科研費 - 吉村 崇
-
時間タンパク質学:概年タンパク質が365日をカウントする制御機構
研究課題/研究課題番号:24H02303 2024年4月 - 2029年3月
科学研究費助成事業 学術変革領域研究(A)
吉村 崇
担当区分:研究代表者
配分額:73580000円 ( 直接経費:56600000円 、 間接経費:16980000円 )
生物の体内には約1年のリズムを刻む概年時計が存在するが、その仕組みは未解明である。明瞭な概年リズムを示すメダカの時系列試料の解析から、約1年のリズムを刻む概年タンパク質を同定した。また概年タンパク質の解析から、幹細胞の増殖・分化とエピゲノム制御が、1年という長い周期のリズムを刻む可能性が示唆されている。また異なる緯度に由来するメダカを用いた順遺伝学的な解析から、概年時計が温度の季節変化を感知して同調する際に鍵となる季節センサータンパク質を同定している。本研究では概年タンパク質、季節センサータンパク質のタンパク質学から、動物が約1年という時を刻み、環境の365日に同調する仕組みを解明する。
-
研究課題/研究課題番号:24H00058 2024年4月 - 2029年3月
科学研究費助成事業 基盤研究(S)
吉村 崇, 西脇妙子, 中山 友哉
担当区分:研究代表者
配分額:203970000円 ( 直接経費:156900000円 、 間接経費:47070000円 )
クサフグやサンゴは満月や新月に一斉に産卵する。また動物の繁殖、渡り、冬眠は特定の季節に行われる。人類は有史以来、これら神秘的な動物の営みに魅了されてきた。これらの営みは約半月、約1年という24時間よりも長い周期のインフラディアンリズムを刻む時計機構、すなわち概半月時計、概年時計に支配されているが、それらの仕組みは謎に包まれている。研究代表者は最近、明瞭な概半月リズム、概年リズムを示す動物に着目することで、概半月遺伝子、概年遺伝子を同定することに成功した。本研究ではインフラディアンリズムの設計原理を明らかにし、月相と季節に支配される生理機能や疾患を化学遺伝学とゲノム編集で理解し、制御する。
-
研究課題/研究課題番号:24H02299 2024年4月 - 2029年3月
日本学術振興会 科学研究費助成事業 学術変革領域研究(A)
吉種 光, 松尾 拓哉, 原田 慶恵, 篠原 雄太, 土居 雅夫, 岡部 弘基, 池内 与志穂, 吉村 崇, 大出 晃士, 秋山 修志, 村中 智明, 久本 洋子, 寺内 一姫, 遠藤 求, 岩崎 信太郎, 向山 厚, 八木田 和弘
担当区分:研究分担者
本領域では、特定のタンパク質がもつ物性や酵素活性、タンパク質間相互作用、翻訳後修飾、立体構造変化などのタンパク質ダイナミクスに着目し、秒単位から年単位までさまざまな時間スケールで周期的な生命現象や、時をカウントするタイマーのような仕組みに着目し、多様な「時」を生み出す分子メカニズムを解明する。総括班ではこの目的達成のための解析支援を実施する。具体的には、ゲノムやRNAの配列決定に加えて、RNA量、翻訳効率、タンパク質量、翻訳後制御などの定量解析を支援し、領域内での共同研究を加速させる。また、領域ホームページの作成やキックオフシンポジウムなどを通じて対外的に領域の存在や研究成果をアピールする。
-
研究課題/研究課題番号:20K20459 2020年4月 - 2024年3月
科学研究費助成事業 挑戦的研究(開拓)
吉村 崇
担当区分:研究代表者
配分額:26000000円 ( 直接経費:20000000円 、 間接経費:6000000円 )
温暖化や気候変動により、生態系、生物多様性、農業などに影響が生じている。そのため、生物の環境適応機構の解明は世界的に緊急に取り組むべき重要課題と位置付けられている。生物の体内には約1年周期のリズムを刻む「概年時計」が存在し、遺伝することも知られているが、1年という長い周期のリズムを刻む分子基盤の解明は進んでいない。洗練された季節応答を示すメダカを屋外の自然条件下で飼育し、得られた2年間の時系列試料についてRNA-seq解析を行い、様々な遺伝子が年周リズムを刻むことを見出した。本研究ではこの膨大なRNA-seqデータを基盤として、概年時計の分子基盤を解明する。
