科研費 - 室原 豊明
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マイオカインを標的とした運動による加齢関連疾患の制御機構の解明と創薬への応用
研究課題/研究課題番号:20H00571 2020年4月 - 2024年3月
大内 乗有
担当区分:研究分担者
本研究では、運動や加齢により発現制御される骨格筋由来分泌因子「マイオカイン」とその関連分子に着目し、加齢関連疾患における役割を個体レベルで明らかにし、その詳細な分子機構を細胞レベルで解明する。そして、マイオカインの機能解析により、運動による疾患保護機構を明らかにすることのみならず、マイオカインとその関連因子を標的とした加齢関連疾患の病態生理解明と予防法開発や治療応用へと展開することを目指す。
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脂肪組織由来間葉系前駆細胞を用いた血管新生療法の分子基盤探索
研究課題/研究課題番号:20K08401 2020年4月 - 2023年3月
柴田 玲
担当区分:研究分担者
「脂肪組織由来間葉系前駆細胞を用いた重症虚血肢に対する血管新生療法」が効果を示す、その機序解明と優位性の評価を行う逆トランスレーショナルリサーチの遂行。具体的には、以下の4点に関して検討を行う。
1) ADRCsを用いた血管新生療法の治療効果を予測するバイオマーカーの探索
2) 創傷治癒におけるADRCsの役割検討
3) ADRCsを用いた血管新生療法の治療効果の機序解明
4) 生活習慣病がADRCsの血管新生療法へ及ぼす影響の検討 -
心臓の硬化を制御するG蛋白質共役受容体の機能解明と心不全治療薬シーズの探索
研究課題/研究課題番号:20H03674 2020年4月 - 2023年3月
竹藤 幹人
担当区分:研究分担者
近年、心臓が硬くなり拡がりにくいために症状を呈する「収縮機能が保たれた心不全(HFpEF)」が注目されている。従来の心収縮機能低下を標的とする治療法ではHFpEFの治療効果は乏しく、HFpEFに対する新たな治療法の開発が求められている。adhesion-GPCRファミリーは物理的刺激により活性化されるGPCRとして新たに分類され、メカノストレスに対する生体反応を制御する分子として注目されている。adhesion-GPCR X がHFpEFに関わっていることを明らかにし、その下流で活性化するリン酸化シグナルを解析する。本研究では、HFpEF治療薬の開発シーズを得ることを目指す。
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グルカゴン依存性交感神経制御機構の解明と心血管病での役割ー心事故予防を目指して
研究課題/研究課題番号:19H03651 2019年4月 - 2022年3月
暮石泰子
担当区分:研究分担者
代表者らは、グルカゴン欠損マウス(Gcg-null)の心臓を解析し、高血圧と心肥大を伴う収縮機能不全性心不全を呈することを発見した(投稿準備中)。その機序には、Gcg欠損により、副腎アドレナリン分泌を制御する責任分子の生理的抑制制御の逸脱が起こり、Adrの過剰分泌を引き起こすことを解明し現在その責任分子X関連シグナリングの探索と、このGcgによる新たな神経―内分泌制御系の病態意義に関して研究を継続している。本研究は糖尿病専門医との連携により代表者らが発見したGcg依存性交感神経制御機構の解析結果を発展応用させ、交感神経活性評価の血液サンプルによる簡便なサロゲート診断法や治療法の開発を目指す。
循環器領域での内因性・生理学的グルカゴン(Gcg)の心血管系制御機構については現時点までの約50年間不明のままであった。ところが、最近の糖尿病治療薬に関する大規模臨床試験の結果、インクレチン始め糖代謝制御薬の中には心血管制御作用があることが明らかとなったことを契機に、その分子病態メカニズムの一つとして内因性Gcgの心臓血管系への直接作用に注目が集まってきた。
本年度、研究代表者らは、グルカゴン欠損マウス(Gcg-null)の心臓を解析し、高血圧と心肥大を伴う収縮機能不全性心不全を呈することを発見し、その成果を論文化した(Cell reportsに投稿・Peer review中)。その機序には、Gcg欠損により、副腎アドレナリン分泌を制御する責任分子の生理的抑制制御の逸脱が起こり、アドレナリンの過剰分泌を引き起こすことを解明した。またこのグルカゴンーアドレナリン連関は、重症低血糖時の致死的イベント抑制にも重要で、グルカゴン欠乏は、重症低血糖時の生存率をアドレナリン依存性に大きく低下させることが明らかとなった。現在その責任分子および関連シグナリングの探索と、このGcgによる新たな神経―内分泌制御系の病態意義に関して、グルカゴンの副腎髄質細胞への直接効果に関する解析を進め、副腎髄質細胞におけるグルカゴン受容体の同定、グルカゴン直接作用としての神経細胞分化促進効果を発見し、さらなる機序について解析を継続しているが、その一つに、mRNAdecapping enzymeのうち、EDC4によるmRNA decay調節が重要であることが明らかになっている。
