科研費 - 工藤 教孝
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ロボットや人工知能技術などの技術革新が労働市場に与える影響の理論・数量分析
研究課題/研究課題番号:21K01525 2021年4月 - 2024年3月
科学研究費助成事業 基盤研究(C)
宮本 弘暁, 工藤 教孝
担当区分:研究分担者
AI技術やロボットの発展により、新技術が人々から仕事を奪うのではないかという問いが欧米を中心に学術界のみならず政策当局においても活発に議論がなされている。本研究では失業を考慮したマクロ経済モデル(動学的一般均衡モデル)によりAI技術やロボットが雇用、賃金に与える影響を理論的、数量的に明らかにする。また、技術革新が経済に与えうるマイナスの影響を経済政策・制度がどのように緩和できるかを分析する。
本研究の目的はロボットによる自動化や人工知能(AI)技術などの技術革新が労働市場、とりわけ雇用、賃金に与える影響を労働市場の摩擦を考慮した動学的一般均衡(DGE)モデルを用いて、カリブレーションならびにシミュレーションの手法で理論的・数量的に分析することである。
2022年度は2021年度に研究分担者の名古屋大学経済研究科の工藤教孝教授と執筆した学術論文"Robots and Unemployment"の改訂作業を行い、査読付き海外学術雑誌に投稿した。
また、工藤教授とは、当該研究で使用している労働市場の摩擦を考慮した理論モデルについて、"Do General Equilibrium Effects Matter for Labor Market Dynamics?"および"Time Aggregation and Unemployment Volatility" という論文を工藤教授と執筆し、海外学術雑誌に投稿、共に採択された(前者はEconomic Modelling、後者はEconomics Bulletin)。さらに、当該研究で使用している理論モデルの応用として、労働分配率の動きを説明する研究をおこなった。
AIやロボットによる自動化など現在進行中の第4次産業革命は雇用・労働市場に大きな影響を与えると考えられているが、それらの影響を含めて、日本の労働市場について、広く一般に伝えるため、『51のデータで明かす日本経済の構造』(PHP研究所)を執筆、出版した。
本研究では、まず、AI技術やロボットなどの高度科学技術を明示的に組み込んだ労働市場の摩擦を考慮したDGEモデルを構築し、シミュレーションの手法により、技術革新が雇用・賃金に与える影響を理論的、数量的に明らかにすることを計画していた。分析については2011年度に大部分が終わり、2022年度は、2021年度に行った分析をさらに精緻化し、その成果を"Robots and Unemployment"としてとりまとめ、査読付き海外学術雑誌に投稿した。また、当該研究を実施していく中で、新しい研究課題が生まれ、それについて研究分担者の名古屋大学経済研究科の工藤教孝教授と研究を進めることができた。この点において、当初の計画以上に当該研究課題は進展していると考えられる。
今後は、まずは2022年度に海外学術雑誌に投稿した"Robots and Unemployment"が出版されることを目指す。また、名古屋大学の工藤教授との共同作業を通じて、本研究で使用している摩擦を含む労働市場モデルについて、新しい研究テーマが出てきたため、それらについても研究を進める予定である。そのうちのひとつに、労働分配率(Labor share)に関するものがあるが、それについては2022年度に理論分析と数量分析を行ったので、今後はその結果を論文にまとめようと考えている。
また、2021年度に行ったIMFとの共同研究は特に労働市場に焦点を当てたものではなかったため、今後はAI技術やロボットなどの高度科学技術を明示的に組み込んだ労働市場の摩擦を考慮したDGEモデルにおいて失業給付、最低賃金、解雇規制などの労働市場に関する規制や制度が、技術革新が労働市場に与えうるマイナスの影響をどう軽減できるかについて検討する。 -
市場支配力とマクロ経済:サーチ理論による産業組織、景気変動と格差の分析
研究課題/研究課題番号:20H01476 2020年4月 - 2025年3月
科学研究費助成事業 基盤研究(B)
工藤 教孝, 花薗 誠, 宮本 弘暁, 田中 頌宇将, 尾山 大輔
担当区分:研究代表者
配分額:17030000円 ( 直接経費:13100000円 、 間接経費:3930000円 )
