大学院理学研究科 特任助教

2023/09/11 更新
博士(農学)
進化
盗タンパク質
生物発光
八放サンゴ
ルシフェリン
クシクラゲ
キンメモドキ
ライフサイエンス / 進化生物学 / 発光生物
深海・海底における発光生物の多様性の理解
土壌生態系における生物発光の理解
海洋生物多様性の解明
名古屋大学 高等研究院 特任助教 YLC教員
2020年4月 - 現在
国名:日本国
モントレー湾水族館研究所 研究開発 ポスドクフェロー
2018年4月 - 2020年3月
国名:アメリカ合衆国
中部大学 応用生物学部 研究員
2017年9月 - 2018年3月
国名:日本国
名古屋大学 大学院生命農学研究科
2014年4月 - 2017年3月
Evo-Devo青年の会 幹事
2014年 - 2017年
団体区分:学協会
他者のタンパク質を利用する盗タンパク質現象 招待有り 査読有り 国際共著 国際誌
加藤 巧己, 別所-上原 学
生物工学会誌 101 巻 ( 4 ) 頁: 200 - 200 2023年4月
海中のライトショー、バイオレットにきらめくゴカイの3新種を発見 ~多様な生物発光機構の理解と生命技術開発につながることが期待~ 査読有り 国際共著
2023年3月
Evidence for de novo Biosynthesis of the Luminous Substrate Coelenterazine in Ctenophores. 査読有り 国際共著 国際誌
Bessho-Uehara M, Huang W, Patry WL, Browne WE, Weng JK, Haddock SHD
iScience 23 巻 ( 12 ) 頁: 101859 - 101859 2020年12月
Biochemical characterization of diverse deep-sea anthozoan bioluminescence systems 査読有り 国際共著 国際誌
Manabu Bessho-Uehara, Warren R. Francis, Steven H. D. Haddock
Marine Biology 167 巻 ( 8 ) 2020年8月
Kleptoprotein bioluminescence: Parapriacanthus fish obtain luciferase from ostracod prey. 招待有り 査読有り 国際共著 国際誌
Bessho-Uehara M, Yamamoto N, Shigenobu S, Mori H, Kuwata K, Oba Y
Science advances 6 巻 ( 2 ) 頁: eaax4942 - eaax4942 2020年1月
Firefly genomes illuminate parallel origins of bioluminescence in beetles. 査読有り 国際共著 国際誌
Fallon TR, Lower SE, Chang CH, Bessho-Uehara M, Martin GJ, Bewick AJ, Behringer M, Debat HJ, Wong I, Day JC, Suvorov A, Silva CJ, Stanger-Hall KF, Hall DW, Schmitz RJ, Nelson DR, Lewis SM, Shigenobu S, Bybee SM, Larracuente AM, Oba Y, Weng JK
eLife 7 巻 頁: 71 2018年10月
19. 食虫動物ブラリナトガリネズミ由来の麻痺性神経毒ペプチドBPP類の構造と生物活性(口頭発表の部) 招待有り 査読有り 国際共著 国際誌
北 将樹, 武仲 敏子, 別所 学, 木越 英夫, 大舘 智志, 上村 大輔
天然有機化合物討論会講演要旨集 60 巻 ( 0 ) 頁: 109-114 - 114 2018年
Investigating the diversity of bioluminescent marine worm Polycirrus (Annelida), with description of three new species from the Western Pacific. 査読有り 国際共著 国際誌
