KAKENHI (Grants-in-Aid for Scientific Research) -
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整形外科領域の新規治療に向けたdrug repositioning戦略
Grant number:23K08610 2023.4 - 2026.3
科学研究費助成事業 基盤研究(C)
今釜 史郎, 三島 健一, 石塚 真哉, 竹上 靖彦, 松下 雅樹, 中島 宏彰
Authorship:Coinvestigator(s)
名古屋大学大学院医学系研究科 整形外科ではdrug repositioningに注目し、各稀少疾患に対し既存薬剤のoff labelの薬効を見出し新規治療法を開発する研究に注力してきた。本研究は、各プロジェクトを統合的に主導し、迅速かつ効率的に臨床応用まで進める事を目的とする。既に標的分子について予備的検討が済んでいる物質や企業導出が可能な段階の物質もあり、稀少疾患に加え、症例数の多い変形性関節症やサルコペニアに有効な薬剤も見出している。drug repositioning戦略に基づく疾患の病態解明と新規治療薬の開発を、整形外科各分野にわたり迅速かつ網羅的に進める。
Runx IIを標的とした医療開発について動物ではラットで骨形成促進を確認しているが、再度動物種を変えて骨形成促進能を確認する動物実験(ウサギやイヌ)を行い順調に進んでいる。
FOP (進行性骨化性線維異形成症)に関する医療開発について、治療薬候補としてPerhexilineを候補として一次screeningで遺伝子導入を行う細胞種、二次screeningでの刺激による用量相関確定に用いる細胞種での設定検討を行っている。Perhexilineの臨床研究から長期投与が可能な薬物選択を行いたいと考え実験を進めている。
FGFR3を標的とした医療開発として骨伸長の抑制因子であるFGFR3の恒常的活性化により著しい低身長を呈する難病に軟骨無形成症を標的に、当科ではdrug repositioningにより、乗り物酔い防止薬であるmeclozineがFGFR3を抑制することを見出し、現在臨床治験を準備し進めている。他のFGFR3を標的とした医療開発として、くる病についても同時進行で研究を進め軟骨無形成症と同様の効果を期待し実験を進める。
神経軸索伸長作用を持つ物質の医療開発として、既存薬の中で最も軸索伸張効果の高いzonisamide を同定し、末梢神経障害治療の臨床治験準備を行っている。同時にzonisamideの適応拡大に繋がるよう企業とも相談を進め、感覚神経障害の改善や、脊髄など中枢神経再生に関する効果についても実験を進めている。
Wnt/βcateninを標的とした医療開発として、変形性膝関節症モデルにおいて当科ではverapamilがWnt蛋白を阻害するFRZBの発現増強を介してWnt/β-cateninシグナルを阻害することを見いだし、変形性関節症進行を抑制する動物実験結果を得ている。動物モデルでの研究を更に進め、新たな臨床治療に繋げる。
当初の研究計画通りに進んでおり、順調と考えられる。
当初の研究計画通りに進んでいるため、予定通り研究を進める。 -
小児大腿骨頭壊死症の線維化を中心とした病態解明と新規骨再生促進薬の開発
Grant number:22K09304 2022.4 - 2025.3
科学研究費助成事業 基盤研究(C)
三島 健一, 鬼頭 浩史, 松下 雅樹, 神谷 庸成
Authorship:Principal investigator
Grant amount:\4160000 ( Direct Cost: \3200000 、 Indirect Cost:\960000 )
ペルテス病では、壊死骨が吸収されると線維性組織に置換されるため、新生骨の添加は遅延し力学的強度の低下が遷延する。不可逆的な骨頭変形を予防するには、骨吸収の抑制に加えて骨形成を促す強力な刺激と壊死組織の「線維化」を抑制する必要があると考えられる。本研究の目標は、骨壊死という難治性の病態を克服するため、大規模低・中分子化合物ライブラリーを使ったde novo創薬によって強力な骨再生促進薬を開発することと骨壊死領域に形成される線維性組織の分子生物学的な特徴を明らかにし、近年開発研究が進んでいる抗線維化治療の応用可能性を探ることである。
TLR4拮抗薬であるLPS-RSの虚血性骨壊死に対する効果を調べた。実験はマウスの大腿骨遠位顆部を栄養する主要な血管4本を顕微鏡にて同定し、これらをすべて凝固焼灼して虚血性骨壊死を誘導する動物モデルを使用して行った。