現時点で本年度目標としていたhigh impact journalへの投稿とpeer review採択まで順調に経過した。次年度、査読結果で指摘された内容に対する追加実験が必要となり、それを最優先で実施する。その一方、懸案事項としている次項に述べる3つの項目についても予備実験や試料準備を開始している。
次年度の実施方策として、以下の3つを柱に進めていく予定である。
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1)交感神経の病的活性化に基づく病態モデル(心不全、運動負荷、身体拘束)モデルを、インクレチン欠損モデル動物と対照群において検証する。各種ストレスのGcg-交感神経活性変化への影響及び心臓血管リモデリングへの影響について検証する。
2)SGLT2阻害薬による心不全改善作用におけるグルカゴン依存性心臓ー副腎連関機構の解明
現在心不全治療薬へのドラッグリポジショニングが期待できる糖尿病治療薬SGLT2阻害剤は、グルカゴンを上昇されることが明らかにされている。我々の発見したグルカゴン欠損による交感神経活性化は、このSGLT2阻害剤による心不全改善作用にも関連している可能性が考慮される。よって、心不全モデルに対するSGLT2阻害剤投与の影響を、グルカゴンー交感神経系への点から解析する。
3)Gcgによる副腎髄質細胞分化における責任メッセンジャーRNA (mRNA) decapping 共因子の同定を開始する。具体的には、mRNA decappingを制御する責任マイクロRNA (miRNA)の網羅的解析を行う。更に同定した候補について、次年度に向けて相補的miRNAを作出し機能解析を行う準備をする。心房組織を採取し、RNA-seqによる網羅的比較解析を行い、DPP4依存性・非依存性神経内分泌責任分子及び責任miRNAファミリーの同定を網羅的解析により試みる。 -
グルカゴン関連蛋白と毛細血管機能にフォーカスした糖尿病性心筋症の病態に関する研究
研究課題/研究課題番号:18H02805 2018年4月 - 2021年3月
室原 豊明
担当区分:研究代表者
配分額:17290000円 ( 直接経費:13300000円 、 間接経費:3990000円 )
糖尿病合併心血管病の基本病態は血管障害であり、それらは大血管障害と毛細血管障害に分けられる。毛細血管障害については、予後や患者のQOLに悪影響をもたらすものの、未だに明確な病態が明らかにされておらず治療法も確立されていない。本研究では糖尿病性細小血管傷害による心機能の低下対して、特にインクレチンやグルカゴンと、毛細血管機能、血管新生機能に着目してその病態解明と新しい治療法の開発を目指す。血管新生因子、アディポカイン・マイオカインとの関連性についても検討する。
(1)グルカゴン、GLP-1 研究
グルカゴン関連ペプチド (glucagon, GLP-1, GIPなど) は、心筋細胞や血管内皮細胞にも受容体が存在し、直接的効果がある。近年グルカゴン関連ペプチドにより、血管新生を惹起できることが報告されており、グルカゴン関連ペプチドと糖尿病性毛細血管障害の関連性が注目されている。大規模臨床試験でもGLP-1受容体作動薬が心血管イベントを有意に低下させることが示され、その機序について注目が集まっている。我々はグルカゴン・GLP-1欠損マウスを入手し研究を継続した。その結果興味ある知見を得たので、論文投稿中である。
(2)アディポカイン・マイオカイン研究
我々のグループはこれまでに新規アディポカイン・マイオカインを複数同定しており、これらが虚血部血管新生作用を有していることもまた報告した。2018年度には新規マイオカインの1つであるマイオネクチンを同定し、その生物学的特性に関して論文発表を行った(Otaka N. et al. Circ. Res. 2018;123:1326-1338.)。心筋虚血再灌流モデルマウスにおいて、マイオネクチンは心筋保護作用を示した。マイオネクチンは運動により骨格筋からの分泌が増強する。これらの研究を現在継続中である。
アディポカイン・マイオカイン研究においては、新規マイオカインの1つであるマイオネクチンを同定し、その生物学的特性に関して解析を行った(Otaka N. et al. Circ. Res. 2018;123:1326-1338.)。この延長として、心筋梗塞の一般的な動物モデルである、心筋虚血再灌流モデルマウスにおいて、マイオネクチンは心筋保護作用を示した。またマイオネクチンは運動により骨格筋からの分泌が増強することから、非常に興味深い分子である。これらのデータを現在投稿準備中である。