生物の体内には様々な周期のリズムを刻む内因性の計時機構(体内時計)が存在する。例えば、約1日のリズムを刻む「概日時計」や、約2時間のリズムを刻み体節の形成に関与する「分節時計」などがよく知られている。これら比較的、短時間の自由継続周期を示す体内時計の分子機構については、過去数十年の研究によって大幅に理解が進み、概日時計の分子機構の解明に対してノーベル賞が授与されている。
一方、繁殖活動や渡り、冬眠などのように、動物の様々な営みには季節のリズムも存在する。鳥類や哺乳類、あるいは昆虫など、いくつかの動物においては、概ね1年の内因性のリズムを刻む「概年時計」が存在することが示されている。人類は有史以来、生物の示す一年周期のリズム現象に魅了されてきたが、「概年時計」の研究には膨大な時間がかかるため、ほとんど手付かずで極めて挑戦的なテーマである。我々はこの謎に取り組むべく、屋外の自然条件下で飼育したメダカから視床下部・下垂体を2週間に一度、2年間にわたって採材し、得られた2年間の時系列試料についてRNA-Seq解析を行ったところ、年周リズムを刻む遺伝子(季節変動遺伝子)を同定することに成功した。本研究ではこれらの季節変動遺伝子が約1年のリズムを刻む仕組みを明らかにすることを目的としている。バイオインフォマティクスや最先端のトランスクリプトミクス解析を駆使することで当初の計画どおり、研究が展開している。
同定した季節変動遺伝子について、Weighted gene correlation network analysis (WGCNA)解析を行ったところ、季節変動を制御すると考えられるハブ遺伝子を同定することに成功した。また、季節変動遺伝子の上流にエンリッチしているシス配列を同定するとともに、それらのシス配列に、結合しうる転写因子の候補を抽出した。また、これら見出した遺伝子の発現分布を明らかにするために、空間的トランスクリプトーム解析を実施するとともに、一細胞RNA-seq解析を実施した。これらの解析によって季節のリズムを生み出すと考えられる転写因子の候補を抽出することができたので、季節変動する遺伝子についてプロモーター解析を進めている。以上、当初の計画どおりにおおむね順調に進展している。
当初の計画通りに研究が進んでいるため、概年時計の分子機構の解明にむけて、計画されていた研究を推進していく。 -
半月周性産卵リズムの形成機構:潮汐を伝える体内時計の関わりと分子基盤の解明
研究課題/研究課題番号:20H03288 2020年4月 - 2024年3月
科学研究費助成事業 基盤研究(B)
安東 宏徳, 豊田 賢治, 吉村 崇, 大森 紹仁
担当区分:研究分担者
海洋生物の生殖や生態は、月齢や潮汐に同調したリズムを持つものが多い。そのリズムは、脳内にある体内時計によって作られるが、そのしくみは不明である。クサフグは、新月と満月の日の満潮前に産卵を繰り返す。これまでの研究から、脳内に概潮汐時計が存在し、概日時計と協同して半月周性産卵リズムを作ることが示唆された。本研究では、概潮汐時計の分子基盤を解明するため、潮汐と月齢に同調して発現する遺伝子群を探索すると共に、それらの潮汐サイクルとの同調および半月周性リズムとの関連を検討する。また、半月周性リズム発振機構がどのようなしくみで生殖機能を調節するのか、さらに、発生や成長の段階でいつ形成されるのかを解明する。
本研究では、概潮汐時計の機能的分子基盤の解明を目指して、潮汐サイクルおよび月齢に同調して発現する遺伝子群を網羅的に探索すると共に、それらの遺伝子の発現抑制による半月周性の産卵行動リズムへの影響を検討する。また、概潮汐時計と概日時計から構成されると考えられるリズム発振機構による生殖神経内分泌系の周期的調節の機能形態学的基盤を解明する。さらに、より普遍的な生物リズムの研究としての展開を目指し、半月周性リズムのOntogenyを解明する。令和3年度は、次の3つの研究成果を得た。
1)潮汐サイクルと半月周性リズムに関連する遺伝子群を探索する試料として、産卵リズムの異なる伊豆川奈と佐渡姫津において、大潮と小潮の日の夕刻にクサフグ成魚を捕獲して脳を採取した。
