科研費 - 塩川 和夫
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磁気インピーダンスセンサを用いた超小型・広帯域磁力計システムの開発
2007年
科学研究費補助金 萌芽研究,課題番号:19654072
塩川 和夫
担当区分:研究代表者
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シベリア域から日本におけるジオスペース環境変動の衛星-地上共同観測
研究課題/研究課題番号:18403011 2006年 - 2009年
塩川 和夫
担当区分:研究代表者
配分額:16840000円 ( 直接経費:14500000円 、 間接経費:2340000円 )
ロシア極東域のパラツンカ観測点、マガダン観測点に高感度全天カメラ・誘導磁力計を設置、日本に設置した高感度全天カメラ、誘導磁力計、北海道のSuperDARNレーダーを組み合わせて、極東シベリア域から日本にかけての超高層大気の観測網を構築した。これらのデータと、上空を飛翔する人工衛星データを組み合わせて、低緯度オーロラを引き起こす特殊な電子降り込みの特性や、サブオーロラ帯から中緯度における電離圏の擾乱の特性を明らかにした。
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新観測技術を用いた熱圏下部大気の3次元空間構造の研究
研究課題/研究課題番号:18340152 2006年 - 2008年
中村 卓司
担当区分:連携研究者
高度10km 以下の対流圏から高度数百kmの超高層大気には鉛直に伝搬する大気波動を通じて強いカップリングがあることがわかってきたがその水平構造は謎が多い.本研究では、高性能化した大型大気レーダー(MU レーダー)、高度に安定化したレーザーを用いるナトリウム温度ライダーを稼働させ、さらに種々の大気光観測装置を組み合わせて、中層大気と超高層大気の境界である下部熱圏領域の水平スケール1000km以下の力学場を3次元構造として捉え、種々の大気波動の影響を議論した.
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環太平洋ネットワーク観測による宙空領域へのエネルギー・物質流入過程の研究
研究課題/研究課題番号:18253005 2006年 - 2008年
湯元 清文
担当区分:連携研究者
既存の環太平洋地磁気ネットワーク(CPMN)に新たなリアルタイムデータ収集システム(MAGDAS)、電離層電場観測レーダ、宇宙線計等を有機的に組み合わせた、全球的準リアルタイム環太平洋ネットワーク観測網の完成とそれを用いた「宇宙災害予測」に向けた海外学術調査を実施した。この全球的ネットワーク観測から、太陽活動や太陽風変動に対する地球磁気圏・電離圏の電磁プラズマ環境の長周期変動から過渡的応答に関する成果を得ることができた。
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カナダ北極域におけるオーロラ・超高層大気の高感度光学観測
研究課題/研究課題番号:16403007 2004年 - 2006年
小川 忠彦
担当区分:研究分担者
本研究により、極冠域のResolute Bay観測点(磁気緯度83度)に、平成17年1月に高感度全天カメラを設置し、自動観測を開始した。さらに平成17年9月には、高感度全天カメラ、掃天分光フォトメータ、誘導型磁力計をサブオーロラ帯のAthabasca観測点(磁気緯度62度)に設置し、こちらも自動観測を開始した。平成19年現在、どちらも順調に観測を継続している。また、平成18年6月から平成19年4月に、高感度全天カメラを米国・ニューヨーク州Ithacaに設置し、自動観測を行った。本研究の結果として、Resolute Bayで得られた極冠域パッチ現象のデータから、パッチの動きが惑星間空間磁場の変動と非常に良い相関があることを見いだした。この結果は、極冠域のプラズマ対流を可視化し、太陽風の変動に対して磁気圏のプラズマ対流がどのように応答するかを調べるための新たなツールを与えている。このパッチの動きと、Super DARNレーダーで得られるプラズマ対流の動きの比較も行われている。また、Athabascaで得られたオーロラ、地磁気データから、オーロラ帯から赤道側に離れた孤立オーロラとPc1地磁気脈動が1対1対応していることを初めて見いだし、地球の内部磁気圏において、波動と粒子の相互作用が従来考えられていたよりもはるかに空間的に狭い領域で発生していることを示した。
これら3点の観測から得られるデータはすべてデータベース化され、プロットがホームページで公開されている。また、これらの観測と共同研究が期待されるTHEMIS衛星は、平成19年2月17日に米国から打ち上げられ、平成19年度後半には、カナダの観測点上空でオーロラサブストームに関する共同観測を行うことになっている。 -
太陽風から磁気赤道領域までのエネルギー・物質流入過程に伴う宙空環境変動の研究
研究課題/研究課題番号:15253005 2003年 - 2005年
湯元 清文
担当区分:研究分担者
15・16年度は、相手国の海外共同研究者の協力を得て、210度磁気子午線沿いのオーロラ帯のアラスカ、シベリア地区での電磁場・光学観測を充実し、また、赤道域のフィリピン、ミクロネシア諸島での大気電場、電磁環境の調査を重点的に行い、全地球的規模のリアルタイム予備観測を実施した。各地点での地磁気・ULF波動の観測についても、現地協力者と協議し共同観測を実施した。