馴化した12週齢のC57BL/6雄マウスの左後肢に上記の手術操作を施し、術直後に1回、以降は週に2回(Day 0, 3, 7, 10, 14, 17, 21, 24)、LPS-RS 5 mg/kg (薬剤投与群)およびVehicle(対照群)の腹腔内投与を行った。
術後4週と6週時点での壊死骨端における骨梁内empty lacunaeの個数は薬剤群で有意に少なかった。壊死骨端内の破骨細胞数や海綿骨構造パラメータに有意差はみられなかった。壊死骨端内における術後2週時点でのTUNEL染色陽性細胞や術後2週や4週時点でのIL-6陽性細胞数は薬剤群の方が有意に少なかった。
Runx2の発現や転写活性化能を上昇させ、骨芽細胞分化や骨形成を促進させる化合物スクリーニングを開始した。ヒトRunx2遺伝子のP1プロモーター領域をサブクローニングしたルシフェラーゼベクターを安定発現する未分化間葉系細胞株を樹立し、薬効スクリーニングを行った。一次スクリーニングには名古屋大学トランスフォーマティブ生命分子研究所 (ITbM)から供与を受けた800種類の基本骨格化合物を使用した。2種類の化合物にランソプラゾールを上回る内因性Runx2遺伝子の発現上昇効果が確認された。この2種類の化合物の派生化合物20種類を対象にさらにスクリーニングを進めると、1種類は比較的低濃度でも薬効を示した。
年度当初は実験手技をサポートしてくれる実験助手や大学院生の確保および彼らの虚血性骨壊死モデルの習熟に時間がかかり、研究の進捗に少なからず影響した。動物モデルの再現性が向上した結果、TLR4拮抗薬単独の効果検証は進んだが、当初の予定である複数種の薬剤を投与する実験系は実施できていない。
派生低分子化合物の化学合成に時間を要したため一連のスクリーニングが停滞し、リード化合物の導出に至っていない。
壊死骨線維化領域のトランスクリプトーム解析・プロテオーム解析はいまだ着手できていない。
来期もマウス大腿骨顆部虚血性骨壊死モデルを使用し、TLR4拮抗薬単独あるいは水溶性ランソプラゾールとの併用投与による壊死骨の圧壊抑制効果を検証していく。今期の動物実験では、TLR4拮抗薬によって壊死骨端内の慢性炎症、骨細胞のアポトーシスが抑制されるという結果が得られたが、骨端の圧潰抑制効果までは確認できなかった。水溶性ランソプラゾール (8 mg/kg)の週3回尾静脈投与(1日1回)を行うと、壊死骨端の骨量や骨梁パラメータが有意に改善するという結果が出ているため、骨壊死誘導後3週までの早期にTLR4の全身投与を行い、その後水溶性ランソプラゾールに切り換えさらに3週間全身投与を行うという実験を計画している。
ヒット化合物のデータと既存の3種類のプロトンポンプ阻害薬とそれらのスルフィド体のデータを併せてドッキングシミュレーションを行い、作用点の絞り込みを進め、リード化合物の導出を目指す。
壊死骨端内線維化領域のトランスクリプトーム解析を進める。 -
FGFR3インヒビターのマウスモデルへの長期投与と作用機序の検討
Grant number:22K09398 2022.4 - 2025.3
科学研究費助成事業 基盤研究(C)
松下 雅樹, 鬼頭 浩史, 三島 健一, 神谷 庸成
Authorship:Coinvestigator(s)
軟骨無形成症は骨伸長の抑制因子であるFGFR3が過剰に発現した指定難病である。ドラッグリポジショニングにより乗り物酔い止め薬としての使用実績のある内服薬であるメクロジンにFGFR3の抑制効果があることは見出されている。メクロジンを軟骨無形成症マウスモデルへ10日間定量的に経口投与すると骨伸長は促進された。本研究では、メクロジンのヒト軟骨無形成症への臨床応用に向けて、軟骨細胞におけるメクロジンの作用機序を明らかにし、メクロジンを成長期の軟骨無形成症マウスモデルに長期間投与することで全成長期にわたって骨伸長効果を発揮するための至適投与量を決定する。
ドラッグリポジショニングにより乗り物酔い止め薬としての使用実績のある内服薬のメクロジンに線維芽細胞増殖因子受容体3(fibroblast growth factor receptor 3 : FGFR3)シグナルの抑制効果があることが示されている。また、メクロジン1および2 mg/kg/dayを軟骨無形成症(achondroplasia:ACH)マウスモデルへ10日間定量的に経口投与すると濃度依存性に骨伸長は促進されることも証明されている。本研究では、メクロジンを成長期のACHマウスに長期間投与することで全成長期にわたって骨伸長効果を発揮するための至適投与量を決定することである。ACHマウスは麻痺を発症して一定数死亡するが、令和4年度にメクロジン2 mg/kg/dayをACHマウスに7日齢から56日齢まで投与すると生存率は有意に向上したことを見いだした。一方、生存したACHマウスの肝臓組織を解析すると明らかな肝細胞の肥大は認められなかったことより、成長期に長期間メクロジンを投与しても肝毒性は示さないと判断した。