科研費 - 藤田 耕史
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氷河流動による長期物質循環と雪氷微生物の氷河暗色化過程の解明
研究課題/研究課題番号:24H00260 2024年4月 - 2029年3月
科学研究費助成事業 基盤研究(A)
竹内 望, 杉山 慎, 島田 利元, 的場 澄人, 永塚 尚子, 大沼 友貴彦, 植竹 淳, 藤田 耕史, 瀬川 高弘
担当区分:研究分担者
近年雪氷上で繁殖する雪氷微生物が世界各地の氷河で繁殖し,氷河表面を暗色化している.氷河の暗色化は,日射の吸収を増やすことで雪氷の融解を加速することから,氷河縮小の大きな要因となっている.しかしながら,雪氷微生物の繁殖量が増加の要因については,まだはっきりしたことはわかっていない. 本研究は,近年の雪氷生物の繁殖増加に,氷河流動という数百から千年スケールの長期的物質循環による氷河内部からのダストや栄養塩の供給が関与していることを確かめるため,雪氷学,地球化学,微生物学的方法で氷河を調査し,独自に開発する微生物・氷河結合モデルによって,微生物繁殖と氷河融解の将来予測を行う研究である.
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地上観測・リモートセンシング・雲解像モデルを駆使したヒマラヤ降水系研究の新展開
研究課題/研究課題番号:23KK0064 2023年9月 - 2028年3月
日本学術振興会 科学研究費助成事業 国際共同研究加速基金(海外連携研究)
藤波 初木, 橋本 明弘, 広瀬 正史, 高橋 暢宏, 藤田 耕史, 佐藤 洋太
担当区分:研究分担者
山岳氷河と大河川の源流域を有するヒマラヤ山岳域の水循環は,流域に暮らす約8億人の水資源を維持するとともに地球規模の水循環にも大きな影響を及ぼす.しかし,通常の地上降水レーダによる観測が困難なヒマラヤ高標高域では,どのような降水システムで雨や雪がもたらされているのかが未だにわかっていない.本研究は,夏季ネパールヒマラヤの高標高域に展開する地上気象観測網,可搬型地上降水レーダおよび衛星搭載降水レーダを用いて,高標高域の降水システムの実態を明らかにする.また,現地観測と超高解像度(200m格子)雲解像モデルを用いて,ヒマラヤ高標高域の氷河流域の大気循環と降水システムの形成過程を明らかにする.
山岳氷河と大河川の源流域を有するヒマラヤ山岳域の水循環は,流域に暮らす約8億人の水資源を維持するとともに地球規模の水循環にも大きな影響を及ぼす.しかし,通常の地上降水レーダによる観測が困難なヒマラヤ高標高域では,どのような降水システムで雨や雪がもたらされているのかが未だにわかっていない.本研究は,夏季ネパールヒマラヤ東部のロールワリン地域の高標高域に展開する地上気象観測網,可搬型地上降水レーダ(マイクロレインレーダ)および衛星搭載降水レーダを用いて,高標高域の降水システムの実態を明らかにする.また,現地観測と超高解像度(200m格子)雲解像モデルを用いて,ヒマラヤ高標高域の氷河流域の大気循環と降水システムの形成過程を明らかにすることを目的としている.
本年度は10月にネパールヒマラヤのロールワリン地域に展開している雨量計網のデータ取得とメンテナンスを行った. また, ネパールの研究協力者とネパールクンブ地域に既設のマイクロレインレーダの稼働状況とデータ取得状況及びロールワリン地域に導入予定のマイクロレインレーダの設置場所についての情報交換を行った.高解像度雲解像モデルを用いたロールワリン地域周辺の大気循環場の数値実験と解析を行った.12月には分担者および研究協力者を交えたキックオフワークショップを名古屋大学で開催し, これまでの研究のレビューや今後5年間で実施予定の研究内容および進捗状況などを共有した. 3月にはネパールで開催された国際ワークショップで分担者の数名が本研究課題に関する研究発表を行った.