最終年度の17年度も環太平洋域の多点観測点と南米、アジアの経度の隔った磁気赤道沿いの多点観測点とを組織的に組み合わせた全地球的規模の環太平洋地磁気ネットワーク(CPMN)観測を実施し、太陽風-地球磁気圏相互作用により極冠域、磁気圏境界領域、そして磁気圏尾から内部磁気圏に侵入した電磁場擾乱エネルギーとプラズマ粒子が、磁気赤道領域までどのように侵入・変換されていくのかその時空間的伝播機構とその過程、極域3次元電流系と中・低緯度の電離層ダイナモ領域に発生するSq電流系との結合過程について実証論的解明を行なった。さらに、磁力線共鳴振動法による宙空プラズマダイナミクスの診断手法確立の為の観測を実施し、所期の目的を達することが出来た。
これらの海外学術調査から、磁気圏境界から磁気赤道までの宙空領域で発生する様々な電磁・プラズマ環境変動を空間非均一・非定常が重要で高度に領域間結合した複合・複雑系の物理現象として捉えた新しい解釈と知見を得ることができた。また、2004年から始まったCAWSES/ILWS/IHY国際共同研究期間に、我が国を代表する「宇宙天気」研究として積極的に参画し、国際的な宇宙天気共同研究のための地上ネットワークデータの発信・貢献を果たすための観測ネットワークを構築するができた。
以上の研究成果は、94編の国際学術雑誌、135編の国際会議報告、126編の国内会議報告にまとめられた。 -
日米地上観測ネットワークと衛星観測によるMLT領域の大気波動と組成変動の統合観測
研究課題/研究課題番号:14403008 2002年 - 2004年
中村 卓司
担当区分:研究分担者
本課題では、MLT(中間圏下部熱圏)領域の変動の中でも、大気波動とそれに伴う大気組成の変動に注目して、電波および光による日・米・ブラジルを中心とする地上からの観測と衛星観測を用いて、変動を大気重力波・潮汐波・プラネタリ波などに相当する種々の空間・時間スケールに分離することを目的とした。
国内の信楽MU観測所でのMUレーダーおよび大気光イメージャ(2地点)、ファブリペロ干渉計等での複合観測から、大気重力波と大気光プロファイル変動の詳細を明らかにした。
また、新たに移動用のOH全天イメージャを開発することにより、米国コロラド州でナトリウムライダーと2台の全天大気光イメージャによる同時観測(CO2イメージャキャンペーン)を行い、大気光の縞構造の高度と大気不安定構造の関係を観測的に明らかにした。
さらに、日本・米国・ブラジルでの大気光イメージ観測から重力波の緯度変化、経度変化についてこれまで蓄積した観測とレイトレーシングの手法を用いて対流圏の気象現象がMLT領域の重力波の直接的な励起源となっていること伝搬過程の大気潮汐波の影響を明らかにした。
また、レーダー観測データと衛星観測および数値モデリング(GCM)の結果の比較から、大気潮汐波の経度変動すなわち太陽非同期潮汐波の影響が大きいことが示され、これらが大気光で観測される大気重力波の砕波の特性の地域差につながる可能性を示唆した。さらに3次元領域モデルで重力波の砕波と大気光のリップルの関係を明らかにした。
以上のように本研究課題は、当初計画で目指した協同観測での成果に留まらず、種々の新たな研究領域に広がりを見せ、今後の新たな日米ブラジルそして他の国々との共同研究の確固とした基盤を作ることができた。 -
赤道大気エネルギーによる熱圏変動の研究
研究課題/研究課題番号:13136201 2001年 - 2006年
小川 忠彦
担当区分:研究分担者
本研究課題の当初の設定目標は、1)赤道域対流圏に起源を持つ大気波動のエネルギーや運動量が熱圏高度に輸送されて散逸する過程と、2)散逸エネルギーが誘起する熱圏大気の変動と電離圏プラズマの応答過程を研究し、大気活動が世界で最も活発なインドネシア域に特有の赤道大気上下結合を解明することであった。このため、インドネシア域の高度80〜500kmの熱圏・電離圏を探査する独自の装置(光・電波観測装置、VHFレーダー、磁力計)をスマトラ島コトタバンの赤道大気レーダーサイトに設置して連続観測を実施するとともに、赤道レーダーを中心としたリージョナルネットワーク及び日本とオーストラリア内の観測拠点からなる広域ネットワークから得られる電離圏・熱圏データと併せて研究を行った。これらの自動観測から得られるデータは、13に挙げる複数のホームページで公開し、共同研究を促進している。これらの観測から、(1)赤道熱圏・電離圏における大気波動の散逸(赤道上空での新たな南向き熱圏波動の発見、スマトラ沖地震で誘発された電離圏変動の発見など)、(2)赤道電離圏を介した南北中緯度電離圏の水平結合(伝搬性電離圏擾乱の磁気共役性の発見)、(3)赤道電離圏の電子密度擾乱(赤道プラズマバブル中の電離圏不規則構造の詳細構造の解析)、(4)プラズマバブル発生と対流圏活動との関係、などの数多くの新たな知見を得た。
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中緯度熱圏大気波動の南北共役点観測
研究課題/研究課題番号:13573006 2001年 - 2004年
塩川 和夫
担当区分:研究代表者
配分額:12200000円 ( 直接経費:12200000円 )
・平成13年7月に全天カメラ1式をアレシボ観測点(プエルトリコ)に持ち込み、アレシボにある大型レーダーと全天カメラによるTIDの同時観測を約2週間行った。この観測から、真夜中の赤道付近の電離層からやってくる1000kmスケールの大規模波動構造、200kmスケールの中規模伝搬性電離圏擾乱のそれぞれにっいて、レーダー・カメラ同時観測に成功した。
