科研費 - 洗平 昌晃
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14族ナノシートのキャリア輸送特性と新機能開拓
研究課題/研究課題番号:24H00853 2024年4月 - 2027年3月
科学研究費助成事業 学術変革領域研究(B)
洗平 昌晃, 山影 相
担当区分:研究代表者 資金種別:競争的資金
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14族ナノシートに関する総括的研究
研究課題/研究課題番号:24H00849 2024年4月 - 2027年3月
科学研究費助成事業 学術変革領域研究(B)
黒澤 昌志, 安藤 裕一郎, 川那子 高暢, 洗平 昌晃
担当区分:研究分担者 資金種別:競争的資金
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研究課題/研究課題番号:22K12059 2022年4月 - 2025年3月
科学研究費助成事業 基盤研究(C)
洗平 昌晃
担当区分:研究代表者 資金種別:競争的資金
配分額:4160000円 ( 直接経費:3200000円 、 間接経費:960000円 )
近年,データ科学の技術を利用して,計算物質科学の分野で用いられてきた高精度な第一原理電子状態計算の結果を再現するポテンシャル(機械学習ポテンシャル)の作成が盛んに試みられており,第一原理電子状態計算では太刀打ちできないサイズの系・現象への適用が期待されている.本研究課題では,機械学習ポテンシャルを用いた自由エネルギー計算手法を作成し,その可能性を探る.次世代の素子材料や電池などは,多数の原子・分子が織り成す複雑な協奏的現象がその特性を支配している.協奏的現象をエネルギー論の観点だけからでなく速度論の観点からも解析することのできる本計算手法は,次世代を牽引する産業技術開発に資するものである.
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シリコン酸化膜に覆われたゲルマネンを用いた超高速エレクトロニクスの開発
研究課題/研究課題番号:20K21142 2020年7月 - 2022年3月
日本学術振興会 科学研究費助成事業 挑戦的研究(萌芽)
大田 晃生, 牧原 克典, 田岡 紀之, 洗平 昌晃
担当区分:研究分担者 資金種別:競争的資金
配分額:650000円 ( 直接経費:650000円 )
ゲルマニウム原子の二次元結晶であるゲルマネンは、グラフェンと同様のハニカム格子を取ることから非常に特殊な電子状態を有し、グラフェンと同等の高いキャリア移動度に加えて、強いスピン軌道相互作用を持つという特徴が理論的に明らかにされている。しかしながら、現在、その特殊な電子状態をデバイスに展開するには至っていない。そこで、本申請では、ゲルマネンをはじめとするゲルマニウム原子の二次元結晶の電子状態を引き出すと伴に化学的安定性を高めるために、シリコン酸化膜で覆われた状態で形成する方法を確立することを目指す。その後、ゲルマニウム二次元結晶のキャリア輸送特性を実験及び理論の両面から精査する。
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第一原理計算からの気液固複合相ヘテロ界面の実在系非平衡シミュレーション
研究課題/研究課題番号:19K22044 2019年6月 - 2021年3月
日本学術振興会 科学研究費助成事業 挑戦的研究(萌芽)
多田 朋史, 洗平 昌晃
担当区分:研究分担者 資金種別:競争的資金
配分額:2300000円 ( 直接経費:2300000円 )
デバイス性能を議論する際、バルク材料と他相とのヘテロ接合界面の微視的情報の把握が重要であるが、これは大変困難な課題である。それは、原子、分子、イオンが各相に流れ込むことによる不定比組成状態の出現と、反応・拡散速度の違いによる非平衡性のため、ヘテロ界面の実態を微視的に決定することが極めて困難なためである。よって、本研究は第一原理計算を利用した網羅的素過程探索と、気液固複合相の非平衡状態を記述できる長時間ダイナミクス手法とを融合することで気液固複合相ヘテロ界面の実在系非平衡シミュレーションを達成し、新しい計算技術の潮流を生み出すことを目的としたものである。