また、10日間の短期投与した時と同様に、メクロジンを長期間投与するとマウスの体長は促進された。マイクロCTにて各骨の長さを計測すると頭蓋骨、長管骨、脊椎の長さはメクロジン長期投与により促進された。さらに、メクロジンはACHマウスで認められる後弯変形を改善させた。令和5年度にはACHマウスに同様のプロトコールでメクリジンを長期間投与して透明骨格標本を作製して脊柱管を解析した。第7頸椎と第13胸椎を摘出して脊柱管径を計測すると野生型マウスに比較してACHマウスは脊柱管径が有意に狭小していた。メクリジンを長期間投与すると第7頸椎においては有意にACHマウスの脊柱管径を拡大し、第13胸椎においては拡大傾向を認めた。次年度は脊柱管の軟骨結合を組織学的に検討を行っていく。
令和4年度は、2mg/kg/dayのメクロジンをACHマウスに7日齢から56日齢まで成長期に渡って長期間投与した。ACHマウスは野生型マウスと比較して体長は減少し、各骨(頭蓋骨、長管骨、脊椎)の骨伸長は抑制され、長管骨骨幹端における骨密度は低下している。メクロジンの長期間の投与により、これらのACHマウスの表現型を改善することを示すことができた。また、長期間投与しても肝毒性を呈さないことも判明した。一方、ACHマウスは麻痺により一定数死亡することが知られているが、メクロジン投与により死亡率が改善したことを示すことができた。また、ACHで認められる後弯変形もメクロジンにより改善した。令和5年度は、同様のプロトコールでメクロジンの投与を行い、メクロジンはACHマウスに合併している脊柱管狭窄を部分的にレスキューすることを示すことができた。次年度は脊柱管の組織学的検討を行う予定である。
以上により、本研究はおおむね順調に進んでいると考えているが、実験の継続が必要な状態である。
令和4年度の結果より、メクロジン2mg/kg/dayをACHマウスに7日齢から56日齢まで長期間投与すると、明らかな毒性を呈さず、ACHマウスの体長は増加し、各骨(頭蓋骨、長管骨、脊椎)の骨伸長は促進され、骨密度は向上した。また、ACHマウスで認められる後弯変形もメクロジン投与により改善した。令和5年度の結果より、メクロジンはACHマウスで狭小化している長管骨の成長軟骨の構造をレスキューした。また、ACHマウスの脊柱管狭窄も部分的にレスキューした。令和6年度は、脊柱管の組織学的解析を行うことで、メクロジン長期投与により脊柱管狭窄が部分レスキューされたことや死亡率が改善した原因を追究する。 -
Grant number:21H03063 2021.4 - 2024.3
Grants-in-Aid for Scientific Research Grant-in-Aid for Scientific Research (B)
Kitoh Hiroshi
Authorship:Coinvestigator(s)
From mechanism of action studies, meclizine suppressed FGFR3 signaling through inhibition of intracellular MAP3K3 pathway in chondrocytes. We next performed docking simulations of MAP3K3 and meclizine and identified the two co-binding structures. From in vivo studies, we identified that 2mg/kg/day of meclizine provided the greatest effect on longitudinal bone growth in ACH mice. In addition, we performed long-term administration of meclizine and demonstrated that the survival rate of model mice was improved by spinal canal stenosis being rescued. Meclizine also enhanced mineralization and improved histological structure in growth plates of Hyp mice. From zebrafish experiments, meclizine inhibited bone calcification in the spine and skull that was activated by the FGF signaling.
