科研費 - 松田 直之
-
敗血症性多臓器不全におけるSTAT3の遺伝子治療による創薬科学医療イノベーション
2019年4月 - 現在
科学研究費補助金 基盤研究(B)
担当区分:研究代表者
【概 要】インターロイキン6(IL-6:Interleukin-6)は,救急・集中治療領域などの急性期管理で,炎症に随伴して上昇する血清マーカーである。本研究は,様々な細胞におけるIL-6受容体シグナルについて,「敗血症動物モデル」および「ヒト培養細胞」の2つの研究系で解析する。以下の4つの内容を主目的として,IL-6受容体シグナルを解析する。
① 敗血症病態で血中濃度の上昇するIL-6が,「どの細胞に作用し」,「どのような作用をもたらすか」を,IL-6受容体シグナルを持つ「細胞同定」として明らかとする。
② IL-6受容体シグナルで活性化される主要な転写因子であるSignal Transducers and Activator of Transcription-3(STAT-3)を,各種の臓器系細胞や血球系細胞において「どの強度まで活性化できるか」を比較解析し,IL-6受容体発現細胞における「STAT-3活性強度」を評価する。
③ IL-6受容体シグナルとして活性化される「転写因子STAT-3」の結合する転写領域GAS(γ-interferon-activated site;5’-TTTCCnGGAAA-3’,n:任意)およびSIE(c-sis-inducible element; 5’-GATCTACGGATTTCCGGGAAATGAAGCT-3’)の活性を,「デコイ核酸などの遺伝子治療」で抑制し,様々な細胞のSTAT-3の役割を明確とする。
④ 慢性関節リウマチへの適応がある「抗IL-6α抗体」である「サリルマブ」や「トシリズマブ」の敗血症病態における効果を転写因子活性の「遺子治療」と比較する。 -
研究課題/研究課題番号:22H03173 2022年4月 - 2025年3月
科学研究費助成事業 基盤研究(B)
松田 直之, 服部 裕一, 町田 拓自
担当区分:研究代表者
配分額:17420000円 ( 直接経費:13400000円 、 間接経費:4020000円 )
本研究は,敗血症で活性化される転写因子をモデル動物で網羅的に解析し,敗血症のトランスクリプトソームとしての学術を提案することを目標とする。ネットワークの中核をなす転写因子に対して,デコイ核酸などを用いた網羅的な短期間制御療法を目的とした新規創薬基盤研究とする。その上で,敗血症病態に着眼し,複数の転写因子を同時に制御するキメラデコイ核酸などを開発し,その治療効果を検証する。敗血症モデル動物で転写因子のキメラデコイ核酸などの治療効果を確認し,ヒトを対象としたトランスレーショナルリサーチに持ち込むことを次の目標とする。
敗血症は,感染症により臓器障害が進行する病態である。本研究は,課題「トランスクリプトーム解析と創薬基盤形成」として敗血症性多臓器不全の病態解析に着眼し,敗血症により進行する多臓器不全の病態を転写因子の総合的解析として解明することを目的として施行されている。
敗血症モデル動物として,雄性Balb-Cマウス(8-12週齢)による臓器障害の確認が開始されている。イソフルラン麻酔下で盲腸結紮・穿孔術(cecum ligation and puncture:CLP)を行い,敗血症モデル動物としてCLP群の作成後24時間および48時間で肺,心臓,肝臓,腎臓,脾臓,骨格筋,大動脈,血液を採取している。転写因子nuclear factor-κB(NF-κB),activator protein-1(AP-1),cAMP-response element binding protein(CREB)のデコイ核酸をCLP作成6時間後に導入し,その転写活性の減弱をゲルシフト法で検討している段階にある。また,敗血症における臓器障害に対して,走査型電子顕微鏡像および透過型電子顕微鏡像として,NF-κB/ AP-1/ CREBのトリプルデコイ核酸の治療効果を確認している過程にある。
本研究では,敗血症病態CLPモデルマウスにおいて,転写因子NF-κB,AP-1, CREB,STAT-3,その他,p53,EGR-1,Ets-1などの転写因子の活性を作成したデコイ核酸を用いて減じた際に,それらの転写因子活性に変化が生じるかどうかを検討するものであり,中核となる転写因子の探索を目標としている。独立したネットワーク流を形成する親玉転写因子を同定することにより,それらを同時に抑制できるキメラデコイ核酸(おとり遺伝子)やデコイ核酸カクテルを開発し,その遺伝子治療効果を検証する研究過程にある。
