科研費 - 芳川 豊史
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研究課題/研究課題番号:24H00795 2024年4月 - 2029年3月
科学研究費助成事業 基盤研究(A)
中尾 恵, 芳川 豊史, 中村 光宏, 上田 順宏, 今井 裕一郎
担当区分:研究分担者
一部の観測情報に基づく人体や生体臓器の状態理解は医療従事者が日常的に直面する課題であると同時に医用工学における本質的な研究課題である.観測データに含まれない高次の背景知識をいかに機械学習に取り入れるか,この問いに対し,本研究は背景知識を知識グラフとして画像空間へ重畳するグラフ埋め込み画像の概念を提案し,その機械学習基盤の開発と診断治療への応用を目的とする.観測データの局所特徴を知識グラフに付与してモデルの表現力,予測性能を進化させる機械学習の枠組みを構築し,その潜在的な可能性を探究する.
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研究課題/研究課題番号:24K12028 2024年4月 - 2029年3月
科学研究費助成事業 基盤研究(C)
尾関 直樹, 芳川 豊史, 福井 高幸
担当区分:研究分担者
骨格筋量の減少に伴うサルコペニアは、肺癌を含む様々な癌種の予後不良因子として知られるようになってきた。本研究では、サルコペニアによるmyokineやadipokineの産生抑制、酸化ストレスおよび炎症の誘発、そしてそれらに伴う免疫抑制のメカニズムを探索する。また、臨床応用が期待されている関連バイオマーカー、酸化ストレスからの細胞保護と関連するHO-1、免疫寛容に関わるTregの発現を検証し、サルコペニア合併肺癌に関する炎症・免疫制御機構の解明と、これに基づく新規治療法の開発を目指す。
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研究課題/研究課題番号:24K11331 2024年4月 - 2027年3月
科学研究費助成事業 基盤研究(C)
清水 淳市, 田口 歩, 芳川 豊史
担当区分:研究分担者
肺癌は、もっとも予後が不良な固形癌の一つであり、革新的なアプローチによる新規治療法の開発が急務である。癌に対する液性免疫応答は発癌過程の極めて早い段階で誘導され、癌細胞の排除に働きうるとともに、癌抗原を認識する自己抗体が血中に出現する。本研究では、肺癌PDXモデルの血中からTIL-B由来の抗原―自己抗体複合体を分離し、我々が開発した超高感度自己抗体結合抗原解析を行うことで、TIL-B産生自己抗体が認識する癌抗原を網羅的にプロファイリングする。これにより、局所自己抗体が認識する免疫原性の高い新規癌抗原の同定から、革新的な肺癌の分子標的治療やバイオマーカーの開発を目指す。
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肺移植後の在宅呼吸機能モニタリング・解析と予測モデル開発:多施設共同研究
研究課題/研究課題番号:24K02533 2024年4月 - 2027年3月
科学研究費助成事業 基盤研究(B)
佐藤 雅昭, 芳川 豊史, LUO YAN, 早稲田 龍一, 前田 寿美子, 杉本 誠一郎, 伊達 洋至, 鈴木 秀海, 松本 桂太郎, 平間 崇, 星川 康, 新谷 康
担当区分:研究分担者
肺移植後患者の在宅モニタリングに用いるホームスパイロメトリーの結果をデジタルデータとしてオンラインで収集解析するシステム,Lt-FollowUpの開発に2020年から取り組んでいる.本研究では、1)計量経済学分野等で使われているtime-series analysisの手法を用いた独自のアルゴリズムを導入,感染・拒絶における呼吸機能低下パターンから鑑別診断を提案する機能を実装すること、2)国内の肺移植実施全11施設が参加し前向きに本システムの有効性を検証すること,3)予後に寄与し得る他因子から予後因子の同定を試み,それらを組み込むモデル開発,さらなる機能強化を目指す。
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肺癌由来エクソソームの糖鎖解析によるリキッドバイオプシー開発と個別化治療への応用
研究課題/研究課題番号:24K12009 2024年4月 - 2027年3月
科学研究費助成事業 基盤研究(C)
加藤 毅人, 芳川 豊史, 佐藤 ちひろ, 羽根 正弥
担当区分:研究分担者
