈奇形(AVM)について昨年に引き続き検討した。
1)家族性脳動脈瘤に関する研究:3世代にわたり罹患の証明できる9家系に常染色体優性遺伝形式を仮定し連鎖解析を行なった。その結果19q13.3-19q13.4に、LOD=4.10(HLOD=4.10)連鎖領域を確認した。この領域は、我々が既に報告した領域と一致する。今後、この領域を候補とし候補遺伝子の解析を進める。また、平成18年度には、平成13年に登録した69名の追跡を行い、そのうちSAH発症者を除く46名(未破裂脳動脈瘤5名、前回に脳動脈瘤なし41名)に呼びかけたところ、新規参加者7名と、不参加の6名を除く40名がMRAに参加した。前回なしの36名のうち2名に新たに脳動脈瘤が見出された。今後も引き続き追跡を続ける予定である。
2)家族性もやもや病:15家系を用いて、affected-member-onlyによるパラメトリック解析を行ったところ、有意な連鎖領域は1領域(LOD>3.6)のみであり、17q25に、LOD Score8.08の強い連鎖領域を認めた。この領域には90遺伝子が存在し、pseudogeneおよびhypothetical geneを除いた62の遺伝子について解析を進めている。
3)家族性AVM:家族性AVM6家系およびAVMの高発性地域である岐阜県内のT市で症例26例および対照30例の協力を得て行なった。またこの地域から、2組のdiscordant identical twinsが参加した。家系を用いた連鎖の候補領域(p<0.05)と多発地域での相関研究での候補領域(p<5X10-6)の重なりは認められなかった。また、discordant identical twinsの2組を50Kの高密度SNPsでタイピングしたところ、配列の欠失、重複などは認められなかった。 -
遺伝的負荷の高い脳血管疾患の遺伝疫学と高リスク者戦略による2次予防
研究課題/研究課題番号:17109007 2005年 - 2009年
小泉 昭夫
担当区分:研究分担者 資金種別:競争的資金
本研究は、脳動脈瘤およびMoyamoya病、脳動静脈奇形の感受性遺伝子の同定を目指した。脳動脈瘤に関しては、17qcentの解析でTNFRSF13Bを感受性遺伝子として同定した。また、脳動静脈奇形については、遺伝要因の関与は小さいものと結論された。もやもや病については新規遺伝子mysterinを感受性遺伝子として同定した。もやもや病に関する以上の知見を用いて、治療および早期診断の導入が可能となった。
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酸化ストレス発がんモデル動物の遺伝学的・分子生物学的解析
2004年11月 - 2006年10月
科学研究費補助金 特別研究員奨励費 研究種目コード:500 04F04494
担当区分:研究代表者
鉄ニトリロ三酢酸(Fe-NTA)腹腔内投与によるラット腎発がんは、転移が高頻度におこること,発がん過程でフリーラジカルによる組織傷害を伴うことに特徴を有する酸化ストレス発がんモデルである。ヒトの発がん過程においても酸化ストレスが炎症,放射線,紫外線など多面的に関わっていると考えられることから、この発がんモデルの詳細な解析を施行した。まず、Fischer344系統とBrown-Norway系統のラットをかけあわせ,F1動物を作成した。そのF1動物の雄にFe-NTAを腹腔内に3ヶ月に渡り投与し、その後1年以上経過観察することにより、50例以上の腎臓癌サンプルを収集した。これまでのマイクロサテライト解析により、ラット染色体5番と8番にアレル揖失が高頻度に発生することが判明していたため、染色体8番について解析を進めた。2系統でpolymorphicな34のマイクロサテライトマーカーを使用して、22の腫瘍についてアレル損失の解析を行った。染色体8番全体に高いアレル損失を認めたが、その中でも70%を越える高率の部位に関して、腎癌のcDNAマイクロアレイ解析による発現が有意に減少する遺伝子を検索した。今回,aminoacylase-1を新たながん抑制遺伝子の候補として見出した。これをRNA,蛋白レベルで確認した。細胞内画分を用意し,この蛋白が細胞のどの部分に存在するのかを検索した。核画分のみにおいてこの蛋白と結合する低分子蛋白の4本の強いバンドが出現した。これを切り抜きマススペクトロメトリーで同定すると、すべてヒストン蛋白であった。また,gpt deltaトランスジェニックマウスを使用して腎臓におけるFe-NTAの変異パタンの解析を行った。G : Cへの点突然変異ならびに1kb以上の欠損が高頻度に起こることが判明した。
