科研費 - 吉岡 博文
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研究課題/研究課題番号:23117707 2011年4月 - 2013年3月
科学研究費助成事業 新学術領域研究(研究領域提案型)
吉岡 博文
担当区分:研究代表者
配分額:6500000円 ( 直接経費:5000000円 、 間接経費:1500000円 )
植物は病原菌の攻撃に応答して急激な活性酸素種の生成を引き起こす。この反応はROSバーストと呼ばれ、植物の抵抗反応や過敏感細胞死において重要な役割を果たす。ROSバーストは、主に細胞膜に存在するNADPHオキシダーゼであるRBOHに依存して引き起こされる。ジャガイモ葉組織においては、StRBOHCがジャガイモ葉組織での病害応答に関与することが示されている。葉組織におけるROSバーストに至るまでのシグナル伝達経路の解明は、植物の防御応答システムを明らかにする上で重要である。本研究では、StRBOHCのベンサミアナタバコにおけるオルソログであるNbRBOHBの転写誘導機構を探ることにより、MAPキナーゼカスケード (MEK2-SIPK) がROSバーストを制御する機構を明らかにすることを目的とする。
平成24年度は、NbRBOHBプロモーターのMEK2-SIPKに応答するシス配列に結合する転写因子を決定した。これまでに、StRBOHCおよび NbRBOHBプロモーターの転写因子としてW-box配列を含む推定シス配列の11 bp (11W) を同定した。そこで、MAPKの基質として得られているWRKY型転写因子のNbRBOHBプロモーター活性に及ぼす影響について調べた。酵母ワンハイブリッド解析によって、これら基質の中で11Wと結合する4つのWRKY型転写因子が得られた。さらに、11Wを3タンデムに連結した配列を35Sの最小プロモーターに結合したキメラプロモーターは、11Wと結合したWRKY型転写因子により誘導された。これらWRKY遺伝子をノックダウンすると、エリシター誘導によるNbRBOHBの転写が抑制された。以上の結果より、MAPKの基質である複数のWRKY型転写因子は、11Wに結合することでStRBOHCおよび NbRBOHBプロモーターを活性化するものと思われた。
24年度が最終年度であるため、記入しない。
24年度が最終年度であるため、記入しない。 -
研究課題/研究課題番号:22370022 2010年 - 2012年
科学研究費助成事業 基盤研究(B)
椎名 隆, 吉岡 博文
担当区分:研究分担者
植物の免疫応答では、サリチル酸が局所的および全身的な免疫応答を制御し、活性酸素種や一酸化窒素が重要な細胞内シグナル分子として働く。これらの免疫シグナル分子の合成には葉緑体が深く関わっている。しかし、植物免疫応答における葉緑体の役割は、これまでほとんど注目されていなかった。本研究では、植物免疫応答における葉緑体の役割を検証し、葉緑体Ca2+結合タンパク質CAS を介した新しい葉緑体免疫シグナルを発見した。
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改良型虫害抵抗性遺伝子の導入による耐虫性イネの創出
2009年7月 - 2010年3月
独立行政法人科学技術振興機構 JSTイノベーションプラザ東海 独立行政法人科学技術振興機構 JSTイノベーションプラザ東海
資金種別:競争的資金
シーズ発掘試験
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植物表層における病原糸状菌の分子パターン認識機構とシグナルネットワークの解明
研究課題/研究課題番号:21380031 2009年 - 2011年
科学研究費助成事業 基盤研究(B)
久保 康之, 森 正之, 西内 巧, 古賀 博則, 吉岡 博文
担当区分:連携研究者
本研究では、病原糸状菌の感染に対する植物の基本的抵抗性の実体解明を目的として、植物の病害応答性の強度に関連する炭疸病菌、およびいもち病菌の分子パターン変異株(ssd1株)を用い、病原菌の表層構造の変化と植物細胞表層における防御応答に関する認識とシグナル伝達に関する研究を進めた。とくに、イネ-いもち病菌系、シロイヌナズナ-炭疸病菌系における、ゲノム科学的アプローチにより分子パターン認識の下流で進行するシグナルネットワークに関する研究を進め、耐病性に重要な転写因子の同定とイネいもち病菌に対する耐病性を示すトランスジェニック植物を作出した。
