科研費 - 山中 宏二
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TDP-43病理形成・分解機序に着目した筋萎縮性側索硬化症の分子病態解明と制御
研究課題/研究課題番号:22H00467 2022年4月 - 2027年3月
科学研究費助成事業 基盤研究(A)
山中 宏二, 岡田 洋平
担当区分:研究代表者
配分額:41470000円 ( 直接経費:31900000円 、 間接経費:9570000円 )
運動神経を傷害する神経変性疾患である筋萎縮性側索硬化症(ALS)の病巣では、TDP-43タンパク質が異常蓄積することが病理学的特徴として知られ、TDP-43病理と呼ばれている。本研究課題では、モデル動物やiPS細胞モデルの開発、オルガネラやグリア細胞病態を手がかりに、ALSにおけるTDP-43病理の形成機序や、TDP-43等の病原タンパク質の新たな分解メカニズムを明らかにして、ALSにおける神経変性機序の解明と治療法開発を目指す。
本研究では以下の3つの研究計画を実施した。
1)TDP-43病理形成メカニズムの解明とTDP病理を再現する新規ALSモデル動物の開発:ALS死後脳解析によりTDP-43の多量体化の低下,つまり単量体化の亢進が孤発性ALSの脳・脊髄組織で認められることや,そのTDP-43病理形成における分子メカニズム、さらに各種ストレスによって単量体化が促進することを明らかにして、これらの成果を論文発表できた。TDP-43病理を再現する新規モデルマウスを繁殖し、各種Creマウスとの交配により、変異TDP-43が脊髄組織に発現することを確認し、予備的な組織解析データを取得するとともに、加齢依存性の表現形を解析するため、観察を続けている。
2)オリゴデンドロサイトに着目したALSにおける「非自律性」神経変性機序の解明:
代表者は,オリゴデンドロサイト特異的にTDP-43を発現するマウス脊髄から単離したオリゴデンドロサイトにおいてRNAシーケンスにより網羅的遺伝子発現解析を行った。その結果、脂質代謝や髄鞘関連の遺伝子の多くに発現異常を認めた。また、加齢により、大脳白質の髄鞘の異常や脊髄前角にグリオーシスを認めることが判明した。
3)TBK1による新たなTDP-43分解機構の同定と異常タンパク質分解を標的とした疾患修飾療法開発:今年度は、ALSの脳・脊髄組織におけるALS原因遺伝子産物であるTBK1活性の低下を見出した。さらに、小胞体・ミトコンドリア接触領域(MAM)の破綻がTBK1の活性低下を引き起こして、運動神経細胞のタンパク質ストレス応答異常を引き起こすことを解明した。以上の研究成果を論文発表した。
研究成果を2報のハイインパクト雑誌に報告できた。また、モデル動物の解析が順調に進捗している。
モデル動物の解析は時間を要することが想定されるため、計画的に繁殖や解析を行うように留意する。 -
タンパク質の構造生物学に基づいた筋萎縮性側索硬化症の分子病態解明と治療法開発
研究課題/研究課題番号:19KK0214 2019年10月 - 2025年3月
JSPS 科学研究費助成事業 国際共同研究加速基金(国際共同研究強化(B))
山中 宏二, 渡邊 征爾, 祖父江 顕
担当区分:研究代表者 資金種別:競争的資金
配分額:18330000円 ( 直接経費:14100000円 、 間接経費:4230000円 )
本研究課題は、英国リバプール大学の構造生物学研究チームと共同で病因タンパク質の構造生物学的知見に基づいた筋萎縮性側索硬化症(ALS)の分子病態解明と新規治療法の開発を目指す。具体的に、2種類のALS原因タンパク質SOD1、TDP-43に着目し、SOD1については、その立体構造を安定化することにより疾患の進行を抑制する化合物の開発を行う。TDP-43については、ALSで見られる病理像の鍵となるTDP-43タンパク質の構造異常を英国チームと共同で解析する。本国際共同研究を通じて、新たな視点でのALSの病態解明、治療法開発や、異分野を俯瞰する国際的に視野の広い若手研究者の育成が期待される。
1) ALS原因蛋白質SOD1の立体構造を安定化させて疾患の進行を抑制する化合物の開発:
二量体として存在するSOD1はALS疾患変異の導入によりその構造異常を来すことが知られている。英国チームは,低分子化合物エブセレンを構造展開してより良い候補化合物を複数合成することに成功した。本邦チームは,昨年度までに一部のエブセレン類縁化合物が変異タンパク質による神経毒性に対する軽減効果を発揮することを培養神経細胞において見出している。そこで,SOD1G93Aマウスに対するエブセレン誘導体の神経保護効果を検討した。エブセレン誘導体の慢性経口投与により,遺伝性ALSモデルマウスの発症時期を有意に遅延させ,神経筋接合部の脱神経所見の改善,脊髄における変異SOD1オリゴマーの蓄積を軽減することを見出した。これらの研究結果を,英国チームと共同で論文投稿中であり,必要な追加実験を行った。
2) 単量体TDP-43の分子の生物物理学的性状解析と立体構造解析:
本邦チームは,TDP-43の単量体化によりALSに特徴的なTDP-43病理である,タンパク質の局在異常とリン酸化TDP-43の異常凝集が惹起されることを見出している。今年度は,この単量体型TDP-43タンパク質の機能解析と単量体化メカニズムについて検討を続けている。さらに,TDP-43の多量体化の低下,つまり単量体化の亢進が孤発性ALSの脳・脊髄組織で認められることや,そのTDP-43病理形成における分子メカニズムについて明らかにした。これらの成果を論文発表した。
今年度も,英国における共同研究・実験実施のため,英国への渡航を計画していたが延期した。その間,Web会議等によって共同研究に関して継続的に打合わせを行っている。
COVID-19により英国への渡航が延期になったため,ALS原因蛋白質SOD1の立体構造を安定化させて疾患の進行を抑制する化合物の開発に関する実験計画は遅延した。一方で、TDP-43に関する研究成果を論文発表することができた。
双方の研究チームがWeb会議等によって密に連携して、各チームの担当課題を進めるように努める。また,相互に研究交流が再開できるように努める。ただし,当該国の感染状況悪化や大学の活動制限が再度発生した場合には研究計画の変更を検討する。 -
TBK1遺伝子ネットワークから解明するALSの分子病態とその制御
研究課題/研究課題番号:18H02740 2018年4月 - 2022年3月
JSPS 科学研究費助成事業 基盤研究(B)
山中 宏二, 高橋 英機
担当区分:研究代表者
配分額:17030000円 ( 直接経費:13100000円 、 間接経費:3930000円 )
本研究課題では、ALSの原因遺伝子として同定されたTBK1について機能解析を行った。TBK1は、神経炎症、タンパク質代謝において2面的な役割を持つことが示唆されている。運動神経変性におけるTBK1の役割を明らかにするため、ALSモデルマウスや神経損傷モデルにおいてTBK1二重欠失モデル(TBK1-DKO)を作成して機能解析を行った。TBK1-DKOでは、ALSや神経損傷モデルにおいて神経炎症の軽減傾向を認めた。また、ミトコンドリア・小胞体接触部(MAM)において、TBK1が活性化されることや、タンパク質恒常性ストレス応答においてMAMに局在する活性型TBK1が関与することが示唆された。
本研究課題では、運動神経を傷害する指定難病である筋萎縮性側索硬化症(ALS)の原因遺伝子として同定されたTBK1について機能解析を行った。免疫系の分子として知られていたTBK1が、ALSの神経変性にどのように関与するかは不明であった。本研究を通じて、TBK1が神経炎症の調節およびタンパク質のストレス応答に寄与することや、ALSモデルマウスにおいてTBK1活性が低下していることを見出した。将来的にTBK1の活性調節を標的としたALSの治療法開発につながることが期待される。 -
小胞体・ミトコンドリア連関に着目した運動神経変性機序の解明
研究課題/研究課題番号:18H04860 2018年4月 - 2020年3月
文部科学省 科学研究費補助金 新学術領域研究(研究領域提案型)
山中 宏二
担当区分:研究代表者 資金種別:競争的資金
配分額:7410000円 ( 直接経費:5700000円 、 間接経費:1710000円 )