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ゲノムレベルにおける酸化ストレス病態解析法の開発とその応用
2004年4月 - 2005年3月
科学研究費補助金 特定領域研究 研究種目コード:034 16012234
担当区分:研究代表者
酸化ストレスは動脈硬化、糖尿病などの生活習慣病の発症に関与していると考えられる。これまで私たちはラジカル発がんモデルにおいて、変異の標的となる遺伝子が存在することを報告した。酸化ストレス病態のゲノムへの影響を調べるため、ゲノムDNAで酸化傷害が生じた部位を網羅的に検出する方法を開発した。修飾塩基を含む8-hydroxy-2'-deoxyguanosine (8-OHdG)に対するモノクローナル抗体で免疫沈降することにより、その修飾塩基を含むDNA断片をクローニングする技術を確立した。無処置あるいは鉄ニトリロ三酢酸を投与したマウス腎から抽出したゲノムDNAを材料として、各動物について100個以上の8-OHdGを含有する断片をクローニング、塩基配列を決定し、その断片の染色体上における位置情報・意義をインタネット上のデータベースで検索し、解析した。1)N45.1は8-OHdGを含有する断片を特異的に免疫沈降した。2)このシステムでDNA負荷量と8-OHdG含有量に関して量依存性を認めた。3)「ランダム」という現象を「各染色体の塩基長に比例した断片の分布」と仮定すると、カイ2乗統計量による適合度検定でp=0.07程度の危険率でランダムではない。特に16番はどちらの群でも頻度が高い。5)遺伝子領域からの距離という観点で8-OHdG含有断片を解析すると、遺伝子領域の比率がやや高い。遺伝子領域ならびに遺伝子から数百kb離れた領域の断片の割合が鉄ニトリロ三酢酸投与で増加した。6)遺伝子領域断片のうち、その発現の認められる割合も鉄ニトリロ三酢酸投与で増加した。ゲノムDNAにおける8-OHdGの生成部位はランダムではない。少なくとも、どの染色体上にあるか、遺伝子領域かどうか、遺伝子領域なら発現しているかどうかなどの多因子が関係していることが示唆される。
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ゲノムレベルにおける酸化ストレス病態解析法の開発とその応用
研究課題/研究課題番号:16012234 2004年
豊國 伸哉
担当区分:研究代表者 資金種別:競争的資金
配分額:4000000円 ( 直接経費:4000000円 )
酸化ストレスは動脈硬化、糖尿病などの生活習慣病の発症に関与していると考えられる。これまで私たちはラジカル発がんモデルにおいて、変異の標的となる遺伝子が存在することを報告した。酸化ストレス病態のゲノムへの影響を調べるため、ゲノムDNAで酸化傷害が生じた部位を網羅的に検出する方法を開発した。修飾塩基を含む8-hydroxy-2'-deoxyguanosine (8-OHdG)に対するモノクローナル抗体で免疫沈降することにより、その修飾塩基を含むDNA断片をクローニングする技術を確立した。無処置あるいは鉄ニトリロ三酢酸を投与したマウス腎から抽出したゲノムDNAを材料として、各動物について100個以上の8-OHdGを含有する断片をクローニング、塩基配列を決定し、その断片の染色体上における位置情報・意義をインタネット上のデータベースで検索し、解析した。1)N45.1は8-OHdGを含有する断片を特異的に免疫沈降した。2)このシステムでDNA負荷量と8-OHdG含有量に関して量依存性を認めた。3)「ランダム」という現象を「各染色体の塩基長に比例した断片の分布」と仮定すると、カイ2乗統計量による適合度検定でp=0.07程度の危険率でランダムではない。特に16番はどちらの群でも頻度が高い。5)遺伝子領域からの距離という観点で8-OHdG含有断片を解析すると、遺伝子領域の比率がやや高い。遺伝子領域ならびに遺伝子から数百kb離れた領域の断片の割合が鉄ニトリロ三酢酸投与で増加した。6)遺伝子領域断片のうち、その発現の認められる割合も鉄ニトリロ三酢酸投与で増加した。ゲノムDNAにおける8-OHdGの生成部位はランダムではない。少なくとも、どの染色体上にあるか、遺伝子領域かどうか、遺伝子領域なら発現しているかどうかなどの多因子が関係していることが示唆される。