また、グルカゴン関連ペプチド (glucagon, GLP-1, GIPなど) に関連する研究では、我々はグルカゴン・GLP-1欠損マウスを入手する事が出来て、研究を継続している。糖尿病性心機能障害や毛細血管障害に対するグルカゴン関連ペプチドの役割について研究継続中である。現在は論文作成を終えて、海外雑誌に投稿中である。また学会でもデータを発表している(Nishimura et al. Glucagon acts as a guardian of the heart against catecholamine elevation. 2019年3月 日本循環器学会総会にて発表)。
引き続き、グルカゴン関連ペプチド(グルカゴンとGLP-1)欠損マウスを用い、心筋虚血モデル、TAC 心不全モデル、血管新生モデルなどを用いて、グルカゴンや GLP-1受容体作動薬剤の心血管系に与える役割を検討して行きたい。また、アディポカイン、マイオカインについても、引き続き動脈硬化モデル、血管新生モデル、心不全モデルなどの動物モデルを用いて、それらの効果を検討して行きたい。
2020年度から新たに当科において、肺高血圧症モデルマウスを作成する予定である。このモデルにおける血管新生と病態、さらにはグルカゴン関連ペプチド、アディポカイン、マイオカインの効果を見て行きたい。 -
骨格筋由来分泌蛋白を標的とした心血管病の病態解明と治療法の開発
研究課題/研究課題番号:17H04175 2017年4月 - 2020年3月
大内 乗有
担当区分:研究分担者
本研究では、運動誘発性マイオカインであるマイオネクチンの虚血性心疾患における役割を解析した。マイオネクチン欠損マウスは対照マウスと比べて、虚血再灌流後の心筋梗塞サイズの増加、心収縮能の低下、心筋でのアポトーシスと炎症反応の増悪を認めた。一方、マイオネクチン過剰発現マウスは対照マウスと比べて、心筋虚血再灌流障害が軽減していた。マイオネクチンの虚血心筋保護機序は、心筋細胞とマクロファージにおけるスフィンゴシン1リン酸分泌増加によるcyclicAMP/Akt経路を介したアポトーシス抑制と炎症反応抑制が関与していた。従って、マイオネクチンは心筋保護作用を有するマイオカインであると示唆された。
我が国において虚血性心疾患を代表とする心血管病の病態解明及び治療法の確立は最重要課題である。本研究において、運動誘発性の骨格筋由来分泌因子「マイオカイン」であるマイオネクチンが心筋細胞のアポトーシスとマクロファージの炎症反応の抑制を介して心筋虚血再灌流障害を改善することが明らかとなった。従って、マイオネクチンは心筋保護作用を有するマイオカインでありマイオネクチンを標的とした心血管病の創薬開発が期待される。 -
肺高血圧症病状進行での血管新生抑制型アイソフォームVEGF-A165b役割解明
研究課題/研究課題番号:17K09551 2017年4月 - 2020年3月
近藤 隆久
担当区分:研究分担者
肺高血圧症は肺動脈内皮細胞、平滑筋細胞の増生による肺血管抵抗の上昇により右心不全から死に至る予後不良な疾患である。肺高血圧症は、進行すると無秩序な毛細血管増生が認められ、血管新生の調整破綻が生じている。血管新生抑制型アイソフォームVEGF-A165bは、肺疾患による肺高血圧症において増加しており、膠原病に伴う肺動脈性肺高血圧症においても上昇が認められた。VEGF-A165bは、これらの肺高血圧症の病態に関与している可能性がある。
肺高血圧症では、肺動脈の血管内皮細胞や平滑筋細胞の増殖が重要なことは明らかではあるが、これらの細胞を制御する血管内皮増殖因子(VEGF)の関与については報告が一定していなかった。今回使用した我々の手法では、従来の報告では区別がされていなかった血管新生抑制型アイソフォームVEGF-A165bの測定が可能であり、血清中のVEGF-A165bが特定のタイプの肺高血圧症において上昇していることを見出した。血清VEGF-A165bの上昇は、特定のタイプの肺高血圧症の病態推移の把握に有用であると考えられる。 -
オメンチンを標的とした心血管病の治療開発
研究課題/研究課題番号:17K09572 2017年4月 - 2020年3月
柴田 玲
担当区分:研究分担者
肥満症を中心とした代謝異常や心血管病の病態には、オメンチンをはじめとした種々のアディポカインの産生異常が関わっている。我々は本研究の中で、オメンチン過剰発現マウス等を用いたアプローチで、オメンチンが虚血下において直接的な心保護効果を有することを見出した。またその機序としてAMPKシグナル伝達経路が関与している可能性が明らかとなった。これらの所見は、オメンチンを標的とした新たな心血管病治療の開発につながると考えられる。