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イネのウンカ・ヨコバイ抵抗性遺伝子群の単離と利用
2008年4月 - 2013年3月
農林水産省 新農業展開ゲノムプロジェクト
資金種別:競争的資金
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植物の感染防御応答に関わる葉緑体カルシウムシグナル伝達ネットワーク
研究課題/研究課題番号:20200060 2008年 - 2010年
科学研究費助成事業 新学術領域研究(研究課題提案型)
中平 洋一, 湯川 泰, 椎名 隆, 吉岡 博文, 杉浦 昌弘, 戸澤 譲, 朽津 和之
担当区分:連携研究者
葉緑体は、植物の感染防御応答で重要な役割を果たしている可能性が指摘されていたが、その分子機構についてはほとんどわかっていなかった。本研究では、この未解明の領域の研究に取り組み、その全体像を描き出すことに成功した。(1)まず、細胞外の病原体に由来するPAMPシグナルが葉緑体へ伝達される機構を解明した。PAMPシグナルが、まず細胞質Ca^<2+>濃度の速い一過的上昇を引き起こし、引き続きそのシグナルが葉緑体に伝達され、葉緑体Ca^<2+>シグナルを生じる。葉緑体Ca^<2+>シグナルの発生には、葉緑体チラコイド膜タンパク質であるCASが関与しており、チラコイド膜からのCa^<2+>放出が関係している可能性が示唆される。(2)さらにCASは、PAMPが誘導する基本免疫応答のPTIおよび病原体エフェクター分子を特異的に認識することで発動するETIの両者に必要な因子であることがわかった。PTIはサリチル酸(SA)依存経路を介して制御されており、CASがSA誘導に必須の因子であることを明らかにした。(3)植物の防御応答遺伝子群の発現には葉緑体に由来する色素体シグナルが必要であることを解明した。また、その実体として、一重項酸素シグナルが原いている可能性を示した。また、CASが一重項酸素シグナリングに関与している可能性も示唆された 今後、今回発見した葉緑体依存の感染防御応答機構の分子機構を詳細に研究していくことで、新しい植物防御システムの開発につながる可能性がある。
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毒素vsエリシター:病原菌に由来する細胞死誘導因子の機能と進化に関する比較研究
研究課題/研究課題番号:20380028 2008年 - 2010年
科学研究費助成事業 基盤研究(B)
児玉 基一朗, 吉岡 博文
担当区分:研究分担者
植物-病原体相互作用の場において、菌の生産する毒素は病原性因子として、一方、エリシターは非病原性因子として機能する。両者は植物細胞死(プログラム細胞死)の誘導因子という共通の作用を示すが、その病理学的意義は正反対である。本研究では、宿主特異的AAL毒素およびINF1エリシターを用いて、necrotrophic病原菌Aiternaria alternataの感染過程においては、毒素/エリシターの区別なく誘導される細胞死が菌の感染を有利に導き、両者ともに病原性因子として機能することを明らかにした。
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植物免疫シグナル分子を利用した高精度耐病性植物の創生
2007年7月 - 2012年3月
独・農業・食品産業技術総合研究機構 生研センター「新技術・新分野創出のための基礎研究推進事業」
資金種別:競争的資金
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イネ虫害抵抗性遺伝子の作用機構に関する研究
2007年4月 - 2008年3月
農林水産省 グリーンテクノ計画
資金種別:競争的資金
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研究課題/研究課題番号:19208004 2007年 - 2010年
