科研費 - 松山 秀一
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牛の繁殖障害克服に資する生殖フェロモンの同定と作用機構の解明
研究課題/研究課題番号:24H00538 2024年4月 - 2029年3月
日本学術振興会 科学研究費助成事業 基盤研究(A)
武内 ゆかり, 松山 秀一, 松田 二子
担当区分:研究分担者
牛と近縁の反芻家畜であるヤギでは「雄効果」というフェロモンによる強力な性腺刺激現象の存在が知られており,本研究代表者らの研究により,同フェロモンの実体や中枢作用機序が明らかにされてきた。
本研究では,従来の経験を活かして雌牛の性腺機能を刺激する雄効果フェロモンに加えて,雄牛の乗駕行動を促進すると考えられる発情フェロモンも単離し,構造決定を目指す。さらに天然フェロモンの分子構造に関する情報をもとに人工フェロモンを合成し,受容機構や中枢作用機構を解明するとともに,徐放システムの開発や野外実証試験といった応用研究を展開して,繁殖障害に対する新たな予防・治療技術の開発につながる基盤情報を集積する。 -
低酸素応答で制御される表皮分化機構と羊水由来の分化促進因子の解明
研究課題/研究課題番号:23H02136 2023年4月 - 2027年3月
科学研究費助成事業 基盤研究(B)
人見 清隆, ダムナニョヴィッチ ヤスミナ, 松山 秀一
担当区分:研究分担者
細胞培養系で表皮形成を再現するシステムが広く用いられるが、分化誘導開始のために空気暴露を必須とする。この理由は不明であるが、申請者は低酸素誘導因子の活性の関与を見出した。この機構の解明のため、どのような遺伝子や蛋白質が低酸素と関連して表皮形成に関わるか明らかにする。胎児の生育環境の羊水では、空気暴露のない状態で表皮形成されることに着目し、これまで分化刺激を補える因子を羊水を給源に候補分子を得た。本課題ではそれらの遺伝子組換え産物を作製してその解析や発現細胞の特定を行う。
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家畜の繁殖制御技術開発に資する卵胞発育中枢の神経メカニズムの解明
研究課題/研究課題番号:22H00397 2022年4月 - 2027年3月
科学研究費助成事業 基盤研究(A)
大蔵 聡, 若林 嘉浩, 松山 秀一
担当区分:研究分担者
本研究では、家畜の繁殖機能制御の最上位中枢である卵胞発育制御中枢「性腺刺激ホルモン放出ホルモン(GnRH)パルスジェネレーター」に着目し、GnRHパルスジェネレーターがパルス状GnRH分泌を制御する神経メカニズムを解明する。ターゲットトキシンの弓状核内局所投与と投与部位近傍の神経活動の同時解析法や、オプトジェネティクス技術により、GnRHパルスジェネレーター本体のメカニズムを解明するとともに、ニューロキニンBおよびダイノルフィンAがGnRHパルスジェネレーターを調節するメカニズムを明らかにする。
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ゲノム編集ヤギを活用したコンディショナルノックアウトによる排卵制御中枢の解明
研究課題/研究課題番号:21K19187 2021年7月 - 2024年3月
科学研究費助成事業 挑戦的研究(萌芽)
大蔵 聡, 松山 秀一, 森田 康広
担当区分:研究分担者
本研究では、ヤギをウシのモデル動物として用い、ヤギ受精卵におけるゲノム編集技術により作出したゲノム編集ヤギを用いてキスペプチン遺伝子を視床下部内局所でノックアウトし、卵胞嚢腫の病態モデルを作出することに挑戦する。ウシの受胎率は年々低下しており、畜産現場において解決すべき喫緊の課題である。受胎率低下の要因のひとつである卵胞嚢腫は、多くの卵胞が排卵することなく卵巣に存在することから、排卵を調節する視床下部神経機構の機能不全が原因と想定される。本研究では、ゲノム編集ヤギを活用した卵胞嚢腫病態モデルにより、家畜の卵胞嚢腫発症の分子機構、ひいては排卵制御中枢のメカニズムを明らかにすることをめざす。
