科研費 - 宮地 朝子
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日本語の焦点や評価を表す助詞の体言性と文法変化に関する多角的研究
研究課題/研究課題番号:25K00464 2025年4月 - 2030年3月
科学研究費助成事業 基盤研究(B)
宮地 朝子, 窪田 悠介, 井戸 美里
担当区分:研究代表者 資金種別:競争的資金
配分額:11440000円 ( 直接経費:8800000円 、 間接経費:2640000円 )
本研究は、日本語の限定や評価的意味といった何らかの焦点的解釈を示す助詞類の機能的対立や変化・分化について、形態・統語・意味的な構造とその制約、相互関係を鍵として考察するものである。「体言性」「分布の自由性」という形態統語的特質に着目し、ノ・ハの後接可否を客観的指標として共時・通時・理論の多角的分析を行うことで、日本語の機能語の形態・統語・意味構造の相互関係がいかなるものかを解明する。
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有標的な名詞述語文の諸類型―意味論・言語対照・通時言語学の観点から―
研究課題/研究課題番号:22K00505 2022年4月 - 2027年3月
科学研究費助成事業 基盤研究(C)
大島 義和, 宮地 朝子, 佐野 真一郎
担当区分:研究分担者 資金種別:競争的資金
名詞述語文は,一般に「aとbは同一である」または「aはAに包摂される」という関係をあらわす(例:「平塚らいてうは {『青鞜』の創刊者 / 作家} だ」)が,その一方で,「ユミはウナギだ (= ユミはウナギを注文した,ユミはウナギの専門家だ,等)」「ヒロシはスーツだった (= ヒロシはスーツを着ていた)」「ナオミは東京に行く予定だ (= ナオミには東京に行く予定がある)」といった,非典型的な意味を持つ有標的な名詞述語文も存在する。本研究では,このような有標的名詞述語文の分類と,形式意味論,歴史言語学,対照言語学,語彙論といった諸観点からの分析に取り組む。
本研究では、以下の3つの課題がたてられている。(1) 日本語および英語に見られる有標的名詞述語構文を意味論・文法論的観点から仔細に検討し、既存研究における分類・分析を発展させる。(2) 種々の有標的名詞述語構文に述語名詞として参与しうる名詞群を、用例収集や容認度調査を通じて同定し、現代日本語の語彙体系のより精密な記述に貢献する。(3) 有標的名詞述語構文の使用様態の歴史的変遷を、構文レベル・語彙レベルで調査し、文法化の観点からの知見を得る。
課題 (1) に関して、2年目となる2023年度には、初年度に構築した英語および日本語における「属性指定型名詞述語構文」(『その車はめずらしい色だった』の類)「関係記述型名詞述語構文」(いわゆる「人魚構文」の一種);『山田さんは明日出発する予定だ』など)「オープンエンド関係型名詞述語構文」(いわゆる「ウナギ文」;『僕はウナギだ (僕が注文したのはウナギだ)』など)に関する意味的・文法論的特徴の記述を発展させた。日英語において「属性指定型名詞述語構文」に参与しうる名詞の意味クラスの分類や「関係記述型名詞述語構文」の下位種の性質の同定、「オープンエンド関係型名詞述語構文」が自然に使用できる語用論的条件について知見を深め、形式意味論的な分析を精緻化することができた。成果をまとめた論文は学術雑誌の査読を受け、一定の評価を受けた。査読結果をふまえて再投稿を行い、再査読を受けている。また、成果を国際ワークショップで発表することができた。
課題 (3) については、大きな進展はなかったものの、非名詞的な表現から名詞的な表現への文法化をあつかったケーススタディとして「ならで(は)」を取り上げた研究の成果が論文(書籍内所収論文)として刊行された。
課題 (2) については進展が乏しく、今後分担者間で連携しながら、データ収集の方法・方針を確立させる必要がある。
理論的な観点から研究課題に関する知見を深め、すでに1編の学術論文としてまとめている。この論文において提案された定式化・分析を核として、今後、体系的な語彙論的調査、歴史言語学および類型論的な発展につなげていくことができると期待できる。