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骨延長マウスモデルにおけるメクロジンのFGFR3抑制効果の検討
Grant number:20K09477 2020.4 - 2025.3
科学研究費助成事業 基盤研究(C)
神谷 庸成, 鬼頭 浩史, 三島 健一, 松下 雅樹, 長田 侃
Authorship:Coinvestigator(s)
軟骨無形成はFGFR3が異常に活性化し骨伸長が抑制される難病である。申請者のグループは、drug repositioningによりメクロジンがFGFR3インヒビターであることを見出し、Achマウスの骨伸長を促進したことを報告した。また、メクロジンはHypマウスの表現型をレスキューしたことを見出した。一方、Achマウスは骨延長における骨形成が亢進していることを報告した。本研究では、骨延長マウスモデルにメクロジンを投与し骨形成におけるメクロジンの効果を検討する。骨延長はAchマウスとhypマウスに行い、骨延長部を経時的にレントゲンおよび組織学的に定量しメクロジンの効果を非投与群と比較する。
研究代表者のグループは、ドラッグスクリーニング法によってメクロジンが、軟骨無形成症(ACH)で過剰となっている線維芽細胞増殖因子受容体3(FGFR3)シグナル下流のMAPK経路を抑制するというオフラベル効果を見出し、これを元に、過剰な線維芽細胞増殖因子23(FGF23)がFGFR3とFGFR1を介して骨石灰化障害を生じる低リン血症性くる病(XLH)マウスモデル(Hyp)においてもメクロジンで骨石灰化・成長軟骨構造が改善されることも見出した。実臨床において、これらの疾患に対して骨延長・下肢変形矯正手術を行うことがあるが、ACHでは骨形成が良好である一方で、XLHでは極めて不良である。本研究では、疾患マウスモデルの骨延長モデルにおけるメクロジンの効果を検討し、それを通してFGFR3シグナルの骨形成おける役割を解明することである。2023年度までに野生型マウス、低リン血症性くる病マウス、高週齢の軟骨無形成症マウスおよびその閉経後骨粗鬆症(OVX)マウスモデルにおいて骨延長モデルの作成、薬剤投与、画像および組織標本の作成を行った。低リン血症性くる病マウスモデルでは延長部の骨形成は極めて不良で、メクロジンによる改善は極めて限定的であった。低週齢の軟骨無形成症マウスモデルでは延長骨の形成が良好であることは過去に報告していたが、高週齢の軟骨無形成症マウスモデルでは骨形成は野生型より不良となっており、さらにOVX処置を行うとさらに不良となった。しかし、高週齢の軟骨無形成症マウスとそのOVX処置後マウスから採取した骨髄由来間葉系幹細胞にメクロジンを添加すると骨分化が促進された。
低リン血症性くる病マウスにおけるメクロジンの効果、および高週齢の軟骨無形成症マウスとその閉経後骨粗鬆症モデルの骨延長モデルにおける検討は完了し、それぞれ論文投稿と受理が完了した。低リン血症性くる病マウスモデルの骨延長モデルについても組織標本作製、血清採取、画像撮像は完了しているが、骨延長部の骨形成が極めて不良であり、画像解析と組織解析を継続しているものの、メクロジンの効果判定に難渋している。
骨延長モデルマウスのうち、メクロジン非投与群と野生型とのCT画像評価と組織標本評価をまずは実施し、その上でメクロジン投与群と非投与群について、血清学的評価を追加した上で詳細な画像・組織学的評価を進めていく。 -
Grant number:19K09573 2019.4 - 2025.3
科学研究費助成事業 基盤研究(C)
三島 健一, 鬼頭 浩史, 松下 雅樹, 長田 侃, 神谷 庸成
Authorship:Principal investigator
Grant amount:\4290000 ( Direct Cost: \3300000 、 Indirect Cost:\990000 )
ペルテス病の病態制御には、修復過程における①血管新生の遅延、②活発な壊死骨の吸収、③骨新生の抑制のそれぞれが治療ターゲットとなり得る。申請者らは既存薬であるランソプラゾールに骨形成促進作用が存在することを見出しており、骨吸収抑制薬にはすでにビスフォスフォネート製剤が使われている。骨壊死に続発する股関節炎の遷延は、血管新生の遅延や骨新生の抑制に関与するが、慢性炎症の薬物治療は関節リウマチや敗血症性ショックの基礎研究から開発が進んでいる。本研究の目的は骨壊死によって生じる3つの病態をドラッグリポジショニング薬剤と既存薬との併用療法によって改善することで、ペルテス病の自然歴の改変を試みることである。
Toll-like receptors (TLRs)は自然免疫応答において重要な役割を果たす抗原受容体である。壊死骨はTLRsの1つであるTLR4を介してマクロファージを活性化し、炎症性サイトカインを誘導することが報告されている。我々はこうした虚血性骨壊死後に生じる急性炎症を抑制することで骨壊死後の修復機転が活性化されるのではないかと考えている。