2010年のノーベル経済学賞の対象となった「サーチ理論」は、微小な粒子同士のランダムなぶつかり合いとして経済活動を再定義することで市場の「摩擦」をモデル化することに成功した。しかしながら、「微小な経済主体」という世界観は分析上の制約になることも多かった。本研究は、「企業規模」という概念をモデル化することを通じてサーチ理論を大きく発展させ、世界規模で進む市場構造の変質、特に近年報告されている市場支配力の上昇や労働分配率の下落などの現象を、産業組織、景気変動に伴う雇用調整、所得分布の視点から解明する。
プロジェクト1:摩擦的市場における企業規模 本プロジェクトは、研究代表者が長年研究してきた「サーチ理論」を「産業組織論」に応用するという方法を採用し、産業組織論をサーチ理論を通じて再構築するプロジェクトである。研究分担者との共同研究の成果を「Priminence and Market Power: Asymmetric Oligopoly with Sequential Consumer Search」という論文にまとめ、現在国際ジャーナルにて2回目の書き換え要求に対応し終え、最終的な審査結果を待っている状態である。
プロジェクト2:摩擦的市場と景気変動 研究代表者と研究分担者による共同研究の成果のひとつ「General Equilibrium Effects and Labor Market Fluctuations」では、景気変動における「所得効果」の役割について数量分析を行い、Economic Modellingという国際専門誌に掲載された。また、「Time Aggregation and Unemployment Volatility」では、労働市場統計の集計上のバイアスが景気変動を過小に計測してしまう可能性についてシミュレーションによって明らかにし、Economics Bulletinという国際専門誌に掲載が決まった。「Robots and Unemployment」では、技術進歩によって雇用が失われる可能性について理論分析と数量分析を行った。当該年度中に複数の専門誌にて審査を受け、まだ掲載は決まっていないものの、審査から得られたコメント等を元に、分析結果の中身を精査し、研究の新規性を打ち出すにはどうするか、新しい方向性を発見するに至った。
プロジェクト1の研究成果である論文「Priminence and Market Power: Asymmetric Oligopoly with Sequential Consumer Search」が経済学分野で伝統のある学術誌の審査に残っており、2度の書き換え作業を経て、23年度中には掲載が決まると見込まれる。この研究成果を土台として次の研究に進むことが可能になる。プロジェクト2についてもすでに専門誌に2本掲載が決まっており、残りの研究期間を使って他の現在進行中の研究を完了させることができる見通しになったから。
プロジェクト1「摩擦的市場における企業規模」については、引き続き花薗教授との共同研究を推進し、市場の摩擦と市場支配力の推移について分析を進め、ますます加速してゆく情報化社会の中で少数の企業が巨大化していくのか、それとも多数の企業による競争的な市場に向かっていくのかについて解明を進める計画である。プロジェクト2「摩擦的市場と景気変動」についても引き続き宮本教授と研究を進め、当該年度までに複数の方向で数理モデル構築とシミュレーションが進んでいる研究成果について、次年度中にそれぞれ論文にまとめていくことを目標としている。 -
企業規模と企業数:サーチ理論による市場構造の分析
2017年4月 - 2020年3月
科学研究費補助金 基盤研究(C)
担当区分:研究代表者
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企業規模と企業数:サーチ理論による市場構造の分析
研究課題/研究課題番号:17K03619 2017年4月 - 2020年3月
工藤 教孝
担当区分:研究代表者
配分額:4030000円 ( 直接経費:3100000円 、 間接経費:930000円 )
2010年のノーベル経済学賞の対象となったサーチ理論は、微小な粒子同士のランダムなぶつかり合いとして経済活動を再定義することで、市場取引に存在する摩擦をモデル化することに成功したが、その副作用として、取引単位が1対1のペアになってしまい、多くの従業員を雇用する『企業』の行動を分析できないという問題を有していた。本研究ではサーチ理論の枠組みの中で企業規模を追加的にモデル化し、サーチ理論の研究範囲を大きく広げることに成功した。そのひとつの応用として、日本の雇用調整を雇用者数の調整と一人あたり労働時間の調整に分離してモデル化し、日本の雇用調整の事実と整合的なモデルの開発に成功した。