Jimi N, Bessho-Uehara M, Nakamura K, Sakata M, Hayashi T, Kanie S, Mitani Y, Ohmiya Y, Tsuyuki A, Ota Y, Woo SP, Ogoh K
Royal Society open science 10 巻 ( 3 ) 頁: 230039 2023年3月
14-3-3 proteins are luciferases candidate proteins from lanternfish Diaphus watasei. 査読有り 国際共著 国際誌
Yano D, Bessho-Uehara M, Paitio J, Iwasaka M, Oba Y
Photochemical & photobiological sciences : Official journal of the European Photochemistry Association and the European Society for Photobiology 22 巻 ( 2 ) 頁: 263 - 277 2023年2月
Acquisition of bioluminescent trait by non-luminous organisms from luminous organisms through various origins. 査読有り 国際共著 国際誌
Ramesh C, Bessho-Uehara M
Photochemical & photobiological sciences : Official journal of the European Photochemistry Association and the European Society for Photobiology 20 巻 ( 11 ) 頁: 1547 - 1562 2021年11月
Bessho-Uehara M, Oba Y
Luminescence : the journal of biological and chemical luminescence 32 巻 ( 6 ) 頁: 924 - 931 2017年9月
Bessho-Uehara M, Konishi K, Oba Y
Photochemical & photobiological sciences : Official journal of the European Photochemistry Association and the European Society for Photobiology 16 巻 ( 8 ) 頁: 1301 - 1310 2017年8月
Manabu Bessho-Uehara
Photochemical and Photobiological Sciences 16 巻 頁: 1301 - 1310 2017年6月
研究者の結婚生活: 恋愛はぜんぜん科学的じゃない⁉ 国際共著
高山善光( 担当: 分担執筆 , 範囲: 結婚式はウェディング姿で研究発表)
日本の研究者出版 2020年10月
研究者,生活を語る(3)おさるのジョージと黄色い帽子のおじさんのような生活
別所-上原 学
科学93 巻 ( 3 ) 頁: 200 - 202 2023年3月
太古より受け継がれる深海サンゴの発光 招待有り
別所-上原 学
新妻免疫塾 (YouTubeチャンネル) 2020年6月22日
盗タンパク質による生物発光 招待有り 国際会議
別所-上原 学
よさこい生態学セミナー 2020年6月16日 鈴木紀之
キンメモドキの盗タンパク質による生物発光 招待有り
別所-上原 学
盗機能生物研究会 2022年3月10日 前田太郎
餌生物の能力をコピー!?キンメモドキの「盗タンパク質」 招待有り
別所-上原 学
静岡ライフサイエンスシンポジウム 2022年3月6日 静岡大学
海で起きた生物発光の進化 招待有り 国際共著 国際会議
別所-上原 学
2020年2月20日
生物発光の収斂進化 招待有り 国際会議
別所-上原 学
永井研公開セミナー 2020年6月21日
Kleptoprotein Bioluminescence: A fish obtains luciferase from a luminous ostracod prey 国際会議
