科研費 - 塩川 和夫
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国際地上観測網と人工衛星観測・モデリングに基づくジオスペース変動の国際共同研究
研究課題/研究課題番号:22K21345 2022年12月 - 2029年3月
科学研究費助成事業 国際共同研究加速基金(国際先導研究)
塩川 和夫, 三好 由純, 小川 泰信, 横山 竜宏, 吉川 顕正
担当区分:研究代表者
配分額:689000000円 ( 直接経費:530000000円 、 間接経費:159000000円 )
地球のまわりの宇宙空間(ジオスペース)は、太陽から常に吹き付けている太陽風や下層大気から伝わってくる大気波動によって、常に大きく変動している。本研究では、日本が保有する国際地上多点ネットワーク観測網と欧米の最新の科学衛星による観測・グローバルなモデリングを組み合わせ、ジオスペース変動研究とその予測のさらなる国際化・高度化をはかり、安全・安心な宇宙利用に貢献する。また、若手研究者や大学院生を本研究に参加させることにより、地上観測・衛星観測・モデリングを組み合わせた研究を通して将来のジオスペース研究開発の中核を担う研究者・技術者を育成し、この分野の国際共同研究の中長期的な発展につなげていく。
・本事業の参画機関が保有・参加するグローバルで総合的な国際地上観測ネットワークによるジオスペース・地球大気の観測を維持・継続し、国際共同研究のための観測データを取得した。この観測との比較のために、海外共同研究者であるドイツのStolle教授、米国のKistler教授・Lu博士らと打合せを行い、彼らが開発・運用する欧米の人工衛星やモデリング、日本のあらせ衛星等と組み合わせた国際共同研究を立ち上げつつある。これらを通して、地球大気の変動がジオスペースにどのように影響を及ぼすか、ジオスペースの変動が地球大気にどのように影響を及ぼすか、という2つの大きな学術的問いに迫っていく。
・多種多様な地上・衛星観測データやモデリングデータを統一して比較するために、各種データのデータベースを構築するとともに、それらを統合的に解析することを可能にする統合解析ツールの開発を、IUGONETや名古屋大学の統合データサイエンスセンターと連携して行った。これらのデータベースやツールは、国内外の研究者に広く公開され、より広範な国際共同研究の推進に貢献していく。
・本研究の人材育成として、若手研究者・大学院生を本研究に参加させる。次年度から研究アシスタントとして雇用する博士後期学生の選考を行った。今後、これらの若手研究者や大学院生を海外Co-Iや海外研究協力者の研究機関に滞在させることで、地上のみならず衛星観測とモデリングという異なる視点から研究課題にアプローチできる広い視野を持って自立した研究者を育成していく。国際組織SCOSTEP等と連携し、5月にイタリアのトリエステで開催する国際スクールの参加者募集と講師の選定を行った。SCOSTEPと連携して、海外機関に所属している大学院生を令和5年度日本に招聘するための選考を行った。
研究実績の概要に記したように、令和4年12月に本事業が採択されてから、本事業の参画機関が保有・参加するグローバルで総合的な国際地上観測ネットワークによるジオスペース・地球大気の観測を維持・継続し、国際共同研究のための観測データを取得した。この観測との比較のために、海外共同研究者であるドイツのStolle教授、米国のKistler教授・Lu博士らと打合せを行い、彼らが開発・運用する欧米の人工衛星やモデリング、日本のあらせ衛星等と組み合わせた国際共同研究を立ち上げつつある。また、これらの多種多様な地上・衛星観測データやモデリングデータを統一して比較するために、各種データのデータベースを構築するとともに、それらを統合的に解析することを可能にする統合解析ツールの開発を、IUGONETや名古屋大学の統合データサイエンスセンターと連携して行っている。また、本研究の人材育成として、若手研究者・大学院生を本研究に参加させるために、次年度から研究アシスタントとして雇用する博士後期学生の選考を行った。さらに、国際組織SCOSTEP等と連携し、5月にイタリアのトリエステで開催する国際スクールの参加者募集と講師の選定を行った。また、SCOSTEPと連携して、海外機関に所属している大学院生を令和5年度日本に招聘するための選考を行った。以上のことから、本研究はおおむね順調に進展していると判断した。
令和5年度以降は、以下の推進方策で本研究を進める。
・本事業の参画機関が保有・参加するグローバルで総合的な国際地上観測ネットワークによるジオスペース・地球大気の観測を維持・継続し、太陽活動極大期に向かって活発化しつつあるジオスペース変動について、国際共同研究のための新しい観測データを取得する。この観測との比較のために、海外共同研究者であるドイツのStolle教授、米国のKistler教授・Lu博士らと緊密に連携し、彼らが開発・運用する欧米の人工衛星やモデリング、日本のあらせ衛星等と組み合わせた国際共同研究を推進する。これらを通して、地球大気の変動がジオスペースにどのように影響を及ぼすか、ジオスペースの変動が地球大気にどのように影響を及ぼすか、という2つの大きな学術的問いに迫っていく。
・多種多様な地上・衛星観測データやモデリングデータを統一して比較するために、引き続き、各種データのデータベースを構築するとともに、それらを統合的に解析することを可能にする統合解析ツールの開発を、IUGONETや名古屋大学の統合データサイエンスセンターと連携して行う。これらのデータベースやツールは、国内外の研究者に広く公開し、より広範な国際共同研究の推進に貢献していく。
・本研究の人材育成として、若手研究者・大学院生を本研究に参加させる。このため、研究アシスタントとして雇用する博士後期学生やポスドク研究員の選考を行った。今後、これらの若手研究者や大学院生を海外Co-Iや海外研究協力者の研究機関に滞在させ、地上のみならず衛星観測とモデリングという異なる視点から研究課題にアプローチできる広い視野を持って自立した研究者を育成していく。国際組織SCOSTEP等と連携し、スペインやナイジェリアなどで国際スクールを開催する。また、SCOSTEPと連携して、海外機関に所属している大学院生を日本に招聘する。 -
青いオーロラの高分解能分光観測に基づく地球大気の窒素分子イオン流出の計測
研究課題/研究課題番号:21K18651 2021年7月 - 2024年3月
科学研究費助成事業 挑戦的研究(萌芽)
塩川 和夫, 大山 伸一郎, 小川 泰信
担当区分:研究代表者
配分額:6240000円 ( 直接経費:4800000円 、 間接経費:1440000円 )
極域のオーロラでは、その上辺が青く光ることがある。この青いオーロラは、窒素分子イオンが高い高度まで上昇し、薄明の太陽光を共鳴散乱して光っていると考えられてきた。しかし質量の重い窒素分子イオンがなぜ高い高度に上昇するか、その機構はよくわかっていない。本研究では、高高度で発光する青いオーロラを、ファブリ・ペロー干渉計を用いて世界で初めて高分解能分光することにより、発光している窒素分子イオンの上昇速度を計測し、高高度の青いオーロラ発光の発生メカニズムを探る。さらに、青いオーロラ発光の分光計測というこれまで行われなかった新しい手法で、地球大気の宇宙空間への流出過程の解明にも貢献する。
・令和3年度は、研究代表者・分担者(塩川・大山)がノルウェー・トロムソ観測点で運用しているファブリ・ペロー干渉計(FPI)で波長427.8nmの青いオーロラ発光を観測できるように、この波長のみを透過するバンドパスフィルターを米国のフィルター製造会社から購入した。
・コロナウイルスの拡大のために現地に行ってこのフィルターを設置することができなかったため、以前からFPIに装着している波長732nmの酸素原子イオンの発光を観測するフィルターを使って、酸素原子イオンの干渉フリンジの計測を令和3年度後半の9-12月に実施した。この中で、特に令和3年9月28日、9月30日のデータを詳細に解析し、干渉フリンジがイオンのdoublet構造により2重になっていることを確認するとともに、鉛直方向のイオンの速度を求めた。今後、さらに他の日のデータも解析し、酸素原子イオンの動きの速度の日による違いを決定していく。
・電離圏・磁気圏の分子イオンの人工衛星による観測の過去の論文をレビューし、これまでに得られている知見をまとめて、今回の観測の新規性をよりはっきりさせた。
コロナウイルスの拡大のために、ノルウェー・トロムソの現地に行くことができず、新たに購入した427.8nmのフィルターをFPIに装着して観測を実施することができていない。代わりのフィルターで酸素原子イオンの観測を行っているが、当初目的である窒素分子イオンはまだ観測できていない状況である。
R4年度には、昨年度に購入した427.8nmを9-12月のどこかでノルウェー・トロムソのFPIに装着し、窒素分子イオンの観測を開始する。また、すでに観測データを得ることができた酸素原子イオンのデータを解析し、日ごとの違いやオーロラとの対応関係を明らかにして、結果を研究会等で発表していく。 -
地上多点ネットワークに基づく超高層大気変動の緯度間結合の観測的研究
研究課題/研究課題番号:21H04518 2021年4月 - 2026年3月
科学研究費助成事業 基盤研究(A)
塩川 和夫, 西谷 望, 大山 伸一郎, 横山 竜宏, 大塚 雄一, 藤本 晶子, 野澤 悟徳, 吉川 顕正, 能勢 正仁
担当区分:研究代表者
配分額:41860000円 ( 直接経費:32200000円 、 間接経費:9660000円 )
地球周辺の宇宙空間のプラズマは磁力線に沿って地球の極域に流れ込み、オーロラに代表される極域の超高層大気の擾乱を引き起こし、さらに中緯度から赤道域に広がっていく。本研究では、既存のアジア域の地上観測ネットワークに加えて、北欧からアフリカ赤道域に至る緯度方向に、夜間大気光を撮像する高感度全天カメラによる地上観測ネットワークを新たに構築し、極域から赤道への超高層大気変動の伝搬過程を2つの経度で同時に測定する。これに人工衛星による観測やモデリングを組み合わせ、極域から赤道域への超高層大気・電磁場変動の発生・伝搬メカニズムとその経度・地方時による拡がりや違いを明らかにする。
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最新の複数衛星・地上観測に基づく地球電磁気圏の電磁波動とプラズマの相互作用の研究
研究課題/研究課題番号:21F21023 2021年4月 - 2023年3月
科学研究費助成事業 特別研究員奨励費
塩川 和夫, KIM HYANGPYO
担当区分:その他
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地上多点ネットワーク観測による内部磁気圏の粒子・波動の変動メカニズムの研究
研究課題/研究課題番号:16H06286 2016年4月 - 2021年3月
科学研究費助成事業 特別推進研究
塩川 和夫, 西谷 望, 関 華奈子, 大山 伸一郎, 大塚 雄一, 田中 良昌, 尾崎 光紀, 能勢 正仁, 片岡 龍峰, 三好 由純
担当区分:研究代表者
配分額:488930000円 ( 直接経費:376100000円 、 間接経費:112830000円 )