本研究は,大きく以下の4つで構成されている。(1)トランスクリプトーム:敗血症における転写因子活性の時系列での網羅的評価:敗血症における転写因子活性の時系列での網羅的評価として,まず適切なモデルマウスを作成する必要があり,盲腸結紮・穿孔術(cecum ligation and puncture:CLP)として共同研究者間でのマウス作成の統一を実地で施行した。その上で,摘出された肺,心臓,肝臓,腎臓,脾臓,骨格筋における核・細胞質タンパク質をリソピュアエキストラクターキット(和光純薬)で分離し,転写因子NF-κB,AP-1,およびCREBの核内移行が高まることを敗血症CLPマウスモデルで確認している。これに対して,アテロコラーゲン法で各デコイ核酸を投与した際に,敗血症モデルの各臓器でどのように各転写因子の活性が変化するかについて現在は評価の過程にある。(2)ネットワーク図:敗血症における転写因子の関連付けとしてのネットワーク流の作成:敗血症における転写因子の関連付けとしての転写因子関連ネットワーク図の作成を目標としているが,現在は中心となる転写因子を同定しようとしている過程にある。現在,DNAを配置したビーズの作成にも取り組んでおり,核内および細胞質内の転写因子を牽引する方法の開発に取り組んでいる。(3)創薬:主要転写因子のキメラデコイ療法と制御カクテル療法の基盤形成:主要転写因子のキメラデコイ療法と制御カクテル療法の検討については,次年度移行の解析となる。(4)病態解析:多臓器不全の改善効果の評価:NF-κB,AP-1,およびCREBのデコイ核酸の治療においては,これまで私たちが報告してきたように,今回作成しているCLPマウス敗血症モデルにおいても敗血症病態の炎症性分子の産生を低下させることを再確認した。
本研究では,敗血症性多臓器不全の病態学的理解を転写因子活性の観点からより一層に深めると共に,転写因子nuclear factor-κB(NF-κB),activator protein-1(AP-1),cAMP-response element binding protein(CREB),signal transducers and activator of transcription(STAT),その他,p53,EGR-1(Early growth response protein 1),Ets-1(ETS proto-oncogene 1)などの転写因子の活性を減じた際に,他の転写因子活性がどのように変化するかを網羅的に評価する方針である。敗血症の時系列に基づく研究結果を基盤として,中核となる複数の転写因子を同時に制御するキメラデコイ核酸やデコイ核酸カクテル)を開発し,敗血症性多臓器不全の進行を制御する新規遺伝子治療の考案を目的とする。本年度は,中核となるいくつかの転写因子に対するキメラデコイ核酸およびデコイ核酸カクテルなどの治療効果を,形態学的評価として透過型電子顕微鏡像および走査型電子顕微鏡像で評価すると共に,中核となるいくつかの転写因子に対するキメラデコイ核酸およびデコイ核酸カクテルなどの治療効果を,臓器内炎症分子発現(炎症性サイトカイン,増殖性サイトカイン,凝固線溶関連分子,誘導型NO合成酵素,シクロオキシゲナーゼなど),免疫組織染色,TUNEL染色(アポトーシス評価)などとして,本研究を継続する方針である。 -
研究課題/研究課題番号:21H03035 2021年4月 - 2025年3月
科学研究費助成事業 基盤研究(B)
坂本 多穂, 黒川 洵子, 松田 直之, 高林 秀次, 永森 收志
担当区分:研究分担者
敗血症の発症・死亡リスクは男性よりも女性で低く、性ホルモン以外に性染色体の関与も示唆されるが、治療への応用が可能な分子基盤は得られていない。本研究では、性差を考慮した敗血症治療への応用を全体の目標とし、敗血症多臓器不全での心筋・骨格筋等の機能障害について、細胞表面に存在する膜タンパク質に着目した分子機構の探索を行う。
本研究では、(1)敗血症病態モデル動物における性ホルモンと性染色体の影響の評価と差別化、 (2) 膜タンパク質プロテオミクスによる性差発現分子の探索、(3) 遺伝子編集マウス・細胞系による病態解析の3つの解析で医薬標的を探る。
