科研費 - 丸山 彰一
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ループス腎炎の炎症特異的診断バイオマーカー開発とその実用化に関する国際調査研究
研究課題/研究課題番号:17H04667 2017年4月 - 2020年3月
坪井 直毅
担当区分:研究分担者
糸球体腎炎の組織診断に必要な腎生検は、検査後の出血リスクや入院安静を要するため、患者負担の大きい検査です。我々は、糸球体腎炎では白血球の表面分子が糸球体から尿中に漏れるのではと考え、本邦、海外で収集された腎臓病患者の生体試料を用いて検討しました。その結果、CD11bと呼ばれる接着分子の1構成成分をもつ白血球が、全身性ループスエリテマトーデスに合併する糸球体腎炎や血管炎患者の糸球体で増加すること、またCD11bは尿中でも上昇することを見出しました。また他の白血球由来分子2種(CD163、CD16b)との比較により、尿中CD11bが活動性ループス腎炎に与える影響が最も高いことが明らかとなりました。
本研究成果から、尿中CD11bはループス腎炎、血管炎関連腎炎の診断法としてのみならず、経過中の治療効果判定や再発予測のための検査法として有用だと示唆されました。また、本国での腎疾患の治療現場のみならず、不充分な医療環境から患者が正確に組織診断されることなく末期の腎不全に陥るような発展途上国においても、本法は外来の尿検査で行える負担の低い検査法として期待できます。 -
CD147による細胞内輸送・代謝機構の解明と糖鎖修飾調整を介した新規治療法の開発
研究課題/研究課題番号:17K09695 2017年4月 - 2020年3月
小杉 智規
担当区分:研究分担者
本研究は肥満症に伴うCKD・脂肪性肝疾患のより詳細な機序解明を目的として、野生型およびCD147/Basigin遺伝子欠損(BSGKO)マウスに高脂肪負荷を与え、細胞内エネルギー代謝機構におけるBSGの役割を検証した。BSGKOマウスの腎臓において、尿細管の空胞変性とリポフスチン様物質の蓄積は著明に抑制されていた。この結果は細胞内への乳酸・ピルビン酸取り込みがBSG欠損により抑制され、TCA回路における中間代謝産物の減少と脂肪酸ベータ酸化を促進し、ケトン再生経路の亢進を示したことによると考えられた。一連の過程におけるBSGタンパクの増加はオートファジー障害の関与が示唆された。
近年、乳酸やピルビン酸の代謝やケトン体合成経路に関する研究は脳神経細胞や心遅筋線維のエネルギー源としての研究から内因性代謝物の細胞内蓄積・臓器障害に至るまで多岐におよぶ。BSGもまた、乳酸やピルビン酸、ケトン体のミトコンドリア取り込みに関与しエネルギー恒常性の維持に寄与するLactate Shuttle理論(未検証)が提唱されている。そのため、糖尿病による腎臓・肝臓障害に対して、細胞内のエネルギー恒常性の変化を俯瞰することは新たな治療戦略の構築となり、BSGを治療標的とする事はエネルギー恒常性を制御し、現在医療経済上負担となっている多彩な糖尿病関連疾患の抑止につながる。 -
血管内皮障害を呈する腎疾患におけるSulf2の機能解析と新たな治療戦略の探求
2017年4月 - 2019年3月
科学研究費補助金 基盤研究(C)
増田 智広
担当区分:研究分担者
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血管内皮障害を呈する腎疾患におけるSulf2の機能解析と新たな治療戦略の探求
研究課題/研究課題番号:17K09694 2017年4月 - 2019年3月
増田 智広
担当区分:研究分担者
細胞外スルファターゼSulf2は、分子量約130kDaの分泌型酵素で細胞外での膜タンパクに付着している糖鎖の脱硫酸化を担いWnt, BMP, GDNF, FGFというヘパリン結合性因子のシグナル伝達を制御する物質である。
腎臓領域ではSulf1およびSulf2が細胞外基質蓄積を制御し糖尿病性腎症悪化に寄与するとの既報がある。また、ヘパラン硫酸-S-ドメインの蓄積は原線維形成を促進し、腎臓での細胞毒性を促進するという知見が加わった。上記よりSulf2Tgは腎保護に寄与すると仮説を立て私はヒトSulf2全身強制発現マウス(HSulf2Tg)と血管内皮細胞特異的Sulf2強発現 (Tie2-Cre/Sulf2)を用いて、腎機能にどのように関与するか機序解明を目指した。
