科研費 - 渡邉 健史
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水稲根の鉄の酸化還元反応に関わる微生物群集の生態と機能の解明
研究課題/研究課題番号:24K01893 2024年4月 - 2028年3月
科学研究費助成事業 基盤研究(B)
渡邉 健史
担当区分:研究代表者
配分額:18460000円 ( 直接経費:14200000円 、 間接経費:4260000円 )
水田は水稲栽培期間の大半が湛水状態にあるため、土壌の大部分は嫌気的・還元的な環境になる。一方、そこで栽培される水稲は根端まで酸素を送ることができ、根圏は部分的に酸化的な環境となる。還元的な土壌と酸化的な根の境界では鉄の酸化還元反応が活発に起こり、鉄酸化菌や鉄還元菌がその反応に関与する。本研究では、水稲根に生息する鉄酸化菌・鉄還元菌の多様性や群集動態、遺伝的特性を解析し、その生態と機能を明らかにすることを目的とする。
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土壌微生物の酵素発現への微量金属元素の拮抗作用:水田土壌の二価鉄イオンの影響解析
研究課題/研究課題番号:24K01653 2024年4月 - 2027年3月
科学研究費助成事業 基盤研究(B)
浅川 晋, 渡邉 健史
担当区分:研究分担者
湛水水田土壌中の鉄濃度は,微生物培養で通常用いる培地に比べ10倍から100倍程度高い。このような条件下の土壌に生息する微生物が持つ金属酵素中の微量金属元素と鉄との間の拮抗関係を明らかにすることを目的とする。メタン生成古細菌あるいはメタン酸化細菌を対象とし,ヒドロゲナーゼ,メタンモノオキシゲナーゼ,ニトロゲナーゼのニッケル,銅,モリブデン,バナジウム含有型と鉄含有型のそれぞれのアイソフォーム酵素の発現に及ぼすFe2+濃度の影響を解析する。
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ガス体炭素基質ーCO2, CH4の微生物利用が水田土壌の物質動態に果たす機能の解明
研究課題/研究課題番号:24K01654 2024年4月 - 2027年3月
科学研究費助成事業 基盤研究(B)
村瀬 潤, アシルオグル ムハンメットラシット, 渡邉 彰, 渡邉 健史, 沢田 こずえ
担当区分:研究分担者
水田は温室効果ガスであるメタンの重要な発生源の1つであるが、土壌の表層ではメタンの酸化が活発であり、大気への放出を抑制している。また水田土壌の表面では土壌藻類の光合成による二酸化炭素の吸収も活発である。メタンの酸化と二酸化炭素の吸収は、水田土壌表層で隣接して起こる微生物反応であり、相互に影響しながら炭素を中心とする土壌の物質循環や他の微生物活動に影響を与えていると想定される。本研究では、水田表層土壌における2つの温室効果ガスの微生物利用の実態と水田土壌生態系における意義を明らかにする。
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水稲に連作障害が生じない本当の理由は何か:根圏で土壌病原菌を抑止する機作の探索
研究課題/研究課題番号:22K19132 2022年6月 - 2025年3月
科学研究費助成事業 挑戦的研究(萌芽)
浅川 晋, 村瀬 潤, 渡邉 健史
担当区分:研究分担者
湛水下で栽培されるイネ(水稲)には土壌病原菌による連作障害が起きない。従来,湛水で生じる土壌の還元・嫌気状態により好気性の土壌病原菌の活動が抑制されることがその原因とされてきたが,イネと同様に湛水下で栽培されるレンコンやクワイにはフザリウム等の好気性糸状菌による連作障害が起きるため,他に原因があると思われる。イネの根圏では地上部より送られる酸素が根から漏出し酸化的となる。このようなイネの根圏で活発化する(1)原生生物の捕食作用,(2)根周囲の酸化還元境界層における二価鉄の酸化反応によるラジカル生成,(3)非病原性の細菌・糸状菌群集の増殖が土壌病原菌を抑止していると想定し,その機作を探る。
湛水下で栽培されるイネ(水稲)には土壌病原菌による連作障害が起きない。従来,湛水で生じる土壌の還元・嫌気状態により好気性の土壌病原菌の活動が抑制されることがその原因とされてきたが,水稲と同様に湛水下で栽培されるレンコン,クワイにはフザリウム等による連作障害が起きるため,他に原因があると思われる。本研究では,地上部より送られる酸素が根から漏出し,酸化的となるイネの根圏で活発化する微生物活動と生化学反応が土壌病原菌に対する抑止性に関与していると想定する。水稲根圏において,優占して生息する原生生物の捕食作用,根周囲の酸化還元境界層の鉄酸化反応,根からの酸素と有機物で増殖する細菌・糸状菌群集に注目し,水稲が土壌病原菌に対し抑止性を発揮している機作を探ることを目的とする。