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研究課題/研究課題番号:20K21372 2020年7月 - 2022年3月
科学研究費助成事業 挑戦的研究(萌芽)
木村 康二, 松山 秀一
担当区分:研究分担者
分娩によって子宮は大きな物理的損傷を受けるとともに感染・炎症を生じる。空胎日数は子宮内膜の修復と感染治癒に要する時間であり、この延長はウシ生産性低下の一因である。オゾンは強い酸化力と殺菌性を有し薬剤耐性菌の出現もなく、残留性はないが、持続力がなく使用に限界がある。このオゾンをオイルやグリセリン等に溶存させることによって分解を抑制・徐放させる製剤が開発されており(オゾンゲル)、この使用により患部の殺菌だけでなく、創傷早期治癒効果が認められてる。本研究ではこれを用いて、分娩後の子宮内膜感染防止と物理的損傷からの回復を達成することにより、空胎日数短縮を図りウシの妊孕性を向上させる。
オゾンゲルを最終オゾン濃度が0,0.5および5 ppmとなるようにウシ子宮内膜間質細胞培養液に添加し、24時間培養した。その後、1μg/mLのLPSを添加し、6時間後細胞を回収した。回収した細胞よりRNAを抽出し、逆転写してcDNAを合成した。このcDNAを用いて、定量的PCR法(qRT-PCR)により、IL6遺伝子発現量を検討した。なお、GAPDHを内部標準とした。オゾンゲルの添加により、LPS添加・非添加に関わらずIL6遺伝子の発現量に有意な変動は見られなかった。さらに、対照区ではLPS添加によりIL6遺伝子の発現量が若干増加する傾向が見れれたものの、どの実験区においてもLPS添加によってIL6遺伝子発現量の有意な増加は見られなかった。
最終添加オゾン濃度を増加させると、オゾンゲル内に多く含まれているグリセリン濃度が上昇し、細胞にダメージを与える可能性があるため、グリセリンの影響を受けないオゾン添加手法の開発が必要である。そこで、このオゾンゲルをアガロースで包埋し、グリセリン濃度上昇を抑えつつオゾン濃度を高く保てるかについて検討を行った。本研究では2つの方法を行った。1つは細胞培養ウェルにオゾンゲルを添加し、その上にアガロースゲルを重層し、ゲルの拡散を防ぐ方法(重層法)およびウェル内にアガロースを重層し、中央部に円柱状に縦穴をあけ、その中にオゾンゲルを添加し、その上部にさらにアガロースを重層する方法(包埋法)を用いた。これらのオゾンゲル-アガロース層の上層に培養液を添加し、培養液中のオゾン濃度を測定した。重層法では添加初期時に平均6.72 ppmのオゾンが存在していたが、包埋法では平均25.4 ppmのオゾンが含まれていた。
。直接添加 5 ppmではIL6遺伝子発現に変化が見られなかったためこれ以上の高濃度で実験する必要がある。しかしながら直接添加ではオゾンゲル内に溶媒として存在するグリセリンが高濃度になってしまうため、限界がある。本年度はアガロースゲルを用いてグリセリンの培養液内への拡散を防ぎながらオゾンの拡散のみを達成するための手法開発に時間を要した。2つの方法(重層法および包埋法)を試みたが、特に包埋法で培養液中に高濃度のオゾンが確認出来た。本法を用いることによって細胞を培養し、炎症系遺伝子(IL6)だけでなく細胞外マトリックスなどの子宮修復に関係するその他の遺伝子発現への影響について検討することが可能となると推測され今後この遅れは十分に取り返すことが出来ると思われる。