今期もTLR4拮抗薬であるLPS-RSの虚血性骨壊死に対する効果を調べた。実験はマウスの大腿骨遠位顆部を栄養する主要な血管4本を顕微鏡にて同定し、これらをすべて凝固焼灼して虚血性骨壊死を誘導する動物モデルを使用して行った。
馴化した12週齢のC57BL/6雄マウスの左後肢に上記の手術操作を施し、術直後に1回、以降は週に2回(Day 0, 3, 7, 10, 14, 17, 21, 24)、LPS-RS 5 mg/kg (薬剤投与群)およびVehicle(対照群)の腹腔内投与を行った。実験中に削痩や脱毛を生じることはなかった。術後2、4、6週に安楽死させ、左後肢から膝関節を残したまま大腿骨と脛骨を採取し、HE染色、TRAP染色、TUNEL染色による組織学的評価、免疫組織染色によるIL-6陽性細胞数の定量評価、マイクロCTによる壊死骨端海綿骨の構造解析を行った。
術後4週と6週時点での壊死骨端における骨梁内empty lacunaeの個数は薬剤群で有意に少なかった。壊死骨端内の破骨細胞数や海綿骨構造パラメータに有意差はみられなかった。壊死骨端内における術後2週時点でのTUNEL染色陽性細胞や術後2週や4週時点でのIL-6陽性細胞数は薬剤群の方が有意に少なかった。
年度当初は実験手技をサポートしてくれる実験助手や大学院生の確保および彼らの虚血性骨壊死モデルの習熟に時間がかかり、研究の進捗に少なからず影響した。動物モデルの再現性が向上した結果、TLR4拮抗薬単独の効果検証は進んだが、当初の予定である複数種の薬剤を投与する実験系は実施できていない。
来期もマウス大腿骨顆部虚血性骨壊死モデルを使用し、TLR4拮抗薬単独あるいは水溶性ランソプラゾールとの併用投与による壊死骨の圧壊抑制効果を検証していく。今期の動物実験では、TLR4拮抗薬によって壊死骨端内の慢性炎症、骨細胞のアポトーシスが抑制されるという結果が得られたが、骨端の圧潰抑制効果までは確認できなかった。水溶性ランソプラゾール (8 mg/kg)の週3回尾静脈投与(1日1回)を行うと、壊死骨端の骨量や骨梁パラメータが有意に改善するという結果が出ているため、骨壊死誘導後3週までの早期にTLR4の全身投与を行い、その後水溶性ランソプラゾールに切り換えさらに3週間全身投与を行うという実験を計画している。 -
Grant number:19K09646 2019.4 - 2025.3
科学研究費助成事業 基盤研究(C)
松下 雅樹, 鬼頭 浩史, 三島 健一, 長田 侃, 神谷 庸成
Authorship:Coinvestigator(s)
メクロジンは軟骨細胞においてFGFR3シグナルを抑制し、ACHマウスモデルへの経口投与により骨伸長促進効果が認められている。本研究では、メクロジンによるACHの根本的治療開発に向けて、FGFR3シグナルにおけるメクロジンの作用機序を検討する。FGFR3シグナルのMAPK経路のうちERKの上流に位置するMEKやRAF、さらにSTAT経路に与える効果や生体内にユビキタスに発現しているERKのリン酸化に与える影響を検討する。また、ACHマウスモデルに各種濃度のメクロジンを投与して副作用が少なく最大限効果を発揮できる用量やACH以外のFGFR3シグナルが関連した疾患動物モデルにおける効果を検討する。
乗り物酔い防止薬の成分であるメクロジンは軟骨細胞において線維芽細胞増殖因子受容体3(fibroblast growth factor receptor 3 : FGFR3) シグナルを抑制し、軟骨無形成症(achondroplasia:ACH)マウスモデルへの経口投与により骨伸長促進効果が認められている。メクロジンはFGFR3下流のERKのリン酸化を抑制することはこれまでの研究で分かっているが、本研究では胎生期マウス脛骨の軟骨を用いた検討を行い、メクロジンはMAPK経路のうちERK経路およびp38経路に属する一部の遺伝子発現をメクロジンは抑制するというデータを得た。
これまでの研究で、7日齢のACHマウスモデル(Achマウス)に10日間メクロジンを投与したところ、1および2 mg/kg/dayで濃度依存性に骨伸長を促進した。令和元年度は、各種用量を投与し骨長を評価したところ、本プロトコールにおいてはメクロジン2 mg/kg/dayが、副作用が少なく最大限骨伸長効果を発揮できる用量と考えた。令和2年度以降は、メクロジン2 mg/kg/dayの有効性を検証するためにHypマウスの骨のosteoid volume/bone volume (OV/BV) を定量した。メクロジンはHypマウスのOV/BVを有意に減少させたことに加え、成長軟骨の構造を改善させることが判明した。令和4年度には、マウスの骨髄間質細胞(bone marrow stromal cells:BMSCs)を採取してメクロジンを投与するとアリザリンレッド染色性が著名に向上したことから、メクロジンに骨石灰化能改善を認めることをex-vivoでも示すことができた。令和5年度には、Achマウスに骨延長を行い同時にメクロジン投与の開始をした。令和6年度には骨延長マウスモデルのマイクロCT撮影や組織学的解析を行う予定である。
