科研費 - 飛田 潤
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戦略的強震観測及び地震被害分析に基づく中低層建物の地震時挙動及び耐震性能の解明
研究課題/研究課題番号:15360295 2003年4月 - 2004年3月
科学研究費補助金 基盤研究(B)
福和伸夫、飛田潤、中野優、飯場正紀、護雅史、宮腰淳一
担当区分:研究分担者 資金種別:競争的資金
配分額:15100000円
中低層建物の地震時挙動や耐震性能については、解析的に明確にできていない要素の影響が大きい。たとえば構造物と地盤の動的相互作用、二次部材の影響、建物の立体振動特性、隣接建物間の相互作用、減衰性能、さらに大変形時の弾塑性挙動などである。これらを明確にするためには実建物の観測事例の蓄積が重要であるが、ごく一般的な中低層建物の観測記録は質量ともに不十分である。本研究では建物強震観測の現状の課題を克服する方法を具体的に提案・実現すると共に、強震観測データの分析から構造物-地盤系の地震時挙動や建物の耐震性能評価に関する新たな知見を構築することを意図している。
本研究の主な成果は以下である。
1.少数の建物を対象に建設期間中も含めて系統的に振動実測を行う戦略的強震観測・常時微動計測プログラムを計画、実施することにより、中低層建物の実測記録を質・量ともに充実させる方策を示している。名古屋大学が実施してきた従来の地震観測・常時微動計測の体制と分析結果もこの流れで整理しなおし、有効なデータセットとしてまとめた。
2.観測記録の分析から、中低層建物の振動性状に及ぼす慣性の相互作用、入力の相互作用、隣接建物間相互作用、2次部材の剛性を分離して抽出することに成功し,これらの要素が振動性状に及ぼす影響を明確している。これにともない、建設中の建物における強震観測手法及び機器の開発なども行っている。
3.多数の強震観測・常時微動計測結果を建物・地盤情報などとともに整理してデータベース化し、ウェブインターフェイスにより公開する手法を検討した。これは貴重な観測記録の共有化と公開を促し、データ不足を補うために活用しうる。
4.建物の多点同時観測体制に基づく立体振動特性のリアルタイム可視化表示や、インターネット接続による多地点のリアルタイム振動監視システムなどの技術開発に基づいて、地震工学だけでなく防災情報システムとしての利用を検討した。 -
教育機関の防災・理科教育の活性化と防災拠点化のための戦略と素材の構築
研究課題/研究課題番号:14658127 2002年4月 - 2004年3月
科学研究費補助金 萌芽研究
福和伸夫、飛田潤、鈴木康弘、山岡耕春、新井伸夫、中野優、矢代晴実
担当区分:研究分担者 資金種別:競争的資金
配分額:2800000円
初等・中等・高等教育ならびに社会人教育について多数の実践を行い、その結果から新たな教材の開発、これまでの教材の改良と利用方法の工夫、さらに教育関係者との意見交換や、地域と一体となった教育方法の模索などを行った。特に理科・災害・環境教育に関する展開が得られている。具体的な成果を以下に示す。
1.昨年度に引き続き、地震・耐震・防災等に関連する教育教材の開発・試作・改良を行った。「電動振動台」、「台車を利用した振動台」「建物振動模型」、「プレート衝突地震発生実験装置」など。これらを用い、視覚・体感効果も考慮した教育・啓発用教材セットとしてまとめた。
2.愛知県教育委員会と連携して、小学校8校における親子参加型防災訓練の企画と実施を行った。開発した各種教材の活用法、小学生・教員・地域住民・専門家が一体となった総合教育の方法論と実践について新たな知見を蓄積した。来年度以降も引き続き40数校での実施が予定されており、更なる展開が見込まれる。このほかに、のべ100回を超える一般向け講演会や、建設等技術者向けのセミナーなどで教材を活用し、その教育・啓発効果を検討している。
3.昨年までに開発した理科・環境・防災教材「現代版百葉箱」を発展させ、建物規模での揺れ、エネルギー消費、映像等をリアルタイムでモニタできるシステムを開発した。これは一般社会人向けの防災・環境教育に利用されると同時に、前年度に開発したネットワークを用いた地域防災拠点システムの一部としての機能を担う。
