科研費 - 菅波 孝祥
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研究課題/研究課題番号:24KK0150 2024年9月 - 2028年3月
科学研究費助成事業 国際共同研究加速基金(海外連携研究)
菅波 孝祥, 付 友紀子, 和田 恵梨
担当区分:研究代表者
配分額:20930000円 ( 直接経費:16100000円 、 間接経費:4830000円 )
肥満や糖尿病、脂肪肝等の生活習慣病は、従来は代謝疾患と捉えられてきたが、現在では、過栄養が誘導する慢性炎症性疾患としての一面が広く認識されている。一方、免疫細胞の分化・活性化における細胞内代謝の役割が見出され、イムノメタボリズムは細胞レベルや臓器・個体レベルの様々な階層で複雑に構成されることが明らかになった。さらに、副交感神経刺激による炎症抑制作用など、神経系による炎症・免疫系の制御も報告され、末梢臓器のイムノメタボリズムは脳の制御を受けると想定される。本研究ではMASHを手がかりに、神経・免疫・代謝系が織りなす複雑な相互作用を解明する。
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微小代謝環境が駆動する非アルコール性脂肪肝炎における線維化機構の解明
研究課題/研究課題番号:23K27377 2023年4月 - 2026年3月
科学研究費助成事業 基盤研究(B)
菅波 孝祥
担当区分:研究代表者
配分額:18850000円 ( 直接経費:14500000円 、 間接経費:4350000円 )
持続する過栄養は代謝臓器に慢性炎症を惹起し、生活習慣病の病態基盤となる。例えば、NASHでは、蓄積する脂質の“量”に加えて“質”の重要性が明らかになったが、代謝変化は臓器レベルで捉えられ、臓器局所の微小代謝環境には注意が払われてこなかった。研究代表者は、細胞死に陥った肝細胞を核としてマクロファージが集積する特徴的な組織像を同定し、これを起点として肝線維化が進行することを見出した。本研究では、独自に見出した肝局所の微小代謝環境が、全身の臓器間ネットワークの中でどのように制御されるかを明らかにする。
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微小代謝環境が駆動する非アルコール性脂肪肝炎における線維化機構の解明
研究課題/研究課題番号:23H02686 2023年4月 - 2026年3月
科学研究費助成事業 基盤研究(B)
菅波 孝祥
担当区分:研究代表者
配分額:18850000円 ( 直接経費:14500000円 、 間接経費:4350000円 )
持続する過栄養は代謝臓器に慢性炎症を惹起し、生活習慣病の病態基盤となる。例えば、NASHでは、蓄積する脂質の“量”に加えて“質”の重要性が明らかになったが、代謝変化は臓器レベルで捉えられ、臓器局所の微小代謝環境には注意が払われてこなかった。研究代表者は、細胞死に陥った肝細胞を核としてマクロファージが集積する特徴的な組織像を同定し、これを起点として肝線維化が進行することを見出した。本研究では、独自に見出した肝局所の微小代謝環境が、どのようにして形成され、肝線維化に至るかを明らかにする。
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糖尿病性認知症・サルコペニアにおける脳筋脂肪連関の分子病態解明と先制医療開発
研究課題/研究課題番号:22K19723 2022年6月 - 2025年3月
科学研究費助成事業 挑戦的研究(萌芽)
佐藤哲子, 菅波 孝祥
担当区分:研究分担者
本研究では、糖尿病に伴う脳と筋肉との病的多臓器連関により、認知症とサルコペニアが同時進行すると考え(脳-筋-脂肪連関)、その炎症イニシエーター/メディエーターとして脳・筋肉・脂肪組織に発現するTREM2と血中sTREM2に着目し、sTREM2受容体・sTREM2機能制御トリガー分子など新規コグニティブフレイル惹起因子の同定を端緒として、糖尿病における「エイジングドミノ」すなわち多臓器障害の分子機構の解明を目指す。以上より、糖尿病にて悪化する脳-筋-脂肪連関の包括的な治療法を確立し、健康寿命延伸の為の認知症・サルコペニアの革新的予知指標・治療戦略の開発を目指す。