2)潮汐サイクル/半月周性リズムを作る時計候補遺伝子の機能解析のため、Vivo-モルフォリノによる遺伝子発現抑制実験系を検討した。脳髄膜で作られる糖たんぱく質であるエペンジミン(EPN)を標的遺伝子として、Vivo-モルフォリノ(EPN-MO)の配列、投与量、投与方法を検討した。また、ウェスタンブロット法と免疫染色法を用いたEPNタンパク質の解析系を確立した。EPN-MOを投与した個体では、遊泳阻害が見られたが、EPNタンパク質量の変化は検出されなかった。
3)クサフグ仔稚魚に潮汐サイクルや月齢に同調したリズムがあるのかどうかを明らかにするため、産卵期に親魚を採集して人工授精を行い、仔稚魚を育成した。DanioVisionを用いて、クサフグ仔稚魚の自発行動リズムを解析した結果、成長段階によって明暗周期に関して自発行動リズムが異なることや明暗の切り替え時に自発行動量が高くなることなど、クサフグが独自の光応答性を持つ可能性が示された。さらに、EthoVision XTを用いたクサフグ幼魚の自発行動解析系を確立した。
前年度に新型コロナウイルス感染拡大と施設の改修工事のため実施できなかった、Vivo-モルフォリノによる遺伝子発現抑制実験系の確立とEthoVision XTを用いたクサフグの行動解析系の確立を完了することができた。しかし、EPN-MO投与による発現抑制についての定量的な検証はさらに必要である。また、半月周性の産卵行動リズムに関わると考えられるクリプトクロームとメラトニン受容体の脳内分布の解析については、従来のin situ hybridization法では検出できないことがわかったため、より高感度でmRNAを検出できるRNAscope法を用いて、両遺伝子mRNAの脳内分布の解析を行う。
潮汐サイクル/半月周性リズムに関連する遺伝子群の網羅的探索については、採取した脳試料を用いて松果体と間脳のRNA-Seqを行い、伊豆産の魚と佐渡産の魚において半月周期で発現変動する遺伝子および両地域の間で差次的に発現している遺伝子を網羅的に探索する。得られた潮汐サイクル/半月周性リズム関連遺伝子群の中で、転写および翻訳の調節に関わると考えられる遺伝子群を選び出し、抗体を作製して発現の定量的解析系を確立すると共に、Vivo-モルフォリノによる翻訳抑制実験を実施する。仔稚魚の自発行動リズムについては、DanioVisionを用いてさまざまな明暗周期下で行動リズムを解析して、光応答性を解析すると共に、野外で稚魚を採集し、野生の稚魚の自発行動リズムを解析する。さらに、斜面を作った水槽における成熟魚の斜面への集合行動のリズムをEthoVision XTを用いて解析する。クリプトクロームとメラトニン受容体の発現細胞については、RNAscope法を用いて両遺伝子mRNAの脳内分布を明らかにする。 -
研究課題/研究課題番号:19F19384 2019年11月 - 2021年3月
科学研究費助成事業 特別研究員奨励費
吉村 崇, CHEN JUNFENG
担当区分:その他
配分額:2300000円 ( 直接経費:2300000円 )
四季の存在する地域では動物たちは特定の季節にのみ繁殖活動を行なう。妊娠・孵卵期間の短い小型のハムスターやウズラは春に交尾を行う長日繁殖動物であり、妊娠期間が半年程度のヤギやヒツジは秋に交尾を行う短日繁殖動物であるが、繁殖時期の長日性、短日性を制御する仕組みはわかっていない。本研究では長日と短日でそれぞれ繁殖活動を行なうタイセイヨウニシンの野生集団間の全ゲノム比較で見出された候補遺伝子の機能をメダカを使って明らかにする。
CHEN博士はタイセイヨウニシンをモデルとして、春に産卵する長日繁殖の集団と、秋に産卵する短日繁殖の集団を用いて、集団遺伝学的解析を行うとともに、全ゲノム配列を比較したところ、繁殖の季節性を制御する候補遺伝子として、甲状腺刺激ホルモン受容体(TSHR)遺伝子を検出した。さらに詳細に検討したところ、TSHR遺伝子の上流領域の配列の違いが繁殖時期の短日性、長日性を制御していることが考えられた。
受入れ研究者は従来の研究で鳥類、哺乳類、魚類の季節繁殖にTSHが重要な役割を果たしていることを明らかにしており、TSHRノックアウトメダカを作出した。タイセイヨウニシンの性成熟には何年もかかり、個体レベルでの機能解析が現実的ではないため、TSHRノックアウトメダカに、春と秋にそれぞれ産卵するタイセイヨウニシン集団由来のTSHRを導入した際に、繁殖時期に及ぼす影響を検討することとした。