4.開発した教材と組み合わせて使うための映像教材と簡単なテキストを作成した。これを用いることにより、最低限の予備知識で教材を活用することが期待できる。 -
地震被害予測に基づく受療行動シミュレーションと医療施設配置の評価
研究課題/研究課題番号:14655216 2002年4月 - 2003年3月
科学研究費補助金 萌芽研究
山下哲郎、小林健一、宇田淳、飛田潤
担当区分:研究分担者 資金種別:競争的資金
配分額:3000000円
本研究は、地震の発生確率とその被害予測を基に、実際の医療施設の配置状況と、震災時を想定した被災者の受療行動から、その地域における地域医療計画の実態を震災時の場面を想定して評価しようとするものである。具体的には、近々東南海地震の発生が予想されている名古屋市域を対象にして、分野を超えた協働、すなわちそれぞれの持つシステムがどのように互換的に働くのか、またそこでの問題点を克服した上で、各システム及び結果の適用の範囲と限界を明らかにすること、そして実際の地域医療計画とその実態の抱える震災時の課題を包括的に明らかにすることを目的としている。研究は、以下の手順で行う予定のものであった。
1)被災者が徒歩圏の医療施設を利用する、という想定を基にしたシミュレーション(山下・宇田・小林):神戸における実際の患者の受療行動を調べるために、それぞれの病院から、地震発生後1週間の外来患者数、更に平常時の1日平均外来患者数を収録した。ボロノイ分割内におけるハフモデルでの予測でも、震災時の患者数予測は概ね問題ないことが確認されたが、被害の程度などを加味した、更に適合性の良いモデルを開発する必要があることも確認された。
2)既に情報化されている対象地域の医療施設配置とその諸属性(病床数など)に上記の情報を加え、平常時と震災時(被災状況は均等と仮定)の患者の受療行動をシミュレートするためのGISアプリケーションを作成したが、今後、対象地域における医療施設の配置の実態を評価するアプリケーションへと発展させる必要がある。
3)既に蓄積された地質・地盤情報と都市の情報に基づいた被害予測に加えて、より可能性の高い地震災害の発生状況を想定したアプリケーションへと発展させた(飛田)。が、これについても、医療施設配置を評価するシステムにはまだ不十分であり、今後更に、協同した検討が必要である。 -
微動のH/V法の有効性とその適用限界の解明
研究課題/研究課題番号:13450185 2001年4月 - 2004年3月
科学研究費補助金 基盤研究(B)
澤田義博、堀家正則、笹谷勉、工藤一嘉、南雲秀樹、飛田潤
担当区分:研究分担者 資金種別:競争的資金
配分額:14000000円
基盤のVsが1500m/s以上のKiK-net161地点,K-net11地点,深層ボーリング地点5地点,濃尾平野44地点の総計221地点で観測した微動H/Vと地震観測データを比較し,次の結論を得た.
(1)微動H/Vと地表における地震動のH/Vとの近似度により,A, B, Cのランク付けを行った結果,近似度が良いランクA, Bの地点は全体の81%に達した.
(2)微動H/Vは地表における地震動H/Vおよび地表と基盤の地震動H/Vと良く近似しており,微動H/Vは表層の水平地震応答のみならず,水平動と上下動の両方の地震応答を反映している.微動H/Vは地震の水平動の地表と基盤の伝達関数に比べ小さな振幅であり,これを水平動の応答特性と見なすことは地震増幅特性を過小評価する恐れがある.
(3)微動H/Vの卓越周波数は地震の各種スペクトル比のそれらと極めて良く対応しており,微動H/Vからその地点の地震時卓越周波数を高い精度で予測することが可能である.
(4)微動H/Vのピーク振幅と地震動の各種伝達関数のピーク値との対応は,卓越周波数に比べ悪いが,ほぼ正の相関が認められるものの,スペクトル強度比は周波数特性を有し,微動H/Vのスペクトル形から表層地盤の入射地震増幅特性を直接推定することは殆ど不可能と考えられる.