高齢化社会の到来により、心臓疾患の患者数は顕著に増加しているのみならず、死亡率も非常に高い。まだまだ新たな治療法が求められている現状である。今回我々は、オメンチンが虚血下において直接的な心保護効果を有することをマウス及びミニブタを用いた検討にて見出している。これらの所見は、オメンチンを標的とした新たな心血管病治療の開発につながると考えている。 -
EDHFをターゲットとした新しい血管病の探索研究―血管内膜肥厚とEDHFの関連―
研究課題/研究課題番号:17H04290 2017年4月 - 2020年3月
古森 公浩
担当区分:研究分担者
内皮細胞はNitric Oxide(NO)と内皮由来過分極因子(EDHF)を介して平滑筋を弛緩させることが知られている。静脈グラフトではNOとEDHFの反応がともに障害され高度な内膜肥厚を来すことを我々は既に報告している。今回の研究は異常血流動脈グラフトと正常血流動脈グラフトにおけるNOとEDHFの機能変化を比較した最初の研究である。正常血流グラフトではEDHFは低下しNOの産生が増強する。一方、異常血流グラフトではNOは低下する傾向にあり、EDHFの反応も低下していると考えられた。
今回の結果より内皮由来過分極因子(EDHF)と血管内膜肥厚との関連が示唆され、EDHFをターゲットとした新しい治療戦略への発展が期待される。EDHFとグラフト内膜肥厚への関与、さらにはステント再狭窄との関連の研究は、閉塞性動脈硬化症だけではなく虚血性心血管病患者の晩期障害となる自家静脈、自家動脈グラフトの狭窄・閉塞、ステント再狭窄の病態解明を企図するもので、EDHFをターゲットとした新たな心血管病治療の可能性示唆し臨床的にも有用な結果であると思われた。 -
脂肪組織由来間葉系前駆細胞を用いた誘導心筋細胞による心筋再生療法の開発
研究課題/研究課題番号:17K09574 2017年4月 - 2019年3月
近藤 和久
担当区分:研究分担者
①我々はまず、脂肪組織由来間葉系幹細胞(ADRC)の心筋分化誘導に必要と考えられる候補因子を次世代シーケンサー(NGS)を用いて検証した。8週の野生型マウスよりADRCを採取・培養しmRNAを抽出、比較対象として2心房2心室が形成される時期であるE10.5の胎児マウス心筋からmRNAを抽出した。NGSの解析をすすめ、最終的に22の因子を候補因子として同定した。この22因子の中には、すでに報告されている心臓線維芽細胞のダイレクトリプログラミングに用いられるGata4、Mef2c、Tbx5(GMT)も含まれることが確認された。
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②それぞれの転写因子をウイルスベクターに挿入しクロ-ニングを行った。心筋特異的リポーターであるαMHC-GFPトランスジェニックマウスより作成したADRCに、レンチウイルスを用いてADRCへの遺伝子導入を行なった。GMT導入では心筋分化誘導は確認できなかった。次に22の転写因子のうち胎児心筋において発現量の多い上位10遺伝子(Nkx2-5、Hrt2、Gata6、Gata4、Hand2、Mef2a、Baf60c、Tbx20、Klf15、Myocd)を導入したところ、10から14日後にGFP陽性細胞を認める結果が得られたが、陽性細胞の割合は0.1%以下と低く、誘導効率の改善を必要とした。そのため、10因子よりそれぞれ1因子ずつ引いた9因子で比較検証を行ったところ、10因子からHrt2を除いた9因子にてGFP発現が有意に上昇していることを突き止めた。同様の方法で検討を続けたところ、最終的にGata6、Gata4、Mef2a、Baf60c、Klf15、Myocdの6因子で効率が最も良いという結果を得た。 -
心筋疾患におけるKlotho-FGF系の病態生理学的意義の解明
研究課題/研究課題番号:16K09429 2016年4月 - 2020年3月
奥村 貴裕
担当区分:研究分担者
研究代表者らは,拡張型心筋症42例におけるFGF-23血中濃度とバイオマーカー,血行動態および予後との関連を検討した。末梢血FGF-23濃度は,推定糸球体濾過量と逆相関し,高感度トロポニンT濃度と相関した。生存解析では,末梢血FGF-23高値群は,低値群と比べて,心イベントが高率であった。多変量解析では,FGF-23高値群は心イベントの独立した予測因子であった。重回帰分析では,推定糸球体濾過率と脳性ナトリウム利尿ペプチドが,FGF-23の重要な規定因子だった。心筋線維化率は,末梢血FGF-23濃度とは有意な相関を認めなかったが,経心臓FGF-23濃度差との間に弱い相関関係を認めた。
