科研費 - 野澤 悟徳
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太陽風エネルギー流入に対する北極域下部熱圏・中間圏の応答の高精度観測による解明
研究課題/研究課題番号:25H00686 2025年4月 - 2030年3月
科学研究費助成事業 基盤研究(A)
野澤 悟徳
担当区分:研究代表者 資金種別:競争的資金
配分額:46670000円 ( 直接経費:35900000円 、 間接経費:10770000円 )
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マルチビームライダーを中心に用いた精密拠点観測による北極域大気上下結合の解明
研究課題/研究課題番号:17H02968 2017年4月 - 2020年3月
日本学術振興会 科学研究費助成事業 基盤研究(B)
野澤 悟徳, 小川 泰信, 川原 琢也, 藤原 均, 水野 亮, 堤 雅基, 斎藤 徳人, 津田 卓雄
担当区分:研究代表者 資金種別:競争的資金
配分額:17680000円 ( 直接経費:13600000円 、 間接経費:4080000円 )
オーロラ帯に位置するトロムソ(北緯69.6度、東経19.2度)にて、マルチビームナトリウム(Na)ライダーを中心に用いた精密拠点観測により、地球大気と宇宙との境界領域に位置する北極域下部熱圏・中間圏に生起する現象の解明を実施した。Naライダーデータを用いたNa層低高度側の高Na密度領域生成機構、25年間のMFレーダーデータを用いた乱流圏界面高度長期変動、フォトメータ観測データに基づく、630 nm 発光時間に関する新たな知見を得た。鉛直風測定精度の改善のため、口径60cm望遠鏡を用いた受信システムを新たに製作し、Naライダーに導入し、鉛直方向に関して従来の3倍の精度向上を達成した。
地球大気と宇宙を繋ぐ遷移領域である、北極域中間圏・下部熱圏(高度70-120 km)における大気変動、大気波動の影響、微量原子密度変動、乱流圏界面高度の長期変動に関する新たな知見を得た。5波長フォトメータによる沿磁力線方向観測を実現し、オーロラ発光(波長630 nm)問題に関する知見を増した。これらは、人類の宇宙進出や、太陽風エネルギー流入による地球環境変動の理解につながる研究成果である。 -
北極域拠点観測による大気上下結合の研究
2013年4月 - 2016年3月
科学研究費補助金 基盤研究(B)
野澤悟徳
担当区分:研究代表者
北欧トロムソに名古屋大学が中心となって展開している各種のレーダー、ライダー、オーロライメージャなどを用いて、極域大気を観測し、対流圏・成層圏と中間圏・熱圏・電離圏がどのように相互作用しているかの解明を目指す。
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レーダー観測とシミュレーションによる北極域下部熱圏-中間圏結合の解明
2004年4月 - 2008年3月
科学研究費補助金 基盤研究(B)
野澤 悟徳
担当区分:研究代表者
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極域中間圏・熱圏における中性風の研究
1999年4月 - 2002年3月
科学研究費補助金 基盤研究(C)
野澤悟徳
担当区分:研究代表者
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EISCATレーダーを用いた極域E層中性風の研究
1995年4月 - 1998年3月
科学研究費補助金 基盤研究C
野澤悟徳
担当区分:研究代表者 資金種別:競争的資金
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南北オーロラ帯からの観測とモデルに基く高エネルギー降下電子の環境影響に関する研究
研究課題/研究課題番号:24H00751 2024年4月 - 2028年3月
科学研究費助成事業 基盤研究(A)
水野 亮, 三好 由純, 大山 伸一郎, 山下 陽介, 野澤 悟徳, 長濱 智生, 秋吉 英治, 中島 拓
担当区分:研究分担者
地球の環境は、人為的要因だけでなく、多くの自然起源の要因の影響も受ける。本研究は、太陽活動起源で地球に降り込む高エネルギー粒子が、大気組成および気候に与える影響を理解することを目指す。基本となる物理・化学過程は定性的には理解されているものの、粒子のエネルギー分布や降り込みの時空間範囲・頻度などの動態、応答する大気側の影響範囲、時間的な進化など、実際に起きている変化を精確に捉え、因果関係を定量的に理解するための観測データは未だ十分とは言えない。衛星観測、南北極域からの最先端の観測、大規模シミュレーションをもとに、高エネルギー粒子が大気に及ぼす因果関係を定量的に理解し、地球環境への影響を評価する。
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流星エコーを利用した新規手法による極域中間圏界面領域の風速・温度・乱流の精密観測
研究課題/研究課題番号:24K00709 2024年4月 - 2027年3月
科学研究費助成事業 基盤研究(B)
堤 雅基, 野澤 悟徳, 高麗 正史, 佐藤 薫
担当区分:研究分担者
本研究では、高度50-110km程度の大気領域において、特に極域の大気波動や乱流の特性を、レーダーの流星エコーを用いた独自開発観測手法を使用して評価する。この領域は大気大循環の最上層部として下層大気とつながる入口・出口となる役割を担っており、気候予測モデルによる高精度予測にはこの領域の正確な再現が欠かせない。特にモデルの入力パラメターとして重要でありながら観測困難であった小スケール大気波動や乱流の振る舞いを定量的に明らかにする。
