科研費 - 豊國 伸哉
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研究課題/研究課題番号:22H04922 2022年4月 - 2028年3月
科学研究費助成事業 学術変革領域研究(学術研究支援基盤形成)
武川 睦寛, 井上 純一郎, 中村 卓郎, 高田 昌彦, 清宮 啓之, 八尾 良司, 山崎 聡, 荒木 喜美, 阿部 学, 山田 泰広, 伊川 正人, 高橋 智, 真下 知士, 小林 和人, 小林 憲太, 井上 謙一, 豊國 伸哉, 二口 充, 神田 浩明, 上野 正樹, 宮崎 龍彦, 高松 学, 宮川 剛, 高雄 啓三, 池田 和隆, 井手 聡一郎, 新田 淳美, 尾藤 晴彦, 虫明 元, 小山内 実, 旦 慎吾, 馬島 哲夫, 田代 悦, 堂前 直, 松本 健, 川田 学, 田原 栄俊, 掛谷 秀昭, 澤崎 達也, 松浦 正明
担当区分:研究分担者
モデル動物を用いた研究は、ヒトへの応用の前段階として、細胞レベルの研究で得られた成果を高度に組織化された個体において実証するためや、遺伝子改変動物においては個体としてどのような表現型を示すかを検証する上で極めて重要である。本プラットフォームは、遺伝子改変動物を初めとする先進的なモデル動物を作製し、その病理形態解析や生理機能解析を支援する。さらに、これまでに構築した先進的な分子プロファイリング技術・資源を利用し、個体レベルの研究の端緒となる分子・細胞レベルの研究支援を行う。
1, 総括支援活動:ホームページを随時更新して情報発信し、成果シンポジウム、学会展示会、ランチョンセミナーなど積極的広報活動を行った。若手支援技術講習会(9/8-10、名古屋、132名参加)を開催して若手の修練・交流を支援し、成果発表会(2/8-9、大津、122名参加)では支援成果を把握・総括した。
2, モデル動物作成支援活動:年2回の公募に対し合計122件の応募があり、うち69件についてはプレコンサルテーションを行った。モデル動物作製支援79件、ウイルス作製支援14件の計93件が採択された。担当支援拠点との個別協議が行われ、カスタム化された遺伝子改変動物とウイルスベクターが作製され、依頼者に提供された。
3, 病理形態解析支援活動:マウスやラットなど動物個体に認める病的所見やその治療効果を、H&E染色や免疫染色など主に光学顕微鏡を使用する解析技術を駆使して表現型を解釈する支援を実施した。26件の申請に対し25件を採択し、解剖、標本作製、免疫染色、その定量化など多彩な解析を行い、論文の投稿・改訂も支援した。
4, 生理機能解析支援活動:行動学的解析21件、薬理学的解析26件、光技術による操作解析7件、多機能電極・計測データ解析13件、計67件全てについてプレコンサルテーションを行い、計画的支援を実施した。支援は、動物モデルにおける病態・生理学的基盤の解明推進などに寄与し、J Clin Invest誌などに成果が発表された。
5, 分子プロファイリング支援活動:のべ274件の申請に対し、化合物評価143件(細胞パネル41、細胞表現型72、トランスクリプトーム13、プロテオーム10、ゼブラフィッシュ表現型7)、分子探索86件(標準阻害剤キット56、小分子RNA標的遺伝子3、バーコードshRNAシーケンス24、化合物標的タンパク質2、網羅的タンパク質相互作用1)の計229件を採択し、順次実施した。
1, 総括支援活動:事務局体制が確立し、プラットフォーム(PF)内の連携が前年度以上に円滑化すると共に、被支援者向けのワンストップ窓口としても迅速かつ適切な対応で利用促進に貢献することが出来た。新型コロナウイルスの5類移行に伴い、若手支援技術講習会および成果発表会における学術交流・情報交換を例年以上に活発化することが出来た。
2, モデル動物作成支援活動:PF第二期から始まった遺伝子改変マウス・ラット作製およびウイルスベクター作製という支援項目を広く周知することにより多くの課題応募があり、学術的意義の高い研究を採択し、支援することができている。また、ニーズを詳細に把握することにより依頼者の要望に対して的確な対応が可能な体制が構築されている。
