科研費 - 角皆 潤
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琵琶湖深部湖底における湧水・メタンの形成機構と同湧水が環境に与える影響の評価
研究課題/研究課題番号:23K03494 2023年4月 - 2026年3月
日本学術振興会 科学研究費助成事業 基盤研究(C)
小泉 尚嗣, 山野 誠, 角皆 潤, 笠谷 貴史, 後藤 慎平, 岸 和央, 細井 祥子, 丸尾 雅啓, 山野 誠, 角皆 潤, 笠谷 貴史, 後藤 慎平, 岸 和央, 田辺祥子, 丸尾 雅啓
担当区分:研究分担者 資金種別:競争的資金
配分額:4810000円 ( 直接経費:3700000円 、 間接経費:1110000円 )
定期観測として、2か月に1回程度の頻度で、ガス(メタン)を伴う深部湖底湧水の湧出孔周辺で採水・採ガス・採泥・生物採取等を行う。ガスによる音響異常の分布を水中音波探査で把握する。水の酸素・水素同位体比や水質、メタンの濃度や炭素・水素同位体比を測定し、音波探査の結果を考慮して深部湖底湧水とメタンの起源・形成機構を推定する。また、水・泥の中や生物腸内の細菌・古細菌のメタゲノム解析も行う。他方、同湧水の湧出孔付近で湖底温度を連続観測して湧出量の時間変化を把握し、定期観測における水質の変化等と比較する。以上によって、深部湖底湧水の、琵琶湖環境への物理的・化学的・生物学的影響を評価する。
・高島市沖で(深部湖底湧水に伴うと考えられる)ガス音響異常が広範囲に分布することを確認した。分布の仕方に特に規則性は見られないが、現時点では、湖底深度が60mを越えるところに分布している。同湧水は、湖底付近の水質に大きな影響は与えないものの、琵琶湖最深部付近の湧水場所(Y1)の湖底では,溶存酸素濃度を若干低くする影響を与えている可能性がある。Y1直上の湖面で採集したガスの主成分はメタンであり、湖底堆積物中に広く見られているメタンと同位体組成の特徴がほぼ一致した。
・湧水活動に伴う高熱流量異常が継続していることを確認した。2022年10月~2023年3月に得た約170日間のデータから、湖底水温変動の伝播は伝導のみによるとして堆積物の熱拡散率を求めると、異常に高い値となった。この結果は、堆積物中を流体が下向きに動いていることを示唆している。湧水地点で単純に湖底から上向きに水がでているだけでなく下向きの水流もあり得ることを示していて興味深い。
・2023年7月にH5近傍のT1の琵琶湖湖底および表層にて採水された水からDNAを抽出し、細菌・古細菌のメタゲノム解析を行った結果、両層ともにメタン生成菌の存在は見られず、2022年の結果とは異なった。
・2023年の調査では、存在を確認できなかったが、2022年の調査では深部湖底にメタン生成菌が確認されたので深部湖底堆積物中にメタン生成菌はいるものとして、琵琶湖周囲の陸地に降った降水が地下水となって沈み込み、琵琶湖深部湖底の基盤を通して湧出しているというモデルを考えた。この場合、湧出する際に熱も供給するので、湖底堆積物中のメタン生成菌が活性化されてメタンが生成されていると考えれば、湧水とともにメタンが出ていることや、湧水場所の直上の湖面で採集されたメタンの同位体組成の特徴が、湖底堆積物中のメタンのそれと一致することが説明できる。
特に大きなトラブルがなかった。
調査に用いていた滋賀県立大学の実習調査船:はっさかⅡの係留港の出口付近に土砂が堆積したため、2024年8月に予定されている浚渫が実施されるまで、はっさかⅡの出港が困難である。したがって、2024年8月までは、水中音波探査や湧水場所付近の水質調査やガス・湖水の採集ができない見込みである。2024年9月以降にできるだけ調査回数を増やして2024年度前半の調査の少なさをカバーして計画をすすめる予定である。 -
極微量安定同位体を用いた水柱酸素消費速度実測:貧酸素水形成におけるその重要性実証
研究課題/研究課題番号:22H00561 2022年4月 - 2026年3月
日本学術振興会 科学研究費助成事業 基盤研究(A) 基盤研究(A)
角皆 潤, 山口 保彦, 中川 書子, 山口 保彦, 中川 書子
担当区分:研究代表者 資金種別:競争的資金
配分額:43030000円 ( 直接経費:33100000円 、 間接経費:9930000円 )
水環境中の酸素消費速度を水柱と堆積物のそれぞれに分けて実測することで、水環境中における酸素消費過程、特に沈降する有機物粒子が引き起こす水柱中の酸素消費過程の大きさの実態や、その大小を決めるメカニズムを解明し、貧酸素化の今後の推移を予測する。具体的には、琵琶湖や伊勢湾において各層採水と採泥を中心とした観測を実施する。そして、極微量安定同位体をトレーサーとする新手法を用いて、各試料の酸素消費速度を実測する。同時に各水環境に懸濁・溶存する有機物の量や特性を解明する。結果をもとに、各水環境において、水柱(沈降粒子)と堆積物のどちらが主要な酸素消費者となっているのか明らかにする。