・平成13年10月に、日本の磁気共役点にあたるオーストラリアのダーウィンに、上記のカメラを設置し、定常観測を開始した。同年10-11月にかけて、赤道域で発生したプラズマバブルが、日本の鹿児島県佐多観測点とダーウィンで同時に観測された。詳細な解析から、この構造が日本とオーストラリアでちょうど鏡像の関係になっていることが見出され、赤道プラズマバブルの構造が、南北の磁力管をつないだ非常に大規模な構造であることがわかってきた。
・信楽・陸別で大気光イメージに観測された中規模伝搬性電離圏擾乱(MSTID)を統計的に解析し、その伝搬特性の季節変化、緯度変化を初めて明らかにした。さらに、DMSP衛星との同時観測例を詳しく調べることにより、MSTIDの波状構造に伴って電離層中に分極電場が生じていることを世界で初めて示した。
・平成14年8月9日に鹿児島県佐多岬とオーストラリアのダーウィンで、MSTIDの大気光イメージング観測に初めて成功した。その結果、MSTIDが磁気赤道をはさんで南北半球でちょうど対称の形をしており、南北半球で1対1に対応することがわかった。この事実は、MSTIDが電離層の分極電場の構造を持っており、その電場が磁力線を通じて南北に投影されていること、を示している。さらに平成15年5月21日から6月7日に第3回FRONTキャンペーン観測を行い、オーストラリア中央部のRenner Springs(滋賀県信楽町の磁気共役点)に新たに1台の大気光全天カメラを設置したほか、国内外計7カ所で全天カメラによる伝搬性電離圏擾乱の総合観測を行った。この観測から、中規模伝搬性電離圏擾乱が、非常に良い南北共役性をもち、南半球と北半球で対称な構造を保ちつつ伝搬していることがわかった。 -
グローバルな宙空環境変動観測記録システムの開発
研究課題/研究課題番号:13554016 2001年 - 2003年
湯元 清文
担当区分:研究分担者
平成13年度から15年度に渡って当該研究課題の科研費の交付を受け、全地球的規模に分布した各観測点での絶対時刻精度を数十m秒以内に保てるGPS衛星信号受信システムを内蔵した信頼性の高い安定した観測データ記録装置を開発し、グローバルな宙空環境変動観測用の半自動記録システムの開発と実用化を達成した。以下、研究成果の概要をまとめる。
1.データ収録システム並びに実用化モデルの検査
データ収録システムを設計した後、電源対策を施し、GPS計時装置を組み入れた、フラッシュメモリーカード(650Mbyte)を記録媒体とするCPUによるシステムコントロールできうる省電力型の半自動観測記録システムを試作完成し、その性能を検査した。
2.実用化システムの製作・購入
1に基づいて開発した仕様に従ってGPS付半自動観測記録システムを製作する為に備品を購入した。
3.実用化システムの性能試験
210度磁気子午線沿いのシベリア、アラスカ、日本、オーストラリア等の36観測点、磁気赤道域で経度の隔ったブラジル、ペルー、西太平洋、ミクロネシア諸島の12観測点や北米の極冠からオーロラ帯の20観測点からなる観測網の中で、特に、国内の5観測点と設置環境の悪い観測維持の困難な海外観測1点に新しいGPS付観測記録システムを配備し、データ取得の安定度、データの精度等の確立の為の、実用化システムの性能試験をした。
4.インターネット、衛星及び電話回線を用いた観測データのオンライン・リアルタイム取得の予備観測を開始した。
これらの成果を下に、今後、地球規模に配置された50点以上の観測点間の相対的な時間差を1秒以内に確保し、太陽風擾乱により発生したsc/si変動などの過渡現象やDP2やULF波動の侵入過程や電磁圏内の伝播過程を解明・検証することが可能となるであろう。 -
高時間分解能データを用いたサブストームに伴う磁気圏尾部ダイナミクスの研究
研究課題/研究課題番号:13640449 2001年 - 2003年
塩川 和夫
担当区分:研究代表者
配分額:2100000円 ( 直接経費:2100000円 )
1.サブストームにおける近尾部でのプラズマ過程を調べるために、1992-2000年のGEOTAILデータから、|X|が11Re以下,|Y|が5Re以下の位置で観測されたはっきりしたdipolarizationを21例選び、その詳細を調べた。その結果、(1)磁場のdipolarizationは、数分〜10分程度継続する速い磁場変動をしばしば伴っていること、(2)この磁場変動は数秒程度の磁場の急激な増大や減少で形成され、振幅はしばしば10nTに達すること、(3)磁場のelevation angleが増大(dipolarization)する直前に、数秒-10秒程度の短い時間であるが、elevation angleが大きく減少する例が複数ある(explosive growth phase)こと、(4)この磁場変動は、特に磁場の弱い領域で起きている場合、地球向きのconvective flowを伴っていること、などがわかった。
2.特にこの中の1例に関して、64Hzサンプルの電場生データを詳しく解析した結果、周期が5Hz程度の特徴的な電場の振動が、1-5mV/mという大きな振幅をもって発生していることがわかった。この振動が、tail currentの流れを妨げて、観測されたような特徴的な磁場elevation angleの減少を引き起こした可能性があり、今後、粒子シミュレーションとの比較を行っていく予定である。
3.上記のデータ解析ではいくつかの観測事実を明らかにしたが、同時に、GEOTAILを含めたこれまでの人工衛星データでは、10Reよりも内側でサブストームに伴って起きている現象の成因について、決定的な結論を出すことは難しいことがわかった。このため、新たに10Reよりも内側の内部磁気圏を集中的に探査する人工衛星計画を提案し、その具体化について検討を重ねた。 -
