科研費 - 南 雅代
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研究課題/研究課題番号:25282072 2013年4月 - 2016年3月
科学研究費助成事業 基盤研究(B)
宮田 佳樹, 吉田 邦夫, 中村 俊夫, 南 雅代, 堀内 晶子, 久保 謙哉, 北野 博司, 上條 信彦, 遠部 慎, 村本 周三, リチャード エバーシェッド
担当区分:研究分担者
①土器付着炭化物の炭素年代測定や安定同位体分析による食性解析法,②土器残存有機物組成や分解生成物を同定するバイオマーカー分析,③土器から抽出した炭素数16,18の直鎖状飽和脂肪酸の炭素同位体比を現生生物と直接比較することにより,起源物質を推定する手法,これら三つの手法(①,②,③)を法補的に組み合わせることにより,土器付着炭化物と土器胎土吸着物を用いて,土器で調理された食材を復元することができた。つまり,新しい縄文土器を用いた古食性研究手法を確立した。
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研究課題/研究課題番号:25101501 2013年4月 - 2015年3月
科学研究費助成事業 新学術領域研究(研究領域提案型)
南 雅代
担当区分:研究代表者
配分額:5200000円 ( 直接経費:4000000円 、 間接経費:1200000円 )
昨年度の研究により,イラン・アルセンジャンTang-e Sikan洞窟遺跡から出土した骨中には有機成分がほとんど残存していないことが明らかとなり,アミノ酸ラセミ化を用いた年代測定は困難であると考えられた。そこで 今年度は,以下の3点について研究を推進していき,他の手法によって遺跡のシークエンスに正確な年代を付与することを目指した。
(1) ABOx-SC法による炭化物の高確度な14C年代測定法の確立: 昨年度に立ち上げたABOx-SC法(Radiocarbon誌に投稿し,現在査読中)をTang-e Sikan洞窟遺構の各層から得られた炭化物に適用して14C年代決定を行い,ABA法による年代値と比較を行いつつ,各層に正確な14C年代を付与した。石器の型式から推定されている年代,イラン南部地域の遺跡に関して報告されている他の年代と比較しながら,この地域の編年の再構築を行った,結果を論文にまとめ,まもなく国際誌に投稿予定である。
(2) イラク・クルディスタンQalat Said Ahmadan (QSA)遺跡の編年構築: QSA遺跡から採取した炭化物の高確度14C年代測定を行った。その結果,PPN層は7570-7385 cal BP,proto Hassuna―Hassuna層は6230-6010 cal BP,Samarra層は6065-5930 cal BPという年代を示すことが明らかになった。得られた結果をラフィダーン誌に報告した。
(3) 骨試料の炭酸ヒドロキシアパタイトによる14C年代測定:骨試料の無機成分である炭酸ヒドロキシアパタイトを用いた年代測定法の検討を開始した。年代既知の骨を用いた検証の結果,高温で焼かれた骨は,炭酸ヒドロキシアパタイトによる14C年代測定法が有効であることがわかったが,Tang-e Sikan洞窟遺跡から出土した骨に対する有効性は確認できず, 14C年代測定を行うまでには至らなかった。
26年度が最終年度であるため、記入しない。
26年度が最終年度であるため、記入しない。 -
有機態金属元素の同位体に着目した新しい環境変動解析手法の開発
研究課題/研究課題番号:23510005 2011年 - 2013年
科学研究費助成事業 基盤研究(C)
淺原 良浩, 谷水 雅治, 南 雅代
担当区分:連携研究者
生物生産の高い北部北西太平洋では陸から供給される鉄が大きな役割を果たしている。本研究では、鉄の安定同位体をトレーサとして利用し、西部北太平洋亜寒帯域の鉄の供給源とその輸送過程の解明を目指した。その結果、アムール川から流入した溶存態鉄がアムール川河口域で粒子態鉄となり沈殿していること、この粒子態鉄がオホーツク海中層水に流入し、中層水の粒子態鉄はサハリン東岸を南下しながら西部北太平洋まで輸送されていること、が明らかとなった。
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アミノ酸ラセミ化年代法は5万年より古い骨の年代決定に有効か?