すでにある程度確立した理論的分析をもとに、以下の方向で研究を発展させることを予定している。(1) コーパスデータ等を利用して、種々の有標的名詞述語構文に参与しうる名詞の同定・分類を行う。(2) いくつかの語彙項目に着目して、もともと無標的な用法しかなかった名詞が「属性指定型名詞述語構文」「関係記述型名詞述語構文」の主名詞として用いられるようになる過程についての知見を深める。(3) 朝鮮韓国語、中国語、英語以外のヨーロッパ諸語における有標的名詞述語構文の使用様態について調査し、類型論的な観点からの考察を行う。 -
ジャンル・テキストの中の文法:テキストとその要素としての構文の相互作用
研究課題/研究課題番号:21K18359 2021年7月 - 2024年3月
科学研究費助成事業 挑戦的研究(萌芽)
志波 彩子, 矢島 正浩, 宮地 朝子, 井本 亮, 前田 直子, 勝川 裕子, 大島 義和, 永澤 済, 田村 加代子, 齋藤 文俊
担当区分:研究分担者 資金種別:競争的資金
コーパスから収集したデータをもとに,収集した例文を構文タイプごとに分類し,前後にどのような構文が現れるか,またジャンルごとにどのような特徴的な構文間の結びつきがあるのかを考察する。こうした構文間の関係は必ずしも隣接する前後関係とは限らず,テキスト内の離れた位置に存在する構文同士が連関し合っている,ということも考えられる。また,歴史的観点からは,特に書き言葉ジャンルにおける構文とテキストとの関係を見ていく。これまで分析が手薄であった古代や中世,近世,近代における変体漢文や漢文訓読体を含めた書き言葉テキストと構文との関係を探っていく。
本プロジェクトは,未だ十分な議論が立ち上がっていない「テキスト・ジャンル」と「文法」との関係を「構文」という単位を切り口にして研究を進めてきた。現代日本語学,日本語の歴史的研究,日本語教育,中国語学,中国語教育といった様々な立場から,テキストと文法との関係を考察してきた。中国語の古典には,非常にパターン化した,テキスト構成の定型がいくつも存在するが,現代日本語のテキスト(文章)では,そうしたパターン化した構成は意識されにくい。しかし実際には,ある種の構文の連鎖がパターン化して,テキスト全体の意味(場面描写,状況説明,心理描写,背景説明など)に貢献していることが明らかになった。
これまでの文法記述は,テキストやジャンルから離れて行われてきた。しかし,文法形式の1つ1つの用法はテキストやそのジャンルにかなり依存している可能性があることを,本研究は示した。文法(構文)はテキストやジャンルの意味・機能に影響を与え,同時にテキスト・ジャンルの性質が文法(構文)に影響を与えるというダイナミックな相互関係がある。これは,言語の歴史的な発展が,テキストやジャンルと切り離して説明できないことも意味している。 -
研究課題/研究課題番号:20K00628 2020年4月 - 2025年3月
科学研究費助成事業 基盤研究(C)
宮地 朝子
担当区分:研究代表者 資金種別:競争的資金
配分額:4030000円 ( 直接経費:3100000円 、 間接経費:930000円 )
日本語史には文法変化の事例が豊富である。本研究では、機能語の変化を支える日本語の基盤的特質として、「体言性」に着目する。副助詞類の歴史的出自は主に名詞と考えられてきたが、出自不明(サエ・シカ)や、機能語の複合構成体から一語化した類(ナンテ・ナンカ・ナラデハ等)も多い。名詞出自という観点を離れてこれらの史的変化を精密に記述し、日本語において「体言性」が機能語の確立や変化に与える影響の内実を描き出す。
本研究は、不変化・無活用という形態的特質「体言性」が日本語の文法変化にいかに関与しているかについて考察するものである。「体言」を名詞とは独立の範疇的区分として位置づけ直し「体言性」を文法変化の一要因とみる。とりわけ副助詞を経由した文法変化に着目することで、副助詞類の文法史研究の精密化と日本語の文法変化を捉える観点の整理を目的とする。
2023年度は計画4年目である。前年度に引きつづき、①「ならでは」の動態に関する考察を継続し、②副詞・副助詞類および「ならでは」の類例の用例調査を行った。また継続して、③ノ連体用法の形態統語的な位置づけと、形式ごとの可否・広狭に関与する要因の考察に取り組んでいる。