第一原理電子状態計算の進歩によりバルク材料物性の高精度予測が可能となったが、デバイスとしての性能を議論する際に重要であるバルク材料と他相(気相、液相、固相)との接合界面(ヘテロ界面)に関しては計算技術の飛躍的進展が必要とされている 。これは、原子、分子、イオンが各相に流れ込むことによる不定比組成状態がヘテロ界面に出現することに加え、各素過程に依存した反応・拡散速度の違いによる非平衡性のため 、ヘテロ界面の実態を微視的に決定することが極めて困難なためである。既存の第一原理分子動力学計算では到達不可能な時空間スケールの現象である。よって、ヘテロ界面の正確な微視的モデリングからデバイス設計への道筋を確立するためには、第一原理電子状態計算を利用した網羅的素過程探索と、気液固複合相の非平衡状態を記述できる長時間ダイナミクス手法との融合が必須である。本研究は、代表者開発の大規模開放系動的モンテカルロ法と分担者開発のマルチカノニカル法を発展的に融合することで気液固複合相ヘテロ界面の実在系非平衡シミュレーションを実現し、新しい計算技術の潮流を生み出すことを目的とした研究である。
上記の目標を達成すべく、H31年度(令和元年度)は代表者による動的モンテカルロ用の液体状態の記述法確立と大規模開放系動的モンテカルロ法の更なる高速化、分担者による第一原理計算を用いた網羅的素過程探索と第一原理計算の高速化、を実行した。
H31年度(令和元年度)は代表者による動的モンテカルロ用の液体状態の記述法確立と大規模開放系動的モンテカルロ法の更なる高速化、分担者による第一原理計算を用いた網羅的素過程探索と第一原理計算の高速化、を実行した。動的モンテカルロ用の液体状態の記述法としては、2つの手法について検討を行った。1:固体用動的モンテカルロ法のグリッド手法を採用、2:ニューラルネットワークポテンシャル分子動力学と動的モンテカルロ法との融合。いずれの手法も十分に実行性の高い手法であることを確認した。大規模開放系動的モンテカルロ法の更なる高速化としては、現状のプログラムにおけるホットスポットであるポアソンソルバー部分の高速化に成功した。第一原理計算を用いた網羅的素過程探索では、欠陥を含む酸化物を対象として、その系における網羅的素過程探索を実行し同手法の有効性を確認した。第一原理計算の高速化ではニューラルネットワークポテンシャルを導入することで、第一原理計算の精度をおとすことなく1000倍程度の高速化を達成した。以上の通り、H31年度(令和元年度)の計画を順調に達成し、最終目標に向けて研究は進展している。
令和2年度(最終年度)は、高速化された液体用動的モンテカルロを用いて、複雑系をターゲットとした網羅的素過程探索実行後、巨視的な時間スケールにわたる動力学計算を実行する計画である。また、同目標を達成する上で、電子ダイナミクスを取り入れることの重要性も明らかとなり、当初の計画では含めていなかった動的モンテカルロ法による電子ダイナミクス記述法の構築も含めることとした。研究推進としては、本来であれば代表者と分担者それぞれの活動拠点で定期的な打ち合わせを行うことが望ましいが、昨年12月ごろから世界的に蔓延しだしたコロナウイルスの影響により、個々の拠点からは移動せず、電子メールやWeb会議等を用いて継続的に打ち合わせを行う予定である。代表者と分担者が開発している個々の技術の有機的な融合が望ましいが、目標達成においてはそれぞれの技術とそこで得られた情報をカスケード的に用いることで達成できるため、研究推進としては上記のもので十分であると考えている。 -
Si-Ge系スーパーアトムの内部ポテンシャル変調による量子機能材料創成
研究課題/研究課題番号:19H00762 2019年4月 - 2023年3月
日本学術振興会 科学研究費助成事業 基盤研究(A)
牧原 克典, 大田 晃生, 洗平 昌晃
担当区分:研究分担者 資金種別:競争的資金
配分額:3700000円 ( 直接経費:3700000円 )
本研究では、Si-Ge系スーパーアトム(コア/シェル量子ドット)において、電子および正孔の波動関数制御技術を確立し、均質ナノドットにない固有の物性・機能を実現する。具体的には、GeコアSi量子ドットにおいて、計算科学、半導体プロセスおよび物性評価の各研究者が、それぞれの分野の専門性を生かした相互・有機的連携による新しい視点からナノ構造界面を有する量子井戸に閉じ込めた電子・正孔の波動関数を深考し、スーパーアトム内での電子・正孔の結合・分離状態制御を実現する。これにより、真の量子力学に基づいた波動関数カップリングを実現し、高効率キャリア再結合を実現するSi系エレクトロルミネッセンス材料を創成する。
初年度は、Si/Geスーパーアトム構造において、Geの選択成長温度が室温発光へ及ぼす影響を調べるとともに、Geコア内へのBデルタドーピングがPL特性に及ぼす影響を評価した。