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熱圏温度ライダーの開発と地上温度変化の高精度モニタリングへの展開
研究課題/研究課題番号:23K28222 2023年4月 - 2027年3月
科学研究費助成事業 基盤研究(B)
斎藤 徳人, 野澤 悟徳, 津田 卓雄
担当区分:研究分担者
高度領域100-300 kmの熱圏に分布している原子、分子、イオン等をプローブ粒子として利用するライダーを開発、実現し、光学的に熱圏の物理 パラメーターを高精度に測定していくための基盤を築く。熱圏の各高度領域におけるプローブ粒子の共鳴散乱スペクトルプロファイル、 すなわち熱圏温度を高い精度で導出し、地表面温度の変化量(ΔT(ES))に対する熱圏温度の変化量(ΔT(TS))の比ΔT(TS)/ΔT(ES)が地球温暖化指標 となり得るかどうか、その適性を明らかにする。
ライダー法による熱圏の温度他物理パラメーターの観測を実現するために、レーザー光源と受信光学系の開発研究を行った。レーザー光源については、半導体レーザー励起の固体レーザーの実現に向けて、分布帰還型半導体レーザー(DFBレーザー)を基礎としたナノ秒パルスシーダーの開発を完了した。DFBレーザーへ印加する電流を直接変調することにより、パルス動作化、ナノ秒領域においてパルス幅の制御が可能である。繰り返し速度は500 Hz以下の範囲で変更できる。それにより、300 kmまでの高度では、後続パルスに影響されない単一パルスによる事象の観測が可能である。スペクトル線幅は、プローブとなるヘリウムや窒素分子イオンを効率よく励起できるよう約1 MHzに設定した。これを増幅するための固体増幅器を構成し、1 mJの出力エネルギーが得られている。さらに中型ー大型の固体増幅器を開発中である。780-800 nm領域及びその第2高調波領域、1083 nmにおいて数mJから50 mJの出力パルスが得られる見込みが立っている。以上と並行し、主鏡の直径が350 mm、500 mmのカセグレン望遠鏡を基礎とした受光系の開発も進めている。検出器として用いる電子冷却式のMulti-Pixel Photon Counterへの散乱光の導入光学系の設計が完了し、それに沿って光学系を構成中である。レーザー光源と受信光学系の開発ともに、当初の予定通りに進行中である。
ライダー観測のための主要な要素技術となるレーザー光源及び受信光学系の開発が予定通りに進んでいる。レーザーについては、ライダー観測のカギとなるスペクトル線幅を、ヘリウムや窒素分子イオンの共鳴スペクトルを効率よく励起できるよう、1 MHzまで狭帯域化し、mJレベルまでの出力エネルギーの増幅が実現している。また単一パルス事象の観測を積み重ねていくため、500 Hz以下での繰り返し速度(パルス動作)の制御が可能となっている。受信光学系は、代表者、分担者の開発した現在運用中の北極圏ライダーの受信光学系の技術を基に、その発展型を開発中である。いずれも最上位の技術を導入した最新のシステムが実現する運びである。
2023年度に引きつづき、要素技術の充実を図る計画である。
(1) レーザー光源として、増幅系を充実させ、狭帯域スペクトル(1 MHz程度)で、数mJから50 mJの出力パルスを出力可能な半導体レーザー励起固体レーザーを実現する。
(2) ライダー観測における、シグナルノイズ比の増大の必要性を考慮し、パルスエネルギーのスケーラビリティを高めるため、増幅器の技術を充実させる。
(3) 熱圏の温度他、物理パラメーターの決定のため、音響光学素子を用いた、高精度周波数シフトシステムを開発する。
(4) 受信光学系を完成させる。受信光学系もシグナルノイズ比の増大の必要性を考慮し、ディテクターの冷却・恒温化システムの導入を検討する。
(5) レーザー光源、受信光学系を融合させ、2025年度以降に予定しているライダーの原理観測の準備を開始する。 -
熱圏温度ライダーの開発と地上温度変化の高精度モニタリングへの展開
研究課題/研究課題番号:23H03532 2023年4月 - 2027年3月
科学研究費助成事業 基盤研究(B)
斎藤 徳人, 野澤 悟徳, 津田 卓雄
担当区分:研究分担者
高度領域100-300 kmの熱圏に分布している原子、分子、イオン等をプローブ粒子として利用するライダーを開発、実現し、光学的に熱圏の物理パラメーターを高精度に測定していくための基盤を築く。特に、熱圏の各高度領域におけるプローブ粒子の共鳴散乱スペクトルプロファイル、すなわち熱圏温度を高い精度で導出し、地表面温度の変化量(ΔTES)に対する熱圏温度の変化量(ΔTTS)の比ΔTTS/ΔTESが地球温暖化指標となり得るかどうか、その適性を明らかにする。
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アルマの高精度観測による,タイタン・海王星の特異な大気化学・物理過程の網羅的解明
研究課題/研究課題番号:21H01142 2021年4月 - 2026年3月
日本学術振興会 科学研究費助成事業 基盤研究(B)
飯野 孝浩, 山田 崇貴, 塚越 崇, 佐川 英夫, 谷口 琴美, 野澤 悟徳
担当区分:研究分担者 資金種別:競争的資金
タイタンと海王星の大気は,複雑な成層圏大気組成および成層圏・対流圏の東西風という,大気化学・物理上の他にない特徴を有している.