研究課題/研究課題番号:23650569 2011年 - 2012年
科学研究費助成事業 挑戦的萌芽研究
南 雅代, 三村 耕一, 常木 晃, 坂田 健, 加藤 ともみ, 冨山 慎二
担当区分:研究代表者
配分額:3770000円 ( 直接経費:2900000円 、 間接経費:870000円 )
限外ろ過法を用いた骨試料調製法の確立,微少炭素量による放射性炭素(14C)年代測定の実現,部位の異なる骨の化学組成解析等,本研究の基礎を固める成果を得た.
5万年より古い年代をもつイラン・アルセンジャン洞窟遺跡の骨試料に対し,14C年代およびアミノ酸ラセミ化年代決定を試みたが,有機質がほとんど残存しておらず,測定まで至らなかった.この結果から,古い骨へのアミノ酸ラセミ化年代法の適用は厳しいと言わざるを得ない. -
全国地質Sr同位体比マッピング-古代における”もの”の移動の解明に向けて-
研究課題/研究課題番号:22300308 2010年4月 - 2015年3月
日本学術振興会 科学研究費助成事業 基盤研究(B)
南 雅代, 太田 充恒, 淺原 良浩, 宮田 佳樹, 山本 鋼志, 城森 由佳
担当区分:研究代表者 資金種別:競争的資金
配分額:15600000円 ( 直接経費:12000000円 、 間接経費:3600000円 )
遺跡から出土した人の硬組織のストロンチウム(Sr)同位体比や土器等の考古遺物のSr同位体比を用いて古代における”もの”の移動解明を行う際に必要不可欠な全国地質Sr同位体比マップを作成するための基礎研究を行った。まず、1)地質Sr同位体比マッピングに用いる試料として,粒径<180μmの河川堆積物が適していること,2)河川堆積物のバルクSrのSr同位体比は流域の母岩・土壌のSr同位体比を,交換性のSr同位体比は流域の水・動植物のSr同位体比を反映すること,を明らかにした上で,3)日本全国の河川堆積物1084試料のSr同位体比を測定し,基礎データベースとなる全国地質Sr同位体比マップを完成した。
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同位体希釈中性子放射化分析による珪長質岩中の白金族元素の高確度定量と岩体形成機構
研究課題/研究課題番号:22340165 2010年4月 - 2014年3月
科学研究費助成事業 基盤研究(B)
田中 剛, 南 雅代, 鈴木 和博, 足立 守
担当区分:連携研究者
イリジウム,オスミウムやルテニウムなどの白金族元素は花崗岩など珪長質岩石中での存在度が極めて低く(標準岩石試料でも正確には求められていないが、数十pptと見なされている) 測定がなされていない。本研究では、100g以上の大量の岩石から白金族元素を抽出できるファイヤーアッセー法、抽出率が悪くてもそれを補正できる同位体希釈法、白金族元素の感度が良い中性子放射化分析法を組み合わせた分析法を開発し、岩石の分析を行った。
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樹木年輪の14C年代測定の実験室間比較による高精度の暦年代較正データの確立
研究課題/研究課題番号:22240082 2010年4月 - 2014年3月
科学研究費助成事業 基盤研究(A)
中村 俊夫, 増田 公明, 南 雅代, 松崎 浩之, 奥野 充, 堀内 一穂, 小田 寛貴, 田中 孝幸, 乙坂 重嘉, 西本 寛, 箱崎 真隆, 國分 陽子, 宮田 佳樹
担当区分:研究分担者
日本産試料について得られた14C年代を暦年較正データIntCalを用いて較正すると,予想される年代よりも古くなる傾向にある.IntCalが日本産試料に適用できるか否か,さらに日本産試料の14C年代と暦年代との関係を示すデータを増やすために,現代から2000年前に遡る年輪について,高精度の14C年代測定を行った.その結果,日本の樹木年輪の14C年代は,IntCalの対応する14C年代よりも古くSHCal(南半球の試料に適用可能とされる暦年代較正データセット)のそれよりは新しい.日本産樹木年輪の14C年代はIntCalに比べておおよそ20~30年古く得られた.日本独自の較正データが不可欠である.