具体的には、n-Si(100)基板上に膜厚~3nmの酸化膜を形成し、pure-SiH4を用いたLPCVDによりSi量子ドットを高密度・一括形成した。続いて、H2希釈5%GeH4のLPCVDによりSi量子ドット上にGeを選択的に成長した。このとき、基板温度は450℃および500℃とし、ドット平均高さが~6-7nmとなるように成長時間を制御した。その後、H2希釈5%SiH4のLPCVDを用いた選択成長により、580℃でGeをSiで被覆することでGeコアSi量子ドットを形成した。形成した試料の室温PLを測定した結果、Geコアの成長温度に依らず、波長1700nm付近にGeコア中の量子化準位を介したブロード発光が認められるが、450℃でGeを選択成長した場合の発光強度は、500℃で成長したGeコアSi量子ドットに比べ、約1桁高いことが分かった。各々の試料のラマン散乱スペクトルを測定した結果、500℃でGeコアを形成した場合には、僅かながらSi-Geに起因するピークが認められるものの、450℃のGeコアでは殆ど認められなかった。これらの結果は、Geを低温で選択成長することで、下地Si量子ドットとGeコア界面のミキシングが抑制され、極めて組成急峻且つ低欠陥密度な界面が得られたことで、Geコア中での発光再結合レートが増大したとして解釈できる。また、Geコア形成時に1%He希釈B2H6ガスをパルス導入することでB添加を行った場合、PL強度が真正ドットに比べ1.4倍に増大することが分かった。これは、Geコアの深いポテンシャル井戸に閉じ込められた正孔数の増加により、発光再結合レートが増大した結果として解釈できる。
本研究では、Si-Ge系スーパーアトム(コア/シェル量子ドット)において、電子および正孔の波動関数制御技術を確立し、均質ナノドットにない固有の物性・機能の実現による高効率キャリア再結合を実現するSi系エレクトロルミネッセンス材料の創成を目的としている。初年度では、高効率キャリア再結合を実現可能とする不純物添加や各プロセスを精査することで、発光強度の増大を実現しており、当初の予定通り進展していると言える。
今後は、Geコア/Siシェル量子ドットの高密度形成と高効率発光素子の開発とともに、キャリアダイナミックスと光学特性に対する電界効果評価を実施する。具体的には、Geコアサイズ、Siシェル厚みを変化させた試料を作成し、コア/シェル界面のミキシング、歪、電子状態を評価し、発光特性に及ぼす影響を明らかにする。また、Geコア/Siシェル量子ドットを活性層とするダイオード構造を設計・作製し、電界印加が発光特性に与える効果を明らかにする。ダイオード構造においては、GeコアSi量子ドットの上部に厚い酸化膜層を形成して、その上部に形成した電極層とドット間でのキャリアの注入・放出を抑制した試料において、正負バイアスの連続パルス印加によって基板側からドットへ電子・正孔を交互に注入したときの発光特性を評価する。さらには、これらの実験と並行して「第一原理計算によるナノ構造界面の物性予測」の観点からGeコアSi量子ドットを探求し、得られる知見を体系的に整理・統合することで新たな概念に基づくSi系エレクトロルミネッセンス材料を創成する。 -
実環境下の損傷敏感試料に微細領域の動態観測技術をもたらす半導体電子ビーム源
研究課題/研究課題番号:19H00666 2019年4月 - 2022年3月
日本学術振興会 科学研究費助成事業 基盤研究(A)
西谷 智博, 目黒 多加志, 洗平 昌晃, 成田 哲博, 本田 善央, 石川 史太郎, 田渕 雅夫, 市川 修平, 保田 英洋, 七井 靖
担当区分:研究分担者 資金種別:競争的資金
配分額:2500000円 ( 直接経費:2500000円 )
次世代の電子顕微鏡技術には、電子線損傷に敏感な試料だけでなく、液中など実環境下でその動態や反応へ観測機能を拡張させることが求められている。このような要求に応えるには、従来を遥かに超える電流密度と単色性だけでなく、既存技術にはない高密度電子パルス特性が電子源に必要不可欠である。本課題では、既存とは異なる電子放出原理の光電効果を利用し半導体から電子ビームを取り出す半導体フォトカソードに着目し、半導体の材料・構造・表面の追求と半導体フォトカソードに適した電子銃装置の研究開発により、電子顕微鏡の観測機能の拡張に適した低単色・高密度のパルス電子ビーム生成の実現を目指す。
本研究では、電子線による損傷が制御され、ドリフトやブラウン運動が原因の像ブレを解消するだけでなく、ナノ秒領域までの試料の動態や反応の時間分解能までの観測を実現するため、2019年度の実施研究は設定した目標に対して、半導体材料とその表面処理方法の追究、および電子銃・電子顕微鏡の整備と共に液中試料セルの開発と試料・溶液の条件追究を次の通り行った。
