科研費 - 丸山 彰一
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特発性巣状分節性糸球体硬化症の腎糸球体蛋白透過性亢進因子の分子同定
研究課題/研究課題番号:24K22119 2024年6月 - 2027年3月
科学研究費助成事業 挑戦的研究(萌芽)
丸山 彰一, 秋山 真一
担当区分:研究代表者
配分額:6500000円 ( 直接経費:5000000円 、 間接経費:1500000円 )
本研究では、「特発性の巣状分節性糸球体硬化症(FSGS)」の病態理解と新規診療技術の開発に向けて、過去の知見から患者血中にその存在が確実視されている特発性FSGSの蛋白 透過性亢進因子(液性病因)の同定に挑戦する。本研究では、研究代表者らが独自開発した“蛋白尿可視化透明ゼブラフィッ シュによるネフローゼ症候群惹起分子評価系”をコア技術として、患者血液に含まれる膨大な種類の生体分子から特発性FSGSの液性病因の検索・同定を目指す。本研究は魚類を用いる点でユニークであるが、腎臓や免疫系の進化的な 種差を考慮しても非現実的なアプローチでは決して無く、むしろゲームチェンジャーになると期待できる。
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ヒトiPS細胞由来間葉系幹細胞を用いた、新規腎疾患治療法 の臨床応用を目指す研究
研究課題/研究課題番号:24K11429 2024年4月 - 2027年3月
科学研究費助成事業 基盤研究(C)
田中 章仁, 丸山 彰一, 古橋 和拡
担当区分:研究分担者
MSCは様々な疾患に対する治療効果が示されている。当研究室では、MSCが動物モデルにおいて腎炎を改善させることを示してきた。しかし、MSCの課題も浮き彫りになってきた。本課題では、iPS細胞から分化誘導したMSCを腎疾患に対して投与し、治療効果が安定して高いことを確認し、MSCの欠点を克服できていることを裏付ける。さらに治療効果を高める操作を加え、これまでのMSCよりも、腎炎に対して格段に高い治療効果を得る。さらにその優れた治療効果が大動物でも認められることを検証する。
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研究課題/研究課題番号:24K11417 2024年4月 - 2027年3月
科学研究費助成事業 基盤研究(C)
平山 明由, 丸山 彰一
担当区分:研究分担者
エクソソーム(直径50~150 nm)に代表される細胞外小胞は、血管新生、免疫抑制、遠隔転移をはじめとして多くのがんの進展に関与することが知られている。これまで、細胞外小胞内のDNA、mRNA、miRNAやタンパク質などの分子に関しては精力的に研究が行なわれてきたものの、代謝物に関してはほとんど手付かずの状態であった。
本研究の目的は、ヒトの血液及び尿中に含まれる細胞外小胞のメタボローム解析を実施することにより、細胞外小胞中に内包されている低分子プロファイルの全容を明らかにするとともに、リキッドバイオプシーに基づく新規バイオマーカーを開発することである。 -
糸球体周囲マクロファージは基底膜を貫く樹状突起によりポドサイト恒常性を維持する
研究課題/研究課題番号:22K19523 2022年6月 - 2024年3月
科学研究費助成事業 挑戦的研究(萌芽)
古橋 和拡, 丸山 彰一, 田中 章仁
担当区分:研究分担者
本研究では、通常の組織学的観察で見出せず、最新のイメージング技術である生体顕微鏡・臓器透明化を用いることで初めて観察することができたマクロファージのユニークな構造と細胞間networkに関して、その生物学的意味を解明する。独自に開発した生体顕微鏡技術・組織固定技術・組織透明化技術を融合することで、本課題の科学的問いは初めて解決することができるため、独自性の高い挑戦的な研究である。本課題は組織幹細胞niche研究に細胞形態学・細胞動態学を取り入れた新たな研究フィールドを創生し、細胞形態に関わる蛋白を治療ターゲットとした新たな治療法へと発展させ、ポドサイト再生に関わる因子の同定することを目指す。
我々は、通常の組織学的観察で見出せず、生体顕微鏡を用いることで『糸球体周囲マクロファージが糸球体の外からボウマン嚢基底膜を貫いて、まるでボウマン腔内に“橋”をかけるようにポドサイトに到達している』という現象を世界ではじめて見出した。マクロファージが形成するユニークな樹状突起の生物学的意味として、『糸球体周囲マクロファージはボウマン腔内およびポドサイトの状況を感知することで、ポドサイト前駆細胞の増殖・分化を調整し、糸球体の恒常性を維持する』という新概念の検証を行った。
本研究では、通常の組織学的観察で見出せず、最新のイメージング技術である生体顕微鏡・臓器透明化を用いることで初めて観察することができたマクロファージのユニークな構造と細胞間networkに関して、その生物学的意味を解明する。独自に開発した生体顕微鏡技術・組織固定技術・組織透明化技術を融合することで、本課題の科学的問いは初めて解決することができるため、独自性の高い挑戦的な研究である。本課題は組織幹細胞niche研究に細胞形態学・細胞動態学を取り入れた新たな研究フィールドを創生し、細胞形態に関わる蛋白を治療ターゲットとした新たな治療法へと発展させ、ポドサイト再生に関わる因子の同定へ発展させる。 -
間葉系幹細胞カラムとiPS細胞・遺伝子編集技術を融合した新規治療システム
研究課題/研究課題番号:23K24348 2022年4月 - 2025年3月
科学研究費助成事業 基盤研究(B)
古橋 和拡, 高須 正規, 平山 明由, 鈴木 洋, 丸山 彰一, 田中 章仁, 森 崇
担当区分:研究分担者
間葉系幹細胞(MSC)は、障害部位の炎症強度に応じた免疫・炎症制御が可能なことから、副作用の少ない次世代の炎症制御療法として期待されているが、循環動態が悪い際の経静脈的な細胞投与は細胞塞栓の危険がある。この問題を解決するため、我々は既に細胞を投与しない新たな治療法システムとして間葉系幹細胞中空糸膜カラム(MSCカラム)を開発し、動物急性腎障害モデルで高い治療効果を確認している。
本課題では、自身のこれまでのMSC研究と開発を進めるMSCカラムを融合することで、新たな治療システムを開発することを目的とする。 -
aHUS早期診断及び抗補体薬の適応判断に必要な補体機能検査開発
研究課題/研究課題番号:22K08349 2022年4月 - 2025年3月
科学研究費助成事業 基盤研究(C)
加藤 規利, 前田 佳哉輔, 丸山 彰一, 水野 正司, 古橋 和拡, 小杉 智規
担当区分:研究分担者
aHUSは血液中ではなく、血管内皮細胞膜上での無秩序な補体活性化が問題であり、単純な採血で評価できないところに検査開発の難しさがある。我々は、2020年より開始したaHUS全国調査研究で登録のあった症例の血漿から、細胞外小胞(Exosomes)を精製し、Exosomes上の補体関連タンパクを測定し、細胞膜上の補体活性を評価する。またex vivoでaHUS患者の血漿と血管内皮細胞株との反応系にエクリズマブを添加することにより、実際に薬剤を投与する前に、治療反応性を見極める。
我々は、非典型溶血性尿毒症症候群(aHUS)の疾患事務局を、2020年より東京大学から引き継ぎ、医療施設からの症例相談を受けるとともに、奈良県立医科大学にて開発されたヒツジ赤血球溶血試験(補体機能検査)や、抗H因子抗体(抗CFH抗体)価を測定するなどして研究、臨床の両面から知見を蓄積してきた。2020年度は62症例の臨床相談を受け、91検体の解析を行った。2021年度は65症例の臨床相談を受け、81検体の解析を行った。そして本研究を開始した2022年度は73症例の相談、85検体の解析を行った。2023年度は10月までに64症例の相談、66検体の解析を行った。
当方で53例のaHUSの診断に至り、うち補体関連遺伝子の病的バリアント保有例は26症例、病的バリアント未検出は20症例、未検査7症例であった。病的バリアント保有割合は57%(26/46)という数字は、過去の報告と同等な値で、概ね妥当な数値と考えられる。
26症例の病的バリアントの内訳は、CFH:9例、C3:12例、CD46:3例、CFI:2例(1例のC3, CD46重複例を含む)であった。世界的にはCFHの病的バリアント保有例の割合が高いが、本邦ではC3、特にC3 I1157Tバリアントの割合が高いことは、既に報告(Clin Exp Nephrol . 2018 Oct;22(5):1088-1099.)があり、同じ傾向であった。
上記の様に、疾患の概要、特に本邦における特徴が明らかになっている。我々は非典型溶血性尿毒症症候群全国調査研究とリンクして、既存のヒツジ赤血球溶血試験のさらなる解析をすすめるとともに、治療法の開発は進んでいるが早期に診断する検査法がない問題点を解決するべく、新規のaHUS診断法を開発している。
aHUSは希少疾患であり、本研究(非典型溶血性尿毒症症候群(aHUS)全国調査研究)は、現在日本で行われているaHUSの最大のコホート研究であると言える。上述のように53症例の診断に寄与してきた実績があり、本年度の症例数も例年と同じ水準~やや多めの数を記録している。aHUSのみならず他のTMA(STEC-HUS, TTP, 二次性TMA)の症例も含まれていることが、本コホート研究の強みである。つまり、aHUSの診断に寄与する検査方法を、他のTMAを引き起こす疾患と比較することができる。
血漿中のC5b-9の値は補体活性化の最終経路を反映するものであり、aHUS症例で上昇するものの、STEC-HUS及びTTP、また二次性TMAの一部でも上昇する結果となった。これは、補体第2経路以外によっても最終的には補体最終経路を活性化するため、aHUSのような補体第2経路の異常な活性化以外の疾患においても、二次的に古典経路、レクチン経路など第2経路以外の経路から補体が活性化してしまえば、C5b-9が上昇してしまうこととなる。一方でC3bに関しては、古典経路、レクチン経路からも生成される補体成分であるが、第2経路の活性化によって血清中のC3が低下することでわかるように、第2経路のみに存在する増幅回路によって、他の経路よりもC3の消費が激しく、それによりC3bの生成が多いことが示唆される。よって最終経路を測定するよりも、第2経路を観察するにはC3bにまつわるコンポーネントを測定するほうが望ましいと考えられた。引き続き症例を重ねてデータを収集し、最終年度での報告につなげたい。
aHUS疾患事務局の活動をベースに、同意の得られた検体を用いて解析を進めていく。名古屋大学医学部腎臓内科のホームページにおいて事務局の活動を報告、案内するとともに、学会等で成果を報告していく。
エクソソームを用いたaHUS診断に関しては、知財取得に務めた上でデータの蓄積をすすめ、解析を行う。
血管内皮細胞を用い、フローサイトメトリーでの解析に関しては、ヒツジ赤血球溶血試験に次ぐ補体機能検査としての可能性を持っており、症例数を増やしたうえで解析を進め、論文化につなげていく予定である。 -
間葉系幹細胞カラムとiPS細胞・遺伝子編集技術を融合した新規治療システム
研究課題/研究課題番号:22H03087 2022年4月 - 2025年3月
科学研究費助成事業 基盤研究(B)
古橋 和拡, 高須 正規, 平山 明由, 鈴木 洋, 丸山 彰一, 田中 章仁, 森 崇