・本事業で各観測点に設置されたVLFアンテナ、誘導磁力計、高感度全天カメラ、リオメータ、EMCCDカメラや、平成28年12月に打ち上げられたあらせ衛星、本事業で開発されているモデリングなどを通じ、令和元年度には38件の査読付き論文を国際学術誌に出版した。代表的な成果は以下が挙げられる。
・ロシアのZhigansk観測点や米国のRBSP衛星における観測、モデル計算を組み合わせて、電磁イオンサイクロトロン波動(EMIC波動)が数百keVという従来考えられているよりも低いエネルギー範囲の放射線帯電子の消失に貢献していることを明らかにした。また、アラスカのGakona観測点のEMCCDカメラで高速撮像された脈動オーロラと、あらせ衛星で観測された磁気圏ELF/VLF波動(コーラス波動)の明滅の1対1対応を見出し、秒以下の時間スケールのオーロラの脈動が、コーラス波動の微細構造によって作られていることを世界で初めて明らかにした。さらにフィンランドのKannuslehto観測点とあらせ衛星で同時観測された磁気圏ELF/VLF波動を詳細に解析し、磁気圏赤道面における地球磁場の曲率が、ここで生成される波動の特性を大きく左右していることを明らかにした。これらの電磁波動の衛星ー地上観測の成果は、人類の宇宙利用の脅威となる放射線帯粒子の生成・消失の機構の解明につながる重要な成果である。
・ノルウェーのトロムソ観測点で得られた熱圏風のデータ解析から、オーロラサブストーム開始前後の熱圏風の変動や地磁気静穏時の熱圏風の動態を明らかにした。また、北欧と南極昭和基地の大型レーダーとあらせ衛星の同時観測により、高エネルギー粒子の降込みに伴う中間圏レーダーエコーの発生を見出した。これらの観測は、宇宙空間からの高エネルギープラズマ粒子の流入に対する地球大気の応答を明らかにする上で重要な成果である。
・フィンランド、アイスランド、カナダ、ロシア、アラスカ、日本などの既存の観測点の自動定常観測を維持・継続している。残っているカナダのNain観測点もすべての装置及び記録計の設置を終了し、キャンペーンベースで稼働させることができており、得られたデータの解析も進められている。
・引き続き、これらの観測で得られるデータをERGサイエンスセンターとIUGONETによるデータベースを利用してデータベース化して公開し、国内・海外との共同研究を促進することができている。
・定常観測を継続している日本のERG(あらせ)衛星の軌道に合わせて、令和元年度の秋にもキャンペーン観測を行った。また、米国のVan Allen Probe衛星・THEMIS衛星などの内部磁気圏衛星との同時観測データの解析を進めることもできている。
・波動と粒子の相互作用を局所的およびグローバルに評価するモデリングの開発を継続し、これらの観測と比較することで、モデルの改良と粒子加速・消失の定量評価を行いつつある。
・これらの地上・衛星観測、モデリングから、数多くの研究成果が得られている。
・カナダのNain観測点は、電源が得られない場合は発電機を活用してあらせ上空通過時などに観測を行ってデータを取得していく。
・本研究では8か所の観測点・5種類の機器から大量のデータを得ている。これらの観測データはすべて大容量ストレージに保管され、世界的に広く使われているCDFフォーマットに変換されて、ネットワークを介して世界の研究者に公開されている。昨年度に引き続き、新しく得られてくるデータも世界の研究者に公開し、データ利用の促進と成果の創出をはかっていく。
・本事業ではホームページ(http://www.isee.nagoya-u.ac.jp/dimr/PWING/)を立ち上げてデータの説明や進捗状況、データへのリンク先などを公開している。このホームページを引き続き運用し、情報発信をはかっていく。さらに、関連研究の国際ワークショップや国際シンポジウムを開催して、成果の創出をはかっていく。
・本研究の成果は、科学論文として発表していくだけでなく、さまざまな形で社会へ発信していくことが重要である。このために、出前授業や、大学院生・若手研究者向けの国際スクール、重要な成果のプレスリリースなどを実施していく。 -
地球電磁気圏擾乱現象の発生機構の解明と予測
研究課題/研究課題番号:15H05815 2015年6月 - 2020年3月
新学術領域研究(研究領域提案型)
三好 由純
担当区分:研究分担者
本計画班では、人類の活動に特に大きな影響を及ぼす宇宙天気現象のうち、宇宙放射線、電離圏変動、地磁気誘導電流(GIC)の3つに焦点をあてて研究活動を進めてきた。宇宙放射線については、プラズマ波動による放射線帯粒子加速および消失の実証的な観測に成功した。電離圏変動については、1-2日先までの電離圏変動予測を可能とするシステムを構築した。GICについては、物理シミュレーションを構築し、日本の送電線網を流れるGICの計算を可能にするとともに、高い精度での再現に成功した。
本計画研究では、人類の社会活動、宇宙活動に大きな影響を与える宇宙天気現象のうち、宇宙放射線、電離圏変動、地磁気誘導電流に焦点をあてて研究を進めてきた。新しい人工衛星の観測データや、本計画で新たに設置した地上観測点データ、また本計画で独自に開発したシミュレーション群を用いた研究によって、各現象の物理素過程の理解を飛躍的に進めるとともに、太陽、太陽風の変動に応じて、各現象の変動予測を可能とするモデルを構築し、実際の現象の予測を可能にした。 -
偏光分光イメージング観測によるオーロラ偏光過程の解明
研究課題/研究課題番号:26302005 2014年4月 - 2018年3月
坂野井 健
担当区分:連携研究者
本研究は、世界で初めてオーロラの発光スペクトルの広視野偏光分布を観測する偏光分光メージャーと機器偏光を定量的に校正可能な光源を開発した。この装置を2015年に北米アラスカに設置し、厳密な校正データ取得とオーロラの連続観測を行った。この結果、630nmオーロラの直線偏光度が1.6±0.9%であることを明かにした。また、偏光度は天頂付近で小さく、低い仰角で大きいことがわかった。このようにオーロラ偏光を天頂から低い仰角まで一度に測定されたのは世界初である。また、この計画では北欧EISCATレーダーと光学観測等でも国際貢献した。本研究を通じて4名の修士、2名の学士がうまれており、高い教育効果があった。
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人工衛星-地上ネットワーク観測に基づく内部磁気圏の粒子変動メカニズムの研究
研究課題/研究課題番号:25247080 2013年4月 - 2017年3月
塩川 和夫
担当区分:研究代表者
配分額:38350000円 ( 直接経費:29500000円 、 間接経費:8850000円 )
・ロシアのZhigansk観測点において、誘導磁力計による定常観測を平成28年9月14日より開始し、良好なデータが取得できていることを確認した。ロシアのZhigansk観測点を管轄するヤクーツクのIKFIA研究所に、平成28年9月末にVLFアンテナ、高感度全天カメラを送付した(平成27年度の本計画の繰り越し分による実施)。また、関連機器による定常観測が行われている既存の観測点であるアサバスカ、トロムソ、マガダン、パラツンカ、レゾリュート、国内の母子里、陸別、信楽、鹿児島、佐多などの自動観測を維持・継続した。
・アサバスカ、マガダン、パラツンカの誘導磁力計による5年間の同時観測データを統計的に解析して、Pc1帯地磁気脈動の振幅変調の観測点ごとに違いの季節・太陽活動度・地方時・地磁気活動度などへの依存性を明らかにした。この結果から、この波動の振幅変調が磁気圏ではなく電離圏の伝搬中にうなりによって発生していることを示唆した。また、アサバスカで1年間に観測されたVLF/ELF帯波動の統計解析を行い、この波動の季節・地方時・地磁気活動度などへの依存性を明らかにした。これらの波動は、人工衛星に悪影響を及ぼす放射線帯粒子の加速や消失を引き起こしていることがわかっており、今回の結果は、この加速・消失過程の時間・空間変化に示唆を与えるものである。
・なお、本計画は、研究代表者が平成28年度から別の特別推進研究の代表者になったために、平成28年度途中で廃止になった。本計画で予定されていたカナダ中部のアサバスカ、カナダの東海岸、及び、ロシアのZhigansk観測点における光学・電磁場計測は、この特別推進研究によって引き続きおこなわれることになった。
28年度が最終年度であるため、記入しない。
28年度が最終年度であるため、記入しない。 -
北米域での高時間分解能オーロラ観測と電波観測を軸とした脈動オーロラ変調機構の研究
研究課題/研究課題番号:25302006 2013年4月 - 2017年3月
三好 由純
担当区分:連携研究者
周期数秒で明滅する脈動オーロラの変調機構の解明を目指して、アラスカ・ポーカーフラット、カナダ・アサバスカに設置した高速撮像カメラ、およびVLF帯のループアンテナによる観測研究、および低高度人工衛星とシミュレーションの比較にもとづく研究を行った。高速撮像観測とVLF電波の比較から、脈動オーロラの主脈動および内部変調と、ホイッスラー・コーラスのバースト的出現、およびrising tone elementとの対応が明らかになった。人工衛星観測とシミュレーションとの比較によって、脈動オーロラの主脈動、内部変調、背景降りこみが、ホイッスラー・コーラス波動のスペクトル構造に対応することを解明した。
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人工衛星-地上ネットワークによるオーロラと電磁波動の高時間分解能観測
2011年4月 - 2015年3月
科学研究費補助金 基盤研究(B)
担当区分:研究代表者
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人工衛星-地上ネットワークによるオーロラと電磁波動の高時間分解能観測
研究課題/研究課題番号:23403009 2011年4月 - 2015年3月
塩川 和夫
担当区分:研究代表者
配分額:19890000円 ( 直接経費:15300000円 、 間接経費:4590000円 )
本研究では、カナダ北極域のサブオーロラ帯(オーロラ帯よりも少し低い緯度帯)にループアンテナ及び高速のオーロラ観測カメラを設置し、これまでにない最高時間分解能のオーロラ画像(100Hz)とVLF/ELF波動(100kHz)の同時観測を2012年に新たに開始し、2015年現在まで自動定常観測を継続している。これにより、サブオーロラ帯でのVLF/ELF波動のさまざまな変動特性やその波動粒子相互作用を表すオーロラとの関係が世界で初めて明らかにされた。
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極域電離圏プラズマメソスケール密度構造のカスケード過程の解明
研究課題/研究課題番号:22340143 2010年4月 - 2015年3月
田口 聡
担当区分:連携研究者
極域電離圏のプラズマは,様々な物理過程によって水平方向に10 kmから100 km のメソスケール構造を作ることが多い.本研究では,そのような構造と,さらにその構造の生成に関わるメソスケールのオーロラ構造を高い時間分解能で捉えることのできる全天イメージャーを構築して,その装置によって得られたデータを解析した.極冠域で生じている現象については,その出現特性と構造化の特徴を見出した.また,カスプ域については,磁気圏からの粒子降下が,これまでに同定されていない時間空間特性をもつことを明らかにした.
