科研費 - 藤原 慎一
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四肢動物における頭骨構造と捕食様式の進化ー縫合様式の機能についてー
研究課題/研究課題番号:22K03802 2023年2月 - 2028年3月
科学研究費助成事業 基盤研究(C)
松本 涼子, 藤原 慎一
担当区分:研究分担者
頭骨は、複数の骨が様々な形式で組み合わさって構成される立体パズルである。頭骨の組み合わさり方(縫合様式)は、部位によって異なる。これらの縫合は、捕食等の際に頭骨を構成する骨と骨の間に生じる、ひずみを制御していると考えられる。この縫合面の形状とその分布は多様だが、中には分類群を超えた共通性も見られることから、頭骨にかかる力への構造的適応を反映していると予想される。そこで、本研究は四肢動物の頭骨の縫合パターンと、それらの機能的な特性を明らかにし、頭骨の構造進化の変遷を系統的に議論することを目的とする。本研究は、陸上へと進出を果たした四肢動物の頭骨進化と捕食様式の変遷を辿る糸口になると期待される。
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四肢動物の骨格形態のジレンマ:動く機能と、食う・産む機能をどう両立させるか
研究課題/研究課題番号:22K03796 2022年4月 - 2026年3月
科学研究費助成事業 基盤研究(C)
藤原 慎一, 松本 涼子, 田中 康平
担当区分:研究代表者
配分額:4160000円 ( 直接経費:3200000円 、 間接経費:960000円 )
四肢動物の中でも、鯨偶蹄類、食肉類、有鱗類、恐竜類の4つの系統は、運動様式の進化と摂食・繁殖様式の進化が相反する要求を持ちながら連動して進化してきた可能性がある。これは、四肢動物の消化管が通る顎、胸郭、骨盤の3つのゲート構造が、四肢の支持基盤としての運動様式の機能と、餌や卵・仔の抜け穴としての摂食・繁殖様式の機能を併せ持つことに起因すると予想を立て、これを検証していく。本研究は、ゲート構造の「枠強度」と「枠サイズ」を新たな指標と定め、これらが、四肢動物の運動様式と摂食・繁殖様式をそれぞれ反映するか検証する。さらに、両指標を通じて、様式間に相互作用があるかを検証する。
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比較解剖学的・組織学的手法による古生物の嘴の復元
2018年4月 - 2022年3月
科学研究費補助金 基盤研究(C)
担当区分:研究分担者
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比較解剖学的・組織学的手法による古生物の嘴の復元
研究課題/研究課題番号:18K03828 2018年4月 - 2022年3月
日本学術振興会 科学研究費助成事業 基盤研究(C) 基盤研究(C)
田上 響
担当区分:研究分担者
骨と角質からなり、さまざまな形態と機能を持つ脊椎動物のクチバシを、化石分類群でより確からしく復元することを目指し、平成30年度に引き続き令和元年度に、現生鳥類標本を用いて角質部の微細構造を解析した。さらに紫外線蛍光撮影により、現生および化石鳥類の頭骨標本を対象とした角質部の分布調査を行った。
まず現生鳥類のクチバシを用いた角質部の微細構造の解析を、(1) 薄片による角質部断面の偏光顕微鏡観察、(2) 角質部断面の走査型電子顕微鏡観察、(3) X線小角散乱法の3手法により行った。(1)により、クチバシの角質部は外層、中間層、内層の3層に分かれること、また(2)により、外層はさらに微細な薄層の重なりからなること、そして(3)により、層ごとに薄層の傾きが異なることが明らかとなった。
また紫外線蛍光撮影により、古生物のクチバシの復元を試みた。現生鳥類の複数の分類群で頭骨の紫外線照射下撮影を行ったところ、嘴の角質部に覆われる領域は概ね一つの色を呈し、その後端付近において、色の異なる領域との境界が見られた。また、漸新芦屋層群産鳥類化石の下顎標本を同様に撮影したところ、表面に色の異なる領域が確認された。一つの色を呈する領域が必ずしも左右対称でないことから、標本の保存状態等の解釈を要するものの、この調査によって、古生物のクチバシにおける角質部の分布を、紫外線蛍光撮影により検証できる可能性が示唆された。
さらに、CT撮像およびフォトグラメトリによる現生および化石標本の三次元データの収集を行い、角質部とクチバシに伸びる三叉神経の分布に関する調査も開始した。