研究代表者らは,拡張型心筋症患者における末梢血FGF-23血中濃度が推定糸球体濾過量と逆相関し,高感度トロポニンT濃度と相関することを示した。また,FGF-23高値は,不良な予後と関連し,心筋における線維化が心臓前後の血液FGF-23濃度差と相関することを明らかにした。これらの結果は,FGF-23が拡張型心筋症の心筋リモデリングおよび予後に対する新たな治療ターゲットとなりうる可能性を示しており,次世代の診断や治療法の開発,心筋症の発症・進展予防への臨床応用に展開するための基盤となりうることが示唆された。 -
新規脂肪由来分泌因子による血管リモデリング制御機構
研究課題/研究課題番号:16K09512 2016年4月 - 2019年3月
大橋 浩二
担当区分:研究分担者
本研究では、肥満状態で低下する新規アディポサイトカイン、アディポリンの病的血管リモデリングに対する役割を検討した。アディポリン欠損マウス(APL-KO)と、野生型(WT)マウスに大腿動脈ワイヤー傷害モデルを作製したところ、傷害後の血管壁においてAPL-KOはWTと比較して新生内膜肥厚の増強と、新生内膜での平滑筋細胞増殖を認めた。また傷害血管壁におけるマクロファージ浸潤と炎症性応答もWTと比較して増加した。さらに培養細胞における検討では、アディポリンはマクロファージの炎症性応答、平滑筋細胞の増殖を、TGFβ/TGFβRII/Smad2シグナルを介して抑制することが明らかとなった。
本研究は、肥満でその発現が低下し、インスリン感受性を促進する新規のアディポサイトカインとして、我々が同定したアディポリンに着目し、自ら作製した遺伝子改変マウスを用いて、内因性アディポリンの血管病モデルにおける役割の解明を行うという非常に新規性に富み独創性が高いものである。今回の結果から、内因性のアディポリンの欠如は、肥満に伴う動脈硬化、病的血管リモデリングの増悪に繋がることが示唆され、アディポリンを標的とした研究は、心血管病の病態生理の発見や 新規の治療法の開発に発展する可能性を秘めており、社会的意義も大きい。 -
心臓線維化における老化制御因子WRNタンパクの役割
研究課題/研究課題番号:16K09496 2016年4月 - 2019年3月
暮石泰子
担当区分:研究分担者
老化制御分子WRN蛋白はテロメア制御とDNA修復を司ることにより染色体を安定的に維持するよう働くが、その欠損は老化・癌化・糖代謝異常を促進することが知られている。本研究では、WRN遺伝子変異マウスモデルを用いて、心臓老化の機序の解明を検証してきた。本研究の成果として、WRN活性抑制マウス( WRN-KD )が、上述に一致する病的心筋肥大および心臓線維化に代表される心臓拡張機能障害を呈すること、そのメカニズムとして、オートファジー異常があるという結果を得た。この結果として、心臓アポトーシスおよび酸化ストレスの亢進、線維化の亢進があったが、当初仮設していたテネイシンは無関係であった。
超高齢化社会に突入し、高齢者心不全患者数の増加とその予防は喫緊の課題である。本研究の成果は、高齢者に最も多いと言われる拡張不全型心不全の予防介入として、オートファジー活性調整が有用である可能性を示唆している。 -
心電図周波数解析と心内ローターマッピングを用いた新しい心房細動評価と治療法の開発
研究課題/研究課題番号:15K09076 2015年4月 - 2018年3月
因田 恭也
担当区分:研究分担者
体表面心電図の心房細動波からDominant Frequency (DF)が得られることが知られている。われわれはアブレーションを行った持続性心房細動患者の予後とDFとの関連を調べた。DFが高いとアブレーション後の再発が多く、DFは心房筋のリモデリングを反映していると考えられた。
また心房細動中のrotorを観察すると、左心房前壁および後壁にrotorが多く観察され、これらをablationにて焼灼すると、心房細動が停止する症例が認められた。またその後の洞調律維持も良好であった。心房細動rotorの評価は、アブレーション治療時の焼灼部位決定に有用であった。 -
自己脂肪組織由来幹細胞を用いた心血管系再生医療の総合的開発研究
2014年5月 - 2017年3月
科学研究費補助金 基盤研究(B)
担当区分:研究代表者
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血管再生障害からみた糖尿病性心筋症の基礎解析と新規治療法の開発
2008年5月 - 2011年3月
科学研究費補助金 基盤研究(A)
室原 豊明
担当区分:研究代表者
本研究ではまず血管再生障害からみた糖尿病性心筋症の基礎解析を行った。糖尿病心筋組織標本における心筋毛細血管密度低下には心筋毛細血管に局在するアミノペプチダーゼの活性亢進を介して血管新生関連分子SDF-1α濃度が低下し、その結果Akt・eNOSシグナリング活性低下による血管新生低下が生じることが明らかとなった。以上より、心筋組織におけるアミノペプチダーゼ活性制御は糖尿病性心筋障害の新たな治療方法となる可能性が示唆された。