現在最も代表的な労働市場サーチ・モデルはPissarides, Equilibrium Unemployment Theory, MIT Press, 2000 によって提示されたものであるが、この枠組みにおける取引単位は1対1のペアである。本研究は、多数の従業員を雇用する企業を分析の出発点とすることで、既存の枠組みでは分析できなかった多くの重要な研究テーマに挑戦することが可能になった。この方向性は「サーチ理論」と「企業規模」という両方の要素があって初めて分析可能になるため、国内外の研究動向と照らしても、非常に独創性の高い研究である。 -
サーチ理論のフロンティア
2015年4月 - 現在
科学研究費補助金 基盤研究(C)
担当区分:研究分担者
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経済成長を促進する労働市場政策の効果を推定する動学分析
2015年4月 - 現在
科学研究費補助金 基盤研究(B)
担当区分:研究分担者
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サーチ理論のフロンティア
研究課題/研究課題番号:15K03355 2015年4月 - 2019年3月
今井 亮一
担当区分:研究分担者
サーチ理論の最近の展開を踏まえ、新たな応用分野を開拓した。サーチ理論は、為替取引やエネルギー市場のような、中央集権的取引市場のない財・サービスの取引をモデル化し、ミクロ経済のみならずマクロ経済への含意を検討する分野であり、2010年にはノーベル賞経済学賞を受賞した分野である。当プロジェクトでは、特に以下のテーマについてモデル構築を試みた。
(1)労働市場において、社会保険料のようなpayroll taxが、雇用の生産性の分布にいかなる影響をもたらすか。(2)不動産取引において、住居形態(賃貸、持ち家)がどのように分布するか。(3)医療保険は現物供給補助金であり、供給価格を吊り上げる効果を持つ。
市場経済には為替取引や資源取引のように集権的で大規模な市場もあるが、たいていの取引は、分権的で局所的である。前者のような集権的取引では、総需要と総供給を集計して均等化するように取引価格が決まるけれど、分権的取引では、市場価格は、個々の局所的取引価格の平均としてしか捉えることができない。このような分権的取引の性格をうまく捉えてモデル化して、様々な応用課題の解を提示するのがサーチ理論分析である。分権的取引の具体例として、労働、金融(貸出)、医療、住宅、家電、自動車などがあり、家計の経済生活の大半に関わってくる。 -
経済成長を促進する労働市場政策の効果を推定する動学分析
研究課題/研究課題番号:15H03362 2015年4月 - 2019年3月
佐々木 勝
担当区分:研究分担者
研究期間中に完成した3本の論文は査読付き国際学術雑誌に掲載された。1本目の論文では、労働供給(労働時間)の選択を明示的にモデルに組み込むことで、理論モデルによる日本の労働市場の再現性を高めることに貢献した。2本目では、日本の労働市場をモデルから再現した上で、財政刺激対策が失業率や人手不足の程度を示す求人充足率に与える影響を数量的に評価した。3本目の論文として、分析手法に関する研究成果であり、査読付き国際学術雑誌に掲載された。
少子高齢化が進む日本の労働市場で効率的に労働者(時間)を配分することは喫緊の課題であるが、それを解決するために必要な労働市場政策の効果を数量的に評価、予想する研究はデータの制約上数少ない。本研究の成果は、サーチ=マッチグ・モデルをもとに失業を内生的に取り入れた動学的モデルを構築することで、労働市場の実態に合ったパラメータを特定することが可能となり、財政刺激策のような政策の効果を評価することができるようになった。 -
転売と投機の経済分析:金融市場における異質性とサーチ理論
2014年4月 - 2017年3月
科学研究費補助金 基盤研究(C)
担当区分:研究代表者
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戦略的補完性とレジームシフトによる経済危機の分析:サーチ理論からのアプローチ
2011年 - 2013年
科学研究費補助金 基盤研究(C)