本研究では肺癌手術患者の腫瘍及び正常肺検体を利用して組織内EVを抽出しEV表面の糖鎖解析を行う。さらに肺癌患者血漿と健常者血漿からもEV抽出及び糖鎖解析を行う。これら糖鎖データの統合 解析から、腫瘍由来EVに特異的であり患者血漿にも発現する糖鎖修飾をMRDとして同定し、 その糖鎖修飾をターゲットとした超高感度リキッドバイオプシーの開発を、多数の肺癌患者血漿を用いて行う。本研究における腫瘍内EVからMRDの標的となりうる糖鎖修飾を選択する手法は極めて独創的であり、複雑化する肺癌の集学的治療において、より効果的な個別化治療を進めていくために有用なリキッドバイオプシーの開発に繋がると考える。
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肺の脱気変形と手術変形に追従する術中マーカーレスマーキングと新規手術ガイドの創出
研究課題/研究課題番号:24K02534 2024年4月 - 2027年3月
科学研究費助成事業 基盤研究(B)
芳川 豊史, 中尾 恵, 北坂 孝幸, 中村 彰太, 加藤 毅人, 上野 陽史, 門松 由佳
担当区分:研究代表者
配分額:18590000円 ( 直接経費:14300000円 、 間接経費:4290000円 )
研究代表者は、脱気変形と手術変形に対応する「可変形バーチャル3D画像」の開発を世界に先駆けて進めてきた。本研究では, この「可変形バーチャル3D画像」を用いて、微小結節の位置や区域間面の同定等が、リアルタイムで可能となる、マーカーレスマーキングを情報学的手法により構築する。また、バードビューカメラシステムを用いて死角をなくし、位置情報を分かりやすくガイドする。さらに、様々な手術変形に追従した世界初の呼吸器外科手術ガイドシステムの創出を目指す。
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線維芽細胞の多様性理解に基づく肺線維症合併肺癌の病態の解明と治療戦略の探索
研究課題/研究課題番号:22K08997 2022年4月 - 2027年3月
科学研究費助成事業 基盤研究(C)
仲西 慶太, 芳川 豊史, 榎本 篤
担当区分:研究分担者
肺の不可逆的な線維化を伴う肺線維症を背景に発症する肺癌は極めて予後不良であり、その病態の解明および新規治療薬の開発は急務である。これまでに癌間質で増生する線維芽細胞には癌抑制性の細胞と癌促進性の細胞の2種類があり、両者を区別するマーカーとしてMeflinを同定した(前者で陽性、後者で陰性)。また肺線維症ではMeflin陽性線維芽細胞は線維化の抑制に、同陰性線維芽細胞は線維化の促進に働いていることを示した。本研究では肺線維症合併肺癌患者における腫瘍微小環境、特に転移巣における線維芽細胞の多様性の解明とともに、癌間質をターゲットとした新規治療戦略の開発を目的とする。
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間質性肺炎急性増悪病態における新規病的微小環境因子・ミトコンドリアDNAの役割
研究課題/研究課題番号:21K08202 2021年4月 - 2024年3月
科学研究費助成事業 基盤研究(C)
阪本 考司, 芳川 豊史, 若原 恵子, 橋本 直純, 猪股 弥生
担当区分:研究分担者
特発性肺線維症(IPF)は中高年に発症する進行性難治性の肺疾患である。急性増悪はIPF患者の約4割に突然発症する死亡率の高い合併症であるが、原因が分かっておらず発症の予測や治療法の開発が進んでいない。我々は最近、IPF患者さんの体液中のミトコンドリアDNAの増加が急性増悪の発症を予測しうることを発見した。これにヒントを得た本研究は、急性増悪発症のメカニズムとして肺に存在するマクロファージの異常活性化とミトコンドリアの代謝異常が関与していると仮定して、新たに急性増悪の動物モデルを作成し治療標的と診断法の開発を目指します。
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脱気変形アルゴリズムとバードビュー機能を用いた肺表面位置情報ガイドの開発への挑戦
研究課題/研究課題番号:21H03020 2021年4月 - 2024年3月
科学研究費助成事業 基盤研究(B)
芳川 豊史, 中村 彰太, 中尾 恵, 北坂 孝幸, 後藤 真輝, 門松 由佳
担当区分:研究代表者
配分額:17680000円 ( 直接経費:13600000円 、 間接経費:4080000円 )
肺は、術前CT画像は含気状態であるが、手術は脱気状態で行われるため、術前と術中の形態が大きく異なる。