担当区分:研究分担者
これまでの間葉系幹細胞(MSC)研究を通して、臨床応用時の問題点の解決と治療特性に関わる作用機序について解明を進めてきた。循環動態が悪い際の経静脈的な細胞投与は細胞塞栓の危険があり、この問題を解決するために、新たな治療装置としてMSCカラムの開発を進めている。さらに、細胞ソースの問題を解決するため、iPS細胞からMSCを作成する研究を進めている。
本課題では、iPS細胞、MSCカラム、解明した治療機序を融合した新規治療システムを開発し、将来的に遺伝編集技術・細胞治療が新たに創生する治療フィールドを見据えた基盤技術へと発展させる。 -
慢性腎臓病患者における生体内細菌叢をターゲットにした新規抗老化療法の開発
研究課題/研究課題番号:22K08328 2022年4月 - 2025年3月
科学研究費助成事業 基盤研究(C)
加藤 佐和子, 丸山 彰一, 今泉 貴広, 小杉 智規
担当区分:研究分担者
慢性腎臓病(CKD)患者の表現系は老化に見られる諸変化に酷似している。通常の維持血液透析患者(従来透析)と長時間透析患者、保存期腎不全患者は、尿毒症にさらされている強度や条件が異なる。尿毒症存在下において、どのような外的・内的環境負荷(Allostatic load)が免疫学的変調と慢性炎症をきたし、Microbiomeの変調をきたすのか、老化の指標となる遺伝子保護の不調(テロメア消耗)に関与しているか解析し、実際の心疾患、感染症、死亡率と比較することにより、腸内細菌叢の改善をターゲットとしたCKD患者の新規治療戦略の構築を目指すものである。
登録状況は順調である。NICE-GENEコホート研究では現在までに約300名の登録、 RRTRコホート研究では約200名の登録(全体で約300名登録のうち長時間透析200名)、N-KDRGでは約100名の登録が達成されている。環境因子(allostatic load)の情報収集については、患者背景・臨床情報(腎機能、炎症、栄養状態、心不全、および動脈硬化指標等)に加えて、老化の表現系であるフレイルの評価項目に基づき、体組成分析・身体機能・身体活動量・精神状態に関するデータ収集を開始した。特に、長時間透析とリンと生命予後<4.5-6.0<の3群にわけて評価したところ、有意差はないが、4.5-6.0を基準値として、低くても高くてもHazard riskが高いことがわかった。さらに、InBodyで体組成を評価し筋肉量などについても収集することとした。
今後、社会因子としての経済指標や医療リテラシーに関する指標、介護度なども収集可能か検討している。
循環白血球に取り込まれた細菌由来のDNA断片の解析については、NICE-GENEコホート研究における腸内細菌叢の変調の予備解析から、尿毒症などから惹起される酸性環境により炎症性の負担が増加することが一因で起こる腸内細菌叢の変調ではないかと推察した。 さらに、過去の報告と比較検討しこの腸内細菌叢の変調に推測される状況について、我々のコホートでの事例と合致するか検討を進める方針である。
国際共同研究施設であるカロリンスカ研究所、グラスゴー大学とは、COVID19パンデミック下、著しく交流が疎になっていたが、今後、国際学会などの機会を通じて情報交換を行い、循環白血球内のMicrobiomeの変調についてさらなる詳細な解析を行えるよう検討を継続していく。
すでに開始してるコホート研究の患者登録については順調であるものの、循環白血球に取り込まれた細菌由来のDNA断片の解析については、すでに我々が予備解析に使用した健常人サンプルが、腎臓病患者サンプルと年齢構成があまりに異なり、検体数も少数であったため、比較検討がむずかしいことがわかった。
腸内細菌叢の変調と細胞老年マーカーについて、テロメア長との検討を予定していた。しかしながら、共同研究者グラスゴー大学のProf. Paul Shielsより、我々が今まで行ってきたテロメア測定法によるテロメア長の解析よりCDKN2Aの評価のほうが、細胞老化を検討するにはSensitiveではないかとの指摘をいただき、予算やサンプルのクオリティも含めて実施可能か検討しているが、あまり進展はなかった。
NICE-GENEコホート研究、RRTRコホート研究、N-KDRG研究いずれも、患者登録、サンプル収集、臨床情報収集を継続する。慢性腎臓病の初期の患者、さらに慢性腎臓病をきたしうる危険因子を持つ患者についても検討できると、慢性腎臓病の発症、進展、末期腎不全となってからの合併症にいたるまで、患者生涯をカバーするserialな経過を追うことができる。これが可能であれば、慢性腎臓病患者の老化を解明する当研究において研究目的を解明するために有用であると考えられる。
また、循環白血球に取り込まれた細菌由来のDNA断片の解析については、細菌叢の変調は予想より多彩であった。細菌叢の変調の解釈についてすでに確立されたものが少なく、患者の表現系にどのように影響しているかについて報告するのに注意が必要であり、過去報告や共同研究機関でのデータとも比較し検討を続けていく。
海外の研究者の興味は、日本人の慢性腎臓病患者の生存を含めた治療成績が欧米に比し良好であることが、日本食に起因しているのではないかというClinical Questionに基づいており、可能であれば食事に関する(とくに日本独特の発酵食品や魚介類の摂取)について追加情報を取得できないか検討していく方針である。 -
ヒトiPS細胞由来間葉系幹細胞を用いた新規腎疾患治療法の開発
研究課題/研究課題番号:21K08253 2021年4月 - 2024年3月
科学研究費助成事業 基盤研究(C)
田中 章仁, 石本 卓嗣, 丸山 彰一, 古橋 和拡
担当区分:研究分担者
間葉系幹細胞(MSC)は様々な疾患に対する治療効果が示されている。しかし、MSCは品質のばらつきがあるため、治療効果の担保が大きな問題となっている。本課題では、iPS細胞からMSCを分化誘導し、腎炎に対する治療効果が安定して高いことを確認し、MSCの欠点を克服する。さらに治療効果を高める操作を加え、これまでのMSCよりも、腎炎に対して各段に高い治療効果を得る。最終的には、既存の治療法を凌駕する、難治性腎疾患に対する全く新しい細胞治療を確立する。
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間葉系幹細胞の微小環境での炎症制御機構に着眼した次世代型免疫・炎症制御法の創成
研究課題/研究課題番号:21H04824 2021年4月 - 2024年3月
科学研究費助成事業 基盤研究(A)
丸山 彰一, 古橋 和拡, 杉浦 悠毅, 平山 明由, 榎本 篤, 田中 章仁, 石本 卓嗣, 秋山 真一
担当区分:研究代表者
配分額:43030000円 ( 直接経費:33100000円 、 間接経費:9930000円 )
既存の免疫抑制薬は過剰免疫抑制による感染症などの副作用が問題となっている。間葉系幹細胞(MSC)は、障害部位の炎症強度に応じた自律的かつ局所での炎症制御が可能なことから、次世代の免疫制御療法として期待されている。しかし、その作用機序は十分解明されておらず、その実用化に際しては課題が多い。新概念として『障害部位に到達したMSC由来細胞外小胞が炎症細胞から放出される炎症性物質と微小空間で会合した時にのみ免疫抑制物質が生成されて局所での抗炎症作用が出現する』という着想に至った。本研究では、この新概念を検証して、効果的で安全な次世代型免疫・炎症制御療法の開発に取り組む。
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日本の一次性膜性腎症における新規責任抗原の同定と臨床実態および病態機序の解明
研究課題/研究課題番号:21K08227 2021年4月 - 2024年3月
科学研究費助成事業 基盤研究(C)
秋山 真一, 丸山 彰一
担当区分:研究分担者
成人の一次性ネフローゼ症候群の主要な原疾患である一次性膜性腎症の診療では、近年、責任抗原に対する自己抗体を指標にした新しい診療技術が開発され、血液検査で鑑別診断および免疫的病勢評価が可能になりました。しかし、日本人の一次性膜性腎症患者の45%は責任抗原が未だ不明なため、自己抗体を指標にした新しい医療技術を受けられずにいます。
そこで、本研究では、日本人一次性膜性腎症患者の未知の責任抗原を一つでも多く解明して、最終的には、日本人の一次性膜性腎症患者の大半で自己抗体を指標にした新しい診療技術が実現することを目差します。 -
特異的な間葉系幹細胞マーカーMeflinを介した腎線維化の機序解明と治療法の開発
2020年4月 - 2023年3月
科学研究費補助金 基盤研究(C)
齋藤 尚二
担当区分:研究分担者
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特異的な間葉系幹細胞マーカーMeflinを介した腎線維化の機序解明と治療法の開発
研究課題/研究課題番号:20K08589 2020年4月 - 2023年3月
齋藤 尚二
担当区分:研究分担者
1)Meflinの正常腎ならびに疾患モデルマウスにおける発現を正常マウスならびにMeflinノックアウトマウスを用いて解析する
2)Meflin陽性細胞の腎線維化に関する役割をMeflin-CreERT2;Rosa26-LSL-tdtomatoマウスを用いて経時的・空間的に系譜追跡し解明する
3)Meflin-ZsGreen-DTR-Creマウスを用いてMeflin陽性細胞を消去し、その役割を解明する
4)Meflinの発現を誘導することにより、腎線維化進展や臓器不全の予防につながる治療法を開発する -
メタボローム解析を活用した腎血漿流量とより正確な糸球体濾過量推算式の開発
研究課題/研究課題番号:20H03575 2020年4月 - 2023年3月
安田 宜成
担当区分:研究分担者
腎血行動態評価には腎血漿流量(RPF)測定が必要だが腎専門施設でも検査が出来ない。また筋肉量が標準と大きく異なる患者の糸球体濾過量(GFR)評価法は未確立である。
そこで本研究ではメタボロミクスと既存データベース・検体バイオバンクを駆使し、新規のGFR・RPFバイオマーカーを探索し、日常診療で活用できるRPF推算式を作成し、フレイルなど筋肉量が極度に低下した患者の正確なGFRを評価法を開発する。 -
蛋白尿可視化透明モデル動物による特発性巣状分節性糸球体硬化症の液性病因の解明
研究課題/研究課題番号:19K22618 2019年6月 - 2022年3月
挑戦的研究(萌芽)
丸山 彰一
担当区分:研究代表者
配分額:6500000円 ( 直接経費:5000000円 、 間接経費:1500000円 )
巣状分節性糸球体硬化症(FSGS)の患者血液に含まれるとされる蛋白尿惹起性液性病因を同定するために、FSGS患者の血清分画液および標品を、ネフローゼ症候群を可視化した透明ゼブラフィッシュに投与してWhole animal in vivo screening assayを実施して、蛋白尿を惹起する画分や成分をスクリーニングする。特発性FSGSの液性病因を同定できれば、血液検査による腎移植前適合性評価だけでなく、早期鑑別診断や治療有効性評価に向けたブレークスルーとなり、本研究の挑戦の意義は大きい。
本研究では、患者血中にその存在が確実視されている特発性巣状分節性糸球体硬化症(FSGS)の透過性因子について、研究代表者らが開発した透明ゼブラフィッシュによるネフローゼ症候群モデル実験系を用いて解明を試みている。
