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教師エージェンシーを通じた批判的リフレクションによる学校組織開発の学際的研究
研究課題/研究課題番号:24K00383
2024年4月
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2029年3月
科学研究費助成事業
基盤研究(B)
千々布 敏弥, 溝上 慎一, 石井 英真, 久野 弘幸, サルカルアラニ モハメドレザ, 木村 優, 森 朋子, 柴田 好章, 田村 知子
担当区分:研究分担者
本研究は授業研究やカリキュラム・マネジメント等の教育現場で実践されている組織開発手法を、批判的リフレクションと教師エージェンシーの視点から解明することを目的としている。
授業研究もカリキュラム・マネジメントも多様な手法が提案され、対立関係にあるように見えるが、組織構造や考え方の変容という視点においては同じベクトルを向いているはずである。個人の内省を深めることも、子どもに最適な学びを構想することも、教科の世界を深めることも、組織構造を分析して組織戦略を考えることも、同じベクトル上にあることを示そうとしている。
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「学習指導要領体制」の構造的変容に関する総合的研究
研究課題/研究課題番号:20H00103
2020年4月
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2025年3月
科学研究費助成事業
基盤研究(A)
植田 健男, 山崎 雄介, 光本 滋, 石井 英真, 中村 清二, 富樫 千紘, 松永 康史, 川地 亜弥子, 坂本 將暢, 山口 真希, 濱口 輝士, サルカルアラニ モハメドレザ, 中嶋 哲彦, 日永 龍彦, 石井 拓児, 磯田 文雄, 柴田 好章, 長谷 範子, 中 善則, 小池 由美子, 姉崎 洋一, 中田 康彦, 木村 裕, 首藤 隆介, 井上 明美, 中妻 雅彦, 井上 憲雄
担当区分:研究分担者
戦後初めて学習指導要領が出された1947年から、その部分改訂となった1951年版に至るまでに確立、確認されていった学習指導要領そのものの意義と内容について、その到達点を改めて明確にする。そこにおいて、最も本質的な意味を託されるかたちで「教育課程」という概念そのものが生み出され、学習指導要領はあくまでもその「基準」にすぎないことが明確に確認されたことについて、改めて歴史的な回顧を行い、併せて、この時期に試行された教育課程づくりの実践やそれにもとづく教育実践についても掘り起こしを行う。
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研究アプローチ別に設定された国際比較、教育政策・教育法、教育内容・方法、学校経営-教育課程づくり実践の四つの研究チームを基本として、それぞれのチーム毎に共同研究を進めるとともに、それぞれの研究メンバーが、最低二つ以上のチームに所属して、全国的規模で研究会を実施すると同時に、地域別の研究会を編成する努力を続けてきた。異なるアプローチを担当する研究者による相互検討の会を恒常的に開催することを目標とし、それらの日常的な研究チーム毎の検討を点検し相互交流すべく全国的な研究総会である全体会を年次ごとに開催し、これまでその成果を全体で共有してきた。
本共同研究の出発当初、いきなり未曾有のコロナ禍に直面し、メンバーの多くが教育研究職であることから、それぞれの職場の本務の仕事そのものの進め方に重大な困難が生じ、共同研究体制を組む以前の問題で四苦八苦することになった。そうしたなかでも個別での研究は、それぞれに進められたが、共同研究としての活動は、事実上、繰り越しとなっていた。その後、コロナ禍が一段落して、ある意味日常化するなかで、研究体制の立て直しが進められ、第二年度目以降は学校経営・教育課程づくりチームが実地調査に着手し、教育政策・教育法チームが、今次学習指導要領の改訂を含めた大きな環境変化の下での教育課程経営の実態に焦点を当てる形で理論的・実践的解明を進め、学校経営チームと、教育政策・教育法チームとの共同研究作業を軸として課題遂行を進めてきた。さらに国際比較チームが念願の外国調査を実施することができるようになり、昨年度は教育内容・方法チームにより今日的に起こってきている具体的な問題に焦点を当てる形で理論的・実践的解明を進めることができた。