Manabu Bessho-Uehara, Naoyuki Yamamoto, Shuji Shigenobu, Keiko Kuwata, Yuichi Oba
Living Light 2021年9月23日
Kleptoprotein Bioluminescence: Protein uptake in a fish from luminous crustacean 国際会議
Manabu Bessho-Uehara, Shuji Shigenobu, Keiko Kuwata, Naoyuki Yamamoto, Yuichi Oba
2nd AsiaEvo Conference 2021年8月17日
ウミホタルを食べて光る魚 〜盗タンパク質による生物発光〜 招待有り
別所-上原 学
ScienceOme 2021年8月4日
深海サンゴ(花虫綱)の生物発光メカニズムの比較と進化
別所-上原 学
第23回進化学会 2021年8月19日
Biochemical characterization of diverse deep‐sea anthozoan bioluminescence systems 招待有り 国際共著 国際会議
Manabu Bessho-Uehara, Warren R. Francis, Steven H.D. Haddock
16th Deep-sea Biology Symposium 2021年9月15日
名古屋大学出前授業2 太古の海の光る森 招待有り
別所-上原 学
豊橋市自然史博物館 ワークショップ・講演会・解説会 2021年11月20日
盗タンパク質による生物発光:ウミホタルを食べて光るキンメモドキ 招待有り
別所上原学
基礎生物学研究所 部門公開セミナー 2021年11月17日
深海を照らすサンゴの発光
「こわれもの注意」:食物連鎖を通して生物発光が海洋生態系にもたらされるメカニズム
2021年4月 - 2023年3月
学際科学フロンティア 学際研究
担当区分:研究分担者 資金種別:競争的資金
配分額:2000000円
ウミホタルから光を「盗む」魚:タンパク質取込みの分子機構とその進化起源の解明
研究課題/研究課題番号:21K15144 2021年4月 - 2025年3月
日本学術振興会 科学研究費助成事業 若手研究
別所ー上原学
担当区分:研究代表者 資金種別:競争的資金
配分額:4810000円 ( 直接経費:3700000円 、 間接経費:1110000円 )
ユニークな形質を持つ生物は、それらが独自の遺伝子をゲノム中に獲得することで進化したと考えられてきた。ところが、発光魚キンメモドキは、発光に必要な酵素遺伝子をゲノム中に持たず、餌であるウミホタルから発光酵素(ルシフェラーゼ)を獲得していることが、 申請者の研究により明らかとなった。「餌由来のタンパク質が消化されずに特定の器官の細胞に取り込まれ、さらに、本来の酵素機能が保持される」現象(盗タンパク質現象)の取込みの分子・細胞生物学的メカニズムおよび進化的起源は未知である。本研究では、キンメモドキにおいて餌由来タンパク質を細胞内に取込む仕組みの解明 と本現象がみられる新たな生物種の発見を目指す。
発光魚キンメモドキParapriacanthus ransonnetiは、トガリウミホタルCypridina noctilucaのルシフェラーゼタンパク質を発光器に取り込むが、その動態は不明である。また、免疫組織化学による染色像より発光細胞の細胞質にルシフェラーゼが存在することから、膜介在性の取り込み機構などによりルシフェラーゼが取り込まれていると予想される。すなわち、膜に局在するトガリウミホタルルシフェラーゼ受容体の存在を想定して、これを同定することを目指す。
新型コロナウィルス感染症の流行のため、研究が断続的に中断されてしまい、また、協力関係にあった水族館も閉館に至ったため、生体サンプルの供給に大きな問題が生じた。そのため、飼育実験を精力的に行うことが不可能であった。
リコンビナントトガリウミホタルルシフェラーゼをキンメモドキに投与したところ、投与後1日から3日では発光器でのルシフェラーゼ活性の取り込みを検出することができた。しかしながら、ウェスタンブロットや質量分析法によりこれらのサンプルからリコンビナントトガリウミホタルルシフェラーゼの検出を試みたが、検出できなかった。これらの結果は取り込みには十分な時間が必要であることを示唆している。さらなる実験を行うため、生体サンプルのあらたな供給経路を模索した結果、某水族館との協力関係を結ぶことができた。これにより、長期間の飼育実験が可能となった。これまでの研究から、ウミホタルVargula hilgendorfii の2週間にわたる投与で、ウミホタルルシフェラーゼの発光器における取り込みは確認されている。今後は、実験期間を1週間に設定して投与実験を行うことで、ルシフェラーゼタンパク質の取込みを見出し、タンパク質共沈降法により、相互作用タンパク質の同定を目指す。