令和元年度は、Achマウスにおいて2 mg/kg/dayがメクロジンの骨伸長効果を発揮する最も有効な投与量であることを示すことができた。令和2年度以降は、2mg/kg/dayのメクロジンを7日齢のHypマウスに同様のプロトコールで投与し、Hypマウスで増加しているosteoid volume/bone volume (OV/BV)や肥大軟骨細胞層の肥厚は減少したというデータを得た。一方、メクロジンはHypマウスで上昇しているFGF23はさらに上昇させ、マイクロCTによる各種海綿骨や皮質骨のパラメータはメクロジンの投与により変化しなかった。サンプルサイズを増やして検討を行ったところ、メクロジン投与によるOV/BVの減少や肥大軟骨細胞層の厚みの減少は再現性が確認されたが、Hypマウスの血清カルシウムおよびリン値の上昇や骨伸長促進効果は限定的であった。令和4年度には、マウスの骨髄間質細胞(bone marrow stromal cells:BMSCs)を採取してメクロジンを投与するとアリザリンレッド染色性が著しく向上したことからメクリジンは骨石灰化能を促進することをex-vivoでも示すことができた。令和5年度には、Achマウスを用いて骨延長を行いメクロジンの投与を開始した。
令和2年度以降に胎生期マウス脛骨の軟骨を用いてRNAseqを行ったところ、メクロジンはFGF2により上昇した一部のMAPKファミリーカスケードに属する遺伝子発現を抑制したことと、MAPK経路のうちERK経路およびp38経路に属する一部の遺伝子発現を抑制したことを示した。しかし、cell freeキナーゼアッセイと軟骨を用いたRNAseqの結果に一部解離が認められる状態であることから、追加精査が必要な状態である。
以上により、本研究はおおむね順調に進んでいると考えているが、追加実験が必要な状態である。
これまでの研究よりメクロジンはMAPK経路においてMEK1/2のリン酸化を抑制することが予想されていた。しかし、令和元年度に施行したキナーゼアッセイでは、メクロジンはMEK1/2のリン酸化抑制効果は軽度だったのに対し、さらに上流のMAP3K3のリン酸化を抑制することが示唆された。令和2年度以降は、胎児マウスの軟骨を用いてRNAseqを行ったところFGFR3シグナル亢進によって上昇した複数のMAPKファミリーカスケードに属する遺伝子をメクロジンが抑制することを示した。また、MAPKのうちERKおよびp38経路に属する遺伝子発現はメクロジン投与により変動したが、JNKは変化しなかった。cell freeキナーゼアッセイと軟骨を用いたRNAseqの結果に一部解離が認められる状態であることから追加精査が必要な状態である。今後は、Rat chondrosarcoma(RCS)細胞にメクロジンを添加した後にFGF2を加えFGFR3シグナルが活性化した一定時間後にMAP3K3やMAP2K6のリン酸化抑制効果の評価に加え、ERK、p38、JNK経路における効果をウエスタンブロッティング法による検討を行う。
Achマウスで最も効果を発揮するメクロジン2 mg/kg/dayは、Hypマウスにおいて骨石灰化を有意に促進したが、骨伸長に対する効果や血清カルシウム値やリン値の変動には有意差を認めなかった。一方、マウスの骨髄間質細胞(bone marrow stromal cells:BMSCs)を用いたex-vivoでメクロジンの骨石灰化能促進効果を示すことができた。令和5年度には、Achマウスに骨延長を行いメクロジン投与を開始した。令和6年度には同様の実験を継続し、マイクロCT撮影や組織学的解析を行う予定である。 -
Grant number:19K09596 2019.4 - 2021.3
科学研究費助成事業 基盤研究(C)
長田 侃, 鬼頭 浩史, 三島 健一, 松下 雅樹, 神谷 庸成
Authorship:Coinvestigator(s)
軟骨無形成症(achondroplasia: ACH)は骨伸長の抑制因子であるFGFR3の活性化により発症し、長管骨の長軸成長が障害され低身長を呈する骨系統疾患である。研究代表者らは、メクロジンが新規FGFR3インヒビターであると同定し、ACHマウスモデルへの全身投与により骨伸長を促進したことを報告した。本研究ではFGFR3インヒビターの局所投与による骨伸長促進効果を検討する。幼弱動物の片側関節内や骨端部にFGFR3インヒビターを局所投与し、マイクロCTで骨長を経時的に測定して非投与側と比較する。成長軟骨板の組織学的検討、骨端および骨幹端の骨量や骨梁に対する骨形態学的検討も加える。