列島規模観測網による熱圏大気波動の立体的研究
研究課題/研究課題番号:11440145 1999年 - 2002年
小川 忠彦
担当区分:研究分担者
1.本研究課題により、平成12年7月より鹿児島県佐多岬で、平成13年10月にはオーストラリアのダーウィンで、それぞれ大気光全天カメラの定常観測を開始し、平成10年10月より北海道陸別町及び滋賀県信楽町で行われている全天カメラ観測とあわせて、4点の多点大気光同時定常観測を現在に至るまで継続している。また、平成11年8月には沖縄県国頭村で、平成14年8月には鹿児島県種子島で、全天カメラによるキャンペーン観測を行っている。
2.中間圏界面の大気重力波観測に関する成果は、a)日本列島及びオーストラリアにおいて、重力波の発生、伝搬特性の季節変化、緯度による違いを明らかにした、b)局在化した特異な重力波構造を発見し、それが重力波間の非線形相互作用により発生している可能性を示唆した、c)近接した2点同時重力波イメージング観測により、重力波及び大気光の発生高度を特定した。
3.中規模伝搬性電離圏擾乱(MSTID)に関する成果は、a)日本でのMSTIDの発生確率、季節変化を統計的に明らかにした、b)人工衛星との比較観測、背景風観測によるモデル計算との比較により、MSTIDが大気重力波ではなく電離層不安定に起因する電場構造として存在していることを初めて明らかにした、c)さらにオーストラリアと日本の同時観測により、この電場構造が南北両半球の磁力線を通して同じ構造をとっていることを初めて明らかにした。
4.大規模伝搬性電離圏擾乱(LSTID)に関する成果は、a)磁気嵐中に大気光の増光を伴うLSTIDを特定し、その変動が熱圏の極向き中性風によって引き起こされていることを、モデル計算、中性風の直接観測などにより示した、b)極域のデータと比較することにより、この極向き中性風の発生が従来の簡単な考え方では説明できないことを示した。
5.赤道域プラズマバブルに関する成果は、日本付近の緯度でもプラズマバブルが観測されることを示し、日本とオーストラリアの同時観測から、このバブル構造が赤道をはさんで対称になっていることを初めて明らかにした。
6.低緯度オーロラに関する成果は、平成11年から14年度において、11回の低緯度オーロラ観測に成功した。このうち平成13年3月31日と11月24日の低緯度オーロラは、北海道だけでなく滋賀県でも観測に成功し、科学機器で観測された低緯度オーロラの日本最南端記録となった。
7.中間圏、熱圏の中性風観測に関する成果は、ファブリ・ペロー分光器の定常観測化に成功し、MUレーダーによる風速観測との比較により、大気光の発光高度の時間変化を明らかにしている。
8.これらの成果は、以下に示す論文として出版しているので、詳しくはそちらを参照されたい。また、定常観測により得られたデータは、http://stdb2.stelab.nagoya-u.ac.jp/omti/ですべて公開し、共同研究の推進に役立てている -
スヴァールバルISレーダーを用いた極冠域における電離圏イオン流出過程の研究
研究課題/研究課題番号:11440144 1999年 - 2001年
藤井 良一
担当区分:研究分担者
本課題はEISCATレーダー実験を基に特に磁気圏-電離圏間の粒子による物質とエネルギーの交換結合過程を定量的に理解することを目的とし、オーロラ粒子として磁気圏から降り込んでくる電子やイオンにより電離圏に与えられるエネルギーと、そのエネルギーにより電離圏から磁気圏に流出する電離圏イオンの定性的かつ定量的な特性とその駆動機構について知見を得ることができたと言える。
極域電離圏からのイオン流出の原因と関係すると考えられる異常な受信スペクトルを調べるため、ESR用に受信スペクトル表示プログラムを開発し、イオン速度と異常な受信スペクトルとの関係を調べた。そして、異常なスペクトルを受信した直後に沿磁力線上向きのイオン速度の増加が見られた。これは異常なスペクトルを受信する時間帯に、イオンが上向きに加速されることを示唆している。
高緯度電離圏におけるイオン上昇流の発生領域と磁気圏との対応、またその発生とオーロラ降下粒子現象との関連を調べるため、100例以上にわたるESRとDMSP衛星同時観測イベントデータを用いて統計研究を実施した。この結果、イオン上昇流が、これまで考えられてきたカスプ領域やクレフト領域で発生しているだけでなく、マントル領域と繋がっている上部電離圏でも発生していること、昼側高緯度領域のBPS領域やCPS領域ではイオン上昇流はほとんど起こらないこと、などが分かった。又、イオン上昇流の発生メカニズムの領域による違いを調べるため、ノルウェーのトロムソに設置されているEISCAT UHFレーダーおよびVHFレーダーを用いてイオン上昇流の磁気地方時による依存性を調べた。その結果、真夜中側で起きるイオン上昇流と朝側、夕方側で起きるイオン上昇流とは発生メカニズムが異なることが示唆された。 -
インターネット系磁気圏監視システムのグローバル展開
研究課題/研究課題番号:09041098 1997年 - 1998年
国際学術研究
林 幹治
担当区分:研究分担者