キンメモドキのルシフェラーゼタンパク質取り込み機構解明のために、ルシフェラーゼと相互作用し取り込みに寄与する分子実体の解明を目指す。期間中に、リコンビナントルシフェラーゼの作成と投与実験の検討を行い、取り込みには数日以上の長期間が必要であることを明らかにした。
新型コロナウィルス感染症の流行のため、研究が断続的に中断されてしまい飼育実験を精力的に行うことが不可能であった。
本研究費申請額の直接経費5000千円に対して、説明もなく3700千円の減額交付であったため、研究に必須の発光測定器の購入が困難となり、さらなる外部資金獲得が必要となり、研究の進展が非常に遅延した。
生体サンプルのあらたな供給経路を模索した結果、某水族館との協力関係を結ぶことができた。これにより、長期間の飼育実験が可能となった。これまでの研究から、ウミホタルVargula hilgendorfii の2週間にわたる投与で、ウミホタルルシフェラーゼの発光器における取り込みは確認されている。今後は、実験期間を1週間に設定して投与実験を行うことで、ルシフェラーゼタンパク質の取込みを見出し、タンパク質共沈降法などにより、相互作用タンパク質の同定を目指す。
また、RNA-seqを発光器と非発光組織で行い、比較解析することで発光器に特異的に発現する遺伝子を網羅的に解析する。検出された遺伝子の中からタンパク質の取り込みに関連する遺伝子群を同定し、その組織上での局在を調べタンパク質取り込みへの関与を実際に検証する。
2022年 - 2028年
科学技術振興機構 戦略的な研究開発の推進 創発的研究支援事業
別所-上原 学
担当区分:研究代表者 資金種別:競争的資金
キンメモドキは発光に必要なルシフェラーゼ遺伝子をもたずウミホタルからタンパク質を盗むことで、餌生物がもつ機能を獲得します。「盗タンパク質」として知られるこの現象はキンメモドキでのみ見つかっています。消化・分解されるはずのタンパク質が捕食者の体内で機能する現象は生物学にとって革新的な概念です。本研究では、盗タンパク質をもつ発光生物を新たに発見し、餌由来のタンパク質を取込む共通原理の解明を目指します。
第二のKleptoproteinの発見
2021年10月 - 2024年3月
国立研究開発法人科学技術振興機構 ACT-X
別所-上原 学
担当区分:研究代表者 資金種別:競争的資金
研究課題/研究課題番号:21K06313 2021年4月 - 2025年3月
日本学術振興会 科学研究費助成事業 基盤研究(C)
小枝 圭太, 別所ー上原学
担当区分:研究分担者 資金種別:競争的資金
本研究では、ハタンポ科魚類を形態学的に精査し、分子系統学的手法を用いて系統関係を明らかにすることで、分類学的混乱を整理することを目的としている。また、現行の属に単系統性が認められないことから、属の再定義をおこなう。さらに、ハタンポ科魚類には「盗タンパク質」により発光能力をもつ種が存在しているが、その系統学的位置を形態・分子の両面から明らかにすることにより、本科魚類がどの進化的過程のなかで発光能力を獲得したのかを推定することを最終目標とする。本研究で得られる知見は、ハタンポ科の分類系統に貢献するだけでなく、発光生物の進化的な起源や分子生物学的な仕組みの解明に貢献すると考えられる。