雨量計のデータ取得およびメンテナンス, マイクロレインレーダの設置に関する情報収集, データ解析および数値モデル実験は順調に行われている. また,キックオフワークショップを実施されるなど概ね計画通りに実施することができた.
ポストモンスーン期にロールワリン地域の雨量計のデータ取得およびメンテナンスを定期的に実施する.2026年の暖候期にロールワリン地域のBeding(標高約3700 m)でマイクロレインレーダによる連続観測を実施予定とする.そのために,国内とネパールの研究者でマイクロレインレーダの設置と連続運用に関する技術的な検討を行い,2025年度までに日本国内で観測システムを構築する.衛星搭載降水レーダ(GPM-DPR)と雨量計データとのマッチング解析を実施する.数値モデル実験は現地気象データと比較しつつ解析し,初期結果をまとめる.これらの研究の進捗状況と結果は、定期的な会合を通して相互に確認しながら遂行する.また,AOGS,AGUおよびGEWEX/AsiAPEX等の国際会議での積極的な発表を通して,本研究課題をPRするとともに,海外の研究者と情報交換を行いながら実施する. -
アジア高山域における氷河氷体温度の地理的分布把握と次世代氷河変動モデルの開発
研究課題/研究課題番号:22H00033 2022年4月 - 2027年3月
日本学術振興会 科学研究費助成事業 基盤研究(A)
藤田 耕史, 庭野 匡思, 齋藤 冬樹
担当区分:研究代表者 資金種別:競争的資金
配分額:42120000円 ( 直接経費:32400000円 、 間接経費:9720000円 )
氷河は氷体の温度構造によって温暖、寒冷、ポリサーマルに分類され、それぞれ気候変化に対する応答の仕方が異なるが、氷体温度は衛星観測ができないため、アジア高山域における地理的分布と変化の実態は未解明なままである。本研究では、現地観測と高解像度再解析データ、氷体温度を詳細に見積る雪氷物理モデルにより、氷河氷体の温度構造を推定し、氷河の地理的分布と時空間変化を明らかにする。さらに、氷体の温度構造が氷河の流動と変動に及ぼす影響について熱力学流動モデルを使って明らかにし、これらの知見を元に、気候変動に対する氷河タイプごとの応答を定量化し、氷河変動推定の高精度化を目指す。
今年度は、共同研究者(Wei Yang, Tandong Yao, 中国科学院チベット高原研究所およびPurevdagva Khalzan, モンゴル水文気象局)に依頼し、氷温センサー&ロガーをそれぞれ中央チベット・タングラ氷河とアルタイ山脈・ポターニン氷河に設置した(5月と7月)。秋シーズン(9~11月)にネパールヒマラヤにて現地観測を実施した。ヒドゥンバレー地域・リッカサンバ氷河では、ICIMODが主体となった観測チームに参加し、氷温センサー&ロガーを設置するとともに、2019年から継続している自動気象計による観測データの回収とメンテナンスをおこなった。ロールワリン地域・トランバウ氷河では、前年度設置した氷温ロガーからのデータ回収とメンテナンスをおこなった。この他、雨量データの回収と測器メンテナンス、自動気象計AWSからの気象データの回収とメンテナンス、氷河質量収支の計測、GPSによる測量、ドローン空撮などをおこなった(10月)。
昨年度に本研究で開発したアジア高山域向け領域気候モデルNHM-SMAP HMA(水平解像度5 km)を用いて1980年から現在にかけての長期気候計算を実施した。共同研究を実施しているInstitute of Science and Technology Austria(ISTA)のThomas Shaw博士と協力し、現地観測データによる検証を進めたところ、良好な精度を得たため、次年度に論文化する方針で計算結果の解析を進めることとした。
領域気候モデルの改良に関する研究論文の他、アジア高山域の氷河変動と降水メカニズムに関する研究論文を出版した。
2022年10月にネパールヒマラヤ・ロールワリン地域のトランバウ氷河の涵養域に設置した氷温ロガーについて、6つの深度のうち1つの深度でのみ通年のデータが取得した。この結果を踏まえ、次年度には別のロガーシステムを設置する予定である。計画初年度に前倒して設置した自動気象計は、順調にデータを取得しており、期待通りの成果を上げている。