3, 病理形態解析支援活動:2年目であったが、十分な数の申請が集まり、25件の支援を実施することができた。外部委員2名を含む審査はウェブで実施しているが、円滑に業務を果たすことができている。班員の専門性に応じて支援の振り分けも問題なく実施できた。2月の成果発表会においても、本支援による興味ある成果が複数披露された。
4, 生理機能解析支援活動:支援対象者のモデルマウスを対象にした行動解析支援を21課題、依存性薬物や治療薬の感受性に関連する行動解析および規制薬物作用ゲノム関連解析支援を26課題、光遺伝学に関する最新技術を活用した研究支援を7課題、多機能集積化電極による最先端の技術提供を行う多元的生理機能計測操作支援を13課題で実施した。
5, 分子プロファイリング支援活動:前期から継承した細胞パネルなどの化合物評価支援4系、および標準阻害剤キットなどの分子探索支援2系は安定した支援実績を残した。また、第2期から加わった分子探索支援、アドホック支援(ゼブラフィッシュ表現型)に関しても、支援の周知が功を奏し、順調に支援実績を伸ばすことができた。
1, 総括支援活動:前年度の活動を継続し、アドホックも含めた支援内容の周知拡大、利用促進を図る。各担当者と緊密な連絡を保ち、ワンストップ窓口の機能をさらに強化することでサービスの向上を図る。若手支援技術講習会および成果発表会については学術的内容に加え、過去のアンケート結果等も分析しながら企画・運営に当たる。
2, モデル動物作成支援活動:引き続き広報活動と被支援者との対話を通してニーズを把握し、要望に的確に対応する。また、先端的な遺伝子改変技術やウイルスベクター開発を行い、支援に活用することにより、国内のモデル動物研究の発展を推進する。作製された遺伝子改変動物を公共リソースバンクに供出することにより、学術基盤としての研究リソース整備に貢献する。
3, 病理形態解析支援活動:諸学会や若手支援技術講習会等を通じて本制度の周知を強化する。特に、アドホック支援の内容の見える化を図る。また、AI技術を取り入れた定量化などの解析に関して、新たに技術提供できるようにしたいと考えている。
4, 生理機能解析支援活動:6つの拠点への支援申請が何れも安定して多数であることから、引き続きニーズに応えられるように拠点数を8つ増やし、技術力を維持・向上させ、プレコンサルテーションで有意義な計画を立案し、公正に支援課題を選考し、支援実施体制をハイレベルに保つ。また、支援該当部の論文分担執筆を積極的に進め、成果の公表にも貢献する。
5, 分子プロファイリング支援活動:被支援者の要望に応じたカスタマイズ対応・支援実施後のフォロー(フィードバックミーティングによる科学的助言・技術指導、高次支援の勧奨など)に努めるとともに、効果的な共同研究の提案・斡旋を進める。また、オープンサイエンスに向けた取り組みとして、得られた研究成果の公的データベースへの登録を奨励するとともに、支援の基盤となる独自データベースの公開を進める。 -
老化研究推進・支援拠点
2017年4月
国立研究開発法人日本医療研究開発機構 健康・医療戦略の推進に必要となる研究開発 老化メカニズムの解明・制御プロジェクト
豊國伸哉
担当区分:研究分担者
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発がんにおけるDNA損傷・修復ダイナミクスの実像解明
研究課題/研究課題番号:20K07588 2020年4月 - 2023年3月
文部科学省 科学研究費 基盤研究C
赤塚 慎也
担当区分:研究分担者 資金種別:競争的資金
配分額:4290000円 ( 直接経費:3300000円 、 間接経費:990000円 )