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朝鮮半島、京畿地塊を構成する原生代基盤とペルムー三畳紀衝上体の地質学
研究課題/研究課題番号:21540471 2009年 - 2011年
科学研究費助成事業 基盤研究(C)
鈴木 和博, 南 雅代, 加藤 丈典
担当区分:研究分担者
朝鮮半島中部の京畿地塊基盤岩は約18. 6億年前のグラニュライト相ユニットとペルム.三畳紀の角閃岩相ユニットから構成される。境界には大規模なマイロナイトが発達し、マイロナイト自体が2. 47-2. 40億年に変成している。角閃岩相ユニットは蘇魯造山時に揚子江地塊から離れて中朝地塊のグラニュライト相ユニットに衝上した高温異地性岩体であり,その熱でマイロナイトや近傍のグラニュライト相ユニットが接触変成した。
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放射性炭素を用いたコンクリート劣化の定量的解析手法の構築に向けて
研究課題/研究課題番号:21654070 2009年 - 2010年
科学研究費助成事業 挑戦的萌芽研究
南 雅代, 吉田 英一, 淺原 良浩
担当区分:研究代表者
配分額:3100000円 ( 直接経費:3100000円 )
本年度は、昨年度得られた昭和42年建造の実構造物コンクリートの^<14>C深度プロファイルの解釈、コア深部の^<14>C起源解明に重点を置いた。具体的には、1)新鮮なコンクリートと、その原料であるセメント・混和剤の^<14>Cならびに炭素・酸素同位体比の測定、2)コンクリート中性化領域の薄片観察・元素マッピング、を行った。
1. 新鮮なコンクリート、セメント、混和剤の^<14>C濃度、炭素含有量、炭素・酸素同位体比の結果から、新鮮なコンクリートの炭酸塩中の^<14>Cは、原材料のセメントの炭素(dead^<14>C)とコンクリートを製造する際に混入した大気炭素(modern^<14>C)が約1:1で混合したものであることがわかった。このことから、実構造物コンクリート深部の^<14>C値は、コンクリート製造時の初生値であると考えられ、コンクリート表層1cm部分の中性化は2~4年という非常に短時間で進行していたことが明らかとなった。中性化微少領域の^<14>C測定に向けての、微少炭素量による14C測定法の開発も行なった。
2. 実構造物コンクリートコアに対して、劣化断面に垂直に薄片を作成し、中性化に伴う組織劣化の際、どのような結晶構造変化並びに物質移動を起こしているかをEPMAによって詳細に観察した。コンクリートコアの切断にはレーザーを用い、薄片作成時の炭酸化を極力防いだ。その結果、中性化による組織劣化、物質移動の様相が鮮明に得られ、中性化が進行しているコア表面部、および骨材の周辺部においては二次鉱物が成長し、Caの他、Na、K等の元素が濃集していることが明らかになった。
以上のことから、コンクリート中の^<14>C濃度および炭素・酸素同位体比は、建造物の中性化進行プロセスを空間的かっ時間的に解析できる有効な手段であることが明らかになり、今後、コンクリート建造物の中性化速度の定量的評価に広く応用可能と考えられる。 -
ウイグルマッチング法による木製文化財の高精度年代推定のための必要条件の検討
研究課題/研究課題番号:19300300 2007年 - 2009年
科学研究費助成事業 基盤研究(B)
中村 俊夫, 山本 直人, 奥野 充, 増田 公明, 木村 勝彦, 南 雅代, 小田 寛貴
担当区分:研究分担者
ウイグルマッチングによる木材の伐採年代等の推定では,木材の年輪をできるだけ多く14C年代測定する方が良い.しかし,誤差の大小は,マッチングを行う暦年代区間に大きく依存する.マッチング相手となるIntCal04較正データが平坦な区間では正確なマッチングは困難である.逆N型の凸凹を示す区間では,マッチングの可能性が2区間に分割される.較正データが単調かつ急激な変化を示す区間では,たった2つの14C年代でもマッチングの誤差は小さい.