本研究では脳-筋-脂肪の病的多臓器連関のメディエーターとして脳・筋肉・脂肪組織に発現するTREM2・血中sTREM2に着目し、sTREM2受容体やsTREM2機能制御トリガー分子等の同定を端緒として、糖尿病における脳-筋-脂肪連関悪化・コグニティブフレイルの分子機構の解明、脳-筋-脂肪連関悪化の包括的な治療法の開発を行い、健康寿命延伸の為の認知症・サルコペニアの革新的予知指標・治療戦略の開発を目指している。本年度は、申請者が既に作製しているTREM2欠損マウスに16週間の高脂肪食負荷を行った結果、TREM2欠損マウスでは対照マウスと比べ、体重や脂肪量は変わらないにも関わらず、糖負荷試験において空腹時血糖とインスリン値の有意な上昇を認め、耐糖能異常やインスリン抵抗性を呈した。さらに、TREM2欠損マウスは骨格筋量の減少も認め、筋脂肪連関へのTREM2の関与が示唆された。今後、認知機能評価の実施、さらにマウスから採取した血清・単球・脂肪組織・脳のサンプルを用い、各群別に網羅的遺伝子発現解析を施行し、糖尿病・肥満での認知症・サルコペニア発症における脳筋脂肪連関悪化プロセスとその進展メカニズムを検討し、TREM2の病態意義を明らかにする。
また本年度、認知症コホート2000例を構築し、血中sTREM2と血中Aβ・tauを新規アッセイ系により同時測定し、糖尿病の有無や認知症の重症度間で、血中Aβ42/Aβ40比 sTREM2値に有意な結果を認めた。特に、糖尿病を合併した認知症・MCIではミクログリア機能障害によるsTREM2低下が起点になることが示され、糖尿病性認知症の特徴と予知評価系を提唱した。さらに、コグニティブフレイルに関する健診コホートとNHO多施設共同肥満症・糖尿病コホート(J-DOS3)も構築し認知症とサルコペニア/フレイルとの関連を糖尿病有無別に横断・縦断解析している。
基礎研究では、脳-筋-脂肪連関増悪の分子病態の解明として、TREM2欠損マウスの16週間の高脂肪食負荷試験を完了し、脂肪-筋連関における耐糖能異常や筋委縮など有意な成績を見出しており、今後各マウスの血清・単球・脂肪組織を用い、網羅的遺伝子発現解析やsTREM2機能制御トリガー分子の同定など脳-筋-脂肪連関の進展機序のメカニズムを検討していくことができる。
また、臨床研究においては、認知症・MCIコホート2000例の登録が完了し、先行して一部症例に対し、 世界初で血中sTREM2と血中Aβ・tauの同時測定・比較検討し、糖尿病性認知症ではミクログリア機能障害によるsTREM2低下が起点となる可能性を報告し、糖尿病性認知症の特徴や予知バイオマーカー評価系(sTREM2低下・Aβ不変・tau上昇)を提唱することができた(Diabetes Res Clin Pract 2022)。現在、検証解析にむけ、追加測定を進めている。
さらに、本年度、NHOコグニティブフレイルコホート(J-DOS3)や健診コホートを新規に構築し、糖尿病性認知症・サルコペニアにおける脳筋脂肪連関の分子病態解明に向け、データベース構築と血清・血漿取得を行い、アディポサイトカインやmicroRNAの測定の準備を行っており、計画通り、順調に研究は進んでいる。
本年度得られたTREM2欠損マウスや各糖尿病・認知症各モデルマウスの血清・単球・脂肪組織を用いて、各群別に網羅的遺伝子発現解析、メタボローム解析、microRNAアレイとエピゲノム解析を施行し、各オミックス情報の連結により、脳筋脂肪連関悪化プロセス(エピゲノム~遺伝子発現・メタボライト変化)を可視化・プロファイリングし、認知症・サルコペニア惹起共通因子を探索・同定する。
また、本年度までに構築した認知症・MCIコホート、コグニティブフレイルに関する健診コホートや肥満症・糖尿病コホートのデータベースを用い、肥満度, 筋肉量, 糖脂質代謝, 炎症・動脈硬化指標, 単球機能(M1/M2・TREM2発現), 血中sTREM2濃度, 新規トリガー分子血中濃度, 認知症指標[認知機能検査・脳MRI/PET、血中Aβ・tau],サルコペニア指標[骨格筋量指標・握力等]について横断・縦断解析しながら、取得した血液検体を活用して、メタボローム解析やmicroRNAアレイなどより、認知症・サルコペニア・糖尿病惹起共通因子の同定を検討し、同時にsTREM2受容体やsTREM2機能制御トリガー分子等の同定も進めていく。
以上より、脳-筋-脂肪の病的多臓器連関のメディエーターとして脳・筋肉・脂肪組織に発現するTREM2・血中sTREM2に着目し、糖尿病における脳-筋-脂肪連関悪化・コグニティブフレイルの分子機構の解明、脳-筋-脂肪連関悪化の包括的な治療法を確立し、健康寿命延伸の為の認知症・サルコペニアの革新的予知指標・治療戦略の開発を目指す。 -
研究課題/研究課題番号:22K19524 2022年6月 - 2025年3月
科学研究費助成事業 挑戦的研究(萌芽)
菅波 孝祥
担当区分:研究代表者