研究1年目の進捗は以下の通りである。まず、研究基盤の準備として実験ツールとなる透明ゼブラフィッシュとして旧来のモデルに加えて尿細管上皮、ポドサイトおよび血管内皮細胞が蛍光タンパク質で可視化された系の作出に取り組んだ。また、ネフローゼ症候群を可視化評価するために旧来の蛍光標識デキストランを血中投与する実験系に加えて蛍光タンパク質を血中に発現させる実験系の構築にも取り組んだ。これらの作出されたモデルフィッシュに既知の腎毒性物質を投与して蛋白尿の漏出や尿細管上皮の脱落が生じることを確認した。次に、FSGS患者の血中に含まれることが想定される透過性因子の探索源として、FSGS患者血清およびLDLアフェレーシスカラムに吸着した血清由来成分に着目し、採取、抽出および分画に取り組んだ。LDLアフェレーシスカラムに吸着した血清由来成分には脂質が多く含まれる一方でタンパク質やその他の成分が得られた。これらの手技確立を通じて実験基盤の構築が完了した。続いて、患者選定を行った。特発性FSGS患者の中でも病型によって病勢や予後が異なることが知られていることから、より病勢の強い病型を有する患者に注目して解析を進めることにした。
研究1年目において当初の計画に沿って実験モデル動物の準備、評価手法の確立、検体採取法の確立ができた。
LDLアフェレーシスカラム吸着物および患者血清の分画成分を実験モデル動物に投与して、ネフローゼ症候群の発生を評価項目としてFSGSの透過性因子を含む画分のスクリーニングを進める。 -
慢性腎臓病患者における腸内細菌叢の変化とその改善による新規治療戦略の開発
2019年4月 - 2022年3月
科学研究費補助金 基盤研究(C)
加藤 佐和子
担当区分:研究分担者
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致死性血栓症における補体3型受容体の機能解明
2019年4月 - 2022年3月
科学研究費補助金 基盤研究(C)
担当区分:研究分担者
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白血球・血管内皮細胞発現タンパクに着目した腎糸球体血管内皮障害特異的診断法開発
2019年4月 - 2022年3月
科学研究費補助金 基盤研究(C)
坪井 直毅
担当区分:研究分担者
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補体活性と糖鎖異常に着目した二次性血栓性微小血管症(TMA)の病態解明
2019年4月 - 2022年3月
科学研究費補助金 基盤研究(C)
勝野 敬之
担当区分:研究分担者
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間葉系幹細胞治療における現在の問題点を解決する新たな細胞治療用カラムの開発
2019年4月 - 2022年3月
科学研究費補助金 基盤研究(C)
古橋 和拡
担当区分:研究分担者
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難治性腎疾患におけるCaMK4を介した新規ポドサイト特異的治療法の開発
2019年4月 - 2022年3月
科学研究費補助金 基盤研究(C)
前田 佳哉輔
担当区分:研究分担者
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マイクロRNAと脂肪幹細胞由来エクソソームを用いた、敗血症性AKI治療開発
2019年4月 - 2022年3月
科学研究費補助金 基盤研究(C)
加藤 規利
担当区分:研究分担者
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難治性腎疾患におけるCaMK4を介した新規ポドサイト特異的治療法の開発
研究課題/研究課題番号:19K08723 2019年4月 - 2022年3月
前田 佳哉輔
担当区分:研究分担者
ポドサイトの機能不全は慢性腎臓病の進展に中心的な役割を担う。我々は、カルシウム/カルモジュリン依存性キナーゼIV(CaMK4)の活性化が、①ループス腎炎におけるポドサイト障害の原因の一つであること、②細胞骨格の制御を介したポドサイト障害と免疫複合体沈着・半月体形成に関与する知見を得た。
また、本研究では難治性腎疾患(進行性半月体形成性腎炎、治療抵抗性ネフローゼ症候群)への治療応用を見据え、①ポドサイト内のCaMK4シグナルを介した半月体形成・糸球体硬化の分子機構の解明、②CaMK4をターゲットとした半月体形成性腎炎・難治性ネフローゼ症候群のポドサイト特異的新規治療法の開発をめざす。
カルシウム/カルモヂュリン依存性キナーゼ(CaMK)シグナルに対するポドサイト特異的治療の確立のため、難治性腎疾患の一つである、難治性ネフローゼ症候群におけるCaMKシグナルの解析を行った。難治性ネフローゼ症候群の一つである巣状分節性糸球体硬化症(FSGS)においては、一部でCaMK4がポドサイト上に発現上昇が認められたが、CaMK2に関しては糸球体内での発現が見られなかった。同じカルシウム/カルモジュリン誘導性のキナーゼであるのにも関わらず、両者に違いが見られたことから、上流のCaMKキナーゼ(CaMKK)に着目した。なぜなら、CaMKKは、CaMKの中でCaMK1と4の活性化に必須のキナーゼで、CaMK2の活性化には関与しないためである。CaMKKは2種類のアイソフォームを持つが、両者を阻害する低分子化合物を使用して、その役割を検討した。FSGSモデルマウスに阻害薬を投与し、尿蛋白の推移を検討した。CaMK4阻害を行った場合と同様の結果が予想されたが、CaMKKの阻害により、蛋白尿の誘導に関しては有意な差は認められなかった。長期の経過では、野生型はある時点でピークを迎え尿蛋白は改善傾向に転じるが、阻害薬投与群においては改善の遅延がみられ、有意に障害が遷延する結果となった。CaMKKはポドサイト障害の可逆性に関与している可能性があり、今後CaMKKの2種類のアイソフォームの役割の違いも含めて、各々の遺伝子欠損マウスを使用し検証していく予定である。
CaMKファミリーの発現の違いにより上流のCaMKKの調節機構の解析を要した。当初CaMK4を活性化する役割をもつCaMKKは、同様にポドサイト障害を軽減すると想定されたが、予想に反し悪化傾向を呈した。予定していたCaMK4の機能解析のみならず、上流のCaMKKの解析も行う必要があるため、やや遅れる結果となっている。
今後は、CaMKK-CaMK4経路の解析のため、CaMKKのアイソフォーム毎の機能解析を行う。そのための各欠損マウスは取得済みである。 -
致死性血栓症における補体3型受容体の機能解明
研究課題/研究課題番号:19K07232 2019年4月 - 2022年3月
水野 智博
担当区分:研究分担者
活性化好中球が放出するヒストンにより惹起される線溶系有意の致死性血栓症は,凝固系有意の敗血症由来のものとは異なる。この致死性血栓症の発症メカニズムの解明研究は,凝固系有意の致死性血栓症治療薬とは作用機序の異なる新規治療薬開発の重要な基盤研究となる。本研究では,これまでの研究成果を踏まえ,新たに血小板凝集および組織への接着,白血球-血小板複合体に関与する補体3型受容体との関わりの重要性に着目し,Mac-1欠損およびPILRα欠損マウスへヒストンを投与して致死性血栓症モデル動物を作製し,Mac-1がヒストン誘発性致死性血栓症に関与するかどうか,を解明する。
補体3型受容体(Mac-1:CD11b/CD18)は、血小板凝集および組織への接着や白血球-血小板複合体の生成促進に関与することが知られている。我々は、ヒストン誘導性致死性血栓症モデルマウスにおいて、白血球におけるMac-1発現が亢進することを確認しているが、出血と血栓形成の双方が関与する同疾患にて、Mac-1がどのように発症へ関与するのか、詳細は不明であった。致死性血栓症におけるMac-1の関与を明らかにするため、C57BL6/J(野生型)マウスおよび同系統のMac-1欠損マウスへ細胞外ヒストンを投与し、致死性血栓症モデル動物の作製を行った。ヒストン投与後の生存期間、肺、肝・腎障害の程度,プロトロンビン時間(PT)、活性化部分トロンボプラスチン時間(APTT)を評価および測定した。Mac-1欠損マウスでは、野生型マウスに比して、ヒストン投与後の生存期間が延長し、組織障害についても、軽度であった。PT、APTTについてはMac-1欠損および野生型マウス間で差が認められなかった。上記結果を踏まえ、Leukoladherin-1(LA-1)を用い、Mac-1を一時的に活性化させることで、上記遺伝子改変マウスと比較して、ヒストンによる反応性が異なるかどうかを検討した。野生型マウスにLA-1(LA-1群)およびコントロールとしてDMSO(コントロール群)を前投与し、その後ヒストンを投与することで致死性血栓症を惹起させたところ、LA-1群およびコントロール群間でヒストン投与後の生存期間、臓器障害に差は認められなかった。
2019年度の研究実施計画は、C57BL6/J(野生型)マウスおよび同系統のMac-1欠損マウスへ細胞外ヒストンを投与し、ヒストン投与後の生存期間、肺、肝・腎障害の程度、プロトロンビン時間(PT)、活性化部分トロンボプラスチン時間(APTT)を評価および測定することであった。上記研究を完了し、次年度前半に予定していたLeukoladherin-1(LA-1)投与実験も完了することができた。以上の結果を踏まえ、当初の計画以上に進展していると考える。
Leukoladherin-1(LA-1)前投与による致死性血栓症への影響が認められなかった要因として、ヒストン自身のMac-1活性化作用が考えられる。そのため、LA-1とは異なる方法を用い、好中球の関与を検討する必要がある。次年度は抗Ly-6G抗体を用い、好中球をdepleteさせることにより、ヒストンによる致死性血栓症に与える影響を検討する。さらに、野生型およびMac-1欠損マウスの両個体から好中球を単離し、ヒストンがNETosisへ与える影響についても、検討する。 -
補体活性と糖鎖異常に着目した二次性血栓性微小血管症(TMA)の病態解明
研究課題/研究課題番号:19K08692 2019年4月 - 2022年3月
勝野 敬之
担当区分:研究分担者
血栓性微小血管症(TMA)は腎予後、生命予後ともに不良な難治性病態であるが、早期診断法や治療法は確立されていない。申請者らは腎障害モデルにおいて、補体活性化が腎障害を増悪させることを見出してきた。近年、Glycocalyxによる血管内皮の恒常性維持作用が注目されている。本研究では、「二次性TMAでは糸球体内皮細胞上のGlycocalyxの発現が低下し、それにより補体活性化が惹起され腎障害が増悪する」という仮説を検証する。本研究を通して、TMAの早期診断や治療標的の同定につながる新たな知見を見出すことを最終目標とする。
近年、血栓性微小血管症(thrombotic microangiopathy : TMA)と診断される症例は増加傾向にありその原因も多様である。