画像技術の進歩により、微小な肺結節の検出が増え、その切除には、術前マーキングが必須である。また、区域切除において、現在行われている区域間面の同定法も確実とはいえず、現在の内視鏡カメラでは視野に限界がある。
本研究では, 侵襲的な処置をすることなく、真に低侵襲に微小肺結節を切除するために、微小結節の位置や区域間面の同定が正確に可能となるシステムを情報学的手法により構築する。また、バードビューカメラシステムを用い、肺表面の位置情報を術中にリアルタイムで、わかりやすく、正確にガイドすることを目指す。 -
ドライバー癌遺伝子誘導性の細胞老化を作用機序とする変異KRAS肺癌の創薬研究
研究課題/研究課題番号:21H02924 2021年4月 - 2024年3月
科学研究費助成事業 基盤研究(B)
佐藤 光夫, 芳川 豊史, 長谷 哲成, 湯川 博, 田中 一大, 松井 佑介
担当区分:研究分担者
変異KRAS癌の創薬を目的とする。代表者は自身開発の正常気管支上皮細胞モデルHBECにおいて、変異KRASの導入が細胞の悪性度を増強する一方で、細胞の増殖を停止させる癌遺伝子誘導細胞老化(oncogene-induced senescence; OIS)という現象に着目した。HBECモデルを用いたOIS回避機能に基づくプールshRNAライブラリースクリーニングを実施し、遺伝子Xを有望な治療標的候補として特定した。本課題では世界初のOIS誘導機序による肺癌治療薬の開発を目標とする。
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生体肺移植におけるドナー、レシピエントの末梢血テロメア長と慢性移植肺機能不全
研究課題/研究課題番号:20K08925 2020年4月 - 2023年3月
科学研究費助成事業 基盤研究(C)
半田 知宏, 芳川 豊史, 松田 文彦, 伊達 洋至
担当区分:研究分担者
脳死肺移植において、ドナーの末梢血テロメア長が移植後のCLAD発症や生命予後と関連する事、レシピエントのテロメア長が移植後の骨髄機能不全と関連する事が報告されているが、本邦で頻度が高い生体肺移植におけるドナー、レジピエントのテロメア長の臨床的意義については報告がない。本研究では、生体肺移植におけるドナー、レシピエントの末梢血テロメア長の臨床的意義を明らかにする事を目的とする。単施設の後ろ向き+前向き研究によって末梢血テロメア長と慢性拒絶の関連を中心に検討を行う。
2002年1月1日から2019年7月31日までの間に京都大学医学部附属病院で生体肺移植が施行された患者とそのドナー257名(レシピエント89名、ドナー168名)を対象とした。DNA純度不適(A260/280比<1.7)やカルテ情報の不備、検体量不足などで85例を除外し、172例で末梢血テロメア長の測定を行う予定である。現在までにドナー116例の末梢血テロメア長解析を終了している。観察期間中、CLADの発症は11例であった。CLADを認めた症例の肺移植の術式は、両肺8例、片肺3例であった。CLADの発症は両肺で認めた症例が1例で、他は片肺の発症であった。テロメア長の測定は、qPCRを用いて行った。ドナーテロメア長と年齢には弱い負の相関関係が認められた(n=116, r=-0.222, P値<0.05)。また、男性(n=66)は女性(n=50)と比較してテロメア長が長かった(P値<0.0001Mann-Whitney U test)。DNAの保存期間とテロメア長に相関は認めなかった。左右のCLADは別々に評価し、それぞれのドナーの末梢血テロメア長とCLADの関連について検討した。T/S ratioとCLAD(P=0.195, Mann-Whitney U test)、T/S percentileとCLAD(P=0.325, Mann-Whitney U test)のいずれも有意な関連を認めなかった。
保存DNA検体を用いたドナーのテロメア長の測定と臨床情報の収集、慢性拒絶の評価を完了しており、概ね予定通りの進捗と考えている。
過去検体を用いた検討ではドナーの末梢血テロメア長と慢性拒絶の間に有意な関連は認めなかった。さらに症例を蓄積し、フォローアップ期間を延長して検討を行っていく。CLADとの関連が予想される遺伝子変異(多型)とCLADの関連についても検討を加えていく予定である。 -
研究課題/研究課題番号:19K22657 2019年6月 - 2021年3月
科学研究費助成事業 挑戦的研究(萌芽)
芳川 豊史, 武部 貴則, 伊達 洋至
担当区分:研究代表者