半導体材料の追及:InGaN半導体では、量子効率の電子を生成する半導体層の膜厚との相関から最適化を行い、これまでの開発で最高となる量子効率20%を達成した。AlGaAs半導体では、量子効率を損なわず小さな電子エネルギー分散の実現が可能な超格子構造をエネルギーバンド計算から見積もり、超格子半導体を作成し、量子効率の励起エネルギー依存性の結果から量子閉じ込め効果を確認し、尚且つ生成した電子ビームをソレノイドスキャン法によるエミッタンス測定から最小で電子のエネルギー分散50meVの達成を確認した。表面処理方法の追究:あいちSR、理科大での表面観測を通して得た表面アニール・NEA処理過程に対する量子効率・仕事関数の相関の結果から表面機能がより長時間維持する高耐久化手法を見出した。電子銃・電子顕微鏡整備・液中試料ホルダー:要件を満たすために電子銃と電子顕微鏡との間に縮小ビームオプティクス・ビームシフト・真空作動排気を兼ねた取り合いを設計・作成を行った。かつ独自に考案した液中試料セルを用い、溶液条件最適化により水溶液中の金コロイドの観測に成功した。
本年度は、半導体、表面、電子銃・電子顕微鏡の何も設計や整備、条件だし・最適化を計画し、次に詳細を示す通り“最終目標に対する達成度“が70%と概ね予定をクリアした。
半導体材料(達成度70%):(1) AlGaAs系、GaN系半導体の結晶成長作成条件である成長層の膜厚、組成およびp型濃度をパラメータとした半導体構造の結晶成長した-達成度100%-。(2) 作成した半導体の表面にセシウムを蒸着することで負電子親和力表面処理を施し、量子効率とその寿命測定を評価した-達成度100%-。(3) (2)で得られた実験結果を半導体構造設計へフィードバックし、①②を行程として、高い量子効率と速い応答性、高耐久を兼ねる半導体フォトカソードを実現する-達成度50%-。(4) (3)までの行程で有望と判定した半導体フォトカソード素子を名古屋大学所有の半導体フォトカソード電子銃を搭載した透過型電子顕微鏡による像観測により、可干渉性を評価する-達成度50%-。(5) (4)で得られた評価結果を、更に各半導体構造の設計へとフィードバックし、より可干渉性の良い電子ビーム発生に優れた半導体を作成する-達成度50%-。
表面処理方法(達成度70%): (1) NEA表面処理過程、表面劣化状態について表面観測を行い-達成度100%-、(2) 高量子効率かつ高耐久な表面処理方法を見出し-達成度60%-、また(3) 第一原理計算を用いた表面構造・ポテンシャルモデル追求を開始-達成度60%-した。
電子銃・電子顕微鏡整備・液中試料セル(達成度70%):電子銃は電子ビームの縮小・シフトを行うビームオプティクスを設計・製作を行い-達成度80%-、名古屋大学および大阪大学所有の電子顕微鏡の設置およびカメラの整備-達成度80%-、独自考案した液中試料セルを製作し水溶液中の金ナノコロイドの観測まで至った-達成度50%-。
本研究の最終目的である“電子線による損傷が制御され、ドリフトやブラウン運動が原因の像ブレを解消し、ナノ秒領域までの試料の動態や反応の時間分解能までの観測の実現“に向けた効率的推進策として、2019年度に得られた研究成果と進捗を利用して、従前のマイルストーン目標から次の通り焦点を更に絞り実施する。
A)電界放出型電子源と同等の単色性と1000倍以上の高い電流引出し(>1mA)。
B)凍結試料のドリフト(~10nm/s)に対しては1ミリ秒、液中試料のブラウン運動(~10μm/s)に対しては100ナノ秒以下の速い撮像が必要のため、パルス幅は100ナノ~1ミリ秒の範囲で調整可能であること。
C)パルス繰返し周波数は最小1パルス生成から100マイクロ秒以下の間隔で生成し、かつ検出器やカメラと同期が可能であること。
今後の実施研究は、A)~C)を満たす半導体とその表面処理の追究、A)~C)に対応した実験が可能な電子銃と電子顕微鏡の開発・整備を進め、最終目的に不可欠な試料セルと試料溶媒条件の追究を遂行していく。 -
一般化アンサンブル法を用いたGaN結晶成長の解析
研究課題/研究課題番号:19H04541 2019年4月 - 2021年3月
日本学術振興会 科学研究費助成事業 新学術領域研究(研究領域提案型)
洗平 昌晃
担当区分:研究代表者 資金種別:競争的資金
配分額:3770000円 ( 直接経費:2900000円 、 間接経費:870000円 )
本研究は申請者が開発している自由エネルギー解析手法(一般化アンサンブル法)を用いて,GaNの結晶成長の全貌を明らかにしようとする萌芽的研究である.GaNは次世代の電力用半導体素子(パワーデバイス)として盛んに研究されており,これが実現されると著しい省エネルギー社会が到来すると期待されている.本研究で用いる手法は,従来の電子状態計算手法が苦手とする熱力学的・統計力学的観点を表に出したものである.したがって,本研究終了の暁には,実験と理論の橋渡し役として確立してきた計算物質科学の分野により強固な一面をもたらすことが期待される.