本研究は、DNA損傷のゲノム内分布動態を確定するための方法として次世代シークエンサーを用いた新たな解析法を確立し、発がん刺激によるDNA損傷分布の変化とその意義を明らかにすることを目的とする。DNA損傷は遺伝子変異の原因となるため、そのゲノム内での分布動態を知ることは、がんの発生経路を確定し、予防の方策を講ずるうえで重要となる。本研究では、損傷DNAに対する免疫沈降産物の網羅的解析を次世代シークエンサーの新たな応用技術として確立し、発がん過程におけるDNA損傷のゲノム分布動態を解明する。さらに、その際の変異の発生頻度を評価することにより、DNA損傷分布変化の発がんにおける意義を明らかにする。
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フェロトーシスにおける細胞内鉄制御機構の破綻
研究課題/研究課題番号:20H05502 2020年4月 - 2022年3月
文部科学省 科学研究費 新学術領域研究(研究領域提案型)
豊國 伸哉
担当区分:研究代表者 資金種別:競争的資金
配分額:6370000円 ( 直接経費:4900000円 、 間接経費:1470000円 )
鉄は私たちのからだに最も多く含まれる重金属であり、酸素の運搬や種々の酵素の活性中心などの重要な役割を果たしている。一方、過剰鉄は種々の発がんリスクとなることも明らかにされてきた。このような状況において、新たな細胞死としてフェロトーシスが提唱された。フェロトーシスは、二価鉄依存性に脂質過酸化を伴う新たな制御性壊死である。私たちは、これまでに過剰鉄が活性酸素産生を触媒し、がんを引き起こすメカニズムを明らかにしてきた。これまでの知見と技術を応用することにより、フェロトーシスが引き起こされるメカニズムならびにがん細胞がフェロトーシス抵抗性を示す機構を鉄代謝の観点より明らかにする。
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プラズマ誘起生体活性物質による超バイオ機能の展開
研究課題/研究課題番号:19H05462 2019年4月 - 2024年3月
文部科学省 科学研究費 特別推進研究
堀 勝
担当区分:研究分担者 資金種別:競争的資金
配分額:603330000円 ( 直接経費:464100000円 、 間接経費:139230000円 )
プラズマによって誘起された生体活性物質の分子構造と物性を突き止め、各物質と生体との相互作用を解明することによって、超バイオ機能発現の本質を明らかにする。また、活性物質による細胞死、増殖、分化などの真核生物に普遍的な現象の分子機構を解明する。その成果を基盤にして、プラズマ医療、農業という未来産業を拓く羅針盤となる、学術基盤『プラズマ生命科学』を切り拓き、地球規模の課題である、難病治療や食糧不足などを解決するイノベーションを産み出す。
プラズマ活性乳酸リンゲル液(PAL)の成分解析の結果、脳腫瘍培養細胞とアストロサイト正常細胞に選択的殺傷効果を示す有力な候補物質として2,3-ジメチル酒石酸を同定していたが、今年度、有機合成した2,3-ジメチル酒石酸を入手し、脳腫瘍培養細胞に対する抗腫瘍効果について、乳酸リンゲル溶液中における2,3-ジメチル酒石酸の濃度依存性を明らかにした。分担研究者の吉川らは反応性ガスを制御することが可能なプラズマ発生装置により生成したプラズマ活性溶液を用い、卵巣癌細胞に対する死滅効果を検討した結果、反応性ガスの種類や混合比の違いにより、プラズマ活性溶液の抗腫瘍効果が異なることを明らかにした。分担研究者の豊國らは臨床応用により近づけるためにPAL溶液を使用して、中皮細胞と悪性中皮腫細胞への効果を評価し、腫瘍細胞ではフェロトーシスを誘導することが明らかになった。分担研究者の片岡らは、大気圧プラズマを体外からラットの大脳皮質組織へ頭蓋骨を通して照射し、照射組織全体を組織超微細構造の変化まで明らかにできる広域電子顕微鏡撮像をおこなった。幹細胞や免疫細胞が大脳皮質組織中へ誘導される様子を電子顕微鏡レベルで明らかにした。分担研究者の榊原らは、低温プラズマ照射がイネ幼苗の成長促進を引き起こす原因究明のために照射水の化学組成の変化を解析し、硝酸イオン濃度、過酸化水素濃度、pHなどの変化を定量的に明らかにした。また、栽培イチゴクラウン部位への低温プラズマ直接照射によりABA依存的に果実着色が促進することを示唆した。分担研究者の伊藤らは、酸素ラジカル処理したフェニルアラニンとトリプトファン溶液に殺菌能と植物の成長促進能があることを確認し、殺菌因子はフェニルアラニンの誘導物質であることを明らかにした。分担研究者の古閑らは、植物に対するPALの効果検討について、植物の成長段階に合わせた検証を行った。