Mismatch between cardiomyocyte growth and reduced coronary angiogenesis promotes maladaptive cardiac remodeling including diabetic cardiomyopathy. Diabetes enhances cardiac aminopeptidase activity which promotes degradation in angiogenic chemokine SDF1-α, leading to reduced coronary angiogenesis and resultant cardiac remodeling. Our data suggest that regulation of cardiac aminopepetidase activity may be essential for therapeutic strategy of maladaptive cardiac remodeling in diabetes. -
iPS細胞由来血管前駆細胞を用いた新規血管再生医療の展開研究
2008年4月 - 2013年3月
科学研究費補助金 再生医療の実現化プロジェクト
室原豊明
担当区分:研究代表者
iPS 細胞由来の血管前駆細胞を分化誘導し、これによる虚血組織の血管再生医療を開発する。
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磁場と磁気ナノ粒子を用いた細胞シート工学とその再生医療への応用開発研究
2007年
科学研究費補助金 萌芽研究,課題番号:19659201
室原 豊明
担当区分:研究代表者
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前駆細胞移植による血管再生療法の分子基盤探索と新規臨床応用に向けた展開研究
2006年5月 - 2008年3月
科学研究費補助金 基盤研究(B)
担当区分:研究代表者
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バイオペースメーカー細胞の樹立と徐脈性不整脈の細胞治療
2003年4月 - 2005年3月
科学研究費補助金
室原 豊明
担当区分:研究代表者
洞不全症候群や完全房室ブロックにおいては、恒久ペースメーカーが体内に植え込まれている。しかしながらペースメーカー本体が高価であり、電池交換を必要とするなど、医療経済的に問題点が多い。近年再生医工学・分子細胞生物学の発展に伴い、心筋・血管再生の研究がなされ成果が出ている。さらに今後は洞結節や房室結節などの自動能を持つ刺激伝導系と異なり、通常は自動能を持たない心室筋細胞も遺伝子治療により自動能を持ち、自律的に心臓を収縮させることが可能であることが報告されている。本研究では、(1)遺伝子導入による心室筋細胞からの洞結節様機能細胞の樹立、ならびに(2)自己骨髄間質細胞からの洞結節様機能細胞の樹立を試みる。本研究の目的は、心房筋や心室筋が自動能を持つようになるメカニズムに関して、遺伝子導入により引き起こされるイオンチャネル、ギャップジャンクション等の電気生理学的な変化を検討することである。さらに実験動物において、遺伝子導入による心筋の自動能発現が、徐脈性不整脈に対する治療法として有効か否かを検討することである。今回はラット新生児心筋細胞を行う。生後1日の新生児ラットより心室筋細胞をトリプシン処理にて単離する。細胞は10%ウシ胎児血清存在下のDMEMにて培養、および拡張(cell expansion)する。当初の予定では、dominant negative Kir2.1(dn-Kir2.1)センダイウイルス遺伝子ベクターを開発し、培養心筋細胞に遺伝子導入を試みる予定であったが、センダイウイルス遺伝子ベクターの安全性が定まらないこと、海外においてこのベクターの応用実績が無いこと、したがって臨床応用や産業化の目途が今のところ立たないことなどが明らかにされてきた。そこで我々は予定を変更し、アデノ随伴ウイルス(AAV)によるdn-Kir2.1遺伝子導入を試みている。dn-Kir2.1アデノ随伴ウイルスベクターは、名古屋大学環境医学研究所、李博士、タフツ大学聖エリザベス医療センターの相川助教授らとの共同研究で行っている。今年度は遺伝子ベクターの開発に予想以上に時間を要し、現在も作成段階にある。今後は作成した遺伝子導入心室筋細胞に対してパッチクランプ法を用い、洞結節型の脱分極反応を示すか否かを検討する。最終的には、これらの細胞移植により、人工ペースメーカーとしての機能を有するか否かについて検討する予定である。