本研究は、滋賀県の琵琶湖北湖を主要研究フィールドとして、これに沿岸や外洋の海洋域も併せた水環境において、世界初となる水柱中の酸素消費速度(呼吸速度)観測を実現することを目的としている。2023年度は琵琶湖で計2回の観測を予定通り実施した。加えて、2023年度は西部北太平洋亜寒帯域 (測点K2) や亜熱帯域 (測点S1) と言った外洋域でも同様の観測を実施した。さらに本年度は全試料について粒径別に分画して水柱酸素消費速度を測定した。琵琶湖における水柱酸素消費速度の鉛直分布は前年度と同様に、水深0-20 mの表層水と比べると、水深60 m前後の中層水は低く、水深80-90 mの湖底直上で再度高くことが明らかになった。一方有光下と無光下の比較では、本年度は有意な差が見られなかった。粒径別に分画した結果では、有機態炭素の80%以上を占める溶存態(粒径0.7マイクロメートル未満) の有機態炭素は、酸素消費にはほとんど貢献しておらず、沈降速度が大きく、植物プランクトンの大部分が含まれるL-POM (1.2-150マイクロメートル) が酸素消費の主要担体となっていると考えることで、整合的に説明出来ることが確認された。
琵琶湖での観測を予定通り実施した他、外洋の観測を1年前倒しして西部北太平洋海域をフィールドにして2023年度に実施した。さらに2022年度から前倒しで実施した粒径別の観測をルーチン化して本年度も継続して実施しており、整合的な結果を得ている。
琵琶湖の観測を予定通り継続する他、西部北太平洋海域をフィールドにして1年前倒しして実施した外洋の観測について結果をまとめる。また2023年度より粒子濃縮と組み合わせた酸素消費速度定量に新しく挑戦しており、基礎実験を継続する。 -
研究課題/研究課題番号:22K03783 2022年4月 - 2025年3月
日本学術振興会 科学研究費助成事業 基盤研究(C)
風早 竜之介, 篠原 宏志, 森田 雅明, 角皆 潤, 篠原 宏志, 森田 雅明, 角皆 潤
担当区分:研究分担者 資金種別:競争的資金
配分額:4160000円 ( 直接経費:3200000円 、 間接経費:960000円 )
桜島の爆発的噴火の発生前後での火山ガス放出率の変動および噴火時の放出量の定量に基づき、爆発的噴火の発生過程を明らかにすることを目的とする。地上観測データに加え,人工衛星観測データ解析により噴火前後でのガス放出率変動および噴火時放出量を推定する。セスナ機を用いた広域でのSO2放出率分布観測および噴煙組成観測を実施し、噴煙移流拡散や気象要素の影響の評価を行い、地上・衛星観測結果の誤差評価・補正を行い、火山ガス放出率変動を定量化する。
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極微量酸素同位体をトレーサーに用いた水試料中の呼吸速度定量法開発
研究課題/研究課題番号:19K22908 2019年6月 - 2021年3月
日本学術振興会 科学研究費助成事業 挑戦的研究(萌芽) 挑戦的研究(萌芽)
角皆 潤
担当区分:研究代表者 資金種別:競争的資金
配分額:6240000円 ( 直接経費:4800000円 、 間接経費:1440000円 )
酸素の微量安定同位体であるO-17を濃縮した酸素分子を密閉容器中の水試料に添加し、一定の培養期間中に進行する呼吸 (酸素消費) 反応で変動する水の同位体比を高精度に定量化することで、呼吸速度を高感度、高確度かつ簡便に定量出来る新手法を開発した。この新手法で定量化される呼吸速度の精度・確度を検証するとともに、これを用いて、海水および湖沼水試料の呼吸速度を実測した。すると一次生産が活発な表層で速く、新鮮な有機物の少ない深層水中で遅くなった。また、光を当てて培養すると、遮光して培養した場合と比べて呼吸速度が上昇することが明らかになった。
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硝酸の三酸素同位体異常を利用した非培養型の窒素循環速度定量法確立
研究課題/研究課題番号:17H00780 2017年4月 - 2021年3月
独立行政法人日本学術振興会 科学研究費助成事業 基盤研究(A)
角皆 潤, 須藤 健悟, 中川 書子, 伊藤 昌稚
担当区分:研究代表者 資金種別:競争的資金
配分額:42380000円 ( 直接経費:32600000円 、 間接経費:9780000円 )