まず、実験に供試する病原菌の選定を行った。本研究ではフザリウム属菌を対象として用いることを想定している。これまで、レンコンやクワイに対して病原性を示すことが知られていたFusarium communeの菌株がイネ(インディカ種)に対しても根腐れや地上部の萎凋を引き起こすことを2021年にマレーシアの研究者が報告した。そこで、日本の水田土壌等より分離されたF. commune菌株を国内の微生物保存機関およびフザリウムの研究を行っている研究室から分譲あるいは譲受し、ジャポニカ種の日本晴の実生苗に接種し、病原性を示すかどうか確認した。供試した6菌株の全てについて、根の伸長抑制と褐変が生じることが確認でき、いずれの菌株もイネに対し病徴を示した。また、病原性の程度には菌株間で差が見られた。以上より、これらのF. commune株を水稲根に病徴を起こす病原菌として今後の実験に供試できることが明らかになった。
本研究ではフザリウム属菌を水稲に対する病原菌として用いることを想定していた。これまでイネの根に明確な病徴を生じるフザリウム属菌は国内では知られていなかった。さらに、国内で最も多くのフザリウム属菌が寄託されている微生物保存機関のそれぞれの菌株の記載を調査したが、根に対する病原性を明記している寄託株はなかった。このような状況下で、レンコンやクワイに対して病原性を示すことが知られていたFusarium communeの菌株がイネ(インディカ種)に対しても根腐れや地上部の萎凋を引き起こすことが報告された。そこで、微生物保存機関に寄託されているフザリウム菌株の記載を再度チェックし、日本の水田土壌より分離されたF. commune菌株を選抜した。これまでの研究により、F. communeの菌株がジャポニカ種のイネの根に病徴を生じることを明らかにでき、供試する菌株候補の準備を整えることができた。以上より、おおむね順調に研究が進展していると考えている。
水稲が土壌病原菌に対し抑止性を発揮している機作を探るため、今回得られた研究結果に基づき、イネの根に対する病原性の程度が異なる複数のF. communeの菌株を用いて以下の3つの観点から解析を進める予定である。原生生物による捕食作用については、イネ根圏より分離された原生生物株がF. commune株を捕食するかを調査する。根圏での鉄酸化反応による病原菌の抑止作用については、化学的および生物的鉄酸化反応に伴うヒドロキシラジカルの発生の確認とF. commune株に対する生育抑制作用を調査する。根圏に生息する微生物(細菌・糸状菌)による抑止作用については、圃場において湛水水田条件および落水畑条件でイネを栽培し、それぞれのイネから調製した根圏土壌試料について、フザリウム共培養法を用いてF. commune株に対する抑止作用の調査を行う。 -
水田土壌の生物的鉄酸化反応ー微好気性鉄酸化細菌の潜在的役割の評価
研究課題/研究課題番号:21K05326 2021年4月 - 2024年3月
科学研究費助成事業 基盤研究(C)
渡邉 健史
担当区分:研究代表者
配分額:4290000円 ( 直接経費:3300000円 、 間接経費:990000円 )
水田土壌中の鉄の酸化還元反応は、土壌中の物質代謝に大きく影響する重要な反応であるが、これまで鉄酸化反応については非生物的な反応が主体と考えられてきた。しかし、近年、Gallionellaceae科の微好気性鉄酸化細菌(以下、鉄酸化細菌)が土壌中の鉄酸化反応に深く関わることが明らかにされた。本研究では、鉄酸化細菌株の鉄酸化活性と水田土壌中での鉄酸化反応に伴う鉄酸化細菌数の変化から、土壌中での鉄酸化ポテンシャルを評価する。また、酸化された鉄と一緒に共沈した細胞などの易分解性有機物が、水田土壌の可給態窒素源の一部を担う可能性を探る。以上より水田土壌中での鉄酸化細菌の潜在的な役割を明らかにする。
本研究では、Gallionellaceae科微好気性鉄酸化細菌(以下、微好気性鉄酸化細菌)の分離菌株を用いた培養実験による鉄酸化活性の評価と、室内での土壌培養実験による微好気性鉄酸化細菌の動態の解析から、水田土壌での微好気性鉄酸化細菌の鉄酸化ポテンシャルを推定することを目指す。本年度は、昨年度検討した室内での土壌培養実験を引き続き行い、湛水水田土壌を落水したときの微好気性鉄酸化細菌群集の動態を解析した。また、微好気性鉄酸化細菌分離株を用いて、鉄酸化活性を測定する予備実験を行った。