敗血症の生存率そして不整脈における性差の分子メカニズム解明をめざした研究を進展させている。これまでに野生型マウスおよび性転換マウスの敗血症モデルをもちいた解析をすすめており、そこで見出された遺伝子欠損動物を作出し、そのマウスの機能解析に入ろうとしている。以下に具体的内容を記す。
性転換マウスは性別と性染色体が独立する。このためXYオス、XYメス、XXオス、XXメスの4種類のマウスが発生する。これらに盲腸結紮穿孔法(CLP)による敗血症を発症させるとXXメスのみが他のマウスに比べて生存率が高かった。マウスの敗血症性差は骨格筋が決定因子だと報告があることから、マウス骨格筋をもちいたRNA-seqでXXメス固有の遺伝子を解析したところ4つの遺伝子が見出された。令和4年度は、昨年度見出した敗血症性差関連因子ノックアウトマウス作出をおこなった。4つの遺伝子のうち、ヒトにても機能するPrg4ノックアウトマウスをiGONAD法により作出させた。
敗血症誘発性不整脈は敗血症性ショックの一素因である。今年度は、CLPマウスの心電図についても解析した。CLPマウスでは顕著な伝導障害が記録され、敗血症不整脈の一因となることが示唆された。
本研究内容について集中治療学会年会シンポジウムで講演した。また、学生が日本薬理学会年会年会優秀発表賞および生体機能と創薬シンポジウムにて最優秀発表賞を受賞した。
敗血症生存率性差の検討は順調に進んでいる。性転換マウスをもちいた生存率解析が完了し、このマウスサンプルをもちいた網羅的遺伝子発現解析により性差因子候補をみいだし、さらにこの性差因子候補の欠損マウスの作出も完了した。一方で、敗血症不整脈における解析についてはまだ結論が出ていない。この2点から、「おおむね順調」と判断した。
令和4年度に作出したPrg4ノックアウトマウスのホモ化と繁殖をすすめており、これを用いて敗血症病態への影響を解析する。同時に、マウス骨格筋細胞をもちいてPrg4の転写調節機構を明らかにする。
敗血症不整脈に伝導障害が関与する結果を得たことから、まず野生型マウス心臓でのイオンチャネル等の遺伝子発現変化を網羅的遺伝子発現解析により明らかにする。どうじに性転換マウスにおける不整脈頻度・病態および網羅的遺伝子発現解析をおこない。敗血症性差と心不整脈との関連を明らかにする。 -
敗血症病態における血小板減少症への補体系活性化の関与とその治療戦略の開発
研究課題/研究課題番号:21K09065 2021年4月 - 2024年3月
科学研究費助成事業 基盤研究(C)
渡邉 栄三, 松田 直之, 幡野 雅彦
担当区分:研究分担者
血小板減少症を伴う敗血症患者の全身性炎症反応の背景には,高サイトカイン血症や血液凝固線溶異常などが存在するが,その中での補体制御異常の関与は明らかではない.そこで,敗血症時の凝固異常の病態として広く注目されている播種性血管内凝固症候群(DIC)の患者データベースを作成し,それらの患者における補体制御異常の関与を検討する.さらに,凝固線溶系・補体活性の検査データのみならず,補体制御ならびに凝固線溶系に関わる分子の遺伝子変異や遺伝子多型を解析可能な遺伝子解析チップをデザイン・開発し,その臨床応用も目指す.以上で得た知見によって,敗血症患者の臓器不全に対して,補体制御を介した臓器不全防止策を講じる.
本多施設共同研究の参加協力施設として,当東千葉メディカルセンター(第130号承認),千葉大学医学部附属病院(HS202112-02承認),名古屋大学医学部附属病院,名古屋市立大学医学部附属病院,藤田医科大学病院,東京慈恵会医科大学病院,小牧市民病院,愛知医科大学病院の8施設のICUで合意が得られた.現時点で,研究代表者の前所属であり基幹施設である千葉大学での生命倫理審査で承認され(HS202112-02)ているが,研究代表者が愛知医大に異動したため,千葉大で承認された一括中央審査の協力施設として,愛知医大が東海地方施設の基幹として研究を進められるよう調整を進めている.
補体制御異常のバイオマーカーとしての補体タンパク解析に関して,日本補体学会および日本酪農学園大学の協力のもとで行えることとなったため,契約締結や調整に時間を要した.さらに研究代表者が千葉大学から愛知医科大学に異動したため,生命倫理審査及び各施設における倫理審査での承認に,想定外の時間を要している.