配分額:6500000円 ( 直接経費:5000000円 、 間接経費:1500000円 )
本研究では、死細胞センサーのMincleに着目して、障害尿細管における脂質代謝変容がどのようにして内因性Mincleリガンドの産生に繋がり、急性腎障害の慢性化に働くかを明らかにする。内因性Mincleリガンドのβ-GlcCerは、ゴーシェ病等の遺伝性難病において蓄積するが、非遺伝性疾患における産生制御機構は全く分かっていない。本研究の成果により、死にゆく細胞が能動的な代謝変化を介して周囲の細胞にメッセージを発信することが明らかになり、新たな細胞間ネットワークのプロトタイプになると期待される。
我々の体内では、毎日数千億個の予めプログラムされた細胞死(アポトーシス)が生じ、マクロファージ等の貪食細胞により処理されている。一方、ネクローシス型の細胞死は、細胞死に伴って細胞内成分を細胞外に放出することで周囲の免疫細胞に炎症を惹起する。近年、新しい細胞死の様式が次々と報告され、炎症慢性化における意義が注目されているが、死細胞側の細胞内代謝については注意が払われてこなかった。研究代表者はこれまでに、マクロファージに発現する自然免疫センサーMincleが、急性腎障害における壊死尿細管を感知して炎症慢性化に働き、腎萎縮をもたらすことを見出した。この時、壊死尿細管にβ-グルコシルセラミド(β-GlcCer)が過剰に蓄積し、内因性リガンドとしてMincleを活性化することで炎症慢性化に働くことを報告した。本研究では、死にゆく細胞において脂質代謝がどのように変容してβ-GlcCerが蓄積するのかを解明し、炎症慢性化における意義を明らかにする。昨年度に引き続き本年度も、β-GlcCer代謝酵素Aに着目して検討を行った。Cre-loxPシステムを用いて、時期特異的に近位尿細管上皮細胞において代謝酵素Aを欠損する遺伝子改変マウスを新たに作出した。本マウスにより、代謝酵素Aが腎臓において近位尿細管上皮細胞に特異的に発現すること、代謝酵素Aを欠損することで多数の代謝酵素により制御されるβ-GlcCerが蓄積することなどを見出した。現在、本マウスに対して急性腎障害モデルを作製し、腎障害に及ぼす影響を検討している。また、野生型マウスに種々の急性腎障害モデルを作製し、代謝酵素Aの発現変化とβ-GlcCer蓄積量の相関を検討した。
上述のように、Cre-loxPシステムを用いて、時期特異的に近位尿細管上皮細胞において代謝酵素Aを欠損する遺伝子改変マウスの作出に成功した。β-GlcCerは生体に必須の糖脂質のため、すべての細胞に存在するとともに、多数の代謝酵素が存在して、複雑に制御されている。その中で、代謝酵素Aを時期特異的に欠損する本マウスを用いることで、近位尿細管上皮細胞の代謝酵素Aが腎臓全体のβ-GlcCer量の制御に中心的な役割を担うことが初めて明らかになった。このことは、腎臓全体から脂質を抽出して薄層クロマトグラフィで解析したことに加えて、LC-MS解析や質量分析イメージングなど複数の解析手法で確認した。また、網羅的な質量分析解析を行うことで、代謝酵素Aを欠損すると、単にβ-GlcCerにとどまらず、グロボ系糖脂質など多彩な糖脂質に変化が及ぶことを見出した。さらに、質量分析イメージング解析を実施することで、このような糖脂質の変化が近位尿細管上皮細胞において生じていることを確認した。以上より、本研究は現在まで順調に進捗していると判断できる。
本年度までに、代謝酵素Aの遺伝子改変マウスの作出に成功し、正常状態における代謝酵素Aの意義を明らかにすることができた。現在、本マウスに対して種々の急性腎障害モデルを作製しており、腎障害の程度や遷延化に及ぼす影響を検討している。本研究の契機となった虚血再灌流障害モデルに加えて、葉酸負荷、シスプラチン負荷などの急性尿細管壊死モデルを予定している。これらは急性腎障害の誘導機序が異なるが、近位尿細管上皮細胞が障害を受ける点で一致しており、代謝酵素Aの発現低下が共通に認められるかどうかを検証する予定である。代謝酵素Aの欠損マウスで急性腎障害を作製し、表現型に変化を確認できた場合は、網羅的な質量分析解析や質量分析イメージングを駆使して、糖脂質代謝変容の全貌を明らかにする。また、本マウスに対してMincle欠損マウスの骨髄移植を実施し、急性腎障害における表現型のどの部分がMincleを介するかを明らかにする。従来、DAMPsの同定やDAMPs産生制御機構に関する報告はほとんどなかったため、本マウスの解析により全く新しい知見が得られるものと期待される。 -
マクロファージの細胞内鉄代謝変容がもたらす肝線維化機構の解明
研究課題/研究課題番号:22H04806 2022年4月 - 2024年3月