さらに、共同研究者に依頼していたチベット高原およびモンゴルアルタイ山脈の氷河への氷温ロガーも予定通り設置された。これにより、これらの地域の氷温データを継続的に収集できる見込みである。また、領域気候モデルに関しては、アジア高山域を含む過去40年分の気象データの計算が完了した。このデータは現地観測データと照らし合わせることで検証されており、精度の高い良質なデータであることが確認されている。
これらの活動を総括すると、自動気象計によるデータ収集が順調であり、共同研究者と協力して進めている氷温ロガーの設置も計画通り進行している。今後、次年度に予定されている別のロガーシステムの設置により、さらに精度の高いデータの取得が期待される。
以上の点から、研究計画はおおむね順調に進展しており、次年度以降も引き続き効果的なデータ収集と解析が期待される。現地での観測データの蓄積と、領域気候モデルによる長期的な気候変動の解析は、本計画のみならず、研究コミュニティにも大いに役立つと考えられる。
計画は予定通り遂行される見込みである。具体的には、共同研究者への依頼に基づいて行われる複数の観測が含まれる。まず、5月にはチベット高原のドンケマディ氷河にて、氷温ロガーからのデータ回収とメンテナンスを実施する(中国科学院チベット高原研究所へ依頼)。これに続いて、7月にはモンゴルのポターニン氷河にて、同様に氷温ロガーからのデータ回収とメンテナンスを行う(モンゴル気象水文局へ依頼)。これらの観測により、データの確保と更なるデータの取得を確実にする。
さらに、9月以降の秋シーズンには、ネパールヒマラヤのヒドゥンバレー地域とロールワリン地域にて、氷温ロガーからのデータ回収とメンテナンスを実施する。ヒドゥンバレー地域の観測についてはICIMODの共同研究者へ依頼する。これらの地域は、ヒマラヤの気候変動の影響を理解するための重要な観測サイトである。
加えて、領域気候モデルによるアジア高山域の高解像度5kmデータの作成を進める。このデータについては、作成プロトコルと現地観測データによる検証結果を基に、論文としてまとめる予定である。論文化することにより、データの信頼性と有用性を広く認識してもらうことが期待できる。
また、氷河の質量収支モデルとの統合も進めており、これにより氷河の動態と気候変動の相互作用をより正確に理解することができる。さらに、氷河流動モデルの山岳氷河への適用も計画している。このモデル適用により、山岳氷河の動態解析が進み、氷河の将来的な変動予測に役立てることができる。
全体として計画通りに進行しており、各種観測活動やデータ解析が予定通りに実施されている。これにより、アジアの高山地域における気候変動の影響をより深く理解するための基盤が整いつつある。今後も引き続き、精度の高いデータの収集と解析をおこない、気候変動による氷河温度環境に関する知見がさらに深まることが期待できる。 -
グリーンランド氷床雪氷質量変動に対する北極温暖化増幅の影響解明
研究課題/研究課題番号:21H03582 2021年4月 - 2024年3月
日本学術振興会 科学研究費助成事業 基盤研究(B)
庭野 匡思, 林 修吾, 橋本 明弘, 青木 輝夫, 大島 長, 藤田 耕史
担当区分:研究分担者 資金種別:競争的資金
気候変動予測に関する最新の研究によると、北極では急速な温暖化により雪氷融解が加速する一方で、海氷が減少する海面からの蒸発量増加により、降水量が増えるとされている。2000年代初頭以降、グリーンランド氷床では雪氷融解が確実に進行している一方で、降水量は直接観測が決定的に不足しており、実態は不透明である。本研究課題では、我々が開発した最新の高解像度領域気候モデルNHM-SMAPを複数の大気再解析データで駆動して1980年から現在をカバーする独自の高解像度データセット群を構築する。これらのデータセット群を現地及び衛星観測データで検証した上で解析し、近年の雲・降水系の変化の実態を詳細に明らかにする。