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酸化ストレス下における細胞内ゲノム環境の可塑性と破綻
2003年10月 - 2005年9月
科学研究費補助金 特別研究員奨励費 研究種目コード:500 03F03342
担当区分:研究代表者
哺乳類を含む高等動物は酸素をエネルギーに変換して生命活動を行っている。その変換効率は100%ではないため、ミトコンドリアなどで活性酸素が常時発生し、ゲノムに傷害を与えていると考えられる。これまで代表的なDNA修飾塩基である8-oxoguanineに関して、その量の多寡ならびに修復酵素の研究が行われてきた。本研究においては、脂質過酸化物のひとつであるアクロレインと2'-deoxyadenosineの付加体について、ゲノムのどのような部位でできるのかを解析するのを目指して、今年度の6ヶ月に間に方法の確立を図った。これまで、私たちはアクロレインと2'-deoxyadenosineの付加体に対するマウスモノクローナル抗体を共同で開発し、酸化ストレスによる発癌モデルである鉄ニトリロ三酢酸誘発ラット腎発癌モデルに置いて、この付加体が増加していることを確認した。この結果をもとに、ゲノムDNAの免疫沈降の実用化を検討した。ラット腎臓より、ゲノムDNAはよう化ナトリウム法で抽出し、制限酵素処理により平均的1000bpの断片とした。添加DNA量、抗体量、反応時間、洗浄バッファー組成、プロテインAセファロースあるいは2次抗体付加磁気ビーズ量などに関して詳細な検討を行い、最適な条件を見出した。この条件で、免疫沈降を行うと鉄ニトリロ三酢酸投与6時間の腎臓のゲノムDNAにおいて、免疫沈降されるDNA量が有意義に高いことが判明した。
平成15年度の6ヶ月間において、DNAの免疫沈降の条件の最適化を行うことが出来た。平成16年度においては、この条件を使用してデータの収集を推進した。動物モデルとして、酸化ストレス発がんモデルとして確立された鉄ニトリロ三酢酸をマウスの腹腔内に投与する方法を使用した。コントロールおよび投与後6時間のサンプルを採取し、酸化を起こさない条件でゲノムDNAを抽出後、制限酵素処理で断片として、抗アクロレインデオキシアデノシン付加体(ADA)モノクローナル抗体を使用して免疫沈降を行った。各条件について動物3匹、動物1匹に関して100クローン以上をそれぞれシークエンスし、セレラあるいは公共のデータベースと照合することにより、当該クローンの染色体位置、最も近い遺伝子からの距離などに関して詳細に解析した。鉄ニトリロ三酢酸の投与によりADAは有意に増加した。ADAの生成した各染色体の頻度はほぼ染色体のゲノムの長さに比例したものの、全染色体に予想される頻度に関して、カイ2乗検定を行うと、コント -
マウス遺伝的カタラクトの分子生物学的解析
2003年4月 - 2005年3月
科学研究費補助金 基盤研究(B) 研究種目コード:310 15300142
鶴山 竜昭
担当区分:研究分担者
レンズは解剖学的に簡素な構造ながら、多数の遺伝子群が働いてその発達、光学的特性を維持している。遺伝的カタラクトはレンズの分子解剖を行う上で有力なツールである。松島らが発見したRupture of lens cataract (RLC)はマウスの劣性単一変異遺伝子による遺伝的カタラクトで、生後35日ころからレンズ後縫合のレンズ線維末端部の変性により、線維相互間あるいは線維・カプセル間の結合が失われる結果、レンズの破綻がおこるものである。我々はRLCと野生マウス由来近交系MOMの交配系を遺伝解析し第14染色体の約28.5cMの位置に遺伝子座rlcをマップした。当研究室では理化学研究所林崎研究室と協力し、この遺伝子の本体の検索を行い、これが細胞内シグナル伝達分子DOCK180の9アミノ酸の欠損によるものであることを確定した。ミュータント形質はcrystallin promoterをつないだDock1 cDNAを導入したトランスジェニックマウスを作成することによりレスキューされることを確認した。この欠損はDOCK180下流のRac1の活性化を低下させることにより、細胞接着シグナル細胞骨格系に伝える経路に機能不全をおこす。この結果、発達しつつあるレンズの内部応力に耐えることができず、レンズの破綻をきたすものと考えられた。RLCにみられる分子構造の異常はこれまで全く記載がなく、レンズの生理機能を明らかにするのみならず、DOCK180の生理的機能についても新しい光をあてるものである。