クチバシの角質部の微細構造解析において、偏光顕微鏡を用いクロスニコルで現生鳥類のクチバシの正中断面の薄片観察を行うと、角質部で消光位が異なる三層(外層、中間層、内層)の層構造を確認できた。また、走査型電子顕微鏡下観察においては、外層内に更に微細な層構造があることが確認でき、この層の向きが偏光顕微鏡下観察での消光位と関係することが分かった。さらにX線小角散乱法によって、外層では背腹軸で一定間隔の繰り返し構造があることと、外層と中間層では微細構造が異なることも示された。この結果を令和元年7月の第12回国際脊椎動物形態学会にて報告した。また、本調査の結果をまとめた論文がJournal of Anatomyにて出版された。
紫外線蛍光撮影による角質部の分布調査では、まず現生鳥類の頭骨標本の紫外線蛍光撮影を行った。複数の標本で角質部に覆われる領域は概ね一つの色を呈し、その後端付近において、色の異なる領域との境界が見られた。漸新統芦屋層群より産出した、化石鳥類の下顎標本の紫外線蛍光撮影を行った。撮影の結果、表面に色の異なる領域が確認された。左右外側で色の分布域が異なるため、可視光では確認できない角質部の分布を、紫外線蛍光撮影により調査できる可能性が示唆される。
さらに、現生および化石標本を対象にCT撮像を行い、CTスキャナで撮像できない大きさの化石標本では、フォトグラメトリによる三次元データの収集を行うことで、角質部とクチバシに伸びる三叉神経の分布に関する調査も開始した。三叉神経を調査することにより、クチバシの角質部の分布を間接的に復元できると期待される。
紫外線蛍光撮影による角質部の分布調査は、鳥類では現生標本と化石標本を比較できる点で、今後も有望であると考えられる。ただ現生カメ類標本はこれまで調査できた数が少なく明瞭な結果も出なかったため、今後撮影を継続し、鳥類と同様の結果を得られるか確認する。クチバシを持っていたと考えられる化石標本に関しても、撮影の許可を頂いたものより紫外線照射下撮影を進め、現生標本と比較しつつ、角質部の分布を検証する予定である。ただ現時点では、紫外線蛍光撮影での色の違いをもたらす要因が明らかとなっていない。今後現生標本を対象に、角質部と骨質部をつなぐ結合組織の分布調査を予定している。
令和元年度より開始したクチバシの領域に伸びる三叉神経の分布調査により、間接的に角質部の分布を復元できることが期待される。まず現生標本での角質部と三叉神経の分布領域の関係を確認し、化石標本での角質部復元を目指す。現時点で、歯とクチバシをともに持つとされる角竜類恐竜のデータを収集しており、まずこれらの解析から進める予定である。 -
四肢動物の骨格形態と四足歩行様式の関係の理解、および絶滅動物の古生態復元への応用
研究課題/研究課題番号:17K17794 2017年4月 - 2023年3月
日本学術振興会 科学研究費助成事業 若手研究(B)
藤原 慎一
担当区分:研究代表者
配分額:4420000円 ( 直接経費:3400000円 、 間接経費:1020000円 )
本研究計画は、動物の胸郭骨格形態と歩行姿勢の関係を探ることを目的とする。本年度は、その中でも、グループ内における姿勢の多様化が著しいトガリネズミやモグラを含む真無盲腸類に着目して、姿勢の違いと関わる胸郭骨格の機能の評価を進めてきた。
多様な真無盲腸類を用いて下方型動物と側方型動物の胸郭骨格で応力解析を行い、いずれにおいても第一肋骨の強度が体サイズと高い相関を示すことが示された。また、骨格内の骨密度をCT値で比較を行った結果、前位の肋骨が特に高い骨密度を示した。これらの結果は、第一肋骨が四足歩行性の動物が前肢で支える体重の負荷を支える主要な部位であることを裏付けるものであり、その強度は動物の運動様式や体サイズの強力な指標となると期待される。
一方、鎖骨について、長軸方向の圧縮に対する骨格強度は、側方からの力に対する抵抗力を反映する。この値は、下方型の種で低く、側方型の種で高い値を示した。また、骨密度も側方型の種が高い傾向を示した。これらの結果から、側方型の種の胸郭骨格は、鉛直方向の圧縮に対する強度だけではなく、側方からの圧縮に対する強度を高める設計をしていることが示された。
以上の結果は、動物が姿勢変化を伴う進化をする際に、胸郭骨格にどのような機能的要求があるのかを理解する一助となる。
昨年度までの成果について、投稿論文の査読修正に時間を要しているため。
これまでの研究は、四肢動物の中でも、主にCT撮像データが入手できる動物グループを中心に進めてきた。今後は、新たに導入した3Dスキャナを用いて、大型四肢動物の骨格を集め、胸郭骨格の機能推定を進めていく。
また、真無盲腸類の胸郭骨格強度と歩行姿勢・運動機能の関係について論文を投稿する。 -
研究課題/研究課題番号:17K05698 2017年4月 - 2022年3月
日本学術振興会 科学研究費助成事業 基盤研究(C)
松本 涼子, 藤原 慎一
担当区分:研究分担者
四肢動物の頭部と首の接合部である後頭部の関節は、1点関節(爬虫類、鳥類)と、2点関節(平滑両生類、哺乳類)に大きく分けられる。これら関節タイプの違いは、「後頭部」と「首」の回転軸の位置や、向きの違いを反映していると予想されるため、本研究では、両関節タイプにおける可動範囲の特性を検証した。