グリーンランド氷床の雪氷表面物理状態に対する北極温暖化増幅の影響を明らかにすることを目的として、詳細な極域気候モデルNHM-SMAPの高度化と解析を実施した。従来、NHM-SMAPは気象庁の再解析データJRA-55のみで駆動されていたが、本研究の遂行により欧州中期予報センターによる最新の再解析データERA5を用いて駆動することが可能となった。グリーンランド氷床をターゲットとする国際モデル相互比較では、ERAを用いることが事実上のスタンダードとなりつつあるため、本取り組みは今後の研究の推進にとって非常に有意義である。また、グリーンランド氷床上降雨が近年有意に増加していることも明らかにした。
本課題で開発を推進している極域気候モデルNHM-SMAPをベースとする大気-雪氷系モデルシステムのコアパートが気象庁の解析積雪深・降雪短時間予報業務で正式採用された(社会実装)。大気-雪氷相互作用のモデリングの観点で考えると、グリーンランド氷床は大部分の地表面が雪氷で覆われているために、モデルの問題点の洗い出しや高度化に非常に適した場所である。そこで鍛えられたモデルを、より複雑な地表面を持つ日本に適用して正常に動作させることに成功したことは、今後のモデル開発のアプローチを考える上で有益な示唆を与える。なお、この点は当初の研究計画で目指していたことではなく、想定以上の成果と言える。 -
ヒマラヤ山岳域における複雑地形と大規模湿潤気流がもたらす降水変動メカニズムの解明
研究課題/研究課題番号:18KK0098 2018年10月 - 2023年3月
日本学術振興会 科学研究費助成事業 国際共同研究加速基金(国際共同研究強化(B))
藤波 初木, 佐藤 友徳, 平田 英隆, 高橋 暢宏, 藤田 耕史
担当区分:研究分担者
ヒマラヤ高標高域の降水変動とそのメカニズムを解明するため,ネパールヒマラヤ東部・ロールワリン地域に雨量計網(標高1000~5000m)を展開し,2019~2022年の1時間降水量データを取得した.また,衛星搭載降雨レーダ,雲解像モデルおよび大気再解析データを用いた総合的な研究を実施した.高標高域では,降水量に昼間と夜間の1日2回のピークがあり,昼間はヒマラヤ南斜面,夜間はインド半島規模の陸面過程による風系の日変化によることを明らかにした.高標高域に極端降水をもたらすメソスケールの降水システムは,モンスーン低気圧による斜面への水蒸気輸送の増加とヒマラヤ南斜面の加熱により発生することがわかった.
ヒマラヤ山脈の夏季降水は山岳氷河を涵養し,ガンジス川やブラマプトラ川などの大河川の水源となるなど,流域に住む数億人の人々の貴重な水資源となる.本研究は,その夏季降水の基本的な変動である日変化のメカニズムを初めて明らかにした.また,これまでわかっていなかった高標高域の豪雨発生のメカニズムも明らかにした.これらの解明は,南アジアの山岳氷河を含む水文気候の形成・維持過程の理解向上に大きく貢献する. -
世界一の確度をもつ過去200年間の沈着エアロゾルのデータベース創成と変遷解明
研究課題/研究課題番号:18H05292 2018年6月 - 2023年3月
日本学術振興会 科学研究費助成事業 基盤研究(S)
飯塚 芳徳, 植村 立, 関 宰, 的場 澄人, 大島 長, 藤田 耕史, 大野 浩, 服部 祥平
担当区分:研究分担者 資金種別:競争的資金
本研究の成果は多岐にわたるが、I.コロナ禍などの万障を退け、極域氷床で最も過去のエアロゾルの保存の良いグリーンランド南東ドーム地域で250m長のアイスコアの掘削に成功したこと、II.過去220年間のエアロゾルのデータベースを構築し、その変遷要因に関する数多くの研究成果を創出したこと、III.本プロジェクトを通じたアイスコア研究推進基盤を創成したこと、の3点に要約できる。
世界で最も確度の高い過去220年間のエアロゾルのデータベースを構築した。また1970年代(二酸化硫黄排出期)の硫酸エアロゾル径が小さく雲を形成しやすかったことや、1980年以降(排出削減期)に硫酸エアロゾルの減少が鈍化していることを解明し、データベースだけではなく新しいエアロゾルの変動要因の知見を得た。これらの成果は、地球温暖化に対するモデル予測の人為的寄与の評価精度向上につながる。 -
過去の大規模な気候変動における氷床・海洋・大気の相互作用の解明
研究課題/研究課題番号:17H06104 2017年5月 - 2022年3月
日本学術振興会 科学研究費助成事業 基盤研究(S)