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細胞移植による血管新生療法の改良型開発のための基礎研究
2002年 - 2003年
科学研究費補助金 基盤研究(B)
室原豊明
担当区分:研究代表者
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内皮前駆細胞移植を応用した虚血心筋の血管新生療法の開発
2000年5月 - 2005年3月
科学研究費補助金 特定領域研究
室原 豊明
担当区分:研究代表者
内皮前駆細胞(EPC)は、CD34を陽性に持つ血球系未分化幹細胞と起源を等しくすると考えられ、末梢血以外にも骨髄や臍帯血から培養・採取可能である。我々はこれまでに、ヒト臍帯血から内皮前駆細胞を得ることに成功し、さらにこれらの細胞を免疫抑制動物の虚血骨格筋内へ移植することにより、血管新生や側副血行路の発達が促されることを確認した。また成人においては、内皮前駆細胞は唯一の造血臓器である骨髄に由来する。我々は2000年より国内多施設共同研究として、重症閉塞性動脈硬化症・Buerger病患者に対する自己骨髄細胞移植による血管新生療法を開始しており良好な成績を得ている(TACT study)。この成果は、2003年6月に再生医学領域では日本初の高度先進医療・保険適応として厚生労働省より認定され今日に至っている。我々は内皮前駆細胞や自己骨髄単核球細胞移植による血管新生療法について引き続き検討を加えている。本年度は、2002年から研究代表者が新しく移籍した名古屋大学医学部附属病院においても、自己骨髄細胞移植による血管再生療法の臨床応用を開始した(重症末梢動脈閉塞症患者に対して)。既にこれまでに7例の治療を完了しており、効果も複数例で認められている。2003年度の11月には、自己骨髄単核救細胞移植による重症末期狭心症患者への血管再生療法のプロトコールも名古屋大学医学部倫理委員会に承認されており、2004年の後半にこの治療を開始した。基礎研究面では、移植前の内皮前駆細胞に低酸素負荷を与えると細胞機能が活性化され、移植後の血管新生効果が増強されることが確認された。また、機械的刺激によっても細胞の血管新生機能が活性化されることが明らかとなった。さらに細胞移植とAngiopoietin-1(Ang-1)遺伝子治療との併用により、より少ない骨髄細胞によっても同程度の血管新生効果が得られることが我々の基礎研究より明らかとなった。これ以外にも、降圧剤として汎用されているACE阻害剤やAngiotensin II 1型受容体拮抗剤が腫瘍の増殖や増殖性糖尿病性網膜症の増悪を軽減させたとの実験結果に着目し、これらの効果が血管新生の抑制を介していることを実験的に確認した。さらにVEGF-E/PIGFキメラ遺伝子が、VEGF-A遺伝子と同程度に虚血部位の血流を改善させることが判明した。今後これらのキメラ遺伝子と骨髄細胞の併用療法を考察していく。
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末梢血幹細胞移植を応用した新しい虚血部血管新生療法の開発
2000年5月 - 2002年3月
科学研究費補助金 基盤研究(B)
室原豊明
担当区分:研究代表者
近年、内皮前駆細胞が成人においても存在することが確認され、さらにこれらの細胞は成人における血管新生に参加することが示された。我々はこれらの細胞を虚血組織に移植することで、血管新生が有意に増強されることを報告した。実際にこの治療を臨床に応用する場合、自己の内皮前駆細胞を使用することが理想的であるが、細胞の採取(骨髄)には侵襲を伴い問題が残る。内皮前駆細胞と血球系幹細胞は起源を一つにすることから、本研究では血球系幹細胞を動員するコロニー刺激因子(rhG-CSF)が内皮前駆細胞の動員を介して血管新生を増強できないか否かを、動物実験において検討した。
1)rhG-CSF(5μg/kg BW/d)背部皮下投与後、ラット末梢血白血球数は有意に増加させ、中止後は再び正常値に復帰した。従って、ラットにおいてfunctionalであった。末梢血単核球培養法において、細胞クラスター(コロニー)は十分に形成されたが、内皮前駆細胞様-細胞の発芽はむしろ抑制された。
2)ラット背部皮下にrhG-CSF(5μg/kg BW/d)を7日間連続投与した群(rhG-CSF群)においては、血管新生の程度にコントロール群と有意な差は出なかった。
rhG-CSFによる末梢血への幹細胞動員においては、共通の幹細胞から顆粒球系への分化が主に進み、内皮前駆細胞の分化や動員はむしろ抑制されるのではないかと思われた。rhG-CSFにより末梢血への内皮前駆細胞の動員が刺激されなくとも、虚血下肢における血管新生には影響が無かったことより、少なくともこのモデルに関しては流血中の内皮前駆細胞の血管新生における関与は比較的少ないのではないか。