窒化ガリウム(GaN)の結晶成長における気相反応に対して,申請者が開発した自由エネルギー計算を適用した.第一原理電子状態計算手法をエネルギー計算器として計算を実行し,Ga(CH3)3がH2やNH3分子と反応する際の自由エネルギーランドスケープを得ることができた.しかしながら,得られた自由エネルギーランドスケープから速度論パラメータを得るためには,その精度がまだ不十分であった.その上,計算に要した時間は想像以上であり,この計算を複数回実行するのが厳しいことが分かった.この問題を解決するために,ニューラルネットワークによる古典ポテンシャルを作成し,それをエネルギー計算器として採用し自由エネルギー計算を実行したところ,その計算速度は今後研究を推進していくうえで非常に現実的なものであった.しかしながら,学習していない領域(外挿領域)の構造がたびたび出現したため、分子構造が不自然に分解してしまった.一般的に,非線形回帰に基づく機械学習のアルゴリズムは,外挿領域に対して予測精度が著しく低下することが知られている.従来のニューラルネットワークポテンシャルの作成方法では学習データの重複を排除することができず,これが学習データの収集に大きな制限をかけることになり、ひいてはニューラルネットワークポテンシャルの精度の悪化(外挿問題)と学習の非効率化をもたらしている.今後は原子ごとにニューラルネットワークポテンシャルを学習する方針に転換する.これにより,ニューラルネットワークの入力値の分布が均等となるように学習データを収集することができ効率の良い学習が可能となる.さらに,特徴的な環境にいる原子を漏らさず抽出することができるためニューラルネットワークの外挿問題に対しても改善が期待される.今後は,この方針でロバストなニューラルネットワークポテンシャルを作成し研究を推進する.
窒化ガリウム(GaN)の結晶成長における気相反応では,様々なプロセスを経てGa(CH3)3からGaHに分解すると考えられている.これらのプロセスに対して申請者が開発した自由エネルギー計算を適用した.第一原理電子状態計算手法をエネルギー計算器として計算を実行し,Ga(CH3)3がH2やNH3分子と反応する際の自由エネルギーランドスケープを得ることができた.しかしながら,得られた自由エネルギーランドスケープから速度論パラメータ(活性化障壁高さや試行頻度)を得るためには,その精度がまだ不十分であった.その上,計算に要した時間は想像以上であり,この計算を複数回実行するのが厳しいことが分かった.この問題を解決するために,機械学習手法の一つであるニューラルネットワークによる古典ポテンシャルを作成し,それをエネルギー計算器として採用し自由エネルギー計算を実行した.第一原理電子状態計算手法をエネルギー計算器とした場合に比べて2000倍も速い計算速度が得られた.今後研究を推進していくうえで非常に現実的な計算速度である.しかしながら,学習していない領域(外挿領域)の構造がたびたび出現し、不自然な力が原子に加わったため分子構造が不自然に分解してしまった.今後はこの問題を解決し,ニューラルネットワークポテンシャルをエネルギー計算器とした自由エネルギー計算を実施していく.二年目には気相反応で生成されたGaH分子がGaN基板に吸着されるプロセス,ならびに吸着した分子にNH3分子が反応するプロセスに対して自由エネルギー計算を実施する予定であったが,気相反応の解析に今しばらく時間が必要である.