筋萎縮性側索硬化症(ALS)における、オルガネラゾーンとしての小胞体・ミトコンドリア接触部(MAM)の関与は、それぞれのオルガネラ異常仮説を統合的に説明できる病態機序として注目されている。これまでに代表者は、MAMに局在するタンパク質、Sigma1受容体(Sigma1R)に注目し、SIGMAR1、SOD1変異によるALSモデルで共通してMAMの破綻を見出したことから、MAMの破綻がALSにおける神経変性に広く共通する分子メカニズムとなる可能性を示してきた。本研究課題では、1) ALSの運動神経細胞における MAMの破綻に至る分子機構の解明、2)MAM破綻の下流経路の解明:神経変性に関わる分子カスケードの同定を目指す。
2019年度は、昨年度までに開発したMAMの状態を可視化、定量する技術を用いて研究をすすめた。分割蛍光タンパク質あるいは分割ルシフェラーゼを安定的に発現する神経細胞株を樹立した。そのうち、分割ルシフェラーゼの系は、安定的に発光によりMAMを定量検出が可能であること、また可逆性が担保できることからMAMの評価系として有用であることが判明した。さらに、ALS原因遺伝子発現ライブラリ(約20遺伝子)を用いて、MAMの破綻がALS原因遺伝子を発現させた際に共通して惹起されることを見出した。さらに、MAM破綻に関わる候補分子を同定するため、Sigma1受容体の近傍分子を網羅的にビオチン化する系(APEX2-Sigma1R)を用いた質量分析により、MAM維持に関わる候補分子を同定した。これらのうち神経疾患の病態に関与する分子を複数見出しており、その病態形成への意義について研究を進めている。
令和元年度が最終年度であるため、記入しない。
令和元年度が最終年度であるため、記入しない。 -
グリア・末梢免疫連関の制御を通じた神経変性機序の解明と治療標的同定
研究課題/研究課題番号:16H01336 2016年4月 - 2018年3月
文部科学省 科学研究費補助金 新学術領域研究(研究領域提案型)
山中 宏二
担当区分:研究代表者 資金種別:競争的資金
配分額:8840000円 ( 直接経費:6800000円 、 間接経費:2040000円 )
本研究では、免疫学的背景の異なる2種類のSOD1変異ALSモデルマウスを作成して、それらの分子病態を比較することを通じて、神経変性疾患の病態と末梢免疫反応との連関の解明を目的とする。
末梢免疫背景の異なる細胞性免疫(Th1)優位なC57BL/6系統、及び液性免疫(Th2)優位なBalb/c系統の2種類のALSモデル(以下G93A(B6)、G93A(Balb))マウスを作成し、生存解析を行った。G93A(Balb)マウスの平均生存期間は、G93A(B6)マウスに対して有意に短縮した (G93A(Balb): 199.1 days; G93A(B6): 224.6 days, n=17-18)。次に、病態への関与が予想される遺伝子群の脊髄における発現を比較し、G93A(Balb)マウスにおいてケモカインや神経栄養因子の発現が低いことを見いだした。また、G93A(Balb)マウスでは、G93A(B6)と比較して免疫細胞の脊髄内浸潤がほとんど起こらず、脊髄内の活性化ミクログリアの細胞数の低下がみられた。その機序の一端として、発症後のG93A(Balb)マウスにおいて、ミクログリアの細胞死が亢進していた。一方、遺伝的背景による影響を検証するため、C57BL/6マウス及びBalb/cマウス由来の初代培養ミクログリアを比較したが、細胞増殖率に差は見られなかった。さらに、血清中の免疫・炎症関連分子の発現解析を行ったところ、G93A(Balb)マウスの末梢血におけるケモカインやある種のサイトカインの低下傾向を認めた。
以上の結果から、G93A(B6)マウスとG93A(Balb)マウスにおけるミクログリアの表現型や病態の差異は遺伝的背景によるものではなく、免疫反応など神経組織外の環境に由来することが示唆された。
29年度が最終年度であるため、記入しない。
29年度が最終年度であるため、記入しない。 -
アストロサイト異常に着目した遺伝性・孤発性ALSの病態解明
研究課題/研究課題番号:26293208 2014年4月 - 2018年3月
JSPS 科学研究費補助金
山中 宏二
担当区分:研究代表者 資金種別:競争的資金
配分額:16250000円 ( 直接経費:12500000円 、 間接経費:3750000円 )