本研究では,電波望遠鏡アルマによる6年間・3000点に及ぶ両天体のイメージング分光観測データに対し,1) 成層圏微量分子の3次元分布と多様な同位体比の導出,2)複数高度での成層圏全球ダイナミクスの直接観測,を行う.構築した高精細かつ稠密な観測量データベースに対し,学際的な研究チームによる星間空間・他惑星との比較や,流体・化学反応計算等の多様な解析から,両天体の大気化学・物理過程の網羅的解明および,大型地上望遠鏡を基軸とした観測的太陽系天文学分野の創成を目指す.
本研究では,地上最大のテラヘルツ電波干渉計である「アルマ」を用い,特に海王星・タイタンを対象とした大気リモートセンシングを行うことで,その大気環境の解明を目指している.
本研究の特色として,惑星大気の観測研究をコアとして,その周辺領域(原始惑星系円盤観測,星間化学,地球大気物理,輻射輸送計算)の研究者によるチームを構成,学際的な取り組みを展開していることが挙げられる.初年度は,チーム内での連携により,複数の研究グループを形成し,今後の取組の基盤となる成果が創出された.
初年度の主たる成果として,アルマを用いたタイタン大気中のシアノアセチレン(HC3N)分子中の3種の13C同位体の存在量比の世界初の導出(査読付き雑誌論文として掲載)をあげることができる.星間空間において,同分子の3つの炭素原子のうち,その両端にある1ないし2の原子に13Cが濃集することが知られている.本研究では,タイタン大気中においては星間空間ほどの濃集が見られないことを示し,星間化学との気相化学過程の比較を行った.また,タイタン大気における微量分子の3次元分布の自動導出をオープンソースソフトウェアのみで行うソフトウェアの開発・検証を行い,結果を査読付きプロシーディングスとして発表した.また,海王星大気物理についての学会発表及び論文投稿,火星大気のアルマ実データを用いた輻射輸送コードの開発・検証と学会発表にも取り組んだ.
本研究の特色である学際的な研究者による研究グループ構成を活かし,複数の研究プロジェクトの立ち上げと,論文発表・投稿,学会発表,予備解析といった成果をあげるに至っている.
星間化学・惑星大気化学連携として,タイタン大気におけるシアノアセチレン分子中の3種の炭素同位体の存在量比の導出に成功している.
地球大気物理・惑星大気物理連携の成果として,海王星成層圏ダイナミクスの直接導出に成功している.本成果は査読付き雑誌論文として投稿済であり,また学会発表済である.
科学研究の基盤となる輻射輸送計算コードの開発・検証として,探査機による地球・衛星大気のテラヘルツ分光コードを用いたアルマの実データでの検証に取り組んでいる.本成果は学会発表済であり,さらに構築済のアルマビッグデータをフルに活用した大気化学・物理研究へと発展予定である.
以上を踏まえ,初年度は各チームの構成・立ち上げと,成果の創出に成功したと自己評価しており,(2)と区分した.
初年度に構成したチームをベースとして,別の科研費プロジェクトとも連携しながら,さらなる成果創出につなげていく.
大気化学・星間化学連携として,アルマのビッグデータを用いた微量分子の時間発展の観測的研究に取り組んでいく.特に,同データの高い時間分解能を活かした,高エネルギー粒子の流入等に起因する突発的な大気組成変動に関する研究が重要である.必要なデータセットと解析コードは準備されている状況にある.
地球大気物理・惑星大気物理連携として,海王星ダイナミクスの直接観測論文の改訂を進め,出版を目指す.特に改訂の中で新たな解析にも取り組んでおり,各種学会での発表により,本分野の周知につとめる.