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EISCATレーダーを用いたジオスペースに関する国際協同研究
研究課題/研究課題番号:22403010 2010年4月 - 2014年3月
藤井 良一
担当区分:連携研究者
磁気圏―電離圏結合に重要な3次元電流系とカウリングチャネル、極冠域ポーラーパッチ、電離圏上下振動と磁気圏電場の短周期成分との相関、下部熱圏高度のイオン-中性大気衝突周波数の時間変化、下部熱圏におけるオーロラ加熱評価と大気温度変動、オーロラ擾乱に伴う下部熱圏・中間圏におけるナトリウム原子の密度変動、オーロラサブストームとイオンアウトフローの関係、フォトメータによる電離圏電気伝導度導出手法の開発、伝搬性電離圏擾乱等に関する新たな知見を得た。
EISCAT_3D計画の実現に向けて、研究集会等を開催し、共同研究者と議論を行った。EISCAT_3Dを用いたサイエンスケースについて、とりまとめを行った。 -
インド・東南アジア・太平洋の広域観測による赤道スプレッド F 現象の日々変動の解明
研究課題/研究課題番号:22403011 2010年 - 2012年
山本 衛
担当区分:連携研究者
赤道スプレッドF現象(Equatorial Spread-F、ESF と略記、プラズマバブルとも呼ばれる)は電離圏の最も強い擾乱の一つであり、近年の高度な衛星利用、特に GPS 測位に悪影響を与え得る。本研究では、未だ謎の深い ESF の日々変動を中心として、アジアから太平洋にわたる広域に各種のレーダー・大気光観測装置・衛星ビーコン受信機等による観測網を構築して国際共同研究を展開した。ESF の日々変動に関して、午後の時間帯に発生する波長数百 km の大規模波動構造(Large-Scale Wave Structure; LSWS)が日没と共に振幅を増大し、 ESF 発生に結びつく様子を見出した。また太陽活動度が低い時期には、夜半過ぎに ESF 類似の現象が発生することを明らかにした。
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高感度分光多点観測による超高層大気変動の研究
研究課題/研究課題番号:20244080 2008年4月 - 2013年3月
塩川 和夫
担当区分:研究代表者
配分額:47840000円 ( 直接経費:36800000円 、 間接経費:11040000円 )
ロシア、カナダ、日本、ノルウェー、インドネシア、タイ、オーストラリアなどにおけるファブリ・ペロー干渉計5台と高感度全天カメラ10台以上を用いた夜間大気光の高感度分光多点観測から、高度80-300kmの地球の超高層大気の擾乱に関するさまざまな研究成果が得られた。代表的な成果の例として、夜間に発生する中規模伝搬性電離圏擾乱(MSTID)のオーロラ帯付近での振る舞いの解明や、80-90km高度の中間圏の大気重力波のダクト伝搬の可視化、台風から発生した大気重力波が中間圏界面付近まで伝搬している様子、赤道域プラズマバブル現象の東向き伝搬と中性大気の風の関係(F層ダイナモ過程を示唆)、などが挙げられる。
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高感度分光多点観測による超高層大気変動の研究
2008年
科学研究費補助金 基盤研究(A),課題番号:20244080
塩川 和夫
担当区分:研究代表者
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カナダ北極域におけるオーロラの高時間分解能光学観測
研究課題/研究課題番号:19403010 2007年 - 2010年
小川 忠彦, 佐竹 洋
担当区分:研究分担者
本研究では、カナダ北極域を中心とした多地点のオーロラ帯において、既存の高感度全天カメラによる定常観測(時間分解能:分)に加えて、30分の1秒の高時間分解能でオーロラの変動を観測する全天カメラを運用し、これらのデータをTHEMIS衛星などの人工衛星データと比較することにより、サブストームに伴うオーロラの微細構造の発達特性や、極冠域の電離圏構造を明らかにした。
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大型短波レーダーによる中・高緯度電離圏プラズマー超高層大気相互作用の研究
研究課題/研究課題番号:19340141 2007年 - 2010年
西谷 望
担当区分:連携研究者
本研究では、2006年11月に稼働を開始した北海道-陸別HFレーダーを主に活用し、北海道北方からオホーツク海、極東シベリア領域にわたる電場擾乱等の電離圏プラズマ関連現象と伝搬性電離圏擾乱等の超高層大気関連現象の間の相互作用の解明に焦点を置いて研究を進め、サブオーロラ帯電場擾乱の発生条件や伝搬性電離圏擾乱による電離圏プラズマ構造運動のメカニズム、および巨大地震後に超高層大気変動により引き起こされる電離圏プラズマ変動の特性等を明らかにした。
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低高度極軌道衛星と地上観測網によるジオスペース電離圏現象の多次元・同時総合観測
研究課題/研究課題番号:19403011 2007年 - 2010年
平原 聖文
担当区分:連携研究者
2005年8月23日に打ち上げられた「れいめい」衛星は極域低高度を飛翔する小型科学探査衛星であり、世界初の高空間・高時間分解能によるオーロラ粒子・発光の同時観測成果をもたらした。この観測データにより、電離圏・磁気圏結合、及び、磁気圏尾部でのプラズマダイナミクスに関する新しい知見を得た。特に、極域磁気圏におけるオーロラ・電磁気圏プラズマの同時・多点・多元観測を遂行し、電離圏・磁気圏結合、及び、磁気圏尾部でのプラズマダイナミクスに関する観測データ・事象の相互比較を行った。
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磁気インピーダンスセンサを用いた超小型・広帯域磁力計システムの開発
研究課題/研究課題番号:19654072 2007年 - 2009年
塩川 和夫
担当区分:研究代表者
配分額:3100000円 ( 直接経費:3100000円 )
昨年度に引き続き、駆動回路及びMIセンサを研究代表者のグループの研究室内で製作し、回路定数、感度、コイルの巻数を変えて動作テストを繰り返し、磁場を感知して、正常に駆動する回路を製作した。昨年度までに行ってきたMIセンサ及び駆動回路の1次・2次試作では、磁気シールドケース内でのDC磁場変動は数百nT以上もあったが、3次試作では、この値が6.2nT程度の変動にまで改善された。また3次試作最終回路のACノイズレベルは、0.64nT/Hzであった。DC安定度については、定磁場基準のフィードバック、MI出力パルスの積分化、MIセンサに交流磁場を印加するなどの対策が効いているものと思われる。しかし、DC安定度が増したとはいえ、周辺の環境変化(温度・湿度変化等)に耐えられるほどの安定度はなく、センサを移動させたりするとDCオフセットが大きく変化する、という特徴は変わらない。また、現在のACノイズレベルの高さでは、弱いもので0.01nT程度の振幅を持つPc1帯の地磁気脈動をとらえるのは難しい。3次試作中、ACノイズレベルの低減に努めたが、それでも0.05nT/Hzが最高であった。ノイズレベルの高さの大きな要因の一つは、MIパルスのサンプリングに使っているアナログスイッチが出しているノイズであり、このアナログスイッチのノイズ低減方法を考えることが今後の課題であることがわかった。
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磁気インピーダンスセンサを用いた超小型・広帯域磁力計システムの開発
2007年
科学研究費補助金 萌芽研究,課題番号:19654072
塩川 和夫
担当区分:研究代表者
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シベリア域から日本におけるジオスペース環境変動の衛星-地上共同観測
研究課題/研究課題番号:18403011 2006年 - 2009年
塩川 和夫
担当区分:研究代表者
配分額:16840000円 ( 直接経費:14500000円 、 間接経費:2340000円 )
ロシア極東域のパラツンカ観測点、マガダン観測点に高感度全天カメラ・誘導磁力計を設置、日本に設置した高感度全天カメラ、誘導磁力計、北海道のSuperDARNレーダーを組み合わせて、極東シベリア域から日本にかけての超高層大気の観測網を構築した。これらのデータと、上空を飛翔する人工衛星データを組み合わせて、低緯度オーロラを引き起こす特殊な電子降り込みの特性や、サブオーロラ帯から中緯度における電離圏の擾乱の特性を明らかにした。
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新観測技術を用いた熱圏下部大気の3次元空間構造の研究
研究課題/研究課題番号:18340152 2006年 - 2008年
中村 卓司
担当区分:連携研究者
高度10km 以下の対流圏から高度数百kmの超高層大気には鉛直に伝搬する大気波動を通じて強いカップリングがあることがわかってきたがその水平構造は謎が多い.本研究では、高性能化した大型大気レーダー(MU レーダー)、高度に安定化したレーザーを用いるナトリウム温度ライダーを稼働させ、さらに種々の大気光観測装置を組み合わせて、中層大気と超高層大気の境界である下部熱圏領域の水平スケール1000km以下の力学場を3次元構造として捉え、種々の大気波動の影響を議論した.
