KAKENHI (Grants-in-Aid for Scientific Research) -
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小分子抗体を活用した細胞内悪性タンパク質の除去法の構築
2023.12 - 2024.12
公益財団法人 持田記念医学薬学振興財団 研究助成
西村浩平
Authorship:Principal investigator
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小分子抗体を利用したオーキシン依存的タンパク質分解システムの開発
2023.4 - 2025.3
IFO 公益財団法人 発酵研究所 一般研究助成
西村浩平
Authorship:Principal investigator
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タンパク質工学およびケミカルバイオロジーを駆使したタンパク質分解系の開発
Grant number:22K05558 2022.4 - 2025.3
日本学術振興会 科学研究費助成事業 基盤研究(C) 基盤研究(C)
西村 浩平
Authorship:Principal investigator
Grant amount:\4160000 ( Direct Cost: \3200000 、 Indirect Cost:\960000 )
細胞内のタンパク質分解システムを利用した標的タンパク質分解法は基礎的な研究、応用研究から医薬品の開発に至るまで、幅広い領域で研究、開発が進んでいる。MGDやPROTACのように直接的に医薬品の開発に向かう研究が必要であることは明らかではあるが、一方で、違った方向からの研究、開発も必要である。申請者が開発したAID法は全ての細胞内に存在するユビキチンプロテアソーム系というタンパク質分解システムを利用した分解系であるという点で前述のMGDやPROTACと同様である。そのため、本システムの開発がもたらすユビキチンプロテアソーム系に対する理解の向上がどの分解系においても有益な情報となると考えた。
申請者が確立したAID法は標的とするタンパク質をオーキシン依存的に分解することが可能であり、様々な真核生物種において、標的とするタンパク質の迅速なノックダウン系として用いられている(Nishimura et al., Nature Methods, 2009)。しかしながら、TIR1の導入や標的タンパク質へのAIDタグの付加など、実験に先立ち行わなければならないことも多い。また、過剰量のオーキシンがもたらす細胞毒性の問題も、避けては通れない問題であった。このような状況の中、申請者は動物細胞で簡便にAID細胞株を作製する方法を確立し(Nishimura and Fukagawa, Chromosome Res, 2017)、また、勘案事項の一つであった過剰量のオーキシン問題も、OsTIR1F74A変異体と人工合成オーキシンである5-Ad-IAAとの組み合わせにより1/1000にまで減少させることに成功した(Nishimura et al., Nucleic Acids res, 2020)。本年はナノボディと呼ばれる小分子抗体をこのssAID法に組み込み、ナノボディが認識したタンパク質を分解するAlissAID systemの構築を行った。その結果、真核生物のモデル生物である出芽酵母細胞において、GFPやmCherryなどの蛍光タンパク質を標的としたAlissAID systemの開発に成功した。出芽酵母細胞においてはGFPタグのクローンコレクションが存在しているため、これらの酵母株を利用することで簡便にAlissAID株を作製することができるため、このAlissAID systemは出芽酵母の分子遺伝学にとって重要なツールとなると考えられる。
既存のオーキシンデグロン法で標的タンパク質の分解を誘導するためには分解用のタグであるAIDタグを標的とするタンパク質に付加する必要がある。出芽酵母や一部の培養細胞では相同組換えにより、簡便にAIDタグを付加することが可能である。一方で、他の動物培養細胞や生物個体ではこのようなタンパク質へのタグの付加は難しいものも多い。そのため、AIDタグの付加を必要としないssAID法、すなわちAlissAID法の確立を試みた。この目的のために小分子抗体であるナノボディを利用した。ナノボディとAIDタグとを融合させ、この融合タンパク質の中からユビキチン化の標的となるリシン残基を取り除くことによって、このタンパク質はユビキチン化されず、ナノボディ によって認識された標的タンパク質がユビキチン化され、分解されるようになると考えられた。本研究ではまず、既知のナノボディであるGFPナノボディとGFP融合タンパク質を用いて、GFP融合タンパク質の分解が可能であるかを真核生物のモデル生物である出芽酵母細胞を用いて検証を行った。すると、細胞質や核に局在するGFP融合タンパク質を5-Ad-IAA依存的に分解することが可能であった。次に赤色蛍光タンパク質としてGFPとともに多用されるmCherryに対するナノボディを用いてmCherry融合タンパク質に対するAlissAID法の構築を行った。得られたデータをもとに論文を作成し、プレプリントサーバーであるBioRxivへとデポジットを行った。
本年、確立した出芽酵母によるAlissAID法が動物の細胞においても機能するか検証を行う。また、上記の研究により、構築したAlissAID法により、内在性のタンパク質を標的とした分解系を構築するために、内在性の因子に対するナノボディの探索を行う。現在、ナノボディ を探索する方法としては、これを保有するリャマなどへの免疫による通常の抗体取得以外に、ファージや酵母の表層に抗体を提示させるディスプレイ法などが知られている。またこの他にもペプチドバーコード法によるナノボディ の探索法などが開発されている。そのため、これらの方法を用いることにより標的とするタンパク質に対するナノボディ の探索を行い、上記の分解誘導法に用いる。分解の標的としては核や細胞膜など多様な局在を持つタンパク質を標的とすることとで本分解システムの汎用性を確かめていく。本システムの特徴として、分解標的の認識を小分子抗体により担わせる点にある。既存のタンパク質分解法であるAID法、MGD、PROTACではタンパク質の修飾状況にかかわらず、全てのタンパク質が分解の標的となってしまう。しかし、本システムでは修飾がなされたタンパク質のみに対する小分子抗体を取得することができれば、修飾されたタンパク質のみを標的として分解誘導することが可能となる。 -