阿部 彩子, 大河内 直彦, 吉森 正和, 齋藤 冬樹, 藤田 耕史, Greve Ralf, 川村 賢二
担当区分:研究分担者
大気海洋結合モデル(MIROC)と氷床モデル(IcIES)を中心とした数値シミュレーションと古環境データ解析との融合により、過去の大規模な気候変動を再現し、氷床・海洋・大気の変動と相互作用メカニズムを調べた。その結果、(1)百万年前以前の160から120万年前の氷期サイクルの卓越周期が4万年だった原因やプロセスを明らかにした。天文学的要因のうち自転軸傾斜だけでなく気候歳差が退氷期のタイミングを決める上で重要だった。(2) 氷期中数千年周期で繰り返す急激な気候変動イベントの再現に成功した。(3)過去2つの退氷期のシミュレーションに成功し、その氷床・海洋・大気変動の違いとその要因を明らかにした。
本研究の学術的意義は、人類史とも密接に関係している数百万年間の大規模な気候変動について、最先端の大気海洋結合モデルと氷床・植生・物質循環などのモデル群を必要に応じて整備しシミュレーションに取り組むことである。独創的な点は、外国勢のような簡易モデルでなく本格的な高解像度モデルで多くの感度実験を行うアプローチであり、これにより気温や降水量、大気海洋循環はもちろん、氷床や植生分布、海洋物質分布の時空間構造を示し、メカニズムを提示し飛躍的な成果を遂げた。多くのフィールドデータ分析の古気候研究者らと国際共著の研究論文を出版でき、国連のIPCC 第6次報告書(第一作業部会)には論文数76個が引用された。 -
樹木年輪とアイスコアの統合解析によるアジア山岳域の標高別古気候復元
研究課題/研究課題番号:17H01621 2017年4月 - 2021年3月
科学研究費助成事業 基盤研究(A)
佐野 雅規, 藤田 耕史, 對馬 あかね
担当区分:研究分担者
温暖化が進行する現在において、アジア高山域にて長期間の気候情報を保持した貴重なアイスコアを掘削できたことが本研究の大きな成果の1つである。他方、もう1つの対象である年輪データも異なる標高で収集することに成功した。得られた年輪時系列データの特徴として、場所を問わず、過去100年間にわたりセルロースの酸素同位体比が上昇する傾向を示し、ネパールヒマラヤの広い地域において乾燥化が進行していることを認めた。さらに、本研究で得た標高別の古気候データから、高標高域おいてより顕著に乾燥化が進んでいることが示唆された。
IPCC AR5 で見積もられている将来の気候変動は、樹木年輪やアイスコア(氷河氷床から掘削される円柱状の氷)、海底堆積物などの様々なプロキシから復元される古気候情報と気候モデルの統合解析から導かれている。このため、気候変動の将来予測の信頼性を高めるためには古気候プロキシデータの空間的な拡充と得られる気候情報の高精度化が重要な課題である。しかしながら、標高別の気候変動データの取得と解析は進んでおらず、特にアジア高山域における気候変動の将来予測に大きな不確実性をもたらしている。 -
基盤研究(A) 樹木年輪とアイスコアの統合解析によるアジア山岳域の標高別古気候復元
2017年4月 - 2021年3月
日本学術振興会 科学研究費補助金
佐野雅規
資金種別:競争的資金
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近年のグリーンランド氷床表面の暗色化と急激な表面融解に関する研究
研究課題/研究課題番号:16H01772 2016年4月 - 2020年3月
科学研究費助成事業 基盤研究(A)
青木 輝夫, 梶野 瑞王, 庭野 匡思, 本山 秀明, 橋本 明弘, 谷川 朋範, 的場 澄人, 大島 長, 保坂 征宏, 藤田 耕史, 足立 光司, 竹内 望, 飯塚 芳徳, 石元 裕史, 田中 泰宙, 野沢 徹
担当区分:研究分担者
グリーンランド氷床の近年の表面融解の実態を明らかにするため、現地観測、衛星観測、数値モデリング研究を行った。現地観測では既存自動気象観測装置を維持し、データを公開した。また、アイスコア試料を解析し、水蒸気や鉱物性ダスト輸送の特徴を明らかにした。衛星観測では、非球形積雪粒子形状モデルによる雪氷物理量抽出アルゴリズムの開発と氷床表面暗色化の原因の定量化を行った。数値モデルでは光吸収性エアロゾル(LAA)効果を精緻に扱う領域気象モデルを開発すると共に、積雪変質・領域気象モデルによる氷床表面融解の実態把握を行った。さらに、地球システムモデルによって大気と雪氷中のLAAによる放射強制力を見積もった。