患者臨床データベース構築を開始し,その後,予定100検体の約半数の検体が集まり次第随時検体の遺伝子・タンパク解析を開始する.
本研究において得られたバイオマーカーや候補遺伝子などの結果を用いて,凝固系・補体系制御の治療戦略を立案するまでが,本研究期間内の計画となる. -
敗血症性多臓器不全におけるSTAT3の遺伝子治療による創薬科学医療イノベーション
研究課題/研究課題番号:19H03757 2019年4月 - 2022年3月
科学研究費助成事業 基盤研究(B)
松田 直之, 服部 裕一
担当区分:研究代表者
配分額:17290000円 ( 直接経費:13300000円 、 間接経費:3990000円 )
本年度の本研究では,「敗血症動物モデル」および「ヒト培養細胞」の2つの研究系で,IL-6,およびIL-6受容体シグナルを以下の2内容を中心として解析する。
① 敗血症病態で血中濃度の上昇するIL-6が,「どの細胞に作用し」,「どのような作用をもたらすか」を,IL-6受容体シグナルを持つ細胞の同定として明らかとする。
② IL-6受容体シグナルで活性化される転写因子STAT-3を,デコイ核酸などの遺伝子治療で抑制し,敗血症におけるSTAT-3の役割を明確とする。
盲腸結紮穿孔によるマウス敗血症モデル(CLP)において,STAT3上流のJAK2の活性が高まり,時系列でSTAT活性が高まること,そして合成二本鎖STAT3デコイオリゴデオキシヌクレオチド(ODN)のin vivo導入がCLPマウスの臓器損傷を低下させることを確認した。 STAT3デコイODNは、CLPマウスにおける炎症性サイトカイン/ケモカインの過剰産生を減少させ,さらに HMGB1などの炎症性分子の産生を肺や肝臓で有意に抑制した。この結果は、敗血症におけるSTAT3の役割を明確とし,敗血症の遺伝子治療におけるSTAT3デコイODNの潜在的な有用性を示唆する結果となった。
敗血症は,さまざまな病気に合併し,臓器障害を進行させる病態である。本研究は,敗血症における転写因子STAT3の役割を,敗血症モデル動物の時系列で評価し,敗血症における遺伝子治療として転写因子STAT3をターゲットとした創薬科学の潜在的な有用性を示す結果となった。敗血症の新規治療薬として,IL-6受容体シグナルを制御することの提案となる学術的意義と,今後の創薬科学における社会的意義があると考えられた。 -
敗血症病態における心筋細胞内Ca2+動態の解析
2017年4月 - 2019年3月
科学研究費補助金 基盤研究(C)
担当区分:研究分担者
-
敗血症性心筋障害の炎症制御と陽性変力作用改善を目的とした創薬基盤形成
2015年4月 - 2017年4月
科学研究費補助金
松田直之
担当区分:研究代表者
敗血症に合併する心筋障害の機序を分子薬理学的に解析する。
-
敗血症性心筋の炎症制御と陽性変力作用改善を目的とした創薬基盤形成
研究課題/研究課題番号:15K15661 2015年4月 - 2017年3月
松田 直之
担当区分:研究代表者
配分額:3640000円 ( 直接経費:2800000円 、 間接経費:840000円 )
BALB / cマウスにおいて盲腸結紮穿刺(CLP)を施し,敗血症モデルマウスとして,アドレナリン作動性β受容体シグナルの変容を解析した。 β1-アドレナリン受容体およびG蛋白の発現に統計学的有意差を認めなかったが,敗血症の進行によりβ受容体シグナルが減じることを確認した。敗血症病態の心筋では,ドブタミン刺激によるcAMPレベルは減少しており,敗血症においてドブタミンへの応答性が損なわれていた。細胞内情報伝達分子の解析では,PDE4Dが敗血症における心機能応答を調節する可能性を確認できた。敗血症性ショックに合併する低心拍出量患者に対して,PDE4D標的療法の有効性が本研究より示唆された。
-
敗血症性多臓器不全における主要臓器再生への遺伝子治療とiPS細胞の応用
2013年4月 - 2017年3月
科学研究費補助金 基盤研究(B)
担当区分:研究代表者
-
敗血症性多臓器不全における主要臓器再生への遺伝子治療とiPS細胞の応用
研究課題/研究課題番号:25293365 2013年4月 - 2017年3月
科学研究費助成事業 基盤研究(B)
松田 直之
担当区分:研究代表者