B型肝炎ウィルスの全長POL発現技術を基盤としたPOL機能の解明と新規薬剤開発
2022.4 - 2025.3
日本医療研究開発機構(AMED) 肝炎等克服実用化研究事業 B型肝炎創薬実用化等研究事業
杉山真也, 金井雅武, 西村浩平, 竹田浩平
Authorship:Coinvestigator(s)
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内在性タンパク質を標的とした超高感度オーキシン依存的タンパク質分解系の開発
2022.4 - 2024.3
加藤記念バイオサイエンス振興財団 研究助成「バイオテクノロジー分野」
西村浩平
Authorship:Principal investigator
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Artificial cell cycle control using the AID method, a low-toxicity and rapid proteolytic system
Grant number:20K21423 2020.7 - 2022.3
Japan Society for the Promotion of Science Grants-in-Aid for Scientific Research Grant-in-Aid for Challenging Research (Exploratory)
Kamura Takumi
Authorship:Coinvestigator(s)
The AID method, a low-toxicity and rapid proteolytic system, was used to artificially control the cell cycle in cultured cells. Since cell cycle progression is positively regulated by CDK complexes and negatively regulated by CKI, the expression of these factors was controlled by the AID method and their effects on the cell cycle were examined. We found that in the Cdk1 AID cell line, the cell cycle is arrested in the G2 phase due to Cdk1 degradation. Similar results were obtained not only in the chicken DT40 cell line but also in mouse ES cells, suggesting that artificial cell cycle control can be achieved by regulating Cdk1 in a variety of cells.
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変異型オーキシン・システムによる高効率なタンパク質分解系の構築
2020.4 - 2021.3
堀科学芸術振興財団 研究助成
西村浩平
Authorship:Principal investigator
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3D structural analysis of centromere in vertebrate cells
Grant number:19K06611 2019.4 - 2022.3
Japan Society for the Promotion of Science Grants-in-Aid for Scientific Research Grant-in-Aid for Scientific Research (C) Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
Nishimura Kohei
Authorship:Principal investigator
Grant amount:\4290000 ( Direct Cost: \3300000 、 Indirect Cost:\990000 )
We successfully detected genome regions that specifically interact with centromeres in interphase nuclei using centromeres without repetitive sequences and the chicken DT40 cell line. This success served as a starting point for this research project. The aim of this study is to elucidate the molecular basis and role of the specific three-dimensional genome organization of centromeres in the nuclei of vertebrates during interphase. The applicants combined their previously achieved results with a protein removal technique they developed, the Auxin-Inducible Degron system (AID), with high-precision genome three-dimensional structural analysis methods (4C and Hi-C) to find that centromeres function as boundaries for binding locks in interphase nuclei.