配分額:6500000円 ( 直接経費:5000000円 、 間接経費:1500000円 )
本研究では、「オルガノイド」作成技術を基礎に、同所性または異所性に「肺オルガノイド」を移植することで、肺移植に代替可能な慢性呼吸不全に対する新規治療技術の基盤を創出する。
具体的には、「肺オルガノイド」を用いて、肺移植に代替可能な、慢性呼吸不全に対する新規治療法の 開発を目指し、① 同所性移植 と ② 異所性移植の二種のコンセプトで研究を行う。
肺移植は、末期呼吸器疾患に対する最後の治療として確立したが、脳死ドナー不足は重大な問題である。「肺移植に代替可能な慢性呼吸不全に対する新規治療法」が期待され、本研究では、肺移植に代替可能な慢性呼吸不全に対する新規治療技術の基盤を創出することを目標とし、「オルガノイド」作成技術を利用することを目指す。まず、マウス胎仔肺の同種同所性移植モデルを用いて、形態と機能について検討を行い、胎仔肺が傷害肺に対して肺機能の改善に寄与することが分かった。
本研究の最終目標は、腎不全における人工透析、重症心不全における人工心臓のように、末期呼吸不全においても、肺移植に代替するような人工臓器を含めた新規治療法の開発を行うことであり、社会的意義は大きい。今回、オルガノイドを使用する前の段階として、マウス胎仔肺を用いた同所性移植を行い、傷害肺の機能が改善されるという結果を得ることができたことは、現在までの進捗としてはある一定の結果を示すことができたという点で、学術的意義がある。今後、どのタイミングでどのようなオルガノイドをどこに移植するのかについては、検討する必要がある。さらに、オルガノイドよりよい代替物があるのかなどの課題を有する。 -
研究課題/研究課題番号:19K09283 2019年4月 - 2022年3月
科学研究費助成事業 基盤研究(C)
豊 洋次郎, 陳 豊史, 伊達 洋至
担当区分:研究分担者
肺移植において移植肺(グラフト)機能不全は,早期死亡の主因であり、その成績は未だ満足すべきものではない。ドナー臓器摘出後の保存状態は肺移植後早期に生じるグラフト機能不全を引き起こす虚血再灌流傷害に直接影響する因子であり、周術期死亡の要因となる他、慢性拒絶のリスク因子とされる。現在臨床で使用されている単純冷却保存に、近年生鮮の長期保存を可能とした日本初の革新的技術であるウルトラファインバブル技術(生理活性作用を有した1μm以下の機能的微細気泡を液体に溶存させる技術)を導入することで、肺保存時間の延長、虚血再潅流肺障害に対する新たな治療選択肢になり得るかどうかを検討する計画を立案した。
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ドナーグラフト内の白血球を標的とした肺移植における新規治療法の開発
研究課題/研究課題番号:19K09302 2019年4月 - 2022年3月
科学研究費助成事業 基盤研究(C)
大角 明宏, 芳川 豊史, 伊達 洋至
担当区分:研究分担者
ドナーの方から御提供頂き摘出した肺を、体内にある状態を模倣して換気・灌流することにより肺の機能を評価することが、欧米では一般的となっています。本研究では、小動物の体外肺灌流のシステムを用いて、ドナー肺内の白血球の動きに着目して、移植前に肺の機能を向上させる研究です。移植後は、主に白血球が主役となり傷害を起こすため、さまざまなタイプの白血球の動きに着目して、効果的な治療を行います。
移植おけるドナー臓器不足は日本と同様、諸外国でも課題である。欧米では、近年ドナーの摘出肺を移植に用い得るか、体外肺灌流システムを用いて評価されている。このシステムは、肺動脈幹・左房・気管にカニューレを装着し、特殊な灌流液で循環させ、かつ人工呼吸器を用いて換気させながら、ドナー摘出肺の機能を評価するものである。本研究では、ラット肺の体外肺灌流および肺移植モデルを用いて、体外肺灌流中及び移植後のドナー由来の白血球分画(単球及び顆粒球)の変動をフローサイトメトリーによって解析する。また、これらの分画を薬剤処置等によって除去することにより肺移植後の機能が改善されるかを検証する。本研究の結果は、肺移植後の虚血再灌流傷害や慢性拒絶の予防に有用で、画期的な肺移植治療につながり得ると考える。
2019年8月より、ラット肺の体外肺灌流モデルの練習を開始した。同年9月に無虚血ラット肺を用いた体外肺灌流モデルが確立したが、体外肺灌流装置を購入したのは約20年前であり同年10月には老朽化のためか装置が故障し、修理のために海外へ装置を輸送した。