輻射輸送計算コードの開発・検証として,データセットを広く火星の一酸化炭素同位体等に広げ,光学的厚みの異なる複数輝線の同時解析による高精度な大気環境の導出に挑戦する. -
極域大気レーザセンシング:中性大気温度風速の下部熱圏観測・年間観測への進化
研究課題/研究課題番号:21H04516 2021年4月 - 2026年3月
日本学術振興会 科学研究費助成事業 基盤研究(A)
川原 琢也, 高橋 透, 野澤 悟徳, 斎藤 徳人, 津田 卓雄
担当区分:研究分担者
本研究ではノルウェーに設置したナトリウムライダーの観測高度領域を下部熱圏(200km)以下まで拡大し、これまで観測の空白領域だったこの領域の温度と風速の定常観測を行う。レーダーによる電離大気観測とライダーによる中性大気観測により、北極域において観測的に電離大気-中性大気相互作用を明らかにする。観測結果を大気モデルに組み込むことで、宇宙天気予報による電波障害予報などの精度を上げる。
本研究は、北極で運用しているナトリウムライダーを下部熱圏(80 km-200 km)まで拡張することを目的とする。昼間(北極域夏季)観測も同時に可能になる。その基盤技術となる、背景光を光学的に排除する超狭帯域光学フィルタを開発・校正し、それに特化した受信系開発とハウジング、それらを輸送、設置して、現地での観測結果の検証まで行うのが研究の目的である。3年目までを国内開発、観測準備に割り当て、4年目に現地に輸送・設置・調整、5年
目に観測で検証を行う。
磁気光学フィルタの中心部であるNaセルの開発は、前年度のアルミボディでの試作品を踏まえて、単結晶サファイアボディのセル製作を開始した。単結晶サファイアは高温ナトリウム蒸気に対して極めて強い耐性を持ち、継続的なライダー観測には不可欠で、本研究での開発目標である。ただし、ダイヤモンドに次ぐモース硬度であること、加工、接合が極めて困難であること、などでセル形状への加工が大きな課題となっている。その課題は半導体分野の最新技術を応用することで対応しているが、セル形状に応用するところでの課題もあり、問題点の洗い出しを行いながら開発を進めた。
超狭帯域である磁気光学フィルタの透過率計測には、589nm近辺の波長スキャンが可能なレーザ光源と、絶対波長目盛を決めるための指標としてのドップラー飽和分光計測手法が前年度確立できた。本年度はフィルタの透過率計測を行い、シミュレーションでの予測と比較検討してきた。概ね計測はできているがさまざまな問題が露呈しており、現在は計測データの処理手法に関して検証中である。
受信系に関しては、新規に導入する受信望遠鏡の整備、開発するフィルタまでの光学設計と製作、検出器の選定、など行い、一部を仮組したり光学実験でシステムの検証を行ってきた。単に組み立てのみならず、光学実験系を組み、検証実験を行いながら開発を進めている。
全体の進度としてはやや遅れをとっている状態ではあるが、一つ一つ検証を行いつつ進めていることで、計画を大幅に変更するような状態ではない。むしろ個々に完成度が高い状態である。
3年度目は観測コンテナの購入、観測仕様に改造、整備、が大きなプロジェクトとなる。4年度目の輸送のタイミングに合わせる必要がある。望遠鏡を含む受信光学系の製作は引き続きすすめ、検証を行ないながら進めていく。全体としては順調に進んでいるが、コンテナと受信系を輸送する4年目までに準備を進めるという時間制約の中で各項目を進めていく。 -
地上多点ネットワークに基づく超高層大気変動の緯度間結合の観測的研究
研究課題/研究課題番号:21H04518 2021年4月 - 2026年3月
日本学術振興会 科学研究費助成事業 基盤研究(A)
塩川 和夫, 西谷 望, 大山 伸一郎, 横山 竜宏, 大塚 雄一, 藤本 晶子, 野澤 悟徳, 吉川 顕正, 能勢 正仁
担当区分:研究分担者 資金種別:競争的資金
地球周辺の宇宙空間のプラズマは磁力線に沿って地球の極域に流れ込み、オーロラに代表される極域の超高層大気の擾乱を引き起こし、さらに中緯度から赤道域に広がっていく。本研究では、既存のアジア域の地上観測ネットワークに加えて、北欧からアフリカ赤道域に至る緯度方向に、夜間大気光を撮像する高感度全天カメラによる地上観測ネットワークを新たに構築し、極域から赤道への超高層大気変動の伝搬過程を2つの経度で同時に測定する。これに人工衛星による観測やモデリングを組み合わせ、極域から赤道域への超高層大気・電磁場変動の発生・伝搬メカニズムとその経度・地方時による拡がりや違いを明らかにする。