①「ならでは」に関しては、論文集収載論文1件が公刊された。また機能変化の画期となる近代期の様相を精査して研究報告1件を行った。次世代デジタルライブラリ(国立国会図書館)の全文検索機能を活用した調査の結果、近代期の口語体書き言葉の整備の中で、発話や句の引用とそれに対する注釈が行われる媒体で「[引用句]ならではの感あり」という文型が生じ、これが端緒となってノ連体用法が確立したこと、「感」の類が他の名詞に拡張するなかで否定極性の消失が決定づけられ、接尾辞への機能変化を促したことがわかった。②については、やや作業が停滞し試行錯誤に時間を要している。観察対象を変えながら注目点を見出していきたい。
③について、今年度は、名詞以外にノ連体用法を持つ語類の文法学説における位置づけの再検討に着手した。「体言」「副用語」「副詞」等の分類は、ニ・ト・Φ、ノといった機能語およびその後接形を品詞論的にどう位置づけるかによって異なる。「体言性」に関与する形態・統語・意味的条件が史的に変化している可能性も考慮に入れ、「体言性」と文法変化の関係性について引きつづき考察していく。
「ならでは」以外の形式、副詞類や第3形容詞語幹の類の調査に関しては、諸々不調の時期もあり、やや作業が停滞し試行錯誤に時間を要している。用例収集の作業と、ノ連体用法の可否や広狭といった動態を支える要件についての多角的な考察においても、論証に適した対象語の選定、指標の検討と試行錯誤に時間を要している。観察対象を変えながら注目点を見出していきたい。
考察の方向性において、副詞性の句、副助詞としてのあり方と「体言性」を同時に保持する条件についてはノ連体用法を支える形態・統語・意味的条件が鍵となると考える。この見方は適確なものと判断している。ひきつづき計画に即して、現在の作業を継続し、ノ連体用法の有り様に着目した追究を進めて行く。
個々の言語形式の共時的・通時的・地理的動態について、記述の精査を旨とし、機能変化の制約と動態のパターンを見いだす考察を深める。
2023年度の取り組みからは、学説史の見直しにおいて、連体詞とされる語類に着目している。観点の切り替えに示唆が得られる見込みをもっている。
ノ連体用法に関しては、併せて、理論言語学、特に統語論、意味論の先端的知見も積極的に参照援用する。内容語化と接辞化といった一見矛盾する方向の文法変化を同時に示す類例については、類型論の知見も参照したい。
研究期間も残り1年となった。口頭発表、論文執筆を含め、成果の公開に努めるとともに、次の研究課題への発展と接続を視野に入れて本研究課題の達成と残された課題を整理してまとめたい。 -
研究課題/研究課題番号:16H03411 2016年4月 - 2021年3月
科学研究費助成事業 基盤研究(B)
Narrog Heiko, 楊 凱栄, 宮地 朝子, 大堀 壽夫, 上原 聡, 柴崎 礼士郎, LI Jialiang, ジスク マシュー・ヨセフ, 下地 理則, 小野寺 典子, 青木 博史, 真田 治子, 北崎 勇帆, 小野 尚之
担当区分:研究分担者 資金種別:競争的資金
まず、5年の研究期間の間、東北大学で計4回「日本語と近隣言語における文法化ワークショップ」を開き、海外や研究分担者でない者を含め、多くの発表者・参加者で本課題に関する研究会を開き、日本国内外で本課題に対する意識を高め、研究を誘発することができた。同様に、最初の4年間、ドイツ・ケルン大学でB.ハイネ教授と共同研究を進めることができた。5年目からは対面の集合を前提とする活動ができなくなったが、発表のほかに代表者と分担者は本課題について多くの著書と学術論文を公刊することができた。なお、代表者と分担者の本課題に関する研究活動を最も直接に表す論文集の刊行は今準備中である。
本研究は、一般言語学の中で文法化という重要な言語現象及び理論的枠組みの最先端に立って、それを東洋の言語学、とりわけ日本言語学の立場から推進し、言語学一般、そして日本の言語学においても重要な意義を持った。当該分野においては、東洋、とりわけ日本語からのアプローチに特色があり、研究代表者が最先端でその分野に携わり養ってきたユニークな観点によるものであり、また、研究課題の遂行と具体的な研究テーマの解明に最も適した国内外の第一線の研究者とチームで取り組むものであった。さらに、定期的な研究会などを通して当分野で日本の言語学を推進・振興させることにもつながり、日本言語学に大きく貢献することができた。 -