当研究の準備過程として試験研究[極域擾乱データの長期収集を目的としたインターネット系収録システムの開発(平成7年-平成9年)]による開発研究が行なわれた。そこでは、現に運用しつつあるグローバル磁場観測網を対象として、インターネットの持つ新メディアとしての公共性、経済性、普遍性が持つ可能性に着目して、データ取得の安定化と省力化への寄与に関する検討と機器の試作を行った。そこでの検討結果と開発された機器を実際にグローバル磁場観測システムに適用・運用してその評価を行うことがこの研究の目的であった。目的としたグローバルデータ収録システムの到達点は、(1)アラスカ大学との協力して進めてきた、カナダ西部極域磁場観測地点よりの衛星または電話回線による実時間伝送計画は次年度以降の実現見通しとなった。インターネット接続の観測機器をアラスカのGakonaに設置することになった。(2)ビクトリア地域における、電話回線による磁場データの遠隔取得とインターネットへの自動配信を開始した。(3)ノルウェー・スバルバール地域2地点よりのオーロラ画像データのインターネットによる監視(転送)実験を行った(毎分1画面の転送でもスバルバール地域-本土間の回線容量不足による取りこぼしが時折発生する)。(3)人工ノイズの極めて少ないバイカル湖の小島にあるUzuri観測所に自動観測を設置し、インターネットの基幹環境がメールレベルのロシア型ネットワークとして位置付ける。<4>郵政省通信総合研究所のメンバーを研究分担者に迎え、エルズミュアー島北部の観測地点Eurekaの磁場観測データをインターネット経由で配信するため、カナダ大気環境局と気象用専用通信回線の利用に合意を得て、次年度より実現の運びとなった。-時代の潮流として-,グローバルネットワーク化には様々な解が生まれつつある。人,技術、予算の継続性のある研究が必要であり、次期計画の提案が急務である。
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太陽風変動に伴う擾乱の極域から赤道域への侵入・輸送過程の研究
研究課題/研究課題番号:08041105 1996年 - 1997年
国際学術研究
湯元 清文
担当区分:研究分担者
日・豪、日・米の磁気共役点を含む210度磁気子午線沿いの多点と北米(カナダ、アメリカ)、南米(ブラジル、ペル-)、西太平洋域の経度の隔った赤道域の多点とを組織的に組み合わせた地球規模の地上観測網を用い、極域や衛星観測のみでは捉えられなかった地球規模の空問的なエネルギー輸送の広がりや時間発展を分離することにより、特に、磁気嵐や磁気圏嵐を引き起こすような太陽風の変動電磁場に呼応した磁気圏全体の応答の仕組みや、発生する擾乱・波動と高エネルギー粒子の極域から赤道域までの3次元的な流入・輸送・変換過程を明らかにすることが本研究の目的であった。
本国際学術研究の目的を達するために、平成8-9年度に以下のような調査研究が実施された。
(1)210度磁気子午線沿いのオーロラ帯に位置する極東のシベリア、アラスカ地区での電磁場擾乱の観測と磁気赤道域に近いフィリピン、グアム、ヤップでの電磁場並びに電離層擾乱の観測調査、新たに、極域(カナダ)や南米(ブラジル、ペル-)での電磁場観測を加えた、極域と赤道域での国際共同・同時観測研究を開始した。
(2)極域(カナダ)での電磁気擾乱の観測については、STEP国際事業期間に東京大学が中心に実施してきたネットワーク観測網の磁力計、オーロラ観測機器等の点検・再設置を行うことにより、国際共同の同時観測研究を再開した。
(3)また、極域擾乱の磁気赤道域までの侵入・輪送過程を調べるために、太平洋域の中・低緯度に位置する韓国、ハワイ、パプアニューギニア、ポナペ、インドネシア、オーストラリアの各観測点の地磁気観測装置の点検と再整備を行い、同時観測を開始した.
(4)特に、西太平洋域のフィリピンのセブ島とダバオ、ミクロネシア諸島のポナペ、ヤップ、グアムやクリスマス島の磁気赤道地域における観測研究については、新たな磁力計の設置や電磁気的な総合観測を実施するための学術調査が行なわれた。
(5)本研究に関わる地磁気、オーロラ、衛星等のデータを効率よく収集するために、1996年7月にオーストラリアで開催された西太平洋域地球物理国際会議と1997年8月にスウェーデン、ウプサラで開催されたIAGA(国際地球電磁気学・超高層大気物理学協会)学術総会に研究代表者と分担者を派遣した。特に、ISTP計画による人工衛星や本研究以外の海外での地上観測網との組織的な共同観測のための打ち合わせや、デ-夕収集・交換を積極的に行い、グローバルな電磁気擾乱の侵入・輸送過程の解析研究をすすめることができた。
(6)最終年度に研究成果を冊子にまとめた。
以上の調査研究により、極域や衛星観測のみでは捉えられなかった、1時間から数10分のDP2型の磁場変動からPc3-5帯のULF波動までの地球規模のエネルギー輪送の空間的な広がりや時間発展を分離できる基礎的なデータを取得するとともに、sc/siなどの過渡的な太陽風の変動電磁場に呼応した磁気圏全体の応答の仕組みや、発生する地球規模擾乱の極域から赤道域までの流入・輸送・変換過程の解明の手がかりを得ることが出来た。 -
雷放電に伴う成層圏・中間圏発光現象に関する研究
研究課題/研究課題番号:08044053 1996年 - 1997年
国際学術研究
渡部 重十
担当区分:研究分担者
雷放電は雷雲間で起こる対流圏特有の現象であると考えられてきたが,1990年雷放電に伴う未知の成層圏・中間圏発光現象が高感度のテレビカメラで発見された.高度50km以下の成層圏に出現する青色の"ブルージェット",高度50-90kmの中間圏で発光する赤色の"スプライト"が上向きの放電現象として世界的に大きな注目を集めている.本研究は地上からこの上向き雷放電発光現象を観測できる最も適した場所である米国コロラド州ユッカリッジにおいて高速フォトメータ,CCDカメラ,サーチコイル磁力計,ELF・VLF電波観測器等を用いて成層圏・中間圏における雷放電発光現象のメカニズムを解明することを目的として調査した.