2019年11月よりラット肺移植モデルの練習を開始し、虚血ラット肺を用いたラット肺移植モデルを確立した。また、2020年3月よりフローサイトメトリーによる白血球分画の解析を開始し、血液や肺内の白血球分画の測定方法を確立した。
2020年10月に体外肺灌流装置の修理が完了し、虚血ラット肺を用いた体外肺灌流モデルが確立した。
2021年4月の時点で、薬剤を用い体外肺灌流中に白血球分画の除去を行う実験を終了した。今後は体外肺灌流中に白血球分画の除去を行うことで、肺移植後の虚血再灌流傷害を予防できるか検証する予定である。 -
肺移植後の慢性拒絶撲滅を目指す、自然免疫を温存した選択的免疫抑制療法の創出
研究課題/研究課題番号:18H02893 2018年4月 - 2021年3月
科学研究費助成事業 基盤研究(B)
陳 豊史, 進藤 岳郎, 伊達 洋至, 祝迫 惠子, 吉澤 明彦
担当区分:研究代表者
配分額:16770000円 ( 直接経費:12900000円 、 間接経費:3870000円 )
肺移植の長期予後を阻む最大の原因は、「慢性拒絶」が主体の、慢性期移植肺機能不全(CLAD)であるが、その病態は未だ不明で有効な治療法もない。肺は、外界と直接通じる臓器のため、免疫力が元来強く拒絶を起こしやすいが、感染症を併発する可能性も高い。よって、肺移植では、感染に対する免疫力を低下させない「選択的な免疫抑制」が重要である。そこで、「感染免疫を低下させない免疫抑制剤」として、免疫抑制剤としては新規のメカニズムを有する、MEK阻害剤に着眼し、小動物肺移植モデルを用いて、MEK阻害剤(Trametinib)が、肺の慢性拒絶を軽減することを多角的に証明した。
世界だけでなく本邦においても、肺移植は年々増加しており、慢性呼吸不全に対する最後の砦としての医療として確立した。しかしながら長期予後は満足が行くものではない。現在、肺移植において最も克服すべき課題は、慢性期死亡の最大の原因である、「慢性拒絶」が主体の慢性期移植肺機能不全(CLAD)である。今回、我々は、感染に対する免疫力を低下させない「選択的な免疫抑制」に着眼し、免疫抑制剤としては新規のメカニズムを有する、MEK阻害剤(Trametinib)が、肺の慢性拒絶を軽減することを世界で初めて証明した。本研究の学術的的意義は大きく、今後、臨床応用を含めた展開が期待され、社会的意義も大きい。 -
ドライバー癌遺伝子により誘導される細胞老化 (OIS) を利用した肺癌治療の開発
研究課題/研究課題番号:18H02819 2018年4月 - 2021年3月
科学研究費助成事業 基盤研究(B)
佐藤 光夫, 長谷 哲成, 湯川 博, 田中 一大, 芳川 豊史, 川口 晃司, 川井 久美, 横井 香平
担当区分:研究分担者
【本課題の目的】肺癌のドライバー癌遺伝子の一つ変異KRASは腺癌の20%程度に認められるが、その標的治療の開発は未成功である。これは変異KRASの癌化シグナルの薬物的な遮断が困難なためである。応募者は正常気管支モデルであるHBEC実験系を確立し(Sato, Cancer Res 2006)、さらに、変異KRASをHBECに導入すると悪性度の増強にもかかわらず細胞分裂を停止する現象を発見した(Sato, Mol Cancer Res 2013)。これは正常細胞が癌化を防御する機構の一つ癌遺伝子誘導細胞老化(oncogene-induced senescence; OIS)である。以上より、応募者は変異KRAS肺癌の新たな治療として変異KRASシグナルの遮断ではなく、OISを活用する治療を着想した。その実現のために、まず、HBECを用いて、OIS抑制作用を表現型とする機能的なプールshRNAスクリーニングを実施し、複数の標的候補を特定した。特に、肺癌細胞株が高発現する遺伝子Xは小分子化合物による治療標的となる可能性があるため、学内創薬産学協同研究センター(ラクオリア創薬株式会社)化合物スクリーニングを予定した(機密保持契約締結済み)。本研究はこれらの研究を発展させ、変異KRASならびに変異EGFRやALK遺伝子によるOIS誘導治療の開発を目的とする。
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【2019年度の成果】
これまでに、複数の化合物ライブラリーを使用したハイスループットスクリーニング(HTS)を実施した。初期に同定したヒット化合物の活性が再現できなかったため、化合物選択基準の見直しを行い、ヒット化合物を選び直した。ヒット化合物の再現性、選択性、構造活性相関(Structure-Activity Relationship: SAR)解析の結果に基づき、数個のシーズ化合物に絞り込んだ。