そのなかで研究者が個別に研究成果として実績化したものについては別紙の通りであり、既に、これまでに相当数の成果となって公表されてきている。+
前述のごとくこれまで日常的な研究チーム別・ 地域別の検討を点検し、相互交流するための全国的な全体研究総会を開催してきた。初年度及び二年度については、コロナ禍など諸般の事情から繰り越しとなっていたが、その後、体制を立て直し、第二年度目以降は学校経営・教育課程づくりチームによる実地調査、教育政策(とりわけ今次学習指導要領の改訂)を含めた大きな環境変化の下での教育課程経営の実態に焦点を当てる形で理論的・実践的解明を進め、これら学校経営・教育課程づくりチームと、教育政策・教育法チームの共同研究作業を軸として課題遂行を進め、さらに第三年度目には国際比較チームを中心として念願の外国調査を企画、実施し、第四年度目は教育内容・方法チームにより今日的な問題に焦点を当てる形で理論的・実践的解明を進めることができた。特に、この間、学習指導要領に関わる重要な問題が学校現場において起こったことは、これまでのわれわれの研究の成果が問われるものと受け止め、その実態の把握と理論的な課題について突き詰める機会となり、それぞれに論文化するなどして成果を公表してきている。
研究アプローチ別に設定された国際比較、教育政策・教育法、教育内容・方法、学校経営-教育課程づくり実践の四つの研究チームを基本としてこれまでの間に得られた知見をもとにそれぞれに研究成果のとりまとめに入るとともに、 いよいよ最終年度となる本年度は、以上の到達点にたって、これまでの研究の経緯と蓄積に基づいて共同研究全体を貫く論点を改めて整理して、それをもとに包括的な議論を進めることとしたい。
そのために、予算的には厳しいものがあるが、今年度についてはこれまでのように各チームのうちのどれかが全体をリードするというかたちでではなく、全体会を中心とした検討の場を設定し、上記の議論を進めることとしたい。前述のごとく、この時期にまさにわれわれのテーマと密接な関係をもつ教育問題が起こり、ひろく注目を浴びるところとなっているが、それが格好の検討材料となるであろうことが予見される。
また、時期的には、まだその取りまとめの中間段階にはなってしまうが、8月に名古屋で開催される日本教育学会のラウンドテーブルをわれわれのテーマで企画し、これまでの成果について報告するとともに、全国的な議論に寄与することを予定している。
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国境を超えた教育実践学の構築:レッスンスタディにおける東と西アジアの対話を通して
研究課題/研究課題番号:19KK0058
2019年10月
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2025年3月
科学研究費助成事業
国際共同研究加速基金(国際共同研究強化(B))
サルカルアラニ モハメドレザ, 坂本 將暢, 久野 弘幸, 坂本 篤史, 柴田 好章
担当区分:研究代表者
配分額:18460000円
(
直接経費:14200000円
、
間接経費:4260000円
)
本研究の目的は、日本型授業研究「Lesson Study」を導入した東アジアと西アジアの対話(ローカルな知見の交流)を通して現代社会における授業実践の質向上の様相とその機能を解明し、国境を超えた「教育実践学」(グローバルな知見の創出)を構築することである。
国際比較という「レンズ」を通して、科学的、工学的、文化的、哲学的に教育実践を問い直し、教育思想の独自性と普遍性を明らかにし、授業実践の質向上の様相とその機能(特に、知識基盤社会におけるよりよい社会の実現への教育実践の使命)と学びの本質(子どもの可能性を最大限引き出す質の高い教育の可能性)を解明する。