・名古屋大学で受光部を交換修理して感度校正した高感度全天カメラ1式について、令和5年9月にドイツ南部のZugspitze観測点へ設置して自動定常観測を開始した。エチオピアは引き続き現地の内戦のために大学が入構禁止になっており設置ができていない。ZWO社の小型CMOSカメラ3台について、エジプトのアレキサンドリアにあるE-JUST大学で試験観測を行い、大気重力波の観測ができることを確認した。引き続き自動定常観測のためのシステム構築を現地で行っている。
・既存のカナダ、北欧、アイスランド、アラスカ、日本、インドネシア、タイ、オーストラリア、ナイジェリアなどの観測点における光学・電磁場計測器による観測、北海道陸別のSuperDARNレーダー、ノルウェーのナトリウムライダーの計測を維持・継続した。これらの観測データとGNSS衛星電波受信器網のデータのデータベース化を行った。
・これらの観測から、オーストラリアのダーウィンと鹿児島県の佐多岬での中間圏大気重力波や中規模伝搬性電離圏擾乱(MSTID)の10年以上の長期変動の特性を明らかにした。また、フィンランドの観測から、高緯度MSTIDには明確な低緯度側境界があることを見出し、中緯度MSTIDとの違いを明らかにした。さらにサブオーロラ帯の高エネルギー粒子降込みによる銀河電波吸収が、磁気嵐中のサブストームで経度方向に拡がる様子を明らかにするなど、数多くの研究成果が得られている。これらの研究成果は、国内外の学会・研究会で紹介され、論文として公表された。
ウクライナ危機や現地の事情により、一部の観測が実施できていないが、既存のカナダ、北欧、アイスランド、アラスカ、日本、インドネシア、タイ、オーストラリア、ナイジェリアなどの観測点における光学・電磁場計測器による観測、北海道陸別のSuperDARNレーダーなどの計測を維持・継続できている。また、ノルウェーのナトリウムライダーも引き続き令和5年度も観測を継続している。これらの観測データとGNSS衛星電波受信器網のデータのデータベース化を行った。また、また、小型カメラを開発し、上記のようにいくつかの海外観測点に送付を開始できている。さらにこれらの地上観測データをあらせ衛星などの衛星データやモデリングと比較した解析を実施し、得られた成果を国内外の学会・研究会や論文で紹介・発表している。
令和6年度には、小型カメラを中心とした自動定常観測を新たにエチオピアやエジプトで立ち上げていく。また、既存のカナダ、北欧、アイスランド、アラスカ、日本、インドネシア、タイ、オーストラリア、ナイジェリアなどの観測点における光学・電磁場計測器による観測、北海道陸別のSuperDARNレーダー、ノルウェーのナトリウムライダー等の地上観測を維持・継続する。前年度に引き続き、これらの新しい観測データや、GNSS衛星電波受信器網のデータのデータベース化を行う。さらに、これらの地上観測データをあらせ衛星などの衛星データやモデリングと比較した解析を実施し、研究成果を上げていく。得られた成果は国内外の学会・研究会や国際誌に論文として紹介・発表し、さらに共同研究を発展させる。 -
アルマの高精度観測による,タイタン・海王星の特異な大気化学・物理過程の網羅的解明
研究課題/研究課題番号:23K20872 2021年4月 - 2026年3月
科学研究費助成事業 基盤研究(B)
飯野 孝浩, 谷口 琴美, 佐川 英夫, 山田 崇貴, 塚越 崇, 野澤 悟徳
担当区分:研究分担者
本研究では,地上最大のテラヘルツ電波干渉計である「アルマ」を用い,特に海王星・タイタンを対象とした大気リモートセンシングを行うことで,その大気環境の解明を目指す.本研究の特色として,惑星大気の観測研究をコアとして,その周辺領域の研究者によるチームを構成,学際的な取り組みを展開していることが挙げられる.また,アルマの公開データから構築した大規模データベースを用い,チャレンジングなテーマ設定に基づく研究を推進する.本研究を通じ,星間化学とも連携した惑星大気化学の観測研究の領域を立ち上げ,太陽系電波天文学分野として確立することが最大の目的である.
アルマ望遠鏡を用いた分光データの解析において,微弱な輝線の検出のために複数の観測パラメータを持つ観測データを積分する手法および,これに対応する輻射輸送計算手法の開発を行った.この手法を用い,タイタン大気の分光データ解析から,新たに中性大気では未検出の分子の検出に成功し,論文執筆を進めている.
大気化学シミュレーションのために,ワンボックスモデルでの化学ネットワーク計算を行う計算環境を東京大学情報基盤センターなどが運用する大型計算機システムであるmdx上に構築した.これを用い,以前に論文化した海王星のシアン化水素分布を再現するため,子午面循環と化学反応の双方を導入した計算に着手している.
