科研費 - 長濱 智生
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研究課題/研究課題番号:23K03487 2023年4月 - 2026年3月
科学研究費助成事業 基盤研究(C)
村田 功, 長濱 智生, 森野 勇, 中島 英彰
担当区分:研究分担者 資金種別:競争的資金
メタンは温室効果ガスであるとともに大気化学的にも重要な気体であるが、年々の増加率の変動が大きくその要因に不明な部分が多くある。発生源としては人為起源が多いが、メタン生成菌を介した発生の比率が高いため、気温などの年々変動の影響を受ける。それぞれの発生源の寄与率を推定する上で同位体比の変動が重要な情報源となる。本研究では、フーリエ変換型赤外分光計(FTIR)を用いた地上分光観測のスペクトルからメタン同位体を導出する手法を開発し、これをつくば・陸別・南極昭和基地の観測データに適用してその時空間変動からメタン発生源の分布や経年変化を推定する手法を確立することをめざす。
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赤外分光法による大気中イソプレンの動態と大気質への影響の長期変動に関する研究 国際共著
研究課題/研究課題番号:21H03589 2021年4月 - 2024年3月
科学研究費助成事業 基盤研究(B)
長濱 智生, 村田 功, 森野 勇
担当区分:研究代表者 資金種別:競争的資金
配分額:16640000円 ( 直接経費:12800000円 、 間接経費:3840000円 )
都市域とその周辺において大気汚染物質の増加による大気質の低下は住民の健康影響を引き起こす。そのため、それらを抑制し、大気質を保全することは今日的な課題である。
なかでも、イソプレンは大気中の酸化過程により、対流圏オゾン等の大気汚染物質を生成する。本研究では大気中のイソプレン濃度を太陽光赤外吸収スペクトル観測データから解析する手法を確立し、対流圏オゾン等の大気汚染物質と併せて上空のイソプレン濃度の過去20年間以上にわたる長期動態を世界で初めて観測的に明らかにする。さらにイソプレンと大気汚染物質の濃度変動の関係とその要因を化学輸送モデルも活用して解明し、大気質の評価と将来予測の精緻化等に貢献する。 -
南北両極から探る高エネルギー粒子が大気環境に与える影響の観測的研究 国際共著
研究課題/研究課題番号:19H01952 2019年4月 - 2022年3月
科学研究費助成事業 基盤研究(B)
水野 亮, 田中 良昌, 野澤 悟徳, 長濱 智生, 中島 拓
担当区分:研究分担者 資金種別:競争的資金
南極の昭和基地と北極のEISCATサイトからの同時観測により、下部熱圏から成層圏の地球大気環境に関わる分子の変動要因を理解する。特に、高エネルギー粒子の降り込みの影響を他の変動要因と分離するため、多周波超伝導ミリ波分光計を実用化し、複数の分子種の同時観測を可能にする。また、降り込み電子の密度やエネルギースペクトルの情報を得るため、既存のレーダーやイメージングリオメターを用いた観測を進めるとともに、計画後半では新たにスペクトルリオメータでの観測を実施し、イオン化学モデルを含んだ電離圏・熱圏シミュレーションモデルとも比較することにより、高エネルギー粒子降り込み時に生起する素過程を明らかにする。
本研究は、南極域昭和基地と北極域EISCATトロムソサイトの南北両極域からの同時観測により、高エネルギー粒子降り込み(EPP)に伴う成層圏から下部熱圏の地球大気環境への影響を観測的に理解することを目指し、新たな技術を導入し観測情報の範囲拡大とデータ質向上をめざした。
コロナ禍により北極域に渡航できず観測研究すべてを計画通りに進めることはできなかったが、南極域昭和基地では多周波ミリ波分光計、スペクトルリオメータを設置し観測を開始した。特に独自開発の導波菅型周波数マルチプレクサを用いた多周波ミリ波分光計は、地上からのO3, NO, CO, HO2の多輝線ミリ波同時観測を世界で初めて実現させた。
北極および南極では、太陽活動に伴い高エネルギーの荷電粒子が地球に降り込んでくる。こうした高エネルギー粒子は空気分子を電離して窒素酸化物を増加させ、オゾンを破壊するなど地球環境に影響を与える可能性が示唆されている。本研究は、観測データが乏しい地球大気の反応を新たな技術により観測的に明らかにすることを目指したものである。電波信号を周波数帯毎に分離して複数の超伝導受信機に分配し、それらの出力を再合成することで4種類の異なる分子の変動を同時に観測できる装置を開発・実用化し、世界初の地上からのミリ波多輝線大気観測を実現させた。この技術は電波天文学などの他分野のミリ波サブミリ波分光にも応用が期待できる。 -