科学研究費助成事業 新学術領域研究(研究領域提案型)
菅波 孝祥
担当区分:研究代表者
配分額:5720000円 ( 直接経費:4400000円 、 間接経費:1320000円 )
近年、非アルコール性脂肪肝炎(NASH)症例における鉄過剰が報告されているが、その機序や肝臓内における責任細胞は明らかになっていない。研究代表者は、独自の動物モデルを用いて、肝細胞死を起点として肝常在性マクロファージが活性化し、肝線維化が生じることを明らかにしてきた。本研究では、NASHの病態形成においてマクロファージに鉄が過剰に蓄積し、線維化促進形質を獲得する分子メカニズムの解明を目指す。本研究の成果により、アンメット・メディカル・ニーズの高いNASHに対して、鉄代謝異常に着目した発症機序解明と新規治療法開発への展開が期待される。
近年注目されている非アルコール性脂肪肝炎(NASH)では、肝細胞において鉄が関与する細胞死(フェロトーシス)が注目されてきたが、マクロファージの鉄代謝がNASH病態形成に及ぼす影響は明らかでなかった。昨年度までに我々は、磁気細胞分離装置を用いてマクロファージを分類することで、鉄含有量の多いマクロファージサブタイプが線維化促進形質を獲得し、NASHにおける肝線維化に寄与することを報告した。またLA-ICP-MS解析によりFe-hiマクロファージはCLSに局在すること(B01-1千葉大学・小椋康光博士との連携研究)を明らかにした。本年度は、鉄過剰がマクロファージの線維化促進形質につながる分子機序について検討した。培養マクロファージに塩化鉄やデキストラン鉄を添加し、トランスクリプトーム解析を行った結果、リソソームストレスで活性化する転写因子Tfeファミリー(Tfe3, Tfeb)の活性化が示唆され、実際、Tfe3やTfebをノックダウンすると、鉄負荷によるマクロファージの線維化促進形質が抑制された。この反応は、培養マクロファージ(RAW264)や脂肪肝に由来するマクロファージでは観察されたが、正常肝マクロファージでは認められなかった。そこで、正常肝と脂肪肝に由来するマクロファージを比較したところ、後者において転写因子Egr1の活性化が重要であることを見出した。実際、培養マクロファージにおいて、Tfe3, TfebをノックダウンするとEgr1発現誘導は抑制され、Egr1をノックダウンすると炎症促進分子の発現誘導は抑制されることを確認した。正常肝と脂肪肝におけるマクロファージの違いとして、コレステロールに着目した。正常肝マクロファージに対して鉄とコレステロールを組み合わせて添加したところ、概ね相加的な効果にとどまり、正常肝と脂肪肝の違いの説明には至らなかった。
令和5年度が最終年度であるため、記入しない。
令和5年度が最終年度であるため、記入しない。 -
過栄養で誘導される視床下部炎症形成におけるミクログリアのダイナミズムの解明
研究課題/研究課題番号:20K07355 2020年4月 - 2024年3月
科学研究費助成事業 基盤研究(C)
付 友紀子, 菅波 孝祥
担当区分:研究分担者
慢性炎症は肥満の病態基盤を成すが、特にエネルギー代謝調節中枢である視床下部において、末梢臓器に先行して慢性炎症が生じ、肥満の病態形成に寄与することが明らかになってきた。しかしながら、視床下部炎症の時空間的動態は未だ不明の部分が多い。本研究では、視床下部における免疫担当細胞(ミクログリア・マクロファージ系)の時空間的動態と視床下部による末梢臓器の炎症制御意義を明らかにすることを目指す。
本研究では、過栄養状態で視床下部におけるミクログリア・マクロファージの時空間的動態の解明、または一過性炎症モデルを用いて、中枢MC4Rシグナルが炎症収束過程の肝臓マクロファージに及ぼす影響を検討した。高脂肪食負荷マウスで、視床下部の各神経核においてマクロファージ系細胞の細胞数や活性化状態が変化し、特に室傍核(PVN)にマクロファージ浸潤が観察された。また、中枢のMC4Rシグナルの欠損は肝臓に浸潤するマクロファージのサブタイプ変化を来たし、死細胞クリアランスが抑制された。
最近では、疾患に特異的なサブタ イプが報告され(Satoh et al. Nature 2017)、“疾患特異的マクロファージ” の概念が提唱さ れている。マクロファージの多様性に加えて、栄養・代謝 と炎症・免疫の連関を示唆する知見が集積しつつある。視床下部には多数の神経核が複雑に配置されており、末梢の栄養情報を感知して、摂食やエネルギー代謝、自律神経系の活 性などを制御する。本研究により、視床下部の各神経核におけるマクロファージ系細胞の質と量の変化が明らかになり、新たな “疾患特異的マクロファージ” の同定に繋がる可能性が期待できる。 -