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環太平洋ネットワーク観測による宙空領域へのエネルギー・物質流入過程の研究
研究課題/研究課題番号:18253005 2006年 - 2008年
湯元 清文
担当区分:連携研究者
既存の環太平洋地磁気ネットワーク(CPMN)に新たなリアルタイムデータ収集システム(MAGDAS)、電離層電場観測レーダ、宇宙線計等を有機的に組み合わせた、全球的準リアルタイム環太平洋ネットワーク観測網の完成とそれを用いた「宇宙災害予測」に向けた海外学術調査を実施した。この全球的ネットワーク観測から、太陽活動や太陽風変動に対する地球磁気圏・電離圏の電磁プラズマ環境の長周期変動から過渡的応答に関する成果を得ることができた。
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カナダ北極域におけるオーロラ・超高層大気の高感度光学観測
研究課題/研究課題番号:16403007 2004年 - 2006年
小川 忠彦
担当区分:研究分担者
本研究により、極冠域のResolute Bay観測点(磁気緯度83度)に、平成17年1月に高感度全天カメラを設置し、自動観測を開始した。さらに平成17年9月には、高感度全天カメラ、掃天分光フォトメータ、誘導型磁力計をサブオーロラ帯のAthabasca観測点(磁気緯度62度)に設置し、こちらも自動観測を開始した。平成19年現在、どちらも順調に観測を継続している。また、平成18年6月から平成19年4月に、高感度全天カメラを米国・ニューヨーク州Ithacaに設置し、自動観測を行った。本研究の結果として、Resolute Bayで得られた極冠域パッチ現象のデータから、パッチの動きが惑星間空間磁場の変動と非常に良い相関があることを見いだした。この結果は、極冠域のプラズマ対流を可視化し、太陽風の変動に対して磁気圏のプラズマ対流がどのように応答するかを調べるための新たなツールを与えている。このパッチの動きと、Super DARNレーダーで得られるプラズマ対流の動きの比較も行われている。また、Athabascaで得られたオーロラ、地磁気データから、オーロラ帯から赤道側に離れた孤立オーロラとPc1地磁気脈動が1対1対応していることを初めて見いだし、地球の内部磁気圏において、波動と粒子の相互作用が従来考えられていたよりもはるかに空間的に狭い領域で発生していることを示した。
これら3点の観測から得られるデータはすべてデータベース化され、プロットがホームページで公開されている。また、これらの観測と共同研究が期待されるTHEMIS衛星は、平成19年2月17日に米国から打ち上げられ、平成19年度後半には、カナダの観測点上空でオーロラサブストームに関する共同観測を行うことになっている。 -
太陽風から磁気赤道領域までのエネルギー・物質流入過程に伴う宙空環境変動の研究
研究課題/研究課題番号:15253005 2003年 - 2005年
湯元 清文
担当区分:研究分担者
15・16年度は、相手国の海外共同研究者の協力を得て、210度磁気子午線沿いのオーロラ帯のアラスカ、シベリア地区での電磁場・光学観測を充実し、また、赤道域のフィリピン、ミクロネシア諸島での大気電場、電磁環境の調査を重点的に行い、全地球的規模のリアルタイム予備観測を実施した。各地点での地磁気・ULF波動の観測についても、現地協力者と協議し共同観測を実施した。
最終年度の17年度も環太平洋域の多点観測点と南米、アジアの経度の隔った磁気赤道沿いの多点観測点とを組織的に組み合わせた全地球的規模の環太平洋地磁気ネットワーク(CPMN)観測を実施し、太陽風-地球磁気圏相互作用により極冠域、磁気圏境界領域、そして磁気圏尾から内部磁気圏に侵入した電磁場擾乱エネルギーとプラズマ粒子が、磁気赤道領域までどのように侵入・変換されていくのかその時空間的伝播機構とその過程、極域3次元電流系と中・低緯度の電離層ダイナモ領域に発生するSq電流系との結合過程について実証論的解明を行なった。さらに、磁力線共鳴振動法による宙空プラズマダイナミクスの診断手法確立の為の観測を実施し、所期の目的を達することが出来た。
これらの海外学術調査から、磁気圏境界から磁気赤道までの宙空領域で発生する様々な電磁・プラズマ環境変動を空間非均一・非定常が重要で高度に領域間結合した複合・複雑系の物理現象として捉えた新しい解釈と知見を得ることができた。また、2004年から始まったCAWSES/ILWS/IHY国際共同研究期間に、我が国を代表する「宇宙天気」研究として積極的に参画し、国際的な宇宙天気共同研究のための地上ネットワークデータの発信・貢献を果たすための観測ネットワークを構築するができた。
以上の研究成果は、94編の国際学術雑誌、135編の国際会議報告、126編の国内会議報告にまとめられた。 -
日米地上観測ネットワークと衛星観測によるMLT領域の大気波動と組成変動の統合観測
研究課題/研究課題番号:14403008 2002年 - 2004年
中村 卓司
担当区分:研究分担者
本課題では、MLT(中間圏下部熱圏)領域の変動の中でも、大気波動とそれに伴う大気組成の変動に注目して、電波および光による日・米・ブラジルを中心とする地上からの観測と衛星観測を用いて、変動を大気重力波・潮汐波・プラネタリ波などに相当する種々の空間・時間スケールに分離することを目的とした。
国内の信楽MU観測所でのMUレーダーおよび大気光イメージャ(2地点)、ファブリペロ干渉計等での複合観測から、大気重力波と大気光プロファイル変動の詳細を明らかにした。
また、新たに移動用のOH全天イメージャを開発することにより、米国コロラド州でナトリウムライダーと2台の全天大気光イメージャによる同時観測(CO2イメージャキャンペーン)を行い、大気光の縞構造の高度と大気不安定構造の関係を観測的に明らかにした。
さらに、日本・米国・ブラジルでの大気光イメージ観測から重力波の緯度変化、経度変化についてこれまで蓄積した観測とレイトレーシングの手法を用いて対流圏の気象現象がMLT領域の重力波の直接的な励起源となっていること伝搬過程の大気潮汐波の影響を明らかにした。
また、レーダー観測データと衛星観測および数値モデリング(GCM)の結果の比較から、大気潮汐波の経度変動すなわち太陽非同期潮汐波の影響が大きいことが示され、これらが大気光で観測される大気重力波の砕波の特性の地域差につながる可能性を示唆した。さらに3次元領域モデルで重力波の砕波と大気光のリップルの関係を明らかにした。
以上のように本研究課題は、当初計画で目指した協同観測での成果に留まらず、種々の新たな研究領域に広がりを見せ、今後の新たな日米ブラジルそして他の国々との共同研究の確固とした基盤を作ることができた。 -
赤道大気エネルギーによる熱圏変動の研究
研究課題/研究課題番号:13136201 2001年 - 2006年
小川 忠彦
担当区分:研究分担者
本研究課題の当初の設定目標は、1)赤道域対流圏に起源を持つ大気波動のエネルギーや運動量が熱圏高度に輸送されて散逸する過程と、2)散逸エネルギーが誘起する熱圏大気の変動と電離圏プラズマの応答過程を研究し、大気活動が世界で最も活発なインドネシア域に特有の赤道大気上下結合を解明することであった。このため、インドネシア域の高度80〜500kmの熱圏・電離圏を探査する独自の装置(光・電波観測装置、VHFレーダー、磁力計)をスマトラ島コトタバンの赤道大気レーダーサイトに設置して連続観測を実施するとともに、赤道レーダーを中心としたリージョナルネットワーク及び日本とオーストラリア内の観測拠点からなる広域ネットワークから得られる電離圏・熱圏データと併せて研究を行った。これらの自動観測から得られるデータは、13に挙げる複数のホームページで公開し、共同研究を促進している。これらの観測から、(1)赤道熱圏・電離圏における大気波動の散逸(赤道上空での新たな南向き熱圏波動の発見、スマトラ沖地震で誘発された電離圏変動の発見など)、(2)赤道電離圏を介した南北中緯度電離圏の水平結合(伝搬性電離圏擾乱の磁気共役性の発見)、(3)赤道電離圏の電子密度擾乱(赤道プラズマバブル中の電離圏不規則構造の詳細構造の解析)、(4)プラズマバブル発生と対流圏活動との関係、などの数多くの新たな知見を得た。
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中緯度熱圏大気波動の南北共役点観測
研究課題/研究課題番号:13573006 2001年 - 2004年
塩川 和夫
担当区分:研究代表者
配分額:12200000円 ( 直接経費:12200000円 )
・平成13年7月に全天カメラ1式をアレシボ観測点(プエルトリコ)に持ち込み、アレシボにある大型レーダーと全天カメラによるTIDの同時観測を約2週間行った。この観測から、真夜中の赤道付近の電離層からやってくる1000kmスケールの大規模波動構造、200kmスケールの中規模伝搬性電離圏擾乱のそれぞれにっいて、レーダー・カメラ同時観測に成功した。
・平成13年10月に、日本の磁気共役点にあたるオーストラリアのダーウィンに、上記のカメラを設置し、定常観測を開始した。同年10-11月にかけて、赤道域で発生したプラズマバブルが、日本の鹿児島県佐多観測点とダーウィンで同時に観測された。詳細な解析から、この構造が日本とオーストラリアでちょうど鏡像の関係になっていることが見出され、赤道プラズマバブルの構造が、南北の磁力管をつないだ非常に大規模な構造であることがわかってきた。
・信楽・陸別で大気光イメージに観測された中規模伝搬性電離圏擾乱(MSTID)を統計的に解析し、その伝搬特性の季節変化、緯度変化を初めて明らかにした。さらに、DMSP衛星との同時観測例を詳しく調べることにより、MSTIDの波状構造に伴って電離層中に分極電場が生じていることを世界で初めて示した。
・平成14年8月9日に鹿児島県佐多岬とオーストラリアのダーウィンで、MSTIDの大気光イメージング観測に初めて成功した。その結果、MSTIDが磁気赤道をはさんで南北半球でちょうど対称の形をしており、南北半球で1対1に対応することがわかった。この事実は、MSTIDが電離層の分極電場の構造を持っており、その電場が磁力線を通じて南北に投影されていること、を示している。さらに平成15年5月21日から6月7日に第3回FRONTキャンペーン観測を行い、オーストラリア中央部のRenner Springs(滋賀県信楽町の磁気共役点)に新たに1台の大気光全天カメラを設置したほか、国内外計7カ所で全天カメラによる伝搬性電離圏擾乱の総合観測を行った。この観測から、中規模伝搬性電離圏擾乱が、非常に良い南北共役性をもち、南半球と北半球で対称な構造を保ちつつ伝搬していることがわかった。 -
グローバルな宙空環境変動観測記録システムの開発
研究課題/研究課題番号:13554016 2001年 - 2003年
湯元 清文
担当区分:研究分担者
平成13年度から15年度に渡って当該研究課題の科研費の交付を受け、全地球的規模に分布した各観測点での絶対時刻精度を数十m秒以内に保てるGPS衛星信号受信システムを内蔵した信頼性の高い安定した観測データ記録装置を開発し、グローバルな宙空環境変動観測用の半自動記録システムの開発と実用化を達成した。以下、研究成果の概要をまとめる。
1.データ収録システム並びに実用化モデルの検査
データ収録システムを設計した後、電源対策を施し、GPS計時装置を組み入れた、フラッシュメモリーカード(650Mbyte)を記録媒体とするCPUによるシステムコントロールできうる省電力型の半自動観測記録システムを試作完成し、その性能を検査した。
2.実用化システムの製作・購入
1に基づいて開発した仕様に従ってGPS付半自動観測記録システムを製作する為に備品を購入した。
3.実用化システムの性能試験
210度磁気子午線沿いのシベリア、アラスカ、日本、オーストラリア等の36観測点、磁気赤道域で経度の隔ったブラジル、ペルー、西太平洋、ミクロネシア諸島の12観測点や北米の極冠からオーロラ帯の20観測点からなる観測網の中で、特に、国内の5観測点と設置環境の悪い観測維持の困難な海外観測1点に新しいGPS付観測記録システムを配備し、データ取得の安定度、データの精度等の確立の為の、実用化システムの性能試験をした。
4.インターネット、衛星及び電話回線を用いた観測データのオンライン・リアルタイム取得の予備観測を開始した。
これらの成果を下に、今後、地球規模に配置された50点以上の観測点間の相対的な時間差を1秒以内に確保し、太陽風擾乱により発生したsc/si変動などの過渡現象やDP2やULF波動の侵入過程や電磁圏内の伝播過程を解明・検証することが可能となるであろう。 -
高時間分解能データを用いたサブストームに伴う磁気圏尾部ダイナミクスの研究
研究課題/研究課題番号:13640449 2001年 - 2003年
塩川 和夫
担当区分:研究代表者
配分額:2100000円 ( 直接経費:2100000円 )