わが国のTMAの実態を調査するため、日本腎臓学会による腎生検レジストリー(J-RBR)のデータを活用した横断研究を実施した。2007年から2017年の10年間で38,495例の腎生検症例が登録されており、そのなかでTMAと診断された症例は152症例(0.39%)であった。TMAの基礎疾患としては、溶血性尿毒症症候群(HUS)/血栓性血小板減少性紫斑病(TTP) 16.4%, 膠原病 17.1% 薬剤性16.4 %が多い結果であった。このほかにも臓器移植関連、高血圧、妊娠、悪性腫瘍などTMAの原因は多彩であった。疫学的には小児から高齢者まで幅広くTMAを発症していた。小児はHUS/TTPが有意に多いが、成人期以降では二次性TMAの頻度が増加する傾向が認められた。小児・成人・高齢者の比較では、高齢者で有意に腎機能が低下しており、糖尿病や高血圧などによる潜在的な内皮障害がTMA病態を促進させて可能性が示唆された。この結果はClin Exp Nephrol. 2020 May 15. doi: 10.1007/s10157-020-01896-7にて報告した。二次性TMAのなかでも頻度の高い膠原病関連TMAに関しては、抗リン脂質抗体症候群(antiphospholipid syndrome : APS)に着目し、APSにおける腎障害を報告した (J Clin Rheumatol. 2019 Nov 8. doi: 10.1097/RHU.0000000000001173)。
現在は強皮症に関連したTMA病態である強皮症腎クリーゼの予後と治療効果に関する臨床研究を実施している。二次性TMAにおける補体活性系および制御系の関与については検体収集中であり、集まり次第C5b-9などの因子を測定していく予定である。二次性TMAの動物モデルの作成は確立しておらず進歩状況としてはやや遅れている。抗悪性腫瘍薬関連TMAに関してはレジストリーに該当する症例が予想を下回っており遅れが生じている。
全身性強皮症を中心とした膠原病に関連したTMA病態の予後改善のため、臨床予後調査と治療効果に関する臨床研究を進める。薬剤性TMAに関しては、抗悪性腫瘍薬関連TMA発症の実態調査のため症例のレジストリーを進めていく。二次性TMAの動物モデルの作成についてはさらなる検討が必要である。 -
間葉系幹細胞治療における現在の問題点を解決する新たな細胞治療用カラムの開発
研究課題/研究課題番号:19K08722 2019年4月 - 2022年3月
古橋 和拡
担当区分:研究分担者
間葉系幹細胞(MSC)を用いた臨床試験はこの数年で著しく増加している。しかし、MSCを静脈内投与された患者が肺塞栓のため死亡した事例が報告されており、さらなる安全な幹細胞療法の開発が急務である。本研究では、MSCがもつ優れた成長因子・免疫制御因子の産生能力に着目し、細胞を直接体内に投与せず、これらの液性因子を体内に投与できる治療法としてMSC治療用中空糸膜カラムを開発する。これにより細胞による肺塞栓をゼロにできる。その際に、MSCの静脈内投与と遜色ない治療効果をカラムによって得るためには、MSCの活性化が必要であり、MSCを活性化する全く新しい細胞カラムを開発する。
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慢性腎臓病患者における腸内細菌叢の変化とその改善による新規治療戦略の開発
研究課題/研究課題番号:19K08700 2019年4月 - 2022年3月
加藤 佐和子
担当区分:研究分担者
慢性腎臓病(CKD)患者の表現系は老化に見られる諸変化に酷似し、「腎不全は老化を促進する」という仮説を立案し、尿毒症による免疫学的変調と慢性炎症による老化促進を、基礎的・臨床的両面より実証し報告してきた。その中で慢性腎臓病(CKD)患者(新規維持透析患者)の循環白血球に取り込まれた細菌由来のDNA断片析から、透析導入時に比べて1年後の菌種構成が変化していることを世界で初めて見出した。今回の研究では、尿毒症下での体内の細菌叢の変調が、老化指標であるテロメア消耗やDNAメチル化促進に関与するか、腎不全特有の環境因子を含む詳細な臨床データと合わせて検討し「腎不全は老化を促進するか否か」検証する。
我々は、日本人の新規透析導入患者(CKD stage5D)のコホート研究NICE-GENE study を遂行中である。現在211例の登録、血液サンプル収集が得られている。そのうち約50症例の血液検体より、循環白血球よりDNAの抽出を行った。グラスゴー大学グラスゴーポリオミクスDr. David McGuinnessの指導の下細菌由来のDNAを測定した。合わせて、患者背景・臨床情報(腎機能、炎症、栄養状態、心不全、および動脈硬化指標等)を収集し、データベース作成を進めた。以上の結果、診療情報を合わせて予備解析を行った。
循環白血球に取り込まれた細菌由来のDNAは、透析導入時、透析一年後の比較において、細菌のthe clade level 、the order level において、菌株、多様性、割合について大きく変化が認められた。臨床情報との比較で、これらの変化に寄与した要因について解析を行ってきたが、今までのところ有意に変化をきたす因子を見出せなかった。
しかしながら、循環白血球に取り込まれた細菌の菌株、多様性、割合は、腎不全の原疾患において、透析導入時にそもそも大きく異なっていることが示された。過去の論文より糖尿病、非糖尿病で大きくことなるとが予想されたが、糖尿病の有無ではあまり変化がなかった。多発のう胞腎や腎硬化症で予想と異なる結果であった。これは、透析導入時の年齢やそれまでの感染症の既往に関与している可能性が考えられた。また、すでに、心血管合併症を経験した患者かどうかによっては、あまり変化が認められなかった。
これは、ストックホルムの透析患者、腎移植患者の予備解析とは異なる結果であった。
登録患者数が予想より伸びず、検体収集が進んでいない。血清中のTMAOの測定が日本国内では難しいことがわかり、方法を再検討している。また、さらに腎不全患者の国際比較をするにあたり、日本の新規透析患者ととスウェーデン移植患者のデータについて、クラスゴー大学より、そもそもの背景の違いが大きすぎるため直接比較は難しいのではとの意見をいただき、検討中である。
慢性腎臓病治療の向上などで、透析導入患者の高齢化がすすみ、本研究登録基準である75歳以下を満たす患者が年々減少しているため、予想より登録が進まない現状にある。また、通院透析施設から施設入所転院がふえ、患者予後などの重要な情報の収集も追い難くデータベースの構築が難しくなったのは事実である。また、そもそもの背景の違いを検討するために、同年齢の日本人コントロールサンプル(腎不全患者でない)の収集を検討している。
また、実際に感染症や心血管合併症を経験した患者のサンプルの比較検討もすすめたい。
今後は、国際比較のための現地データ回収も早期に実現したい。 -
白血球・血管内皮細胞発現タンパクに着目した腎糸球体血管内皮障害特異的診断法開発
研究課題/研究課題番号:19K08739 2019年4月 - 2022年3月
坪井 直毅
担当区分:研究分担者
急激な腎機能低下を示す好中球細胞質抗体(ANCA)関連腎炎、血栓性微小血管症(TMA)に対する組織診断は、血管障害を背景とする大量出血のリスクを伴う。本研究は、腎糸球体毛細血管障害を対象に腎生検の代替となる新規非観血的診断法開発を目的とし、尿中白血球発現タンパクCD11b、CD163および血管内皮細胞発現タンパクCD106レベルの国内複数の腎疾患患者コホート患者試料を用いたバリデーション、臨床的疾患活動性指標・腎組織所見との関連分析 (臨床観察研究)と、疾患モデル動物を用いた基礎医学研究両面から、尿中候補分子のANCA関連腎炎、TMA診断・病勢判定指標としての有用性を検討する。
『患者検体尿中CD11b、CD163、CD106の臨床的意義検討と国内外コホート比較によるバリデーション』
①腎炎患者尿中のCD11b、CD163、CD106測定:名古屋大学医学部附属病院とその関連病院(88例)、および厚生労働省難治性疾患克服研究事業(Remit-JAV-RPGN,138例)で組織診断時に収集された合計226例のANCA関連腎炎患者尿検体で、CD11b、CD163、CD106値をELISA法で測定したところ、いずれもANCA関連血管炎患者で有意な上昇を認めた。
②尿中CD11b、CD163、CD106と腎疾患病理組織学的活動性との相関評価:腎糸球体組織学的分類との関連性を検討した。その結果、CD11b、CD163の両分子は、Berden分類における半月体型に分類される患者群で有意に増加していた。また両分子はともに、尿蛋白とは正の、腎機能とは負の相関を示したが、それらはCD163でより強固であった。次に、CD11b陽性、CD163陽性の各白血球分画の糸球体での分布に注目したところ、CD163陽性白血球数は糸球体全領域に均等に観察されたのに対し、CD11b陽性白血球数は半月体内よりも糸球体の未破壊領域に多く分布していた。また尿中の両分子の値は、半月体形成率や、半月体内のCD11b陽性、CD163陽性白血球分画集積数とも、それぞれ有意に相関していた。
『糸球体腎炎・腎微小血管障害動物モデルを用いたCD11b、CD106動体解析による基礎医学的検証』
ウサギIgGで前免疫を施したC57BL/6系マウスに、ウサギ抗マウス腎糸球体基底膜血清を投与することにより、抗糸球体基底膜抗体型腎炎の動物実験モデルを樹立した。
ANCA関連腎炎患者尿検体におけるCD11b、CD163、CD106の測定、組織学的所見との関連分析は概ね終了している。現在Remit-JAV-RPGNコホートの臨床情報との関連性について多変量解析など統計学的手法を用いた解析に着手している。
動物実験については、研究代表者所属施設での抗糸球体基底膜抗体型腎炎の動物実験モデル樹立に成功した。
『患者検体尿中CD11b、CD163、CD106の臨床的意義検討と国内外コホート比較によるバリデーション』
尿中CD11b、CD163と患者の腎予後(治療後6ヶ月の寛解導入、腎機能低下)について解析を進め、それらの臨床的意義を明らかとする。尿中CD11b、CD163のANCA関連腎炎における臨床的意義に関しては、解析結果が揃い次第論文化を行う。また、希少疾患である血栓性微小血管症(Thrombotic microangiopathy: TMA)に関しても、今後研究分担施設からも検体収集を進め、上記バイオマーカーの測定を行う。
『糸球体腎炎・腎微小血管障害動物モデルを用いたCD11b、CD106動体解析による基礎医学的検証』
研究代表者所属施設で樹立した抗糸球体基底膜抗体型腎炎モデルを用い、経時的尿中CD11b、CD106動態と腎機能、組織障害との関連を検討する。腸管出血性大腸菌由来Verotoxin(Stx2)による溶血性尿毒症症候群(HUS)モデルは、Stx2の入手が可能となり次第着手する。2020年4月現在COVID-19感染拡大による非常事態宣言により、新規の動物実験が困難な状況になっているため、細胞実験への移行も検討している。 -
マイクロRNAと脂肪幹細胞由来エクソソームを用いた、敗血症性AKI治療開発
研究課題/研究課題番号:19K08676 2019年4月 - 2022年3月
加藤 規利
担当区分:研究分担者
敗血症は、全世界的にみても死亡率が高い重篤な疾患である。また新たな治療法の開発は遅れ、生存率の改善は停滞している。我々はToll like receptorシグナルをmiRNAによって制御するといった、新しいアプローチによる治療を報告してきた。一方で幹細胞由来のエクソソームには、炎症性疾患における治療効果が報告されており、今回は低血清培地型脂肪由来幹細胞のエクソソームを用いて、我々が見つけ出したmiRNAを敗血症モデルマウスに投与して、治療効果の上乗せが可能かどうか、検証を行う。
