科研費 - 柳原 光芳
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人口減少に対応するサステナブルな社会インフラ整備に関する理論研究
研究課題/研究課題番号:23K01439 2023年4月 - 2027年3月
科学研究費助成事業 基盤研究(C)
篠崎 剛, 金子 昭彦, 濱田 弘潤, 柳原 光芳, 加藤 秀弥
担当区分:研究分担者
急速に進行する少子高齢化と人口減少,財政赤字の拡大,経済成長率の長期的停滞は,我々の生活に不可欠な社会インフラ維持・整備の持続可能性に深刻な問題を投げかけている。1 人当り社会厚生や生活の質を維持するために,望ましい社会インフラの在り方を解明し,既存インフラ維持と新規インフラ整備を,限られた財政制約下で効率的に実現することは,喫緊の経済課題である。本研究では,第一に,財政制約下での全体最適化を踏まえた社会インフラ維持・整備の理論的枠組みを構築し,第二に,静学最適化の議論を超えて,資本形成の観点からインフラ維持・整備を捉えた,動学的経済成長モデルの構築を目指す。
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研究課題/研究課題番号:19K01679 2019年4月 - 2023年3月
科学研究費助成事業 基盤研究(C)
篠崎 剛, 金子 昭彦, 濱田 弘潤, 柳原 光芳, 加藤 秀弥
担当区分:研究分担者 資金種別:競争的資金
配分額:4030000円 ( 直接経費:3100000円 、 間接経費:930000円 )
本研究では,政治体制の違いが経済成長に与える影響について,経済成長経路上での政治体制(独裁主義から民主主義へ)の変容の在り方とその望ましさを明らかにするものである。そのため,初めの二年間において,経済成長モデルに基づく政治制度の変容の分析および政治家の振舞いに行動経済学的視点を導入した分析を行ったうえで,最終年度にこれらを統合し,より現実的な政策提案を行うことを目指す。
本研究の目的は,政治体制の違いが経済成長に与える影響についての新たな理論的枠組みを構築し,実効性のある政策を提示することにある。2021年度は,これらに関する論文のサーベイを続けただけでなく理論的拡張による分析を行った。
Aihara and Shinozaki (2021) は,本研究を進める中で着想を得て生まれた一つの成果である。議院内閣制を採用する日本において,内閣自体が頻繁に変わるという政治的不確実性がある。また,議員に対する政治的ロビー活動も頻繁に行われている。このような中で公共投資が望ましい水準で行われるかどうかについての研究を,Persson, Roland and Tabellini (1997) の議院内閣制の下での公共支出vs.大統領制の下での公共支出の効率性についての研究を深化させる形で行った。分析の結果,これまで先行研究がDarby, et.al., (2004) およびBohn (2007) によって,政治的不確実性が高ければ政府投資が減少し,政府消費が非効率に増加することを明らかにしてきた一方で,本分析では,そこに逆のベクトルであるロビー活動を加えた場合に,これが緩和される可能性を理論的に示し,政治的不確実性とロビー活動の共存による政治的意思決定の歪みの緩和が日本において生じているかを実証的に明らかにできた。
現在は,さらに昨年から行っている租税競争下での議院内閣制vs.大統領制に関する研究を進めているだけでなく,研究代表者および研究分担者によって,派生した研究(Hamada, Kaneko and Yanagihara (2021), 足立・篠崎・齋藤 (2021),加藤・柳原 (2022),濱田 (2022),柳原・篠崎 (2022),塩津・菅原・柳原 (2022))が生まれている。
昨年度は本来であれば研究最終年であり,当初は日伊ワークショップを行うことも考えていたが,新型コロナウイルスの蔓延により十分に集まることができず,1年間の延長申請を行った。これは学会などが対面再開され始めている令和4年度に打ち合わせを重ね,これまで蓄積してきた研究成果をまとめていく形とする。
本年度の研究方針は,最終年度として,共有してきた研究のサーベイだけでなく,これまで分析してきたものに基づき,経済成長モデルと政治制度の接合をさらに進める。そのために議院内閣制の下での経済成長モデルを使ったMarsiliani and Renstrom (2007) およびAboal (2020)を大統領制を導入した場合へ拡張すること,および,Alesina and Passarelli (2019) による行動経済学の知見を,政治経済モデルに組み込むことで分析をまとめていくこととする。 -