死細胞応答の変容に基づく代謝性組織リモデリングの分子機構の解明
研究課題/研究課題番号:20H03447 2020年4月 - 2023年3月
科学研究費助成事業 基盤研究(B)
菅波 孝祥
担当区分:研究代表者
配分額:17680000円 ( 直接経費:13600000円 、 間接経費:4080000円 )
近年、過栄養に伴う代謝ストレスが慢性炎症を誘導し、生活習慣病の病態基盤となることが注目されている。研究代表者は、代謝ストレスによる細胞死が自然免疫応答を惹起して、メタボリックシンドロームにおける慢性炎症をもたらすことを見出した。本研究では、どのような細胞死が、どのようにして疾患・臓器特異的に炎症慢性化をもたらすかを解明し、新たな病態メカニズムの解明を目指す。
本研究では、過栄養に伴う慢性炎症の分子機構を解明するために、肥満や非アルコール性脂肪肝炎(NASH)で認められる特徴的な組織像のcrown-like structure(CLS)に注目し、その形成機構や病態生理的意義を検討した。具体的には、(1)植物由来フラボノイド・タキシフォリンのNASH治療への応用、(2)NASHにおける鉄高含有マクロファージの機能的意義の解明、(3)マクロファージコレステロール代謝変容がもたらす肝線維化機構の解明について取り組んだ。
現在、NASHの病態メカニズムは未だ不明の点が多く、厚労省に認可されたNASH治療薬も存在しない。本研究では、既に健康食品として世界中で使用されているタキシフォリンが抗メタボリックシンドローム効果に加えて、抗NASH効果も有することを初めて明らかにするとともに、CLSが薬効評価の点で有用であることを示した。また、鉄やコレステロールに着目してNASH病態メカニズムの一端を明らかにし、新たな治療戦略の創出につながると期待できる。 -
研究課題/研究課題番号:20H04944 2020年4月 - 2022年3月
科学研究費助成事業 新学術領域研究(研究領域提案型)
菅波 孝祥
担当区分:研究代表者
配分額:7540000円 ( 直接経費:5800000円 、 間接経費:1740000円 )
近年、炎症慢性化における細胞死の意義が注目を集めており、死細胞に由来するDAMPsや死細胞クリアランスの意義が明らかになってきたが、死細胞を起点とする炎症細胞ネットワークの全貌は未だ未解明である。研究代表者は、マクロファージに発現する新規死細胞センサーのMincleに着目して、死細胞応答が誘導する炎症慢性化機構の解明に取り組んできた。本研究では、Mincle活性化に伴って多彩な間質細胞の数や種類がどのように変化するか、炎症細胞社会を構成する細胞間ネットワークの変容を明らかにする。
本研究では、急性炎症モデルとして腎虚血再灌流傷害による急性腎障害モデル、慢性炎症モデルとして高脂肪食負荷による肥満モデルを用いて、Mincleを起点とする炎症細胞社会の制御メカニズムを検討する。本年度は、以下の3項目に関して実施した。
1)Mincleリガンド産生メカニズムの検討;既に質量分析解析により、壊死尿細管でβ-グルコシルセラミド量が増加することを確認している。本項目では、壊死尿細管においてβ-グルコシルセラミドが蓄積するメカニズムを検討したところ、急性腎障害後、グルコシルセラミドが蓄積する方向に様々な代謝酵素の遺伝子発現が変化することを見出した。また培養近位尿細管細胞に細胞障害を加えて急性腎障害を模倣するin vitroモデルを作製したところ、同様の遺伝子発現プロフィールを確認した。
2)Mincleシグナルの検討;これまで、β-グルコシルセラミドを細胞培養ディッシュに固相化することでMincleリガンド活性を検討してきたが、細胞を播種した時点でMincleシグナルが活性化するため、詳細な検討ができなかった。本項目では、β-グルコシルセラミドとコレステロールを共結晶化し、培養マクロファージに添加する方法を用いて、固相化と同様のMincleシグナル活性化が得られることを確認した。
3)包括的1細胞遺伝子発現解析;本領域のサポートを得て、肥満の脂肪組織を対象とする包括的1細胞遺伝子発現解析を実施した。特にマクロファージと線維芽細胞に注目して、肥満の過程で増加する亜集団を同定し、さらにリガンド・レセプター解析によりマクロファージと線維芽細胞の相互作用を検討した。その結果、線維化ステージにおいて特徴的な細胞間相互作用を複数見出すことができた。
令和3年度が最終年度であるため、記入しない。
令和3年度が最終年度であるため、記入しない。 -