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人骨のストロンチウム同位体比に関する基礎的研究とその考古学的応用
研究課題/研究課題番号:19300301 2007年 - 2009年
日本学術振興会 科学研究費助成事業 基盤研究(B)
南 雅代, 淺原 良浩, 山本 鋼志
担当区分:研究代表者 資金種別:競争的資金
配分額:17680000円 ( 直接経費:13600000円 、 間接経費:4080000円 )
・骨中のストロンチウム(Sr)同位体比が、生育地の地質のSr同位体比を反映することを、現生動物・魚と地質のSr分析から確認した。
・鎌倉由比ケ浜遺跡から出土した人骨・歯、獣骨のSr分析を行なった。骨中のSrは続成Srに置換されていたが、歯エナメル質は食物Srを保持しており、人の生育地(地質)の推定に使えることを示した。
・骨Srの考古学研究に必要な地質Sr同位体比マップの作成にとりかかった。
・微少量の骨試料による高確度^<14>C年代測定のための検討を行った。 -
ピルバラクラトンに産出する多様な大型微化石群の起源と生命初期進化における意義
研究課題/研究課題番号:19340150 2007年 - 2009年
科学研究費助成事業 基盤研究(B)
杉谷 健一郎, 三村 耕一, 山本 鋼志, 南 雅代
担当区分:研究分担者
オーストラリア・ピルバラクラトン・ファレル珪岩層に産出する太古代(約30億年)大型微化石群について、画像データの大量収集、微化石抽出、画像解析ソフトによる3次元像復元、生活環復元と系統分類、母岩の希土類元素パターン解析、Nano-SIMSによる微少領域分析を行い、その生物起源性を確実なものとした。太古代浅海域における生物多様性が従来考えられていたよりも遥かに豊かで、酸素発生型光合成生物や真核生物の出現が中期太古代にまで溯る可能性を示唆した。
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日本列島とアジア大陸東縁造山帯で測定したCHIME年代の再検討
研究課題/研究課題番号:19340149 2007年 - 2008年
科学研究費助成事業 基盤研究(B)
鈴木 和博, 南 雅代, 加藤 丈展
担当区分:研究分担者
・電子プローブマイクロアナライザを高性能・高機能化して分析値の精度と確度を高めた.
・トリウムやウランを含む鉱物のコンコーダントな分析値を選別する化学的基準を確立して、CHIME年代の確度を高くした.
・氷上花簡岩、領家帯ミグマタイト、肥後変成岩、韓国京畿地塊の準片麻岩、中国南東部の花商岩類、中国吉林省の東清花簡岩のCHIME年代を再検討して、地質学的推定年代や同位体年代との矛盾を解明した.矛盾の原因は肥後変成岩と東清花商岩では同位体年代、氷上花商岩と京畿地塊では地質学的解釈、領家帯ミグマタイトと中国南東部花商岩ではCHIME年代にあった. -
研究課題/研究課題番号:19900108 2007年
科学研究費助成事業
酒井 英男, 高橋 浩二, 中村 俊夫, 小田 寛貴, 南 雅代, 奥野 充
担当区分:研究分担者
中世の国家・社会を対象として,磁気物性,14C年代推定法,遺跡探査による研究を行った.