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3D structural analysis of centromere in vertebrate cells
Grant number:17K15041 2017.4 - 2019.3
Japan Society for the Promotion of Science Grants-in-Aid for Scientific Research Grant-in-Aid for Young Scientists (B) Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
NISHIMURA Kohei
Authorship:Principal investigator
Grant amount:\4290000 ( Direct Cost: \3300000 、 Indirect Cost:\990000 )
We carried out 4C-seq analysis of chicken DT40 cells. 4C-seq analysis showed some features of centromere region in interphase nuclei. In addition, we identified some factors that are involved in the centromere structure by using neocentromere forming cells and Auxin inducible Degron system in chicken DT40 cells.
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動物細胞におけるオーキシン誘導デグロン法を応用した、合成生物学的遺伝学の創出
Grant number:11J02503 2011 - 2013
日本学術振興会 科学研究費助成事業 特別研究員奨励費 特別研究員奨励費
西村 浩平
申請者は昨年DNA複製因子として考えられていたMcm8そしてMcm9が複合体を形成し、DNA二本鎖架橋のダメージの際の相同組換え修復において機能することを見いだし、論文として発表した。本年はこのニワトリDT40細胞におけるMcm8-9の機能をさらに多面的に解析するために、Mcm8-9複合体の精製を行い、ニワトリDT40細胞からMcm8-9複合体を精製することに成功した。この精製した複合体について生化学的また構造学的な解析を進めるための準備を現在行っている。またMcm8,9の遺伝学的な解析をさらに行う上でMcm8, およびMcm9のコンディショナルミュータントを当研究室で開発されたAID法を用いてMcm8-aid, Mcm9-aid株を作成し、表現型を確認したところ、いずれの場合もノックアウト細胞と比べて表現型が弱くなっていた。この結果を受けて当初考えていたマウスES細胞におけるAIDミュータントの作成に先立ち、AID法における標的タンパク質の分解の更なる効率化を行うこととした。出芽酵母において研究を行い、分解誘導に必要なタグの大きさを従来の3分の1にまで縮小することに成功した。さらにこのタグを3つ連続してつなげることによって従来よりも高効率の分解を誘導することに成功した。この分解の効率化によって、解析の困難であったElg1の機能解析が可能となり、分解効率の効率化とElg1の解析結果を併せて、論文に発表した。
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高等真核生物における蛋白質分解系の開発
Grant number:08J01719 2008 - 2010
日本学術振興会 科学研究費助成事業 特別研究員奨励費 特別研究員奨励費
西村 浩平
AID法は植物におけるオーキシン受容体TIR1を出芽酵母細胞内で発現させることでSCF^<TIR1>と呼ばれるE3ユビキチンライゲースを構築し、分解標識となるaidを付加したタンパク質をオーキシン依存的に速やかにポリユビキチン化し、分解する系である。私は昨年度この方法を動物の培養細胞に導入することに成功した。そのため、動物の培養細胞においてAID法によって必須因子を細胞内から除去した際に、細胞がその因子の細胞内機能を反映した表現型を示すかを確認するため、細胞分裂に必須なセントロメアタンパク質であるCENP-Hの発現をAID法によって制御することのできるDT40細胞(CENP-H-Caid)を作製した。この株においてaidを付加したCENP-Hはオーキシン添加によって細胞内で速やかに分解され、蛍光抗体法によりセントロメア領域に局在しているCENP-Hもオーキシン添加後30分でほぼ完全に除去されていることが明らかとなった。また、このCENP-H-Caid株はオーキシン添加直後から細胞周期がM期へ蓄積しはじめ、12時間後にはほぼすべての細胞がM期に蓄積している様子が観察された。これらの結果はAID法が動物細胞で標的タンパク質の急激な除去により、表現型を速やかに誘導することが可能であることを示している。既存のテトラサイクリンによるCENP-H転写制御株ではセントロメア領域からCENP-Hを完全に除去し、表現型が現れるまで24時間以上かかることを考慮すると、AID法は既存の方法と比べて、表現型を得るまでにかかる時間を大幅に短縮することができ、動物の培養細胞においても有用な遺伝学的解析ツールとなることが期待される