当該年度の結果から、アガロースゲル包埋法を用いることによって培養液中に高オゾン濃度を達成することが可能になった。この手法を用いて以下の検討を進めることとする。1.子宮機能回復のためには分娩後の感染炎症からの早期の離脱が必要である。オゾンゲルの炎症系に与える影響を明らかにするため炎症系遺伝子発現(IL6, IL8等)に与える影響について検討する。2. また、子宮修復のためには損傷を受けた組織において細胞の増殖・組織の再構築が必要である。これらに対するオゾンゲルの効果を明らかにするため、細胞増殖能および細胞外マトリックス関連遺伝子発現(コラーゲン、コラゲナーゼ等)に及ぼす影響について検討する。3. 最終的にオゾンゲルが分娩後のウシ子宮修復に効果を有するかを確認するため、分娩後のウシ子宮内腔にオゾンゲルを直接投与し、子宮回復能、子宮内膜炎発症レベル、初回発情ならびに初回人工授精の受胎率を検討する。 -
最終糖化産物がウシ子宮、卵管および胚発育に及ぼす影響とその作用機序の解明
研究課題/研究課題番号:20H03129 2020年4月 - 2024年3月
科学研究費助成事業 基盤研究(B)
松山 秀一, 木村 康二
担当区分:研究代表者
配分額:17680000円 ( 直接経費:13600000円 、 間接経費:4080000円 )
分娩後の乳牛では、泌乳にともなう負のエネルギーバランスを補うように設計された穀物主体の飼料が給与されているが、受胎率は低下の一途を辿っている。本研究では、高穀物含量の飼料によって産生されるメチルグリオキサールが受胎率低下の一因となっていることを検証する。ウシ生体を用いて、血中メチルグリオキサール濃度の上昇が受胎性に及ぼす影響を明らかにし、次いで、ウシ子宮内膜細胞、卵管細胞、卵子および胚を用いて、メチルグリオキサールが低受胎を引き起こすメカニズムを解明する。
本研究では、高穀物含量の飼料によって産生されるメチルグリオキサール(MGO)が乳牛における受胎率低下の一因となっていることを検証する。まず、血中MGOが牛の受胎性に及ぼす影響を明らかにするため、ホルスタイン経産牛(n=110)の血中MGO濃度、月齢およびBCSと受胎成績との関係についてロジスティック回帰分析により検討した。その結果、人工授精時の血中MGO濃度と受胎成績に直接的な関係は認められなかった。今後は、人工授精以前の血中MGOを継続的に測定し、受胎性との関連を検討することとした。本年度は、次に、MGOが牛子宮内膜細胞に及ぼす影響を検討した。牛子宮内膜上皮細胞および子宮内膜間質細胞の培養液中にMGO(0.1 mMまたは1 mM)を添加し、6、12または24時間後に細胞を回収して、細胞障害性、細胞増殖率、老化細胞の割合を算出した。子宮内膜上皮細胞ではMGO添加による変化がみられなかった。一方、子宮内膜間質細胞においては、MGO添加後6、12および24時間後の各処置区で、MGO 1 mMを添加した場合の傷害性が対照区と比較して有意に増加し、増殖率は対照区と比較して有意に減少した。また、MGO添加後12時間の処置区で、MGO 1 mMを添加した場合の細胞老化率が対照区と比較して有意に上昇したことから、MGOが牛子宮内膜間質細胞の細胞老化を誘導することが示唆された。さらに、MGOが牛生体の子宮内膜に及ぼす影響を検討するため、穀物含量の高い飼料を給与されていない肉用牛を用いて、発情行動を確認した翌日にMGO溶液(5 mM)を各子宮角内に25 mLずつ投与した。MGOを投与した6日後にバイオプシー鉗子を用いて子宮内膜組織を採取し、DNAマイクロアレイ解析を行った。その結果、対照群と比較してMGO投与群で高発現となった16遺伝子、低発現となったのは6遺伝子であった。
令和2年度は、当初予定されていなかった子宮内へのMGO単回投与が子宮内膜に及ぼす影響を検討する実験を行ったため、MGOの静脈中への長期投与が子宮内膜に及ぼす影響を検討する実験が未実施となっているものの、乳牛の受胎成績と血中MGO濃度の関連を検討する実験やMGOが子宮内膜細胞の生存性、増殖性、細胞老化に及ぼす影響を検討する実験については、当初の予定どおり実施できており、おおむね順調に研究を進めている。