地域の期待に応える地域金融モデルの構築-災害耐性、人口減少、フィンテック
研究課題/研究課題番号:19H01505 2019年4月 - 2022年3月
科学研究費助成事業 基盤研究(B)
家森 信善, 永田 邦和, 北野 重人, 小川 光, 橋本 理博, 奥田 真之, 近藤 万峰, 藤原 賢哉, 栗原 裕, 濱口 伸明, 柳原 光芳, 播磨谷 浩三
担当区分:研究分担者 資金種別:競争的資金
配分額:17160000円 ( 直接経費:13200000円 、 間接経費:3960000円 )
リレーションシップバンキング研究をベースに、①頻発する自然災害への対応、②人口減少への対応、③フィンテックの活用、といった3つの論点を切り口にして、地域金融機関に対するアンケート調査を実施し、新しい銀行モデルのあるべき姿、それを実現するための経営・組織上の課題、および、そうした新しい銀行モデルにおける銀行行政の課題について分析し、政策当局や金融機関経営者に対して有効な政策提言を行う。
本プロジェクトでは、リレーションシップバンキング研究をベースにして、①頻発する自然災害への対応、②人口減少への対応、③フィンテックの活用、といった3つの論点を切り口にして、新しい銀行モデルのあるべき姿、それを実現するための経営・組織上の課題、および、そうした新しい銀行モデルにおける銀行行政の課題について分析を進めた。その結果、こうした課題に応えるためには事業性評価の能力を高めることが必要であり、そのための金融機関の行動を促すような政策実施が不可欠であるとの結論を得た。
地域金融機関には、伝統的な決済サービスや資金の提供者としてだけではなく、地方創生の担い手としての役割が強く期待されているが、それに相応しい組織形態や規制の在り方についての研究は発展途上にある。本研究では、様々なアンケート調査を実施して、地域金融の関係者(地域金融機関職員、支援機関としての税理士、支援対象である地域中小企業)の意識を浮き彫りにした。事業性評価の能力向上の地道な取り組みがカギになることを示唆する結果を得ており、これは、現在の金融行政や地域金融機関経営の取り組みの道しるべとなる。 -
教育の私的供給・公的供給下における政府の教育制度設計と人的資本蓄積
研究課題/研究課題番号:17K03762 2017年4月 - 2021年3月
科学研究費助成事業 基盤研究(C)
柳原 光芳
担当区分:研究代表者
配分額:3380000円 ( 直接経費:2600000円 、 間接経費:780000円 )
本研究の研究の柱は,教育に関わる混合寡占市場モデルの構築,人的資本蓄積モデルの構築と,外部性の研究の3つで,それらを統合することを最終目的としていた。
そのうち,寡占市場モデルに関しては,公的サービスの供給に関する政治経済学的分析を行い,また外部性の研究に関しては公的中間財が持つ生産外部性の研究と,日本の地方財政を踏まえた水平的な財政競争のモデルの構築を行った。
これらを統合する形での教育制度設計のモデルの構築には至っていないものの,その基礎となる研究については一定の成果が得られているものといえる。
学術的意義は,公的サービスの供給のありかたに関する理論分析を発展させた点と,既存研究の水平的な財政競争のモデルの発展を試みた点の2つがあげられる。これらを今後統一することで,水平的な競争環境下で公的サービスをどのように供給すればよいか,またその際に外部性が存在するときにはどのように調整が必要となるか等を明らかにすることができる。
このような学術的意義は,現実の経済に応用する,特に教育システムを構築する上で活かされる。教育という社会に広く外部性を有する公的サービスを,地域間の競争が潜在的に存在する際に国としてどのようなシステムにすべきかを考えることができるところに,社会的意義が認められる。 -
現代日本社会が必要とする金融経済教育と金融リテラシーの体系化の試み
研究課題/研究課題番号:15K13025 2015年4月 - 2017年3月
科学研究費助成事業 挑戦的萌芽研究
家森 信善, 上山 仁恵, 北野 友士, 柳原 光芳
担当区分:研究分担者
配分額:3380000円 ( 直接経費:2600000円 、 間接経費:780000円 )