本研究の学術的な特色は現地観測、衛星観測、モデリングを組み合わせることにより、観測が困難な氷床上の観測でありながら、事例解析に終わらず、普遍性の高い10-20年の長期解析を行うと共に、フィルンコア解析から数十年間のLAAによるアルベド低下効果を復元する。氷床融解に対するBCによる積雪汚染の寄与を定量化することにより、排出規制などの根拠となり、社会的意義も大きい。 -
基盤研究(A) 近年のグリーンランド氷床表面の暗色化と急激な表面融解に関する研究
2016年4月 - 2020年3月
日本学術振興会 科学研究費補助金
青木輝夫
資金種別:競争的資金
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フルスケール雪崩実験と多項式カオス求積法を用いた次世代型雪崩ハザードマップの作成
研究課題/研究課題番号:15H02992 2015年4月 - 2019年3月
日本学術振興会 科学研究費助成事業 基盤研究(B)
西村 浩一, 前野 深, 河島 克久, 西森 拓, 山口 悟, 小田 憲一, 藤田 耕史, 竹内 由香里, 常松 佳恵, 上石 勲
担当区分:研究分担者
雪崩の包括的データの取得を目的に組織的なフルスケール雪崩実験を北海道のニセコアンヌプリで実施した。厳冬期には雪上車を用いて、また融雪期には人工爆破によるフルスケール雪崩実験を試みた。後者ではビデオによる雪崩の動態の観察、ドローンを用いた発生量、走路上での削剥量と堆積量の把握、小型加速度計を用いた運動状態の観測、赤外放射温度計による温度の非接触測定、さらにはドップラーレーダを用いた計測も行われた。データの解析結果に基づき雪崩運動モデルの検討を行うとともに、多項式カオス求積法(PCQ法)を用いて雪崩発生箇所、規模、底面や内部摩擦等々の不確定性を考慮した次世代型雪崩ハザードマップを作成した。
人工雪崩実験により得られたデータは雪崩運動モデルの検証と改良に用いられたほか、2017年3月27日に栃木県の那須で発生し8人が犠牲となった雪崩事故に際して、栃木県教育委員会の雪崩事故検証委員会(研究代表者である西村が副委員長を務めた)において、本プロジェクトの成果に基づく雪崩の運動状態の再現と作成されたハザードマップが資料として活用された。 -
アジア高山域における大型氷河の動態把握と変動メカニズムの解明
研究課題/研究課題番号:26257202 2014年4月 - 2018年3月
藤田 耕史
担当区分:研究代表者
配分額:40430000円 ( 直接経費:31100000円 、 間接経費:9330000円 )
アジア高山域の雪氷圏変動予測において大きな不確実性をもたらしている大型氷河の変動メカニズムを明らかにするために、現地観測、衛星データ、数値計算モデルを駆使した解析と研究を進めた。デブリ厚の指標であるデブリの熱抵抗値を衛星データから求め、氷河融解を求めるモデルを開発し、気候変化に対する氷河の応答を解析した。衛星データ解析により、詳細な氷河の質量変化を算出するとともに、広域においては氷河インベントリを整備し、東ヒマラヤにおける氷河変動とデブリ氷河の形成要因を明らかにした。さらに、気候変化への氷河の応答が地域的に大きく異なり、属している気候そのものに影響を受けていることを明らかにした。
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地球規模環境変動が氷河生態系に及ぼす影響評価
研究課題/研究課題番号:26241020 2014年4月 - 2018年3月
幸島 司郎
担当区分:研究分担者
世界各地の氷河で採取した微生物の遺伝子分析と地域間比較により、氷河融解を加速する汚れ物質(クリオコナイト)形成に関係するバクテリアやシアノバクテリアの地理的分布や汚れ物質内での分布、氷河動物と共生するバクテリアの存在が初めて明らかになった。また、生物によるアルベド改変過程を組み込んだ氷河変動モデルを改良するために、クリオコナイトが氷河表面に形成する縦穴(クリオコナイトホール)の発達や崩壊を精度良く表現できる数値計算モデルを構築した。