筋萎縮性側索硬化症(ALS)のモデルマウスを用いて、グリア細胞の一種であるアストロサイトの異常に着目して研究を行った。ALS患者・マウスのアストロサイトでは、サイトカインTGF-β1が異常に増加し、グリア細胞による神経保護環境を阻害することにより、病態を加速していることが判明した。TGF-β1の阻害剤投与により、ALSマウスの生存期間が延長したことから、TGF-β1はALSの治療標的として有望であると考えられた。また、ALSマウスの病巣では異常に活性化したアストロサイトが見られ、その除去機構として、自然免疫分子であるTRIFが関与するアポトーシスが関与していることを見出した。
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脊髄環境の恒常性維持とその破綻:グリアー神経連関からみた神経変性機序の解明
研究課題/研究課題番号:23111006 2011年7月 - 2016年3月
文部科学省 科学研究費補助金 新学術領域研究
担当区分:研究代表者 資金種別:競争的資金
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脳・全身連関による組織線維化の制御機構の解明と医学応用
研究課題/研究課題番号:16KT0110 2016年7月 - 2019年3月
JSPS 科学研究費補助金
菅波 孝祥
担当区分:研究分担者 資金種別:競争的資金
組織線維化は、生活習慣病を含む多くの慢性炎症性疾患の終末像であり、アンメット・メディカル・ニーズが極めて高い。本研究では、非アルコール性脂肪肝炎(NASH)における肝線維化が臓器局所と中枢との臓器連関で制御される分子メカニズムを検討した。動物モデルとして、研究代表者が独自に確立した遺伝性肥満MC4R欠損マウスを用いた。これは、肥満やインスリン抵抗性を背景として、脂肪肝、NASH、肝細胞癌を経時的に発症する。本研究では、線維化の駆動エンジンとして働く微小環境(CLS)を構成するマクロファージの由来や特徴を明らかにするとともに、中枢MC4Rシグナルによる肝臓マクロファージの制御機構を明らかにした。
肝線維化のメカニズムとして、肝細胞死に引き続くマクロファージや線維芽細胞の活性化が指摘されているが、本研究において、慢性炎症や線維化の起点となる微小環境が初めて明らかになった。また、同様の微小環境が脂肪組織や腎臓などにおいても観察され、その共通性や臓器特異性を明らかにすることで、慢性炎症性疾患に対する理解が深まると期待される。最近、MC4R作動薬など中枢神経系を標的とする抗肥満薬の開発が進んでいる。中枢性の炎症制御機構の解明は、新たな抗肥満薬の臨床応用に貢献すると考えられる。 -
神経-グリアネットワーク変調が来す運動神経変性機序の解明
2011年4月 - 2012年3月
科学研究費補助金 新学術領域研究(研究領域提案型)
担当区分:研究代表者
研究分野:シナプス・ニューロサーキットパソロジーの創成
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筋萎縮症側索硬化症におけるNeuregulinの役割の解明
2010年4月 - 2013年3月
科学研究費補助金 外国人特別研究員奨励費
担当区分:研究代表者
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筋萎縮性側索硬化症のグリア細胞の分子病態の解明を通じた治療法の開発
2009年4月 - 2012年3月
科学研究費補助金 基盤研究(B)
担当区分:研究代表者
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神経炎症の制御を標的とした筋萎縮性側索硬化症の治療法の開発
2008年4月 - 2010年3月
科学研究費補助金 特定領域研究
担当区分:研究代表者
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神経変性疾患における病因遺伝子産物のユビキチン修飾と分解機構の解明
2007年4月 - 2009年3月
科学研究費補助金 特定領域研究
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筋萎縮性側索硬化症におけるミクログリアの分子病態の解明
2007年4月 - 2009年3月
科学研究費補助金 基盤研究(C)
担当区分:研究代表者