1.サブストームにおける近尾部でのプラズマ過程を調べるために、1992-2000年のGEOTAILデータから、|X|が11Re以下,|Y|が5Re以下の位置で観測されたはっきりしたdipolarizationを21例選び、その詳細を調べた。その結果、(1)磁場のdipolarizationは、数分〜10分程度継続する速い磁場変動をしばしば伴っていること、(2)この磁場変動は数秒程度の磁場の急激な増大や減少で形成され、振幅はしばしば10nTに達すること、(3)磁場のelevation angleが増大(dipolarization)する直前に、数秒-10秒程度の短い時間であるが、elevation angleが大きく減少する例が複数ある(explosive growth phase)こと、(4)この磁場変動は、特に磁場の弱い領域で起きている場合、地球向きのconvective flowを伴っていること、などがわかった。
2.特にこの中の1例に関して、64Hzサンプルの電場生データを詳しく解析した結果、周期が5Hz程度の特徴的な電場の振動が、1-5mV/mという大きな振幅をもって発生していることがわかった。この振動が、tail currentの流れを妨げて、観測されたような特徴的な磁場elevation angleの減少を引き起こした可能性があり、今後、粒子シミュレーションとの比較を行っていく予定である。
3.上記のデータ解析ではいくつかの観測事実を明らかにしたが、同時に、GEOTAILを含めたこれまでの人工衛星データでは、10Reよりも内側でサブストームに伴って起きている現象の成因について、決定的な結論を出すことは難しいことがわかった。このため、新たに10Reよりも内側の内部磁気圏を集中的に探査する人工衛星計画を提案し、その具体化について検討を重ねた。 -
列島規模観測網による熱圏大気波動の立体的研究
研究課題/研究課題番号:11440145 1999年 - 2002年
小川 忠彦
担当区分:研究分担者
1.本研究課題により、平成12年7月より鹿児島県佐多岬で、平成13年10月にはオーストラリアのダーウィンで、それぞれ大気光全天カメラの定常観測を開始し、平成10年10月より北海道陸別町及び滋賀県信楽町で行われている全天カメラ観測とあわせて、4点の多点大気光同時定常観測を現在に至るまで継続している。また、平成11年8月には沖縄県国頭村で、平成14年8月には鹿児島県種子島で、全天カメラによるキャンペーン観測を行っている。
2.中間圏界面の大気重力波観測に関する成果は、a)日本列島及びオーストラリアにおいて、重力波の発生、伝搬特性の季節変化、緯度による違いを明らかにした、b)局在化した特異な重力波構造を発見し、それが重力波間の非線形相互作用により発生している可能性を示唆した、c)近接した2点同時重力波イメージング観測により、重力波及び大気光の発生高度を特定した。
3.中規模伝搬性電離圏擾乱(MSTID)に関する成果は、a)日本でのMSTIDの発生確率、季節変化を統計的に明らかにした、b)人工衛星との比較観測、背景風観測によるモデル計算との比較により、MSTIDが大気重力波ではなく電離層不安定に起因する電場構造として存在していることを初めて明らかにした、c)さらにオーストラリアと日本の同時観測により、この電場構造が南北両半球の磁力線を通して同じ構造をとっていることを初めて明らかにした。
4.大規模伝搬性電離圏擾乱(LSTID)に関する成果は、a)磁気嵐中に大気光の増光を伴うLSTIDを特定し、その変動が熱圏の極向き中性風によって引き起こされていることを、モデル計算、中性風の直接観測などにより示した、b)極域のデータと比較することにより、この極向き中性風の発生が従来の簡単な考え方では説明できないことを示した。
5.赤道域プラズマバブルに関する成果は、日本付近の緯度でもプラズマバブルが観測されることを示し、日本とオーストラリアの同時観測から、このバブル構造が赤道をはさんで対称になっていることを初めて明らかにした。
6.低緯度オーロラに関する成果は、平成11年から14年度において、11回の低緯度オーロラ観測に成功した。このうち平成13年3月31日と11月24日の低緯度オーロラは、北海道だけでなく滋賀県でも観測に成功し、科学機器で観測された低緯度オーロラの日本最南端記録となった。
7.中間圏、熱圏の中性風観測に関する成果は、ファブリ・ペロー分光器の定常観測化に成功し、MUレーダーによる風速観測との比較により、大気光の発光高度の時間変化を明らかにしている。
8.これらの成果は、以下に示す論文として出版しているので、詳しくはそちらを参照されたい。また、定常観測により得られたデータは、http://stdb2.stelab.nagoya-u.ac.jp/omti/ですべて公開し、共同研究の推進に役立てている -
スヴァールバルISレーダーを用いた極冠域における電離圏イオン流出過程の研究
研究課題/研究課題番号:11440144 1999年 - 2001年
藤井 良一
担当区分:研究分担者
本課題はEISCATレーダー実験を基に特に磁気圏-電離圏間の粒子による物質とエネルギーの交換結合過程を定量的に理解することを目的とし、オーロラ粒子として磁気圏から降り込んでくる電子やイオンにより電離圏に与えられるエネルギーと、そのエネルギーにより電離圏から磁気圏に流出する電離圏イオンの定性的かつ定量的な特性とその駆動機構について知見を得ることができたと言える。
極域電離圏からのイオン流出の原因と関係すると考えられる異常な受信スペクトルを調べるため、ESR用に受信スペクトル表示プログラムを開発し、イオン速度と異常な受信スペクトルとの関係を調べた。そして、異常なスペクトルを受信した直後に沿磁力線上向きのイオン速度の増加が見られた。これは異常なスペクトルを受信する時間帯に、イオンが上向きに加速されることを示唆している。
高緯度電離圏におけるイオン上昇流の発生領域と磁気圏との対応、またその発生とオーロラ降下粒子現象との関連を調べるため、100例以上にわたるESRとDMSP衛星同時観測イベントデータを用いて統計研究を実施した。この結果、イオン上昇流が、これまで考えられてきたカスプ領域やクレフト領域で発生しているだけでなく、マントル領域と繋がっている上部電離圏でも発生していること、昼側高緯度領域のBPS領域やCPS領域ではイオン上昇流はほとんど起こらないこと、などが分かった。又、イオン上昇流の発生メカニズムの領域による違いを調べるため、ノルウェーのトロムソに設置されているEISCAT UHFレーダーおよびVHFレーダーを用いてイオン上昇流の磁気地方時による依存性を調べた。その結果、真夜中側で起きるイオン上昇流と朝側、夕方側で起きるイオン上昇流とは発生メカニズムが異なることが示唆された。 -
インターネット系磁気圏監視システムのグローバル展開
研究課題/研究課題番号:09041098 1997年 - 1998年
国際学術研究
林 幹治
担当区分:研究分担者
当研究の準備過程として試験研究[極域擾乱データの長期収集を目的としたインターネット系収録システムの開発(平成7年-平成9年)]による開発研究が行なわれた。そこでは、現に運用しつつあるグローバル磁場観測網を対象として、インターネットの持つ新メディアとしての公共性、経済性、普遍性が持つ可能性に着目して、データ取得の安定化と省力化への寄与に関する検討と機器の試作を行った。そこでの検討結果と開発された機器を実際にグローバル磁場観測システムに適用・運用してその評価を行うことがこの研究の目的であった。目的としたグローバルデータ収録システムの到達点は、(1)アラスカ大学との協力して進めてきた、カナダ西部極域磁場観測地点よりの衛星または電話回線による実時間伝送計画は次年度以降の実現見通しとなった。インターネット接続の観測機器をアラスカのGakonaに設置することになった。(2)ビクトリア地域における、電話回線による磁場データの遠隔取得とインターネットへの自動配信を開始した。(3)ノルウェー・スバルバール地域2地点よりのオーロラ画像データのインターネットによる監視(転送)実験を行った(毎分1画面の転送でもスバルバール地域-本土間の回線容量不足による取りこぼしが時折発生する)。(3)人工ノイズの極めて少ないバイカル湖の小島にあるUzuri観測所に自動観測を設置し、インターネットの基幹環境がメールレベルのロシア型ネットワークとして位置付ける。<4>郵政省通信総合研究所のメンバーを研究分担者に迎え、エルズミュアー島北部の観測地点Eurekaの磁場観測データをインターネット経由で配信するため、カナダ大気環境局と気象用専用通信回線の利用に合意を得て、次年度より実現の運びとなった。-時代の潮流として-,グローバルネットワーク化には様々な解が生まれつつある。人,技術、予算の継続性のある研究が必要であり、次期計画の提案が急務である。
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太陽風変動に伴う擾乱の極域から赤道域への侵入・輸送過程の研究
研究課題/研究課題番号:08041105 1996年 - 1997年
国際学術研究
湯元 清文
担当区分:研究分担者
日・豪、日・米の磁気共役点を含む210度磁気子午線沿いの多点と北米(カナダ、アメリカ)、南米(ブラジル、ペル-)、西太平洋域の経度の隔った赤道域の多点とを組織的に組み合わせた地球規模の地上観測網を用い、極域や衛星観測のみでは捉えられなかった地球規模の空問的なエネルギー輸送の広がりや時間発展を分離することにより、特に、磁気嵐や磁気圏嵐を引き起こすような太陽風の変動電磁場に呼応した磁気圏全体の応答の仕組みや、発生する擾乱・波動と高エネルギー粒子の極域から赤道域までの3次元的な流入・輸送・変換過程を明らかにすることが本研究の目的であった。
本国際学術研究の目的を達するために、平成8-9年度に以下のような調査研究が実施された。
(1)210度磁気子午線沿いのオーロラ帯に位置する極東のシベリア、アラスカ地区での電磁場擾乱の観測と磁気赤道域に近いフィリピン、グアム、ヤップでの電磁場並びに電離層擾乱の観測調査、新たに、極域(カナダ)や南米(ブラジル、ペル-)での電磁場観測を加えた、極域と赤道域での国際共同・同時観測研究を開始した。
(2)極域(カナダ)での電磁気擾乱の観測については、STEP国際事業期間に東京大学が中心に実施してきたネットワーク観測網の磁力計、オーロラ観測機器等の点検・再設置を行うことにより、国際共同の同時観測研究を再開した。
(3)また、極域擾乱の磁気赤道域までの侵入・輪送過程を調べるために、太平洋域の中・低緯度に位置する韓国、ハワイ、パプアニューギニア、ポナペ、インドネシア、オーストラリアの各観測点の地磁気観測装置の点検と再整備を行い、同時観測を開始した.
(4)特に、西太平洋域のフィリピンのセブ島とダバオ、ミクロネシア諸島のポナペ、ヤップ、グアムやクリスマス島の磁気赤道地域における観測研究については、新たな磁力計の設置や電磁気的な総合観測を実施するための学術調査が行なわれた。
(5)本研究に関わる地磁気、オーロラ、衛星等のデータを効率よく収集するために、1996年7月にオーストラリアで開催された西太平洋域地球物理国際会議と1997年8月にスウェーデン、ウプサラで開催されたIAGA(国際地球電磁気学・超高層大気物理学協会)学術総会に研究代表者と分担者を派遣した。特に、ISTP計画による人工衛星や本研究以外の海外での地上観測網との組織的な共同観測のための打ち合わせや、デ-夕収集・交換を積極的に行い、グローバルな電磁気擾乱の侵入・輸送過程の解析研究をすすめることができた。
(6)最終年度に研究成果を冊子にまとめた。
以上の調査研究により、極域や衛星観測のみでは捉えられなかった、1時間から数10分のDP2型の磁場変動からPc3-5帯のULF波動までの地球規模のエネルギー輪送の空間的な広がりや時間発展を分離できる基礎的なデータを取得するとともに、sc/siなどの過渡的な太陽風の変動電磁場に呼応した磁気圏全体の応答の仕組みや、発生する地球規模擾乱の極域から赤道域までの流入・輸送・変換過程の解明の手がかりを得ることが出来た。 -
雷放電に伴う成層圏・中間圏発光現象に関する研究
研究課題/研究課題番号:08044053 1996年 - 1997年
国際学術研究
渡部 重十
担当区分:研究分担者
雷放電は雷雲間で起こる対流圏特有の現象であると考えられてきたが,1990年雷放電に伴う未知の成層圏・中間圏発光現象が高感度のテレビカメラで発見された.高度50km以下の成層圏に出現する青色の"ブルージェット",高度50-90kmの中間圏で発光する赤色の"スプライト"が上向きの放電現象として世界的に大きな注目を集めている.本研究は地上からこの上向き雷放電発光現象を観測できる最も適した場所である米国コロラド州ユッカリッジにおいて高速フォトメータ,CCDカメラ,サーチコイル磁力計,ELF・VLF電波観測器等を用いて成層圏・中間圏における雷放電発光現象のメカニズムを解明することを目的として調査した.