(1)考古地磁気年代の研究を北陸と北海道地域の遺構で実施した.年代推定の基準となる地磁気変動は西南日本で主に研究されている.そのため,基準点の京都と緯度がかなり違う北海道では適用可能かの検討が必要であった.焼土遺構の研究から,西南日本版の地磁気変動の補正により年代推定が可能と示された.また,ロシア・ウラジオストック周辺の遺構でも,予察的な研究から緯度が似た北海道における考古地磁気変動を利用して良好な年代値が得られた.
石川県能登町の珠洲焼窯では,焼土から得た地磁気年代は誤差が少なく陶磁器形式年代とも良く合った.同時に行った14C年代研究でも矛盾は無かった.また同地域で,未発掘の窯跡の調査にレーダ探査法を適用した結果,新たな窯跡が明確に示され,その後のトレンチ調査で確認できた.以上の成果は,同遺跡群の国指定遺跡への申請資料として活用された.
(2)戦禍が推測された沖縄県具志川城遺跡では,石垣の石灰岩の磁化から300度を超える被熱の証拠が見つかった.考古地磁気から事件は16世紀に起きたと示され,古文書に記載の戦禍が証明された.
(3)14C年代推定では,北海道の擦文期終焉の年代(12世紀後半から13世紀初頭),白頭山起源の火山噴出物B-Tmの噴出年代(AD936年付近),バーミアン遺跡壁画の世界初の14C年代(作成は5,6世紀から9世紀中頃まで),鎌倉での戦禍を人骨の14C年代から探る研究(鎌倉終焉期の年代)等,注目される成果が得られた.また,古代鉄や火葬骨の年代推定でも成果が得られた. -
古代交易ネットワーク解明を目指した骨中Sr同位体分析法の開発
2006年4月 - 2008年3月
科学研究費補助金 研究拠点形成費補助金(21世紀COE「同位体が拓く未来」)若手研究者研究
南 雅代
担当区分:研究代表者
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古代交易ネットワーク解明を目指した骨中Sr同位体分析法の開発
2006年4月 - 2008年3月
科学研究費補助金 研究拠点形成費補助金(21世紀COE「同位体が拓く未来」)若手研究者研究
南 雅代
担当区分:研究代表者 資金種別:競争的資金
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研究課題/研究課題番号:16652057 2004年 - 2005年
科学研究費助成事業 萌芽研究
中村 俊夫, 南 雅代, 竹島 一仁
担当区分:研究分担者
ミカンの皮にカビ発生させ、ミカンの皮とカビにおける炭素同位体組成の変化を調べる研究を行った.ミカンから繊維状のカビを採取した.また同様にミカンの皮を採取して比較に用いた.12mgから25mgのカビを線状酸化銅の助燃剤と共にバイコール管に入れて真空封管しこれを900℃に加熱してカビを燃焼して二酸化炭素に変えた.二酸化炭素は4-9mgが回収され、今回回収したカビには、重量比で35%程度の炭素が含まれていることが明らかとなった.一方、ミカンの皮については、40%の炭素収率が得られた.次にカビおよびミカンの皮から回収した二酸化炭素をグラファイトに変え、タンデトロン加速器質量分析計を用いて、炭素同位体(12C,13C,14C)の測定を行った.13C/12C比についてみると、カビはミカンの皮より大きな13C/12C比を示した.この結果から、カビの発生・成長における炭素取り込みに炭素同位体分別の影響が考えられる.また、14C濃度は、カビとミカンの皮とで誤差範囲内で一致した.以上のことから、カビが発生し成長するための炭素はミカンの炭素が使われたと考えられる.また、お茶に生えたカビについても、同様な実験を行い、カビとお茶の葉の炭素同位体組成はよく一致した.この結果は、上記の結論を支持する.