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マウス遺伝的カタラクトの分子生物学的解析
研究課題/研究課題番号:15300142 2003年 - 2004年
鶴山 竜昭, 日合 弘
担当区分:研究分担者 資金種別:競争的資金
レンズはレンズ上皮細胞が分化したレンズ線維が複雑に編み上げられた構造体で、単純な構造ながら、レンズの発達、光学的特性に適応した動的な分子生物学的特性を持っている。この機能を維持するため多数の遺伝子が関与しているが、その変異は多くはレンズの混濁、つまり遺伝的カタラクトの表現型をとる。レンズ線維間、あるいは線維とカプセルとの接着にも多くの分子が関係していることが知られているが、その全貌は明らかではない。松島らが発見したRupture of lens cataract(RLC)はマウスの劣性単一変異遺伝子による遺伝的カタラクトで、生後35日ころからレンズ後縫合のレンズ線維末端部の変性により、線維相互間あるいは線維・カプセル間の結合が失われる結果、レンズの破綻がおこるものである。我々はRLCと野生マウス由来近交系MOMの交配系を遺伝解析し第14染色体の約28.5cMの位置に遺伝子座rlcをマップした。当研究室では理化学研究所林崎研究室と協力し、この遺伝子の本体の探索を行い、これが細胞内シグナル伝達分子DOCK180の9アミノ酸の欠損によるものであることを確定した。ミュータント形質はcrystallin promoterをつないだDock1 cDNAを導入したトランスジェニックマウスを作成することによりレスキューされることを確認した。この欠損はDOCK180下流のRac1の活性化を低下させることにより、細胞接着シグナルを細胞骨格系に伝える経路に機能不全をおこす。この結果、発達しつつあるレンズの内部応力に耐えることができず、レンズの破綻をきたすものと考えられた。RLCにみられる分子機構の異常はこれまで全く記載がなく、レンズの分子解剖を明らかにするのみならず、DOCK180の生理的機能についても新しい光をあてるものである。
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酸化ストレスの病理的意義の追究とその病理診断への応用
2002年4月 - 2004年3月
科学研究費補助金 基盤研究(C) 研究種目コード:320 14570140
担当区分:研究代表者
鉄ニトリロ三酢酸(Fe-NTA)をラットに腹腔内に反復投与すると、高率に腎癌が発生する。この発癌過程では鉄を介したフェントン反応が関与していること、癌の悪性度が高いことが特徴である。このモデルでDifferential Displayによるスクリーニングで得られたAnnexin 2(Anx2)の役割について動物モデル・試験管内の実験で詳細な検討を行い、次にヒトの癌の予後判定に役立つかどうかを手術標本を使用して検討した。ラット腎正常近位尿細管でAnx2蛋白を検出しなかったが、Fe-NTA投与6時間より、残存尿細管で高い発現を検出した。Fe-NTA反復投与後3週間ではkaryomegalic cellの胞体・核に集積を認め、腫瘍では主に細胞表面に陽性像を認めた。Anx2はSerとTyr残基がリン酸化され、リン酸化されたactinと共沈した。転移例の原発巣において高発現を認めた。高発現性Fe-NTA誘発腎がん由来細胞株にanti-sense投与するとapoptosisを起した。LLC-PK1ブタ尿細管細胞に過酸化水素により酸化ストレスをかけると発現が増加し、この誘導は抗酸化剤で抑制された。Anx2はがん遺伝子srcの基質として発見されたが、各種kinaseの基質でもあり、さらに線溶系分子の細胞表面受容体などの役割を担う。今回の実験でAnx2がレドックス制御を受けることを初めて示した。Anx2は、レドックス制御・キナーゼ系・線溶系の要となり、promotion, progressionの過程で重要な役割を果たすと考えられた。更にこの結果を踏まえて、ヒト肺癌の予後の検討を行った。Anx2の発現の高い肺癌は予後の悪いことが判明した。