1996年3名の派遣研究員が7月から約1ヶ月間,米国コロラド州ユッカリッジでスタンフォード大学イナン教授のグループと共同で雷雲上方で出現する発光現象(スプライト)を観測した.イナン教授のグループはVLF電波観測によりスプライト発生時間を正確に決定することができた.東北大学のグループは高時間分解能で測定できるフォトメータを用いて数msec〜数10msecの発光現象が高度〜100km付近に存在することを発見した.この現象をエルフと命名した.
1997年3名の派遣研究員を7月から約1ヶ月間,米国コロラド州ユッカリッジに再び派遣しスタンフォード大学イナン教授と共同観測を実施した.東北大学のグループは1997年度で使用した測定器にイメージャと磁力計を加えて,さらに詳細な観測を実施した.その結果はスプライトに伴いULF波動が発生していることを発見した.成層圏・中間圏での放電現象に伴ってガンマ線の放射も確認されていることから,雷放電の際に発生する強力な電磁波や電場による成層圏・中間圏・下部電離圏大気の急激な加熱によって成層圏・中間圏の大気組成,特にオゾンやNO密度の変化が起きていることが推測され,高高度の大気環境に大きな影響を与えている可能性がある. -
航空機搭載用二酸化窒素測定器の開発
研究課題/研究課題番号:07554079 1995年 - 1996年
小池 真
担当区分:研究分担者
二酸化窒素(NO_2)は一酸化窒素(NO)と共に、対流圏オゾンの光化学生成を支配する重要な成分である。本研究では、NO_2測定器の開発の鍵となるNO_2をNOに光解離変換する光コンバータの光源としてメタルハライド・ランプを使用し、またNO_2の光解離をおこさせるガラスセルの外壁をアルミ蒸着コーティングし、セル内でランプの光を多重反射させ、その変換効率を高めたことが特徴である。
初年度(平成7年度)には第一に、プロトタイプの光コンバータの光学系等の設計を行い、製作を行った。第二に、航空機での観測の際、外気圧の変化によることなくNO_2の変換効率を一定に保つための、テフロン製のバルブの設計・製作を行い、その性能を確かめた。第三に、NO_2をNOに変換した後NOを検出するための検出システムを既存のNO/NO_y(総反応性窒素酸化物)システムに加えた。
最終年度(平成8年度)には、前年度に製作を行った光コンバータとテフロン製バルブ流量コントローラおよび整備したNO検出器を使って、実験室内でNO_2を発生させ、その試料空気をサンプルすることによりNO_2の変換効率を調べた。この結果、50%という高い変換効率を得た。変換効率そのものは、光コンバータ内での滞在時間を長くする(気圧を高くする)ことによって可能であるが、五酸化二窒素(N_20_5)などからの干渉を押さえるためには、50hPaで1-2秒以下であることが必要なことが分かった。また硝酸を試料空気に混入させた結果、光コンバータの320nmより短波長の光を完全に光学フィルターで落とさないと、硝酸が変換され、NO_2の測定に影響することが分かった。
以上のように本研究では、プロトタイプの測定器の実験を通してNO_2測定の基本的な技術を確立するという本研究の目的はほぼ達せられ、今後は実際に航空機に搭載できる測定器を開発する予定である。 -
アラスカ・マッコ-リ島における磁気圏擾乱の磁気共役性に関する共同観測研究
研究課題/研究課題番号:06044094 1994年 - 1995年
国際学術研究
湯元 清文
担当区分:研究分担者
地球磁気圏内に発生する最も基本的な擾乱であるオーロラ嵐に伴って様々な擾乱現象が発生している。このオーロラ嵐の及ぼす電磁環境の変動の極域における磁気共役性と、これらの擾乱エネルギーの中・低緯度や赤道域までの輸送・伝播過程を解明するために、オーロラ帯の磁気共役点に位置するアラスカ・マッコ-リ島において、地磁気・大気電場・イメージングリオメータ並びに光学観測機器を用いて総合の国際共同観測研究を実施することが本研究の目的であった。また、北太平洋の極域に発生した擾乱が中・低緯度や赤道域の電磁場とどの様に関連しているかを観測的に調べるために、パラオ・ハワイ諸島において同時の地磁気観測を実施することも緊急の課題であった。さらに、アラスカ大学並びに東京大学が計画している北米大陸での地上多点観測網や、名古屋大学太陽地球環境研究所がSTEP国際共同特別事業の期間に実施している210度磁気子午線沿いの観測網のシベリア域での地磁気・光学観測とも組み合わせた組織的な同時観測を実行することにより、日本を含む極東域の高緯度から赤道域までのグローバルな領域においてオーロラ嵐の及ぼす電磁環境変動過程を究明することも本国際学術研究の目的であった。
平成7年度の調査研究は以下の様に計画的に実施された。
(1)アラスカ地域での観測調査・研究については、現地研究者との打ち合せを行なった後、平成6年度に予備調査したアラスカ観測点カツビューで日本の研究分担者が磁力計、オーロラ観測機器の点検、調査を行い電磁気的な総合観測を実施した。
(2)カツビューの磁気共役点に位置するオーストッリアのマッコ-リ島での地磁気・オーロラ観測については、オーストラリア南極庁の研究者との事前連絡を綿密に行い、現地での同時観測データをほぼ完全に確保できた。
(3)アラスカ域で観測されるオーロラの経度方向への広がりと動態を調べるために、研究者代表者を含む日本側の研究者がロシアのディキシィーに赴き、オーロラの同時観測研究を実施した。又、ティキシィーの低緯度側のズリヤンカに新たな光学観測を設置し、オーロラの観測を開始した。
(4)カナダ地域での極冠域のオーロラ観測研究については、東京大学のオーロラ観測計画と緊密な連携を取り、同時観測研究を実施することができた。
(5)アラスカ・シベリア域で発生したオーロラ擾乱に対応する低緯度、赤道域の他磁気変動を調べるために、パラオ、ハワイ諸島にアラスカ大学の研究分担者を派遣し、地磁気観測機を用いた磁気圏擾乱の侵入・伝播の観測研究を行った。
(6)又、夜側のアラスカ域で観測されるオーロラに対する昼カスプ域の粒子環境変動観測の為に、日本の研究分担者をノルウェーのニ-オルソン島に派遣し,オーロラの昼夜同時観測研究を実施した。
(7)カツビュー観測点にあるアラスカ大学の施設で、アラスカ大学及び現地協力者の協力により我が国の装置で観測を継続する一方、同大学が所有するオーロラ・地磁気のネットワークデータのコピーを取り、比較解析研究を開始した。
(8)ロシア域のデータ解析研をすすめる為に、モスクワの地球物理研究所に研究代表者が赴き、研究成果のまとめ並びに今後の成果の発表と研究の発展についての打ち合せを行い成果を上げることができた。
以上の観測・データ収集・比較解析研究から、オーロラ嵐に伴う擾乱の輸送過程、sc/si地場擾乱の赤道域への侵入過程、ULF波動の南北半球での非対称に関する結論が次の様に導き出された。
[1]東向きオーロラエレクトロジェトと磁気赤道に発達するジェト電流とが非常に似た変動をすることが発見され、数分から数時間周期帯の極冠域の変動電場の赤道域への侵入過程の傍証が得られた。
[II]sc/siの地磁気変動の振幅を低緯度共役点で観測すると南北非対称性が観られ、季節変化していることが発見された。これは磁気圏境界層に生じる電流に比べて、極冠域に侵入した変動電場が低緯側までDP-2型の電離層電流を大きく誘起していることを示唆している。
[III]高緯度・低緯度共役点で観測されるPc3-5のULF波動振幅に南北非対称性が発見され、これまでの電離層効果並びに磁力線振動論論の見直しをせまる観測事実が得られた。 -
北極冠・カスプ・オーロラ帯の広域電磁・プラズマ擾乱の研究
研究課題/研究課題番号:05041057 1993年 - 1995年
国際学術研究
林 幹治
担当区分:研究分担者
〔観測の概要〕
オーロラ・磁場擾乱域の2次元動構造の観測に基づく研究を行うために極域(カナダを中心にグリンランド、スピッツベルゲン、アラスカ)における調査と観測を実施した。極域、特に、極冠域に重点を置いてオーロラと磁場変動の広域多点観測を行い、太陽風場の変動が地球磁気圏の境界部・尾部にもたらす電磁・物質輸送の直接効果と、付随して蓄積される磁気圏構造エネルギーの間欠的緩和(オーロラ爆発に代表されるサブストーム)に至る発達過程の研究に必要な広域多点観測データを取得することを目的とした調査・研究である。
北極冠域、カスプ帯、オーロラ帯を含むこの地域を根元として地球磁場の磁束は外部磁気圏から磁気圏尾部に広がり、磁気圏全体の9割以上の空間を占める。この磁力線結合により磁気圏の広大な領域よりの変動情報がこの地域の電離圏に波及・投影される。観測地点の配置は、極冠域からオーロラ帯への現象域の連続性を確保することに留意した。磁力計観測網は、カナダ北極域を中心に、米国(アラスカ)、グリーンランド、ノルウェー(スピッツベルゲン)域(夫々20,3,3,2地点)にフラックスゲート磁力計と誘導型磁力計が配置され、通年観測が行われた。
オーロラ観測は、冬季、新月を挟む2週間を単位として、1ないし2期間、高感全天TVカメラを極冠域、カスプ域、オーロラ帯(夫々3〜5,2,4〜6地点)を配置して研究者による滞在観測ないし半自動化装置による滞在観測を実施した。また、3〜5の拠点観測地点においてはスペクトル線を分けたオーロラの観測や自然電波も行なわれた。
[夏季調査]
観測地点選定と観測機器の設置作業は夏季に実施された。また、通年観測を行ったの磁場観測地点において、ケーブルの切断事故の類が、例年、数箇所の割合で発生し、補修作業のための夏季調査期間が不可欠となった。
[観測成果]
1.日本のグループ初の本格的な極冠域おけるオーロラ・磁場観測であり、カナダ、グリンランドの2経度線上(2〜3観測点)の同時観測はこれまでにないものである。
2.極冠オーロラの動態に関して、朝方、東西に伸びたアーク構造領域から小アークが極方向に繰り返し分離伝播する事実が発見され、同時の衛星観測の降下粒子、磁場・電場観測と対比研究され、磁気圏鏡界ダイナミックスに関する新知見を与えた。
3.TVカメラ撮像による高い時間分解能のデータに基づいた、極冠オーロラのタイプ、発生、動きに関する統計的研究の再評価がなされつつある。
4.磁場観測に関しても、極冠中心のユ-レカ観測地点は地磁気軸極にあり、極冠電離圏電流の研究に有用なユニークな観測データが取得されつつあり、極冠オーロラとの対比、電離層のドリフト運動への内部重力波の寄与を評価する研究が進行中である。
5.磁場(あるいはオーロラの)広域観測網は、空間・時間変動を分離できない衛星観測の弱点を補う上に基準データとしてますます重要になりつつあり、GEOTAIL,AKEBONOの国産衛星を始めとする、各国の研究者へのデータ提供あるいは共同研究が行われつつある。