これまでに、複数の化合物ライブラリーを使用したハイスループットスクリーニング(HTS)を実施した。初期に同定したヒット化合物の活性が再現できなかったため、化合物選択基準の見直しを行い、ヒット化合物を選び直した。ヒット化合物の再現性、選択性、構造活性相関(Structure-Activity Relationship: SAR)解析の結果に基づき、数個のシーズ化合物に絞り込んだ。ヒット化合物の再現性ができなかったことなどにより当初の計画よりやや遅れている。
これまでの研究成果に基づいて2020年度は以下を計画する。①SARの結果に基づいて新規化合物(リード化合物)を合成する。②リード化合物および遺伝子X産物との結晶構造解析を外部委託に実施する。③新規化合物に対して評価・解析およびデザイン・合成のステップを繰り返し実施し、さらに薬効の優れるリード化合物を合成する。④前記と併行して、遺伝子Xノックアウト肺癌細胞クローンを用いて、遺伝子X阻害の癌細胞の増殖抑制機序の解明を継続して実施する。⑤2020年度までに合成されるリード化合物に対して、各種非臨床試験(薬理、毒性、薬物動態試験など)に必要な予備的試験を実施する。具体的には、複数の化合物の薬効(XenograftやPDXモデル)、薬物動態(経口吸収率、血中半減期、代謝・排出経路、代謝物)、短期毒性(心血管作用、中枢作用、病理)、物性(溶解性、固体安定性)を評価する。以上の結果に基づいて、2020年度末までにリード化合物の基本特許申請を目標とする。 -
水素水の拡散能を利用した心停止ドナー肺障害の修復と肺移植実現を目指した大動物実験
研究課題/研究課題番号:17H04295 2017年4月 - 2020年3月
科学研究費助成事業 基盤研究(B)
伊達 洋至, 陳 豊史, 濱路 政嗣, 本山 秀樹, 青山 晃博
担当区分:研究分担者
日本での脳死ドナー不足は深刻であり、心停止ドナーや障害のあるマージナルドナーからの肺移植が可能となれば、多くの患者の救命につながる。
我々は、抗酸化作用と拡散能を有する「水素」に着眼し、小動物であるラット移植モデルにおいて、水素水の胸腔内灌流により、水素が胸膜を透して心停止ドナー肺に拡散し、温虚血障害を改善することを突き止めた。そこで、より臨床に近い大動物(ビーグル犬)を用いて、23時間の冷保存実験を行った。その結果、水素水を肺還流に使用する肺保存液および保存肺を浸漬する浸漬液に使用することにより、移植肺機能が有意に改善されることを証明した。
水素ガス吸入法は、肺保存実験において報告されてきたが、取り扱いが難しく、爆発性があるなどの欠点があった。爆発性のない水素水が肺保存に有用であることを、小動物(ラット)の胸膜還流モデルを使って報告してきた。しかし、大動物では胸膜を通じての肺内への水素の拡散に限界があった。そこで本研究では、臨床肺移植に近い条件の大動物(ビーグル犬)を使用して、水素水を保存液と浸漬液に使用することの有用性を示し、23時間の冷保存を可能とした。
8-10時間が限界とされてきた安全保存時間を延長させる可能性を示した学術的意義は大きく、臓器移植数を増加せせる可能性があることは、ドナー不足の日本において社会的意義も大きい。 -
チロシンキナーゼ阻害剤を用いた新たな臓器保存・虚血再灌流肺障害治療戦略
2016年4月 - 2017年3月
科学研究費補助金 基盤研究(C)
担当区分:研究分担者
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肺移植における抗体性拒絶の早期診断法と低用量IL-2を用いた新規治療法の開発
研究課題/研究課題番号:15K10253 2015年4月 - 2018年3月
科学研究費助成事業 基盤研究(C)
青山 晃博, 陳 豊史, 伊達 洋至,
担当区分:研究分担者
研究目的1:当科で施行した肺移植は平成27年27例、28年26例、29年24例で30年3月で193例(146例が生存中)となった。抗ドナー抗体が検出されたのは20例であった。研究期間中に閉塞性細気管支炎は9例で剖検が1例、再肺移植による摘出1例で、他はいずれも肺生検は施行不可能であった。
研究目的2:気管移植よりもより臨床肺移植に近いラット同所肺移植モデルのモデルを作成した。ラットアロ肺移植を行い、シクロスポリンを14日と35日投与する群を作成、短期投与群では、肺組織上清中に抗ドナー抗体を検出し組織学的には閉塞性細気管支炎を認めた。ラット肺移植モデルでも局所での抗体産生されることが示された。 -