工藤 教孝
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情報と予測の相互作用と金融危機
2008年 - 2010年
科学研究費補助金 若手研究(B)
工藤 教孝
本研究は、どの程度効率的に情報が株価に反映されるのかついて、理論的に研究を行った。特に着目したのは、金融市場において株を売る際、その時点での買い手がどのように株価を評価しているのかによって自分がどの程度高値で株を売れるかが決まっているという理由で、市場参加者が「他者の予測」を予測しようとするという事実である。本研究では、そのような金融市場において、情報が減るについて株価の変動が上がる場合もあれば下がる場合もあることを発見した。
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サーチ理論の発展と応用
2007年 - 2009年
科学研究費補助金 基盤研究(C)
今井 亮一
平成19年4月から22年3月にわたって、国内外の有力研究者を招いてSearch Theory Workshopを安定的に実施し、数多くのサーチ理論関係論文を国内外の有力誌に掲載および投稿した。
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限定合理性のマクロ経済学と金融市場
2005年 - 2007年
科学研究費補助金 若手研究(B)
工藤 教孝
1. 具体的内容 本研究では、経済の構造を正確には知らない経済主体からなるマクロ経済モデルを出発地点として、それを金融市場に応用することで、デフレ、バブル、長期不況など日本経済に深く関わる現象について解明することが目的であった。本研究によってデフレについての理解が進んだのみならず、金融政策運営について重要な知見が得られた。仮に、非常に強い意味で独立な中央銀行が金融政策運営を行っていたとしても、不景気などの理由で低金利政策を進めた場合に意図しない形で政府国債を買い支えることになることが判明した。この成果は2007年に国際学術誌に掲載された。また、経済の構造を学習しながら意思決定する経済主体についても研究が進んだが、同時にその方向性の限界も見えてきた。具体的には、統計的に学習をする経済主体を考察したのだが、モデルの動学経路の計算には大いに役に立ったが、既存のモデルと同じ均衡に最終的には収束してしまうことが明らかとなった。この点については今後のさらなる研究が必要である。2. 意義 本研究によって明らかにされた成果の意義は大きい。特に、今までは財政規律の欠如が金融政策に影響を与えるのは中央銀行が独立でないからだと考えられてきたが、本研究成果によって、中央銀行の独立性だけでは財政からの影響を断ち切れないことが判明したからである。3. 重要性 ノーベル賞受賞者のロバート・ルーーカスは「合...
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非ワルラス型価格決定メカニズムの理論と応用
2004年 - 2005年
科学研究費補助金 基盤研究(C)
今井 亮一
本研究プロジェクトの当初の目的は、(1)月1回程度、各回2名程度の形式で、コンスタントに研究会を開催し、専門分野の知識を深めると共に、(2)研究代表者・分担者の単著・共著の論文・書籍を公刊することである。さらに、今年度から開始した課題として、(3)サーチ理論の発展と応用を、本プロジェクトの研究代表者・分担者の研究関心・成果と関連付ける形で概観する単行本を執筆中である。(1)平成17年度の研究会の実施状況は以下のようである。紙面の都合上、平成16年度については省略する。5月20日(金):安達裕之(東洋大学)、浅野貴央(大阪大学)7月8日(金):山口慎太郎(ウィスコンシン大学大学院)、藤田茂(Federal Reserve Bank of Philadelphia)7月16日(土)Ricardo Lagos(Federal Reserve Bank of Minneapolis and NewYork University)、清滝信宏 Nobuhiro Kiyotaki(London School of Economics):9月15日(木):滝沢肇(IMF)10月21日(金):尾崎裕之(慶応大学)、松井彰彦(東京大学)11月18日(金):新豊直輝(琉球大学)、堀宣昭(九州大学)12月16日(金):堀井亮(大阪大学)、野坂博南(関西大学)3月24日(金)-25日(土):清水崇(関...