科学研究費助成事業 基盤研究(A)
吉岡 博文, 川北 一人
担当区分:研究代表者
配分額:44850000円 ( 直接経費:34500000円 、 間接経費:10350000円 )
MAPキナーゼカスケードは、植物免疫に重要な働きを果たす。しかし、防御応答に関わるMAPキナーゼの下流シグナル伝達は明らかになっていない。本研究では、ベンサミアナタバコのWRKY型転写因子がSIPK、NTF4およびWIPKの基質であることを見いだした。WRKY8のリン酸化は、DNAへの結合活性を増加させた。MAPキナーゼに依存したWRKY8のリン酸化は、下流の遺伝子を活性化させることにより防御応答に重要な役割を果たすことが明らかになった。
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植物の感染防御応答におけるNOと活性酸素種の協奏的作用機構の解明
研究課題/研究課題番号:18380032 2006年 - 2008年
科学研究費助成事業 基盤研究(B)
川北 一人, 竹本 大吾, 園田 雅俊, 吉岡 博文
担当区分:研究分担者
病原体の感染に対する植物の防御応答において、細胞死を伴った一連の抵抗反応が誘導される。活性酸素と一酸化窒素(NO)は抵抗反応の誘導・増幅シグナルとして機能していると考えられ、植物体内でのそれらの生成系の解析を行った。また、スーパーオキシド(O2-)とNOとの反応物であるパーオキシナイトライト(ONOO-)が細胞死を誘導し、植物の基礎抵抗性に関与している可能性を示した。さらに細胞死を誘導するセラミド関連化合物を特定し、抵抗反応誘導機構の解明における有用性を示唆した。
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フザリウム病原菌の2種の転写制御因子によって制御される病原性遺伝子群の網羅的同定
研究課題/研究課題番号:15208005 2003年 - 2006年
科学研究費助成事業 基盤研究(A)
柘植 尚志, 吉岡 博文
担当区分:研究分担者
メロンつる割病菌(Fusarium oxysporum f.sp.melonis)の植物感染と胞子形成にそれぞれ不可欠な2種の転写制御因子について、以下の研究を実施した。
1.植物感染に不可欠な転写制御因子Fow2およびFow3によって制御される遺伝子の同定
野生株に比べfow2変異株またはfow3変異株で発現レベルが低下した遺伝子を含むcDNAサブトラクションライブラリーを作製した。これらライブラリーから、それぞれの変異株で発現レベルが顕著に低下したクローンを選抜し、Fow2が正に制御する6遺伝子を同定した。これら遺伝子について、遺伝子破壊によって病原性における機能を解析し、病原性に関与するVRF2-1を同定した。また、FOW2をコードするBACクローンの構造と機能を解析し、VRF2-1がFOW2と連鎖して存在すること、このクローンにはVRF2-1以外にもFow2によって制御される遺伝子が存在することを見出した。また、データベース相同性解析、PCR解析などによって、FOW2相同遺伝子が子のう菌または不完全子のう菌に広く分布することを見出し、植物病原菌に共通な病原性制御遺伝子であることを示唆した。さらに、fow2変異株の前接種がメロンつる割病の発病を顕著に抑止すること、すなわち本変異株が生物防除活性を有することを見出した。
2.胞子形成に不可欠な転写制御因子Ren1およびFoStuAによって制御される遺伝子の同定
病原性の重要な要素のひとつである胞子形成に不可欠な2つの転写制御因子(Ren1およびFoStuA)を同定した。さらに、胞子形成時のEST解析によって同定した496個の遺伝子について野生株、ren1変異株およびfostuA変異株における発現レベルをリアルタイムRT-PCR法によって比較し、Ren1が制御する35遺伝子、FoStuAが制御する3遺伝子を同定した。 -
植物のオキシダテイブバーストと生体防御ネットワークの分子生理学的解明と応用
研究課題/研究課題番号:14104004 2002年 - 2005年
科学研究費助成事業 基盤研究(S)
道家 紀志, 川北 一人, 吉岡 博文
担当区分:研究分担者