わが国では金融経済教育や金融リテラシーの向上に向けた政策的な取り組みが進み始めたが、金融経済教育や金融リテラシーを巡る研究はようやく端緒についたばかりであり、証拠に基づいた議論を行うための基礎研究が不足している。そこで、我々は、経済の様々なセクターに焦点を当てて、金融リテラシーの水準やこれまでに受けてきた金融経済教育の内容、さらには、金融行動の特徴などについての複数の調査を行い、その結果に基づいて様々な政策的な対応を提言した。
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義務教育・高等教育における中央政府・地方政府の役割分担に関するマクロ動学分析
研究課題/研究課題番号:26380360 2014年4月 - 2017年3月
科学研究費助成事業 基盤研究(C)
柳原 光芳
担当区分:研究代表者 資金種別:競争的資金
配分額:3380000円 ( 直接経費:2600000円 、 間接経費:780000円 )
本研究は,中央政府と地方政府があるところで,公教育を中央政府によって集権的な形で行う,あるいは各地方政府によって分権的な形で行うことで,人的資本の蓄積を通じて経済成長率が決定されるモデルの構築を行った。その際,現時点の経済厚生と,将来の経済厚生につながる成長に一定のウエイトを置く政府の最大化問題と考えた。そこでは,中央政府がより成長志向にあるとすると,中央政府から地方政府への財政移転の額がより小さくなることが示された。これは地方政府が成長志向であると,より自立的な財政運営を行うことを示唆している。
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研究課題/研究課題番号:23243048 2011年11月 - 2014年3月
科学研究費助成事業 基盤研究(A)
家森 信善, 栗原 裕, 小川 光, 柳原 光芳, 打田 委千弘, 園田 正, 播磨谷 浩三, 近藤 万峰, 浅井 義裕, 冨村 圭, 清水 克俊
担当区分:研究分担者 資金種別:競争的資金
配分額:24310000円 ( 直接経費:18700000円 、 間接経費:5610000円 )
地方経済の疲弊が深刻である。本研究プロジェクトでは、地域経済の競争力回復のために必要な地域経済政策の学術的基盤を構築することを目指した。具体的には、地方公共団体の中小企業支援施策について、愛知県の中小企業に対するアンケート調査をベースにして研究を行った。この成果は、家森信善編『地域連携と中小企業の競争力』(中央経済社 2014年)としてまとめることができた。さらに、地域金融機関の中小企業への支援の在り方に関して、地域金融機関の支店長に対するアンケートを実施した。この調査の結果からは、地域金融機関の人事評価の仕組みが新しい環境に対応して変化していないことが明らかとなった。
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研究課題/研究課題番号:23252008 2011年4月 - 2016年3月
科学研究費助成事業 基盤研究(A)
薛 進軍, 園田 正, 臼井 恵美子, 萬行 英二, 安達 貴教, 厳 善平, 戴 二彪, 本台 進, 柳原 光芳, 南 亮進, , , , , , , 杉田 伸樹, 岑 智偉
担当区分:研究分担者
配分額:49140000円 ( 直接経費:37800000円 、 間接経費:11340000円 )
中国は高度成長を続け,世界第二の経済大国となった一方で,巨大な所得格差が存続し,住民のデモや少数民族の暴動も頻発し,社会が不安定な状態にある。また,安い労働力で支えられた高度成長は,急速な賃金上昇と労働不足でブレーキがかかり始めている。これらの問題は,国際経済,特に日本経済にも大きな影響を与え始めている。こうした問題は,労働移動に関するルイスの転換点,所得分配に関するクズネッツの転換点と密接な関係をもち,経済転換期における典型的な現象としてとらえられる。本研究は,中国で実施されたパネル調査のミクロデータに基づいて二つの転換点を検討し,転換点の中国経済への意義と国際経済への影響を分析する。
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研究課題/研究課題番号:23530366 2011年 - 2013年
科学研究費助成事業 基盤研究(C)
柳原 光芳
担当区分:研究代表者
配分額:3120000円 ( 直接経費:2400000円 、 間接経費:720000円 )