6.オーロラ帯のドーソンシティー近郊の標高1070mの山頂に,眺望と気象条件の点で屈指の観測地点を発見し良好な観測データを取得することが出来た。同地点での窒素分子線による全天実時間撮像はオーロラが低高度に限定されているため位置決定が容易な新し観測である。
7.データカタログ、概要データ、概要解析結果はWWWを通じて一般に公開され、国内外の研究者の利用に供している(http//hpgrl.grl.s.u-tokyo.ac.jp/) -
太陽風から地球内部磁気圏へのエネルギー輸送過程の研究
研究課題/研究課題番号:05041060 1993年 - 1995年
国際学術研究
田中 義人
担当区分:研究分担者
太陽風によつて運ばれる太陽プラズマのエネルギーは、地球の磁気圏の境界領域から極域に侵入しオーロラや地磁気擾乱をおこし、さらに磁気圏内部から赤道域まで流入し様々な現象を引きおこしている。磁力線で結ばれた日・豪の共役点を含む磁気軽度210度に沿った、高緯度から赤道域にわたる広域地上多点で、電磁場変動,極低周波のプラズマ波動やオーロラの光学同時観測を行い、関与する電磁波エネルギーや粒子エネルギーのグローバルな輸送・流入機構を調査した。また、流入した太陽風エネルギーが集積し、且つ、電離層高度にジエット電流が流れている赤道域の南太平洋域で電磁環境変動の総合観測を行った。さらに、赤道域の経度の離れた南アメリカのペル-とブラジルの多点観測網において電磁気変動の同時観測を行い、磁気圏全体の太陽風エネルギーの流入ルートやエネルギー変換過程を明らかする手がかりを得た。
1、太陽風変動に呼応したグローバルな地球磁気圏の応答を明らかにするために、特に、空間変化と時間変動が分離できる210度磁気子午線沿いの広域多点観測を、アメリカ、インドネシア、オーストラリア、台湾、日本、パプア・ニューギニア、フィリピン、ロシア等の28研究機関との共同研究として実施した。210度地磁気データ、LF磁気圏伝搬波データ、光学観測のデータの解析研究を行つた。
(1)、惑星間空間衝撃波や太陽風中の不連続変動によって引き起こされ、地上の低緯度で観測されるSc/Si地磁気変動の振幅が季節変化しており、特に、夏半球で冬半球のおよそ2倍になっていることが見いだされた。このことは、極冠域に侵入した変動電場により誘起されたグローバルなDP型の電離層電流の低緯度への侵入の寄与を示唆している。
(2)、SC/Siにより励起されたほとんどのPc3-4地磁気脈動は磁力線共鳴振動であるが、SC/Siの振幅が極端に大きいときには、プラズマ圏のグローバルな空洞振動モードも励起されている。
(3) SCにより励起されたPc3-4の振幅の減少率はL<1、5の低緯度の領域で急激に増加する。また、赤道側に行くほど卓越周期が長くなっていることが観測的に明らかにされた。この結果は、低緯度電離層における理論的な薄い電離層モデルの限界とマス・ロ-デング効果を表している。
(4) L=1,6の母子里観測所で光学・地磁気観測から、Dstが-100nT程度の磁気嵐の主相の時に、時々、目には見難い低緯度オーロラが地磁気H,D成分の湾型変化と大振幅Pi脈動の発生と同時に出現することが明らかになった。
(5)美瑛LFデッカ局(85、725kHz)の磁気共役点のオーストラリア・バーズビルでのLFで磁気圏伝搬波の観測データ、NOAA-6衛星での高エネルギー電子のデータ、低緯度の地上観測VLF/ELF電磁放射のデータの解析から、磁気擾乱の伴う磁気圏深部への高エネルギー粒子の流入の様子が明らかにされた。
2、磁気赤道帯は赤道エレクトロジェットで知られる様に、電離層電気伝導度がまわりの緯度より高く、地磁気脈動や電離層電流の赤道異常が現れる等の興味ある地域である。しかし、地磁気に関する研究は低感度の記録データもとにするしかなかったため、現象の理解はあまり進んでいない。そのため、磁気赤道帯で高時間精度、高感度フラックスゲート磁力計による磁場観測を試みた。
(1)、ブラジル内陸部の6点の密な観測網で比較的長期(半年)にデータを取得した。また、ペル-の磁気赤道をまたぐ4点に観測点を設置し赤道ジェット電流の観測を開始した。さらに新しい試みとして、南部太平洋ヤップ島で、地磁気と電離層FMCWレーダーとの同時観測を実施し成功した。
(2)、高時間精度、高感度磁場観測により、赤道域での地磁気脈動の振幅がおよそ0、1-1、0nTの範囲にあることが分かってきた。
(3)、高感度のデータから、日出に伴う電離層電子密度上昇による地磁気脈動の振幅変調や、電気伝導度の赤道異常が引き起こす地磁気脈動の位相遅れなどの新しい結果が得られた。高時間精度のデータからはSSCやPi2脈動のグローバルな構造、衛星データとの比較からPi2脈動の開始と関係した磁気圏粒子環境の変化(オーロラブレークアップ、サブストームオンセット)などの興味ある研究が始められた。
(4)、赤道域での多点観測や電離層レーダーとの共同観測から、赤道ジェット電流の空間構造や赤道反電流と電離層電場との関係など興味ある研究が始められた。 -
日本で観測された低緯度オーロラの発生メカニズムの研究
研究課題/研究課題番号:05740308 1993年
奨励研究(A)
塩川 和夫
担当区分:研究代表者
配分額:800000円 ( 直接経費:800000円 )
平成5年度における低緯度オーロラ研究の実績は以下の通り
1.平成5年4月より北海道足寄郡陸別町において、分光測光器による低緯度オーロラの定常観測を開始した。また平成5年9月に、名古屋大学太陽地球環境研究所付属の北海道母子里観測所にある掃天分光測光器のメンテナンスを行った。両者は現在(平成6年3月)に至るまで定常観測を続けている。これらの定常観測から、平成5年9月13日の磁気嵐時に、陸別町において低緯度オーロラ観測に成功した。この観測は、通常の大きさの磁気嵐においても低緯度オーロラが発生するという平成4年度の発見を裏付ける重要な結果となった(平成5年9月13日の低緯度オーロラ観測については、現在論文として執筆中)。
2.平成4年5月10日の低緯度オーロラについて、EXOS-D衛星で同時に得られた電場データの解析から、この低緯度オーロラの発生直前には、磁気緯度50度以下の低緯度まで、磁気圏対流電場が侵入していたことが分かった。このことは磁気圏サブストームにともなった低緯度オーロラの発生メカニズムを知る上で、非常に重要な観測事実である。
3.平成4年に観測された4例の低緯度オーロラについて、オーロラの出現にともなって電離層に局所的な渦電流が発生し、さらにそれが時間とともに経度方向に移動していく構造が、地上多点磁場データの解析から新たに発見された。 -
GEOTAIL衛星による磁気圏尾部の研究
研究課題/研究課題番号:04044168 1992年 - 1994年
国際学術研究
西田 篤弘
担当区分:研究分担者
1.磁気圏尾部の大局的構造 GEOTAIL衛星は地球から100Re(Reは地球の半径)から200Reにいたる磁気圏尾部の遠隔領域の精密な探査を初めて行い、さまざまな新しい知見をもたらした。尾部は約20Reの半径を持ち、その軸は東西南北に半径と同程度の幅で大きく揺らいでいるが、フィラメント状ではなく一体の構造をなしている。尾部内では磁気中性面をはさんで地球向きと反対向きの磁力線が接しており、ローブ領域での磁場強度は±10nT程度である。磁気中性面を貫く磁場の平均は強度が0.5nT程度で方向は北向きである。ルラズマシートには高温(イオンの場合1keV程度)低密度(0.1/ccのオーダー)のプラズマが存在し、殆どの場合100km/sのオーダーの高い速度で地球と反対の方向に流れている。尾部の内部構造は惑星間空間磁場(IMF)の方向に支配されており、磁気圏境界面でのIMFと地球磁場のリコネクションが磁気圏の構造を決定していることを示している。
2.南向きのIMFのもとでの構造 IMFが南向きの時には、尾部の磁力線はローブからプラズマシートに向かって運ばれ、磁気中性面上のX型磁気中性線においてふたたびリコネクトする。殆どの場合、X型中性線の位置は地球から150Re以内である。ローブとプラズマシートの境界には「遅いモード」の電磁流体衝撃波が定常的に存在する。衝撃波の内部とその上流におけるイオンの速度分布関数の変化から、エネルギー変換と散逸の機構を読み取ることができる。加速されたイオンのビームが上流側に流出していることも無衝突プラズマ衝撃波の特徴的な性質である。尾部内でのリコネクション過程は磁気圏嵐の際に活発になり、1000km/sにおよぶ高速の磁力線ループ(プラズモイド)が反地球向きに放出される。プラズモイド内のイオンや電子の速度分布関数は、一方向ビーム、双方向ビーム、温度非等方性など加速機構を直接に反映するさまざまな非平衡性を示す。
3.北向きのIMFのもとでの構造 IMFが北向きの時には、磁気中性面は赤道からIMFの方向に大きく傾いており、磁力線はこの傾いた中性面にそって流れる。中性面の北側と南側の速度は正反対の方向を持つため、中性面には100km/sのオーダーの速度シア-がある。流れを駆動しているのは昼間側高緯度カスプ領域におけるリコネクションであると解釈できる。このリコネクションによってできた開いた磁力線は境界面の一方の側から尾部に入り、中性面に沿う流れによって他方の側に運ばれた後、IMFの磁力線に戻って外に出る。しかし、中性面をはさんでプラズマシートの高温イオン・電子が存在する理由はまだ説明できない。また、リコネクションとは別に太陽風からの粘性によって磁気圏境界層に流れが作られているが、この流れは遠尾部には達しておらず、地球から数十Reのあたりで磁場の張力によって地球側に引き戻されているようである。
4.ローブのプラズマ 尾部のローブはプラズマ・ベータ値の低い領域であるが、プラズマ密度がかならずしも低いわけではなく、低温だがプラズマシートより密度の高いイオンのビームがしばしば存在する。イオン組成にはプロトンだけでなく電離層起源を示唆する酸素イオンも見られる場合があるが、一方、磁気圏の境界層で観測される場合には太陽風起源を示唆する性質を見せることもある。ローブ・イオンの起源解明は尾部のプラズマの供給機構を理解する上で重要な課題である。ローブとプラズマシートの境界ではそれぞれのプラズマが共存するためイオンや電子は速度分布関数がしばしば非平衡の状態にあり、多様な波動が発生する。GEOTAIL衛星の観測によってこれらの波動の励起や非線形成長の機構についても理解を深めることができた。