そこで,観測地点の基盤深度と表層の平均Vsおよび微動H/Vの卓越周波数と基盤深度の関係を定式化し,激動H/Vのピーク振幅と水平動の基盤と地表間の伝達関数のピーク振幅との関係から,微動H/Vの卓越周波数とその振幅を用いて2層構造モデルを仮定した表層の地震増特性を推定する工学的な手法を提案した.本案による予測結果は,ボーリングのP, S検層データに基づく地震増幅特性結果と概ね良い対応を示しており,地盤の地震増幅特性を予測するための概査法として有効であることを示した. -
濃尾地震における震裂波動線生成の解明
研究課題/研究課題番号:12480110 2000年4月 - 2003年3月
科学研究費補助金 基盤研究(B)
福和伸夫、山岡耕春、中野優、飛田潤、佐藤俊明、鈴木康弘、馬場干児
担当区分:研究分担者 資金種別:競争的資金
配分額:16200000円
1891年に発生した濃尾地震の時に「震災の帯」として報告された「震裂波動線」の生成原因の解明を目的とした本研究によって、以下が明らかになった。
濃尾平野に関する資料収集を行い、愛知県による深部地盤構造調査の結果について資料収集と既存資料との比較検討を行い、総合的な3次元の深部地盤構造モデルを構築した。
震裂波動線に関連する岐阜県内の測線に強震計を並べて設置し地震を観測した。側線は養老断層による基盤の段差から堆積平野側に、約10kmの間に配置した。得られた地震動の波形を調べた結果、養老断層の存在によって励起された表面波の存在が確認された。さらにこの表面波と実体波が干渉とすると思われる断層から数kmの地域で地震動の増幅が見られた。この現象はFEMを用いた波動場の計算機シミュレーションにより、このような地震動の増幅が起きることが確認された。地下構造として濃尾平野に類似したいくつかのモデルで計算を行ったが、どれでも基盤の段差があれば地震動の増幅が見られた。
濃尾地震の震源モデルについては、特にその存在が示唆されながら、明らかな証拠が得られていない岐阜-一宮線の断層の存在について検討した。濃尾地震のときに観測されたとされる水準変動を説明する断層モデルとしては、従来の垂直の断層よりも、傾斜が75度の逆断層のほうが良いことがわかった。一方、この地域で現在も発生している余震と思われる微小地震のメカニズムから応力場を推定すると、岐阜-一宮線がかって滑ったという証拠は得られなかった。岐阜-一宮線の断層の存在については、さらなる検討が必要である。
震裂波動線に関しては、被害に関する資料を再分析すると、被害の多かった地域は線状ではなく、岐阜地域から濃尾平野南東部にかけて面上に分布しているようである。この結果は、被害が大きかったのはむしろ地盤や震源の特性によるものである可能性もある。 -
都市域の総合的地震被災ポテンシャルの定量化に基づく地域防災カルテの作成
研究課題/研究課題番号:11555149 1999年4月 - 2002年4月
科学研究費補助金 基盤研究(B)
福和伸夫、中野優、飛田潤、森保宏、勝倉裕、中井正一、高堂谷正樹、川端寛文
担当区分:研究分担者 資金種別:競争的資金
配分額:13800000円
国内の災害に関する情報の検討や、実際的な都市防災情報の収集に基づいて、災害情報に関して「災害情報整理学」という新たな立場を明確に提示し、それに基づいて整理された災害情報の具体的な運用方法として防災カルテ・防災処方箋を包含する「防災カルテシステム」の概念を構築し、さらに各種情報通信技術に立脚した双方向災害情報伝達のフレームワークである「安震システム」を提案・構築した。
災害情報整理の方針に関しては、収集した防災・災害に関する情報(知識・データ)に対してオブジェクト指向分析を用い、データの静的構造と動的構造を明らかにし、さらにデータや処理の流れの分析から公開すべき外部情報と隠蔽すべき内部情報を区別しつつ、防災に関わる様々な基盤情報の構造化を行う。このような基盤情報の共通性を活かし、目的・用途に応じて解析手法や結果の表現を工夫することが情報開示の有効手段となる。以上の方法論を災害情報整理学と呼ぶ。
オブジェクト指向分析により構造化された基盤情報から、利用者の意向や時間局面に対応して必要な情報を抽出し、変換・翻訳して利用者に提供するインターフェイスとして防災カルテシステムを開発した。防災カルテとして、自治体の作成するマクロな防災マップに加えて、地域に根ざしたミクロな防災情報、高密度の地盤情報や地震記録、建物や都市施設、防災施設などを統合してGISにより災害危険度を総合的にデータベース化しており、さらに災害に脆弱な地域の特定と原因の解明、そして対策を考える防災処方箋の機能を持っている。
以上の概念・技術を統合して実際の災害対応に結びつけるため、双方向災害情報システム「安震システム」と、ボトムアップの災害情報伝達端末「安震君」を新たに開発し、フィールドテストを行い有効性を確認した。具体的技術に関しては報告書に詳述している。 -
岩盤観測に基づく濃尾平野の地震入力基盤の解明 国際共著
研究課題/研究課題番号:11555123 1999年4月 - 2002年3月
科学研究費補助金 基盤研究(B)
澤田義博、凌 甦群、南雲秀樹、飛田潤
担当区分:研究分担者 資金種別:競争的資金
配分額:13700000円
本研究では,温泉ボーリングを利用した地盤調査と地震観測,微動アレイ探査による深部地盤調査およびシミュレーション解析による濃尾平野の地盤構造モデルの検証を行った.