細胞外マトリックスの3次元的定量による肺の成長・過膨張・気腫形成の病態解明
研究課題/研究課題番号:15K09172 2015年4月 - 2018年3月
科学研究費助成事業 基盤研究(C)
佐藤 晋, 陳 豊史
担当区分:研究分担者
エラスターゼ傷害による肺気腫モデルマウスにおいて、気腫病変Low Attenuation Volume(LAV)の全肺に対する割合LAV%と強制オッシレーション(FOT)により得られた肺メカニクスの指標elastane (H) とが極めて高く相関し、さらに巨視的な構造改変の不均一性がFOTから算出したelastanceの不均一性と関連を示した。この関連は早期(傷害後3週)でも慢性期(13週後)でも同様であったが、慢性期においては気道成分であるairway resistance (Raw)も強く関与し、構造改変の経時変化の特徴と考えられた。気腫病変は用量依存性を示すも慢性期で天井効果を示した。
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血液型不適合やクロスマッチ陽性肺移植の実現を目指す、各種抗体に関する多角的研究
2015年4月 - 2017年3月
科学研究費補助金
担当区分:研究代表者
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心停止ドナーからの肺移植実現をめざした体外循環装置中吸入療法による肺傷害修復実験
2014年4月 - 2017年3月
科学研究費補助金 基盤研究(B)
担当区分:研究分担者
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抗体陽性・血液型不適合肺移植を目指すための、抗体関連拒絶に対する研究
2013年4月 - 2015年3月
科学研究費補助金
担当区分:研究代表者
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生体・脳死肺移植におけるメモリー細胞と制御性T細胞/ThTh17バランスの解析
2012年4月 - 2015年3月
科学研究費補助金 基盤研究(C)
担当区分:研究分担者
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肺移植臨床応用をめざした心停止ドナー肺の体外循環装置による肺傷害修
2011年4月 - 2014年3月
科学研究費補助金 基盤研究(B)
担当区分:研究分担者
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体外肺潅流技術を用いた、傷害のあるドナー肺の評価とその治療への挑戦
2011年4月 - 2014年3月
科学研究費補助金 若手研究(A)
担当区分:研究代表者
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マージナルドナー肺、心臓死ドナー肺の新しい評価法と治療法の開発
2009年4月 - 2011年3月
科学研究費補助金 若手研究(B)
担当区分:研究代表者
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心停止ドナーからの肺移植臨床応用をめざした大動物実験
2008年4月 - 2011年3月
科学研究費補助金 基盤研究(B)
担当区分:研究分担者
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薬剤吸入による心停止後移植肺グラフト保護に関する前臨床研究
2008年4月 - 2011年3月
科学研究費補助金 基盤研究(C)
担当区分:研究分担者
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ET-Kyoto液による胸腹部多臓器同時ハーベスト法の開発
2008年4月 - 2011年3月
科学研究費補助金 基盤研究(C)
担当区分:研究分担者
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ナノ粒子キャリアを用いた吸入による新規DDSに関する研究
2007年4月 - 2009年3月
科学研究費補助金 基盤研究(C)
担当区分:研究分担者
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心臓死肺移植における、ドナー肺の評価とその保護に関する研究
2007年4月 - 2008年3月
科学研究費補助金
担当区分:研究代表者