研究課題/研究課題番号:15K02563 2015年4月 - 2021年3月
科学研究費助成事業 基盤研究(C)
宮地 朝子
担当区分:研究代表者 資金種別:競争的資金
配分額:4290000円 ( 直接経費:3300000円 、 間接経費:990000円 )
この研究では、日本語の「名詞性」について、副助詞が示す名詞的な振る舞いと、その歴史的変化に着目して考察した。その結果、次のことが明らかになった。(1)副助詞類は、その出自が名詞か否かに関わらず、通時的に幅広く名詞としての分布を示す。(2)副助詞の示す名詞性は、副助詞が本質的に持つ意味的な特質(量性)や、形態的な特質(無活用)に矛盾しない。(3)名詞の諸性質の中でも、無活用という形態論的特質が、副助詞の名詞性を支える基盤である。(4)この形態論的特質は名詞の文法変化、さらには副助詞のような機能語の文法変化も支える特質であると考えられる。
まず、副助詞の史的様相の観察から名詞性を追究するという独自の問題設定に学術的意義が認められる。名詞という一般性の高い枠組みを通じ、副助詞研究における離散的な関心を統合するのみならず、名詞研究に新たな視点を提供し、その進捗を促すことができる。名詞の文法変化という観点は、日本語文法史における名詞の機能語への体系的参与という一大課題の解明にも示唆を与えうる。近年、内外の言語学研究において言語の動態を追究する文法化研究が大きな潮流をなしている。日本語で豊富に観察される名詞の文法化について、名詞本来の性質と日本語の動態の関わりをあぶり出し、言語研究に有意な事例を提供する点で大きな意義を持つ。 -
日本語における体言性と機能変化の相互関係
2020年4月 - 現在
科学研究費補助金 基盤研究(C)
宮地 朝子
担当区分:研究代表者
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日本語副助詞の史的変化に見る名詞性の研究
2015年4月 - 現在
科学研究費補助金 基盤研究(C)
宮地 朝子
担当区分:研究代表者
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名詞の形式化・文法化にみる日本語の構文構造史
2010年4月 - 2015年3月
科学研究費補助金 基盤研究(C)
宮地 朝子
担当区分:研究代表者
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言語の普遍性と言語間変異の理論的研究:「日本語のとりたて」現象から
2010年4月 - 2012年3月
科学研究費補助金 基盤研究(C)
片岡喜代子
担当区分:研究分担者
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形式名詞の文法化に関わる日本語の構文構造史的研究
2007年4月 - 2010年3月
科学研究費補助金 若手研究(B)
宮地 朝子
担当区分:研究代表者
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『日本語助詞シカに関わる構文構造史的研究』(成果公開)
2006年4月 - 2007年3月
科学研究費補助金 研究成果公開促進費・学術図書
宮地朝子
担当区分:研究代表者
研究成果公開『日本語助詞シカに関わる構文構造史的研究』 ひつじ書房より2007年2月刊行
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比較・程度・限定を表す日本語助詞の其他否定用法獲得に関する研究
2004年4月 - 2007年3月
科学研究費補助金 若手研究(B)
宮地 朝子
担当区分:研究代表者
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日本語の限定に関わる助詞の成立と歴史的変化・地理的変容 に基づく文法史的研究
2002年4月 - 2004年3月
科学研究費補助金 若手研究(B)
宮地朝子
担当区分:研究代表者