計算手法である第一原理マルチカノニカルモンテカルロ法は,並列化効率は非常に高いものの,想像以上に計算時間を要することが判明した.この計算を実行しつつ,非常に高速なニューラルネットワークポテンシャルによる計算も実行していく.しかしながら,特に今回の様に非常に自由度の高い気体分子(気相)の反応に対して,ニューラルネットワークポテンシャルによる計算を安定に実行するためには解決すべき問題がある.実際にニューラルネットワークポテンシャルで計算を実行すると,学習していない領域(外挿領域)の構造がたびたび出現し、不自然な力が原子に加わったため分子構造が不自然に分解してしまう.一般的に,非線形回帰に基づく機械学習のアルゴリズムは,外挿領域に対して予測精度が著しく低下することが知られている.従来のニューラルネットワークポテンシャルの作成方法では学習データの重複を排除することができず,これが学習データの収集に大きな制限をかけることになり、ひいてはニューラルネットワークポテンシャルの精度の悪化(外挿問題)と学習の非効率化をもたらしている.今後は原子ごとにニューラルネットワークポテンシャルを学習する方針に転換する.これにより,ニューラルネットワークの入力値の分布が均等となるように学習データを収集することができ効率の良い学習が可能となる.さらに,特徴的な環境にいる原子を漏らさず抽出することができるためニューラルネットワークの外挿問題に対しても改善が期待される.今後は,この方針でロバストなニューラルネットワークポテンシャルを作成し研究を推進する. -
ゲルマニウム系二次元ハニカム結晶の自己組織化形成と結晶構造・電子状態制御
研究課題/研究課題番号:18K19020 2018年6月 - 2020年3月
日本学術振興会 科学研究費助成事業 挑戦的研究(萌芽)
大田 晃生, 黒澤 昌志, 洗平 昌晃
担当区分:研究分担者 資金種別:競争的資金
配分額:1400000円 ( 直接経費:1400000円 )
金属薄膜へのゲルマニウム(Ge)の固溶と偏析を制御することで、Ge原子の二次元結晶を形成することを目指して研究を推進した。Geと共晶反応を示すAlを二次元結晶成長のテンプレートとし、Al蒸着時の堆積速度や膜厚を制御することによりGe(111)ウェハ上にAlをヘテロエピタキシャル成長できることが分かった。さらに、Al蒸着時の基板温度やAl蒸着後の真空中熱処理における処理温度や時間が試料表面の平坦化とGe原子の表面偏析に与える影響を系統的に調べ、サブナノメートルの極薄Ge結晶層を成長できることを明らかにした。
ポストグラフェン材料として注目されているGe原子の二次元結晶の形成は、これまでに清浄化した単結晶金属表面上へのGe原子の蒸着により行われてきた。これに対して、本研究では、Geと共晶反応を示すAl薄膜をGeウェハ上にヘテロエピタキシャル成長し、基板加熱や熱処理に伴うGe原子のAl薄層中への固溶と表面偏析を制御することで、サブナノメートルのGe結晶を成長できることを明らかにすることができた。 -
量子論コンピューティクスによるパワー半導体界面形成機構と電子物性の解明
研究課題/研究課題番号:18H03873 2018年4月 - 2022年3月
日本学術振興会 科学研究費助成事業 基盤研究(A)
押山 淳, 洗平 昌晃, 松下 雄一郎
担当区分:研究分担者 資金種別:競争的資金
配分額:1320000円 ( 直接経費:1320000円 )
本課題においては、大規模長時間シミュレーションを可能にする計算方法論の開発と、それを用いたパワー半導体界面形成機構と電子物性の解明、を目的としている。
本年度における、方法論開発の成果としては以下の二点があげられる。第一は、Real-Space Car-Parrinello Molecular Dynamics (RS-CPMD)コードの、マルチコア・超並列アーキテクチャのコンピュータ上での高速化であり、第二は、深層学習(ニューラルネットワーク)を用いた、密度汎関数理論(Density-Functional Theory: DFT)の運動エネルギー汎関数T[n]の開発である。
RS-CPMDコードのチューニングは京コンピュータ上で行われた。基本プロファイラーを用いた計算時間の解析により、力の計算に関わる一連のサブルーチンにおいて、並列化効率が低いことが判明した。そこで空間並列とバンド並列をハイブリッッドした新たなコードを開発し、高速化が達成された。T[n]の開発においては、過去の深層学習を用いない汎関数のいずれよりも、高精度な汎関数が開発された。Siおよびダイヤモンド半導体のデータから学習し、SiCの物性を記述できる汎関数となっている。