琵琶湖湖水中の硝酸の三酸素同位体異常を利用して湖内の硝化速度や同化速度を求め、従来法である培養法で得られる各深度の同化速度と比較した。その結果、三酸素同位体異常から求める同化速度は、培養法の同化速度と比べて夏季に過大、冬季に過小評価となることが明らかになった。また、年平均で20パーセント程度小さく見積もられることも明らかになった。培養法は観測時の瞬間的な速度を反映するものであり、観測が主に夏季や静穏時に行われることを反映したものと考えられる。つまり、硝酸の三酸素同位体異常を利用した方が、より簡便で、それでいてより信頼度の高い湖内の平均的な硝化速度や同化速度が求められる。
硝酸は、植物プランクトンが行う光合成に必須の栄養塩として代表的なもので、各湖沼に対する硝酸の供給速度は、水質や基礎生産量、生態系構造などを大きく左右する。一般の湖沼水中の硝酸の大部分は、湖内に生息する微生物から、硝化と呼ばれる反応を通じて供給される。硝化は季節や深度に応じて大きく変化するため、実測はきわめて難しかったが、研究はこれを容易にした。今後は、琵琶湖をはじめとした多くの湖沼や海域で、総硝化速度を定期的に観測し、その長期変化をモニタリングすることが可能になるため、世界各地の湖沼や沿岸海域で進行しつつある富栄養化や、生態系構造変化の原因究明に貢献することが期待される。 -
火山噴火タイプの新指標:噴煙中の水蒸気の同位体組成
研究課題/研究課題番号:16K13914 2016年4月 - 2018年3月
独立行政法人日本学術振興会 科学研究費補助金 挑戦的研究(萌芽)
角皆 潤
担当区分:研究代表者 資金種別:競争的資金
配分額:3510000円 ( 直接経費:2700000円 、 間接経費:810000円 )
火山ガス中の水蒸気の起源には、マグマ水の場合と、山体内部の地下水の場合(天水)があり、両者間で水素および酸素の安定同位体比が大きく異なることが知られている。噴火に伴って大気中に放出され、風下に流下してくる噴煙中の水蒸気の同位体比を定量化することができれば、そこから水蒸気の起源(マグマ水か、天水か)が判別できるし、山体内の流体挙動の理解も進展する。そこで本研究では、容器中に採取して持ち帰った噴煙試料中の水蒸気の同位体比を定量化する新システムを開発した。また実際の火山の噴気孔で、噴煙中の水蒸気の同位体比分析から噴気孔における水蒸気の同位体比が推定出来ることを確認した。
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海洋表面への落雷に伴う物質循環の検討
研究課題/研究課題番号:15K12181 2015年4月 - 2017年3月
日本学術振興会 科学研究費助成事業 挑戦的萌芽研究 挑戦的萌芽研究
亀山 宗彦, 谷本 浩志, 小川 浩史, 角皆 潤, 山下 洋平, 佐藤 孝紀
本研究では海表面への落雷に伴う物質循環が起きる可能性を検証した。実際の海水、河川水、純水に純空気及びアルゴン雰囲気下で放電を行うことで実際の落雷を模擬した。本研究では特に窒素酸化物の生成がみられ、放電に伴い硝酸・亜硝酸塩及び亜酸化窒素が生成されていることがわかった。硝酸・亜硝酸は気相中での生成が知られており、本研究でも主な生成は気相中で起こっていたが、液相中でもその生成が起きていることがわかった。また、溶存態・粒子態有機物の生成・分解も確認された。
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対流圏オゾンの三酸素同位体組成測定
2014年4月 - 2017年3月
科学研究費補助金 基盤研究(A)
担当区分:研究代表者
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対流圏オゾンの三酸素同位体組成測定
研究課題/研究課題番号:26241006 2014年4月 - 2017年3月
日本学術振興会 科学研究費助成事業 基盤研究(A)
角皆 潤, 谷本 浩志, 佐藤 啓市
資金種別:競争的資金
対流圏オゾンの起源や挙動を解明するため、オゾンの三酸素同位体組成定量システムを開発した。これはオゾンと亜硝酸を選択的に反応させて硝酸化し、その三酸素同位体組成を測定した上で、亜硝酸由来の酸素の寄与を補正して求めるものである。予定通り分析法を確立し、平成28年10月から翌年2月まで、新潟と名古屋の2地点で連続観測を実施した。名古屋で観測されたオゾンの三酸素同位体組成(両端平均)は、新潟で観測されたものより、有意に高かった。名古屋のオゾンは、主に対流圏のバックグランドレベルのオゾンが占めていたのに対して、新潟では対流圏内、特に地表付近で生成したオゾンの寄与が大きいことを反映している可能性がある。
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無人航空機で拓く新しい火山観測:噴煙の水素同位体比を利用した遠隔噴気温度測定