本研究は,教育の意義を考え,政府間財政関係を捉えた上で,教育制度・教育システムのグランド・デザインをマクロ経済学的な視点から行うことを目指したものである。そこで,(1)マクロ動学モデルにおける人的資本蓄積メカニズムにおいて,教育の果たす役割がどのように扱われているかを概観した。(2)それと現実が適合しているかについて,教師へのインタビューを行うことで再考を加えた。そして(3)中央政府,あるいは中央政府と地方政府が供給する教育が経済成長に与える影響について見た。それぞれについて,論文あるいは著書の形でまとめることができた,あるいは研究会における報告という形で成果を発信することができた。
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教育学・心理学・社会学的視点を導入した、教育の経済学への新しいアプローチ
研究課題/研究課題番号:23653054 2011年 - 2013年
科学研究費助成事業 挑戦的萌芽研究
内田 浩史, 柳原 光芳, 金子 昭彦, 加藤 秀弥, 篠崎 剛
担当区分:研究分担者 資金種別:競争的資金
配分額:3120000円 ( 直接経費:2400000円 、 間接経費:720000円 )
本研究は、心理学や社会学の知見と現場の教師の声を踏まえ、学校教育で人的資本蓄積に重要な要素を捉えた理論モデルを構築することが目的である。まず、心理学や社会学の先行研究を展望し、教師への聞き取り調査を行って、学校教育では学力に加え「社会性」を身に付けることが重要なことを明らかにした。また、モデル構築では心理学・社会学が重視する「社会化」概念を考慮すべきことが分かった。そして、既存の人的資本理論とは異なる形で「社会性」を人的資本蓄積の重要な要素として明示的に扱うモデルを構築した。その結果、子どもの教育水準が上昇する場合でも、かえって社会性が低下し、人的資本水準の低下につながる可能性を示した。
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研究課題/研究課題番号:22530308 2010年 - 2012年
科学研究費助成事業 基盤研究(C)
竹内 信仁, 柳原 光芳
担当区分:研究分担者 資金種別:競争的資金
配分額:2470000円 ( 直接経費:1900000円 、 間接経費:570000円 )
本研究では,日本でこれまでなされてきた市町村合併に,市町村の行財政運営の上でいかなるメリット・デメリットが存在するのか,また,一般的にどのような行財政改革の施策をとってきたかについて日本全国の市町村にアンケート調査を行い,明らかにした。また,このアンケートの結果から,市町村合併を行わなかった理由に関して,その傾向を明らかにすることができた。
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階層的政府構造における財政的外部性と財政調整制度に関する理論的・実証的研究
研究課題/研究課題番号:22530328 2010年 - 2012年
科学研究費助成事業 基盤研究(C)
菅原 宏太, 國崎 稔, 篠崎 剛, 柳原 光芳, 加藤 秀弥
担当区分:連携研究者 資金種別:競争的資金
配分額:3900000円 ( 直接経費:3000000円 、 間接経費:900000円 )
国と都道府県などといった異なる階層の政府が労働所得など共通の経済活動を課税ベースとしているとき,一方の政府が行った租税政策の影響は課税ベースの変化を通じてもう一方の政府の税収に影響を与える。同様のことが同じ階層の政府の間でも課税ベースの地域間移動を通じて生じうる。これらは財政的外部性と呼ばれ,政府の政策決定に歪みをもたらす。本研究では,財政外部性が生じるメカニズムを理論的・実証的に分析し,財政外部性を抑制するための財政調整制度について検討した。
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「教育を与える側」の人的資本蓄積メカニズムを組み入れたマクロ動学モデル分析
研究課題/研究課題番号:20530151 2008年 - 2010年
科学研究費助成事業 基盤研究(C)
柳原 光芳
担当区分:研究代表者 資金種別:競争的資金
配分額:2210000円 ( 直接経費:1700000円 、 間接経費:510000円 )