2019年4月1日には名古屋大学低温プラズマ科学研究センターが設立され、共同利用・共同研究拠点として、我が国の低温プラズマ科学の拠点として整備され、多くの人材や情報が集結した。研究代表者の堀勝教授はセンター長、分担研究者の吉川史隆教授は、副センター長、分担研究者の豊國伸哉教授はプラズマバイオシステム科学部門の部門長に就任し、強固な連携体制のもと、特別推進研究において世界を先導する成果を挙げ続けた。具体的には、52報の論文公表、32件の招待講演の成果を挙げた。また、分担研究者の榊原均教授主導の元、分担研究者片岡洋祐チームリーダーと名大理研科学技術連携センター共同研究を開始し、名古屋大学と理研が地域ハブとしての役割を担いながら研究を共同で行う体制が構築された。以上の状況を鑑みて、現在までの進捗状況を当初の計画以上に進展していると自己評価した。
完全密封型プラズマ活性溶液作製装置を設置し、発光分光によるプラズマのキャラクタライズ、LC/MSによるプラズマ誘起活性物質の探索、in vitroの細胞実験に基づく細胞内分子機構の統一的な解明などを進める。分担研究者の梶山らは反応性ガスの制御により生成された卵巣がん細胞を強力に死滅させるプラズマ活性溶液が、生体内における癌の播種・進展を抑制するかどうかを、マウス卵巣癌腹膜播種モデルを用いて検討を行い、その制御機構について明らかにしていく。分担研究者の豊國らは、PALの腫瘍細胞への効果に関してメタボローム解析を実施し、鍵となっている代謝系を明らかにする。分担研究者の片岡らは、大気圧プラズマ照射によって大脳皮質中に誘導された幹細胞、免疫細胞等について、同一対象組織について光学顕微鏡と電子顕微鏡の両技術で観察するCLEM(光‐電子相関顕微鏡)法を用いて発現分子と微細構造を同時に明らかにし、組織再生メカニズムの解明に迫る。分担研究者の榊原らは、プラズマ照射による硝酸イオン濃度、過酸化水素濃度の変化で成長促進効果が説明できるか否かについて、各要因の再構成液でその効果を検証する。また低温プラズマ処理区と非処理イチゴのRNA-seq解析により果実着色に関わる機構を明らかにする。分担研究者の伊藤らは、HPLC、LC/MS、NMR、次世代シーケンサー等を用いて酸素ラジカル処理したフェニルアラニンとトリプトファン溶液の殺菌因子の構造特定、生長促進因子の特定及び脂質二重膜や細胞との相互作用の解明を推進する。分担研究者の古閑らは、PALを用いた発芽以降の生長特性および収穫特性を明らかにするとともに、得られた種子の発芽・生長特性を明らかにする。 -
鉄ダイナミクスと多層オミクス解析による酸化ストレス発がん克服のための基盤形成
研究課題/研究課題番号:17H04064 2017年4月 - 2020年3月
豊國 伸哉
担当区分:研究代表者 資金種別:競争的資金
配分額:17810000円 ( 直接経費:13700000円 、 間接経費:4110000円 )
本研究は生体における鉄ダイナミクスを多面的に理解することにより、がん克服の基盤を築くことを目的とした。細胞レベルで鉄依存性制御性壊死として新たな細胞死フェロトーシスの概念形成を行った。ラットモデルで中皮腫予防に瀉血が有効であった。鉄誘発腎がんはMutyh欠損マウスで発生増加傾向を、アスベスト誘発中皮腫はDmt1トランスジェニックマウスで発生遅延、Mth1欠損マウスで発生低下を認めた。炭酸脱水酵素9は中皮腫にフェロトーシス抵抗性を賦与していることが判明した。
新たな細胞死である2価鉄依存性制御性壊死フェロトーシスはがん細胞死のみならず、種々の病的・生理的状態にも関与していることが判明し、今後の研究の新たな切り口となった。瀉血による中皮腫予防効果がラットで確認され、種々の鉄代謝・酸化的DNA傷害修復遺伝子の鉄発がんへの作用が明らかとなった。炭酸脱水酵素9はフェロトーシス抵抗性を賦与しており、新たな治療標的となる。 -
