科研費 - 清水 一憲
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マイクロデバイスを用いた微小環境精密制御による筋オルガノイド機能発現と病態解析
研究課題/研究課題番号:23K17474 2023年6月 - 2026年3月
科学研究費助成事業 挑戦的研究(開拓)
清水 一憲, 秋山 裕和
担当区分:研究代表者
配分額:26000000円 ( 直接経費:20000000円 、 間接経費:6000000円 )
オルガノイド(幹細胞を用いて作製した生体器官に類似した培養立体組織)は、平面培養細胞や動物実験に代わる技術として、病気の研究や薬の開発に利用することが期待されています。本研究では、マイクロデバイス技術を活用してオルガノイド機能発現を誘導し、それを用いて疾患解析を行うことを目的としています。
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次世代再生医療に向けた多能性幹細胞の共分化誘導培養プロセス開発に関する基盤研究
研究課題/研究課題番号:23K04505 2023年4月 - 2026年3月
科学研究費助成事業 基盤研究(C)
秋山 裕和, 清水 一憲
担当区分:研究分担者
次世代再生医療では、複数細胞種から成る高機能組織の移植治療が鍵となる。本研究では、心筋再生を対象に、iPS細胞から心筋組織構成細胞(心筋/血管内皮/間質細胞)を最適構成に共分化誘導し、複数細胞種間相互作用に基づき機能発現を最大化できる培養プロセスの確立を目指す。その手段として、統計的実験計画設計&モデル化手法であるDesign of Experimentsを駆使し、複数の分化誘導因子の濃度・組合せ・作用時間を変数とする共分化細胞構成予測モデルを構築する。モデル予測に基づき、これまで不可能であった、機能発現を最大化する絶妙な細胞構成に共分化誘導を制御できる条件を見出し、プロセスを確立する。
本年度は、①iPS細胞からの心血管系前駆細胞誘導の最適化、②心血管系前駆細胞から心筋・血管内皮・壁細胞の3細胞種を共誘導するための分化誘導因子の目処付け、を行った。
[①前駆細胞誘導の最適化] 完全実施要因計画を利用し、既報を参考に選定した3つの分化誘導因子の前駆細胞誘導効果を評価したところ、2因子で強い誘導効果が確認できた。この結果に基づき、応答曲面法による最適化を試みた。応答曲面モデルでの予測誘導率95%の条件を選定し、3バッチの繰り返し検証実験を行ったところ、いずれも、おおよそ95%の誘導率が得られ、予測が正しいことに加え、効率・安定性とも十分に高いことが確認でき、前駆細胞誘導の最適化に成功した。
[②共誘導因子の目処付け] 上記の最適化条件で誘導した前駆細胞に対して、既報を参考に選定した心筋細胞・血管内皮細胞・壁細胞の誘導因子の共刺激効果を評価した。その結果、評価対象因子のうち2因子を混合時に、3細胞種を共誘導できる結果が得られた。本評価は、固定した水準での評価であり、細胞種によっては誘導率が低いものもあったが、因子の水準を調節することで、共誘導をうまくコントロールできると考える。この検討により、3細胞種の共誘導因子の目処付けが完了した。
以上の結果より、心筋細胞・血管内皮細胞・壁細胞の3細胞種を狙いの細胞構成に共誘導するプロセスの確立に必要な前検討がすべて問題なく完了した。
助成前に予備検討を十分に行っていたことが功を奏した。前駆細胞誘導の最適化が不十分だとバッチ内、バッチ間差が大きくなり、結果が安定しにくくなることをリスクとして事前に想定していたため、それを回避するべく、最適化にかなりの力を入れたことで、その後の検討をトラブルなく円滑に進められ、順調な進捗につながった。
今後は、2023年度の成果をもとに、共誘導因子(2因子)を変数とした3細胞種の誘導率に関するモデリングを行うことで、狙いの細胞構成に誘導できる共誘導プロセスの確立を行う。さらに、プロセスが確立でき次第、得られた細胞群の機能・成熟評価を行い、共誘導プロセスの優位性を実証する検討を行う。 -