1.温泉ボーリング孔を利用した地盤調査と基盤強震観測
名古屋市山王に掘削された山王温泉ボーリング(掘削深度約1200m)を検討対象として,PS検層をはじめとする各種検層により速度構造を求め,深さ約670mでVs:2.8km/sの堅硬な花崗岩となることを確認した.また,ボーリング孔内の基盤および地表で地震観測を実施し,名古屋市直下の微小地震を含む多くの地震観測データを取得した.さらに,観測波形を用いて地盤のS波速度およびQ値の最適値を同定した.
2.微動アレイ探査法による深部地盤構造の調査
まず,山王地点で微動のアレイ探査を実施し,推定されたS波速度構造とPS検層結果を比較してその適用性を検証した.次に,名古屋市内および周辺の濃尾平野において合計12地点で微動アレイ探査を実施した.名古屋市東部の基盤深度は500m〜600mであるが,.名古屋市西南部で約2000mと急激に深くなることが明らかとなった.また,複数点の地質構造の連続性を考慮した多点同時逆解析手法により,地盤構造モデルの信頼性が向上することを確認した.
3.濃尾平野における地震応答と地盤モデルの検証
濃尾平野を北東-南西および北西-南東に横切る複数の断面についてモデル化し,2次元有限要素法による地震応答シミュレーションを実施した結果,観測値をほぼ良好にシミュレートすることができた.また,差分法を用いた3次元モデル解析により,S波以降の表面波と見られる後続波を概ね表現できることを示した.なお,これらのモデルでは名古屋市西部に基盤が急傾斜する地域があり,今後その詳細を解明する必要がある. -
軟弱地盤の逸散現象を考慮した超高層構造物の動的風応答 国際共著
研究課題/研究課題番号:09044127 1997年4月 - 1999年3月
科学研究費補助金 国際学術研究
山田大彦、飛田潤、三辻和弥、藤本勝成、植松康、杉村義弘、し 醒
担当区分:研究分担者 資金種別:競争的資金
配分額:4200000円
本研究は、軟弱地盤に建つ超高層構造物を対象として、地盤の逸散現象を考慮した風応答解析モデルを作成することを目的として実施された。
具体的には、世界最大規模の超高層構造物が現在数多く設計され、建設されている中国・上海市を研究対象に選び、同市にある同済大学と共同で調査・研究を進めてきた。
この2年間に、日本からは2回5名の研究者が同済大学を訪れ、また、中国から1回4名の研究者を東北大学に招聘している。
中国における耐風設計の現状の把握、中国における気象観測の現状の把握、上海市における地盤データの収集と分析、上海市における実在超高層建物の設計資料の収集と分析、地盤の逸散効果とそのモデル化に関する研究情報の交換を行い、以下の研究を行った。
1. 超高層建物に関する設計用風荷重規定の日中比較
2. 上海市の地盤特性の解析
3. 軟弱地盤の逸散効果に関する理論的考察とモデル化 -
オブジェクト指向GISによる地盤DBと微動記録の融合に基づく名古屋地盤構造の解明
研究課題/研究課題番号:08455251 1996年4月 - 1999年3月
科学研究費補助金 基盤研究(B)
福和伸夫、今岡克也、西阪理永、飛田潤、森保宏、石田栄介
担当区分:研究分担者 資金種別:競争的資金
配分額:7400000円
地震被害と地盤構造は密接に関係している。しかし地盤の動的物性値に関するデータは量的にも質的にも不足している。従って既往の地盤資料を有効活用するとともに、地震観測記録や微動測定記録などの観測データと相互補完することが重要となる。そこで本研究では、既存の地盤資料をデータベース化して有効活用する地盤モデリングGISを構築し、新たに実施した常時微動記録を融合させて、都市内の地盤構造を構築することを試みた。
まず、既往の地盤資料を収集・データベース化し、問題をオブジェクト指向分析した上で、動的地盤モデル構築用の地理情報システム(GIS)を構築した。これにより、名古屋市内の任意の場所での地層断面図の推定、速度構造の推定、重複反射解析による地盤増幅特性の推定といった一連の動作をインタラクティブに行えるようにした。これと併せて、国土数値情報に基づく地盤増幅度の推定式も作成し、地盤データが不十分な地域での方策を検討した。