本研究は,「教育を与える側」を考慮した(1)マクロ動学モデルの構築を行うこと,(2)そのモデルをより日本の教育現場の実情に適合するものとすべく,インタビューを行うこと,そして(3)これら(1)および(2)の要素を含んだモデルに基づいてシミュレーション分析を行うこと,の以上3点を中心に据えて研究を行ってきた。その結果,(1)については東北学院大学でのセミナーにおいて報告を行い,(2)については近畿圏の小学校の教諭へのインタビューをまとめ,(3)については日本地域学会での報告を行うという形で,それぞれ成果をまとめることができた。
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活力ある経済社会を作るための官と民の役割分担についての基礎研究
研究課題/研究課題番号:20330055 2008年 - 2010年
科学研究費助成事業 基盤研究(B)
家森 信善, 栗原 裕, 柳原 光芳, 清水 克俊, 打田 委千弘, 小川 光, 西垣 鳴人, 播磨谷 浩三, 近藤 万峰, 浅井 義裕
担当区分:研究分担者
配分額:19760000円 ( 直接経費:15200000円 、 間接経費:4560000円 )
本研究では、(i)中小企業金融の状況の把握、(ii)信用保証制度に関する評価、(iii)金融過疎への対応としての郵政問題の検討、の3点に取り組んできた。とくに、(i)と(ii)の両方の課題に取り組むために、愛知県信用保証協会の協力を得て、2009年に愛知県の中小企業12070社に質問票を送る大規模なアンケート調査を実施し、家森信善編『地域の中小企業と信用保証制度』(中央経済社2010年)として成果を出版することができた。
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研究課題/研究課題番号:15530211 2003年 - 2005年
科学研究費助成事業 基盤研究(C)
竹内 信仁, 森田 雄一, 柳原 光芳
担当区分:研究分担者
配分額:3000000円 ( 直接経費:3000000円 )
本研究は、国が運営してきた事業を国営化,そして民営化を実施するという過程において現れうる有効性および問題点について,実証的側面ならびに理論的側面から明らかにすることを主たる目的としている。
まず,前者の実証的側面からのアプローチについては,研究代表者(竹内)が本報告第1章「民営化の功罪」において,民営化の進め方を類型化し,民営化の正・負の側面について論及している。それを踏まえて研究分担者(森田)および研究分担者(柳原)が,それぞれ本報告書第2章「イギリスにおける民営化の現状とその考察」および第3章「ニュージーランドのマクロ経済環境と郵便事業の国営化」において,現実的に民営化がもたらした影響を整理し,問題提起を行っている。また,研究分担者(森田)および研究協力者(佐野)による第4章「財政再建策がもたらす影響に関する定量的分析」では,財政再建の諸政策が国民の経済厚生に与える影響についてシミュレーション分析を行い,国家事業の民営化が国民経済に及ぼす影響についての分析を行う土台を提供している。同様に,第7章において研究代表者(竹内)が「地方自治体の歳出格差と税源移譲」で,今後より厳しさを増す地方財政格差をとらえ,国が考えるべき税源移譲の方法について示唆を与えつつ,今後の地方公営事業の民営化を考えていく上での注意を喚起している。
一方、後者の理論的側面からのアプローチについては、研究協力者(加藤)による第5章「民営化と政府の選好」ならびに研究分担者(柳原)による第6章「資本蓄積,資本減耗率と民営化の成否」において扱われている。前者では産業組織論における静学的枠組みのなかで,政府が民営化を行うか否かの判断が政府の選好に依存して決定されることを示した。また,後者はこれを動学的枠組みに拡張し,民営化がもたらす経済への影響について,民営化直後の時点および定常状態において幅広く行っている。 -
研究課題/研究課題番号:12630098 2000年 - 2002年
科学研究費助成事業 基盤研究(C)
竹内 信仁, 坂本 真子, 柳原 光芳
担当区分:研究分担者 資金種別:競争的資金
配分額:2300000円 ( 直接経費:2300000円 )
本研究は、地方政府の行う財政政策が地域経済に与える効果について、実証的側面ならびに理論的側面から分析を行うことを目的とした。