今回の研究から、カビとカビが生える基質の14C濃度が誤差範囲内で一致するが示された.このことから、文化財資料に発生するカビは、その資料自身に含まれる炭素を吸収して発生・成長することが示唆される.従って、カビの炭素は、基質の炭素と同じ14C年代を示すはずである.14C年代測定では、文化財資料に生えたカビは、もちろん取り除いた方がよいが、完全に取り除くことをそれほど厳密に行う必要はないことが示された. -
中世都市遺跡の電磁気調査と^<14>C年代法による編年の研究
研究課題/研究課題番号:15068206 2003年 - 2007年
科学研究費助成事業 特定領域研究
酒井 英男, 高橋 浩二, 清水 正明, 中村 俊夫, 南 雅代, 小田 寛貴, 吉原 新
担当区分:研究分担者
本計画班では,遺跡探査,磁気物性と14C年代法の研究を行っている.特定領域研究において年代は基本課題である.考古地磁気研究として研究が進んでいない北海道で,対雁遺跡,厚真町モイ遺跡,斜里町ウトロ遺跡等で年代推定を行った.また珠洲市粟津小学校遺跡竈跡,能都町珠洲焼き窯,滋賀県瀬田廃寺遺跡等での調査を行った.更に臼杵先生班と共同でロシア・ウラジオストック近郊の東夏代(または金代)と推測される城郭遺跡の調査を開始し,本年度は暖炉跡焼土の研究を進めている.また地震液状化に伴う噴砂の磁化から遺跡に及んだ地震災害の年代と変形を検討できることを示し,高岡市石塚遺跡等で成果を得た.青森県十三湊遺跡では調査例の少ない青森県地磁気年代推定に成功し,また砂浜に由来する飛砂堆積物で埋まった前浜遺跡の環境変動を探る新たな調査法を試みて成果を得た.
14C年代測定法では広範囲の資料での研究を実施し,編年研究では以下の考古資料について成果を得た.愛知県陶磁資料館敷地内南山8号窯,石川県飯川谷製鉄遺跡・能登町行延窯跡遺跡,河ヶ谷窯跡遺跡,滋賀県瀬田廃寺,中国・韓国の建築部材,北海道の擦文時代資料,奥州平泉藤原3代関連資料,十三湊関連資料,草戸千軒資料,大津市石山寺の蔵王権現塑像,飯田市美術博物館蔵の聖徳太子絵伝,三重県甲賀市信楽町黄瀬ハンシ窯跡など.
その他の成果として,(1)湖沼堆積物による環境変遷史:宇治市巨椋池埋め立て地試料の年代研究,(2)鎌倉由比ヶ浜南遺跡出土の刀傷のある人骨による鎌倉幕府滅亡時の年代調査,(3)擦文時代からアイヌ文化への移行期における生育期間の短い植物資料の研究から擦文時代終焉期を11〜13世紀初頭であると示した,(4)十三湊遺跡福島城跡の城門・柵の杭列木柱:古代か中世か議論されていたが,14C年代は14世紀初め〜15世紀初めと得られ,中世の可能性が極めて高いと結論できた. -
ランタン-セリウム,サマリウム-ネオジム放射壊変系による先太陽系絶対年代の研究
研究課題/研究課題番号:13853001 2001年 - 2005年
科学研究費助成事業 基盤研究(S)
田中 剛, 山本 鋼志, 南 雅代, 三村 耕一, 淺原 良浩, 谷水 雅治
担当区分:研究分担者
1)Allende隕石から、Ce存在度異常を持つCAI6試料の発見抽出
Allende隕石のCAI90試料を分析。3グループに分類され、太陽組成から未分別の試料、超難揮発性元素が欠損する試料、アルカリ元素による2次変質を被った試料である。内6試料に負のCe異常を見いだした。
2)表面電離型質量分析計による微量Ce-Nd-Sr放射壊変起源同位体比精密測定技術の向上
Ce同位体比の測定を,従来より一桁少ない量で測定する技術を開発。JMC304に対する^<138>Ce/^<142>Ceおよび^<136>Ce/^<142>Ceの繰り返し測定結果は、それぞれ0.0225889±0.0000013および0.0168810±0.0000030。