本研究の目的は、日本型授業研究「レッスンスタディ(Lesson Study) 」を導入した東アジアと西アジアとの対話(ローカルな知見の交流)を通して現代社会における授業実践の質向上の様相とその機能を解明し、国境を超えた「教育実践学(ペダゴジー)」(グローバルな知見の創出)を構築することである。2023年度においては、海外(西アジア:イラン・トルコ、東アジア:韓国・中国・モンゴル)及び日本においてレッスン・スタディを実施し、各国の授業実践の文化的特徴を検討し、授業の文化的基底を明確にした。その結果を基に、「改善の科学」としてのレッスン・スタディに基づく教育実践学の再評価をすることができた。具体的には、国内・海外の授業記録を分析対象とし、その文化・社会的背景が埋め込まれている授業記録をテキスト(text) (教材・内容・評価・教師観など) として解釈した。国内・海外からもたらされた授業記録へのコメントを結びつけ、異なる文化の「レンズ」や「言語」から見ることを軸にした授業実践学の学術的意義を検討することにより、授業研究の国際的な展開の動向及び研究・実践の焦点や課題が明確になった (新時代の授業研究と学校間連携の新展開 教育方法52 日本教育方法学会編2023年を参照)。
これらの分析の結果として、なぜ日本型授業研究が各国で急速に広まったのか、国内・海外において、ある教育革新のアイデアは速く広がって定着するが、ある教育革新のアイデアは広がるのが遅く、時には全く広がらない要因を明らかにした。日々の授業改善において、授業研究の効果が目に見えるので、どのような学校現場の状況にも応用(applicable)できるためであることが明確になった。日本型授業研究は、海外の教育学者、管理職、教師ほかにとって、その実行方法や利点を容易に説明(illustrate)できることが明らかになった。
本研究の手法は、授業実践における、一つ一つの発言・行動という「ナノ」レベルから出発し、「ミクロ」「メゾ」「マクロ」へとレベルを引き上げながら比較授業分析を行い、「グローバル」レベルでの知見を明らかにしようとするものである。つまり、事実(エビデンス)に基づく比較授業分析を通して「ナノ」「ミクロ」レベルの実証的研究を基に国際的・学際的研究を展開し、理論(theory)と方法論(methodology)、手法(tools)を結びつけるアプローチを解明する取り組みを通し、西アジアと東アジアにおける研究協力が進んできた。具体的には、日本国内および海外(特にイラン・中国・韓国)の学校・大学を訪問し、実際の授業を観察するとともに授業研究データを収集した。韓国・中国やイランにおいて「国境を超えた日本型授業研究の効果」について対面形式によるワークショップを実施し、各国の教育研究者と実践者との交流のなかで「ナノ」「ミクロ」「メゾ」各レベルで新たな知見を得ることができた。また、海外の新たなフィールド調査(中央アジア)のための研究打ち合わせ・調査準備・現地の研究協力者との連絡・打ち合わせ等ができた(例:ウズベキスタン)。並行して、これらの研究成果・分析等のとりまとめを行うことが、「マクロ」レベルのこれからの課題である。
これまでの研究成果を基に、国際雑誌に研究論文を1本投稿して審査は完了段階であり、日本教育方法学会が発行する研究書(教育方法52)第3部を執筆し、出版された(2023年10月)。さらに、国際・国内雑誌への論文投稿の準備、国際学会・国内学会での発表準備等が進んでいる。
今後は、授業記録に基づく比較授業分析の共同研究会を開催し、その成果を踏まえた比較授業分析セミナー等を実施する予定である。こうしたアジア地域のフィールド調査、検討・分析会の成果を基に、授業実践の質向上の複合的構造や授業実践学の基礎理論、授業実践の文化的基底とその質向上の様相ならびにその機能(メカニズム)を解明する。さらに、国際比較授業分析を応用しながらアジア地域以外の諸国との知見の交流することにより、「教育実践学」や「改善の科学」としてのレッスン・スタディの効果を再評価し、新たな研究方法論を構築する。具体的に、次の通りである。
① 各国の教員他へのインタビュー調査など、②レッスン・スタディにおけるローカルな知・理論とグローバルな知・理論の再検討・考察、③よりよい社会の顕在化のための教育実践学の役割の解明と再構築と④授業実践の文化的基底と質向上の様相の解明。
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授業分析の学術的高度化と国際化による授業理論の再構築
研究課題/研究課題番号:19H01627
2019年4月