前者の実証的側面からのアブローチについては、研究代表者(竹内)と研究分担者(柳原)が「地域経済の構造と地方財政」を名古屋大学国際経済動態研究センター発行「調査と資料」により公表している。竹内が「地域経済と地方財政」(報告書第1章)を、柳原が「地域経済と地方債」を担当した。これらの研究は、現在の地域経済の産業構造と地方財政との関連を把握するとともに、各地域での地方財政のあるべき姿、今後望ましい方向性を示すものである。柳原の研究については、地方財政の中でも特に地方債に着目し、地方債と地域経済の特徴との関連について議論した。また、その一部拡張したものを日本地方財政学会において報告した。さらに、竹内は「地方財政の効率化と地方分権」(報告書第2章)により、近年頻繁に議論されている市町村合併の問題について、行政効率の面から示唆を与えるのに成功している。
一方、後者の理論的側面からのアプローチについては、研究分担者(坂本)による「源泉地主義に基づく資本課税の厚生分析」(報告書第3章)ならびに「源泉地主義に基づく資本課税の厚生分析,(報告書第4章)がまず挙げられる。これらの研究はいずれも、地方公共財が存在するもとで、各地方政府の行う資本課税が自地域ならびに他地域の経済厚生にいかなる影響を及ぼすかについて、動学的観点から理論分析を行っている。同様のフレームワークを用いて、坂本、竹内、柳原による「地域間労働移動に関する地方財政効果」(報告書第5章)では、労働移動を導入することで坂本の研究の拡張を行った。本研究は、資本移動による効果のみならず労働移動による生産性への効果をも含めた分析が可能としている。その結果として、日本国内の問題のみにとどまらず、近年の国際労働移動の問題に関する含意も得られている。
これらの研究にあたり、本科学研究費補助金をもとに研究会を迎営し、研究代表者・分担者以外の研究者からも、本研究に対する示唆をいろいろな側面から得ることができた。 -
高齢化社会にふさわしい金融リテラシーの新しい尺度構築の挑戦的な試み
研究課題/研究課題番号:17K18563 2017年6月 - 2020年3月
科学研究費補助金 挑戦的研究(萌芽)
家森 信善
担当区分:研究分担者 資金種別:競争的資金
配分額:6240000円 ( 直接経費:4800000円 、 間接経費:1440000円 )
本研究プロジェクトは、日本の金融研究において萌芽的な段階にとどまっている家計金融論(household finance)(あるいは、パーソナルファイナンス学)の飛躍的発展を目指して、「高齢者の金融リテラシーと金融行動に関する調査」、「高齢者向けの金融サービスの利用状況に関する調査」、「住宅ローン利用者の借入行動と金融リテラシーに関する調査」という3つのアンケート調査を使って、新しい金融リテラシーの尺度を提案・設計し、望ましい金融行動と関連性の深い金融リテラシーが何なのかを検証した。
2019年に日本で開催されたG20において「高齢化と金融包摂のためのG20福岡ポリシー・プライオリティ」が採択され、高齢者の金融リテラシーを高めるために取り組むことが合意された。国際的に高齢者の金融リテラシーの不足が適切な金融行動への障害になっていることが心配されており、高齢者の金融リテラシーを高めることが必要であると考えられているからである。しかし、海外研究で使われている金融リテラシーに関する尺度が日本の高齢者の望ましい金融行動にとって意味のある尺度かは検証されておらず、望ましい金融行動に関連性の深い金融リテラシーを明らかにすることは、日本の高齢者の生活の質を高めるために大きな意義がある。 -
政治活動の影響を考慮した経済援助の動学分析
研究課題/研究課題番号:15K03449 2015年4月 - 2018年3月
科学研究費補助金 基盤研究(C)
篠崎 剛
担当区分:研究分担者 資金種別:競争的資金
配分額:4680000円 ( 直接経費:3600000円 、 間接経費:1080000円 )
本研究課題の研究成果は,二国間の経済援助の拠出国および受取国に与える影響を様々な環境のもとで分析し,その経済厚生に与える影響について明らかにすることができたことにある。具体的には,世代間の利他性,世代間の援助の配分および世代を通じた消費の外部性などの,世代を通じた要素が経済援助の効果に与える影響,社会保障制度の存在が経済援助の厚生効果にどのように影響するかを分析し,それぞれが受取国の交易条件を悪化させる可能性を有していることを示すことができた。また,利益集団や政治家行動が開発途上国の経済成長を促進するかどうかを分析し,貧困の罠に陥らないような制度設計が必要なことを明らかにすることができた。