さらに、名古屋市内の計三百数十カ所において常時微動実測を実施し、市内全域での地盤震動特性に関するデータベースを構築した。H/Vスペクトルの周期特性と名古屋市内の地盤構造に基づいて、地盤特性を7つのカテゴリーに分類した上で、微動の卓越周期と地盤モデリングGISにより推定された周期との相関を分析し、両者がおおむね対応していることを明らかにした。また、レーリー波の水平/上下のモード比のピーク周期とS波重複反射解析の卓越周期との相関を理論的に分析した上で、微動H/Vスペクトルの卓越周期から深部地盤の深度推定を試みた。本研究により、名古屋市の地震被害想定の精度が向上し、名古屋圏の適切な防災計画に結びつけることが可能となり、さらには、耐震基準の性能規定化後の地震荷重設定における地盤の増幅特性の適切な評価にも貢献できる。 -
ネットワークの利用による強震記録の分散データベースの構築
研究課題/研究課題番号:08750678 1996年4月 - 1997年3月
科学研究費助成事業 奨励研究(A)
担当区分:研究代表者 資金種別:競争的資金
配分額:1000000円
強震記録の有効利用のためには速やかな公開と効率的な整理が必要とされる。本研究では、強震記録を各機関で整理してネットワーク上に公開し、それらの散在するデータの所在・属性・形式等をデータベースとして提供する分散データベースの形態を考え、コンピュータネットワーク(インターネット)による強震記録利用の可能性について検討した。
1.現状の内外のデータ提供サーバの調査
ネットワーク上で強震記録を提供しているのは、主に海外の公的機関で地球物理系の観測網が多く、一方国内では、特に小規模観測や工学系のデータ公開が手薄な状況にある。小規模な観測では一機関で十分な資料とならないので、なるべく多くの公開がなされた上でそれらをまとめる必要がある。本研究で考える分散データベースは、このような場合に特に有用と考えられ、小規模データの公開を促進する可能性もある。
2.強震記録をネットワーク上に公表するデータサーバシステムの検討
データサーバは各データ提供機関で用意する。現状ではほとんどがWWWとFTPサーバの組み合わせであり、サイトや観測機器の情報は画像、強震記録はテキストファイルとなっている。次項のサーバでデータベースの項目として用いるための最小限の項目を、共通パラメタファイルとして構成すれば、他は自由形式であってもほぼ対応可能なことを試験した。
3.強震記録の情報をネットワーク上で提供するデータベースサーバシステムの検討
散在する強震記録および付随する地震情報・サイト情報等の所在をまとめ、さらに検索機能等を付加したデータベースサーバの構成を実験した。簡易な検索機構ならば、WWWサーバおよびデータベースともに、ネットワーク上でフリーで入手できるソフトウエアでも対応可能であり、またパソコンサーバ程度でも実用上は十分である。 -
破壊的地震動の伝播における地層内フィルター効果に関する研究
研究課題/研究課題番号:07805052 1995年5月 - 1996年3月
科学研究費補助金 一般研究(C)
杉村義弘、飛田潤
担当区分:研究分担者 資金種別:競争的資金
配分額:2100000円
1994年三陸はるか沖地震では、八戸市各地で地震記録が得られており、応答解析結果と比較する上で有効なため、破壊的地震動の増幅特性と地盤構成の関係を追究するための解析対象とした。
解析における入力動としては、岩盤に設置された八戸工大のGL-20mでの地震計による本震の記録を用いた。市内の代表的な場所、とくに地震動の記録が得られている位置での地盤条件を、水平成層を仮定して一次元せん断多質点系の非線形解析を行った。その結果、以下のような事項が明らかとなった。