3)単一鉱物粒子内のRb/Sr変動を使ったアイソクロン年代測定技術の開発と適用
岩石中の単一鉱物粒子のみを用いて年代を求める"単一鉱物内アイソクロン法"を確立。岐阜県の岩脈試料を分析し、カリ長石は、岩脈の貫入年代末期、緑泥石は熱水変質作用による緑泥石形成年代を示す事を発見。
4)^<138>La-^<138>Ce,^<147>Sm-^<143>Nd,^<87>Rb-^<87>Sr同位体系の宇宙化学・地球化学への応用展開
南アフリカの約32億年前の岩石中のREEパターンとCeおよびNd同位体比を精密に測定。負のCe異常を示すチャートや頁岩のREEパターンは、岩石形成時期よりはるかに若い約11億年昔の変質に因る事を発見。
5)ダブルスパイクを用いたサマリウム安定同位体比測定技術の開発とその天然物への応用
^<150>Sm-^<154>Smダブルスパイク(DS)システムを用いて安定同位体質量分別の高精度分析を達成した。3種類のサンプル-スパイク混合物よりSm同位体比を求めた。測定の外部精度0.03‰/a.m.u.(1SD)を得た。 -
研究課題/研究課題番号:12490016 2000年 - 2001年
科学研究費助成事業 基盤研究(B)
田中 剛, 平原 靖大, 山本 鋼志, 足立 守, 浅原 良浩, 南 雅代
担当区分:研究分担者
本研究では川床堆積物(stream sediments)を試料とした。これは小さな沢ごとにその出口で川砂を集め、それがその集水域の地表の化学組成を表すと考えるわけである。現場で180μm(80メッシュ)の篩を通し、細かい粒子だけを集める。川床堆積物の代表性は、チタンなど重鉱物の存在度に依存する元素のばらつきがもっとも大きく50%程にもなるが、地域による変化よりはるかに小さい。
分析は、大学共同利用研究で日本原子力研究所JRR4気送管を使った中性子放射化分析により、As, Se, Br, Sb, Sc, Co, La, Ce, Sm, Eu, Tb, Yb, Lu, Re, Os, Ir, Au, Th, Uを、蛍光X線分析により、Si, Ti, Al, Fe, Mg, Ca, Mn, Na, K, Pを定量した。中性子放射化分析は100mgの試料をポリエチレン封入/気送管5分照射の条件下で中4日の冷却後、名古屋大学RIセンターへの郵送した。測定は、サンプルチェンジャーを装着したγ線計測解析システムを用いた。測定は順調で、3月4日までに実試料106カプセルの照謝/浸淀を終えた。蛍光X線分析は約950試料の測定を終えた。共同研究者によって開発された図化/解析プログラムを用いた解析をすすめた。
1、自然界のバックグラウンドとしての地質との関連:花崗岩の露出する地域にAl, Ca, Na, Srが多く、堆積岩(第三紀)の分布する地域にFe, Co, Cr, Ni, Vが多いこと、TiとCeの存在度力高い相関を示すが、Spheneの存在によると思われる。
2、鉱物と元素存在度の関係:基盤岩および河川堆積物中の主要構成鉱物中の微量元素を比較した。その結果、黒雲母は相対的にMg, Fe, Mn, Ti, Co, VおよびZnに富み、基盤地質による河川堆積物中の元素組成の違いは黒雲母/長石比の寄与が大きいことがわかった。
3、金の鉱化作用に関係した元素:金の鉱化作用に関係した元素の挙動を調べるため、津具鉱山周辺地域を検討した結果、金、ヒ素、アンチモン、亜鉛、セシウムが金の異常値を囲むようにハローを形成していることがわかった。金の産出は報告されていないが、とくに大峠に異常が際立っている。