加えて,固体天体の表層下からの電波放射を観測,表層下の物性環境を導出する研究にも新たに取り組んでおり,アルマのアーカイブデータからの熱放射データの探索・較正・イメージングや,物性環境の逆問題を解くシミュレーションコードの開発・検証において成果が出つつある.
前年度に投稿した海王星の大気ダイナミクスの雑誌論文は,同様の内容の論文を先に出版されてしまい,新たな方策を検討する必要がある.また,化学ネットワーク計算については,古いライブラリを多用しているために,構築に時間を要している.
2022年度,2023年度は,新たな分光観測データ積分手法や,新規天体の探索・イメージング,化学ネットワーク計算環境の構築といった基盤的な開発に時間を割いたが,来年度以降はこれら基盤を利活用した成果の創出,特に複数本の論文の執筆・投稿・出版を目指していく. -
静止軌道衛星ひまわりを活用した夜光雲の特性量推定と地上光学連携観測による検証
研究課題/研究課題番号:21H01144 2021年4月 - 2025年3月
日本学術振興会 科学研究費助成事業 基盤研究(B)
津田 卓雄, 安藤 芳晃, 鈴木 秀彦, 西山 尚典, 野澤 悟徳, 斎藤 徳人, 川原 琢也, 細川 敬祐, 穂積 裕太
担当区分:研究分担者 資金種別:競争的資金
ひまわり全球輝度データを活用し, データ解析と数値シミュレーションによって, 夜光雲の特性量 (粒径分布, 追跡風速) を推定する手法を開発する. その際, 地上光学観測 (ライダー観測, 分光器観測) による関連データを参照しながら推定手法の検証・評価を通じて科学探究に耐え得る定量的な夜光雲特性量の推定手法を確立していく. そして, 定常的なひまわりデータに準リアルタイムで特性量計算のデータ処理を適用してウェブサイトで情報公開する一連のパイプラインを構築することで, 夜光雲の定量観測を通じて地球温暖化現象の一端である超高層寒冷化を定常監視するシステムを完成させる.
ひまわり 8 号による全球輝度画像データから夜光雲を自動検出する手法の開発を進めた. 輝度値の小さい (暗い) 夜光雲も検出する為に, 背景光成分に含まれる大気分子のレイリー散乱光成分を再現・除去した後に閾値判定で夜光雲/極中間圏雲による散乱光を抽出する方法を考案し, 検出感度を向上させた. 本手法で自動検出した夜光雲データの検証として, 夜光雲観測で実績のある NASA の低軌道人工衛星 Aeronomy of Ice in the Mesosphere (AIM) の夜光雲観測データと比較した結果, 非常に良い一致が見られ, 本手法の十分な有効性が示された. 以上の研究成果について論文として纏め, 学術雑誌にて発表した [Tsuda et al., ESS, 2022]. 並行して, ひまわり 8 号で観測される夜光雲構造の時空間変動を解析し, 夜光雲の構造追跡を行うことで, 背景大気の風速 (追跡風速) を推定する手法の開発も進めた. 推定手法の検証として, 推定した追跡風速の平均成分が中間圏界面付近 (夜光雲発生領域) の基本的な平均風速と概ね一致することを確認し, 本手法の妥当性が示された. 追跡風速の変動成分 (大気波動成分) については, 1 日 (24 時間) 周期成分, 半日 (12 時間) 周期成分に加え, 14.8 時間周期成分が観測された. このような夜光雲の地方時変動特性の観測は, ひまわり 8 号の静止軌道を活かした独自の観測であり, 夜光雲観測に新しい視点を提供する意義があると考える. 以上の研究成果について論文として纏め, 学術雑誌にて発表した [Hozumi et al., JGR, 2021].
ひまわり 8 号による夜光雲の自動検出手法の開発について, 概ね当初の計画通りに進展し, 学術論文 [Tsuda et al., ESS, 2022] として発表したところ, Editor's Highlight (選出率: 2% 未満) に選出された. 加えて, 夜光雲の追跡風速の推定手法の開発についても重要な進展が見られ, 学術論文 [Hozumi et al., JGR, 2021] として発表した.
今後の方策として, 夜光雲特性量の推定手法の開発を中心に以下の内容を実施することを予定している.
(1) 夜光雲 自動検出 - 昨年度開発した可視 1 バンドの検出手法を可視 3 バンドに展開し, 複数バンドの検出結果を比較していく.
(2) 夜光雲 粒径分布 解析 - 解析の高精度化の為に, 地表面からの反射光や大気のレイリー散乱光による寄与を考慮した計算方法の開発に取 組む.