1)八戸市における被害は、概して低地部では少なく、台地部に集中する傾向があった。しかし、本震では新井田川の西部の台地上にある市中央部で、最大余震では東部の台地上で被害が多く、対照性を示すとともに地盤条件の差異の影響が大きいことを示唆している。したがって、東部台地をゾーン1、市中央部の台地をゾーン2、西部の低地をゾーン3として分類し、それぞれの代表的な地盤条件を選定した。
2)ゾーン1の八戸測候所では、基盤の深さがGL-10m程度であり、解析結果では、表層地盤の1次固有周期に近い成分の0.2〜0.4秒が卓越し、実測加速度波形の速度応答スペクトルのピークとよく対応する。したがって、表層にある火山灰質粘土層の非線形性が支配的な要因となる。
3)ゾーン2の八戸市役所では、GL-40m程度の支持地盤よりもずっと深いGL-100m程度の地震基盤までをモデル化して解析を行うと、実測波形の速度応答スペクトルにおけるピークである0.8〜1.0秒とよく対応する。
4)ゾーン3の八戸港では、基盤の深さGL-400m程度までを考慮すると2.5秒付近と1.0秒付近の速度応答スペクトルのピークが得られ、実測波形の結果をよく説明する。 -
GISを用いた人工的地形改変地の地震に対する土地条件評価に関する研究
研究課題/研究課題番号:07680479 1995年4月 - 1997年3月
科学研究費補助金 基盤研究(C)
村山良之、飛田潤、松本秀明、菅野高弘
担当区分:研究分担者 資金種別:競争的資金
配分額:2200000円
1.(1)1993釧路沖地震の家屋被害と新旧地形データをGISに入力し,(家屋数=6,343)行×(被害関係+土地条件指標関係)列のデータベースを構築した。そして対象地域を絞り込んで以下の解析を行った。(2)土地条件指標をいくつか検討し、釧路では以下の5指標を用いた。a:切土盛土境界線からの距離。b:盛土の深さ。c:1956時点(盛り土下の原地形)の傾斜。d:崖指標(凸部指標)。e:切盛境界(カテゴリーデータ)。(3)土地条件指標を用いて家屋被害程度を判別すべく、判別分析と数量化II類による解析を行った。(4)様々な試行の結果、一部損壊およびその他を無被害から分離しにくいこと、これらと全壊および半壊はかなり明瞭に判別できること、全壊と半環の判別はこれほど明瞭でないことなどが判った。(5)解析結果のうち、2区分(全壊+半壊/一部損壊+その他+無被害)についての判別分析では、盛土が厚いほど、盛土下の原地形の傾斜が大きいほど、境界部に近いほど、凸部であるほど、被害が大きく、またb,c,a,dの順で被害(程度)に対する影響が強いことが、明らかになった。
2.釧路の沖積低地については、2万分の1空中写真判読による地形分類を行い、地震被害との関係を調査した。その結果、とくに鳥取北3,4,5丁目および昭和町3,4丁目において、河川の旧流路と住宅被害との関わりが明瞭に認められた。
3.(港湾地区については対象を釧路から神戸に変更し)1995兵庫県南部地震による海岸保全施設、港湾施設、桟橋の被害について検討した。従来無視されてきた沖積層中の砂、砂礫層の存在を考慮した上で当該層の液状化を考慮すると、実現の被災状況を再現することができた。砂礫層をもたらした旧河川の位置情報を含む古地図、古い地形図情報を、今後のGIS情報に取り込む必要性が示唆された。 -
因果伝達関数推定法による地盤・構造物系の常時微動記録の解析
研究課題/研究課題番号:07750650 1995年4月 - 1996年3月
科学研究費助成事業 奨励研究(A)
担当区分:研究代表者 資金種別:競争的資金
配分額:900000円
1.東北大学建設系建物,免震構造施設,造成地の地盤,振動台実験施設の周辺環境振動など常時微動観測を多数行い,記録の蓄積を行った。
2.建物底部と頂部の伝達関数が風などの中間外力の影響により因果性を満たさないことを考慮し,地盤から建物底部への入力と建物側面への入力の双方が応答に影響するシステムモデルを構成して,これが実現象を良く表現することを確認した。このモデルの入出力にウィーナフィルタによる因果伝達関数推定法を適用したところ,中間外力による因果性の乱れの程度を推定伝達関数の形状の特徴として抽出できることが判明した。