令和3年度は、MGOの静脈中への長期投与が子宮内膜に及ぼす影響について検討する実験を進めるとともに、MGOが卵管細胞や胚発生に及ぼす影響を検討する。また、MGOが子宮内膜細胞の細胞老化を誘導する機序についても検討を行う予定である。 -
ATP-プリン受容体シグナリングによる哺乳類の排卵中枢制御メカニズムの解明
研究課題/研究課題番号:19H03103 2019年4月 - 2023年3月
科学研究費助成事業 基盤研究(B)
井上 直子, 平林 真澄, 松山 秀一, 上野山 賀久, 中村 翔
担当区分:研究分担者
本研究の目的は、ほ乳類の雌の排卵を制御する視床下部視索前野/前腹側室周囲核キスペプチンニューロンに発現するプリン受容体に着目し、ATP-プリン受容体シグナリングが排卵中枢であるキスペプチンニューロンを活性化し排卵に至る神経メカニズムを明らかにすることである。一般的に細胞内のエネルギー通貨として知られるATPは、脳内でプリン作動性神経リガンドとして作用するが生殖機能における役割は不明であった。本研究では、ATP-プリン受容体による排卵中枢キスペプチンニューロンの活性化メカニズムを明らかにするとともに、得られた知見の家畜への応用を検証する。
本研究は、排卵中枢である視索前野/前腹側室周囲核キスペプチンニューロンを上位から制御する新規な神経シグナルとしてATP-プリン受容体シグナリングに着目し、プリン作動性神経の同定と、同神経の活性化メカニズムの解明により、いつ、どのようなメカニズムによりATPシグナルが前腹側室周囲核キスペプチンニューロンに入力・活性化するのかを明らかにすることで、排卵制御の新たな神経機構を解明することを目的としている。
本年度は、ラットを用いた組織学的解析をすすめ、排卵の指標である黄体形成ホルモンのサージ状分泌が生じる前にプリン作動性神経細胞が活性化する神経核を複数特定した。また、それらの神経核のプリン作動性神経細胞には、エストロジェン受容体αが発現していることも見いだした。現在、神経トレーサー解析により、これらのプリン作動性神経細胞から前腹側室周囲核キスペプチンニューロン近傍への神経投射を解析中である。
また本年度は、キスペプチンニューロン(Kiss1遺伝子)特異的にCre組み換え酵素を発現する遺伝子改変ラット(Kiss1-Creラット)の作出にも成功した。今後、小麦胚芽レクチンなどの神経トレーサーを発現するアデノ随伴ウィルスベクターを脳領域的特異的に投与し、前腹側室周囲核キスペプチンニューロンに直接入力する神経経路の解析をすすめる予定である。
in vitro系による解析については、マウス前腹側室周囲核キスペプチンニューロン由来不死化細胞株を購入し、カルシウムイメージング解析を現在実施している。
今年度、排卵の指標である黄体形成ホルモンのサージ状分泌が生じる前にプリン作動性神経細胞が活性化する神経核を特定できたことと、Kiss1-Creラットの作出に成功したことから、今後神経トレーサー解析をすすめることにより、前腹側室周囲核キスペプチンニューロンに入力するATPシグナルの同定が可能となる。このように研究は順調に進展している。
また、マウス前腹側室周囲核キスペプチンニューロン由来不死化細胞株によるカルシウムイメージング解析の立ち上げも順調に進んでおり、今後ATP-プリン受容体シグナリングの解析をすすめる予定である。
今後は、キスペプチンニューロン(Kiss1遺伝子)特異的にCre組み換え酵素を発現する遺伝子改変ラット(Kiss1-Creラット)に、小麦胚芽レクチンなどの神経トレーサーを発現するアデノ随伴ウィルスベクターを脳領域的特異的に投与し、前腹側室周囲核キスペプチンニューロンに直接入力する神経経路の解析をすすめる予定である。また、細胞内 Ca2+濃度変化をキスペプチン放出の指標として用い、マウス前腹側室周囲核キスペプチンニューロン由来不死化細胞へのATPまたはATP・プリン受容体拮抗薬共添加による細胞内Ca2+濃度変化を解析することで、ATP-プリン受容体シグナリングがキスペプチンニューロンを直接活性化するかどうかを検討する予定である。さらに、ラットで明らかにした知見が家畜に応用できるかを検証するため、シバヤギの視索前野近傍にATPを投与し、黄体形成ホルモン分泌を誘起できるかどうかを検証するとともに、プリン受容体拮抗薬を投与し血中LH分泌を指標として黄体形成ホルモン一過性大量放出をブロックできるかを検証する予定である。 -