特定の短縮した骨に対する治療法は、侵襲の大きい骨延長術しかない。本研究の目的は、マウスモデルへの全身投与により骨伸長促進効果が認められている線維芽細胞増殖因子受容体3(fibroblast growth factor receptor 3 : FGFR3)インヒビターの局所投与による骨伸長促進効果を検討することである。これまでに、4週齢の野生型マウスの膝関節に100μMのメクロジン30μLを計6回隔日投与し非投与側と比較検討したところ脛骨において有意な骨伸長効果を認めた。令和1年度には、軟骨無形成症(achondroplasia:ACH)マウスモデル(ACHマウス)を用いて同様に局所投与し、ACHマウスにおいても脛骨の有意な骨伸長効果を認めた。また、メクロジン最終投与後に蛍光カルシウムキレート剤2種を24時間差で腹腔内投与し24時間あたりの骨伸長量を定量すると、野生型マウスおよびACHマウスで、大腿骨と脛骨における骨伸長効果を認めた。最終年度である令和2年度は、メクロジンの至適局所投与量の検討を行った。100μMのメクロジン10μLを同様のプロトコールで野生型マウスに投与した。骨伸長および骨量は増加傾向であったものの30μL投与時よりは効果は小さいことから、100μMメクロジン10μLよりも30μLが有効と考えた。また、薬剤の膝関節局所投与による成長軟骨への移行を評価した。Indian inkを膝関節に投与し成長軟骨を組織学的に評価すると成長軟骨にIndian inkの染色性が認められた。
今後は、膝関節局所投与による骨伸長効果を示すデータを蓄積するために、成長軟骨の組織学的評価を追加する。また、メクロジン以外のFGFR3インヒビターによる局所投与の骨伸長効果も検討する。局所投与による選択的に骨伸長を促進する治療法が確立されれば非侵襲的な治療法の開発へ結びつく可能性がある。 -
Investigation of osteochondral function via activation of FGFR3 signaling
Grant number:17H04312 2017.4 - 2020.3
Kitoh Hiroshi
Authorship:Coinvestigator(s)
We demonstrated that new bone formation was accelerated during limb lengthening surgery and cartilage degeneration was inhibited via suppressing subchondral bone sclerosis in transgenic mice expressing activated fGFR3 signaling. We concluded that FGFR3 has a positive effect of bone regeneration and joint cartilage preservation. On the other hand, although it is known that FGFR3 signaling suppresses longitudinal bone growth, meclizine, which we found as a drug of FGFR3 inhibitor, significantly promoted bone growth in mice carrying a FGFR3 activating mutation. We determined that the optimal dose of meclizine on bone growth was 2mg/kg/day, and the minimal hepatotoxicity dose of meclizine was 8 mg/kg/day.
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Drug repositioning for successful healing of bone fractures or defects
Grant number:16K10854 2016.4 - 2020.3
MISHIMA KENICHI
Authorship:Principal investigator
Grant amount:\4680000 ( Direct Cost: \3600000 、 Indirect Cost:\1080000 )