5.昼間側の磁気圏境界域 IMFが南向きの時は低緯度の昼間側磁気圏境界域でリコネクションによって加熱・加速されたイオンや電子が観測され、また開いた磁力線にそって太陽風と磁気圏のプラズマが相互に流出・流入している。境界面の速度シア-によって表面波が発生しており、その非線形成長がプラズマの混合に寄与している。IMFが北向きの時には複雑な鋸歯状構造が見られることがあり、その成因を研究中である。 -
アラスカ-シベリア域におけるオーロラ嵐の及ぼす電磁気環境変化の共同観測研究
研究課題/研究課題番号:04044077 1992年 - 1993年
国際学術研究
湯元 清文
担当区分:研究分担者
地球磁気圏内に発生する最も基本的な擾乱であるオーロラ嵐に伴って様々な擾乱現象が発生している。このオーロラ嵐の及ぼす電磁環境の変動と様々な擾乱エネルギーの中・低緯度までの輸送・伝播過程を解明するために、オーロラ帯に位置するアラスカ・カナダ・シベリアの高緯度域において、地磁気・大気電場・プラズマ波動並びに光学観測機器を用いた総合の国際共同観測を実施することが本研究の目的であった。また、最近の北海道にある附属母子里観測所における光学観測から、並の大きさの磁気嵐中に低緯度固有のオーロラが頻発していることが示され、太陽エネルギー変動が予想以上に深部まで侵入し、電磁気並びに高エネルギー粒子変動を引き起こしているそのメカニズムを解明することも緊急の課題であった。さらに、アラスカ大学地球物理研究所や東京大学理学部が計画している北米大陸での地上多点観測網と名古屋大学太陽地球環境研究所がSTEP国際協同特別事業期間に実施している210度磁気子午面観測網とを組織的に組み合わせた同時観測を行う事により、日本を含む極東域の高緯度から赤道域までのグローバルな領域における、オーロラ嵐の及ぼすグローバルな電磁環境変動を究明することが本調査研究の目的であった。
平成5年度の調査研究は以下の様に計画的に実施された。
(1)シベリア地域での電磁気変動の観測研究については、低緯度オーロラの発生域に近いカムチャッカのパラツンカ観測点に地磁気観測機を設置するとともに、大気電場の予備観測実験を行った。
(2)又、オーロラ嵐の発生に関係する太陽風変動データ、惑星間空間擾乱データ、地磁気・オーロラデータの収集の為、ロシア共和国のモスクワにある研究所に赴いた。そこで、共同研究の為のデータベース化や研究方法について打ち合せを行った。
(3)アメリカゾーンにおける南北両半球の比較研究調査のために、南アメリカ地域のブエノスアイレスで地磁気・大気電場の予備調査を行った。
(4)引き続き、アラスカ大学地球物理研究所に赴き、カツビュー観測点に地磁気観測装置の設置と大気電場計の予備観測実験を行った。又、アラスカ大学のポ-カフラットで定常観測されているオーロラデータの収集を行った。
(5)シベリア地域のオーロラ観測の為の観測機材を設置する為に、ヤク-ツクの宇宙空間研究所に赴き、ティキシ-観測点に設置する為の観測研究打ち合せを行った。又、低緯度オーロラが発生した期間のオーロラの光学観測データを収集し、比較研究を行った。さらに、プラズマポ-ズ付近の変動を観測する為の磁力計を設置する準備を行った。
(6)以上の調査研究により収集・取得されたオーロラの光学観測データと地磁気変動データを主に共同解析研究する為に、アラスカ大学の共同研究者を名古屋大学太陽地球環境研究所に招へいし、オーロラ嵐に伴う擾乱の高緯から中・低緯度までの輸送・伝搬過程と低緯度オーロラの発生機構についての研究小集会を開催した。
以上の観測・データ収集、比較研究から、オーロラ嵐に伴う擾乱の輸送過程と低緯度オーロラの発生に関する結論が次の様に導き出された。
〔I〕オーロラ嵐に伴う地磁気変動には、高緯度に形成される3次元電流系の強度変動が、中・低緯度に指数関数的に減少して観測される成分と、プラズマ圏もしくはプラズマシートの内側での空洞共鳴振動として伝搬している成分が存在している事が明らかになった。
〔II〕又、磁気嵐中に発生する低緯度オーロラは、従来のサルアークが磁気嵐の回復期に環電流ホットプラズマとプラズマ圏のコールドプラズマの相互作用により発生しているのに対して、環電流ホットプラズマがオーロラ嵐に伴う電場によってプラズマ圏の内部にさらに侵入し、コールドプラズマと相互作用した結果生じている可能性を示唆する貴重な観測データが得られた。 -
極域多点観測によるグローバルオーロラダイナミックスの研究
研究課題/研究課題番号:03041025 1991年 - 1992年
国際学術研究
國分 征, 国分 征
担当区分:研究分担者
オーロラ現象は太陽風・惑星間空間場の変動を源として起こる磁気圏現象の代表格であり,視覚的に際だっているばかりではなく,磁気圏の構造,エネルギー輸送に関わる固有の物理現象である。 この研究は,強いオーロラが出現する緯度60^°〜70^°のオーロラ帯のみならず,微弱ではあるが大陽風(惑星間)磁場の影響を直接受けた特徴的なオーロラの出現する極冠帯もカバーする地上観測網をグローバルに展開することにより,オーロラ領域の時間・空間発達と付随する一連の磁場擾乱域の動態に関する観測データを取得し,得られたオーロラ像の2次元動パターンをもとに,磁気圏におけるエネルギーの変換・流れ,粒子の加速,電磁擾乱の発生機構に関する制約条件を明かにすることを目的とした。また,この研究は,国際共同研究STEP(太陽地球系エネルギー研究)の一環として各国の地上観測・衛星観測(あけぼの衛星,Geotail衛星,Freja衛星)諸計画との連携の下の実施された。
2回の夏期調査により,ディジタル記録による磁場観測機器の設置を進めた(交・直流磁力計,17地点,交流磁力計,7地点,1992年9月)。新たに開発した大容量(140MB)のデータロガーの導入により高サンプリング密度(直流磁場1Hz,交流磁場10Hz)のデータを小型カセットテープに連続1カ月の記録が可能となった。高さ100Km以上に流れる電離層電流分布の投影される磁気圏ダイナミックスの研究を進める上に画期的な高時間分解能極域グローバル磁場観測網が実現した。最北端のほぼ地磁気極に位置するユーレカなど半数以上の観測地点には磁場観測の空白域を埋める意義もある。各地点よりの観測データは現地協力者より月々順調に郵送され,順次ファイル化され国際通信ネットワーク(Inter Net,hpgrl.grl.su-tokyo.ac.jp,東京大学理学部)を通して研究分担者ばかりではなく各国のスペース研究者が利用出来るよう公開されている。
上記広域磁場観測網を土台に,冬期(1992年12月〜1993年1月)1カ月の極域オーロラ多点観測を実施した。オーロラ観測のための全天視野超高感度TVカメラをカナダ(ユーレカ,レゾルートベイ,ケンブリッジベイ,フォートシンプソン,フォートネルソン,フォートマクマレー,フォートスミス,ラビットレイク,ラロンジュ,サスカツーン)とグリーンランド(ゴッドハブン,ウペルナビク),スピッベルゲン(ニイオルソン)に設置して日本側と現地研究者が各地点において滞在観測を行なった。ユーレカ,レゾルートベイ,ラビットレイクでは光電測光によるスペクトル観測も実施された。幸運にも晴天率が高く比較的短い観測期間であったにもかかわらず大量のビデオテープ記録が得られた。観測終了後,現地サスカチュワン大学において観測結果の評価・研究計画ワークショップを開催した。カナダのカノープス観測事業,衛星観測(Geotail,あけぼの,Freja)との連携研究計画も討議された。
資料の解析は始まったばかりであるが,今回のオーロラ観測調査の特徴は,晴天率が高かったこと,磁気圏活動は静穏ないし中ぐらいであったこと,極冠オーロラが多数例観測できたこと,オーロラ帯の高密度全天カメラ網による中規模オーロラブレイクアップ,オーロラの高速伝搬性波動,様々な脈動性オーロラなどの好例が観測・記録できたこと,更にSTEP国際共同観測期間であり他の観測グループによる多数の同時観測が行なわれたことである。
各観測地点のオーロラ活動状況は毎時概況データベース(H_synop.92-93)としてInter-Net上に既に公開されている(host:hpgrlgrl.s.u-tokyo.ac.jp,login:anonymous,password:users′s mailing address,directiry:,pub/aurora)。磁場観測網の1分値データフィイルも同じ様に公開されており(directory:pub/magnet/″station name″/″92m″or″93m″),1992年12月と1993年1月の期間について(2月下旬の時点で)8ないし13地点のデータを利用できる。 -
磁気圈の電磁環境及び粒子環境の変動に関する研究
研究課題/研究課題番号:02402015 1990年 - 1991年
一般研究(A)
小口 高
担当区分:研究分担者
太陽風と地球磁気圏との相互作用の結果、磁気圏尾部に蓄えられた電磁エネルギ-が、磁気圏サブスト-ムの時に解放され、極域で様々な擾乱を引き起こしている。極域オ-ロラ帯の電磁エネルギ-や高エネルギ-荷電粒子が、いかにして内部磁気圏まで流入し、電磁気環境や粒子環境の変動をもたらしているかを解明する為に、極域カスプ領域・中低緯度及びその磁気共役点のオ-ストラリア中央部での汎世界規模の同時観測研究を行い、以下の研究成果が得られた。
1)光学観測:極域カスプ領域のスピッツベルゲン島やカナダで高緯度オ-ロラのダイナミックの観測研究する、一方、低緯度に位置する母子里観測所でオ-ロラ全天並びに4波長揮天分光器と磁力計による低緯度オ-ロラの観測から、通常の大きさの磁気嵐でも低緯度オ-ロラが検出できることが検証された。従って、太陽風中のエネルギ-が深部磁気圏まで侵入し、低緯度電離圏・大気圏の粒子及び電磁環境を変動させていることが世界で初めて定量的に明らかにされた。
2)粒子観測:イメ-シングリオメ-タによる電離層吸収の2次元画面観測からオ-ロラの発生領域と深い関係にあり、オ-ロラの動きに同期して空間・時間変動することが検証された。従って、天候に左右されないオ-ロラダイナミックスの研究で重要な観測装置であることが判った。
3)グロ-バル地磁気観測:210度磁気子午面多点観測からL=1.6の内部磁気圏に外部からの電磁エネルギ-が補足され易い特別な領域が存在していることが世界的に初めて発見された。又、サブスト-ムに伴う電磁場変動に南北両半球の非対称性が見い出され、磁気圏深部でも複雑な機構になっていることが明らかにされた。
4)プラズマ波動観測:母子里とバ-ズビルでの共役観測から磁気嵐中の高エネルギ-粒子の侵入と波動の発生の因果関係が明らかにされた。