(3) 夜光雲 追跡風速 解析 - 昨年度に開発した解析手法を長期データに適用し, 追跡風速のデータベース作成を進める.
(4) 地上光学観測 分光器 - 次年度以降の連携観測に向けて, 小型可視分光器の設計・製作に着手する.
(5) 地上光学観測 ライダー - 次年度以降の連携観測に向けて, 観測装置の保守整備を実施すると共に観測計画を立案する. -
静止軌道衛星ひまわりを活用した夜光雲の特性量推定と地上光学連携観測による検証
研究課題/研究課題番号:23K20873 2021年4月 - 2025年3月
科学研究費助成事業 基盤研究(B)
津田 卓雄, 安藤 芳晃, 鈴木 秀彦, 西山 尚典, 野澤 悟徳, 斎藤 徳人, 川原 琢也, 細川 敬祐, 穂積 裕太
担当区分:研究分担者
ひまわり全球輝度データを活用し, データ解析と数値シミュレーションによって, 夜光雲の特性量 (粒径分布, 追跡風速) を推定する手法を開発する. その際, 地上光学観測 (ライダー観測, 分光器観測) による関連データを参照しながら推定手法の検証・評価を通じて科学探究に耐え得る定量的な夜光雲特性量の推定手法を確立していく. そして, 定常的なひまわりデータに準リアルタイムで特性量計算のデータ処理を適用してウェブサイトで情報公開する一連のパイプラインを構築することで, 夜光雲の定量観測を通じて地球温暖化現象の一端である超高層寒冷化を定常監視するシステムを完成させる.
本課題で開発したひまわり 8 号の全球輝度画像データから夜光雲を自動検出する手法をひまわり 9 号の全球輝度画像データに適用した. 8 号と 9 号の夜光雲の検出結果について相互比較を行い, 夜光雲観測における 9 号の性能を評価した. 評価の結果, 9 号による夜光雲観測について大きな問題はなく, 8 号と同等性能の夜光雲観測が可能であることを確認した. これを踏まえ, 9 号による夜光雲の自動観測を開始, 8 号と同様に準リアルタイムで夜光雲検出データを作成し, ウェブページ (http://ttt01.cei.uec.ac.jp/himawari/) で研究者向けのデータを公開している. データアーカイブとしては, 8 号と 9 号の観測データをあわせて, 現在迄に約 8 年分の夜光雲データベースが得られている. 市民サイエンスへの貢献を意識した X (旧 twitter) で夜光雲の観測情報を発信するシステムについても 9 号での運用を開始している. 並行して, 夜光雲解析の高精度化の為に, 大気のレイリー散乱光の LT 変化特性と散乱断面積の散乱角依存性の関係についての調査にも着手している.
ひまわりによる夜光雲観測の運用継続に関して, ひまわり 8 号からひまわり 9 号への切替えを概ね予定通りに実施し, 現在は 9 号による夜光雲の自動観測を開始している. 準リアルタイムの夜光雲データの公開と X (旧 twitter) による夜光雲の観測情報を発信するシステムの継続的な運用も順調である.
夜光雲特性量の推定手法の開発を中心に以下の内容を実施する計画である.
(1) 夜光雲 自動検出 - ひまわり 9 号 (2022/12/13-) の観測データに適用する為に開発した自動検出手法を用いて夜光雲の観測を継続する.
(2) 夜光雲 粒径分布 解析 - 解析の高精度化の為に, 大気のレイリー散乱光の LT 変化特性と散乱断面積の散乱角依存性の関係についての調査に取組む.
(3) 夜光雲 追跡風速 解析 - 追跡風速データの検証として, 地上レーダー観測による風速データとの比較に取組む.
(4) 地上光学観測 分光器 - 今後の連携観測に向けて, 小型可視分光器の調整・保守に継続的に取組む.
(5) 地上光学観測 ライダー - 今後の連携観測に向けて, ライダーシステムの調整・保守に継続的に取組む. -
国際宇宙ステーションから宇宙飛行士がデジカメで撮影した画像のオーロラ研究への活用
研究課題/研究課題番号:20K20940 2020年7月 - 2024年3月
日本学術振興会 科学研究費助成事業 挑戦的研究(萌芽)
細川 敬祐, 野澤 悟徳, 津田 卓雄
担当区分:研究分担者 資金種別:競争的資金
国際宇宙ステーション(ISS)から宇宙飛行士が市販のデジタルカメラを用いて撮影した地球の画像が,NASAのウェブサイトにおいて公開されている.これらのISSデジカメ画像は,言わば「見えたまま」の画像であり,カメラの向きや画角,歪み,撮像時刻などの「カメラパラメータ」の情報が存在しない.本研究は「ISSデジカメ画像のジオロケーションを決定する手法」 を確立し,科学データとして再生する.さらに,「デジカメ画像のRGB色空間情報からオーロラ電子のエネルギーを推定する手法」 を確立し,オーロラ電子エネルギーの広域マップを導出する.
