2024/04/09 更新

写真a

ミシマ ケンジ
三島 賢二
MISHIMA Kenji
所属
素粒子宇宙起源研究所 フレーバー物理学国際研究センター 特任准教授
職名
特任准教授
 

論文 1

  1. Development of Neutron Interferometer Using Multilayer Mirrors and Measurements of Neutron-Nuclear Scattering Length with Pulsed Neutron Source

    Fujiie T., Hino M., Hosobata T., Ichikawa G., Kitaguchi M., Mishima K., Seki Y., Shimizu H.M., Yamagata Y.

    Physical Review Letters   132 巻 ( 2 ) 頁: 023402   2024年1月

     詳細を見る

    記述言語:英語   出版者・発行元:Physical Review Letters  

    This study entailed the successful deployment of a novel neutron interferometer that utilizes multilayer mirrors. The apparatus facilitates a precise evaluation of the wavelength dependence of interference fringes utilizing a pulsed neutron source. Our interferometer achieved an impressive precision of 0.02 rad within a 20-min recording time. Compared to systems using silicon crystals, the measurement sensitivity was maintained even when using a simplified disturbance suppressor. By segregating beam paths entirely, we achieved successful measurements of neutron-nuclear scattering lengths across various samples. The values measured for Si, Al, and Ti were in agreement with those found in the literature, while V showed a disparity of 45%. This discrepancy may be attributable to impurities encountered in previous investigations. The accuracy of measurements can be enhanced further by mitigating systematic uncertainties that are associated with neutron wavelength, sample impurity, and thickness. This novel neutron interferometer enables us to measure fundamental parameters, such as the neutron-nuclear scattering length of materials, with a precision that surpasses that of conventional interferometers.

    DOI: 10.1103/PhysRevLett.132.023402

    Scopus

    PubMed

科研費 3

  1. 水素吸蔵ナノ粒子・中性子散乱によるサブミクロン領域での未知相互作用の探索

    研究課題/研究課題番号:22H01231  2022年4月 - 2026年3月

    科学研究費助成事業  基盤研究(B)

    嶋 達志, 三島 賢二, 吉岡 瑞樹, 北口 雅暁

      詳細を見る

    担当区分:研究分担者 

    重力は、弱い重力場の近似では逆二乗則にしたがうと考えられているが、数ミクロン以下の距離では素粒子の標準模型を超える効果により、逆二乗則からのずれが生じ、重力様の未知相互作用として現れ得る。そのような未知相互作用は、約100nm以上の領域では ねじり秤等を用いて精密な探索が行われているが、100nm以下では分子間力が深刻なバックグラウンドとなる。
    本研究は、分子間力の影響を受けない中性子小角散乱を用い、さらに標的物質の核散乱長を測定中にリアルタイムで精密に制御することで、核力の影響をも極限まで低減する。これによって100nm以下での感度を3~5桁改善し、未踏の領域での未知相互作用探索を行う。
    重力は、弱い重力場の近似では逆二乗則に従うと考えられているが、数μm以下の距離では素粒子の標準模型を超える効果により、逆二乗則からのずれが生じ、重力様の未知相互作用が現れ得る。重力様の未知相互作用は、約100nm以上の領域ではねじり秤等を用いて精密な探索が行われているが、100nm以下では分子間力が深刻なバックグラウンドとなる。本研究は、分子間力に不感な中性子小角散乱を用い、探索する距離と同程度の大きさを持つナノ粒子を標的として用いる。ナノ粒子を構成する約1000万個の原子が干渉性散乱に寄与するため、測定感度が大幅に向上する。この際、核散乱も同様に増強されバックグラウンドとなり得るが、負の核散乱長を持つバナジウムナノ粒子に正の核散乱長を持つ重水素を適量吸蔵させることにより相殺させ、核散乱を抑制する。これによって100nm以下での感度を3~5桁改善し、未踏の領域での未知相互作用探索を行う。バナジウムは常温・常圧で優れた水素吸蔵能力を備えた物質として知られているが、ナノ粒子化した場合の吸蔵特性はわかっていない。また少なくともバルクなバナジウム材においては、微量の酸素が含まれていると水素吸蔵能力が低下することが知られているが、一般に金属ナノ粒子は極めて容易に酸化されることも知られている。そこで2022年度は、できるだけ酸素含有量の少ないバナジウムナノ粒子の開発に注力した。その結果、ナノ粒子の製造法の一つであるジェットミル法を用いて0.7重量%以下の低酸素濃度の試料を作成することに成功した。現在、もうひとつの有力な製造法であるRF熱プラズマ法による試料の分析を進めている。またこれと並行して、雰囲気の水素ガスの温度・圧力と吸蔵される水素量との関係を調査するためのガスチェンバーの開発を行い、動作試験を行った結果、1gの試料に対して吸蔵比を0.1%の精度で制御できることが確認された。
    当初、純バナジウムナノ粒子試料としては市販品または我々自身が作成したものを使用することを予定していたが、いずれも5~15重量%程度の酸素を含有していることが判明した。この場合、酸素の寄与だけで既に合成散乱長の許容範囲を超えてしまうため、酸素を含まないナノ粒子の製造法が課題となった。そこで、あらためて製造工程をひとつずつ点検し、作業環境および保管方法を最適化することで酸化の問題を克服することができた。これによって、当初2022年度内に予定していた重水素吸蔵特性の調査が2023年度上半期にずれこんだが、2023年度下半期に予定している大強度陽子加速器施設(J-PARC)物質・生命科学実験施設のパルス中性子源を用いた試験測定には十分間に合う見込みであり、研究期間全体から見ればおおむね順調に進んでいると言える。
    酸素量ができるだけ少ないバナジウムナノ粒子の製造が最大の鍵であり、これに関してジェットミル法およびRF熱プラズマ法という2通りの方法を適用し、製造された試料の酸素濃度の比較を行っているところである。前者については 0.7重量%程度であることが判明しているが、最終的により酸素濃度の低い試料を採用し、重水素吸蔵特性の調査を2023年度上半期に実施する。その結果を踏まえて2023年度下半期にJ-PARC施設において中性子小角散乱の試験測定を行い、重水素の吸蔵量の増減に対して散乱断面積が極小値を示すことを確認する。また、同じ標的試料について、重力相互作用の影響が現れないX線小角散乱測定を行い、中性子小角散乱データと比較することによって最終的に未知相互作用のパラメータに対する制限を与える予定であるが、X線小角散乱測定を行うための実験セットアップを検討し、標的セルの開発を行う。
    また、中性子小角散乱測定においては入射中性子ビームの発散成分が小角散乱成分に対するバックグラウンドとなり、未知相互作用に対する検証感度を劣化させるため、2024年度にビームコリメータの微調機構を導入し、感度の向上を図る。またナノ粒子の純度の向上も並行して進め、最終年度に最高感度での測定実験を実施する。