We previously reported that lansoprazole accelerated the physiological process of fracture healing in rats. At first, we sought to determine if insoluble lansoprazole could promote local bone formation when combined with beta-TCP bone substitutes in a rabbit cortical bone defect model. However, we failed to demonstrate their therapeutic efficacy because the materials were surrounded with dense granulomatous tissues. Next, we have developed soluble lansoprazole-impregnated artificial bones and evaluated their efficacy by applying to the model.In contrast to the previous experiments using insoluble lansoprazole, significant efficacy of soluble lansoprazole-impregnated bone graft substitutes on local bone accrual could be identified. These results indicate that brief exposure of resident and circulating osteoblastic lineage cells to lansoprazole can be sufficient to enhance local bone regeneration in vivo without apparent cytotoxicity.
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Animal study for evaluating the effect of meclozine on FGFR3 signaling
Grant number:15K10439 2015.4 - 2018.3
Matsushita Masaki
Authorship:Coinvestigator(s)
Achondroplasia (ACH) is characterized by short stature associated with severe complications such as stenoses of foramen magnum and spinal canal due to the gain-of-function mutation in fibroblast growth factor receptor 3 (FGFR3). We have already found that meclozine, an anti-histamine drug that has long been used for motion sickness, inhibited FGFR3 signaling. In the current study, the 1 or 2 mg/kg/day of meclozine increased the bone length of 7-day-old Ach mice for 10 days, but did not rescue the foramen magnum stenosis. Meclozine administration would be commenced immediately after birth since the synchondroses around the foramen magnum was closed at the age of 4.5 days. On the other hand, the 1 or 2 mg/kg/day of meclozine increased the bone volume and bone mineral density in addition to the bone length in growing Ach mice.
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培養骨髄細胞と骨分化促進剤を組み合わせたハイブリッド型人工骨の作製
2013.4 - 2015.3
科学研究費補助金 若手研究(B)
Authorship:Principal investigator