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2024年3月
科学研究費助成事業
基盤研究(B)
柴田 好章, 坂本 將暢, サルカルアラニ モハメドレザ, 埜嵜 志保, 丹下 悠史
担当区分:研究分担者
本研究は、教育実践現場を教育学的概念の発見ないしは再発見の場として位置付け、教育学の基礎研究としての授業分析の学術的高度化と国際化を図る。〈納得の学び〉や〈協同の学び〉を一人一人の児童・生徒に保証するために、社会的・文化的・歴史的な要因の相対性と普遍性を明らかにし、教育理念や教育技術の体系的な理論を構築することを目的とする。このために、【A1授業論的課題】【A2研究方法論的課題】【B1研究倫理に適合する標準プロトコル開発】【B2授業分析システムの開発】の4つの課題を設定し、研究代表者が、4名の研究分担者や研究協力者とともに、研究を遂行する。
本研究は、教育学の基礎的研究としての授業分析の学術的高度化・国際化を通して、授業理論の再構築を担う新たな学術基盤を形成し、社会的・文化的・歴史的な要因と整合する教育理念や教育技術の理論的体系化を図ることを目的とした。逐語記録にもとづく授業分析による授業諸要因の関連構造の顕在化を試みた。特に問題解決学習における思考の様式を中間項の形式によって明らかにするなどの成果を得た。所属機関の研究倫理審査を受審し、保護者の同意を取り、授業分析をもとに教師教育用の教材を開発し、教員研修や教員養成にも役立てるような仕組みを構築した。授業記録の収集・保管・分析をセキュリティの管理のもとで行える仕組みを整えた。
本研究は、アカデミックな基盤研究として、教育の理論的基盤を強めるための研究として、基礎研究としての授業分析に取り組むものである。授業分析は、応用研究・臨床研究としての授業研究の一部またはその基盤として位置づきながらも、教育学的概念の発見ないしは再発見による理論構築すなわち基礎研究のための役割が求められる。本研究は、授業分析の高度化・国際化により、授業理論の構築に道を開くものであり、この点に学術的な意義がある。併せて、授業分析の方法論、方法、知見を適用した、授業改善、教師教育の発展にも寄与する点で、実践的な意義を有している。
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学校を基盤とする協働型授業研究のための授業構造化システムの開発と評価
研究課題/研究課題番号:19K02998
2019年4月
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2023年3月
科学研究費助成事業
基盤研究(C)
坂本 將暢, 柴田 好章, サルカルアラニ モハメドレザ
担当区分:研究分担者
2019年度から3ヶ年度の計画で、1)授業構造化システムの開発と、2)ソフトウェアの評価を実施する。
具体的には、先行研究の調査、蓄積している授業記録の分析、授業諸要因の解明、授業構造化システムの開発、学校を基盤とする研究の実現を目指した研修に適用したシステムの評価という課題を設定し、それを遂行する。
本研究では、国内の研究者・実践者の協力を得て、本システムの検証を行う。また、Lesson StudyやLesson Analysisに熱心に取り組んでいる海外の研究者・実践者の協力も得て、海外における研修でも本システムが利用できるか否かを検証する。
本研究の目的は、学校で教師が協働して授業研究・授業分析に取り組むためのシステムを開発し、評価することである。
本研究では、授業の発言記録のほかに、それをもとに、教師と児童生徒の発言量、注目語の初出位置、注目語の出現傾向、授業の場面区切り(分節わけ)などを可視化して表示するシステムを開発した。また、教師に着けたスパイカメラ(目の横に着けるビデオカメラ)の映像を手がかりに、教室の中の教師の立ち位置を取得し、その時点で何をしているか(話す・書く・聞く・その他)に分けて表示する方法のプロトタイプ版も開発した。
本研究は、発言記録をもとに授業を構造的に解明する点に意味がある。これにより、教師が鍵となる語の初出を発言した人、全体的な発言のバランス、意識的・無意識的な教師の行動などを手がかりに振り返ることが可能になる。
とくに子どもの発言を再確認することで、発言内容はもちろん、発言の背景や理由を考える契機を教師に与えることができる。