南米SAVER-Net観測網を用いたエアロゾル・大気微量気体の動態把握 国際共著
研究課題/研究課題番号:18KK0289 2018年10月 - 2024年3月
科学研究費助成事業 国際共同研究加速基金(国際共同研究強化(B))
水野 亮, 西澤 智明, 神 慶孝, 弓本 桂也, 長濱 智生, 秋吉 英治, 杉田 考史
担当区分:研究分担者 資金種別:競争的資金
2021年度は、年度内の南米出張を期待していたが、オミクロン株感染の拡大により再び世界的に困難な状況となり、結局我慢の一年であった。また、相手国内においても国内移動制限があり、現地研究者のみでも行える修理もままならない状況で、エアロゾルライダーに関しては観測停止を余儀なくされ、新たな観測データの蓄積や解析を行うことはできなかった。一方、コロナ禍以前に取得したデータについては解析を実施しデータセット化した。また、モデル同化研究の推進を念頭に、モデル同化用の測定パラメタおよびそのフォワードモデルの検討、およびデータ同化用の入力(観測)データセットの構築を既存のSAVER-Netデータを用いて行った。
オゾン観測装置群についても、同様にコロナ禍によりミリ波分光計の修理が実施できず、観測システムの再稼働には至らなかった。オゾン(差分吸収)ライダーについては、相手国の担当研究者が一身上の都合でスウェーデンの研究機関に移籍し研究グループから離脱してしまい、観測できる人材が不在となった。新たな人材が見つかるまでは単一波長のレーリーライダーとして気温の鉛直分布観測を行うこととした。一方、ブリューワ分光計、紫外線放射計、雲カメラなどの紫外線関連の観測装置は定常的に運用できており、特にブリューワ分光計観測結果はEuBrewNetに提供した。
また、SAVER-Netでの次期重要課題である森林火災由来のスモークの観測研究において重要な役割を果たすと期待しているボリビアとの共同研究をできる範囲で進めた。前年度に試作し国内での試験観測を行った偏光測定モジュールについて、今年度は現地での運用体制も考慮して装置故障の抑制とSN向上を図り、試作機の遮光性を高める改良を施して最終版の実機を作成した。同モジュールは2022年度中にボリビアに送付し、相手国の現有ライダーに取り付けて偏光観測を開始する予定である。
研究実績の概要でも述べたように、2021年度は2020年度に引き続き世界的なコロナ禍により南米に出張することができず、計画通りに研究を進めるのが困難な状況であったため、「計画よりやや遅れている」とした。
エアロゾルライダーおよびミリ波オゾン分光計を用いた定常観測は本計画で重要な位置を占める。しかしながら、相手国側が設計製作した部分で観測所要員に対する依存性が高く種々の問題の元凶となっていた。そこを東アジアに展開しているメンテナンスフリーのAD-Netの設計思想に基づき、光学系システムを抜本的に改良する検討を進めてきた。また、ミリ波分光計に関しては、日本国内のメーカーとの議論をもとに冷却水チラーの故障原因を究明し早急に再稼働させる手筈を整えてきた。それらの対策を具現化するのが、2020年度以来の課題であったが世界的なコロナ禍により2021年度も足踏みせざるを得ない状況となった。さらに、エアロゾル関係では、火山灰の輸送モデル開発を担当していた相手国側のデータ解析グループのリーダーが他界し、オゾン関係ではオゾン観測用差分吸収ライダーのオゾン吸収を受ける波長のレーザーであるエキシマレーザーを運用できる担当研究者が、一身上の都合でスウェーデンの研究機関に移籍し、アルゼンチン南端部の観測体制が急速に弱体化した。親機関であるDEILAPが2022年度から新たな技術職員を2名補充する予定であるなど、南端部のオゾンホール観測の重要性を理解し本計画に協力的であるが、相手国の経済的な事情からなかなか厳しい課題を抱えている。相手国側のシニア研究者が薄くなった一方、若手の研究者が次のリーダーとなるべく共同研究をまとめる方向に尽力し、新たな大学院生の成長も見られるようになっており、そうした若い世代とともに、残り期間で研究の遅れをとりもどしたい。
まずは2022年度内(秋頃を予定)にアルゼンチンに渡航し、故障しているエアロゾルライダー、ミリ波分光計の修理を行い、観測を立ち上げてあらためて軌道に乗せることが最優先課題だと認識している。幸い、国内外においてウィズコロナに日常生活もシフトしてきており、各国の水際対策も緩和される方向にあるので今年は必ず実現させたい。あとは相手国側の体制の強化である。病気や一身上の理由などで相手国側のキーパーソンが2人減少した。一方で、ここ数年の間に、DEILAPの研究者がアルゼンチン気象局にモニタリング観測関係の責任者として移動し、観測網の組織化やネットワークの改善に期待が持てる。また大陸南端部の観測所では、新たに2人の技術者を雇用し、現地の運用体制の強化を進めている。また、観測の合間に現地の大学院生に実機を用いてライダーの原理、構造、運用方法を指導するなど、次世代の研究者の育成が進んでいる。2022年6月から7月にかけてJICAの終了後評価が予定されているが、その機会に日本が資金投与した観測網の維持のための体制強化を関係機関に提言していきたいと考えている。