可食性タンパク質由来の非劣性中長鎖生理活性ペプチドの効率的探索法の確立
研究課題/研究課題番号:22H00273 2022年4月 - 2026年3月
科学研究費助成事業 基盤研究(A)
本多 裕之, 秋山 裕和, 清水 一憲
担当区分:研究分担者
中長鎖の生理活性ペプチドの残基置換で最優性ペプチドを探索するとともに、劣性に陥らない程度に活性を保持する非劣性ペプチドを、可食性タンパク質中から効率よく探索する手法の確立を目指す。まず、実験計画法に基づき、置換残基の2因子間交互作用を評価し、多残基置換体の活性を予測する機械学習モデルを構築する。最優性生理活性ペプチドを探索したのち、非劣性残基置換ペプチドを可食性ペプチドDBから複数探索する。非劣性残基置換ペプチドを合成し、多種類の非劣性ペプチドが同時に濃縮できる条件を検証する。この研究を通して、優性ペプチドと非劣性ペプチドを組み合わせた生理活性ペプチド群の製造方法の確立を目指す。
中長鎖の生理活性ペプチドの残基置換で最優性ペプチドを探索するとともに、劣性に陥らない程度に活性を保持する非劣性ペプチドを、可食性タンパク質中から効率よく探索する手法の確立を目指す。このため、次の3つの独創的な方法で解決を図る。<課題1、探索>すでに優性ペプチドを得ている生理活性ペプチドを取り上げ、非劣性残基置換ペプチドを探索する。主効果(任意の位置のアミノ酸残基の効果)と2因子交互作用を含む活性予測モデル構築を試みる。このモデルで種々の配列のペプチドを評価し、非劣性ペプチドを探索する。<課題2、分解予測>蛍光ラベルペプチドアレイを用いた産業用酵素切断点予測モデルを構築する。実際の可食性タンパク質と産業用酵素を用いた分解予測も試みる。<課題3、濃縮精製>独自開発吸着剤を用いて性質類似の非劣性ペプチド群の効率的濃縮法を確立する。候補ペプチド混合物で分離挙動を調べ、実際のペプチド混合物で濃縮効果を検証する。初年度である本年度は、特に課題1、および課題2の一部について研究した。課題1(探索)に関して、生理活性が異なるペプチドの活性データと機械学習によるモデリングで交互作用も含めた重回帰分析を行った。その結果、正電荷と疎水度が重要で、水素結合の形成が想起される二次構造形成能についても重要であることがわかった。課題2(分解予測)に関しては、末端を蛍光ラベルしたペプチドアレイを用い、トリプシンで加水分解を行い、Random Forest(RF)を用いて切断点推定モデルを構築した。良好な切断点予測モデルが構築できた。さらに、乳タンパク質に対してトリプシンでの加水分解を行い、分解物の質量分析を行って切断点を決定し、モデルからの切断推定点と一致することも確認した。また、トリプシンだけでなくペプシンによる加水分解も行って、切断点の解析を行った。
生理活性ペプチドの探索では、活性が最も高い最優良ペプチドの発見を目指す研究が行われる。しかし、実用的には劣性ではないペプチドの混合物として製造できる方法論の確立こそが重要である。本研究では、劣性に陥らない程度に活性を保持する非劣性ペプチドを、可食性タンパク質中から効率よく探索する手法の確立を目指す。このため、課題1「探索」、課題2「分解予測」、および課題3「濃縮精製」の3課題に分け、本年度は主に課題1及び2に関して研究した。
課題1に関して、コレステロール吸収抑制作用を持つ胆汁酸結合ペプチドに注目し、活性データと機械学習によるモデリングで交互作用も含めた重回帰分析を行った。等電点、極性、疎水度、分子量の4つのアミノ酸指標を説明変数として、全23指標で解析した。その結果、胆汁酸結合ペプチドには正電荷と疎水度が重要で、水素結合の形成も想起される二次構造形成能についても重要であることがわかった。別の生理活性ペプチドとして、リパーゼ阻害ペプチドやアンジオテンシン変換酵素(ACE)阻害ペプチドに関しても優性ペプチドの探索を進め、それぞれ大豆タンパク質、大麦タンパク質由来の生理活性ペプチドの探索に成功した。課題2に関して、約2,000種のペプチド配列をデザインし、N末端を蛍光ラベルしたライブラリーを合成し、トリプシンでの加水分解を実施した。そのデータを使って、アミノ酸残基の物理化学的パラメータで構成した532個の説明変数を使い、Random Forest(RF)を用いて切断点推定モデルを構築した。その結果、良好な推定精度が得られ、乳タンパク質のトリプシン加水分解物の切断点が、モデルからの切断推定点と一致した。さらにトリプシンだけでなくペプシンによる加水分解も行って、切断点の解析を行い、LC-MS/MS分析の結果、タンパク質ごとに分解されにくい部位があることが判明した。