1996年3名の派遣研究員が7月から約1ヶ月間,米国コロラド州ユッカリッジでスタンフォード大学イナン教授のグループと共同で雷雲上方で出現する発光現象(スプライト)を観測した.イナン教授のグループはVLF電波観測によりスプライト発生時間を正確に決定することができた.東北大学のグループは高時間分解能で測定できるフォトメータを用いて数msec〜数10msecの発光現象が高度〜100km付近に存在することを発見した.この現象をエルフと命名した.
1997年3名の派遣研究員を7月から約1ヶ月間,米国コロラド州ユッカリッジに再び派遣しスタンフォード大学イナン教授と共同観測を実施した.東北大学のグループは1997年度で使用した測定器にイメージャと磁力計を加えて,さらに詳細な観測を実施した.その結果はスプライトに伴いULF波動が発生していることを発見した.成層圏・中間圏での放電現象に伴ってガンマ線の放射も確認されていることから,雷放電の際に発生する強力な電磁波や電場による成層圏・中間圏・下部電離圏大気の急激な加熱によって成層圏・中間圏の大気組成,特にオゾンやNO密度の変化が起きていることが推測され,高高度の大気環境に大きな影響を与えている可能性がある. -
航空機搭載用二酸化窒素測定器の開発
研究課題/研究課題番号:07554079 1995年 - 1996年
小池 真
担当区分:研究分担者
二酸化窒素(NO_2)は一酸化窒素(NO)と共に、対流圏オゾンの光化学生成を支配する重要な成分である。本研究では、NO_2測定器の開発の鍵となるNO_2をNOに光解離変換する光コンバータの光源としてメタルハライド・ランプを使用し、またNO_2の光解離をおこさせるガラスセルの外壁をアルミ蒸着コーティングし、セル内でランプの光を多重反射させ、その変換効率を高めたことが特徴である。
初年度(平成7年度)には第一に、プロトタイプの光コンバータの光学系等の設計を行い、製作を行った。第二に、航空機での観測の際、外気圧の変化によることなくNO_2の変換効率を一定に保つための、テフロン製のバルブの設計・製作を行い、その性能を確かめた。第三に、NO_2をNOに変換した後NOを検出するための検出システムを既存のNO/NO_y(総反応性窒素酸化物)システムに加えた。
最終年度(平成8年度)には、前年度に製作を行った光コンバータとテフロン製バルブ流量コントローラおよび整備したNO検出器を使って、実験室内でNO_2を発生させ、その試料空気をサンプルすることによりNO_2の変換効率を調べた。この結果、50%という高い変換効率を得た。変換効率そのものは、光コンバータ内での滞在時間を長くする(気圧を高くする)ことによって可能であるが、五酸化二窒素(N_20_5)などからの干渉を押さえるためには、50hPaで1-2秒以下であることが必要なことが分かった。また硝酸を試料空気に混入させた結果、光コンバータの320nmより短波長の光を完全に光学フィルターで落とさないと、硝酸が変換され、NO_2の測定に影響することが分かった。
以上のように本研究では、プロトタイプの測定器の実験を通してNO_2測定の基本的な技術を確立するという本研究の目的はほぼ達せられ、今後は実際に航空機に搭載できる測定器を開発する予定である。 -
アラスカ・マッコ-リ島における磁気圏擾乱の磁気共役性に関する共同観測研究
研究課題/研究課題番号:06044094 1994年 - 1995年
国際学術研究
湯元 清文
担当区分:研究分担者
地球磁気圏内に発生する最も基本的な擾乱であるオーロラ嵐に伴って様々な擾乱現象が発生している。このオーロラ嵐の及ぼす電磁環境の変動の極域における磁気共役性と、これらの擾乱エネルギーの中・低緯度や赤道域までの輸送・伝播過程を解明するために、オーロラ帯の磁気共役点に位置するアラスカ・マッコ-リ島において、地磁気・大気電場・イメージングリオメータ並びに光学観測機器を用いて総合の国際共同観測研究を実施することが本研究の目的であった。また、北太平洋の極域に発生した擾乱が中・低緯度や赤道域の電磁場とどの様に関連しているかを観測的に調べるために、パラオ・ハワイ諸島において同時の地磁気観測を実施することも緊急の課題であった。さらに、アラスカ大学並びに東京大学が計画している北米大陸での地上多点観測網や、名古屋大学太陽地球環境研究所がSTEP国際共同特別事業の期間に実施している210度磁気子午線沿いの観測網のシベリア域での地磁気・光学観測とも組み合わせた組織的な同時観測を実行することにより、日本を含む極東域の高緯度から赤道域までのグローバルな領域においてオーロラ嵐の及ぼす電磁環境変動過程を究明することも本国際学術研究の目的であった。
平成7年度の調査研究は以下の様に計画的に実施された。
(1)アラスカ地域での観測調査・研究については、現地研究者との打ち合せを行なった後、平成6年度に予備調査したアラスカ観測点カツビューで日本の研究分担者が磁力計、オーロラ観測機器の点検、調査を行い電磁気的な総合観測を実施した。
(2)カツビューの磁気共役点に位置するオーストッリアのマッコ-リ島での地磁気・オーロラ観測については、オーストラリア南極庁の研究者との事前連絡を綿密に行い、現地での同時観測データをほぼ完全に確保できた。