申請研究を遂行した結果、ハタンポ科魚類を含む数多くの海産魚類の標本を観察、計測、撮影をする機会を得ることができた。その結果、ハタンポ科キンメモドキ属の1未記載種(発光種)が新たにみつかった。本標本は、腹部から胸部にかけての発光器の形状が、既知の同属他種と異なるうえ、側線有孔鱗数をはじめとする鱗の計数値、鰭条の計数値、体背縁の形状などにも明瞭な違いが認められた。現在、R. Mooi氏と共同でキンメモドキ属全体の整理を含めた記載論文の執筆に取り組んでいる。形態観察や遺伝子解析の結果によりハタンポ科全体の整理も進み、属の分類学的な整理を進めている。また、ハタンポ科ミナミハタンポの夜間の行動生態も解明され、原著論文として発表されるに至った。さらに、高知県における野外観察の結果、同じ夜行性魚類であるキンセンイシモチが発光する糞をする様子が観察されるなど、夜行性魚類の発光や行動に関する知見を深めた。なお、東京大学総合研究博物館をはじめ、神奈川県立生命の星・地球博物館、高知大学、黒潮生物研究所に収蔵された魚類標本の観察に加え、野外における観察や標本採集の結果、ヒメジ科やネズッポ科、クロタチカマス科、フサカサゴ科、ウミヘビ科などの複数の未記載種や日本初記録種、稀種の発見につながった。これらの発見の一部は原著論文として投稿中、受理済または発表済である。なお、遺伝解析に必要なオーストラリア産標本の採集の予定が新型コロナウィルスの影響により困難となったことから、オーストラリア・ニュージーランドに所在する博物館機関の魚類研究者に連絡し、遺伝標本の提供の手続きを進めている。
複数の到達目標について、おおむね順調か予定以上の成果が得られている。当初の予定であるハタンポ科魚類の発光のみならず、他の海産魚類についても多数の成果が得られた点において、当初の計画以上に幅広い分野において研究が進展しているといえる。遺伝解析に必要な標本をオーストラリアを訪問して採集し、解析を開始する予定であったものの、新型コロナウィルスの影響により困難となった。このため、オーストラリア・ニュージーランドに所在する博物館機関の魚類研究者に連絡し、遺伝標本の提供の手続きを進めている。すでに標本提供の承諾を得たうえで手続きを進めているところではあるが、解析については多少の遅れがでている。これについては、入手次第に解析を進めることで十分に取り戻せることができるため、全体としてはおおむね順調に進展しているものと判断した。
ハタンポ科の分類学的整理が進んだため、今後はこれらの成果を論文として執筆し、発表する予定である。現在は日本と台湾を中心としたハタンポ属と未記載種が確認されたキンメモドキ属の分類学的再検討に関する原稿の執筆をそれぞれ進めている。今回は新型コロナウィルスの影響により、予定していた海外調査をおこなうことができなかった。また、各博物館機関より遺伝子標本を提供いただく連絡はいただけたものの、現地のロックダウンの影響もありこれらを受領、解析を進めることができていない。今後は、これらの遺伝標本を利用して、現在までにあきらかになっているハタンポ科内の系統関係をより明確にし、属の再記載を含めたハタンポ科全体の整理に取り掛かる予定である。さらに、これらの多くは南半球にのみ分布する発光種であることから、これらが非発光種より分岐した(あるいは非発光種がこれら発光種から分岐した)年代や地誌的な影響を考察することで、ハタンポ科魚類が生物発光を獲得した進化の過程を明らかにすることができると考えている。また、これらハタンポ科の調査と比較として用いた海産魚類の研究の過程で、数多くの未記載種の存在も明らかになったことから、今後はこれらを分類学的に精査し、適宜記載していく予定である。
今回の研究により、ハタンポ科と近い生態学的地位にあるテンジクダイ科キンセンイシモチが発光する様子が確認された。これらの発光のメカニズムは異なることが想定されたものの、実験のノウハウはハタンポ科にも応用可能であり、今後はハタンポ科の発光種を用いた発光の実験を進めたい。これにより、ハタンポ科が発光する意義に迫ることができ、これを獲得するに至った起源の解明にも繋がっていくものと考えられる。
発光魚キンメモドキがウミホタルから発光酵素を取込む分子機構とその進化の解明
研究課題/研究課題番号:20K22627 2020年9月 - 2022年3月
日本学術振興会 科学研究費助成事業 研究活動スタート支援
別所ー上原学
担当区分:研究代表者 資金種別:競争的資金
配分額:2860000円 ( 直接経費:2200000円 、 間接経費:660000円 )
ユニークな形質を持つ生物は、それらが独自の遺伝子をゲノム中に進化させてきたと考えられてきた。ところが、発光魚キンメモドキは、発光に必要な酵素遺伝子をゲノム中に持たず、餌であるウミホタルからルシフェラーゼタンパク質を獲得していることが、申請者の研究により明らかとなった。餌由来のタンパク質を利用する「盗タンパク質」現象は、申請者により初めて発見されたものであり、その取り込みの分子・細胞生物学的・生理学的メカニズム及び進化的起源は未知である。本研究では、キンメモドキにおいて餌由来タンパク質を消化せずに細胞内に取込む仕組みの解明と本現象がみられる新たな生物種の発見を目指す。