引き続き主に課題1、および課題2について研究を行い、課題3に関しても予備検討を開始する。課題1(探索)に関しては、コレステロール吸収抑制ペプチドだけでなく、初年度に探索を始めたリパーゼ阻害ペプチドやアンジオテンシン変換酵素(ACE)阻害ペプチドに関しても優性ペプチドの探索を進め、同時に課題3に関する濃縮も試みる。課題2(分解予測)に関しては、可食性タンパク質のペプシン加水分解物の質量分析を行い、目的ペプチド製造のために最適な酵素反応条件の検討を試みる。LC-MS/MSの結果、タンパク質ごとに検出されやすい部位があることが判明したので、その部位予測に関しても検討する。 -
環境/遺伝要因による神経筋疾患チップの創製と疾患創薬研究への応用
研究課題/研究課題番号:22H01878 2022年4月 - 2025年3月
科学研究費助成事業 基盤研究(B)
清水 一憲
担当区分:研究代表者
配分額:17680000円 ( 直接経費:13600000円 、 間接経費:4080000円 )
本研究では、申請者が最近開発した運動神経細胞と骨格筋細胞の共培養マイクロデバイスである神経筋チップ(第一世代)を基盤に、高精度・高感度な神経筋チップ(第二世代)を開発する。さらに、開発した第二世代チップを利用し、疾患状態を模倣した神経筋疾患チップを創製し、疾患創薬研究を行う。疾患チップの特徴を活用することで従来法では不可能なアプローチで環境要因疾患と遺伝要因疾患の疾患解析や治療法開発を進める。
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環境/遺伝要因による神経筋疾患チップの創製と疾患創薬研究への応用
研究課題/研究課題番号:23K23146 2022年4月 - 2025年3月
科学研究費助成事業 基盤研究(B)
清水 一憲
担当区分:研究代表者
配分額:17680000円 ( 直接経費:13600000円 、 間接経費:4080000円 )
本研究では、申請者が最近開発した運動神経細胞と骨格筋細胞の共培養マイクロデバイスである神経筋チップ(第一世代)を基盤に、高精度・高感度な神経筋チップ(第二世代)を開発する。さらに、開発した第二世代チップを利用し、疾患状態を模倣した神経筋疾患チップを創製し、疾患創薬研究を行う。疾患チップの特徴を活用することで従来法では不可能なアプローチで環境要因疾患と遺伝要因疾患の疾患解析や治療法開発を進める。
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メカニカルストレス制御による革新的オルガノイド形成プロセスの理解深化と応用展開
研究課題/研究課題番号:21K19899 2021年7月 - 2023年3月
日本学術振興会 科学研究費助成事業 挑戦的研究(萌芽)
清水 一憲, 秋山 裕和
担当区分:研究代表者
配分額:6500000円 ( 直接経費:5000000円 、 間接経費:1500000円 )
我々は最近、マイクロデバイスを用いてヒトiPS細胞由来神経筋オルガノイド形成を制御できる可能性を見出した。本研究では、この発見に関する研究をさらに進め、メカニカルストレス制御によるオルガノイド形成プロセスの理解を深めるとともに、革新的な非臨床試験技術の開発を目指した応用展開に挑戦する。1.メカニカルストレスが神経筋オルガノイド形成に与える影響を明らかにする。2.デバイス上に構築した神経筋オルガノイドの特性を明らかにする。3.メカニカルストレスを用いて神経筋以外のオルガノイドの形成を制御できるかどうかを明らかにする。