3.上記の点から,風の影響を含むシステムモデルの最適化を一般の伝達関数と因果伝達関数について行うことにより,より精度の高いシステムパラメタの推定が行えることを示した。観測された記録の伝達関数は不安定な場合が多く,その影響はおもに減衰定数の過大評価となって現れるが,従来の伝達関数のみを用いる場合に比べて状況は改善され,特に風の影響の小さい場合にはかなり良好な推定値が得られる。
4.パラメータ推定の過程に遺伝的アルゴリズム(GA)の適用を試みたが,当該システムにおいては必ずしも従来の非線形最小二乗法よりすぐれた結果を与えるとは限らなかった。むしろ複数のパラメタをもつ誤差曲面を色彩表現により同時に表示し,人間の判断によって適切な極小値を探索する手法が有用な場合もあった。
5.地盤の常時微動に関して,地表の観測記録から卓越周期を推定する新たな手法を提案・検討した。これは観測記録の自己相関関数のτ≧0の範囲をフーリエ変換し,その位相角がω軸と交差する周波数を卓越周波数の候補とするもので,因果伝達関数を使用してはいないが,今回行った多数の測定結果などから有用性を検証した -
破壊的な地震動の諸特性に関する研究
研究課題/研究課題番号:06805047 1994年4月 - 1995年3月
科学研究費補助金 一般研究(C)
杉村義広、飛田潤
担当区分:研究分担者 資金種別:競争的資金
配分額:1900000円
建物の地震被害が軟弱地盤で甚大となることは、度々指摘されているが、その原因として軟弱地盤では加速度が増幅されやすいという説明がなされてきた。しかし、地盤の非線形応答解析を行うと軟弱地盤では加速度はむしろ小さくなり、従来の通念とは全く逆になる。この点を確認するために、実際に観測された1993年1月15日釧路沖地震の場合を例題として、釧路市各地における地盤の地震応答解析を行った。
釧路市の基盤は、低地部では非常に深いが台地部では浅くなり、一部露頭している所もある。この台地上にある釧路気象台には約900gal、極く付近の観測小屋では約700galを記録した。この小屋付近で行われたボーリングでは、GL-17.15mで基盤(砂岩)が現れ、その上部に火山灰質砂(9m厚)、火山灰(約6m厚)、盛土(約1.5m厚)という地層構成となっている。解析は700gal相当を記録したN063Eの水平一成分について行った。まず、線形の重複反射理論を用いて観測地震波を基盤に戻し、次にそれに対する地盤の応答を非線形解析によって求め、観測記録と比較して両者がよく対応するまで計算を繰り返し、各地における基盤入力波とした。結果として、気象台の地盤ではGL-1.9mから8.15mの火山灰層で0.3秒程度の周期成分を増幅させる性質が最も卓越し、入力波にこの成分が多く含まれていたため最大加速度も大きくなったことが判明した。一方、低地部各地では比較的軟らかい層が地域によって0.5秒以上あるいは1.0秒以上の周期成分を増幅させるものの、0.3秒付近の成分はむしろ減少させるため最大加速度はむしろ小さくなる結果が得られ、台地部とは好対照を示した。このように、地震動が地盤内を伝播するとき、それぞれの地層で特定の周期成分が増幅したり減少したりするフィルター効果があって、そのうちでもその地盤での性質を決定的にする地層があることが分かった。 -
杭基礎の耐震性における地震動長周期成分の影響
研究課題/研究課題番号:05650528 1993年4月 - 1994年3月
科学研究費補助金 一般研究(C)
杉村義広、飛田潤
担当区分:研究分担者 資金種別:競争的資金
配分額:2000000円