データ解析およびモデル関係の研究は順調に進捗している。研究を進める中で、いくつか想定外の結果もでてきたが、それらを新たな課題として原因を追求し、解決することで着実に成果をあげている。データ同化の準備も進んでおり、あとは同化すべき現地の観測データを取得するところが最大かつ最重要の課題である。
観測空白域である南米地域での観測網を充実し、地球観測衛星の地上検証に貢献することも本課題の目標の一つとなっている。この実現のためには、より安定・頑強な観測システムへの移行や持続可能な観測体制の確立が重要であることがコロナ問題により浮彫となった。そのための観測システム・体制の改善方法の考案とその実現も重要な課題と認識し取り組んでいく。 -
太陽極大期の高エネルギー粒子の降込みが極域中間圏大気に及ぼす影響の観測的研究
2011年4月 - 2015年3月
科学研究費補助金 基盤研究(B)
水野亮
担当区分:研究分担者
太陽活動が地球大気に与える影響をとらえるため、南極昭和基地において3年間にわたるミリ波分光モニタリングを実施した。その結果、中間圏から下部熱圏の一酸化窒素(NO)が不定期に数日間で増加する短期変動と極夜前後に4ヶ月程度にわたり増加する季節変動を示すことを明らかにした。短期変動はそれまで注目されていた太陽陽子よりも磁気嵐の発生に伴い加速される放射線帯の高エネルギー電子が主要な役割を担っていること、季節変動は光化学反応と高エネルギー電子の降り込みが要因となっていることを観測的に明瞭に示した。
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近赤外光スペクトラムアナライザによる温室効果ガスカラム濃度の高精度計測手法の開発
2011年4月 - 2014年3月
科学研究費補助金 基盤研究(B)
長濱智生
担当区分:研究代表者
多地点に展開可能な小型近赤外光スペクトラムアナライザによる温室効果ガスカラム平均濃度観測手法の開発を行った。観測システムの分光特性評価を行ったところ、スリット付き光ファイバを使うことで所望の波長分解能を達成することがわかった。また、観測スペクトルからカラム濃度を解析するソフトを開発し、二酸化炭素に対しては、SN比が500のスペクトルから精度1%以下でカラム濃度が得られるようになった。また、本観測システムと高分解能FTIRとの同時比較観測を行い、本観測システムではスリットの回転の影響によりスペクトル強度が約3%ゆらぎ、測定精度が十分でないことがわかった。今後、固定式スリットへの変更等を検討する。
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南米最南端でのオゾン層破壊分子の総合観測によるオゾンホールの中緯度帯への影響研究
2008年4月 - 2013年3月
科学研究費補助金 基盤研究(B)
長濱智生
担当区分:研究代表者
南極オゾンホール内の低オゾン濃度空気塊が中緯度地帯まで到来することにより中緯度地帯のオゾン層に与える影響を評価するために、地上ミリ波分光計を新たに南米最南端近くのリオ・ガジェゴスに設置してオゾン等の高度分布の連続観測を開始した。5分間積分で取得されるオゾンスペクトルからオゾンの高度分布を得た。また、同観測施設にあるオゾンライダー等との同時相互比較観測を通じ、ミリ波オゾンデータの信頼性を検証した。
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準ミリ波水蒸気分光放射計による中層大気水蒸気・オゾンの観測的研究
2006年4月 - 2010年3月
科学研究費補助金 基盤研究(B)
水野亮
担当区分:研究分担者
オゾン破壊に関与するHOxのソースであり大気の放射バランスでも重要な役割を果たす成層圏水蒸気の鉛直分布を計測するため、HEMT増幅器とデジタルFFT分光計を用いた22GHz帯マイクロ波分光計を開発した。冷却増幅器を用いることなく常温で運用可能なため、軽量で可搬性に優れている。十分な感度を有し、対流圏での吸収により平地からの観測が困難であった成層圏水蒸気の昼夜を通した連続観測を可能にした。
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チリ共和国アタカマにおける成層圏・中間圏の水蒸気同位体およびオゾンの観測的研究
2006年4月 - 2010年3月
科学研究費補助金 基盤研究(B)