初年度の計画としてはHSulf2Tgの腎障害惹起時に表現型の確認。腎障害を惹起していない野生型とHSulf2Tgを比較し双方ともに腎機能が正常であった。また、腎障害モデルとして交付申請書に記載した抗基底膜抗体により直接的に糸球体内皮細胞を障害する加速型馬杉腎炎モデルに加えて、アドリアマイシン腎症モデル、糖尿病モデルを作成。いずれのモデルにおいても、HSulf2Tgの方が 尿素窒素・クレアチニン・尿タンパクが低値であった。しかし、Tie2-Cre/Sulf2は野生型と比して尿素窒素・クレアチニン・尿タンパクのいずれも差異は認めなかった。 -
CD147による細胞内輸送・代謝機構の解明と糖鎖修飾調整を介した新規治療法の開発
2017年3月 - 2020年3月
科学研究費補助金 基盤研究(C)
小杉 智規
担当区分:研究分担者
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白血球接着因子とその調節分子の糸球体腎炎における機能解析と細胞移入治療への応用
2016年4月 - 2019年3月
科学研究費補助金 基盤研究(C)
坪井 直毅
担当区分:研究分担者
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ExosomesとマイクロRNAを用いた、安全性の高いオーダーメイド治療の開発
2016年4月 - 2019年3月
科学研究費補助金 基盤研究(C)
加藤 規利
担当区分:研究分担者
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移植腎グラフトの長期生着をめざした慢性拒絶反応に対する予防・先制医療の導入
研究課題/研究課題番号:16H05465 2016年4月 - 2019年3月
小林 孝彰
担当区分:研究分担者
腎移植後の長期生着を妨げる要因として、ドナーHLAに対する抗体(DSA)産生による慢性抗体関連型拒絶反応がある。発症すれば難治性であり移植腎機能は廃絶する。DSAの産生を予防すること(予防医療)、早期に診断し対応すること(先制医療)が重要である。本研究では、免疫抑制療法の個別化(最適化)に、T細胞(CD4, CD8), B細胞をターゲットとした薬力学解析、HLA epitope解析が有用であり、血液中のメッセンジャー、マイクロRNA,グラフト由来のDNAを検出することで早期診断が可能となること、シグナル伝達解析により移植腎グラフトの傷害抵抗性を薬剤などで獲得する可能性があることを見出した。
国民成人の8人に1人が慢性腎臓病といわれ、年間4万人以上が末期腎不全となっている。末期腎不全の治療として世界では、腎移植が最良の治療とされているが、わが国ではドナー不足のため腎代替療法を必要とする患者の90%以上が血液透析を選択している。患者の生命予後、QOLそして医療経済を考えれば、透析医療から移植医療へのシフトが不可欠である。本研究では、慢性拒絶反応を防止するための予防、先制治療の可能性が示され、移植医療の課題となっている長期成績の改善につながる有意義な所見が得られた。 -
白血球接着因子とその調節分子の糸球体腎炎における機能解析と細胞移入治療への応用
研究課題/研究課題番号:16K09611 2016年4月 - 2019年3月
坪井 直毅
担当区分:研究分担者
【目的】白血球発現受容体PILRαは、急性炎症反応条件下においてβ2インテグリン活性化を負に制御する。本研究は抗体型腎糸球体障害におけるPILRαの役割解明を目的とした。【結果】PILRα-/-マウスは抗GBM抗体型腎炎において野生型マウスに比し重篤な糸球体障害を示した。またPILRα-/-でみられた糸球体好中球増加は前免疫条件下でのみ観察された。PILRα-/-好中球は免疫複合体癒着が有意に増強していた。【結論】PILRαは接着因子Mac-1活性化を阻害することで、腎障害を導く病原抗体依存性の好中球導入を負に制御する。
本研究から白血球発現分子PILRαの接着因子Mac-1制御を介する抗体型糸球体腎炎抑制効果が明らかとなった。またPILRαによる接着因子活性化抑制機能は炎症時にのみ発揮された。したがってPILRαの活性化は、抗体型糸球体腎炎のみならず、関節リウマチ、全身性エリテマトーデスなどの炎症性自己免疫疾患に対する有望な治療ターゲットとして考えられる。 -
ExosomesとマイクロRNAを用いた、安全性の高いオーダーメイド治療の開発
研究課題/研究課題番号:16K09610 2016年4月 - 2019年3月
加藤 規利
担当区分:研究分担者