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基盤研究(A) 地球規模環境変動が氷河生態系に及ぼす影響評価
2014年4月 - 2018年3月
日本学術振興会 科学研究費補助金
幸島司郎
資金種別:競争的資金
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基盤研究(A) アジア高山域における大型氷河の動態把握と変動メカニズムの解明
2014年4月 - 2018年3月
日本学術振興会 科学研究費補助金
藤田耕史
担当区分:研究代表者 資金種別:競争的資金
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アジア高山域における大型氷河の動態把握と変動メカニズムの解明
2014年3月 - 2018年3月
科学研究費補助金 基盤研究(A)
担当区分:研究代表者
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ヒマラヤにおける氷河縮小が海水準上昇に与える影響の評価
2007年4月 - 2011年3月
科学研究費補助金 基盤研究(A)(海外),課題番号:19253001
藤田 耕史
担当区分:研究代表者
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雪氷中の微生物活動が氷河アルベドに及ぼす影響評価
2007年4月 - 2010年3月
科学研究費補助金 基盤研究(B)一般
幸島司郎
担当区分:研究分担者
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南米パタゴニア氷原における氷河変動のメカニズムの解明と完新世古環境の復元
2006年4月 - 2010年3月
科学研究費補助金 基盤研究(A)海外学術
安仁屋政武
担当区分:研究分担者
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中央ユーラシア乾燥域における近年の水文環境の変容と人間活動影響評価
2006年4月 - 2009年3月
科学研究費補助金 基盤研究(B)海外学術
窪田順平
担当区分:研究分担者
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極低温下における積雪内水蒸気輸送と安定同位体改変に関する研究
2004年4月 - 2007年3月
科学研究費補助金 若手研究(A),課題番号:16681002
藤田 耕史
担当区分:研究代表者
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極域雪氷中の環境変動シグナル抽出と環境情報復元に関する研究
2003年4月 - 2006年3月
科学研究費補助金 基盤研究(B)
本山秀明
担当区分:研究分担者
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モンスーン・ヒマラヤにおける氷河縮小の動態解明
2001年4月 - 2005年3月
科学研究費補助金 基盤研究(A)(2)
上田豊
担当区分:研究分担者
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アミノ酸のラセミ化反応を利用した雪氷コア年代測定手法の研究
2000年4月 - 2002年3月
科学研究費補助金 萌芽的研
中尾正義
担当区分:研究分担者
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夏雪型氷河の縮小加速の検証と将来予測
1997年4月 - 2000年3月
科学研究費補助金 国際学術研究/基盤研究(A)(2)
上田豊
担当区分:研究分担者
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ヒマラヤ雪氷圏の最近の衰退の原因解明に関する研究
1997年4月 - 2000年3月
科学研究費補助金 基盤研究(B)(1)
上田豊
担当区分:研究分担者