本研究では、マイクロデバイスを用いたヒトiPS細胞由来神経筋オルガノイド形成を制御し、そのプロセスの理解を深めることで、革新的な非臨床試験技術の開発へと応用展開することを目指した。その結果、細胞密度を高める、ウェルサイズを小さくする、ROCK阻害剤添加することで筋組織の収縮力が大きくなることを見出した。また神経筋オルガノイド内に神経筋接合部が存在し、シュワン細胞等が含まれることが示唆された。堅牢な試験法への展開を目指し、さらなる神経筋接合部の形成効率の向上を試みたが顕著な増加は観察されなかった。今後は筋細胞の成熟をさらに高めることで神経筋接合部の形成を増加させることができる可能性がある。
本研究の成果は、骨格筋細胞や運動神経細胞、神経筋接合部に関連する疾患の解析やその治療法の開発に有用であると期待される。今後さらにオルガノイド内の骨格筋細胞の成熟度を向上させることで、堅牢な非臨床試験法となると期待される。 -
革新的エクササイズメディスンの創出を目指した運動EVsの分泌特性と機能の解明
研究課題/研究課題番号:21K18848 2021年7月 - 2023年3月
科学研究費助成事業 挑戦的研究(萌芽)
本多 裕之, 清水 一憲
担当区分:研究分担者
収縮運動する培養骨格筋細胞から分泌される細胞外小胞(運動EVs)は、分解抵抗性・標的指向性をもつ革新的なバイオ医薬品として期待される。しかしこれまでに、運動EVsの分泌や機能に関する基本特性の解明は十分に進んでいない。本研究では、我々が独自に開発したデバイスを使って構築するin vitro運動モデルを用いて、運動EVsの分泌特性(量と質)と機能の解明に挑戦する。本研究で得られる成果は、次世代バイオ医薬品となりうる運動EVsの大量生産を実現するために欠かすことのできない生物工学の観点から非常に重要な知見となる。
運動により骨格筋細胞から分泌されるEVの数や質がどのように変化するか明らかになっていない。本研究では、in vitroの運動モデルを用いて、運動が骨格筋細胞から放出されるEVの量に影響を与えるかどうかを検討した。運動条件が異なる1 Hzと30 Hzの電気刺激を24時間負荷した際の影響を調べた。その結果、30 Hzの電気刺激で運動させた場合にEVsの分泌量が増加し、EVsに含まれるmircoRNAの種類も変動することが分かった。さらにこれにはAlixの発現量変化とカルシウムイオン濃度変化が関与することが示唆された。
本研究では培養骨格筋細胞への電気刺激によるin vitro運動モデルを用いて、in vivoでは困難である運動時の骨格筋細胞からのEVs分泌量が増加し、含まれるmicroRNAの種類も変化するを明らかにした。今後、分泌されたEVsの特性をさらに解析することで、運動効果の分子メカニズムが解明され、健康長寿社会の実現に貢献できる可能性がある。 -
研究課題/研究課題番号:20K20620 2020年7月 - 2024年3月
科学研究費助成事業 挑戦的研究(開拓)
秋本 崇之, 加藤 義雄, 狩野 豊, 清水 一憲
担当区分:研究分担者
定期的で適度な運動がインスリン抵抗性を改善することは古くから知られており,これが糖尿病等の代謝性疾患の治療や予防に運動療法が用いられる科学的根拠となっているが,そのメカニズムはほとんど分かっていない.
本研究では,三次元培養骨格筋組織,糖代謝動態をモニタリング可能なプローブ,動的環境におけるin vivoイメージングを使って,運動によるインスリン抵抗性改善の分子メカニズムに迫る.
本研究では,物理刺激依存性の骨格筋組織への糖取込みを可視化するハイスループットスクリーニング系を開発することで,運動によるインスリン抵抗性改善の分子メカニズムに迫るとともに,インスリン抵抗性に対する新たな治療戦略の創出を目指した.
本研究の結果,三次元培養組織をによる96穴プレート上でのハイスループットスクリーニングが可能となった. また本研究で開発したpH依存性蛍光タンパク質との融合遺伝子を糖輸送体の細胞内挙動を観測するためのツールとして活用することが可能となった.これらのツールを用いて,筋収縮時の骨格筋組織での糖の動態を観察することが可能となった.