カーボンナノチューブと低温プラズマの融合による新規治療法の開発
研究課題/研究課題番号:16K15257 2016年4月 - 2018年3月
豊國 伸哉
担当区分:研究代表者 資金種別:競争的資金
配分額:3640000円 ( 直接経費:2800000円 、 間接経費:840000円 )
カーボンナノチューブと低温プラズマを融合させた治療法の開発のため基盤データを取得した。多層カーボンナノチューブが特異的に吸着するタンパク質を網羅的に同定し、ヘモグロビン、ヒストン、トランスフェリンを得た。低温プラズマの作用は、鉄を付加した処理で感受性が増加し、鉄除去性キレート剤の処理により感受性が減少することが判明し、細胞内鉄濃度が低温プラズマへの細胞の感受性を決定する因子であることを見いだした。その過程でエンドサイトーシス活発化とオートファジーの関与ならびに細胞内の触媒性Fe(II)が増加することがわかり、中皮腫細胞では低温プラズマ処理はフェロトーシスを起こすことを明らかにした。
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先端モデル動物支援プラットフォーム
研究課題/研究課題番号:16H06276 2016年 - 2021年
文部科学省 科学研究費 新学術領域研究(研究領域提案型)『学術研究支援基盤形成』
豊國伸哉
担当区分:研究分担者 資金種別:競争的資金
配分額:25818000円 ( 直接経費:19860000円 、 間接経費:5958000円 )
①総括支援活動 : ホームページ(HP)に改良を加えながら公募の円滑化をさらに進めた。モデル動物作製解析の講習や若手研究者の交流促進を推進する技術講習会を開催した。また成果発表会を開催、全国から127名の参加があり一般口演ならびにポスター発表など、本活動の支援成果を、より幅広い研究分野にアピールした。
②モデル動物作製支援活動 : 利用者の様々な要望に個別に対応し、相同組換えやゲノム編集など先進的な遺伝子改変技術を用いて、遺伝子改変マウスおよびラットを合計83件、迅速に作製し、学術研究を推進するための研究リソースを提供した。
③病理形態解析支援活動 : 昨年より多い52件の申請を受け、2回の審査の結果、42件に関して病理形態解析を実施した。研究の方向性を裏付ける多くの成果が得られた。論文の図の作成にもかかわり、論文が受理されるまで支援を実施した。
④生理機能解析支援活動 : 行動学的解析では23課題、薬理学的解析では9課題、光技術による操作解析では10課題、多機能電極・計測データ解析では16課題をそれぞれ支援し、動物モデルにおける病態・生理学的基盤の解明推進に関する支援を展開した。
⑤分子プロファイリング支援活動 : 依頼化合物の分子プロファイリング308件、阻害剤キット配付102枚、RNA干渉キット配付・siRNAデザイン合成92件、バーコードshRNAライブラリーによる化合物の標的経路探索24件、を実施した。
①総括支援活動 : 公募申請と選考作業の効率化が促進された。技術講習会と成果発表会で多くの参加者を得た。参加者対象のアンケートから若手の研究意欲を促進する効果が明らかとなった。参加希望者が前年度よりも増え、参加者の研究分野の多様性が一層顕著になった。
②モデル動物作製支援活動 : 研究実施計画に沿った支援を行うことができている。増加傾向にある応募課題に対し、最新技術を導入することにより効率化を図り、予算が許す範囲で可能な課題数を採択し、支援を行なった。遺伝子改変が複雑あるいは技術的に難しいケースは、必要な技術を導入・開発することにより対応している。
③病理形態解析支援活動 : 年々申請数が増加しており、審査をより厳格に行っている。現在の予算ならびに班員のエフォートにおいてできる最大限の支援活動を実施しており、成果は確実に上がっている。