子宮腺を有する子宮内膜組織の体外構築とそれを用いたウシ伸長胚発生分化機構の解明
研究課題/研究課題番号:19H03105 2019年4月 - 2023年3月
科学研究費助成事業 基盤研究(B)
木村 康二, 松山 秀一, 山本 ゆき
担当区分:研究分担者
ヒトやマウスに見られないウシの胚伸長には子宮腺の存在が必須と報告されている。この時期のウシ胚の発生・分化については未解明な部分が多く、そのメカニズムを解明するためには、正常な機能を有する3次元的に体外で構築された子宮腺を含む子宮内膜と胚との共培養が必要とされる。本研究では子宮腺管腔形成メカニズムを解明することにより正常な機能を有する子宮腺を作出し、これを有する体外構築子宮内膜組織を用いてウシ伸長胚の発生分化メカニズムを解明する。
昨年度の結果からウシ子宮内膜より単離した子宮腺をマトリゲル内に包埋し、EGF、WNT3a, 5a, 7a添加状態で培養すると子宮腺様構造が形成されることが示された。今年度はまず、これらの因子がこの腺様構造形成に寄与しているのかどうかについて検討した。EGFを除去した場合、シスト形成は見られたが、腺様構造は見られなかった。一方、WNTすべてあるいは各WNTを1種ずつ取り除いた培養液で培養した場合は対照区と同様に腺様構造が確認出来た。さらにEGF存在下でCanonical WNT 経路および WNT 分泌阻害剤を添加し、子宮腺様構造の形成に影響があるかどうかについて検討を行ったが、これら阻害剤の添加により形成された子宮腺様構造の形成率は影響を受けなかった。また、得られたシストおよび子宮腺様構造を固定し、サイトケラチン(上皮細胞マーカー)およびビメンチン(間葉系細胞マーカー)で免疫染色した。シストおよび子宮腺様構造ともサイトケラチンポジティブ/ビメンチンネガティブとなり、腺様構造を形成する細胞は上皮系細胞であることが明らかとなった。
これまで、単離した子宮腺断片を用いて研究を行っていたが、この断片をトリプシンで消化し、細胞懸濁液とした後、マトリゲル上に播種して培養を行った。EGFおよびWNT存在下でシスト形成が見られたため、このシストをゲルに包埋し培養したところ上記のような子宮専用構造の形成は見られず、シストのままであった。
次に、生後の子牛にプロジェステロン製剤を投与し、子宮腺ノックアウト個体作出を行っていたがその子牛が性成熟月齢に達したため、性周期および子宮内膜組織のバイオプシーを行い、子宮腺の存在の有無を組織学的に検討した。対照区と比べて性周期に変化は見られず、さらに組織学的観察から子宮腺の存在が確認されなかった。
昨年度の実施計画から、今年度はウシ子宮腺様構造の形成因子の同定と子宮腺ノックアウト個体の評価を実施する予定であった。コロナ禍で研究に制限されていたが順調に進捗し予定の実験は終了した。一方、子宮腺ノックアウトも計画通りホルモン処置した子牛が性成熟期を迎えたが、予測通りの結果が得られなかったため、次年度再度子宮腺ノックアウト個体作出を実施する。
①体外作出子宮腺様構造の機能解析:これまでの研究の中で様々な因子の添加や非添加などの培養条件下において作出された子宮腺様構造細胞塊の機能について検討する。得られた細胞塊におけるサイトケラチンやビメンチンの発現を免疫組織化学を用いて検討し、構成細胞のキャラクタリゼーションを行うとともに、子宮内膜上皮分泌タンパク質や胚伸長関与タンパク質の遺伝子発現について検討する。またこれまでの研究から、この構造体は子宮腺上皮から形成されるが、子宮腺は子宮内腔から子宮外膜方向に垂直方向に子宮粘膜内に深く陥入し、末端部では多枝分岐する。このような腺構造において部位によって細胞のキャラクターが異なっていることが示されているため、子宮腺を内腔側および子宮外膜
