科研費 - 中塚 武
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酸素同位体比年輪年代法の高精度化による日本列島の気候・生産・人口変動史の定量化
研究課題/研究課題番号:21H04980 2021年7月 - 2026年3月
科学研究費助成事業 基盤研究(S)
中塚 武
担当区分:研究代表者
配分額:188890000円 ( 直接経費:145300000円 、 間接経費:43590000円 )
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年輪酸素同位体比を用いた日本列島における先史暦年代体系の再構築と気候変動影響評価
研究課題/研究課題番号:17H06118 2017年5月 - 2022年3月
日本学術振興会 科学研究費助成事業 基盤研究(S)
中塚 武, 木村 勝彦, 箱崎 真隆, 藤尾 慎一郎, 小林 謙一, 若林 邦彦, 佐野 雅規
担当区分:研究代表者 資金種別:競争的資金
配分額:208000000円 ( 直接経費:160000000円 、 間接経費:48000000円 )
年輪年代法は、考古学における最も精度の高い年代決定法である。本研究は、従来の年代決定の指標である「年輪幅」を「年輪セルロースの酸素同位体比」におきかえることで樹種の違いを越えた普遍的な年代決定を可能にした「酸素同位体比年輪年代法」を、日本列島の先史時代史の解明に全面的に活用していくために立ち上げられたものである。その中では、全国各地の埋蔵文化財調査機関の協力の下で、年輪年代決定の物差しと気候変動の復元を念頭に置いた「クロノロジー構築班」、遺跡出土材の年輪年代決定と官民への技術移転を進める「年輪年代測定班」、酸素同位体比年輪年代を用いた土器編年の暦年代化を進める「土器編年対応班」及び、全体の成果をとりまとめて先史時代における気候変動の社会影響評価を行う「総括班」の4つの班が相互に連携して研究を進めてきた。今年度は研究代表者の所属機関の異動に伴い大型分析装置の移動を行ったが、それに加えて以下のような特筆すべき研究成果があった。「クロノロジー構築班」では、紀元前3000年前の縄文時代中期まで年単位で遡れる酸素同位体比のクロノロジーを世界で初めて構築することに成功した。また中部日本では酸素と水素の同位体比を組み合わせることで、過去2500年間の気候変動の年~千年のあらゆる周期での復元に成功し、そのデータを公開した。「年輪年代測定班」では、全国各地の弥生時代から近世までの様々な時代の遺跡・文化財の年代決定に成功するとともに、自治体の発掘調査員を主な対象とした酸素同位体比年輪年代法の講習会を2回に亘って開催した。「土器編年対応班」では、弥生・古墳時代の遷移期の重要土器との一括性が明確な遺跡出土材の年代決定を進め、遺跡の層位学的状況に照らして年単位での年代の検討を進めた。「総括班」では、先史時代の日本列島の人々の気候応答に関する論考を取りまとめた、編著・単著の出版の準備を行った。
3つの班と1つの総括班の取り組みは、当初の計画以上に進展している。「クロノロジー構築班」では、5000年前まで遡れる年輪セルロース酸素同位体比のクロノロジーの構築に世界で初めて成功したが、これは日本の先史時代のみならず、朝鮮半島や中国東部の古代文明の成立の解明にも利用できる国際的な成果であり、既に新羅の王朝の遺跡の年代決定などに成功裡に利用され始めている。また、酸素と水素を組み合わせて樹齢効果を取り除き、あらゆる周期での正確な気候変動の復元に成功した中部日本のデータからは、先史時代から近世に至る日本史の全体に気候変動が大きく影響してきた可能性が、考古学・文献史学の両面から詳細に明らかになってきており、今後の歴史研究への全面的な応用の発展が期待できる。「年輪年代決定班」では、日本列島の内外での各地域・各時代の遺跡の年代決定が順調に進むと共に、酸素同位体比年輪年代法の官民への技術移転を目的とした技術講習会も複数回に亘って開催してきた。講習会は受講者から概ね好評を得ると共に、今後の技術移転に向けた具体的な課題も明らかになり、次の講習会の内容の検討が進められている。また、小径木の年代決定を念頭に置いたセルロース同位体比の季節変動の分析が進められ、酸素同位体比年輪年代法の今後の飛躍的な発展と精緻化につながる、さまざまな新しい樹木生理学的な発見があった。「土器編年対応班」では、弥生/古墳時代の年代観を明らかにする上で重要な庄内式、布留式、初期須恵器などの土器型式の暦年代化につながる年輪年代データが次々と得られ、詳細な考古学的・層位学的な検討が進められている。こうした成果を社会に広く発信していくために、「酸素同位体比年代法」(単著)、「気候変動から読みなおす日本史」(編著)の出版の準備も進められ、研究成果を普及していく体制も整ってきている。