④生理機能解析支援活動 : 支援対象者のモデルマウスを対象にした感覚・運動・認知機能に関わる「網羅的行動テストバッテリー」を用いた行動解析支援を23課題、依存性薬物等の感受性に関連する行動解析および臨床データと遺伝子多型との関連解析を行う規制薬物作用解析支援を9課題、進展著しい光遺伝学に関する最新技術を活用した研究支援を10課題、多機能集積化電極による最先端の技術提供を行う多元的生理機能計測操作支援を16課題で実施した。
⑤分子プロファイリング支援活動 : 応募課題の審査体制が軌道に乗り、採否決定までの所要日数が前年度と比較して最大10日程度短縮された。応募前の技術相談を積極的に受け付けたことで、幅広い分野から新規ユーザーを獲得することができた。前年度までの支援成果を受けて高次評価に進んだ課題については、複数の支援担当者間での連携が功を奏した。shRNAライブラリー探索支援では実験条件をカスタマイズし、被支援者の特殊なニーズにも応えた。
①総括支援活動 : 支援により得られた成果の広報にも力を入れるとともに、被支援者にも本支援活動の重要性をアピールしてもらうよう働きかける。技術講習会では4プラットフォームとの連携を推進し、H31年度は先進ゲノム解析研究支援プラットフォームから講師と参加者を受け入れる。
②モデル動物作製支援活動 : 先端的なゲノム編集技術や研究リソース等を用いて、支援活動の拡充を図るとともに、革新的な遺伝子改変技術および周辺技術の導入・開発を進めることにより、学術研究の推進に貢献するとともに、学術基盤としての研究リソースを整備する。
③病理形態解析支援活動 : 現状で予算ならびに支援を担当する班員の対応状況に関して厳しい状態となっていることから、今後は審査をより厳格に行い、成果につながる可能性が高い申請を選択する。基本姿勢として、一旦開始した病理形態支援は論文が受理されるまでサポートするという方針に変化はない。
④生理機能解析支援活動 : 5つの拠点への支援申請が何れも安定して多数あることから、引き続きニーズに応えられるように拠点における技術力を維持・向上させ、支援実施体制をハイレベルに保つ。また、研究者コミュニティーにおける支援事業の認知度を向上させるため、学会等での広報活動を行う。技術支援にとどまらず、支援該当部の論文分担執筆を積極的に進め、成果の公表にも貢献する。
⑤分子プロファイリング支援活動 : H30年度に引き続き、広報活動の強化・解析条件のカスタマイズ対応・支援実施後のフォロー(科学的助言、共同究の斡旋、高次支援の勧奨)に努めるとともに、年2回の定例班会議で問題点を洗い出し、常に最善の運用体制で支援を実施する。支援内容の性質上、個体レベルの研究を行わない研究者層が主要な被支援者層と一致しているが、共同研究や他の支援活動班との連絡を通じて、個体レベルの研究にも展開させたい。 -
マウス体系的遺伝解析系を用いたウレタン誘発肺腫瘍感受性の遺伝的解析
研究課題/研究課題番号:26430088 2014年4月 - 2018年3月
大野 民生
担当区分:連携研究者 資金種別:競争的資金
SMXA・RI系統群の解析でマップされた2つの肺腫瘍感受性遺伝子座Par1(Chr.11)とPar3(Chr.12)の存在は、マップ領域を導入したコンジェニック系統では確認できなかった。そのため、Chr.11コンジェニック系統群で肺腫瘍感受性遺伝子座を再解析した結果、先のマップ領域とは異なりChr.11の27.7~36.4Mb内に目的の遺伝子座の存在が示唆された。ここにはヒトの肺腫瘍発症への関与が報告されているMpg遺伝子が存在しており、A/J系統のMpg遺伝子内の5つのアミノ酸置換を伴う変異のうち特にp.Ala132Ser変異がウレタン誘発肺腫瘍感受性の有力な原因であると考えられた。
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オフセット印刷工程で多発した胆管癌の原因解明と動物モデルの確立
研究課題/研究課題番号:26670329 2014年4月 - 2017年3月
市原 学
担当区分:連携研究者 資金種別:競争的資金