側に分けて採取し、体外における子宮腺様構造の形成率の違いや、構成細胞のキャラクタリゼーションならびに子宮分泌タンパク質や胚伸長関与タンパク質の遺伝子発現について検討する。
②子宮腺ノックアウトウシの作出:これまでに生後すぐにプロジェステロン製剤を筋肉内投与することによって高濃度P4曝露処理を行ったが、2020年度の結果から子宮内膜内での子宮腺の消失が確認出来なかった。よってウシではヒツジと同様のホルモン処置ではノックアウト個体の作出が困難であることが示されている。今年度はホルモン投与量の検討(P4投与量を増加させる)やP4だけでなくエストロジェン製剤と組み合わせることにより、より効果的な子宮腺ノックアウトウシ作出手法の確立を試みる。 -
牛子宮内膜間質SP細胞の間葉上皮転換による子宮内膜再生機序の解明
研究課題/研究課題番号:17K08141 2017年4月 - 2020年3月
科学研究費補助金 基盤研究(C)
松山 秀一
担当区分:研究代表者
配分額:4810000円 ( 直接経費:3700000円 、 間接経費:1110000円 )
ウシ子宮内膜細胞に存在するside population(SP)細胞とSP細胞以外の子宮内膜細胞における遺伝子発現をRNA-seqにより解析した結果、SP細胞は幹細胞/前駆細胞様の特性を有し、その一部は骨髄由来である可能性が考えられた。子宮内膜細胞におけるSP細胞の割合は分娩直後に低く、その後、徐々に増加することが示されており、SP細胞は分娩後に子宮内膜細胞に分化、増殖する可能性が考えられた。また、高産次で低受胎傾向牛の子宮内膜SP細胞割合は低産次で正常受胎牛と同程度であったことから、SP細胞の割合は産次による影響を受けず、SP細胞の多寡が受胎性に影響を及ぼす可能性も低いことが考えられた。
本研究では、牛の子宮に組織幹細胞の性質を持った細胞が存在することが明らかにされ、分娩後の子宮修復に関与する可能性が示されました。牛では分娩後の受胎率が低いことが知られています。この受胎率の低下は分娩後の子宮修復の不具合が一因となっている可能性がありますが、本研究の成果は、子宮の組織幹細胞を利用することで子宮修復の不具合を改善させるといった、これまでにないアプローチでの受胎率向上技術の開発に寄与することが期待されます。 -
ウシ子宮内膜再生メカニズムの解明
研究課題/研究課題番号:15K18806 2015年4月 - 2017年3月
科学研究費補助金 若手研究(B)
担当区分:研究代表者
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ウシ人工栄養膜細胞株作出と特性評価およびこれを用いた体外着床モデルの構築
研究課題/研究課題番号:26292168 2014年4月 - 2018年3月
木村 康二
担当区分:研究分担者
ウシの受胎率向上のためにはウシ胚の発生および着床・妊娠確立メカニズムの解明が必須である。本課題ではウシ着床メカニズム解明のために人工多能性幹細胞および人工栄養膜細胞を樹立し、着床モデル作出の可能性について検討を行った。ウシ胎子羊膜細胞を生体から回収し、これにトランスポゾンベクターを用いて、細胞の多能性獲得に関与する4つの遺伝子を導入することにより、上記細胞株の作出を行った。その結果、生殖系列への寄与が確認できたウシ人工多能性幹細胞株および栄養膜細胞の特徴を備えた人口栄養膜細胞株の樹立に成功した。
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子宮内膜再生に寄与するウシ子宮内膜幹細胞の同定
研究課題/研究課題番号:25850225 2013年4月 - 2015年3月
科学研究費補助金 若手研究(B)
担当区分:研究代表者