科研費 - 室原 豊明
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細胞移植による血管新生療法の改良型開発のための基礎研究
2002年 - 2003年
科学研究費補助金 基盤研究(B)
室原豊明
担当区分:研究代表者
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内皮前駆細胞移植を応用した虚血心筋の血管新生療法の開発
2000年5月 - 2005年3月
科学研究費補助金 特定領域研究
室原 豊明
担当区分:研究代表者
内皮前駆細胞(EPC)は、CD34を陽性に持つ血球系未分化幹細胞と起源を等しくすると考えられ、末梢血以外にも骨髄や臍帯血から培養・採取可能である。我々はこれまでに、ヒト臍帯血から内皮前駆細胞を得ることに成功し、さらにこれらの細胞を免疫抑制動物の虚血骨格筋内へ移植することにより、血管新生や側副血行路の発達が促されることを確認した。また成人においては、内皮前駆細胞は唯一の造血臓器である骨髄に由来する。我々は2000年より国内多施設共同研究として、重症閉塞性動脈硬化症・Buerger病患者に対する自己骨髄細胞移植による血管新生療法を開始しており良好な成績を得ている(TACT study)。この成果は、2003年6月に再生医学領域では日本初の高度先進医療・保険適応として厚生労働省より認定され今日に至っている。我々は内皮前駆細胞や自己骨髄単核球細胞移植による血管新生療法について引き続き検討を加えている。本年度は、2002年から研究代表者が新しく移籍した名古屋大学医学部附属病院においても、自己骨髄細胞移植による血管再生療法の臨床応用を開始した(重症末梢動脈閉塞症患者に対して)。既にこれまでに7例の治療を完了しており、効果も複数例で認められている。2003年度の11月には、自己骨髄単核救細胞移植による重症末期狭心症患者への血管再生療法のプロトコールも名古屋大学医学部倫理委員会に承認されており、2004年の後半にこの治療を開始した。基礎研究面では、移植前の内皮前駆細胞に低酸素負荷を与えると細胞機能が活性化され、移植後の血管新生効果が増強されることが確認された。また、機械的刺激によっても細胞の血管新生機能が活性化されることが明らかとなった。さらに細胞移植とAngiopoietin-1(Ang-1)遺伝子治療との併用により、より少ない骨髄細胞によっても同程度の血管新生効果が得られることが我々の基礎研究より明らかとなった。これ以外にも、降圧剤として汎用されているACE阻害剤やAngiotensin II 1型受容体拮抗剤が腫瘍の増殖や増殖性糖尿病性網膜症の増悪を軽減させたとの実験結果に着目し、これらの効果が血管新生の抑制を介していることを実験的に確認した。さらにVEGF-E/PIGFキメラ遺伝子が、VEGF-A遺伝子と同程度に虚血部位の血流を改善させることが判明した。今後これらのキメラ遺伝子と骨髄細胞の併用療法を考察していく。
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末梢血幹細胞移植を応用した新しい虚血部血管新生療法の開発
2000年5月 - 2002年3月
科学研究費補助金 基盤研究(B)
室原豊明
担当区分:研究代表者
近年、内皮前駆細胞が成人においても存在することが確認され、さらにこれらの細胞は成人における血管新生に参加することが示された。我々はこれらの細胞を虚血組織に移植することで、血管新生が有意に増強されることを報告した。実際にこの治療を臨床に応用する場合、自己の内皮前駆細胞を使用することが理想的であるが、細胞の採取(骨髄)には侵襲を伴い問題が残る。内皮前駆細胞と血球系幹細胞は起源を一つにすることから、本研究では血球系幹細胞を動員するコロニー刺激因子(rhG-CSF)が内皮前駆細胞の動員を介して血管新生を増強できないか否かを、動物実験において検討した。
1)rhG-CSF(5μg/kg BW/d)背部皮下投与後、ラット末梢血白血球数は有意に増加させ、中止後は再び正常値に復帰した。従って、ラットにおいてfunctionalであった。末梢血単核球培養法において、細胞クラスター(コロニー)は十分に形成されたが、内皮前駆細胞様-細胞の発芽はむしろ抑制された。
2)ラット背部皮下にrhG-CSF(5μg/kg BW/d)を7日間連続投与した群(rhG-CSF群)においては、血管新生の程度にコントロール群と有意な差は出なかった。
rhG-CSFによる末梢血への幹細胞動員においては、共通の幹細胞から顆粒球系への分化が主に進み、内皮前駆細胞の分化や動員はむしろ抑制されるのではないかと思われた。rhG-CSFにより末梢血への内皮前駆細胞の動員が刺激されなくとも、虚血下肢における血管新生には影響が無かったことより、少なくともこのモデルに関しては流血中の内皮前駆細胞の血管新生における関与は比較的少ないのではないか。