研究課題/研究課題番号:20H05503 2020年4月 - 2022年3月
科学研究費助成事業 新学術領域研究(研究領域提案型)
菅波 孝祥
担当区分:研究代表者
配分額:6240000円 ( 直接経費:4800000円 、 間接経費:1440000円 )
非アルコール性脂肪肝炎(NASH)症例における鉄過剰が報告されているが、その機序や肝臓内における責任細胞は明らかになっていない。研究代表者は、独自の動物モデルを用いて、肝細胞死を起点としてクッパー細胞が活性化し、肝線維化が生じることを明らかにしてきた。そこで本研究では、クッパー細胞の鉄代謝変容がもたらす肝線維化の分子メカニズムの解明を目指す。本研究の成果により、アンメット・メディカル・ニーズの高いNASHに対して、鉄代謝異常に着目した発症機序解明と新規治療法開発への展開が期待される。
本研究では、クッパー細胞において鉄が過剰に蓄積する細胞内動態と鉄過剰によるクッパー細胞の機能変容を検討し、新たな肝線維化機序の解明を目指す。本年度は、以下の3点に関して検討を行った。
1)様々なNASHモデルにおける検証;昨年度までに見出したクッパー細胞におけるリソソームストレスの亢進を様々なNASHモデル、即ちメチオニン・コリン欠乏食負荷モデルやウェスタンダイエット長期負荷モデルなどを用いて確認した。リソソームストレスの指標として、MiT/TFEファミリー転写因子のTFE3, TFEBの免疫染色を行った。
2)鉄が過剰蓄積するメカニズムの検討;NASH進展過程において鉄を多く含有するクッパー細胞の数が増加し、炎症・線維化形質を獲得するメカニズムとして、NASH肝からクッパー細胞を単離し、トランスクリプトーム解析を行った。その結果、鉄代謝に関わる遺伝子発現プロフィールの変化で必ずしも鉄過剰蓄積を説明できず、死細胞(肝細胞)貪食など局所での鉄代謝変化を想定するに至った。
3)炎症・線維化促進形質を獲得するメカニズムの検討;脂肪肝マウスに鉄を負荷すると炎症・線維化が促進するが、正常マウスに同様の負荷を与えても明らかな変化を認めなかった。そこで、脂肪肝および正常肝からクッパー細胞を調製してトランスクリプトーム解析を実施し、両者の遺伝子発現プロフィールを比較した。その結果、脂肪肝由来クッパー細胞において既に炎症性サイトカイン系遺伝子が発現亢進することに加えて、複数の代謝経路が変化する可能性を見出した。
令和3年度が最終年度であるため、記入しない。
令和3年度が最終年度であるため、記入しない。 -
慢性炎症性疾患の免疫細胞における脂質リプログラミングの意義の解明
研究課題/研究課題番号:19KK0249 2019年10月 - 2024年3月
科学研究費助成事業 国際共同研究加速基金(国際共同研究強化(B))
伊藤 綾香, 菅波 孝祥, 原 雄一郎
担当区分:研究分担者
近年、種々の疾患に共通の基盤病態として慢性炎症が注目されているが、その分子機構は未だ十分に理解されておらず、特に免疫細胞内の脂質代謝異常の関与は不明である。本研究では、慢性炎症性の遷延化に伴う免疫細胞内脂質の量的・質的変化とその分子機構を明らかにする。また、自己免疫疾患と肥満を比較解析することにより、疾患特異的な、あるいは慢性炎症性疾患に共通の脂質リプログラミングの分子機構を解明し、治療標的としての可能性を検証する。本研究により、細胞内脂質代謝という従来にない切り口で疾患特異的な慢性炎症化の機構が明らかになるのみならず、慢性炎症性疾患の新しい診断・予防・治療の提案につながると期待される。
肥満や動脈硬化、自己免疫疾患など、種々の慢性疾患に共通の基盤病態として「慢性炎症」注目されている。我々は、免疫細胞内の脂質代謝に着目し、免疫細胞の機能制御や慢性炎症性疾患の病態制御における意義の解明を目的として研究を行なった。代表的な慢性炎症性疾患である自己免疫疾患の免疫では、ダイナミックな脂質の量的・質的の変容を認めた。特に脂肪酸代謝を制御する酵素の発現変動が認められたため、多価不飽和脂肪酸であるエイコサペンタエン酸を経口摂取させたところ、自己免疫疾患病態が改善した。また、内因的に脂肪酸代謝に介入した際にも自己免疫疾患病態の改善が認められた。
本研究により、自己免疫疾患の進展過程において、免疫細胞内の脂質変容が起こることが明らかとなった。特に、脂肪酸の内因的・外因的変化は、細胞膜のリン脂質組成を変容させることにより、免疫細胞の機能変容をもたらすこと、それによって自己免疫疾患病態も影響を受けることが新たに見出された。エイコサペンタエン酸は魚油の主成分であり、高脂血症薬としても臨床応用されていることから、自己免疫疾患の新たな治療標的となる可能性が示唆された。 -