核酸医薬は、昨今開発が進む抗体医薬や細胞医薬に比して安価に安定的に生合成され、一度定めたプラットフォームを用いることによって、様々な疾患に応用可能な治療薬として注目を集めている。我々は、生体内に存在する自然のRNAi機構であるmicroRNA(miRNA)の治療的応用を目指し、過去においてPolyethylenimine (PEI)をドラッグデリバリーシステムとして用い、NF-κBを負に制御するmiR-146aを投与することで、敗血症モデルマウスの高サイトカイン血症を抑制し、生存率を高める事に成功してきた。
一方細胞治療は、一部すでに実用化も進んでおり、様々な臨床的効果が期待されているが、核を含む細胞を体内に投与する事で、拒絶や癌化といったリスクが危惧されている。そこで細胞自身を投与するのではなく、細胞の放出する細胞外小胞、とくにエクソソームに着目し、エクソソームを投与することで細胞投与と同等の効果を認めたとする報告が多く見られるようになってきている。
本研究は、当科で細胞治療研究として取り組んできた脂肪由来幹細胞(ASC)由来エクソソームを、それだけで投与するのではなく、治療効果をすでに確認しているmiRNAと組み合わせることで、治療の相乗効果を狙った新しい治療プラットホームの開発を目的としている。
動物実験の解析により、投与したmiR-146a 発現プラスミドの作用点は脾臓であることが判明している。本年度においては、先行研究で用いたmiR-146a発現プラスミドは生体応用し難いため、成熟miRNAおよび人工核酸においても同等に脾臓がターゲットとして治療効果を得られるかを中心に検証すべく研究を行った。
脾臓は二次リンパ節としては最大で、敗血症の発症において抗原提示、免疫の増幅、全身性へのサイトカイン産生の主たる臓器として役割を持っている。先行研究においてはmiR-146a発現プラスミドを用いており、発現に時間がかかるとともに生体の核内に遺伝子が導入されてしまうことになるため、一過性発現かつ即効性のある成熟miRNAを用いて、脾臓での取り込みを確認した。
まず成熟miRNAを、PEIをドラッグデリバリーシステムとして脾臓への直接注射を行い、脾臓に投与後24時間をピークに48時間まで検出可能であることを確認した。脾臓に直接投与した場合、ごく一部合流した門脈を介して肝臓においても検出されたが、腎臓、肺には影響を及ぼさなかったため、他臓器への影響は限局的であることが示唆された。また同様に先行研究で明らかになったmiR-146aの脾臓マクロファージへの取り込みに関しても、F4/80による脾臓細胞のセレクションにより証明した。
次に盲腸結紮穿孔モデルによりマウスに敗血症を起こし、同様にmiR-146aを投与した所、対照群(スクランブル配列)と比較して、Cr, BUN, AST, ALT, LDHを低下させることが可能であった。ただし、死亡率はmiR-146a投与群でむしろ悪化しており、治療により死亡を増やすが、生存した群においては治療効果を示すという結果となった。
さらによりエクソソームに近いと考えられる、リポソームをドラッグデリバリーシステムとして用いた治療実験において、現時点で治療効果は確認できていない。
マウス盲腸結紮穿孔モデルに置いて、miR-146a脾臓注射が治療効果を示す一方で死亡率を高めた理由の考察として、miR-146aが脾臓のマクロファージに取り込まれるところは確認されており、そのNF-κB抑制作用によりサイトカイン産生を抑制することから、(1)腹腔内の感染、菌血症に対する炎症の初期反応が抑制されてしまった可能性、(2)より晩期の免疫抑制によりsecondary infectionを引き起こした可能性の両面が考えられる。
そもそも先行研究において効果が見られた原因としては、敗血症晩期の過剰な免疫反応としてのサイトカインストームを抑制するところにあり、感染成立初期の特に自然免疫の反応を抑制してしまった場合は最近の増殖を抑えきれず、そのまま死に至ると考えられるし、晩期の免疫力が正常に戻った後過剰な免疫抑制を起こした際は、二次感染で死亡する。つまり投与するタイミングが非常に重要であり、我々の先行研究においては、敗血症を起こす前に事前投与していたが、miR-146a発現プラスミドであったことから、効果の発現に時間がかかり、時期としてちょうど首尾よくサイトカインストームを抑制した可能性がある。
臨床応用に関しては、事前投与は困難であることから、今後は(1)の可能性を考慮して、敗血症モデル作成直後に投与すするのではなく、数時間空けて投与することで反応を確認していく予定である。
また、投与方法として脾臓直接注射は多臓器への影響が少なくより選択的に治療対象とする脾臓マクロファージに取り込まれるが、生体に与える侵襲も高い。よって今後は静注、腹腔内投与と言った別経路による治療を検討し、条件を確定していく予定である。 -
蛋白尿可視化透明モデル動物による特発性巣状分節性糸球体硬化症の液性病因の解明
2019年4月 - 2021年3月
科学研究費補助金 研究成果公開促進費 (研究成果公開発表)
担当区分:研究代表者
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日本の一次性膜性腎症における責任抗原ごとの病態理解と新規診断法の確立
2019年4月 - 2021年
科学研究費補助金 基盤研究(C)
秋山 真一
担当区分:研究分担者
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糖尿病性腎臓病における2つのフルクトース代謝酵素の役割の解明とその治療応用
2018年4月 - 2021年3月
科学研究費補助金 基盤研究(C)
石本 卓嗣
担当区分:研究分担者
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臨床応用を指向した腎疾患病型スクリーニング法の開発
2018年4月 - 2021年3月
科学研究費補助金 基盤研究(C)
平山 明由
担当区分:研究分担者
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臨床応用を指向した腎疾患病型スクリーニング法の開発
研究課題/研究課題番号:18K08219 2018年4月 - 2021年3月
平山 明由
担当区分:研究分担者
本年度は、前年度に同定したループス腎炎のバイオマーカー候補について、液体クロマトグラフィー―質量分析計を用いた高速分析法の開発を行った。これにより、従来キャピラリー電気泳動―質量分析計を用いて30分かかっていた測定時間を約10分に短縮することが可能になった。
また、バイオマーカー候補については異なる時期に採取されたバリデーション用検体を用いて、マーカーとしての感度・特異性の検討を実施した。7つの異なるネフローゼ疾患患者尿120検体を用いてバリデーション試験を実施した結果、独立した検体群においてもループス腎炎を他の6種のネフローゼから高精度に判別できることが証明された。
また、検体の臨床情報との相関についても検討を実施した。検体のベースラインデータとの相関を検討した所、BMIと体重には弱い相関がみられたが、その他は相関が見られなかった。さらに、ループス腎炎に関しては病理型との関連も検討したが、顕著な関連は見られなかった。本マーカーは、濃度が低い方が完全寛解が遅く、腎機能悪化も多い傾向が見られ、濃度の高い方が予後が良い傾向が認められた。
さらに、ループス腎炎患者血漿中のマーカー濃度についても検討を行った。10名のループス腎炎患者の血漿中のマーカー濃度を健常者と比較した所、尿同様に患者血症中でも高い傾向が認められた。
マーカー代謝物の化学合成に少し時間を要しているが、おおむね計画通り進んでいる。
共同研究先への結果のフィードバックを速やかに行い、必要に応じて追加検体を受け取れる体制を整えていく。 -
糖尿病性腎臓病における2つのフルクトース代謝酵素の役割の解明とその治療応用
研究課題/研究課題番号:18K08238 2018年4月 - 2021年3月
石本 卓嗣
担当区分:研究分担者
糖尿病性腎臓病(diabetic kidney disease, DKD)の進展における2つのフルクトース代謝酵素ケトヘキソキナーゼAとC(KHK-A・KHK-C)の役割を解析する。
1) KHK-A KO・KHK-C KO・KHK-A/C KOマウスを用いた検討
既にKHK-A KO・KHK-A/C KOマウスは保有しており、KHK-C KOマウスの作成をCRISPR/Cas9システムを用いて作成中である。KHK-Cに特異的であるexon3cを標的とした1本のgRNAおよび2本のgRNAを用いて、マウスKHK-Cを欠損する遺伝子改変マウスを作成し、それぞれから複数のlineを取得した。Offspringsを用いて、それぞれ10ヶ所のoff targetについての解析を行い、off targetが無いことを確認できた。現在、実験を行うためのコロニーの拡大を行っている。また、平常状態でのKHKの各種splicing variantの発現系の確認を行った。
2) マウスKHK-C antisense oligo(ASO)を作成し、DKDに対する治療効果を検討する。
KHK-A・KHK-Cはexon3のsplicing variantであり、それぞれexon3a・exon3cを有することから、exon3cを標的としたマウスKHK-C antisenseの候補配列を複数決定した。KHK-Cは生体内においては腎の近位尿細管に高発現するが、不死化細胞および初代培養細胞においてはその発現が低下することから、マウスKHK-C antisenseのKHK-C発現抑制効果の確認のため、マウスKHK-C・マウスKHK-Aを強制発現するHK-2細胞株を樹立し、作成したKHK-C ASOの発現抑制効果を検討している。
CRISPR/Cas9システムを用いたKHK-Cを欠損する遺伝子改変マウスは、複数のlineが樹立できて、そのoffspringを用いたoff targetの解析も完了できた。現在、マウスコロニーを拡大中である。また、平常状態での発現系の確認を行い、KHK-Cの選択的なノックダウンを確認した。
また、マウスKHK-C・マウスKHK-Aを強制発現するHK-2細胞株の樹立、マウスKHK-Cを標的とするantisenseの候補配列も決定・合成も終了し、発現抑制効果を検討してるが、十分な発現抑制効果を得られおらず、引き続き検討中である。
1) CRISPR/Cas9システムを用いたKHK-Cを欠損する遺伝子改変マウスを用い、ストレプトゾトシンを用いたI型糖尿病モデルを作成し、KHK-C KOマウスにおけるDKDの進展抑制作用について解析する。
2) KHKーC強制発現培養細胞を用い、antisenseによるKHK-C発現抑制効果を検討し、抑制効果の高い配列を選択する。その後、安定化修飾したKHK-C antisenseを用いてin vivoにて検討する。 -
日本の一次性膜性腎症における責任抗原ごとの病態理解と新規診断法の確立
研究課題/研究課題番号:18K08239 2018年4月 - 2021年3月
秋山 真一
担当区分:研究分担者