これらの計算手法を応用し、SiC/SiO2界面での炭素原子関連欠陥の同定が行われた。酸化のし残りである炭素がC2の形態を維持して界面に残存し、これが電子トラップの原因となることが判明した。またGaNのエピタキシャル成長の機構を解明する目的で、窒素のガスソースであるアンモニア分子の成長表面上での分解反応を調べた。その結果、成長中のGaリッチなGaN表面では、比較的に弱いGa-Gaボンドがユビキタスに存在し、それが反応のスポットとなって、NH3の分解が生じ、その後NHユニットがGaNネットワークに取り込まれることがわかった。
RS-CPMDコードのチューニングでは、基本プロファイラーを用いた解析により、力の計算に関わる一連のサブルーチンにおいて、並列化効率が低いことが判明した。そこで、この部分がバンド並列に対して極めて並列化効率が高いことに着目し、空間並列とバンド並列を併用するハイブリッド並列コードを新たに開発した。この結果、京コンピュータ1000ノード規模のリソースを用いて、1000 - 2000原子系のサブナノ秒MDシミュレーションが可能となった。T[n]の開発においては、深層学習を用いた汎関数により、過去に開発されたT[n]のいずれよりも、高精度な汎関数が開発された。これを用いたオーダーN計算法確立の側面では、第一原理局所擬ポテンシャルの開発と、T[n]を含むオイラー方程式解法が不可欠であるが、そのいずれにも成功している。
パワー半導体界面計算においては、SiC/SiO2界面での炭素原子関連欠陥の同定が行われた。酸化のし残りである炭素に起因する欠陥の形態、生成エネルギーを網羅的に調べ、またそれぞれの欠陥が引き起こすギャップ中の電子準位を、異なる荷電状態に対する全エネルギー計算から導き出し、電子トラップと成り得る候補を絞り込んだ。またGaNのエピタキシャル成長機構解明では、窒素のガスソースであるアンモニア分子の成長表面上での分解反応を調べ、成長中のGaリッチなGaN表面では、比較的に弱いGa-Gaボンドがユビキタスに存在し、それが反応のスポットとなって、NH3の分解が生じ、その後NHユニットがGaNネットワークに取り込まれることがわかった。また成長温度では、Gaリッチ表面では、Gaアド原子が高い拡散係数を示し、いわば2次元Ga液体が形成されていることが初めてわかった。
RS-CPMDの高速化が達成されたので、これにより乱れた系の動的性質を調べる。具体的にはパワーデバイス界面(MOS界面)の絶縁体として、なくてはならないアモルファスSiO2の構造的、電子的性質を第一のターゲットとする。アモルファスをコンピュータ上で作成するために、未だかって行われたことのない大規模長時間melt-quenchシミュレーションを実行する。具体的には1500原子系、600原子系、200原子系を取り上げ、100K/ps、50K/ps、10K/psというゆっくりとしたクエンチ速度でアモルファスを作成し、得られた構造的・電子的性質の、シミュレーションサイズ、クエンチ速度依存性を明らかにし、シミュレーションの精度を担保する技術開発を行う。このアモルファス(いわばハウス・アモルファス)を用いて、現実のMOSデバイスにおける半導体/絶縁体界面を調べる。
運動エネルギー汎関数T[n]については、まだ改善の余地がある。第一はtarnsferrabilityの確保である。現在は深層学習を行った物質群に対してはその物性値を再現できる、また学んだSi、ダイヤモンドに類似の炭化ケイ素については物性値を予測できる、というレベルである。これを学習方法を改善し、より広範な物質群に対する有効性を高める手法を編み出すことを目指す。
物質計算ターゲットとしては、GaNエピタキシャル成長の素過程を実際の成長温度でシミュレートし、解明することに傾注する。 -
第一原理電子状態計算に基づく自由エネルギー解析手法の開発とその応用
研究課題/研究課題番号:16K17551 2016年4月 - 2019年3月
日本学術振興会 科学研究費助成事業 若手研究(B)
洗平 昌晃
担当区分:研究代表者 資金種別:競争的資金
配分額:4420000円 ( 直接経費:3400000円 、 間接経費:1020000円 )
次世代素子材料や省エネルギー素子,電池などの動作機構は,多数の原子・分子の多様な電子状態を介した複雑な現象がその本質にある.その解析のために,計算物質科学の分野で用いられている精密な電子状態計算手法と,系の熱力学的・統計力学的性質を記述する自由エネルギー解析手法を組み合わせたハイブリッドな計算手法を開発した.開発した解析手法は予想以上に計算時間を要することが判明したため,ニューラルネットワークを利用した高精度原子間ポテンシャルを利用する枠組みも開発した.この手法を,強誘電体チタン酸バリウムの酸素空孔拡散や電解液の分解によるガス発生の解析に適用し,これらの現象の理解に役立つ結果を得た.