我々はさらに、細胞移植前の細胞虚血負荷が血管新生増強効果を有するか否かについて検討を加えた。この結果、内皮前駆細胞を移植前に虚血環境で培養したものは、しなかった細胞に比べて、血管新生効果が有意に大であった。 -
コロニー刺激因子を用いた新しい虚血部血管新生療法の開発-内皮前駆細胞動員療法-
2000年5月 - 2001年3月
科学研究費補助金 特定領域研究
担当区分:研究代表者
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血管新生と血管保護療法の開発に関する研究
2000年 - 2004年
科学研究費補助金 厚生労働省厚生労働科学研究費補助金(ヒトゲノム・再生医療等研究事業)
担当区分:研究分担者
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ヒト臍帯血からの内皮前駆細胞単離および分化誘導と血管新生療法への応用
1999年5月 - 2001年3月
科学研究費補助金 基盤研究(B)
室原豊明
担当区分:研究代表者
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自己骨髄単核細胞移植による心筋梗塞後血管新生療法の実験的試み
1999年5月 - 2000年3月
科学研究費補助金 特定領域研究
担当区分:研究代表者
従来成人における血管新生は、既存の内皮細胞の増殖と遊走にするもののみであると考えられてきたが、我々は最近成人末梢血中の単核球分画に血管内皮細胞に分化しうる内皮前駆細胞が存在することを報告した。内皮前駆細胞はCD34陽性細胞由来と考えられ、培養過程で血管内皮細胞の形質を獲得した。また内皮前駆細胞を標識しヒト内皮細胞と共培養すると、マトリゲル上で管腔形成に組み込まれることが示された。さらに、動物に経静脈的に投与すると、虚血下肢の血管新生に組み込まれることが明らかとなった。以上より成人における血管新生には、既存の毛細血管内皮細胞の増殖と遊走のみではなく、流血中の内皮前駆細胞の分化という血管形成型の血管新生も関与する可能性があることが示された。
成人における内皮前駆細胞は骨髄由来であると考えられる。今回我々は、動物実験系(ウサギ片側下肢虚血モデル)において、蛍光色素ラベルした自己骨髄単核球細胞を直接虚血骨格筋内に植え込むことによって虚血部位における血管新生に自己内皮前駆細胞が組み込まれことを確認した。また、骨髄単核球を自己移植投与することによって、虚血骨格筋内における血管新生や血流が改善されることを確認した。方法として、下腿血圧左右比、血管造影による血管スコアの算定、虚血組織標本における免疫染色による内皮細胞の同定と毛細血管密度の算定、レーザードップラー法による皮下血流の計測を用いた。以上より、自己骨髄細胞の移植はによって、虚血骨格筋内の血管新生を有意に増強させうることが示された。 -
高脂血症における組織虚血後の血管新生に関する研究
1998年5月 - 1999年3月
科学研究費補助金 科学研究費補助金 奨励研究 A
担当区分:研究代表者
血管新生並びに側副血行路の形成は、虚血組織の血液灌流を維持するために重要な生理反応の一つである。我々はこれまでに、内皮由来一酸化窒素(NO)が欠損した状態では、虚血組織の血管新生が著しく抑制されていることを報告してきた。内皮由来NOが血管新生に重要な役割を果たしているという事実を考慮すれば、高脂血症患者ないしは高脂血症モデル動物においては、血管内皮機能が低下し、内皮由来NOの産生が減弱し、その結果組織虚血に引き続く血管新生反応が障害されている可能性が考えられる。我々は高脂血症モデルラットを作成し、片側下肢虚血モデルにおいての血管新生について、in vivoで検討を加えた。その結果、(a)虚血下肢における血管新生は、正常ラットに比べ高脂血症ラットにおいて障害されていた。評価方法として、レーザードップラー法による下肢血流測定、血管造影検査による血管スコアーの算出、摘出虚血組織における内皮細胞の免疫染色による同定および毛細血管密度の算定を用いた。(b)高脂血症ラットにおいては、実際に虚血組織中並びに血中のNOxの量が低下していた。また組織中のcGMP量も減弱していた。反面組織中の内因性NO不活性化物質ADMA量の増加がみられた。(c)内因性NOの前駆体であるL-arginineの経口投与によって、高脂血症ラットの障害された血管新生が改善された。(d)血管新生を惹起する内因性の成長因子、特にVEGFの発現の程度は、高脂血症ラットとコントロールラットでは差がなかった。以上より、高脂血症において、血管新生が減弱していること、並びに内因性のNOの減弱が関与していることが明らかにされた。