本研究では、膜性腎症の中でも責任抗原が不明な特発性膜性腎症について未知の責任抗原の解明を目指すと共に、Phospholipase A2 receptor(PLA2R)やThrombospondin 7A(THSD7A)を含む各責任抗原に対する自己抗体を指標にした病態理解および新規診断法の開発に取り組んでいる。
研究2年目の進捗は以下の通りである。未知の責任抗原の同定では、研究1年目に開発した患者血清を用いた免疫沈降法を用いて抗原検索を継続した。また、昨年度の実験で得られた新規抗原候補となるタンパク質の同定作業にも取り組んだ。質量分析により得られた新規抗原候補群からポドサイトに発現する膜タンパク質を抽出して、各候補抗原のcDNA断片を組み込んだ発現ベクターを作成し、各種組換えタンパク質を取得した。得られた抗原タンパク質を用いて患者血清に対する結合試験を開始した。一方、既知責任抗原であるPLA2Rのエピトープ解析では、海外の先行論文にて一次性膜性腎症患者がもつ自己抗体のエピトープとして報告されているシステインリッチドメイン(CysR)、Cタイプレクチンドメイン1番(CTLD1)、Cタイプレクチンドメイン5番(CTLD5)、Cタイプレクチンドメイン7番(CTLD7)、Cタイプレクチンドメイン8番(CTLD8)に対するエピトープ分布解析に取り組んだ。各ドメインの組換えタンパク質を調製して、抗PLA2R陽性一次性膜性腎症患者の診断時血清を用いて解析を実施した。その結果、日本人患者ではエピトープ分布と病勢・予後との間に海外症例で報告されたような明瞭な相関は認められず、日本人患者では診断時の抗PLA2R抗体濃度の方がより予後との相関が強いことが示された。
未知抗原の同定では候補抗原の発現と患者自己抗体に対する結合性確認を繰り返す作業に移行できている。自己抗体濃度やエピトープ分布による病勢・予後解析では計画通りに推進できてデータの蓄積が進んでいる。
順調に進展しているため今後も当初の研究計画に沿って進める。具体的には、未知抗原同定とPLA2R関連膜性腎症患者およびTHSD7A関連膜性腎症患者の血清を用いた自己抗体濃度およびエピトープ分布による病勢・予後診断法の検討を進める。 -
間葉系幹細胞特異的マーカーを利用した糸球体腎炎の病態解明と新規細胞治療法の開発
2017年4月 - 2020年3月
科学研究費補助金 基盤研究(B)
担当区分:研究代表者
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間葉系幹細胞に着目した腎間質線維化の機序解明と新規治療法の開発
2017年4月 - 2020年3月
科学研究費補助金 基盤研究(C)
齋藤 尚二
担当区分:研究分担者
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間葉系幹細胞に着目した腎間質線維化の機序解明と新規治療法の開発
研究課題/研究課題番号:17K09696 2017年4月 - 2020年3月
齋藤 尚二
担当区分:研究分担者
腎線維化に深く関与する細胞の一つとして間葉系幹細胞(Mesenchymal stem cell; 以下MSC)があるが、私達は最近MSC特異的マーカーMeflinを同定した。本研究ではMeflinと腎線維化の関係に着目し、①腎線維化におけるMeflinの発現部位の確認、②腎線維化におけるMeflinの細胞系譜解析を検証した。
正常腎や腎炎をおこした病気腎におけるMeflinの発現量と局在を検討した。正常腎でもMeflinの発現は間質に見られるが、炎症をおこした後には間質の線維化部位にもMeflinの発現が上昇していることを確認した。更に間質線維化におけるMeflin陽性細胞の挙動を観察した。
MSCは近年、細胞治療や再生医療の分野で注目される細胞である。MSCは炎症集積性を有する細胞であり、さらには筋線維芽細胞のソースであることから、線維化疾患の理解においてMSCの理解は必須である。Meflinは私達が知る限り未分化MSCの最も特異的なマーカーであり、MSCの研究において今後非常に有用なマーカーとなると推察される。
Meflinの機能解析を基軸にして、腎線維化の機序解明をする研究である。線維化は慢性腎臓病のみならず、心不全、肝硬変、肺線維症、癌と多様な疾患の病態理解に必須であることから、その医学への貢献は高く評価されるものと期待している。 -
間葉系幹細胞特異的マーカーを利用した糸球体腎炎の病態解明と新規細胞治療法の開発
研究課題/研究課題番号:17H04186 2017年4月 - 2020年3月
丸山 彰一
担当区分:研究代表者
配分額:16900000円 ( 直接経費:13000000円 、 間接経費:3900000円 )
私たちはMesenchymal stem cell;MSCを未分化な状態に保つ働きがある分子Meflinに着目し、MeflinがMSCに特異的に発現することを見出した。本課題ではMeflinに着目し糸球体腎炎発症時のMSCの病態を解明し新規治療開発につなげることを目的とした。
正常腎や腎炎をおこした病気腎におけるMeflinの発現量と局在を検討した。正常腎でもMeflinの発現は間質や糸球体門部に見られるが、炎症をおこした後は糸球体周囲にもMeflinの発現が上昇していることを確認した。
またMeflinレポーターマウスを用いて糸球体腎炎の発症過程におけるMeflin陽性細胞の挙動を観察した。
本研究は特異的マーカー分子を用いてMSCの体内動態を解明する点に学術的な意義があると考える。また、未分化状態を保つはたらきがある分子Meflinに着目して検討を進める点に独創性もある。本研究では糸球体腎炎における各種MSCの動態および作用について検討するが、将来的には他の臓器障害にも一般化できる可能性が高い。
本研究で得られたMeflinの糸球体腎炎発症時の挙動は非常にユニークであり、今後の腎炎発症メカニズムの解明のみならず、腎炎治療ひいては炎症性疾患全般における治療戦略の足掛かりとなる可能性がある。 -
ループス腎炎の炎症特異的診断バイオマーカー開発とその実用化に関する国際調査研究
研究課題/研究課題番号:17H04667 2017年4月 - 2020年3月
坪井 直毅
担当区分:研究分担者
糸球体腎炎の組織診断に必要な腎生検は、検査後の出血リスクや入院安静を要するため、患者負担の大きい検査です。我々は、糸球体腎炎では白血球の表面分子が糸球体から尿中に漏れるのではと考え、本邦、海外で収集された腎臓病患者の生体試料を用いて検討しました。その結果、CD11bと呼ばれる接着分子の1構成成分をもつ白血球が、全身性ループスエリテマトーデスに合併する糸球体腎炎や血管炎患者の糸球体で増加すること、またCD11bは尿中でも上昇することを見出しました。また他の白血球由来分子2種(CD163、CD16b)との比較により、尿中CD11bが活動性ループス腎炎に与える影響が最も高いことが明らかとなりました。
本研究成果から、尿中CD11bはループス腎炎、血管炎関連腎炎の診断法としてのみならず、経過中の治療効果判定や再発予測のための検査法として有用だと示唆されました。また、本国での腎疾患の治療現場のみならず、不充分な医療環境から患者が正確に組織診断されることなく末期の腎不全に陥るような発展途上国においても、本法は外来の尿検査で行える負担の低い検査法として期待できます。 -
CD147による細胞内輸送・代謝機構の解明と糖鎖修飾調整を介した新規治療法の開発
研究課題/研究課題番号:17K09695 2017年4月 - 2020年3月
小杉 智規
担当区分:研究分担者
本研究は肥満症に伴うCKD・脂肪性肝疾患のより詳細な機序解明を目的として、野生型およびCD147/Basigin遺伝子欠損(BSGKO)マウスに高脂肪負荷を与え、細胞内エネルギー代謝機構におけるBSGの役割を検証した。BSGKOマウスの腎臓において、尿細管の空胞変性とリポフスチン様物質の蓄積は著明に抑制されていた。この結果は細胞内への乳酸・ピルビン酸取り込みがBSG欠損により抑制され、TCA回路における中間代謝産物の減少と脂肪酸ベータ酸化を促進し、ケトン再生経路の亢進を示したことによると考えられた。一連の過程におけるBSGタンパクの増加はオートファジー障害の関与が示唆された。
近年、乳酸やピルビン酸の代謝やケトン体合成経路に関する研究は脳神経細胞や心遅筋線維のエネルギー源としての研究から内因性代謝物の細胞内蓄積・臓器障害に至るまで多岐におよぶ。BSGもまた、乳酸やピルビン酸、ケトン体のミトコンドリア取り込みに関与しエネルギー恒常性の維持に寄与するLactate Shuttle理論(未検証)が提唱されている。そのため、糖尿病による腎臓・肝臓障害に対して、細胞内のエネルギー恒常性の変化を俯瞰することは新たな治療戦略の構築となり、BSGを治療標的とする事はエネルギー恒常性を制御し、現在医療経済上負担となっている多彩な糖尿病関連疾患の抑止につながる。 -
血管内皮障害を呈する腎疾患におけるSulf2の機能解析と新たな治療戦略の探求
2017年4月 - 2019年3月
科学研究費補助金 基盤研究(C)
増田 智広
担当区分:研究分担者
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血管内皮障害を呈する腎疾患におけるSulf2の機能解析と新たな治療戦略の探求
研究課題/研究課題番号:17K09694 2017年4月 - 2019年3月
増田 智広
担当区分:研究分担者
細胞外スルファターゼSulf2は、分子量約130kDaの分泌型酵素で細胞外での膜タンパクに付着している糖鎖の脱硫酸化を担いWnt, BMP, GDNF, FGFというヘパリン結合性因子のシグナル伝達を制御する物質である。
腎臓領域ではSulf1およびSulf2が細胞外基質蓄積を制御し糖尿病性腎症悪化に寄与するとの既報がある。また、ヘパラン硫酸-S-ドメインの蓄積は原線維形成を促進し、腎臓での細胞毒性を促進するという知見が加わった。上記よりSulf2Tgは腎保護に寄与すると仮説を立て私はヒトSulf2全身強制発現マウス(HSulf2Tg)と血管内皮細胞特異的Sulf2強発現 (Tie2-Cre/Sulf2)を用いて、腎機能にどのように関与するか機序解明を目指した。
初年度の計画としてはHSulf2Tgの腎障害惹起時に表現型の確認。腎障害を惹起していない野生型とHSulf2Tgを比較し双方ともに腎機能が正常であった。また、腎障害モデルとして交付申請書に記載した抗基底膜抗体により直接的に糸球体内皮細胞を障害する加速型馬杉腎炎モデルに加えて、アドリアマイシン腎症モデル、糖尿病モデルを作成。いずれのモデルにおいても、HSulf2Tgの方が 尿素窒素・クレアチニン・尿タンパクが低値であった。しかし、Tie2-Cre/Sulf2は野生型と比して尿素窒素・クレアチニン・尿タンパクのいずれも差異は認めなかった。 -
CD147による細胞内輸送・代謝機構の解明と糖鎖修飾調整を介した新規治療法の開発
2017年3月 - 2020年3月
科学研究費補助金 基盤研究(C)
小杉 智規
担当区分:研究分担者
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白血球接着因子とその調節分子の糸球体腎炎における機能解析と細胞移入治療への応用
2016年4月 - 2019年3月
科学研究費補助金 基盤研究(C)
坪井 直毅
担当区分:研究分担者
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ExosomesとマイクロRNAを用いた、安全性の高いオーダーメイド治療の開発