ジャガイモ疫病菌の感染に対するオキシダティブバースト(OXB)と防御応答ネットワークに関して次のことを解明した。1)感染防御応答の過程で即応答型の第1相のOXBと誘導応答型の第2相のOXBが発生し、それぞれが活性酸素生成NADPH酸化酵素のRbohAおよびRbohBに依存し、防御応答の発現誘導に決定的な役割を果たす。2)前者はCa^<2+>流入およびCDPKにより活性化し、後者はMAPKカスケードの制御下で発現し、生成したRbohBは第1相のOXBの発生と連動して活性化するリン酸化酵素により活性化される。3)MAPKKのMEKをアミノ酸置換により常時活性型にしたMEK^<DD>を一過的に発現すると、MAPKのSIPKおよびWIPKの活性化、RbohBの発現・誘導、OXBの発生およびHR型の防御応答が誘導される。4)活性化したMPK1は宿主のタンパク質(PPS1〜8)をリン酸化し、その中のPPS3がRbohBおよびファイトアレキシン代謝系酵素の遺伝子(HMGRやPVS)の発現を誘導する。5)親和性レースの感染でもMAPKカスケードの活性化、RbohB、HMGRやPVSなどが発現し、PVS3プロモーター結合GUS遺伝子の形質転換ジャガイモは感染特異的にGUSを誘導する。6)第1相のOXBと共にNOが生成され防御応答に重要な役割を果たす。7)NO生成は誘導発現する硝酸還元酵素(NR)と他の未知NO生成系に依存する。8)局部的OXBは組織内部にCa^<2+>流入を伴う連鎖的細胞興奮を誘導し、これが伝達した組織表面で再びOXBが発生し、全身的獲得抵抗性(SAR)誘導の引き金となる。9)PVS3プロモーター結合MEK^<DD>で形質転換したジャガイモは、親和性疫病菌レースや夏疫病菌の感染に対してOXBを伴うHR型の防御応答を示し耐病性化する。
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研究課題/研究課題番号:12460022 2000年 - 2002年
科学研究費助成事業 基盤研究(B)
川北 一人, 吉岡 博文, 道家 紀志
担当区分:研究分担者
病原菌の感染に対する植物の防御応答において、新規な抵抗性関連因子を見いだし、これら因子の防御応答における機能を解明することを本研究の目的とした。
ジャガイモ植物あるいはタバコ植物とジヤガイモ疫病菌菌体壁成分エリシターの系を確立し、防御応答時に特異的に発現が誘導される遺伝子のスクリーニングを行った。得られたクローンには、1)タバコ葉を用いたデイファレンシャルハイブリダイゼーション法により、SAR8.2、グリシンリッチタンパク質、エクステンシン、アシルトランスフェラーゼの各遺伝子、2)ジヤガイモ塊茎を用いたサブトラクション法により、感染特異的(PR)タンパク質、グルタチオン-S-トランスフェラーゼ、ペルオキシダーゼ、カタラーゼ、アミノシクロプロパンカルボン酸オキシダーゼの各遺伝子や傷害誘導性遺伝子、3)ジャガイモ塊茎を用いたディファレンシャルハイブリダイゼーション法により、チラミンヒドロキシシンナモイルトランスフェラーゼ、グルコース6-リン酸デヒドロゲナーゼ、ピルビン酸デカルボキシラーゼの各遺伝子や防御関連遺伝子がそれぞれ含まれていた。
また、タバコ葉を用いたディファレンシャルディスプレイ法により単離した新規遺伝子の機能解析を行った。1種は新たなエリシター応答性シトクロムP450遺伝子であり、CYP82E1と名付けたこの遺伝子は、菌侵入時の障壁物質やファイトアレキシンの合成に関わる新規な二次代謝系酵素遺伝子である可能性が高い。他の1種はエリシター誘導性のレセプター様タンパク質をコードしており、トマトの抵抗性遺伝子であるCf遺伝子群と高い相同性を示し、EILP(Elicitor-Inducible LRR Protein)遺伝子と名付けた。EILP過剰発現タバコ植物において、各種エリシターに対する応答性および病原菌に対する抵抗性が上昇したという結果は、EILPは感染応答時に二次的に情報シグナルを増幅することにより応答性を高めるレセプター様タンパク質であることを示した。 -
研究課題/研究課題番号:12660043 2000年 - 2001年
科学研究費助成事業 基盤研究(C)
吉岡 博文
担当区分:研究代表者
配分額:3400000円 ( 直接経費:3400000円 )