配分額:18460000円 ( 直接経費:14200000円 、 間接経費:4260000円 )
敗血症病態は,感染症による炎症の後に,さまざまな臓器に線維芽細胞増殖を生じる。この病態と治療を考案するために,マウス敗血症モデルとヒト線維芽細胞培養で線維芽細胞に対する研究を施行した。敗血症モデル動物には8~12週齢の雄性BALB-Cマウスを用い,盲腸結紮穿孔による敗血症に類似する病態を評価した。S100 calcium-binding proteinなどを用いた繊維芽細胞の分布の解析では時系列で肺や心房筋膜境界面への線維芽細胞の増加を認めた。また,ヒト線維芽細胞の培養検討では,カテコラミンのβ受容体作用および炎症に関与するトロンビン活性が,線維芽細胞増殖に強く関与することが評価できた。
-
敗血症病態における遺伝子認識型受容体シグナルのノックダウン解析
研究課題/研究課題番号:23659843 2011年 - 2012年
科学研究費助成事業 挑戦的萌芽研究
松田 直之
担当区分:研究代表者
配分額:3640000円 ( 直接経費:2800000円 、 間接経費:840000円 )
敗血症は,救急・集中治療の対応する重症病態として知られている。敗血症は,菌やウイルスに対する全身性炎症であるが,未だに抗菌薬以外に炎症を制御する有効な治療法が確立されていない。本研究では,siRNA を投与して FADD、TAK-1 等の遺伝子転写を阻害する事により敗血症モデルマウスの生存率を改善し、これが遺伝子認識型受容体の肺,腎臓,大動脈の LC3 発現量と活性化の両者を抑制する結果である機序を明らかにすると共に,電子顕微鏡像においても敗血症病態でのオートファゴソーム形成が亢進せずに,正常化している事を見出した。遺伝子認識型受容体シグナルの抑制により、細菌感染症、ウイルス感染症、遺伝子治療に随伴する臓器炎症を軽減できる結果に繋がると考えられ、重症感染症における新規創薬を提案する意義を持つと言える。
-
敗血症病態に合併するタンパク異化病態の分子生化学的解明と遺伝子治療の開発
2010年4月 - 2012年3月
科学研究費補助金 基盤研究(A)
松田直之
担当区分:研究代表者
-
敗血症病態に合併する蛋白異化病態の分子生化学的解明と遺伝子治療の開発
研究課題/研究課題番号:22249059 2010年 - 2012年
松田 直之
担当区分:研究代表者
配分額:48750000円 ( 直接経費:37500000円 、 間接経費:11250000円 )
敗血症は,救急・集中治療の対応する重症病態として知られている。敗血症は,菌やウイルスに対する全身性炎症であるが,未だに抗菌薬以外に炎症を制御する有効な治療法が確立されていない。本研究では,敗血症モデルマウスおよびヒト血管内皮細胞培養細胞の敗血症病態の急性期において,オートファジー関連分子が増加し、特に LC3 が活性化し,オートファゴソーム形成が促進することを見出した。これらは、アミノ酸投与により抑制される程度は低く,炎症系転写因子により制御されると結論された。血管内皮細胞のオートファジーは,FADD,TAK-1,さらに NK-κB や AP-1 などの転写因子の活性に影響を受け,これらの抑制により,敗血症病態のオートファジーが抑制されることが確認された。
-
高齢者の健康及び疾病状態の把握のための新たなマーカー(遺伝子・蛋白等)の探索と分析に係る研究
2009年9月 - 2010年3月
科学研究費補助金 厚生労働省長寿医療研究委託費 課題番号 21指-22
新飯田俊平
担当区分:研究分担者
重症敗血症病態における血管内皮細胞のバイオマーカーとして,circulating endothelial cellとマイクロパーティクルの同定を行った。これらを敗血症病態の血管内皮細胞障害と播種性血管内凝固症候群の早期診断バイオマーカーとして臨床応用すべく,次年度は臨床研究に移行する予定である。
-
敗血症における血管内皮細胞病態の解明と新規遺伝子核酸試薬の開発に関する研究
研究課題/研究課題番号:21390482 2009年 - 2011年
小池 薫
担当区分:研究分担者