2016年4月 - 2019年3月
科学研究費補助金 基盤研究(C)
加藤 規利
担当区分:研究分担者
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移植腎グラフトの長期生着をめざした慢性拒絶反応に対する予防・先制医療の導入
研究課題/研究課題番号:16H05465 2016年4月 - 2019年3月
小林 孝彰
担当区分:研究分担者
腎移植後の長期生着を妨げる要因として、ドナーHLAに対する抗体(DSA)産生による慢性抗体関連型拒絶反応がある。発症すれば難治性であり移植腎機能は廃絶する。DSAの産生を予防すること(予防医療)、早期に診断し対応すること(先制医療)が重要である。本研究では、免疫抑制療法の個別化(最適化)に、T細胞(CD4, CD8), B細胞をターゲットとした薬力学解析、HLA epitope解析が有用であり、血液中のメッセンジャー、マイクロRNA,グラフト由来のDNAを検出することで早期診断が可能となること、シグナル伝達解析により移植腎グラフトの傷害抵抗性を薬剤などで獲得する可能性があることを見出した。
国民成人の8人に1人が慢性腎臓病といわれ、年間4万人以上が末期腎不全となっている。末期腎不全の治療として世界では、腎移植が最良の治療とされているが、わが国ではドナー不足のため腎代替療法を必要とする患者の90%以上が血液透析を選択している。患者の生命予後、QOLそして医療経済を考えれば、透析医療から移植医療へのシフトが不可欠である。本研究では、慢性拒絶反応を防止するための予防、先制治療の可能性が示され、移植医療の課題となっている長期成績の改善につながる有意義な所見が得られた。 -
白血球接着因子とその調節分子の糸球体腎炎における機能解析と細胞移入治療への応用
研究課題/研究課題番号:16K09611 2016年4月 - 2019年3月
坪井 直毅
担当区分:研究分担者
【目的】白血球発現受容体PILRαは、急性炎症反応条件下においてβ2インテグリン活性化を負に制御する。本研究は抗体型腎糸球体障害におけるPILRαの役割解明を目的とした。【結果】PILRα-/-マウスは抗GBM抗体型腎炎において野生型マウスに比し重篤な糸球体障害を示した。またPILRα-/-でみられた糸球体好中球増加は前免疫条件下でのみ観察された。PILRα-/-好中球は免疫複合体癒着が有意に増強していた。【結論】PILRαは接着因子Mac-1活性化を阻害することで、腎障害を導く病原抗体依存性の好中球導入を負に制御する。
本研究から白血球発現分子PILRαの接着因子Mac-1制御を介する抗体型糸球体腎炎抑制効果が明らかとなった。またPILRαによる接着因子活性化抑制機能は炎症時にのみ発揮された。したがってPILRαの活性化は、抗体型糸球体腎炎のみならず、関節リウマチ、全身性エリテマトーデスなどの炎症性自己免疫疾患に対する有望な治療ターゲットとして考えられる。 -
ExosomesとマイクロRNAを用いた、安全性の高いオーダーメイド治療の開発
研究課題/研究課題番号:16K09610 2016年4月 - 2019年3月
加藤 規利
担当区分:研究分担者
我々は敗血症性多臓器障害に関し、miRNA補充治療の病態生理に対する役割を示した。in vitroにおいて炎症性サイトカインを抑制しうるmiRNAの評価を行い、miR-146aが最も効率よくサイトカイン分泌を抑制しうることを見つけた。盲腸結紮穿孔にて敗血症動物モデルを作成し、PEIをDDSとしてmiR-146a発現プラスミドを投与した所、血中サイトカインレベル、臓器障害、生存率の改善を確認した。投与したプラスミドは主に脾臓に分布し、NF-kBの活性化抑制が見られた。実験結果より、miR-146aを脾臓マクロファージで発現させることにより、過剰な全身炎症反応と臓器障害を抑制できると考えられた。
敗血症は全死亡率が高い重篤な疾患であるが、抗菌治療や、補液などに治療的なエビデンスがあるものの、新たな治療法の開発は遅れ、生存率の改善は停滞している。我々はToll like receptorシグナルをmiRNAによって制御するといった、全く新しいアプローチで治療を行った。
結果から全身投与したmiRNA発現ベクターは、主に脾臓マクロファージに取り込まれ、過剰なサイトカイン産生を抑制し、生存率の改善に寄与していた。これは今後の核酸医薬の開発にとって、投与核酸の体内動態、作用を探る上でも意義深い。また、miRNAは低分子医薬や抗体医薬と比べ安価に作成できるため、将来の治療応用にも期待が持てる。 -
MKおよび血管拡張因子EETsを介した腎・血圧調節機構の解明と新規降圧療法の開発
研究課題/研究課題番号:16K09609 2016年4月 - 2019年3月
加藤 佐和子
担当区分:研究分担者
多光子共焦点レーザー顕微鏡A1R MP (Nikon)を用いた生体深部にいたる観察を目的としたシステムにおいて、血管収縮作用をもつepoxyeicosatrienoic acids(EETs)阻害剤やアデノシン阻害剤を投与するとMidkine(MK)欠損型マウスは、血管が収縮し、血圧の上昇とともに血流量の低下や血管径の収縮が確認できた。また、血流速度は上昇していた。
一方で、交感神経系評価のためニコチンアセチルコリン受容体阻害薬をMK欠損型マウスに投与した結果、血圧が下降し、血流量の増加を示した。MKは血管拡張因子を介して腎・血圧調節を行うことが証明された。
高血圧症は腎硬化症を引き起こし、ひいては末期腎不全に至り、血液浄化療法を必要とする。現在の降圧剤は血管平滑筋に作用し、血管拡張作用を促すCa拮抗薬やRenin-angiotensin系阻害を促すACE阻害剤やARBといった薬剤が主流である。本研究では、血管拡張因子を介して血管拡張を調整する新規分子としてMidkineの血圧調整についてその有用性と根底にある機序を解明した。今後、新規降圧療法の一助となると考える。 -
アジア太平洋地域における膜性腎症の診断・治療・疫学に関する調査研究
研究課題/研究課題番号:16H05839 2016年4月 - 2019年3月
丸山 彰一
担当区分:研究代表者
配分額:17940000円 ( 直接経費:13800000円 、 間接経費:4140000円 )
膜性腎症(MN)診療の標準化を目指して、日本とアジア太平洋地域における国々の膜性腎症の診断、治療および疫学に関する実態について調査を行った。MNの診療や患者登録システムは国によって大きな隔たりがあった。一次性MN患者における抗PLA2R抗体の陽性率は、本邦は約50%と低値であることを再確認した一方で、日本人と遺伝的背景の近い中国、台湾、韓国は何れも80%と欧米と同等であった。抗THSD7A抗体の陽性率は本邦の方が諸外国よりも若干高かった。自己抗体の測定が実施できない国々では抗原の病理染色が有用であることが示された。以上、今後のMN診療の標準化と普及に向けて多くの情報を収集することができた。
膜性腎症(MN)は、成人ネフローゼ症候群の主要疾患のひとつであり、予後は必ずしも良好とは言えず、MN対策は腎臓病対策の中でも最重要課題のひとつである。日本人患者の膜性腎症は、諸外国の患者と比較して、臨床経過や治療反応性、および、自己抗体の陽性率プロファイルが異なっていることが最近あきらかになりつつあるが、これらの理由については全く解っていない。アジア太平洋地域を俯瞰した本研究の成果は、当該地域におけるMN診療の標準化と普及に資するだけでなく、MNの病態や臨床実態の解明にも大きな価値と意義を示した。 -
RCTを用いたイコサペンタ酸(EPA)による腎保護戦略の確立と作用機序の解明
2016年4月 - 2018年3月
科学研究費補助金 基盤研究(B)
小林 孝彰
担当区分:研究分担者
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腎臓可視化透明モデル動物を用いた先天性腎疾患に対するオーファンドラッグの創薬
研究課題/研究課題番号:16K15468 2016年4月 - 2018年3月
丸山 彰一
担当区分:研究代表者
配分額:3510000円 ( 直接経費:2700000円 、 間接経費:810000円 )
腎臓可視化透明ゼブラフィッシュを作出してin vivo表現型解析を基本技術とした先天性腎疾患治療薬の創薬基盤の創出を目指した。その結果、従来系統よりも丈夫で透明度の高い新規系統を作出できた。ゲノム編集による先天的ネフローゼ症候群モデルは研究期間内に作出できなかったが、リン輸送体変異体系統を用いて先天性全身石灰化モデル腎臓可視化透明ゼブラフィッシュを作出できた。稚魚を用いて化合物投与実験を行ったところ、化合物の腎毒性に応じて用量依存的な浮腫の発生、腎奇形、ネフロンの消失などを観察でき、腎臓可視化透明ゼブラフィッシュを利用した創薬基盤の実行可能性を確認できた。
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アジア太平洋地域における膜性腎症の診断・治療・疫学に関する調査研究
2016年4月 - 2017年3月
科学研究費補助金 基盤研究(B)
丸山 彰一
担当区分:研究代表者
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腎臓可視化透明モデル動物を用いた先天性腎疾患に対するオーファンドラッグの創薬
2016年4月 - 2017年3月
科学研究費補助金 挑戦的萌芽研究
丸山 彰一
担当区分:研究代表者
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卵膜由来間葉系幹細胞を用いた腎疾患治療
研究課題/研究課題番号:15K09256 2015年4月 - 2019年3月
勝野 敬之
担当区分:研究分担者
申請者らのこれまでの研究により、卵膜由来MSCの培養液の血清濃度を2%に変更した条件下でMSCの分化が確認された。しかし、血清濃度2%の低血清培養法では卵膜由来MSCの増殖能が減衰し、passage3で増殖速度が低下した。MSCの増殖促進の目的でhFGF(human fibroblast growth factor)を添加し培養液を導入すると、増殖速度の改善が得られる一方で未分化状態が維持されない問題点が明らかとなった。卵膜由来MSCでは脂肪組織由来MSCと同一の結果を出すことができなかった。低血清培養法は細胞ソースに依存する可能性が今回の研究で示唆された。
本研究は再生医療における細胞ソースとして、卵膜由来間葉系幹細胞を用いようとする点に特色がある。この際、世界に先駆け開発した低血清培養法を用いる点に独創性がある。さらに卵膜由来間葉系幹細胞を自家細胞移植だけでなく、他家細胞移植にも用いようとする点は学術的な意義がある。卵膜由来間葉系幹細胞の培養法及び治療法の確立が達成できれば、再生医療産業化の促進に期待が持たれる。 -
日本における抗PLA2R抗体関連膜性腎症の実態と病態機序の解明
研究課題/研究課題番号:15K09257 2015年4月 - 2019年3月
秋山 真一
担当区分:研究分担者
一次性膜性腎症の新しい疾患概念であるPLA2R関連膜性腎症について日本人患者における臨床実態と病態機序の解明に取り組んだ。日本人患者の臨床実態に合わせてPLA2R抗体の測定法の最適化を行った。腎生検時のPLA2R抗体測定は、PLA2R関連膜性腎症の鑑別に有用なだけでなく、予後の推定にも有用なことが示された。喫煙歴のあるPLA2R抗体陽性患者は完全寛解が遅れることが示された。腎生検時PLA2R抗体濃度が50 RU/ml以上の患者は腎予後が有意に悪くなることが示された。