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酸化ストレスの病理的意義の追究とその病理診断への応用
研究課題/研究課題番号:14570140 2002年 - 2003年
豊國 伸哉
担当区分:研究代表者 資金種別:競争的資金
配分額:3500000円 ( 直接経費:3500000円 )
鉄発癌モデルである鉄ニトリロ三酢酸(Fe-NTA)誘発ラット腎発癌でDifferential Displayによるスクリーニングで得られたAnnexin 2(Anx2)の役割について検討を行った。ラット腎正常近位尿細管でAnx2蛋白を検出しなかったが、Fe-NTA投与6時間より、残存尿細管で検出した。Fe-NTA反復投与後3週間ではkaryomegalic cellの胞体・核に集積を認め、腫瘍では主に細胞表面に陽性像を認めた。Anx2はSerとTyr残基においてリン酸化され、actinと共沈した。転移例の原発巣においては高発現を認めた。高発現性Fe-NTA誘発腎がん由来細胞株にanti-sense投与するとapoptosisを起した。LLC-PK1細胞に過酸化水素により酸化ストレスをかけると発現が増加し、この誘導は抗酸化剤で抑制された。Anx2はRous sarcoma virusのがん遺伝子srcの基質として発見されたが、各種kinaseの基質でもあり、さらに線溶系分子の細胞表面受容体などの役割を担う。今回の実験でAnx2がredox制御を受けることを初めて示した。Anx2は、レドックス制御・キナーゼ系・線溶系の要となり、promotion, progressionの過程で重要な役割を果たすと考えられた。更にこの結果を踏まえて、ヒト肺癌の予後の検討を行った。Anx2がひとつの予後因子となることが示された。また、PNAプローブで50年前に包埋されたパラフィン標本でmRNAを検出できることが明かにした。さらに、微量マイクロウェーブ照射装置を使用した方法で、ブロッキング後1時間以内に結果のでるウェスタンブロット法を開発した。生体肝移植に置いてもフリーラジカルによる肝傷害は重要である。今回、ABO血液型不適合輸血に置ける病理診断基準を症例解析により決定した。
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心臓の虚血再灌流障害とフリーラジカルによる酸化障害についての研究
2001年4月 - 2003年3月
科学研究費補助金 基盤研究(C) 研究種目コード:320 13671414
野島 武久
心筋梗塞後の心不全に関して再灌流障害の関与が指摘されておりその際の酸化ストレスの影響が考えられるがその詳細は報告されていない。とくに時間的、空間的な変移については未だ明らかではない。本研究は心筋虚血再灌流時の酸化障害の免疫病理的・定量的評価を行っている。
平成13年度は心筋梗塞およびそれに引き続いておこるリモデリング、虚血性心筋症において酸化ストレスの時間空間的変化を明らかにした。ランゲンドルフモデルにおいて、再灌流後の酸化傷害は再灌流直後より上昇し、20分灌流後も持続した。灌流後3分ですでに上昇していること、無血下の条件で上昇している事から、細胞内の酸化物質の活性化による障害が示唆された。
平成14年度は、SDラット66匹に対して心筋梗塞を作成し、この心筋を梗塞後0、3、6、12、24、48時間1、2、4、6週間後に採取。免疫染色にて心筋酸化障害の局在を評価している。さらに高速液体クロマトグラフィー(HPLC)によって核DNA中の8-OHdGを定量し、アポトーシスの程度をTUNEL法にて評価した。免疫染色およびdG/8-OhdG比にて心筋梗塞部の8-OHdGは梗塞後6時間までは梗塞部に高く発現し、健常部は上昇しなかった。しかし12時間以後は梗塞部・周囲部で一度低下するが1週目を過ぎる頃から周囲部・健常部で上昇し、4週後でも周囲部には酸化障害が残存した。アポトーシスの程度は1週間程度まではあまり上昇しないが2週目から上昇しこの変化は心筋梗塞後の心機能の低下と相関があった。心筋梗塞後の酸化ストレスは2峰性の変化を示し1つ目が虚血による心壊死、2つ目がアポトーシスと関連した心機能不全を示していると考えられた。またこの手法は種々の心不全時の心筋細胞の評価に応用できる可能性が示唆された。 -