敗血症は現在も単一の根治的治療法が存在せず,死亡率の高い病態として知られている。敗血症の重症化には,血管内皮細胞障害が関与することが知られているものの,血管内皮細胞の分子レベルでの創薬には,未だ根治的なものが認められない。本研究は,敗血症モデル動物として盲腸結紮穿孔による雄性BALB-Cマウスを用い,敗血症の時系列で遊離型血管内皮細胞(CEC:circulating endothelial cell)が出現することを明らかとした。このCECの発現には, nuclear factor-κB(NF-κB)が強く関与すること, FADDやTAK-1のsiRNAが部分的に抑制効果を持つこと, activator protein-1(AP-1)のデコイ核酸はCECの発現を干渉しないことなどが確認された。敗血症病態においてCECの増加は,血管内皮細胞障害による播種性血管内凝固の指標となる可能性を確認した。
-
敗血症病態における骨髄由来上皮分化細胞を用いた組織再生理論の確立
2008年4月 - 2010年3月
科学研究費補助金 科学研究費補助金 萌芽研究 課題番号 20659282
松田直之
担当区分:研究代表者
敗血症病態では,Gr-1陽性のサイトケラチン陽性細胞が,骨髄より障害臓器に誘導される。この誘導の機序に関して,検討を進めている。
-
転写因子AP-1を分子標的とした敗血症治療とその作用機序の解明
研究課題/研究課題番号:20590250 2008年 - 2010年
服部 裕一
担当区分:連携研究者
8-12週齢の雄性BALB-Cマウスに盲腸結紮穿孔(cecum ligation and puncture:CLP)を行い,敗血症を生じさせた.EMSAゲルシフトアッセイにより,AP-1活性はCLP後時間とともに肺組織において顕著に上昇することが認められ,AP-1デコイ核酸をCLPマウスに投与しておくと,敗血症誘発性の肺AP-1活性刺激は大きく低下した.CLP後24時間の肺組織および大動脈において,デス受容体であるTNF-R1,Fas,DR4,DR5の膜表面への発現は増加し,デス受容体経路のアダプター蛋白であるFADDの発現も増加した.肺組織におけるこれらの変化は,AP-1デコイ核酸導入により著名に抑制された.TUNELおよびDNA ladderアッセイにより,CLP誘発性敗血症により肺組織のみならず大動脈,脾臓においてアポトーシスが有意に増加しており,肺でのアポトーシス増加はAP-1デコイ核酸投与により阻止された。アポトーシスのみならず,炎症反応もAP-1デコイ核酸導入により抑えられた.すなわち,炎症性受容体や炎症物質であるIL-1R,IL-6R,HMGB-1,gp130の発現は,LPS刺激をしたマウスの肺組織において著名に増加したが,AP-1デコイにより減弱した.LPS 10mg/kgを投与したマウスの生存率は,無処置だと48時間以内にすべて死亡したが,AP-1デコイ核酸により著名に改善した。以上の結果から,AP-1活性をブロックしてデス受容体ならびにアポトーシス関連蛋白ならびに炎症性関連物質の発現を抑える転写因子デコイを用いた戦略は敗血症にとって新しい治療方法であることが示唆される.さらに,AP-1により転写されることが見出されたデスシグナルで重要な役割を担っているFADD遺伝子をノックダウンしたところ,CLPマウスにみられる急性肺傷害や血管内皮障害所見は有意に治療効果が認められ,結果的に生存率も著明に改善した.このことは,FADD siRNAは敗血症治療の効果的な治療戦略として有用であるかもしれない.
-
敗血症病態における転写因子群の機能解析と遺伝子治療の確立
2007年4月 - 2010年3月
科学研究費補助金 基盤研究(B)
松田直之
担当区分:研究代表者
敗血症病態における転写因子群の抑制による病態修飾を評価した。
-
ライブセルイメージングによる脳微小循環制御機構の解明と麻酔薬及び遺伝子治療の研究
研究課題/研究課題番号:19390409 2007年 - 2010年
木下 浩之
担当区分:研究分担者
ラット脳スライス中の微小血管の反応性を評価するためにライブコンピューターイメージングシステムを用いた。ラット脳スライスに電気刺激を加えると、内因性物質(20-HETE)が放出され、脳微小細動脈は収縮することが明らかとなった。一方、興奮制アミノ酸の一つNMDA は脳血管を拡張させ、この拡張には、血管平滑筋細胞内のスーパーオキシド産生と一酸化窒素合成を伴っていた。臨床使用濃度内の静脈麻酔薬プロポフォールはこれらの反応をいずれも抑制することが明らかとなった。