我々は敗血症性多臓器障害に関し、miRNA補充治療の病態生理に対する役割を示した。in vitroにおいて炎症性サイトカインを抑制しうるmiRNAの評価を行い、miR-146aが最も効率よくサイトカイン分泌を抑制しうることを見つけた。盲腸結紮穿孔にて敗血症動物モデルを作成し、PEIをDDSとしてmiR-146a発現プラスミドを投与した所、血中サイトカインレベル、臓器障害、生存率の改善を確認した。投与したプラスミドは主に脾臓に分布し、NF-kBの活性化抑制が見られた。実験結果より、miR-146aを脾臓マクロファージで発現させることにより、過剰な全身炎症反応と臓器障害を抑制できると考えられた。
敗血症は全死亡率が高い重篤な疾患であるが、抗菌治療や、補液などに治療的なエビデンスがあるものの、新たな治療法の開発は遅れ、生存率の改善は停滞している。我々はToll like receptorシグナルをmiRNAによって制御するといった、全く新しいアプローチで治療を行った。
結果から全身投与したmiRNA発現ベクターは、主に脾臓マクロファージに取り込まれ、過剰なサイトカイン産生を抑制し、生存率の改善に寄与していた。これは今後の核酸医薬の開発にとって、投与核酸の体内動態、作用を探る上でも意義深い。また、miRNAは低分子医薬や抗体医薬と比べ安価に作成できるため、将来の治療応用にも期待が持てる。 -
MKおよび血管拡張因子EETsを介した腎・血圧調節機構の解明と新規降圧療法の開発
研究課題/研究課題番号:16K09609 2016年4月 - 2019年3月
加藤 佐和子
担当区分:研究分担者
多光子共焦点レーザー顕微鏡A1R MP (Nikon)を用いた生体深部にいたる観察を目的としたシステムにおいて、血管収縮作用をもつepoxyeicosatrienoic acids(EETs)阻害剤やアデノシン阻害剤を投与するとMidkine(MK)欠損型マウスは、血管が収縮し、血圧の上昇とともに血流量の低下や血管径の収縮が確認できた。また、血流速度は上昇していた。
一方で、交感神経系評価のためニコチンアセチルコリン受容体阻害薬をMK欠損型マウスに投与した結果、血圧が下降し、血流量の増加を示した。MKは血管拡張因子を介して腎・血圧調節を行うことが証明された。
高血圧症は腎硬化症を引き起こし、ひいては末期腎不全に至り、血液浄化療法を必要とする。現在の降圧剤は血管平滑筋に作用し、血管拡張作用を促すCa拮抗薬やRenin-angiotensin系阻害を促すACE阻害剤やARBといった薬剤が主流である。本研究では、血管拡張因子を介して血管拡張を調整する新規分子としてMidkineの血圧調整についてその有用性と根底にある機序を解明した。今後、新規降圧療法の一助となると考える。 -
アジア太平洋地域における膜性腎症の診断・治療・疫学に関する調査研究
研究課題/研究課題番号:16H05839 2016年4月 - 2019年3月
丸山 彰一
担当区分:研究代表者
配分額:17940000円 ( 直接経費:13800000円 、 間接経費:4140000円 )
膜性腎症(MN)診療の標準化を目指して、日本とアジア太平洋地域における国々の膜性腎症の診断、治療および疫学に関する実態について調査を行った。MNの診療や患者登録システムは国によって大きな隔たりがあった。一次性MN患者における抗PLA2R抗体の陽性率は、本邦は約50%と低値であることを再確認した一方で、日本人と遺伝的背景の近い中国、台湾、韓国は何れも80%と欧米と同等であった。抗THSD7A抗体の陽性率は本邦の方が諸外国よりも若干高かった。自己抗体の測定が実施できない国々では抗原の病理染色が有用であることが示された。以上、今後のMN診療の標準化と普及に向けて多くの情報を収集することができた。
膜性腎症(MN)は、成人ネフローゼ症候群の主要疾患のひとつであり、予後は必ずしも良好とは言えず、MN対策は腎臓病対策の中でも最重要課題のひとつである。日本人患者の膜性腎症は、諸外国の患者と比較して、臨床経過や治療反応性、および、自己抗体の陽性率プロファイルが異なっていることが最近あきらかになりつつあるが、これらの理由については全く解っていない。アジア太平洋地域を俯瞰した本研究の成果は、当該地域におけるMN診療の標準化と普及に資するだけでなく、MNの病態や臨床実態の解明にも大きな価値と意義を示した。 -
RCTを用いたイコサペンタ酸(EPA)による腎保護戦略の確立と作用機序の解明
2016年4月 - 2018年3月
科学研究費補助金 基盤研究(B)
小林 孝彰
担当区分:研究分担者
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腎臓可視化透明モデル動物を用いた先天性腎疾患に対するオーファンドラッグの創薬