キンメモドキのルシフェラーゼタンパク質取り込み機構解明のために、ルシフェラーゼと相互作用し取り込みに寄与する分子実体の解明を目指す。期間中に、リコンビナントルシフェラーゼの作成と投与実験の検討を行い、取り込みには数日以上の長期間が必要であることを明らかにした。
新型コロナウィルス感染症の流行のため、研究が断続的に中断されてしまい飼育実験を精力的に行うことが不可能であった。さらに、本研究費も申請額の直接経費3000千円に対して、説明もなく2200千円の減額交付であったため、研究に必須の発光測定器の購入が困難となり、さらなる外部資金獲得が必要となり、研究の進展が非常に遅延した。
我々動物は植物など他の多細胞生物に比較して消化管を持つことで区別される。動物のドグマともいうべき消化システムは、摂食されたタンパク質を分解し、生育に不可欠のアミノ酸の獲得において全ての動物で保存された仕組みである。しかし、キンメモドキは、トガリウミホタルを捕食することにより、ルシフェラーゼタンパク質を消化分解せずに発光細胞に取り込む。この驚くべき例外がどのように実現されているかを理解するために、本研究では、餌由来タンパク質の取込みに関わる分子メカニズムはどのようなものなのか、という問いに答えようとするものである。
ウミホタルを食べて光る魚-キンメモドキの発光メカニズムの解明-
研究課題/研究課題番号:15J00296 2015年4月 - 2017年3月
日本学術振興会 科学研究費助成事業 特別研究員奨励費 特別研究員奨励費
別所 学
担当区分:研究代表者 資金種別:競争的資金
配分額:1900000円 ( 直接経費:1900000円 )
キンメモドキから発光活性を指標にルシフェラーゼを精製し、単離した。RNAseqとMS/MSにより、タンパク質の全長配列を決定し、同定した。その後、リコンビナントルシフェラーゼを抗原とし、抗体を作成し、天然型のルシフェラーゼを結合したカラムを用いて、アフィニティー精製を行なった。その結果、質の高い抗ルシフェラーゼ抗体が得られた。また、キンメモドキの新たな供給経路を確立した。本年度は、これらの材料を元に、ウェスタンブロットと免疫組織化学により、キンメモドキにおける同定したルシフェラーゼの局在が発光器官にのみあることを確認できた。現在、組織の微細構造を確認中であり、並行して論文化を進めている。
また、発光の進化を議論するために、同じくウミホタルルシフェリンを基質とする発光魚についてもサンプルを集めている。本年度は、スズキ目であるが異なる科のツマグロイシモチ、ガマアンコウ目のイサリビガマアンコウを入手できた。ツマグロイシモチは高知で採取され、また、イサリビガマアンコウはアメリカ合衆国のカリフォルニアで採取された。ツマグロイシモチの系統分類的位置付けは、まだはっきりしていないので、発光の進化を議論する上で、今後、分類学者との共同研究が必要になる。
これらの材料に対して、現在、キンメモドキのルシフェラーゼと相同性があるかを調べるため、同様に、ウェスタンブロットと免疫組織化学による検出を進めている。今後、反応が出た場合、プルダウンからのMS/MS解析により、タンパク質の同定を進め、配列から、進化的な考察を深めたい。
Physiology and Anatomy II
2022
光るために魚がとった方法とは インターネットメディア
ニューヨークタイムズ誌 2020年1月
跳躍的進化のカギ!?生物の“盗み”戦略 テレビ・ラジオ番組
NHK サイエンスZERO 2023年7月
【くもM LAB】発光生物に恋してる!?生き物の光に魅了された研究者(名古屋大学高等研究院特任助教 別所上原学先生 インタビュー インターネットメディア
SienceTalks 【くもM LAB】 2021年9月
海の光るいのち、進化をひも解く/別所-上原学特任助教 インターネットメディア
名古屋大学産学官連隊推進本部 「名大研究フロントライン」 2021年7月
深海発光サンゴ 新たに4種 新聞・雑誌
中日新聞社 中日新聞 2020年10月
餌から生物発光を盗む魚 インターネットメディア
The Scientist 2020年1月
外部学術評価員 国際学術貢献
役割:審査・評価
2022年2月 - 2022年3月