CHEN博士は最近メダカのゲノムにもう一つTSHRが存在することを見出したため、それら二つのTSHRの発現部位と発現量を明らかにするとともに、もう一つのTSHRについてもCRISPR-Cas9でノックアウトメダカを作出している。次に、TSHRノックアウトメダカにニシンTSHRを導入するために、Counter-Selection BAC modification kitを使って、ニシンのTSHRのBACクローンを作成した。TSHRノックアウトホモ型個体は不妊となることが考えられたため、ヘテロ型個体にニシンBACクローンをマイクロインジェクションして、現在表現型を検討している。
令和2年度が最終年度であるため、記入しない。
令和2年度が最終年度であるため、記入しない。 -
研究課題/研究課題番号:19H05643 2019年6月 - 2024年3月
科学研究費助成事業 基盤研究(S)
吉村 崇, 西脇妙子, 中山 友哉, 四宮愛, 中根 右介
担当区分:研究代表者
配分額:199550000円 ( 直接経費:153500000円 、 間接経費:46050000円 )
動物は日照時間や温度の変化を感知し、様々な生理機能や行動を変化させることで、環境の季節変動に巧みに適応している。カレンダーを持たない動物がこれを成し遂げる仕組みは謎である。本研究では洗練された季節適応能力を持ち、緯度によって遺伝的に異なる季節適応戦略を身に着けたメダカをモデルとして、動物の季節適応戦略を解明する。また冬季にうつ病を発症する冬季うつ病の発症機構は不明である。本研究では冬季のうつ様行動の発現機構を解明するとともに、これを制御する分子を開発する。
動物は毎年繰り返される環境の季節変化により良く適応するために、日長や温度などの季節変化を手がかりとして様々な生理機能や行動を変化させている。またヒトの様々な疾患が冬季に重症化することが知られているが仕組みはわかっていない。本研究では動物の巧みな季節適応機構を明らかにするとともに、それを制御する分子を開発することを目的としている。まず、高緯度と低緯度に由来し、臨界日長の異なるメダカにおいて、QTL解析、集団遺伝学的解析、遺伝子発現解析を実施することで候補遺伝子を絞り込み、ゲノム編集で変異体を作出した。また、臨界温度を制御すると考えられたリン酸化酵素について、円偏光二色性スペクトル測定を用いて熱安定性を評価するとともに、酵素活性を測定し、過剰発現変異体を作出した。年周リズムを駆動する分子機構の解明においては、屋外の自然条件下で飼育したメダカを用いて年周変動する遺伝子を約3400個抽出し、季節ごとに発現変動するホルモン遺伝子を同定するとともに、バイオインフォマティクス解析により、季節ごとに変動する情報伝達経路を明らかにした。行動実験により、冬になるとメダカの社会性が低下し、不安様行動が増加することを明らかにした。メダカの脳において、オミクス解析を行ったところ、うつ病と関連する複数の因子が季節変動していることが明らかになった。さらにケミカルゲノミクスにより、メダカの冬季のうつ様行動を改善するセラストロールを発見するとともに、NRF2抗酸化経路が関与することを明らかにした。また、冬季うつ病患者では冬季にのみ、目の光感受性が低下し、これが冬季うつ病のリスクを高めることが指摘されていたが、その仕組みは不明であった。マウスをモデルとして冬季の目の光感受性の低下をもたらす原因遺伝子Thを明らかにするとともに、ドパミン受容体のアゴニストによって目の光感受性を改善できることを示した。
研究1については当初の計画どおり、研究が進展しており、期待どおりの成果が見込まれる。研究2については注目していた二つの候補遺伝子のうちの一つの機能解析を当初の計画どおり行った。その結果、この候補遺伝子は臨界温度の決定に関与していないことが明らかになったが、過剰発現変異体の表現型解析を行ったところ、夏の高温適応に関与している可能性が示唆されているため、引き続き解析を進めている。現在、もう一つの候補遺伝子の機能解析に着手しており、概ね順調に研究が進展している。研究3についても季節変動遺伝子を抽出し、様々な生理機能の季節変化を生み出すホルモン遺伝子や情報伝達経路を明らかにできた。研究4については創薬モデルとして注目を集めているメダカに、ケミカルゲノミクスのアプローチを適用することで、冬季のうつ様行動を改善するセラストロールを見出すとともに、その作用機序を解明した。さらに冬季うつ病患者においてはうつを発症する冬季にのみ、目の光感受性が低下することが知られていたが、マウスを用いて冬季の目の光感受性の低下の仕組みを明らかにするとともに、介入への道筋を作った。このように、予定通り概ね順調に進展している。