本研究課題で開発した計算手法は,従来の電子状態計算手法に熱力学的・統計力学的観点を新たに付加するものであり,実験と理論の橋渡し役として確立してきた計算物質科学の分野により強固な一面をもたらすことが期待される.本手法を適用した系,強誘電体チタン酸バリウムの酸素空孔拡散や電解液の分解によるガス発生は,その性能劣化に関連しており応用上大変重要な現象である.また,本研究課題にて開発している手法に興味を持った企業との共同研究が始まっている.したがって,「実験と理論の橋渡し役」や「産業技術に対する貢献」を目指した本研究課題は学術的にも社会的にも大変意義深いものである. -
新規IV族系二次元物質の創製
研究課題/研究課題番号:15H03564 2015年4月 - 2018年3月
日本学術振興会 科学研究費助成事業 基盤研究(B)
白石 賢二, 財満 鎭明, 宮崎 誠一, 中山 隆史, 牧原 克則, 初貝 安弘, 洗平 昌晃, 中塚 理
担当区分:連携研究者
シリセン、ゲルマネンの電子構造と原子構造を第一原理計算で行った。まず、絶縁体であるAl2O3上のシリセンとゲルマネンの電子構造を計算した。その結果、バンド構造はK点でディラックコーンを持つフリースタンディングのシリセン、ゲルマネンのバンド構造を保存することがわかった。しかし、細かく見ると表面への吸着構造に依存してシリセン、ゲルマネンのバンド構造が微妙に変わることを明らかにした。
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シリコン系二次元ハニカム結晶の創製と電子物性の解明
研究課題/研究課題番号:15K13943 2015年4月 - 2017年3月
日本学術振興会 科学研究費助成事業 挑戦的萌芽研究
大田 晃生, 洗平 昌晃, 黒澤 昌志
担当区分:研究分担者 資金種別:競争的資金
配分額:1000000円 ( 直接経費:1000000円 )
SiおよびGeで構成される二次元結晶を主たる対象として、その成長メカニズムを深耕し、新しい二次元結晶成長方法を確立することを目的とした。SiやGeと共晶反応を示すAgを、SiおよびGe基板上にヘテロエピタキシャル成長し、共晶点以下の温度で熱処理することでAg表面にSiやGeを析出できることを明らかにした。また、熱処理温度や時間を調整することで、その析出量を制御可能であることが分かった。その中でも、450度で熱処理したAg/Ge構造では、高分解能の断面TEM分析により、原子レベルで平坦なAg表面上に、二次元結晶に相当する2原子層の周期的なGe原子の配列が認められ、本手法の有効性を示した。
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ナノ空間における溶液物性と電気化学過程の理論的解明
研究課題/研究課題番号:21244045 2009年 - 2012年
日本学術振興会 科学研究費助成事業 基盤研究(A)
塚田 捷, 赤木 和人, 田村 宏之, 濱田 幾太郎, 真砂 啓, 洗平 昌晃
担当区分:連携研究者
種々の分子シミュレーションの手法を用いて、固液界面での電解質水溶液の構造とダイナミクスを調べ、特徴的な空間スケールと時間スケール、水素結合ネットワーク中での各イオン種のふるまい、電気二重層構造の起源にミクロな視点からの理解を与えた。電極電位の効果を考慮して酸性溶液と白金電極との界面における水素発生の機構を定量的に評価した。また、界面系への適用を視野に光励起や電場の印加に始まる電子移動を扱うための理論的枠組みを構築した。
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時間依存密度汎関数法による炭素系ナノ構造の非平衡電子状態の研究
研究課題/研究課題番号:04J02793 2004年 - 2006年
日本学術振興会 科学研究費助成事業 特別研究員奨励費
洗平 昌晃
担当区分:研究代表者 資金種別:競争的資金
配分額:2800000円 ( 直接経費:2800000円 )
電界電子放射現象はナノスケールの電子源として期待されており,理論・実験ともに精力的に研究されている物理現象である.この現象は強電界・強電流下での量子トンネル現象であり、そのような状況下では放出先端構造が著しい損傷を受けることが実験的に観測されている。このことはナノスケール電子源の寿命と密接な関連を持ち,電界電子放射現象を利用した次世代デバイスの実現に関して非常に重要な問題である.そこで,電界電子放射現象下でのNa原子に働く力をリカージョン伝達行列法(RTM)を用いて研究した.RTM法は電界電子放射現象のみならず,原子架橋系での定常電気伝導の研究にも使われる第一原理計算手法である.
この研究において,電界電子放射による原子蒸発の閾値電界強度を見積もることができた.その際,蒸発原子は有効的に負に帯電していることを明らかにした.蒸発原子が負に帯電することは,電界電子放射現象を起こす際に印加される電界の向きとは矛盾せず,過去に成された理論研究とも合致している.しかしながら,実際に電流が流れている状況下でこのことを示したのは本研究が初めてである.また,この研究で得られた興味深い知見は,"ポテンシャル曲線から理解される電界電子放射現象下での原子の蒸発メカニズムは,蒸発原子の有効電荷の符号と電界の方向を除けば,通常の電界蒸発現象と同じである",ということである.このことに関しては詳細な研究が行われる必要があるが,この研究は電界電子放射現象下での表面原子過程を理解するための足がかりになるものと考えられる.