授業研究は教師一人でするには困難な点もあるが、学校全体で協働することで文字起こしや討議を、印象論ではなく、同じデータ・結果を見ながら話すことができる。
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授業研究におけるプロフェッショナル・カルチャーの解明と構築に関する比較研究
研究課題/研究課題番号:17K18689
2017年6月
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2020年3月
科学研究費助成事業
挑戦的研究(萌芽)
千々布 敏弥, 久野 弘幸, サルカルアラニ モハメドレザ
担当区分:研究分担者
本研究は国毎のプロフェッショナル・カルチャー(授業研究文化)を解明することを目的とした。カザフスタンは2013年に授業研究を開始したが、集団の問題解決よりも各成員の力量向上を目指すものとなっている。その成果を示すのに数値指標を使用することが多い。背後には力量に応じたキャリアアップが期待できる教員制度が存在している。日本における授業研究は、組織全体で取り組む問題解決過程という意識が強い。学校全体で使命や目的が共有される場合は強い組織力を発揮するが、そうでない場合は目的が曖昧となり明確な成果が現れない傾向が見られる。このたびの比較分析を通じ日本とカザフスタンの授業研究の特質と課題が明らかになった。
カザフスタンにおける授業研究と日本の授業研究文化を比較することにより、日本の授業研究の特質と課題を明らかにすることができた。
日本の授業研究は諸外国に広まりつつあるものの、国内における授業研究の多様性を包括する枠組みが不在のため、授業研究を取り入れようとする諸外国の教育行政関係者や学校管理職において混乱が生じている。カザフスタンは英国と日本の授業研究手法を参考に独自の手法を開発しているが、それが日本の授業研究を説明する視点を与えてくれた。日本においても授業研究の手法の選択では多くの学校が葛藤しているところであり、学校が授業研究に関する意志決定をするための枠組みを提示することが可能となっている。
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授業研究を通じたプロフェッショナル・キャピタルの構築に関する実証的研究
研究課題/研究課題番号:17H02674
2017年4月
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2022年3月
科学研究費助成事業
基盤研究(B)
千々布 敏弥, 小柳 和喜雄, 久野 弘幸, サルカルアラニ モハメドレザ, 木原 俊行, 木村 優, 柴田 好章
担当区分:研究分担者
本研究はハーグリーブスとフーランによるプロフェッショナル・キャピタルの枠組みに従い、学校の人的資本、社会関係資本、意思決定資本が授業研究を通じて組織的に変容する構造を分析した。
授業研究の手法は様々提案されているが、いずれの手法においても鍵となるのは教師の省察の深さと教師エージェンシーである。本研究では教師集団がエージェンシーを発揮することと省察を深めることが相互に影響し合う状況を意思決定資本とし、社会関係資本、人的資本と循環しながら拡大している枠組みを設定し、教育委員会の指導行政を通じて学校のエージェンシーが発揮され、社会関係資本が増大すると同時に校内の省察水準が深まる事例を複数分析した。
授業研究については教授学に焦点を当てたものと、それを技術的省察に偏ると批判して子どもの学びに焦点を当てたものに大別することができる。これまではこの二つの立場は対立概念でとらえられていたが、本研究の枠組みを使用するといずれの立場においても省察水準を深めることが重要と解釈可能になる。
また、教育委員会の指導行政は学校の主体性を阻害するという文脈で批判する先行研究が見られるところだが、本研究の枠組みを使用すると、学校のエージェンシーと省察を促進する文脈において教育委員会の指導行政は有効に働く、と解釈することが可能になる。
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イスラーム思想のなかの「子ども」-ローカルな実践と思想にみる発達観の解明