研究1については、候補遺伝子として絞り込んだ遺伝子についてCRISPR-Cas9法により、変異体を作出している。今後、F2世代のホモ型個体を作出し、臨界日長に及ぼす影響を検討していく。研究2については、もう一つの候補遺伝子と臨界温度との関係を明らかにしていく。研究3については、2年間の時系列試料を用いたRNA-seq解析と、バイオインフォマティクス解析により、季節変動遺伝子を同定しているため、季節変動遺伝子の発現リズムを駆動する発現制御機構を明らかにする。研究4についてはマウスの脳においても冬季に発現変動する遺伝子を見出している他、季節応答の性差をもたらすと考えられる遺伝子も見出しているため、これらの遺伝子の機能を検証する。また、魚類、げっ歯類でヒトを外挿できるのか、という議論をふまえ、マカクザルもモデルとしながら、季節適応の分子機構を解明する。 -
脊椎動物の季節適応機構の解明
研究課題/研究課題番号:19H00989 2019年4月 - 2020年3月
科学研究費補助金 基盤研究(A)
吉村 崇
担当区分:研究代表者
配分額:44980000円 ( 直接経費:34600000円 、 間接経費:10380000円 )
動物は日照時間(日長)や温度を感知して、様々な生理機能や行動をダイナミックに変化させることで、環境の季節変化に巧みに適応している。本研究では洗練された季節適応能力を有し、生息地域の緯度に応じて遺伝的に異なる季節適応戦略を身に着けたメダカをモデルとして、この謎を解明する。既に高緯度のメダカは繁殖を開始する際に、低緯度のものより長い日長と高い水温を必要とすることを見出し、遺伝解析を完了している。そこで動物が日長と温度を測定し、季節の変化に巧みに適応する仕組みを解明する。また自然条件下で飼育したメダカの網羅的遺伝子発現地図を作成し、動物の季節適応戦略の分子基盤を明らかにする。
動物は日照時間(日長)や温度を感知して、様々な生理機能や行動をダイナミックに変化させることで、環境の季節変化に巧みに適応している。カレンダーを持たない動物がこれを成し遂げる仕組みは、未だ明らかにされていない。本研究では洗練された季節適応能力を有し、生息地域の緯度に応じて遺伝的に異なる季節適応戦略を身に着けたメダカをモデルとして、この謎を解明することを目的とした。
従来の研究で高緯度と低緯度に由来するメダカでは、日長や温度を感知する仕組みが遺伝的に異なることを見出していたため、研究1では動物が日長を測定する仕組みについて量的形質遺伝子座解析を進め、候補領域に存在する遺伝子のアミノ酸配列を比較するとともに、発現量を比較した。また研究2では温度の変化を感知して、季節の変化に適応する仕組みを理解することを目的として量的形質遺伝子座解析を行い、その解析で見出した候補遺伝子の遺伝子産物の機能を円偏光二色性スペクトル測定により検討した。
さらに摂食、代謝、概日リズム、繁殖活動などは視床下部が司令塔となり制御されているが、それらの年周リズムを駆動する分子基盤は謎に包まれている。そこで屋外の自然条件下で飼育したメダカから視床下部および下垂体を2週間毎に、2年間にわたって採材した時系列試料を用いてRNA-Seq解析を行った。研究3ではバイオインフォマティクスを駆使して、膨大なRNA-seqデータから年周変動する遺伝子をゲノムワイドに同定し、網羅的遺伝子発現地図を明らかにした。
令和元年度が最終年度であるため、記入しない。
令和元年度が最終年度であるため、記入しない。 -
海水魚の季節繁殖に及ぼすCO2由来の海洋酸性化の影響
研究課題/研究課題番号:17F17107 2017年7月 - 2019年3月
科学研究費補助金
担当区分:その他
配分額:2300000円 ( 直接経費:2300000円 )