解析の結果、2点関節では上下方向に卓越し、1点関節では上下方向とひねりが卓越する。両関節タイプ共に、左右方向の運動は制限されている点で共通する。特に1点関節については、関節がボールとソケットになっているため3軸回転が予想されたが、実際には2軸回転に限定されていることが明らかになった。
本研究成果は、初期の四肢動物から有羊膜類における首の進化について、機能に裏付けられた議論を可能にした点に意義がある。後頭部の機能的特性を解剖・形態・実験・理論から明らかにした本研究は、機能形態学の新たな領域を開拓し、今後多くの研究に引用され波及効果が大きい。将来の研究課題として、初期の哺乳類における頭部の運動様式と首の進化を見据えている。
本研究は、動物の骨格の違いがどのような機能的な違いに反映されているのかという、素朴な疑問に理論と検証に裏付けられた1つの答えを提供することを可能にした。この様な基礎研究の累積が、多くの人が関心を寄せる古生物の復元をより確からしいものにする。 -
後頭部の形態から読み解く四肢動物の首の運動機能の進化
2017年4月 - 2021年3月
科学研究費補助金 基盤研究(C)
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濡れた紛体における穴構造の安定性とカニの巣穴強度理解への応用
2016年4月 - 2018年3月
科学研究費補助金
担当区分:研究分担者
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濡れた粉体における穴構造の安定性とカニの巣穴強度理解への応用
研究課題/研究課題番号:16K13861 2016年4月 - 2018年3月
日本学術振興会 科学研究費助成事業 挑戦的萌芽研究 挑戦的萌芽研究
桂木 洋光
担当区分:研究分担者
砂浜に生息するスナガニは適度に湿り気のある領域に直径数cm程度の巣穴を作る.このスナガニの巣穴を構成する砂地は物理的には濡れた粉体とみなすことができる.スナガニの巣穴の分布やサイズを決定する因子として濡れた粉体層中の空隙構造の安定性という要素が考えられることになる.本研究ではスナガニ巣穴の空間分布・サイズ分布と濡れた粉体層中のトンネル構造の力学特性との関係を定量的に明らかにするため,実験およびフィールド調査を行った.実験とフィールド調査の結果より,スナガニの巣穴が力学的に十分安定な構造を持つように作られていることが明らかになった.
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研究課題/研究課題番号:15K05331 2015年4月 - 2018年3月
日本学術振興会 科学研究費助成事業 基盤研究(C) 基盤研究(C)
田上 響
担当区分:研究分担者
骨と角質から成り、様々な形態と機能を持つ脊椎動物の嘴の、化石分類群でのより確からしい復元を試みた。まず現生標本の嘴の骨と角質の形態を比較したところ、少なくとも鳥類では、角質が骨によって伸長を阻害されない方向に伸びていた。また、鳥類の嘴の切片観察の結果、角質に複数の層が認められ、それらの起点が骨の形態と関連付けられた。さらに嘴を持つとされる化石標本の吻部に微細な条線が見られ、その分布を基に角竜類恐竜標本において従来の復元より広い角質の分布を推定した。
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脊椎動物における嘴の機能と進化
2015年4月 - 2017年3月
科学研究費補助金 基盤研究(C)
担当区分:研究分担者
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四肢動物の肩帯の運動機能適応の進化
2013年4月 - 現在
科学研究費補助金 若手研究(B)
担当区分:研究代表者
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鳥類とモグラ類の胸郭の運動適応と進化
2012年9月 - 現在
科学研究費補助金
担当区分:研究代表者
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四肢動物の前肢骨格形態と運動機能との関係、及び絶滅動物の前肢姿勢復元
2010年4月 - 2012年3月
科学研究費補助金
担当区分:研究代表者
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鳥盤類恐竜の前肢及び胸郭に見られる二次的四足歩行の進化と適応
2006年4月 - 2008年3月
科学研究費補助金
担当区分:研究代表者