単球・ミクログリアを介した腸-脳-筋連関による認知症・サルコペニア進展機序の解明
研究課題/研究課題番号:18K19769 2018年6月 - 2022年3月
科学研究費助成事業 挑戦的研究(萌芽)
佐藤哲子, 菅波 孝祥, 小谷 和彦
担当区分:研究分担者
申請者は糖尿病患者において腸内細菌叢の機能悪化、認知症やサルコペニアのリスクである慢性炎症を認め、本研究では腸内環境の悪化を起点とした脳や筋肉との病的連関による認知症とサルコペニアの発症(腸-脳-筋連関)を検討した。特に、病的連関の担い手として単球・マクロファージ・ミクログリア機能(M1/M2極性・TREM2)に着目し、血中sTREM2が認知症・脳内炎症の予知指標となる事を一般住民、糖尿病・肥満患者や肥満モデルマウスで証明した。TREM2欠損マウスを作製し、進展機序を検討した。また、至適予防法確立に向け、糖尿病薬やフラボノイド投与による腸-脳-筋連関への影響を明らかにした。
本研究では糖尿病・肥満患者において慢性炎症、特に免疫担当細胞である単球・マクロファージ極性(M1/M極性・TREM2発現)異常を基盤に病的な腸-脳-筋連関が生じ、認知症やサルコペニアが発症・進展する可能性が示唆された。本研究の成果は、加齢・代謝性疾患にて悪化する腸-脳-筋連関の包括的な予知バイオマーカーや予防法の確立に繋がり、超高齢社会の本邦で増加し問題となる生活習慣病に伴う認知症・サルコペニアに対する包括的・革新的先制医療の実現や健康寿命延伸に寄与でき、本邦の医療と福祉に多大な波及効果と貢献が期待できる。 -
ダイイングコードによる組織破壊・修復バランスの制御機構の解明
研究課題/研究課題番号:17H05500 2017年4月 - 2019年3月
新学術領域研究(研究領域提案型)
菅波 孝祥
担当区分:研究代表者
配分額:5720000円 ( 直接経費:4400000円 、 間接経費:1320000円 )
本研究では、死細胞を核としてマクロファージや線維芽細胞が集積するユニークな微小環境のcrown-like structure(CLS)に着目して、細胞死が誘導する慢性炎症の分子機構を検討している。今年度は、急性腎障害のモデルである腎虚血再灌流障害を用いて、CLSの新たな病態生理的意義を明らかにした。即ち、虚血再灌流障害により細胞死に陥った尿細管上皮細胞をマクロファージが取り囲むCLSが病変部位に形成され、腎障害が遷延することを見出した。この時、死細胞センサーのMincleを欠損すると、炎症がより早期に収束し、尿細管の再生・修復が促進して腎機能が保持された。従来、Mincleシグナルによる炎症性サイトカイン産生が知られていたが、今回新たに、Mincleシグナルが死細胞の貪食を抑制することを見出した。CLSにおいてMincleシグナルが活性化すると、死細胞クリアランスが低下することにより慢性炎症が持続し、腎障害の遷延化をもたらすことが想定される。本研究を通して、肥満(脂肪組織)、非アルコール性脂肪肝(肝臓)、急性腎障害(腎臓)において、共通の微小環境であるCLSを同定した。いずれも実質細胞の細胞死を核として、マクロファージなど間質細胞が集積して形成され、炎症慢性化に働く。一方で、細胞死の種類や死細胞センサー、構成細胞の起源などに相違があることも判明し、疾患や臓器に特異的なメカニズムが存在することが明らかになった。
平成30年度が最終年度であるため、記入しない。
平成30年度が最終年度であるため、記入しない。 -
脳・全身連関による組織線維化の制御機構の解明と医学応用
研究課題/研究課題番号:16KT0110 2016年7月 - 2019年3月
菅波 孝祥
担当区分:研究代表者
配分額:18590000円 ( 直接経費:14300000円 、 間接経費:4290000円 )
組織線維化は、生活習慣病を含む多くの慢性炎症性疾患の終末像であり、アンメット・メディカル・ニーズが極めて高い。本研究では、非アルコール性脂肪肝炎(NASH)における肝線維化が臓器局所と中枢との臓器連関で制御される分子メカニズムを検討した。動物モデルとして、研究代表者が独自に確立した遺伝性肥満MC4R欠損マウスを用いた。これは、肥満やインスリン抵抗性を背景として、脂肪肝、NASH、肝細胞癌を経時的に発症する。本研究では、線維化の駆動エンジンとして働く微小環境(CLS)を構成するマクロファージの由来や特徴を明らかにするとともに、中枢MC4Rシグナルによる肝臓マクロファージの制御機構を明らかにした。