二酸化炭素は、地球温暖化を引き起こす主要な温室効果ガスであり、環境に及ぼす影響が懸念されている。その中でも、大気中に放出された二酸化炭素が海水に吸収されて引き起こされている「海洋酸性化」の問題が危惧されており、海洋生物に及ぼす影響の解明が求められている。そこでGUHは魚類の季節繁殖に及ぼす海洋酸性化の影響を明らかにすることを目的として、海洋メダカを14時間明期、10時間暗期の長日条件と10時間明期、14時間暗期の短日条件に1か月暴露し、季節応答性について検討した。その結果、海洋メダカは明瞭な季節繁殖性を示さないことを明らかにした。そこで、季節性が明瞭な淡水のメダカにおいても同様に、酸性化が14時間明期、10時間暗期の長日条件と10時間明期、14時間暗期の短日条件への応答性に及ぼす影響を検討したが、二酸化炭素による酸性化はメダカの季節繁殖に大きな影響を及ぼさないことを明らかにした。生物はある日長を境として応答するが、この日長のことを臨界日長と呼ぶ。GUHはさらに酸性化がメダカの臨界日長に及ぼす影響についても検討したが、臨界日長に対しても酸性化は大きな影響を与えないことを明らかにした。以上のように、本研究では二酸化炭素による酸性化が海洋性、および淡水性のメダカの繁殖活動に大きな影響を与えないことを科学的に明らかにしたが、自然界において将来、地球温暖化が様々な動物の繁殖活動に及ぼす影響については、今後も慎重に検討する必要がある。
平成30年度が最終年度であるため、記入しない。
平成30年度が最終年度であるため、記入しない。 -
研究課題/研究課題番号:26660249 2014年4月 - 2015年3月
科学研究費助成事業 挑戦的萌芽研究
吉村 崇
担当区分:研究代表者
配分額:3900000円 ( 直接経費:3000000円 、 間接経費:900000円 )
-
脊椎動物の季節適応機構の解明
2014年4月 - 2014年6月
科学研究費補助金 基盤研究(A)
担当区分:研究代表者
-
脊椎動物のバーナリゼーションの分子機構の解明
2014年4月 - 2014年6月
科学研究費補助金
担当区分:研究代表者
-
研究課題/研究課題番号:26000013 2014年 - 2018年
科学研究費助成事業 特別推進研究
吉村 崇
担当区分:研究代表者
配分額:383240000円 ( 直接経費:294800000円 、 間接経費:88440000円 )
動物は毎年繰り返し訪れる環境の季節変化に対し、より良く適応するために、光や温度などの外的変化を感知し、繁殖、渡り、ストレス応答などの生理機能や行動を制御している。このような動物の季節変化については、アリストテレスの著書「動物誌」にも詳述されていたが、その仕組みは謎に包まれていた。本研究では様々な動物の持つ洗練された能力に着目することで脊椎動物の季節適応機構の設計原理を解明することを目標とした。また季節適応を制御する革新的機能分子を創出することで、動物の生産性の向上やヒトの季節性疾患の克服を実現することを目指した。
まず、メダカが生息地域の緯度に応じて異なる日長応答、温度応答を示すことを見出し、遺伝解析を実施した結果、日長、温度をそれぞれ規定する有力な候補遺伝子を同定することに成功した。現在、それらの候補遺伝子の機能を検討している。また、動物は繁殖期になるとストレス応答を増加させることが知られていたが、その分子基盤は謎だった。トランスクリプトーム解析を実施した結果、long non-coding RNAがストレス応答の季節変化を制御していることを明らかにした(Nat Ecol Evol, 2019)。高緯度地域では、冬季にうつ病を発症する冬季うつ病が深刻な社会問題になっている。冬季うつ病を含む様々な精神障害の患者においては概日時計に異常をきたしていることが知られているため、概日時計を調節する分子を既存薬から探索したところ、細胞レベルで体内時計の周期を調節するとともに、混餌投与によって体内時計の周期を調節する薬を発見することに成功した(EMBO Mol Med 2018)。またメダカをモデルとして冬季の社会性の低下を改善する既存薬をスクリーニングしたところ、社会性を改善する漢方薬成分を発見することに成功した。 -
研究課題/研究課題番号:25892013 2013年8月 - 2015年3月
科学研究費助成事業 研究活動スタート支援
新村 毅, 吉村 崇
担当区分:その他