ジャガイモ組織に疫病菌が感染を試みると、オキシダティブバーストなど多岐に渡る防御応答が誘導される。ジャガイモ塊茎組織では、ファイトアレキシンであるリシチン蓄積が防御反応の主役を演じている。リシチンはイソプレノイド合成系で生産され、セスキテルペンシクラーゼが鍵酵素であると考えられている。エリシターで誘導したcDNAライブラリーからセスキテルペンシクラーゼを単離したところ、ジャガイモのセスキテルペンシクラーゼは、PVS(potato vetitispiradine synthase)であることが示された。さらに、ジャガイモゲノムライブラリーをスクリーニングしたところ、PVSは多重遺伝子族(PVS1〜PVS4)を形成していることが明らかになった。ジャガイモ葉組織においては、これらPVS遺伝子メンバーの中でPVS3のみがジャガイモ疫病菌の非親和性および親和性レース接種により顕著に誘導されることユニークな遺伝子であることがこれまでの研究で判明している。
本遺伝子の発現制御機構を探る目的で、PVS3ゲノムクローンの塩基配列を決定し、さらに推定プロモーター領域の下流にルシフェラーゼ遺伝子を連結したベクターを構築してプロモーター活性を調べた。エレクトロポレーションによりベクターを導入したジャガイモ培養細胞プロトプラストをジャガイモ疫病菌菌体壁成分エリシターで処理したところ、ルシフェラーゼ活性の増加が認められた。この結果は、本領域内にエリシター応答に関与するシスエレメントが存在することが示すものである。本結果は、このプロモーターを利用することにより、ジャガイモ疫病菌に耐性を示すジャガイモ植物の作出に有用であることを示した。 -
感染植物のオキシダティブバーストの分子機構と局部・全身的感染防御応答の統御機能
研究課題/研究課題番号:11306004 1999年 - 2001年
科学研究費助成事業 基盤研究(A)
道家 紀志, 吉岡 博文, 川北 一人
担当区分:研究分担者
植物の感染防御応答の初期始動シグナルであるオキシダティブバースト(OXB)系の分子的実態とその制御機構の解明とOXBの制御下で局部的および全身的に発現する防御遺伝子とそれらの二次元的変動を総合的に解明する3カ年計画を実施し、次の成果を挙げた。1)感染・エリシターに対する細胞応答のOXB系うぃ担う酵素系として推定されるNADPH酸化酵素のサブヨニットであるgp91phoxホモログの2種のcDNAをクローニングし、それらはNADPH結合、6箇所の膜貫通、2箇所のca^<2+>結合ドメインをもつなど構造を推定し、その一つは常時発現、他は感染応答性であるという遺伝子の発現様相を明らかにした。2)OXB系の活性化は、インタクトな状態の細胞ではOXB応答機能はなく、傷や感染刺激で速やかに活性化され、その状態の細胞ではca^<2+>チャネル、カルモジュリン、ca^<2+>依存タンパク質リン酸化酵素が関与することを薬理学的に明らかにした。3)エリシター処理などでOXBを誘導し、その下流において発現が誘導される遺伝子をディファレンシャルディスプレー法およびサブストラクション法で各種の誘導性遺伝子をクローニングした。4)OXB関連タンパク質(SrtbohAとB)、NADPH生産に関わるG-6-P脱水素酵素遺伝子の断片をPVXベクターに組み込みタバコに接種しジーンサイレンシングを実施し、非親和性疫病菌に対する抵抗性が打破されることを示し、OXBの防御応答における決定的な役割を確認した。5)局部的OXBの誘導は局部的防御代謝を活性化するばかりでなく、全身的獲得抵抗性誘導の引き金となり、Ca^<2+>インフラクスを起こし細胞の興奮様反応を連鎖的に進行させる情報が伝わり、その興奮が離れた組織でのOXB能をもつ活性化状態の組織に到達するとそこで再びOXBが起こり、それがSARの誘導の引き金となっていることを示唆した。
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生物資源由来物質による植物免疫の誘導とその病害防除への応用試験
研究課題/研究課題番号:10556010 1998年 - 2000年
科学研究費助成事業 基盤研究(B)
道家 紀志, 吉岡 博文, 川北 一人
担当区分:研究分担者