研究課題/研究課題番号:16K13546
2016年4月
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2020年3月
科学研究費助成事業
挑戦的萌芽研究
服部 美奈, 西野 節男, サルカルアラニ モハメドレザ, DANISMAZ Idiris
担当区分:研究分担者
期間全体の研究成果は以下の4点である。第一に、イスラーム教義のなかのバリフ(アラビア語ではブルーフ)という概念が、子どもの発達段階、特に子どもと成人を隔てる概念として重要であることが再確認された。第二に、各地域で行われる通過儀礼は、実施される時期や意味づけにおいて異なっている。第三に、各地域に共通して、思春期(第二次性徴を迎えてから結婚に至るまでの時期)の子どもへの対応は、イスラームの教義と子どもが当該社会で置かれた社会状況との間にアンビバレントな状況が生まれている。第四に、思春期の扱いにより、教育や結婚、交際範囲、服装に異なる解釈が生まれ、教義とのズレもみられた。
イスラームは、独自の人間観を有する一つの思想体系であり、独自の発達観・教育観を有する。ここでいう発達観・教育観は固定的なものではなく、ローカルな文脈のなかで解釈・実践され、生成される動態的なものである。研究は、イスラーム思想のなかの「子ども」に焦点をあてることを通して、イスラームにおける発達観・教育観を明らかにした点に学術的意義があり、日本におけるイスラーム教育思想研究の不在に対し、新たな視点を提供するものである。同時に本研究は教育という観点からイスラーム理解に寄与する点で社会的意義を有する。
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授業実践学の文化的基底に関する比較開発研究
研究課題/研究課題番号:15H03477
2015年4月
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2020年3月
科学研究費助成事業
基盤研究(B)
サルカルアラニ モハメドレザ, 石井 英真, 坂本 將暢, 服部 美奈, 久野 弘幸, 坂本 篤史, 柴田 好章, 中島 繁雄
担当区分:研究代表者
配分額:18070000円
(
直接経費:13900000円
、
間接経費:4170000円
)
本研究の目的は、国際比較授業分析の方法を開発しながら、グローバルな現代社会におけるペダゴジーの文化的基底の様相とその機能を解明することであった。各国のペダゴジーにおけるローカル知・理論とグローバル知・理論の検討・比較の結果を基に、学習デザイン、授業観、教授法、教師観、教授技術などを基礎とした研究成果から、授業実践の背後にある心象、価値観、信念や習慣化された行動様式、およびそれらの相互関連の構造を明確にした上で、ペダゴジー・コレクトネスの構築を検討し、よりよい社会の顕在化のためのペダゴジーの働き・役割と文化的基底(cultural foundation of pedagogy)を解明した。
①宗教、言語、教育制度、学校文化の異なる様々な国を研究対象としたことで、トランスカルチャルな問題を明らかにできる。②実証的な検証を基礎にした比較開発研究、特に国際比較授業分析にある。③教えるということは「何であるか・何であるべきか」を国際的なディスコースと日本的なディスコースを結びつけることができる。
具体的に、国境を越えてトランスナショナル・ラーニングの解明に向かう基礎を築くところに、本研究の意義はある(ローカル知とグローバル知が結びつく)。例えば、アクティブ・ラーニングの学校文化の創造や知識の活用は、日本において焦眉な教育課題であるが、これは形を変えて他国にも存在している。
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比較授業分析によるペダゴジカル・コレクトネスの解明と構築
研究課題/研究課題番号:15K13189
2015年4月
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2018年3月
科学研究費助成事業
挑戦的萌芽研究
サルカルアラニ モハメドレザ, 水野 正朗, 坂本 篤史, 柴田 好章, 渡部 竜也
担当区分:研究代表者
配分額:3380000円
(
直接経費:2600000円