研究課題/研究課題番号:16K15468 2016年4月 - 2018年3月
丸山 彰一
担当区分:研究代表者
配分額:3510000円 ( 直接経費:2700000円 、 間接経費:810000円 )
腎臓可視化透明ゼブラフィッシュを作出してin vivo表現型解析を基本技術とした先天性腎疾患治療薬の創薬基盤の創出を目指した。その結果、従来系統よりも丈夫で透明度の高い新規系統を作出できた。ゲノム編集による先天的ネフローゼ症候群モデルは研究期間内に作出できなかったが、リン輸送体変異体系統を用いて先天性全身石灰化モデル腎臓可視化透明ゼブラフィッシュを作出できた。稚魚を用いて化合物投与実験を行ったところ、化合物の腎毒性に応じて用量依存的な浮腫の発生、腎奇形、ネフロンの消失などを観察でき、腎臓可視化透明ゼブラフィッシュを利用した創薬基盤の実行可能性を確認できた。
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アジア太平洋地域における膜性腎症の診断・治療・疫学に関する調査研究
2016年4月 - 2017年3月
科学研究費補助金 基盤研究(B)
丸山 彰一
担当区分:研究代表者
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腎臓可視化透明モデル動物を用いた先天性腎疾患に対するオーファンドラッグの創薬
2016年4月 - 2017年3月
科学研究費補助金 挑戦的萌芽研究
丸山 彰一
担当区分:研究代表者
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卵膜由来間葉系幹細胞を用いた腎疾患治療
研究課題/研究課題番号:15K09256 2015年4月 - 2019年3月
勝野 敬之
担当区分:研究分担者
申請者らのこれまでの研究により、卵膜由来MSCの培養液の血清濃度を2%に変更した条件下でMSCの分化が確認された。しかし、血清濃度2%の低血清培養法では卵膜由来MSCの増殖能が減衰し、passage3で増殖速度が低下した。MSCの増殖促進の目的でhFGF(human fibroblast growth factor)を添加し培養液を導入すると、増殖速度の改善が得られる一方で未分化状態が維持されない問題点が明らかとなった。卵膜由来MSCでは脂肪組織由来MSCと同一の結果を出すことができなかった。低血清培養法は細胞ソースに依存する可能性が今回の研究で示唆された。
本研究は再生医療における細胞ソースとして、卵膜由来間葉系幹細胞を用いようとする点に特色がある。この際、世界に先駆け開発した低血清培養法を用いる点に独創性がある。さらに卵膜由来間葉系幹細胞を自家細胞移植だけでなく、他家細胞移植にも用いようとする点は学術的な意義がある。卵膜由来間葉系幹細胞の培養法及び治療法の確立が達成できれば、再生医療産業化の促進に期待が持たれる。 -
日本における抗PLA2R抗体関連膜性腎症の実態と病態機序の解明
研究課題/研究課題番号:15K09257 2015年4月 - 2019年3月
秋山 真一
担当区分:研究分担者
一次性膜性腎症の新しい疾患概念であるPLA2R関連膜性腎症について日本人患者における臨床実態と病態機序の解明に取り組んだ。日本人患者の臨床実態に合わせてPLA2R抗体の測定法の最適化を行った。腎生検時のPLA2R抗体測定は、PLA2R関連膜性腎症の鑑別に有用なだけでなく、予後の推定にも有用なことが示された。喫煙歴のあるPLA2R抗体陽性患者は完全寛解が遅れることが示された。腎生検時PLA2R抗体濃度が50 RU/ml以上の患者は腎予後が有意に悪くなることが示された。
一次性膜性腎症は、成人ネフローゼ症候群の主要疾患のひとつであり、本邦では予後は必ずしも良好ではなく、診療には高度な専門的技術が必要であった。本研究の成果は、PLA2R関連膜性腎症の鑑別と予後推定に極めて有用な手段とエビデンスを提供し、診療技術のアップデートを促すものである。 -
日本における抗PLA2R抗体関連膜性腎症の実態と病態機序の解明
2015年4月 - 2018年3月
科学研究費補助金 基盤研究(C)
秋山 真一
担当区分:研究分担者
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腎領域の臨床研究を改善する新規腎アウトカム指標を決定する国際共同研究
2015年4月 - 2018年3月
科学研究費補助金 基盤研究(B)
安田 宜成
担当区分:研究分担者