植物には、感染や異物に応答し、その場のみならず、全身に情報が伝達され全身的獲得抵抗性誘導(SAR)がかかり、耐病性(植物免疫)が得られる。感染・異物の認識過程で発生する急速な活性酸素生成(オキシダティブバースト:OXB)が離れた組織にもOXBを発生させる現象(全身的おXB)の発見と、これがSARの誘導契機となることから、この原理と特質を調査し、植物免疫誘導因子の検索方法を確立し、それを植物免疫誘導による病害防除へ応用することを目指し、次の成果を得た。1.植物のSARを誘導することで知られている菌体エリシターと数種の既知誘導剤の処理が、全身的OXBを誘導することを明らかにし、その応答が全身的獲得抵抗性につながることを示した。2.全身的OXBを誘導シグナルの発信には、OXB応答能をもつ活性化組織細胞への刺激とそれを持たない組織細胞を刺激する2種あることをみいだし、エリシターや過酸化水素は前者を、サリチル酸や既知誘導剤が後者の組織を刺激することを明らかにした。3.全身シグナルの伝達過程には、OXB応答能を持たない組織細胞でカルシウムインフラクスの連鎖反応や表面pHの上昇変動が起こることが判明した。4.局部および全身的OXBの発生する場で固有に誘導される代謝酵素の遺伝子を探索し、それぞれ性質を解析し、マーカとしての可能性を調べた。5.これら原理を調べるために開発した組織を用いて、全身的OXB誘導活性をもつ因子の簡便な検索システムをマニュアル化した。6.このマニュアルを用いて既知誘導化合物とともに16科26種の植物組織からの水溶性および脂溶性画分を検定した結果、数種の科の抽出画分に、既知誘導剤と同様かそれ以上に活性があることを確認し、同時に疫病に対する獲得抵抗性を誘導する活性を確認した。7.以上総合して、植物の生体成分の全身的免疫の信号発信に機能する成分の応用により、植物免疫を誘導し、耐病性強化が図れる可能性を示した。
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研究課題/研究課題番号:10760028 1998年 - 1999年
科学研究費助成事業 奨励研究(A)
吉岡 博文
担当区分:研究代表者
配分額:2000000円 ( 直接経費:2000000円 )
本研究は、ジャガイモのファイトアレキシン合成の鍵酵素である3-Hydroxy-3-methylglutary1 CoA reductase (HMGR)遺伝子の推定プロモーター領域について検討したものである。
病原菌接種およびエリシター処理により誘導されるHMG2およびHMG3遺伝子を単離して塩基配列を決定したところ、両ゲノムクローンとも3つのイントロンに分断される構造であった。これらの転写開始点を調べると、両者において翻訳開始コドンからおよそ60〜70塩基上流に複数の転写開始点が認められた。推定プロモーター領域の全長をルシフェラーゼ発現ベクターに組み込み、エレクトロポレーション法でジャガイモ塊茎プロトプラストに導入してプロモーター活性を調べた。HMG2の推定プロモーターでは、HWC処理区においてルシフェラーゼ活性の増加が認められた。デリーションクローンを構築してプロモーター活性を調べた結果、alternative oxidaseのプロモーター領域に見い出されたHFS boxおよびエリシター誘導性の防御遺伝子であるフェニルアラニンアンモニア・リアーゼのシスエレメントであるBox Aの関与が示唆された。
同様にHMG3の推定プロモーター活性を調べた結果、エリシター誘導性の防御遺伝子であるカルコン合成酵素のプロモーター領域に見い出されたmyb配列およびフェニルアラニンアンモニア・リアーゼのシスエレメントであるBox Pの関与が浮かび上がってきた。また、デリーションの位置を考慮すると、約300bpの繰り返し配列の一ユニットではHWC誘電能を発揮し、この配列が繰り返されると、逆に抑制効果をもたらすことが考えられる。さらに、この繰り返し配列は、プロモーター活性を全体的に上昇させる機能を有するものと思われた。 -
研究課題/研究課題番号:09876092 1997年 - 1998年
科学研究費助成事業 萌芽的研究
道家 紀志, 吉岡 博文
担当区分:研究分担者