本研究による知見は,運動によるインスリン抵抗性改善の分子メカニズムを理解するための一助となると考えられる.また本研究で開発したスクリーニングシステムを使って今後,インスリン抵抗性に対する新らしい化合物の探索が可能かもしれない. -
神経筋組織チップによる生体夾雑系の再構築と疾患創薬研究への応用
研究課題/研究課題番号:20H04705 2020年4月 - 2022年3月
日本学術振興会 科学研究費助成事業 新学術領域研究(研究領域提案型)
清水 一憲
担当区分:研究代表者
配分額:4940000円 ( 直接経費:3800000円 、 間接経費:1140000円 )
様々な神経筋疾患により、運動ニューロンや神経筋シナプスが機能不全に陥ると、筋細胞を動かすことができない。その結果、筋萎縮や筋力低下が起こり、場合によって死に至る。多くの神経筋疾患の発症機構は未解明であり、有効な治療法がない。研究代表者はこれまでに神経筋疾患の研究・創薬のためのマイクロデバイスの開発を進めてきた。本研究では、開発を進めてきた神経筋組織チップを完成させ、球脊髄性筋萎縮症(SBMA)患者由来iPS細胞を用いてSBMA神経筋組織チップを構築し、病態再現と分子病態解明を行うとともに、治療薬探索のための基盤技術を確立する。
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研究課題/研究課題番号:19K11369 2019年4月 - 2022年3月
日本学術振興会 科学研究費助成事業 基盤研究(C)
岸田 綱郎, 新井 祐志, 清水 一憲
担当区分:研究分担者
サルコペニアの病態を分子レベルで解析するためのツールとして、生理的な老化を反映する培養3Dヒト筋組織の開発が必要であるが、これには3つの要素技術が必要である。すなわち、①老化筋芽細胞、②3Dスキャフォールド、③機能評価系。最近我々は、ヒト筋芽細胞を線維芽細胞から誘導する独創的な技術を開発した。高齢者から得た線維芽細胞から誘導した筋芽細胞は老化しており、上記の①に有用な理想的な細胞である。さらに我々は、②、③も独自技術を開発している。本研究では、老化筋組織の解析に最適な培養3Dヒト筋組織を開発し、サルコペニアの分子メカニズムの解明に応用する基盤を確立する。
サルコペニアの原因には、骨格筋タンパクの合成と分解のバランスの異常、筋組織の修復能の低下などがあると考えられているが、それらの分子メカニズムの多くは未解明である。サルコペニアの病態を分子レベルで解析するためのツールとして、生理的な老化を反映する培養3Dヒト筋組織の開発が必要であるが、これには3つの要素技術が必要である。すなわち、①老化筋芽細胞、②3Dスキャフォールド、③機能評価系。最近我々は、ヒト筋芽細胞を線維芽細胞から誘導する独創的な技術を開発した。高齢者から得た線維芽細胞から誘導した筋芽細胞は老化しており、上記の①に有用な理想的な細胞である。さらに我々は、②に適したスキャフォールドも開発済みであり、③も研究分担者が独自技術を開発している。そこで本研究では、①~③を有機的に結び付け、スキャフォールドの修飾や筋芽細胞の配向性を調整することで、老化筋組織の解析に最適な培養3Dヒト筋組織を開発し、サルコペニアの分子メカニズムの解明に応用する基盤を確立する。
本年度は、フィブリンを主成分とするゲルに作成した筋芽細胞を包埋し、三次元筋組織を構築した。数日間分化誘導培地で分化培養を行い、外部から電気刺激を加えたところ、構築した三次元筋組織は電気刺激に応答して収縮して張力を発生した。免疫染色を行ったところ、筋組織内に多数のサルコメア構造を保持する筋管細胞が存在することがわかった。収縮力測定マイクロデバイスを用いて筋組織の発生張力の定量を行ったところ、経時的に収縮力が増加する傾向が観察された。また、構築した筋組織における筋分化マーカー発現量変化や筋収縮特性などの評価も行い、非常に有益な情報を得た。
本研究の中核である、3Dヒト筋組織の収縮力の評価については、名古屋大学の清水らとの共同研究によりすでに完成している。発生力評価マイクロデバイスのピットの部分にフィブリンゲルとマトリゲルを充填したのち、ダイレクト細胞を播種。電気刺激し収縮応答性を検討した。その結果、分化誘導が進行するに従って、収縮力が優位に上昇していくことを見出した。また、3D培養では2D培養に比較して、筋芽細胞の分化マーカーが優位に亢進していた。(J Biosci Bioeng. 2019 Dec 16. pii: S1389-1723(19)30922-3. doi: 10.1016/j.jbiosc.)