2014年4月 - 2016年3月
科学研究費補助金
担当区分:研究代表者
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最新の安定同位体分析技術を応用した海洋物質循環速度定量法の革新
2013年4月 - 2015年3月
科学研究費補助金 新学術領域研究(研究領域提案型)
角皆 潤
担当区分:研究代表者
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三酸素同位体組成を指標に用いた陸水環境中の硝酸の総同化速度定量法開発
2012年4月 - 2014年3月
科学研究費補助金
担当区分:研究代表者
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硝酸の三酸素同位体組成を指標に解析する東アジア域の大気光化学過程の現状と変化
2011年4月 - 2014年3月
科学研究費補助金 基盤研究(A)
担当区分:研究代表者
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海水中硫化ジメチルおよび関連有機化合物の高時間分解能計測手法の確立
2011年4月 - 2014年3月
科学研究費補助金 基盤研究(B)
谷本浩志
担当区分:研究分担者
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硝酸の同位体組成を指標に用いた植物の窒素同化過程解析
2010年4月 - 2012年3月
科学研究費補助金
担当区分:研究代表者
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硝酸の三酸素同位体組成を指標に用いた大気から沈着した窒素の環境動態解析
2008年4月 - 2011年3月
科学研究費補助金 基盤研究(B)
担当区分:研究代表者
本研究では、東アジア域では初となる一般水環境試料中に含まれるNO3-のΔ17O組成定量を実現し、そのNO3-中に含まれる大気由来のNO3-(NO3-atm)の混合比のトレーサーとしてのΔ17O組成の信頼性を検証するとともに、その有用性を実証することを目的としている。特に、全NO3-中に占めるNO3-atm 混合比は、定常状態下では、総NO3-供給速度に対する大気からのNO3-atm沈着速度の相対比に等しいので、これを活用する。まず北海道の利尻島において、長期に渡って湿性沈着試料を集めてNO3-atmのΔ17O組成の連続観測を成功させ、その年平均値(Δ17Oatm)を見積もった。次に同島の森林域から流出する地下水試料中のNO3-について、Δ17O値定量を実現し、Δ17Oatm との比較から、大気から沈着した窒素が森林生態系によって浄化される過程を定量的に評価した。さらに摩周湖の湖水中に溶存するNO3-のΔ17O組成の分布を定量し、大気から貧栄養の水環境下に沈着したNO3-atmの挙動を定量化した。
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海洋表層における生物起源微量気体の生成・分解過程とその気候変化への応答
2006年4月 - 2011年3月
科学研究費補助金 特定領域研究
担当区分:研究代表者
本研究では海水中の複数の揮発性有機化合物(VOC)を連続的に測定するために平衡器インレット-陽子移動反応質量分析計(EI-PTR-MS)を開発した。対象とした6種のVOC(硫化ジメチル(DMS)、イソプレン、プロピレン、アセトン、アセトアルデヒド、メタノール)について、室内実験で平衡到達度や応答時間の評価を行った。海水試料とキャリアガスの間の平衡はVOCの溶解度に依存し、プロピレンとイソプレンは平衡に達しなかったが、他のVOCは平衡器内で十分に平衡に達していた。我々は、西部北太平洋における研究航海においてEI-PTR-MSを初めて運用し、サンプリング手法による汚染の影響が無い事を確認した。EI-PTR-MSで得られたDMSとイソプレンの結果をGC法で得られた結果と比較し、概して良く一致することが分かった。EI-PTR-MSは小さい時空間スケールにおける海水中のVOCの変動を捉えることができており、複数のVOC種を同時かつ連続的に測定する能力を有していることが実証された。
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サハリンおよび南プリモーリエ州周辺に湧出するメタンおよび軽炭化水素類の起源
2005年4月 - 2007年3月
科学研究費補助金 二国間交流事業
担当区分:研究代表者