ほとんどの動物は学習をしなくとも種特有な発声を獲得することができるが、この先天的発声のメカニズムはいかなる生物においても明らかにされていない。本研究課題では、ニワトリの「コケコッコー」をモデルとして、「ニワトリは朝に鳴く」という生命現象が、外因性の光や音ではなく、内因性の体内時計により制御されていることを明らかにした。
-
哺乳類の網膜外光受容機構の解明
2011年2月 - 2014年3月
科学研究費補助金 最先端・次世代研究開発支援プログラム
担当区分:研究代表者
-
哺乳類の網膜外光受容機構の解明
2011年2月 - 2014年3月
科学研究費助成事業 最先端・次世代研究開発支援プログラム
資金種別:競争的資金
-
研究課題/研究課題番号:22227002 2010年4月 - 2015年3月
科学研究費助成事業 基盤研究(S)
筒井 和義, 緒方 勤, 大杉 知裕, 産賀 崇由, 吉村 崇
担当区分:研究分担者
本研究により、我々が発見した新規脳ホルモンである生殖腺刺激ホルモン放出抑制ホルモン(GnIH)は生殖腺の機能と生殖行動の発現を抑制することが見いだされた。次に、GnIH作用の分子機構、GnIH発現の分子制御機構、GnIH作用の生理的意義などが明らかになった。さらに、GnIHの起源は原索動物と棘皮動物に遡ることやGnIHの分子進化が明らかになった。また、GnIH発現の異常が生殖腺の機能に障害を導くことがわかった。新規脳ホルモンであるGnIHに着目した本研究により、生殖制御における新規脳内分子機構が解明された。
-
配偶子幹細胞/ニッチシステムの季節性制御機構の解明
2009年4月 - 2011年3月
科学研究費補助金 新学術領域研究・21116504
吉村崇
担当区分:研究代表者
-
研究課題/研究課題番号:21116504 2009年 - 2010年
科学研究費助成事業 新学術領域研究(研究領域提案型)
吉村 崇
担当区分:研究代表者
配分額:11700000円 ( 直接経費:9000000円 、 間接経費:2700000円 )
熱帯以外の地域に生息する多くの動物は、特定の季節にのみ生殖活動を行う「季節繁殖」という戦略をとっている。なかでもウズラは洗練された季節適応能力を有しており、生殖腺もごく短い繁殖期にのみ一過的に発達させる。このため非繁殖期の精巣は外見上、未分化な状態にまで退縮する。本研究では生殖活動の季節変化に着目し、配偶子幹細胞/ニッチシステムの制御機構を解明することを目的とした。
生物は日照時間の変化をカレンダーとして季節繁殖を制御しているが、哺乳類以外の脊椎動物は脳内に存在する脳深部光受容器によって日長の変化を感知することが知られていた。脳深部光受容器の存在は約100年前にカール・フォン・フリッシュによって指摘されていたが、その実体は不明であった。本研究ではウズラの脳深部に発現する新規な視物質「オプシン5」を同定した。オプシン5は脳内だけでなく、精巣にも発現していることから、今後精巣における機能の解明が期待される。
また、ウズラを長日条件から短日及び低温条件に暴露した結果、精巣の退縮が認められた。その際、精巣の形態変化を詳細に解析した結果、精巣の退縮にはアポトーシスが関与していることが明らかになった。また、同時に血中のホルモン濃度を測定し、機能解析を実施した結果、季節繁殖の制御における精巣の退縮には、オタマジャクシがカエルに変態する際に尾が退縮するのと同様な仕組みが関与していることが明らかになった。 -
ニワトリ野生原種の保全と多種系統の基盤遺伝特性の解析による研究利用性の拡大
研究課題/研究課題番号:20310143 2008年 - 2010年
科学研究費助成事業 基盤研究(B)
並河 鷹夫, 小野 珠乙, 吉村 崇, 村井 篤嗣, 斉藤 昇, 山縣 高宏
担当区分:研究分担者
鳥類バイオサイエンス研究センターにおいて維持している閉鎖系統9系統を、マイクロサテライトマーカー解析した。その結果は、6系統では80%以上であり、GSN/1においては100%である高い遺伝的均一性を示した。したがって、鳥センターで維持されている系統は、実験用のニワトリの遺伝子資源として非常に有用であることを示した。また、本研究成果は、鳥類の季節繁殖性や免疫および発生などの生理機構の機能解析の進展に対して大きく貢献した。