(3)アラスカ域で観測されるオーロラの経度方向への広がりと動態を調べるために、研究者代表者を含む日本側の研究者がロシアのディキシィーに赴き、オーロラの同時観測研究を実施した。又、ティキシィーの低緯度側のズリヤンカに新たな光学観測を設置し、オーロラの観測を開始した。
(4)カナダ地域での極冠域のオーロラ観測研究については、東京大学のオーロラ観測計画と緊密な連携を取り、同時観測研究を実施することができた。
(5)アラスカ・シベリア域で発生したオーロラ擾乱に対応する低緯度、赤道域の他磁気変動を調べるために、パラオ、ハワイ諸島にアラスカ大学の研究分担者を派遣し、地磁気観測機を用いた磁気圏擾乱の侵入・伝播の観測研究を行った。
(6)又、夜側のアラスカ域で観測されるオーロラに対する昼カスプ域の粒子環境変動観測の為に、日本の研究分担者をノルウェーのニ-オルソン島に派遣し,オーロラの昼夜同時観測研究を実施した。
(7)カツビュー観測点にあるアラスカ大学の施設で、アラスカ大学及び現地協力者の協力により我が国の装置で観測を継続する一方、同大学が所有するオーロラ・地磁気のネットワークデータのコピーを取り、比較解析研究を開始した。
(8)ロシア域のデータ解析研をすすめる為に、モスクワの地球物理研究所に研究代表者が赴き、研究成果のまとめ並びに今後の成果の発表と研究の発展についての打ち合せを行い成果を上げることができた。
以上の観測・データ収集・比較解析研究から、オーロラ嵐に伴う擾乱の輸送過程、sc/si地場擾乱の赤道域への侵入過程、ULF波動の南北半球での非対称に関する結論が次の様に導き出された。
[1]東向きオーロラエレクトロジェトと磁気赤道に発達するジェト電流とが非常に似た変動をすることが発見され、数分から数時間周期帯の極冠域の変動電場の赤道域への侵入過程の傍証が得られた。
[II]sc/siの地磁気変動の振幅を低緯度共役点で観測すると南北非対称性が観られ、季節変化していることが発見された。これは磁気圏境界層に生じる電流に比べて、極冠域に侵入した変動電場が低緯側までDP-2型の電離層電流を大きく誘起していることを示唆している。
[III]高緯度・低緯度共役点で観測されるPc3-5のULF波動振幅に南北非対称性が発見され、これまでの電離層効果並びに磁力線振動論論の見直しをせまる観測事実が得られた。 -
北極冠・カスプ・オーロラ帯の広域電磁・プラズマ擾乱の研究
研究課題/研究課題番号:05041057 1993年 - 1995年
国際学術研究
林 幹治
担当区分:研究分担者
〔観測の概要〕
オーロラ・磁場擾乱域の2次元動構造の観測に基づく研究を行うために極域(カナダを中心にグリンランド、スピッツベルゲン、アラスカ)における調査と観測を実施した。極域、特に、極冠域に重点を置いてオーロラと磁場変動の広域多点観測を行い、太陽風場の変動が地球磁気圏の境界部・尾部にもたらす電磁・物質輸送の直接効果と、付随して蓄積される磁気圏構造エネルギーの間欠的緩和(オーロラ爆発に代表されるサブストーム)に至る発達過程の研究に必要な広域多点観測データを取得することを目的とした調査・研究である。
北極冠域、カスプ帯、オーロラ帯を含むこの地域を根元として地球磁場の磁束は外部磁気圏から磁気圏尾部に広がり、磁気圏全体の9割以上の空間を占める。この磁力線結合により磁気圏の広大な領域よりの変動情報がこの地域の電離圏に波及・投影される。観測地点の配置は、極冠域からオーロラ帯への現象域の連続性を確保することに留意した。磁力計観測網は、カナダ北極域を中心に、米国(アラスカ)、グリーンランド、ノルウェー(スピッツベルゲン)域(夫々20,3,3,2地点)にフラックスゲート磁力計と誘導型磁力計が配置され、通年観測が行われた。
オーロラ観測は、冬季、新月を挟む2週間を単位として、1ないし2期間、高感全天TVカメラを極冠域、カスプ域、オーロラ帯(夫々3〜5,2,4〜6地点)を配置して研究者による滞在観測ないし半自動化装置による滞在観測を実施した。また、3〜5の拠点観測地点においてはスペクトル線を分けたオーロラの観測や自然電波も行なわれた。
[夏季調査]
観測地点選定と観測機器の設置作業は夏季に実施された。また、通年観測を行ったの磁場観測地点において、ケーブルの切断事故の類が、例年、数箇所の割合で発生し、補修作業のための夏季調査期間が不可欠となった。
[観測成果]
1.日本のグループ初の本格的な極冠域おけるオーロラ・磁場観測であり、カナダ、グリンランドの2経度線上(2〜3観測点)の同時観測はこれまでにないものである。
2.極冠オーロラの動態に関して、朝方、東西に伸びたアーク構造領域から小アークが極方向に繰り返し分離伝播する事実が発見され、同時の衛星観測の降下粒子、磁場・電場観測と対比研究され、磁気圏鏡界ダイナミックスに関する新知見を与えた。
3.TVカメラ撮像による高い時間分解能のデータに基づいた、極冠オーロラのタイプ、発生、動きに関する統計的研究の再評価がなされつつある。
4.磁場観測に関しても、極冠中心のユ-レカ観測地点は地磁気軸極にあり、極冠電離圏電流の研究に有用なユニークな観測データが取得されつつあり、極冠オーロラとの対比、電離層のドリフト運動への内部重力波の寄与を評価する研究が進行中である。