肝線維化のメカニズムとして、肝細胞死に引き続くマクロファージや線維芽細胞の活性化が指摘されているが、本研究において、慢性炎症や線維化の起点となる微小環境が初めて明らかになった。また、同様の微小環境が脂肪組織や腎臓などにおいても観察され、その共通性や臓器特異性を明らかにすることで、慢性炎症性疾患に対する理解が深まると期待される。最近、MC4R作動薬など中枢神経系を標的とする抗肥満薬の開発が進んでいる。中枢性の炎症制御機構の解明は、新たな抗肥満薬の臨床応用に貢献すると考えられる。 -
代謝性組織リモデリングとその変容によるメタボリックシンドロームの分子機構の解明
研究課題/研究課題番号:16H05171 2016年4月 - 2019年3月
菅波 孝祥
担当区分:研究代表者
配分額:17680000円 ( 直接経費:13600000円 、 間接経費:4080000円 )
研究代表者は、遺伝性肥満MC4R欠損マウスを用いて、肥満やインスリン抵抗性を背景として、脂肪肝、NASH、肝細胞癌を経時的に発症する動物モデルを作製し、その病態メカニズムの解明に取り組んでいる。本研究では、誘導性に短期間でNASHや肝細胞癌を発症する新たな動物モデルを開発し、さらに肝細胞死を核として組織リモデリングを促進する微小環境(CLS)を見出した。これにより、種々の薬剤によるNASH治療効果を効率よく検討するとともに、その作用機序の一端が明らかになった。
近年、数多くの抗糖尿病薬が上市され、糖尿病治療は、単に血糖値を低下させるのみならず、合併症を予防することに重点が置かれるようになってきた。即ち、脂肪肝やNASHに対する抗糖尿病薬の効果が注目されている。そこで本研究では、種々の薬剤のNASHに対する薬効評価を実施した。CLSに着目することにより、治療効果の定量的評価が可能となり、作用機序の一端も明らかになるなど、今後の治療法の開発に資すると考えられた。 -
アミノ酸代謝リモデリングによる新たな炎症制御機構の解明
研究課題/研究課題番号:16K15234 2016年4月 - 2018年3月
菅波 孝祥
担当区分:研究代表者
配分額:3640000円 ( 直接経費:2800000円 、 間接経費:840000円 )
メタボリックシンドロームの病態形成において、過栄養により誘導される慢性炎症の重要性が指摘されている。慢性炎症では、種々のストレスに対する実質細胞と間質細胞の複雑な細胞間コミュニケーションが持続し、最終的には間質の線維化を来して臓器機能不全に至る。一方、これらの起点となる「細胞内炎症」の慢性化機構は未だ不明な点が多い。本研究では、非必須アミノ酸のセリンに着目し、アミノ酸代謝リモデリングによるマクロファージの新たな機能制御メカニズムを検討した。即ち、一部のマクロファージはセリンを細胞外に依存しており、その欠乏により炎症性サイトカイン産生が顕著に増加することが明らかになった。
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アミノ酸代謝リモデリングによる新たな炎症制御機構の解明
2016年4月 - 2017年3月
科学研究費補助金 挑戦的萌芽研究
菅波 孝祥
担当区分:研究代表者
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代謝性組織リモデリングとその変容によるメタボリックシンドロームの分子機構の解明
2016年4月 - 2017年3月
科学研究費補助金 基盤研究(B)
菅波 孝祥
担当区分:研究代表者
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骨髄・単球由来分子を標的にした肥満・糖尿病合併症の新規診断指標と治療戦略の確立
研究課題/研究課題番号:15K08634 2015年4月 - 2018年3月
佐藤哲子
担当区分:連携研究者
本研究では、肥満症・糖尿病多施設前向きコホート及び動物モデルの検討から、肥満症・糖尿病において、単球の炎症性M1/抗炎症性M2極性の悪化が、動脈硬化の発症・進展と密接に関わることを明らかにした。また、当該悪化に関わる新規骨髄・単球由来分子としてTriggering receptor expressed on myeloid cells 2(TREM2)を同定し、血中TREM2値は糖尿病に伴う認知機能低下の新規予知指標となる可能性を明らかにした。本研究成果は、肥満症・糖尿病の合併症の進展機序解明と新規予知指標・治療戦略の開発に貢献できると考えられる。
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組織の修復と破壊を促進するダイイングコードの解明
2015年4月 - 2017年3月
科学研究費補助金 新学術領域研究
担当区分:研究代表者