3Dヒト筋組織のin vivo移植と生体内機能解析を行う予定である。免疫不全マウス(SCID/NOD)の前頚骨筋の一部を切除したのち、作成した培養3Dヒト筋組織を移植する。移植後に組織を回収して形態学解析、遺伝子発現を検討する。またin vivoでの筋収縮力を測定するため、マウスの後肢をパルスジェネレーターで電気刺激を加えて、収縮力をデジタルフォースゲージで測定する。 -
筋老化の分子機構解明のための3D培養骨格筋組織の開発
2019年4月 - 2022年3月
日本学術振興会 科学研究費助成事業 基盤研究(C)
岸田綱郎
資金種別:競争的資金
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モザイク状培養筋組織モデルの開発
2018年4月 - 2022年3月
科学研究費補助金 基盤研究(B)
担当区分:研究代表者
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神経筋疾患解析のためのOrgan-On-A-Chipの開発
2017年12月 - 2018年12月
公益財団法人カシオ科学振興財団 公益財団法人カシオ科学振興財団 第35回研究助成
清水一憲
資金種別:競争的資金
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新奇な細胞応答性の違いを利用した細胞分離法の開発とそのメカニズム解明
2017年7月 - 2019年3月
日本学術振興会 科学研究費助成事業 挑戦的萌芽研究
資金種別:競争的資金
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新奇な細胞応答性の違いを利用した細胞分離法の開発とそのメカニズム解明
研究課題/研究課題番号:17K19010 2017年6月 - 2020年3月
日本学術振興会 科学研究費助成事業 挑戦的研究(萌芽)
清水 一憲
担当区分:研究代表者
配分額:6500000円 ( 直接経費:5000000円 、 間接経費:1500000円 )
本研究では、高濃度アミノ酸添加溶液を用いた未分化iPS細胞の選択的除去手法の開発と細胞応答メカニズムの解明を行った。複数の未分化iPSCsや分化細胞としてヒト初代細胞、iPSC由来分化細胞を用いた。濃度や曝露時間を変えて実験を行った結果、1.2 mol/lのL-アラニンを添加した培地に2時間曝露することで効率よく、未分化iPS細胞を選択的に除去可能なことを見出した。様々な培地成分やL-アラニンの異性体、温度、エンドサイトーシスの阻害剤を用いた実験を行い、細胞応答メカニズムの仮説を提案するに至った。
ヒトiPS細胞由来分化細胞を用いた再生医療の実用化が期待されている。現在の分化誘導技術では、移植用iPS由来分化細胞群に未分化iPS細胞が一部残存する。未分化iPS細胞を移植するとテラトーマを形成する可能性があるため、残存する未分化iPS細胞を効率よく選択的に除去する必要がある。本研究で開発した技術を用いると、未分化iPS細胞を安価に迅速に効率よく除去することができることから、本技術はiPS細胞を用いた再生医療の実現に寄与すると期待される。 -
相互作用解析が可能な次世代型骨格筋組織チップの開発と応用(国際共同研究強化)
研究課題/研究課題番号:16KK0126 2017年 - 2019年
日本学術振興会 科学研究費助成事業 国際共同研究加速基金(国際共同研究強化)
清水 一憲
担当区分:研究代表者
配分額:15080000円 ( 直接経費:11600000円 、 間接経費:3480000円 )
本研究では、収縮力測定可能な組織チップを改良し、灌流可能な血管様構造をもつ培養筋組織の構築を行った。マウス筋芽細胞株C2C12とフィブリンゲルを用いて作製した筋組織内にヒト臍帯静脈内皮細胞HUVECを用いて血管様構造を構築した。構築した血管様構造をもつ培養筋組織は電気刺激に応答して収縮し、血管様構造は培地を灌流可能であった。また、スケールダウンしたチップ上で線維芽組織を構築し、線維芽細胞とフィブロネクチンの相互作用解明を並行して実施した。
本研究では、骨格筋細胞や線維芽細胞で組織を構築し、他の細胞や組織あるいは細胞周囲の細胞外マトリックスとの相互作用を解析するための技術を開発した。従来技術では困難であった、灌流可能な血管様構造をもつ収縮能をもつ骨格筋組織をチップ上で構築できた。この技術と用いると、動く骨格筋組織と他の組織との相互作用をインビトロで再現することが可能になることから、細胞組織生物学の基礎研究、疾患発症メカニズム解明のための研究、創薬スクリーニング技術としての応用が期待される。 -
研究課題/研究課題番号:16H04575 2016年4月 - 2019年3月