3つの研究班(①クロノロジー構築班、②年輪年代測定班、③土器編年対応班)と1つの総括班が互いに連携しながら、以下のように、各々の目標に向かって研究を進める。
①クロノロジー構築班 酸素同位体比クロノロジーの拡充と精度の向上に努め、年代決定の成功率を上げ、正確な気候復元を行う。放射性炭素の2400年問題(BC800-BC400年の資料の14C年代が区別できない問題)に対応して、縄文晩期~弥生前期のデータベースを拡充し、「資料取得済だが分析個数が少ない時代・地域」の測定個数を増やす。データは、気候復元と合わせて国際誌で出版するとともに、公的データベースに登録して公開する。
②年輪年代測定班 幅広く国内外の遺跡出土材の年輪年代決定を進めるとともに、酸素・水素同位体比の年層内変動の検討を進め、小径木の年代決定技術を発展させる。同時に官民への技術移転のための講習会を拡大して実施する。講習会を受講した発掘調査員ら自らが、他機関の支援を受けながら、酸素同位体比年輪年代法の作業を進められる体制を構築していく。
③土器編年対応班 重要な型式の土器と木材が一括性の高い状態で出土している、弥生後期~古墳中期の遺跡について、これまでの研究成果を慎重に検討するとともに、年輪年代測定班と協力して更なる出土材の収集と分析に取り組み、土器型式の暦年代の検討結果を公表していく。
④総括班 気候復元及び年代決定の成果を国内外の関係者に広く発信して活用を促進するために、論文や著書の出版、データベースの公開に加えて、全体を総合する編著本(「気候変動から読みなおす日本史」や単著本「酸素同位体比年輪年代法-最新技術で先史・古代を探る」の出版を行う。さらに「気候‐生産-備蓄-人口」に関するモデリングや、出土木器数の年別ヒストグラム等の社会定量指標の開発など、先史時代の社会像を高精度化するための最先端の研究にも取り組む。 -
酸素同位体比を用いた新しい木材年輪年代法の高度化に関する研究
2014年4月 - 2017年3月
日本学術振興会 科学研究費助成事業 基盤研究(A)
中塚 武
担当区分:研究代表者 資金種別:競争的資金
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酸素同位体比を用いた新しい木材年輪年代法の開発とその考古学的応用
2011年4月 - 2014年3月
科学研究費補助金 基盤研究(A)
中塚 武
担当区分:研究代表者
樹木年輪に含まれるセルロースの酸素同位体比の経年変動パターンが、広域の水循環変動を反映して、個体や樹種の違いを越えて、同じになることを利用して、考古学的に重要な木材試料の1年単位での絶対年代決定を行う。そのために、まず日本の本州南部で共通となる樹木年輪セルロースの酸素同位体比の標準変化曲線を確立させる。2011年6月現在、過去2300年間の中で、既に1000年を越える時代について、年単位の暫定標準変化曲線を確立した。今後1年以内に、過去3000年間の標準変化曲線を確立し、水循環変動の解析を進めると共に、考古学的な年代決定への応用を開始する計画である。
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研究課題/研究課題番号:21H00555 2021年4月 - 2025年3月
科学研究費助成事業 基盤研究(B)
諫早 庸一, 大貫 俊夫, 四日市 康博, 中塚 武, 宇野 伸浩, 西村 陽子
担当区分:研究分担者
本研究は、「14世紀の危機」に焦点を当てるものである。「14世紀の危機」とは、「中世温暖期」から「小氷期」への移行期にあたる14世紀に起きたユーラシア規模での、1)気候変動、2)社会動乱、3)疫病流行、これら3つの複合要素から成り、ユーラシア史を不可逆的に転換させた「危機」を意味する。本研究では、気候の変動は人間社会にとって特に対応の難しい20年から70年ほどの周期で「危機」を最大化するという仮説に基づいて議論を進める。100年単位の生態系の長期遷移と、社会や気候の短期のリズムとのあいだにある中間時間を、気候データと文献データとの組み合わせによって危機のサイクルとして析出する。
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温暖化が日本海側および太平洋側のブナとミズナラの季節的成長に与える影響
研究課題/研究課題番号:16K07778 2016年4月 - 2021年3月
日本学術振興会 科学研究費補助金
中塚 武
担当区分:研究分担者 資金種別:競争的資金