、
間接経費:780000円
)
本研究の目的は、国際比較授業分析という研究手法を通して、授業の文化的構造を解明し、ペタゴジカル・コレクトネスの概念を解明することであった。具体的に、授業分析を通して、現場教師と研究者の授業の分析視点や評価基準(レンズ)の違いがどこにあり、それはなぜ生じるのか。現場教師の中にもレンズの違いが見られるが、どの点に違いがあって、それらの違いはなぜ生じるのか。研究者間にも違いが見られるが、それらはどのような違いがあって、それらの違いはなぜ生じるのか、その一端を明らかにすることができた。
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日本型授業研究の独自性とその再文脈化に関する開発研究
研究課題/研究課題番号:26285182
2014年4月
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2020年3月
科学研究費助成事業
基盤研究(B)
的場 正美, 金津 琢哉, 小林 宏己, 久野 弘幸, 倉本 哲男, 安達 仁美, サルカルアラニ モハメドレザ, 副島 孝, 坂本 篤史, 田上 哲, 大野 栄三, 深澤 広明, 柴田 好章, 杉本 憲子, 吉田 成章, 田村 知子, 原 宏史
担当区分:研究分担者
本研究は、日本型授業研究の独自性を解明することを目的としている。
研究成果として次の結果が得られた。(1)日本型授業研究の類型を3類型に区分し、その段階の特徴を明らかにした。 (2)歴史的には、1990年代から日本の授業研究は、科学志向から教師と研究者の協働研究に移行している。(3)カリキュラム・マネジメント研究において、授業研究が組み込まれている。(4)日本の授業研究における座席表授業案やカルテが子ども理解と深い関係がある。(5) 「社会科も初志をつらぬく会」の授業研究においては、授業計画・実施・評価において、上田薫の思想が基盤にある。
世界各国で多様に展開されている授業研究を背景として、日本型授業研究の理論、理念、方法、手法の独自性を解明することは、今後の日本の授業研究の展開にとって実践的・学術的意義がある。教育効果を測定する諸外国の測定ツールに対して、日本のカルテ、座席表などのツールは子どもの質的理解である。子どもの人間関係、家庭環境、個性を視野に入れた授業計画と実践の背後にある教師の思考体制の解明は、今後の個を重視する授業実践にとって意義がある。
学術的には、授業研究は、事例の解釈にともなうアブダクション、パラ言語、分析単位、叙述形式の開発等の研究に基礎データと仮説を提供できる利点がある。
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教育専門職の授業洞察力の向上のための授業過程可視化技法の体系化
研究課題/研究課題番号:25282052
2013年4月
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2018年3月
科学研究費助成事業
基盤研究(B)
柴田 好章, 坂本 將暢, 丹下 悠史, サルカール アラニ モハメッド レザ, サルカール アラニ モハメッド レザ, 坂本 篤史, 水野 正朗, 副島 孝, 中島 淑子, 中道 豊彦, 埜嵜 志保, 須田 昂宏, 付 洪雪, 丹下 悠史, 田中 眞帆, タン シャーリー, 鈴木 稔子, 胡田 裕教, 深谷 久美, 野村 昂平, 花里 真吾
担当区分:連携研究者
教育専門職の主要な力量である「授業洞察力」の向上に資するよう、授業過程の可視化技法を体系化することを目的として、(1)授業洞察力の構造の明確化、(2)既存の授業分析手法の改良と可視化手法の新規開発、(3)授業過程の可視化技法のシステム化、(4)授業過程の洞察(気付き、価値付け、説明)における可視化技法の効果の検証、(5)授業洞察力への転移の効果の検証に取り組んだ。
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教師エージェンシーを通じた批判的リフレクションによる学校組織開発の学際的研究
2024年4月
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2029年3月