オフセット印刷工場で多発した胆管がんの原因候補物質として1,2-ジクロロプロパン(DCP)が挙げられているが、過去の同物質を用いた動物実験は胆管がんの発生を示していない。本研究は同物質への感受性の種差がグルタチオンS-トランスフェラーゼの分布で説明できないことを示した。さらに本研究は、マウスにおいてDCPが胆管上皮細胞増殖と細胞死を誘導し、それら作用に肝臓代謝酵素P450が貢献していることを世界で初めて示した。本研究結果は、DCPが胆管がんの原因物質であることを強く示唆するものである。
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病態モデルを用いた脳梗塞ならびに認知症の予防介入効果とその作用機序に関する研究
研究課題/研究課題番号:26350610 2014年4月 - 2017年3月
石田 和人
担当区分:連携研究者 資金種別:競争的資金
「健康寿命」延長の具体的な方策を確立することは急務であり,特に,QOLを著しく制約する脳梗塞や認知症の予防方策を確立する必要がある.
脳梗塞動物作成前に、3週間の運動を行うことで脳梗塞の障害予防効果と脳内の抗酸化酵素発現増加を確認した.また,脳梗塞前の運動が,梗塞部周辺領域におけるアストロサイト活性と低酸素誘導因子-1αの発現増加をもたらすことで神経保護作用が高まる可能性を示した.さらに,加齢とともに認知症様の症状を漏らすとされている認知症マウス(アポリポ蛋白E4ノックインマウス)に対して,6週間の自発的運動を実施したところ,空間記憶に関する認知機能の低下を防ぐ効果を齎すことを示した. -
酸化ストレスとMet遺伝子の増幅をターゲットとした卵巣明細胞腺癌の治療戦略
研究課題/研究課題番号:26460423 2014年4月 - 2017年3月
山下 依子
担当区分:連携研究者 資金種別:競争的資金
卵巣明細胞腺癌の移植モデルにおけるMet阻害剤の効果について、現時点で著効するという実験結果を得ることができていない。その理由としてさまざまな要因が考えられるが、卵巣明細胞癌の細胞株の増殖速度が遅いため、ヌードマウスへの移植実験の実験結果が安定しないことが挙げられる。卵巣明細胞腺癌以外の腫瘍についてMet増幅の有無を検討したところ、内膜癌の一部では増幅があることが確認された。一方で乳癌ではほとんど増幅がないことが判明した。
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新領域「プラズマ医療科学創成」
2012年10月 - 2017年3月
科学研究費補助金 新領域研究
堀 勝
担当区分:研究分担者
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プラズマ医療科学の臨床応用論的学術基盤の構築と体系化
研究課題/研究課題番号:24108008 2012年6月 - 2017年3月
新学術領域研究(研究領域提案型)
吉川 史隆
担当区分:研究分担者 資金種別:競争的資金
非平衡大気圧プラズマの医療応用への研究が世界中で進められており、中でもがん治療への有用性が次々と報告されている。我々は現行の治療法では完治が困難な進行性難治癌である、グリオーマ、並びに卵巣癌をターゲットとしたプラズマ癌治療の有用性を明らかにし、中皮腫をモデルにその科学的基盤を構築した。特に、プラズマを照射した溶液にも抗腫瘍効果を見出し、髄腔内或は腹腔内播種を伴う癌腫への効果的なプラズマ治療法としての可能性を示した。一方、細胞活性化において、我々の研究グループで開発した脂肪幹細胞へのプラズマ刺激により高品質の幹細胞が生成され、再生医療分野においてもその有用性が示唆された。
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中皮細胞の発がん機構解析による予防基盤の形成
2012年4月 - 2015年3月
科学研究費補助金 基盤研究(B)
豊國伸哉
担当区分:研究代表者
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中皮細胞の発がん機構解析による予防基盤の形成