  2. 中性子寿命問題の解決 ―偏極中性子崩壊非対称を用いた事象選別の高度化―

    研究課題/研究課題番号:22H00140  2022年4月 - 2025年3月

    科学研究費助成事業  基盤研究(A)

    三島 賢二, 岩下 芳久, 不破 康裕, 吉岡 瑞樹, 北口 雅暁

      詳細を見る

    担当区分:研究代表者 

    配分額:40300000円 ( 直接経費:31000000円 、 間接経費:9300000円 )

    中性子は880.2+/-1.0秒で陽子、電子、反ニュートリノの3体にβ崩壊する。その寿命は素粒子、原子核、天文分野における重要な値であるが、現在報告されている中性子寿命はその測定手法により8.5秒(4.0σ)の大きな乖離があり、“中性子寿命問題”と呼ばれている。この乖離が単なる実験の間違いなのか、あるいは未知の現象によるものなのか、大きな議論を呼んでいる。本申請はJ-PARC大強度パルス中性子を用い、中性子崩壊からの電子を測定するという新しい手法により、この問題の解決を目指す。中性子崩壊からの電子の放出方向は中性子の偏極方向に偏りを持つため、中性子偏極を制御することで実験の高度化を行う。

  3. ソレノイド磁場で実現する新しい手法による中性子寿命問題の解明

    研究課題/研究課題番号:21H04475  2021年4月 - 2025年3月

    科学研究費助成事業  基盤研究(A)

    吉岡 瑞樹, 三島 賢二, 槇田 康博, 北口 雅暁

      詳細を見る

    担当区分:研究分担者 

    中性子は最も単純な原子核の一つであり、およそ900秒で電子、陽子、反ニュートリノに崩壊する。その崩壊寿命は素粒子標準理論の精密検証において不可欠なパラメータであるが、測定手法間に3.8標準偏差の有意な乖離が見られている。この乖離は「中性子寿命問題」と呼ばれており、未知の現象に起因する可能性が議論されている。我々は茨城県東海村の陽子加速器施設J-PARCの大強度中性子ビームを用いて、既存の手法とは異なる測定方法により中性子寿命を高精度で決定する実験を提案している。本研究は、研究期間内に0.1%の精度で中性子寿命を測定し、中性子寿命問題が未知の現象に起因するか否かに決着をつけることを目的とする。
    中性子は最も単純な原子核の一つであり、およそ900秒で電子、陽子、反ニュートリノに崩壊する。その崩壊寿命は素粒子標準理論およびビッグバン元素合成理論の精密検証において不可欠なパラメータであるが、測定手法間に3.8標準偏差の有意な乖離が見られている。この乖離は「中性子寿命問題」と呼ばれており、未知の現象に起因する可能性が真剣に議論されている。この問題を解決すべく、申請者らは茨城県東海村の陽子加速器施設JPARCの大強度中性子ビームを用いて、既存の手法とは異なる測定方法により中性子寿命を高精度で決定する新しい実験を提案している。本実験では新型ガス検出器とソレノイド磁場を組み合わせ、従来最も支配的であった背景事象を大幅に低減できる。
    <BR>
    これまでの研究で新規検出器の基本開発が完了しているが、本年度は未対応項目への措置を行った。入射中性子がガス検出器中の動作ガスにより散乱され、検出器部材との吸収反応により発生するガンマ線背景事象を抑制する必要がある。そのため、ガンマ線発生確率が著しく低い6フッ化リチウムで検出器内部を覆うことを検討してきた。本年度は6フッ化リチウム壁の詳細設計および設置方法の検討を行ない、実際に検出器実機に組み込んだ。また、荷電粒子検出面に高電圧を印加する必要があるが、これまで放電現象が見られていた。放電箇所への対応を行い、本実験実施に十分な高電圧が印加できることを確認した。以上により、本実験実施可能な新規検出器の開発が完了した。次年度には、実験中に必須なエネルギー校正システムを検出器実機に組み込む。
    本実験実施可能な新規検出器の開発が完了し、当初の計画通り次年度に中性子ビーム照射を実施予定である。
    本実験中に必須である、エネルギー校正システムを検出器に組み込む。検出器群をビームラインに設置し、物理実験を遂行する。