ISSからのデジカメ画像を地理座標上にマップする作業を行い,観測領域の近傍にある地上カメラとの比較を行うことによって,マッピングの精度がオーロラのサイエンスを行うために十分なものであることを確認した.また,ISS からのデジタルカメラ観測で得られた画像の RGB チャンネルの発光強度比を用いて,オーロラ電子のエネルギー推定を行い,オーロラが明るくなった時間帯に,より高いエネルギーの電子が降下していることを示した.さらに,機械学習を用いたオーロラの自動判定システムを構築し,オーロラが発生したときにのみ高時間分解能で観測を行う仕組みを実装することに成功した.
ISSからのデジタルカメラ画像が,ディスクリートオーロラのような微細な空間構造を有するオーロラだけでなく,脈動オーロラのような激しく時間変化するオーロラにも適用可能であることを示した.この結果は,デジタルカメラ画像のオーロラ科学への活用の意義を示すものとして評価されている.また,深層学習を用いてオーロラの出現状況や形態などを自動的に判定するシステムの開発に成功し,市民サイエンスへの応用が可能であることを示した. -
南北両極から探る高エネルギー粒子が大気環境に与える影響の観測的研究
研究課題/研究課題番号:19H01952 2019年4月 - 2022年3月
日本学術振興会 科学研究費助成事業 基盤研究(B)
水野 亮, 田中 良昌, 野澤 悟徳, 長濱 智生, 中島 拓
担当区分:研究分担者 資金種別:競争的資金
南極の昭和基地と北極のEISCATサイトからの同時観測により、下部熱圏から成層圏の地球大気環境に関わる分子の変動要因を理解する。特に、高エネルギー粒子の降り込みの影響を他の変動要因と分離するため、多周波超伝導ミリ波分光計を実用化し、複数の分子種の同時観測を可能にする。また、降り込み電子の密度やエネルギースペクトルの情報を得るため、既存のレーダーやイメージングリオメターを用いた観測を進めるとともに、計画後半では新たにスペクトルリオメータでの観測を実施し、イオン化学モデルを含んだ電離圏・熱圏シミュレーションモデルとも比較することにより、高エネルギー粒子降り込み時に生起する素過程を明らかにする。
本研究は、南極域昭和基地と北極域EISCATトロムソサイトの南北両極域からの同時観測により、高エネルギー粒子降り込み(EPP)に伴う成層圏から下部熱圏の地球大気環境への影響を観測的に理解することを目指し、新たな技術を導入し観測情報の範囲拡大とデータ質向上をめざした。
コロナ禍により北極域に渡航できず観測研究すべてを計画通りに進めることはできなかったが、南極域昭和基地では多周波ミリ波分光計、スペクトルリオメータを設置し観測を開始した。特に独自開発の導波菅型周波数マルチプレクサを用いた多周波ミリ波分光計は、地上からのO3, NO, CO, HO2の多輝線ミリ波同時観測を世界で初めて実現させた。
北極および南極では、太陽活動に伴い高エネルギーの荷電粒子が地球に降り込んでくる。こうした高エネルギー粒子は空気分子を電離して窒素酸化物を増加させ、オゾンを破壊するなど地球環境に影響を与える可能性が示唆されている。本研究は、観測データが乏しい地球大気の反応を新たな技術により観測的に明らかにすることを目指したものである。電波信号を周波数帯毎に分離して複数の超伝導受信機に分配し、それらの出力を再合成することで4種類の異なる分子の変動を同時に観測できる装置を開発・実用化し、世界初の地上からのミリ波多輝線大気観測を実現させた。この技術は電波天文学などの他分野のミリ波サブミリ波分光にも応用が期待できる。 -
流星エコーを用いた中間圏界面大気温度観測技術の完成
研究課題/研究課題番号:16K13888 2016年4月 - 2018年3月
堤 雅基
担当区分:研究分担者
流星を用いた既存の大気‘絶対’温度測定手法は、大気温度の鉛直勾配などの経験的パラメターを必要とする不完全な手法であった。これに申請者が過去に開発した‘相対’温度変動観測手法を融合させることで、流星観測単独で大気の絶対温度推定を可能とする手法を開発した。
さらに、極域で観測される流星飛跡は時折異常に速く拡散することを世界で初めて見出した。非干渉性散乱レーダー観測などとの比較から、電離層電場の影響により中間圏の電子温度が大幅増大した結果であるとの結論を得た。磁気圏/電離圏が中間圏に及ぼす影響の可視化に成功した好例と言え、今後の中間圏領域の化学過程の研究などへの応用が期待できる。