5.磁場(あるいはオーロラの)広域観測網は、空間・時間変動を分離できない衛星観測の弱点を補う上に基準データとしてますます重要になりつつあり、GEOTAIL,AKEBONOの国産衛星を始めとする、各国の研究者へのデータ提供あるいは共同研究が行われつつある。
6.オーロラ帯のドーソンシティー近郊の標高1070mの山頂に,眺望と気象条件の点で屈指の観測地点を発見し良好な観測データを取得することが出来た。同地点での窒素分子線による全天実時間撮像はオーロラが低高度に限定されているため位置決定が容易な新し観測である。
7.データカタログ、概要データ、概要解析結果はWWWを通じて一般に公開され、国内外の研究者の利用に供している(http//hpgrl.grl.s.u-tokyo.ac.jp/) -
太陽風から地球内部磁気圏へのエネルギー輸送過程の研究
研究課題/研究課題番号:05041060 1993年 - 1995年
国際学術研究
田中 義人
担当区分:研究分担者
太陽風によつて運ばれる太陽プラズマのエネルギーは、地球の磁気圏の境界領域から極域に侵入しオーロラや地磁気擾乱をおこし、さらに磁気圏内部から赤道域まで流入し様々な現象を引きおこしている。磁力線で結ばれた日・豪の共役点を含む磁気軽度210度に沿った、高緯度から赤道域にわたる広域地上多点で、電磁場変動,極低周波のプラズマ波動やオーロラの光学同時観測を行い、関与する電磁波エネルギーや粒子エネルギーのグローバルな輸送・流入機構を調査した。また、流入した太陽風エネルギーが集積し、且つ、電離層高度にジエット電流が流れている赤道域の南太平洋域で電磁環境変動の総合観測を行った。さらに、赤道域の経度の離れた南アメリカのペル-とブラジルの多点観測網において電磁気変動の同時観測を行い、磁気圏全体の太陽風エネルギーの流入ルートやエネルギー変換過程を明らかする手がかりを得た。
1、太陽風変動に呼応したグローバルな地球磁気圏の応答を明らかにするために、特に、空間変化と時間変動が分離できる210度磁気子午線沿いの広域多点観測を、アメリカ、インドネシア、オーストラリア、台湾、日本、パプア・ニューギニア、フィリピン、ロシア等の28研究機関との共同研究として実施した。210度地磁気データ、LF磁気圏伝搬波データ、光学観測のデータの解析研究を行つた。
(1)、惑星間空間衝撃波や太陽風中の不連続変動によって引き起こされ、地上の低緯度で観測されるSc/Si地磁気変動の振幅が季節変化しており、特に、夏半球で冬半球のおよそ2倍になっていることが見いだされた。このことは、極冠域に侵入した変動電場により誘起されたグローバルなDP型の電離層電流の低緯度への侵入の寄与を示唆している。
(2)、SC/Siにより励起されたほとんどのPc3-4地磁気脈動は磁力線共鳴振動であるが、SC/Siの振幅が極端に大きいときには、プラズマ圏のグローバルな空洞振動モードも励起されている。
(3) SCにより励起されたPc3-4の振幅の減少率はL<1、5の低緯度の領域で急激に増加する。また、赤道側に行くほど卓越周期が長くなっていることが観測的に明らかにされた。この結果は、低緯度電離層における理論的な薄い電離層モデルの限界とマス・ロ-デング効果を表している。
(4) L=1,6の母子里観測所で光学・地磁気観測から、Dstが-100nT程度の磁気嵐の主相の時に、時々、目には見難い低緯度オーロラが地磁気H,D成分の湾型変化と大振幅Pi脈動の発生と同時に出現することが明らかになった。
(5)美瑛LFデッカ局(85、725kHz)の磁気共役点のオーストラリア・バーズビルでのLFで磁気圏伝搬波の観測データ、NOAA-6衛星での高エネルギー電子のデータ、低緯度の地上観測VLF/ELF電磁放射のデータの解析から、磁気擾乱の伴う磁気圏深部への高エネルギー粒子の流入の様子が明らかにされた。
2、磁気赤道帯は赤道エレクトロジェットで知られる様に、電離層電気伝導度がまわりの緯度より高く、地磁気脈動や電離層電流の赤道異常が現れる等の興味ある地域である。しかし、地磁気に関する研究は低感度の記録データもとにするしかなかったため、現象の理解はあまり進んでいない。そのため、磁気赤道帯で高時間精度、高感度フラックスゲート磁力計による磁場観測を試みた。
(1)、ブラジル内陸部の6点の密な観測網で比較的長期(半年)にデータを取得した。また、ペル-の磁気赤道をまたぐ4点に観測点を設置し赤道ジェット電流の観測を開始した。さらに新しい試みとして、南部太平洋ヤップ島で、地磁気と電離層FMCWレーダーとの同時観測を実施し成功した。
(2)、高時間精度、高感度磁場観測により、赤道域での地磁気脈動の振幅がおよそ0、1-1、0nTの範囲にあることが分かってきた。
(3)、高感度のデータから、日出に伴う電離層電子密度上昇による地磁気脈動の振幅変調や、電気伝導度の赤道異常が引き起こす地磁気脈動の位相遅れなどの新しい結果が得られた。高時間精度のデータからはSSCやPi2脈動のグローバルな構造、衛星データとの比較からPi2脈動の開始と関係した磁気圏粒子環境の変化(オーロラブレークアップ、サブストームオンセット)などの興味ある研究が始められた。
(4)、赤道域での多点観測や電離層レーダーとの共同観測から、赤道ジェット電流の空間構造や赤道反電流と電離層電場との関係など興味ある研究が始められた。