日本学術振興会 科学研究費助成事業 基盤研究(B)
本多 裕之, 加藤 竜司, 清水 一憲
担当区分:研究分担者
ペプチドは豊富なバリエーションからの創薬につながる化合物が報告されている。また小分子ペプチドは細胞内で機能する新しい医薬化合物として期待されている。そこで、1)非天然アミノ酸も含めたランダムペプチドライブラリーを作製し、2)細胞膜透過性ペプチド(CPP)を連結して膜透過性を付与することで、細胞内で機能する新規ペプチドの探索を試みた。また、3)CPPの影響を排除するために、CPPと機能性ペプチドが細胞内で解離するシステムの構築を検討した。ペプチドアレイ上でのジスルフィド結合を形成する方法を確立し、ジスルフィド形成を分子内反応とすることで、ヘテロ二量体ペプチドを選択的に合成する手法を開発した。
細胞内に導入し内部に侵入した直後に切断できる仕組みは細胞内機能性ペプチドの探索において必要不可欠な技術である。また環状化ペプチドライブラリーによる探索も高機能ペプチドの探索において重要な手法であり、細胞内機能性ペプチド医薬の開発につながる技術である。 -
メゾスケール空間内移動速度論創成のための挑戦的研究
2015年4月 - 2017年3月
科学研究費補助金 挑戦的萌芽研究
担当区分:研究分担者
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収縮力測定可能な骨格筋組織チップの創製と筋委縮モデルへの応用
研究課題/研究課題番号:26709062 2014年4月 - 2018年3月
日本学術振興会 科学研究費助成事業 若手研究(A)
清水 一憲
担当区分:研究代表者
配分額:24440000円 ( 直接経費:18800000円 、 間接経費:5640000円 )
本研究では、筋萎縮の予防薬や治療薬を探索するための細胞アッセイ技術を開発した。収縮力測定マイクロデバイス上に三次元培養筋組織を搭載した骨格筋組織チップとその周辺技術 (培養制御、変位計測) を開発し、マイクロデバイス上の筋組織に萎縮を誘導した筋萎縮モデルチップの開発を行った。具体的には、マウスやヒト由来の骨格筋細胞を用いて、電気刺激に応答して収縮する三次元組織を構築することに成功した。それらの組織の培地に化合物を添加することで、筋萎縮関連の遺伝子が高発現し、収縮力が有意に低下することを見出した。さらに、収縮力の低下を抑制する物質の探索が可能であることを示した。
超高齢化社会では筋萎縮やそれに続く筋収縮力低下が社会問題になると予想され、それらを予防・改善する新薬の開発が求められている。従来は筋萎縮モデルとして後肢懸垂マウス (尾を糸で釣り上げたままにし、前肢だけで生活させるようにしたマウス) が頻用されるが、種差などからモデルとして不十分であり、動物愛護の観点からも、これに替わる新たなモデルの開発が必要である。それに対し、本研究では培養筋細胞を用いて、筋萎縮モデルを構築し、スループット性高く、抗筋萎縮薬の探索に活用可能な技術を構築した。 -
磁性ナノテクノロジーによる骨格筋再生医療の技術基盤の創製
2014年4月 - 2017年3月
科学研究費補助金 基盤研究(B)
担当区分:研究分担者
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組織押圧・吸引圧を利用した遺伝子導入システムの開発
2014年4月 - 2017年3月
日本学術振興会 科学研究費助成事業 挑戦的萌芽研究
資金種別:競争的資金
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磁性ナノテクノロジーによる骨格筋再生医療の技術基盤の創製
2014年4月 - 2017年3月
日本学術振興会 科学研究費補助金 基盤研究(B)
担当区分:研究分担者 資金種別:競争的資金
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オンチップ神経支配筋組織の創製
2014年4月 - 2016年3月
科学研究費補助金 挑戦的萌芽研究
担当区分:研究代表者
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細胞伸展培養用マイクロデバイスを用いた組織押圧核酸導入法のメカニズム解明
2011年4月 - 2013年3月
科学研究費補助金 若手研究(B)
担当区分:研究代表者
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磁力を用いたヒト培養細胞のポジショニングと組織的細胞集合体の構築
2006年4月 - 2007年3月
科学研究費補助金
担当区分:研究代表者