都市地域によくみかけられる地盤構成をモデル的に単純化した4種類の地盤,すなわち,1)軟弱な1層地盤,2)表層が柔らかい2層地盤,3)密な中間層を持つ3層地盤,4)ゆるい中間層を持つ3層地盤を想定し,これらの地盤に杭基礎で支持された数種類の建物を組合せた解析モデルを作成した。この地盤-杭-建物系に対して,比較的長周期成分を含んだ地震動を入力させて地盤応答解析を行った。解析結果のうち,とくに杭の曲げモーメントとせん断力の深さ方向の分布に注目すると,剛性が極端に異なる中間層がある場合には,その境界付近で急激に大きくなることがみられた。これは,前年度までの研究で得られた結果を追認するものであるが,地震動に長周期成分が含まれているほど,その傾向が強まるようである。この性質を杭の水平抵抗設計に導入するために,荷重分布法により検討した結果,各層で等分布の水平荷重を与えるのみでなく,剛性が極端に変化する層境界位置に集中荷重を組合せて作用させるのが有効であることが認められた。今後は,剛性変化に応じた集中荷重の定量化が検討事項となる。
また,上記の過程で派生的に問題となった地盤と建物の動的相互作用における地盤の受動抵抗(動的土圧)の性質を追究するために,新たに簡単な3質点モデルを作成し,固有値解析と地震応答解析を行った。その結果,建物および地盤の一次固有周期をT_b,T_gとすると,動的土圧に対しては上部構造の慣性力効果と地盤振動効果の両者が影響を与えているが,T_b≧T_gの場合には慣性力が支配的であり(すなわち動的土圧は建物の振動に対して抵抗力側に働く),T_b<T_gの場合には地盤振動効果が支配的となる(すなわち動的土圧は建物に対して入力側に働く)ことが分った。軟弱地盤では地震動に長周期成分が含まれることが多いので,入力側になるというこの結果は杭に対して重要な示唆を与えている。 -
多数の地震記録の波形解析における色彩表現の活用
研究課題/研究課題番号:04750543 1992年4月 - 1993年3月
科学研究費助成事業 奨励研究(A)
担当区分:研究代表者 資金種別:競争的資金
配分額:900000円
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構造特性および入力地震動特性の変動を考慮した建築物の地震時応答特性の評価
研究課題/研究課題番号:02650389 1990年5月 - 1991年3月
科学研究費補助金 一般研究(C)
和泉正哲、飛田潤、野村希晶
担当区分:研究分担者 資金種別:競争的資金
配分額:1900000円
(1)比較的地盤の影響の少ない低層RC建物、剛性が小さい特殊構造物である免震建物、軟弱地盤上の杭基礎建物について、多くの地震において得られた多点同時記録を用い、統計的伝達関数とコヒ-レンス関数、および固有振動特性の同定手法を適用して、振動システムの特性とその変動を調べた。長期的な不可逆的変化、地震毎のばらつき、および各地震中での系統的変動とランダムな変動を区別し、それぞれが構造物や周辺地盤の状況によって異なることを示している。
(2)上記の結果に基づき、簡単な質点系モデルの固有振動性状に実記録から得られた変化・変動・ばらつきを与え、確定入力に対する応答特性を調べた。特に減衰定数の変化は影響が大きいが、一方で、特定の地震中での減衰定数の変動の影響はむしろ小さい。
(3)地盤系(比較的浅い部分)に関して(1)と同様に実記録の特性を整理し、固有振動特性の変化・変動の傾向の相違がかなり大きいことがわかった。これらを系統的に整理するには現状ではサンプル数が不足している。
(4)成層地盤の各層内における媒質の定数に不均質なばらつきがある場合に、その影響として生じる波動成分(散乱波の一種)について、その確率的性質(平均値と分散)を解析的に求める手法を開発した。実際に存在する地盤のモデルに、散乱波成分を考慮できるこの手法を適用して伝達関数を求めたところ、全体に良く実現象を表現し、数Hz以上の周波数域では散乱波成分による変動が優勢であるという結果が得られた。この時に、各層の定数に与えるばらつきを実記録との整合で適切に設定する必要があり、今後の課題である。 -
システムの因果性を考慮した建築構造物・地盤における常時微動記録の活用
研究課題/研究課題番号:02750464 1990年4月 - 1991年3月
科学研究費補助金 奨励研究(A)
担当区分:研究代表者 資金種別:競争的資金
配分額:800000円