水野亮
担当区分:研究分担者
標高4800mのチリ共和国アタカマ高地に180GHz帯から260GHz帯の高感度ミリ波分光観測装置を設置し、中層大気中の水蒸気およびオゾン破壊関連物質の新たな観測拠点を整備した。水蒸気同位体H_2^<18>Oの4カ月にわたる連続観測を遂行しAURA/MLSのH_2Oデータと比較することにより、アタカマ高地上空で春から夏にかけてこの高度で^<18>Oの同位体偏重度δ^<18>Oが増加していることを見出した。
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磁気圏加速電子との相互作用による大気微量分子の組成変動機構の観測的研究
2006年4月 - 2009年3月
科学研究費補助金 基盤研究(B)
長濱智生
担当区分:研究代表者
太陽活動に伴う高エネルギー粒子の地球大気への侵入による地球の中間圏大気微量分子の組成に与える影響を観測的に明らかにするために、高周波数分解能デジタル分光計を搭載したミリ波大気放射分光観測装置を用いて、中間圏オゾンおよび二酸化窒素(NO2)の連続観測を行った。その結果、250 GHz帯でのNO2スペクトルの連続観測に初めて成功し、これらが中間圏に存在するNO2から放射されたものであることを示した。
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対流圏OHラジカルの非破壊定常観測のためのTHz帯ヘテロダインHEB検出器の開発
2005年4月 - 2007年3月
科学研究費補助金
前澤裕之
担当区分:研究分担者
新超伝導素材NbTiNのナノ細線を集積した2次元準光学HEBミクサー素子の製作プロセス1をほぼ確立した。またMgO(100)結晶超半球レンズを製作した他、素子の冷却マウントホルダーや、IF信号を取り出す誘電体基板回路、オフセット放物面鏡の製作を行った。一方MgO基板は1-2年のオーダーで表面が劣化することが分かった。
HEBミクサー素子を、実際にワイヤーボンダーで結線してマウントし、冷却サイクルや機械式冷凍機の振動に(実用に)対する耐久試験を行った。その結果、素子IV超伝導特性は劣化することなく、良好な特性を維持していた。また、冷却サイクルや振動に対し、誘電体レンズや誘電体基板は破損せずに良好な状態を維持しており、またワイヤーも、断線等も生じず、冷却時の収縮率の違いに対して十分耐久性を持つことを確認できた。
200GHz帯の信号を2次元方向に挿引し、その応答から推定したビーム形状が、準光学マウントの設計と矛盾の無いことを確認した。また素子は周辺の300Kの輻射に対してボロメトリックな応答を見せることが分かった。 -
チリ熱帯域における成層圏・中間圏の水蒸気同位体分子のミリ波同時観測
2003年4月 - 2005年3月
科学研究費補助金 基盤研究(A)
水野亮
担当区分:研究分担者
本研究は、成層圏において20年あまりの間年率1%程度で増加し1990年代末より減少傾向に推移した水蒸気の振る舞いとその増減のメカニズムを明らかにするため、2周波ミリ波分光放射計を新たに開発・製作し、南米チリ共和国の4800mのアタカマ高地に設置して水蒸気分子の同位体比の連続測定を行うことを目的とした。
2年間の研究期間を通し、(1)2周波同時分光観測装置の製作、(2)チリ共和国ラス・カンパナス天文台におけるH_2^<18>O観測と解析アルゴリズムの改良、(3)アタカマ高地におけるミリ波水蒸気観測施設の立ち上げと観測を行った。
(1)に関しては、多周波同時受信の基礎技術のひとつであるサイドバンド分離型超伝導受信機の開発実験と2つの超伝導受信器の共通冷却システム、2系統の独立した光学系と光学系切り替えのための駆動鏡制御系の製作を行い、観測システムを組み上げた。装置トラブルのため研究期間内のアタカマ高地での2周波同時観測はできなかったが、実験室において観測システムの基本動作の確認は終了している。(2)H15年9月からH16年2月まで連続してH_2^<18>Oのモニタリング観測を行ない、解析アルゴリズムを改良した。H_2^<18>Oスペクトルは強度がアンテナ温度50mK程度と微弱なため、これまで単発的な観測例はあったが、本観測のような連続的観測はなく、H_2Oと同様の季節変動を示すことが明かになった。(3)200GHz帯のH_2^<18>O、オゾンに加え、183GHz帯のH_2Oスペクトルを取得に成功した。200GHz帯での大気の光学的厚みは0.05程度と極めて良好であったが、183GHzでは標高4,800mでも0.3-0.5程度であった。高地作業と不測の装置障害のため当初計画よりも観測装置の立ち上げが遅れたが、現時点では基本的な問題は解決されている。本研究により、アタカマ高地における水蒸気観測の基盤が確立された。