我々はさらに、細胞移植前の細胞虚血負荷が血管新生増強効果を有するか否かについて検討を加えた。この結果、内皮前駆細胞を移植前に虚血環境で培養したものは、しなかった細胞に比べて、血管新生効果が有意に大であった。 -
コロニー刺激因子を用いた新しい虚血部血管新生療法の開発-内皮前駆細胞動員療法-
2000年5月 - 2001年3月
科学研究費補助金 特定領域研究
担当区分:研究代表者
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血管新生と血管保護療法の開発に関する研究
2000年 - 2004年
科学研究費補助金 厚生労働省厚生労働科学研究費補助金(ヒトゲノム・再生医療等研究事業)
担当区分:研究分担者
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ヒト臍帯血からの内皮前駆細胞単離および分化誘導と血管新生療法への応用
1999年5月 - 2001年3月
科学研究費補助金 基盤研究(B)
室原豊明
担当区分:研究代表者
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自己骨髄単核細胞移植による心筋梗塞後血管新生療法の実験的試み
1999年5月 - 2000年3月
科学研究費補助金 特定領域研究
担当区分:研究代表者
従来成人における血管新生は、既存の内皮細胞の増殖と遊走にするもののみであると考えられてきたが、我々は最近成人末梢血中の単核球分画に血管内皮細胞に分化しうる内皮前駆細胞が存在することを報告した。内皮前駆細胞はCD34陽性細胞由来と考えられ、培養過程で血管内皮細胞の形質を獲得した。また内皮前駆細胞を標識しヒト内皮細胞と共培養すると、マトリゲル上で管腔形成に組み込まれることが示された。さらに、動物に経静脈的に投与すると、虚血下肢の血管新生に組み込まれることが明らかとなった。以上より成人における血管新生には、既存の毛細血管内皮細胞の増殖と遊走のみではなく、流血中の内皮前駆細胞の分化という血管形成型の血管新生も関与する可能性があることが示された。
成人における内皮前駆細胞は骨髄由来であると考えられる。今回我々は、動物実験系(ウサギ片側下肢虚血モデル)において、蛍光色素ラベルした自己骨髄単核球細胞を直接虚血骨格筋内に植え込むことによって虚血部位における血管新生に自己内皮前駆細胞が組み込まれことを確認した。また、骨髄単核球を自己移植投与することによって、虚血骨格筋内における血管新生や血流が改善されることを確認した。方法として、下腿血圧左右比、血管造影による血管スコアの算定、虚血組織標本における免疫染色による内皮細胞の同定と毛細血管密度の算定、レーザードップラー法による皮下血流の計測を用いた。以上より、自己骨髄細胞の移植はによって、虚血骨格筋内の血管新生を有意に増強させうることが示された。 -
高脂血症における組織虚血後の血管新生に関する研究
1998年5月 - 1999年3月
科学研究費補助金 科学研究費補助金 奨励研究 A
担当区分:研究代表者
血管新生並びに側副血行路の形成は、虚血組織の血液灌流を維持するために重要な生理反応の一つである。我々はこれまでに、内皮由来一酸化窒素(NO)が欠損した状態では、虚血組織の血管新生が著しく抑制されていることを報告してきた。内皮由来NOが血管新生に重要な役割を果たしているという事実を考慮すれば、高脂血症患者ないしは高脂血症モデル動物においては、血管内皮機能が低下し、内皮由来NOの産生が減弱し、その結果組織虚血に引き続く血管新生反応が障害されている可能性が考えられる。我々は高脂血症モデルラットを作成し、片側下肢虚血モデルにおいての血管新生について、in vivoで検討を加えた。その結果、(a)虚血下肢における血管新生は、正常ラットに比べ高脂血症ラットにおいて障害されていた。評価方法として、レーザードップラー法による下肢血流測定、血管造影検査による血管スコアーの算出、摘出虚血組織における内皮細胞の免疫染色による同定および毛細血管密度の算定を用いた。(b)高脂血症ラットにおいては、実際に虚血組織中並びに血中のNOxの量が低下していた。また組織中のcGMP量も減弱していた。反面組織中の内因性NO不活性化物質ADMA量の増加がみられた。(c)内因性NOの前駆体であるL-arginineの経口投与によって、高脂血症ラットの障害された血管新生が改善された。(d)血管新生を惹起する内因性の成長因子、特にVEGFの発現の程度は、高脂血症ラットとコントロールラットでは差がなかった。以上より、高脂血症において、血管新生が減弱していること、並びに内因性のNOの減弱が関与していることが明らかにされた。