長時間心保存を期待したトレハロースの虚血再灌流障害防止作用に関する研究
2001年4月 - 2003年3月
科学研究費補助金 基盤研究(C) 研究種目コード:320 13671383
植山 浩二
担当区分:研究分担者
1 トレハロースの指摘濃度の検討と再灌流障害の免疫病理学的検討。
[方法]SDラット摘出心にたいして灌流法は20分の準備灌流後に上記の液用いて心停止。以後30分に一回追加しながら90虚血とし再灌流する。再灌流後の左心機能を収縮末期圧容積関係(ESPVR)と拡張末期圧容積関係(EDPVR)にて評価した。この際灌流液または灌流血液を肺動脈より採取し生化学的検査(CK・MBなど)を行うとともに心筋標本採取。8-0HdG免疫染色と高速液体クロマトグラフィーにて定量した。
[結果]1 心筋保護効果の検討;グループA:セントトーマス液、グループB:3%トレハロース付加セントトーマス液の2群で比較検討した。(心収縮能の検討)再灌流後5分における収縮末期圧容量関係にて評価した。その結果トレハロース3%入りのセントトーマス液の方が収縮能をより保つことが示された。(心筋浮腫の程度に関する検討)心筋の浮腫を還流後の心筋重量増加率で比較した。結果トレハロース付加群で有為に浮腫を軽減した。また病理学的な細胞浮腫の検討でもトレハロース付加群で細胞浮腫の軽減される傾向を示した。以上のことからトレハロースは心筋保護液に付加する物質として有用である。
2 至適濃度の検討
4%の溶液においてその浸透圧は420前後と高く3%で380前後2%で340前後となる。この点から濃度は2%?3%が至適と考えられた。
3 保護にかんする作用機序の検討
1で得たサンプルにTUNEL法を用いてapoptosisを検討した。トレハロース群で有為にapoptosisが軽減した。
4 他の添加薬剤の検討
PARS inhibitorである3ABについて同様に検討。心収縮能に関して有効な結果を得た。 -
心臓の虚血再灌流障害とフリーラジカルによる酸化傷害についての研究
研究課題/研究課題番号:13671414 2001年 - 2002年
野島 武久
担当区分:研究分担者 資金種別:競争的資金
心筋梗塞後の心不全に関して再灌流障害の関与が指摘されておりその際の酸化ストレスの影響が考えられるがその詳細は報告されていない。とくに時間的、空間的な変移については未だ明らかではない。本研究は心筋虚血再灌流時の酸化障害の免疫病理的・定量的評価を行っている。
平成13年度は心筋梗塞およびそれに引き続いておこるリモデリング、虚血性心筋症において酸化ストレスの時間空間的変化を明らかにした。ランゲンドルフモデルにおいて、再灌流後の酸化傷害は再灌流直後より上昇し、20分灌流後も持続した。灌流後3分ですでに上昇していること、無血下の条件で上昇している事から、細胞内の酸化物質の活性化による障害が示唆された。
平成14年度は、SDラット66匹に対して心筋梗塞を作成し、この心筋を梗塞後0、3、6、12、24、48時間1、2、4、6週間後に採取。免疫染色にて心筋酸化障害の局在を評価している。さらに高速液体クロマトグラフィー(HPLC)によって核DM中の8-OHdGを定量し、アポトーシスの程度をTUNEL法にて評価した。免疫染色およびdG/8-OhdG比にて心筋梗塞部の8-OHdGは梗塞後6時間までは梗塞部に高く発現し、健常部は上昇しなかった。しかし12時間以後は梗塞部・周囲部で一度低下するが1週目を過ぎる頃から周囲部・健常部で上昇し、4週後でも周囲部には酸化障害が残存した。アポトーシスの程度は1週間程度まではあまり上昇しないが2週目から上昇しこの変化は心筋梗塞後の心機能の低下と相関があった。心筋梗塞後の酸化ストレスは2峰性の変化を示し1つ目が虚血による心壊死、2つ目がアポトーシスと関連した心機能不全を示していると考えられた。またこの手法は種々の心不全時の心筋細胞の評価に応用できる可能性が示唆された。