ブナとミズナラは、日本の冷温帯林における優占樹種である。系統的に近い一方で、葉や幹の木部形成のフェノロジーには大きな違いがあることから、気候変動 への応答の違いを明らかにし、種に応じた適応策を構築する上で重要な材料といえる。本研究では、温度環境と積雪環境が異なる地域におけるブナとミズナラを 対象に、季節的な成長の変動とその生理的、解剖学的メカニズムについて明らかにすることが目的であり、これまでの研究結果から、開葉フェノロジーおよび個 葉光合成の季節変化と、幹や枝における木部形成の季節変化との間には、両樹種ともに密接な関係があることが明らかとなった。具体的には、環孔材であるミズ ナラでは貯蔵デンプンを用いて幹の木部形成が開始し、孔圏道管が形成された後に個葉の光合成速度が最大化するが、散孔材であるブナでは葉からの光合成供給 の開始後に幹の木部形成が開始する。しかし、枝ではどちらも葉の形成開始頃に木部形成が開始しており、貯蔵デンプンの減少とその後の展葉に伴う貯蔵デンプ ンの回復がみられた。枝での両樹種の結果は、少なくとも枝においては、展葉に伴って貯蔵デンプンの利用から当年の光合成産物の利用へと炭素ソースがシフト すること、および、これらが両樹種で共通することを示唆している。また、ミズナラで行った幹の木部における水素と酸素の安定同位体比の結果からは、貯蔵デ ンプンの利用が孔圏形成中に急激に低下することが示唆されており、孔圏の形成は展葉期間とほぼ一致する。よって安定同位体比の結果からも、展葉に伴う炭素 ソースのシフトが起きることが支持された。
残りの安定同位体分析を行う必要があるが、コロナの影響により施設や必要な機器を使うことができず、中断している。
コロナの影響が緩和され、分析に必要な機器が使えるようになり次第、安定同位体分析の続きを再開する。ブナの年輪の安定同位体分析を行い、季節変化におけるミズナラとの違いを明らかにする。 -
生物起源炭酸塩の有機物酸素同位体比分析による水温及び海水酸素同位体比の両方の復元
研究課題/研究課題番号:16K13912 2016年4月 - 2018年3月
白井 厚太朗
担当区分:連携研究者 資金種別:競争的資金
貝殻やサンゴ骨格など生物がつくる炭酸カルシウムの骨格を分析することで過去の環境を復元することが可能である.炭酸カルシウムの「酸素同位体比」という指標は,形成時の水温を復元するための強力な指標としてこれまで用いられてきたが,最も重要な問題が塩分の影響を分離できないことであった.本研究では,炭酸カルシウム骨格に微量に含まれる有機物に着目し,そこに含まれる「酸素同位体比」や「炭素同位体比」に着目することで塩分の影響を分離する手法の開発を試みた.ムラサキイガイの殻に付着した有機物の皮の「炭素同位体比」の分析手法を確立し,指標としての有用性を評価した結果,河川流入量の良い指標となることを明らかにした.
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気候変化は樹木の季節成長にどう影響するか-年輪酸素同位体比の精密測定による解析
2011年4月 - 2013年3月
科学研究費補助金
中塚 武
担当区分:研究代表者
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樹木年輪の酸素・水素同位体比を用いた日本各地における長期水循環変動の精密復元
2007年4月 - 2010年3月
科学研究費補助金 基盤研究(B)
中塚 武
担当区分:研究代表者
日本各地の森林から採取された樹木試料、および歴史学的・考古学的・地質学的な調査によって得られた木材試料の中に見られる“年輪”から、セルロースを抽出し、その酸素・水素および炭素同位体比を測定することで、過去数百~数千年間以上に亘る、日本各地における気候変動、特に水循環の変動を、年・月の単位の高い時空間分解能で精密に復元した。
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年輪セルロースの酸素・水素同位体比による降水同位体比の広域マッピング法の確立
2005年4月 - 2007年3月
科学研究費補助金 基盤研究(B)
中塚 武
担当区分:研究代表者
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海氷の古海洋学Proxyの開発とオホーツク海氷の歴史的変遷の解析
2000年4月 - 2002年3月
科学研究費補助金 基盤研究(B)
中塚 武
担当区分:研究代表者
オホーツク海という海域に、現在特徴的に見られる海氷が、過去どのように分布し、大気・海洋システムにどのような影響を与えてきたかを解明するため、まず海氷の古海洋学的Proxyの開発を行い、それを堆積物コアに応用して、オホーツク海氷の歴史的変遷を解析した。海氷Proxyとしては、海氷が運ぶ陸起源砕屑粒子と海氷付着性藻類のバイオマーカーの2つを対象とし、それをオホーツク海の堆積物コアに適用して、古海洋学的解析を行った。その結果、オホーツク海の過去の海氷分布がグローバルな気候変動と極めて良く相関していること、オホーツク海の生物生産力が、氷期に低く間氷期に高い顕著な変動を示すことなどが明らかとなり、合わせて生物生産に対する海氷の役割を定量的に明らかにすることが出来た。