研究課題/研究課題番号:24390094 2012年4月 - 2015年3月
豊國 伸哉
担当区分:研究代表者 資金種別:競争的資金
配分額:18720000円 ( 直接経費:14400000円 、 間接経費:4320000円 )
中皮腫の発生機構をラット腹腔内にアスベストを投与するモデルを使用して解析し、ヒト中皮腫に酷似した遺伝子変化をきたすこと、局所の鉄過剰が主要な病態であることを明らかにした。鉄キレート剤デフェラシロクスの予防投与により、予後の比較的よい上皮型中皮腫の割合が有意に増加することを明らかにした。さらに、肉腫型中皮腫を規定し、中皮腫細胞の増殖に重要な遺伝子として、結合組織成長因子を同定した。
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子宮内膜症による鉄過剰に起因する卵巣癌発症の分子メカニズムの解明とその予後予測
研究課題/研究課題番号:23590394 2011年 - 2013年
山下 依子
担当区分:研究分担者 資金種別:競争的資金
卵巣の内膜症性嚢胞内への繰り返す出血に伴う鉄の過剰沈着によって起こる酸化ストレスによって類内膜腺癌と明細胞腺癌が発症することが近年報告された。本研究期間において、我々が卵巣明細胞腺癌の遺伝子変化についてアレイCGH法を用いて解析すると、Met遺伝子の増幅が高頻度に起こっており、予後不良因子であることを報告した。また、子宮内膜症患者との関連が報告されたANRIL遺伝子と共同して作用するCBX7の発現が卵巣明細胞腺癌の予後不良因子であることについても報告した。さらに、内膜症の間質細胞の役割についても検討し、報告した。
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がん研究分野の特性等を踏まえた支援活動
2010年4月 - 2016年3月
科学研究費補助金 新領域研究
中村 祐輔
担当区分:研究分担者
個体レベルでのがん研究支援活動の中で、病変の組織学的解析を担当する。
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がん研究分野の特性等を踏まえた支援活動
研究課題/研究課題番号:221S0001 2010年4月 - 2016年3月
新学術領域研究(研究領域提案型)
今井 浩三, 中村 祐輔
担当区分:研究分担者 資金種別:競争的資金
がんの克服を目指す研究への支援から始まり、平成26 年度からは広く生命科学研究に携わる研究者も対象として支援を展開した。その結果、総括支援活動では若手研究者の育成ならびに今後研究支援に携わる可能性のある人材を育成し、国際学術交流を展開した。遺伝子改変マウスの供給支援、がん組織をはじめバイオリソースの提供支援等により、多くの世界的・先端的研究が展開された。日本を代表する疫学・ATL 研究では、得られた貴重な試料は11万検体を超え、多くの研究者を支援し貴重な成果を生み出した。化学療法基盤支援、ゲノム・エピゲノム支援は当初の目標を上回る成果を上げた。さらに市民講演会等により国民に支援の重要性を広報した。
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フロン代替物質による中枢神経脱髄を説明する酸化ストレス、グリア活性化に関する研究
研究課題/研究課題番号:22390120 2010年 - 2012年
市原 学
担当区分:研究分担者 資金種別:競争的資金
1-ブロモプロパン(1BP)曝露はラット小脳においてアストロサイト、ミクログリアを活性化するとともに、酸化ストレスを増大させた。さらに1BP曝露は海馬においてトリオースフォスフェイトイソメラーゼ(TPI)を含む様々な蛋白のカルボニル化を促進するとともに、TPI活性低下、Advacnced Glycation End-product上昇を引き起こした。本研究は蛋白のカルボニル化が1BPの中枢神経毒性と関わっていることを示唆した。