微生物の感染、異物の侵入、傷害刺激などを一部に受けた植物個体は、直接刺激を受けた組織のみならず全身的に、代謝変動と物質生産を速やかに起こす。刺激を受けた直後の組織では、その場で活性酸素生成反応(オキシダティブバースト:OXB)を急速に高めるが、この局部的なOXB誘導が全身的なOXBをも誘導する現象を見出した。これは、植物のストレス応答における新規な全身的シグナル伝達現象の存在を示唆した。本研究では、ジャガイモ塊茎組織およびその複葉ならびにタバコ植物の葉および個体を用い、局部的OXB誘導物質(菌体エリシター)の局部的刺激処理により、全身的OXBの発生を2種の活性酸素生成測定方法(ルミノールを介した化学発光測定および組織外シトクロムCのSOD感受性還元活性の測定)を開発・解析し、次の成果を得た。1.切断ジャガイモ組織表面へのエリシター処理で、切断後3時間以内は応答がないが、それ以後徐々にOXB応答が現れ、その二次元的発生の可視化・定量を可能にした。2.ジャガイモ塊茎の下端と上端を切断した加齢スライスで、下端断面へのエリシター処理で局部的OXBを誘導すると、数分のラグタイムを経て、上端切断面にOXBが発生した。3.加齢した縦切断塊茎スライスの側壁の一部をエリシター刺激すると、切断面上に、処理部付近から放射状に刻々とOXBが展開した。4.局部的OXBを担うO_2^-生成NADPH酸化酵素系を各種の阻害剤(Ca^<2+>キレート、Ca^<2+>チャネルブロッカ一など)およびカタラーゼやラジカルスカベンジャーの共存下の誘導刺激では、全身的OXBの誘導はなかった、過酸化水素が二次的刺激と判明した。5.全身的OXBの発生基盤は、O_2^-生成NADPH酸化酵素に依存するものと推察された。6.サリチル酸が全身シグナルと考えられているタバコ植物で、一部葉へのエリシター処理が、同一葉の中のみならず、葉柄を経て茎に、茎から他の葉に、サリチル酸関与以前の早さで、OXBを誘導した。7.これらの新現象から、局部的OXBと全身的OXBの発生をつなぐ全身的シグナルシステムの存在を提唱した。
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植物の感染防御応答へのシグナル機能をもつオキシダティブバーストの分子生理機構
研究課題/研究課題番号:09460027 1997年 - 1998年
科学研究費助成事業 基盤研究(B)
道家 紀志, 吉岡 博文, 川北 一人
担当区分:研究分担者
植物組織は病原菌の感染やエリシターに対して誘導性の防御応答を示すが、この始動時に急速に活性酸素生成反応(オキシダティブバースト:OXB)が起こる。この反応系は、Ca^<2+>、カルモジュリン、タンパク質リン酸化酵素などの情報伝達システム系の制御を受けて活性化される、原形質膜に存在するNADPH酸化酵素の一種であると提案されている。本研究では、このOXB酵素系、その活性化とシグナル伝達およびOXB系と応答遺伝子の発現に関する解析をし、次のことを明らかにした。 1. ジャガイモ塊茎スライスにおける切断後のOXB応答性の経時的活性化。 2. 局部的OXBの全身的OXB誘導現象。 3. ジャガイモ塊茎原形質膜画分におけるO_2生成NADPH酸化酵素の反応速度論的性質。 4. O_2生成NADPH酸化酵素の活性化阻害剤。 5. 原形質膜から活性を維持したO_2生成NADPH酸化酵素の可溶化。 6. 可溶化画分の未変性ポリアクリルアミド電気泳動(PAGE)によるゲル内活性測定法の開発と、数本の活性バンドの検出。 7. ヒト好中球のO_2生成NADPH酸化酵素の構成因子であるgp91^<phox>相同性cDNAのジャガイモからのクローニングと、イネおよびアラピドブシスのgp91^<phox>遺伝子との高い相同性。 8. ジャガイモ塊茎可溶性タンパク質電気泳動画分にヒト好中球のNADPH酸化酵素構成成分のp67^<phox>の抗体との陽性反応。 9. カルシウムイオン阻害剤のOXB誘導阻害と防御関連遺伝子の発現の抑制関連。 10. OXBによる脂質過酸化反応の誘導との関連におけるホスホリパーゼA_2の活性化とその活性化におけるGTP結合タンパク質の関与。 11. OXB誘導に伴う細胞質凝集におけるアクチンの関与とアクチン結合タンパク質の分離・同定。 12. OXBとファイトアレキシン合成関連酵素遺伝発現との関連性の有無と、特定酵素に対する発現制御の可能性。 13. O_2生成NADPH酸化酵素を構成する複合タンパク質のタンパク質と遺伝子の両面からさらなる研究の必要性。