一次性膜性腎症は、成人ネフローゼ症候群の主要疾患のひとつであり、本邦では予後は必ずしも良好ではなく、診療には高度な専門的技術が必要であった。本研究の成果は、PLA2R関連膜性腎症の鑑別と予後推定に極めて有用な手段とエビデンスを提供し、診療技術のアップデートを促すものである。 -
日本における抗PLA2R抗体関連膜性腎症の実態と病態機序の解明
2015年4月 - 2018年3月
科学研究費補助金 基盤研究(C)
秋山 真一
担当区分:研究分担者
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腎領域の臨床研究を改善する新規腎アウトカム指標を決定する国際共同研究
2015年4月 - 2018年3月
科学研究費補助金 基盤研究(B)
安田 宜成
担当区分:研究分担者
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卵膜由来間葉系幹細胞を用いた腎疾患治療
2015年4月 - 2018年3月
科学研究費補助金 基盤研究(C)
勝野 敬之
担当区分:研究分担者
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慢性腎臓病・高血圧におけるフルクトース代謝の役割と分子機構の解明
2015年4月 - 2018年3月
科学研究費補助金 基盤研究(C)
石本 卓嗣
担当区分:研究分担者
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腎領域の臨床研究を促進する新規腎アウトカム指標を決定する国際共同研究
研究課題/研究課題番号:15H05291 2015年4月 - 2018年3月
安田 宜成
担当区分:研究分担者
アジア各国との国際共同研究体制を構築した。アジア人に適した腎機能評価法を確立した。日本人一般住民ととCKD患者コホートにおいて30%GFR低下が腎アウトカム指標となることを検証した。IgA腎症患者コホートでは血清Cr1.5倍化を腎アウトカムとし、治療法の選択や病理診断と腎予後の関連を明らかにした。アジア各国に腎アウトカム指標を調査し、GFR低下速度が腎アウトカム指標となることを示した。
アジア人種に適した腎機能評価法に基づく腎代替アウトカム指標を用いることで、腎領域における臨床研究が推進できると期待される。本研究を通じたアジア各国との国際共同体制は、日本を中心とした腎領域国際共同研究の基盤となる。 -
慢性腎臓病・高血圧におけるフルクトース代謝の役割と分子機構の解明
研究課題/研究課題番号:15K09255 2015年4月 - 2018年3月
石本 卓嗣
担当区分:研究分担者
本研究の目的は、フルクトース代謝酵素ケトヘキソキナーゼ(KHK)によるフルクトース代謝と食塩感受性高血圧との関連を解明、およびフルクトースの長期・多量摂取による高血圧・慢性腎臓病の発症・進展機構を解明することである。本研究において、フルクトースと食塩の同時摂取は血圧を上昇させるが、KHK欠損マウスではその上昇が抑制されること、フルクトース代謝はKHK依存的に腎近位尿細管でのNHE3活性の亢進し、腎臓でのナトリウム再吸収を増加させることを見出した。フルクトース代謝はKHK依存的に腎近位尿細管でのNHE3活性の亢進し、ナトリウム再吸収を増加させる事で血圧を上昇することが示唆された。
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CD147による腎エネルギー代謝機構の解明と臓器相関に対する治療法の探究
2014年3月 - 2017年3月
科学研究費補助金 基盤研究(C)
小杉 智規
担当区分:研究分担者
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慢性腎臓病患者におけるテロメア消耗と環境因子の国際比較
2014年3月 - 2015年3月
科学研究費補助金 基盤研究(B)
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脂肪由来幹細胞の免疫抑制作用の解明と高機能化
2013年4月 - 2016年4月
科学研究費補助金 基盤研究(C)
丸山 彰一
担当区分:研究代表者
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アジア太平洋地域における膜性腎症の実態調査研究
2013年4月 - 2016年4月
科学研究費補助金 基盤研究(B)
担当区分:研究代表者
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進行性腎障害における免疫調整性マクロファージの機能解析と細胞移入治療効果の検討
2013年4月 - 2016年3月
科学研究費補助金 基盤研究(C)
坪井 直毅
担当区分:研究分担者
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腎移植における慢性抗体関連型拒絶反応制御のための総合的戦略
2013年4月 - 2016年3月
科学研究費補助金 基盤研究(B)
小林 孝彰
担当区分:研究分担者
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メタボローム解析を用いた腎疾患における新規診断法の開発
2013年4月 - 2016年3月
科学研究費補助金 特別推進研究
尾崎 武徳
担当区分:研究分担者
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慢性腎臓病患者における慢性炎症惹起の解明と制御性T細胞を用いた新規治療戦略
2013年4月 - 2016年3月
科学研究費補助金 基盤研究(C)
加藤 佐和子
担当区分:研究分担者
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ミッドカインによる内皮細胞由来の血管作動因子を介した血圧調整のメカニズムの解明
2013年4月 - 2015年3月
科学研究費補助金 基盤研究(B)
松尾 清一
担当区分:研究分担者
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アジア系人種における糖尿病性腎症の予後調査と予後規定因子の国際比較研究
2012年9月 - 2014年3月
科学研究費補助金 基盤研究(B)
和田 隆志
担当区分:研究分担者
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プラズマ医療科学の臨床応用論的学術基盤の構築と体系化
2012年4月 - 2017年3月
科学研究費補助金
吉川 史隆
担当区分:研究分担者
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腎移植時合併症の新規「早期診断・鑑別診断」バイオマーカーの開発
2012年4月 - 2015年3月
科学研究費補助金 基盤研究(C)
湯澤 由紀夫
担当区分:研究分担者
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免疫学的劇症肝炎モデルマウスにおける新たな細胞治療の基礎的検討
2012年4月 - 2015年3月
科学研究費補助金 基盤研究(C)
石上 雅敏
担当区分:研究分担者
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アジア腎生検レジストリーの創設と最適な腎疾患治療を目指すアジア腎疾患コホート研究
2012年4月 - 2015年3月
科学研究費補助金 基盤研究(B)
安田 宜成
担当区分:研究分担者
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慢性腎不全の生命予後を規定する遺伝子情報の国際比較調査研究
2011年4月 - 2014年3月
科学研究費補助金 基盤研究(B)
担当区分:研究分担者
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慢性腎臓病におけるCD147の機能解析と新たなCKD治療戦略の確立
2011年4月 - 2014年3月
科学研究費補助金 基盤研究(C)
小杉 智規
担当区分:研究分担者
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新規脂肪由来間葉系幹細胞における免疫制御分子機構の解明
2011年4月 - 2013年3月
科学研究費補助金
松尾 清一
担当区分:研究分担者
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脂肪由来間葉系幹細胞を用いた免疫抑制療法の開発
2010年4月 - 2013年3月
科学研究費補助金 基盤研究(C)
尾崎 武徳
担当区分:研究分担者
-
患者血清を用いた免疫複合体疾患動物実験モデルの樹立
2010年4月 - 2013年3月
科学研究費補助金 基盤研究(C)
坪井 直毅
担当区分:研究分担者
-
新たな疾患概念「腎障害におけるRASを介した腎・肺連関」の確立
2010年4月 - 2013年3月
科学研究費補助金 基盤研究(C)
佐藤 和一
担当区分:研究分担者
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脂肪由来細胞を用いた腎疾患治療の開発 ―再生促進作用と免疫抑制作用の融合―
2009年4月 - 2012年3月
科学研究費補助金 基盤研究(C)
丸山 彰一
担当区分:研究代表者
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拒絶反応と免疫順応・寛容に関与する抗原、抗体、補体、炎症、凝固のダイナミズム解析
2008年4月 - 2011年3月
科学研究費補助金 基盤研究(B)
小林 孝彰
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脂肪細胞を用いた腎再生医療の新展開
2007年4月 - 2009年3月
科学研究費補助金 基盤研究(C)
丸山 彰一
担当区分:研究代表者
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尿細管間質障害の新たなバイオマーカー及び治療標的としてのミッドカインの基礎的研究
2006年4月 - 2008年3月
科学研究費補助金 基盤研究(B)
松尾清一
担当区分:研究分担者
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ABO血液型バリア克服のためのグラフト脱抗原化と免疫順応誘導
2006年4月 - 2007年3月
科学研究費補助金 基盤研究(C)
小林 孝彰
担当区分:研究分担者
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腎臓の発生と再生における新規遺伝子GZF1の役割における研究
2004年4月 - 2006年3月
科学研究費補助金
松尾清一
担当区分:研究分担者