水田土壌に粉末状にした稲わらを混合し、ガラスシリンジを用いて30℃、暗所で4週間湛水培養した。その後、培養温度を12℃、30℃、37℃に変更して下方より排水することによって落水状態とし、土壌中の活性2価鉄量を経時的に測定した。その結果、湛水培養により活性2価鉄量は乾土1gあたり2.5 mgまで増加した。一方、落水後は、2週間経過してもほとんど減少しないか、わずかに減少したのみであった。落水後の微好気性鉄酸化細菌群集の動態を16S rDNAを対象とした定量PCRにより解析した結果、16S rDNAコピー数は落水後5日(30、37℃)、または17日(12℃)の間に10-90倍増加し、低い温度ほど増加率が大きかった。以上より、微好気性鉄酸化細菌群集は、落水後、活性2価鉄量の変化が少ない短期間で活発に増殖し、その応答は温度によって異なることが明らかとなった。
また、水田より分離した微好気性鉄酸化細菌を対象に、液体培地中での鉄酸化活性を測定することを試みた。結果、十分な細胞数を測定に用いることで非生物的な鉄酸化反応を上回る鉄酸化活性を測定することができることが明らかになった。
当初の計画では、微好気性鉄酸化細菌分離株の鉄酸化活性を測定し、土壌培養実験の結果と併せて土壌中における微好気性鉄酸化細菌の鉄酸化ポテンシャルを推定することを計画していたが、分離菌株の鉄酸化活性の測定が予備実験までとなり、予定していた計画を全て完了することができなかった。
現在、分離菌株の鉄酸化活性の測定途中であり、活性測定を引き続き行う。その結果と土壌培養実験の結果を併せて、水田土壌落水時の微好気性鉄酸化細菌の鉄酸化ポテンシャルを推定する。
また、当初の計画の一つである、落水時の鉄酸化反応により形成した非晶質鉄酸化物量とそこに含まれる窒素やリン量、また土壌中の微好気性鉄酸化細菌群集の動態との関係を探り、水田土壌における鉄の酸化還元やそれに伴う物質動態における微好気性鉄酸化細菌の潜在的な役割を明らかにする。 -
田畑輪換圃場の微生物群集動態を長期継続調査し水田土壌微生物群集の安定性を解明する
研究課題/研究課題番号:18H02114 2018年4月 - 2023年3月
科学研究費助成事業 基盤研究(B)
浅川 晋, 村瀬 潤, 渡邉 健史
担当区分:研究分担者
水田では1年の間で湛水と落水が繰り返されるが、土壌中の微生物は安定で頑健な群集を形成している。そのメカニズムを解明するため、3年間隔で畑転換と水田復元が繰り返される田畑輪換圃場の土壌微生物群集の動態を11年間に亘り調査・解析した。好気性・嫌気性のどちらの微生物でも転換畑作期間に存在量が低下し、水田復元期間に徐々に存在量が増加する傾向を示した菌群が多かった。転換畑作期間の群集構成は対照の連年水田と大きく異なったが、水田復元期間が1-3年と増すにつれ連年水田の群集構成に近づく傾向が認められた。水田特有の安定で頑健な群集は、水田を毎年湛水し水稲を栽培することにより形成され維持されていると考えられた。
田畑輪換試験圃場を対象にした長期間の調査により、水田土壌中の安定で頑健な微生物群集が畑転換により大きな影響を受け、水田に復元するとその影響が徐々に緩和されることを初めて明らかにした。水田の高い持続性と生産性に寄与していると考えられる土壌微生物群集の高い恒常性・適応性の維持に、毎年湛水し水稲を栽培することが重要であることを示し、作物生産や環境保全に水田土壌微生物の機能を有効利用する際に有用な基盤的知見を提供した。 -
水田土壌における微好気性鉄酸化細菌の鉄酸化特性および群集動態の解析
研究課題/研究課題番号:18K05372 2018年4月 - 2022年3月
科学研究費助成事業 基盤研究(C)
渡邉 健史
担当区分:研究代表者
配分額:4420000円 ( 直接経費:3400000円 、 間接経費:1020000円 )
本研究では水田のGallionellaceae科の微好気性鉄酸化細菌を対象に、鉄酸化細菌の生育とともに形成した鉄酸化物の特徴と、土壌中での微好気性鉄酸化細菌群集の動態を解析した。分離菌株を対象とした解析により、微好気性鉄酸化細菌はフェリハイドライトを主体とした鉄酸化物を形成すること、また、菌株によっては樹枝状の構造物を形成させることを示した。また、土壌中での群集動態の解析により、微好気性鉄酸化細菌群集は、土壌中での鉄の酸化還元状態の変化と対応して変化することを明らかにし、Gallionellaceae科鉄酸化細菌が、水田土壌の鉄酸化過程に関わっていることを示唆する結果を得た。
鉄の酸化還元反応は、水田土壌の物質代謝において重要な役割を担う。このうち、鉄の酸化反応については、これまで非生物的反応(いわゆる空気酸化)が主体と考えられ、鉄酸化細菌による生物的反応については知見が限られていた。本研究では、Gallionellaceae科の微好気性鉄酸化細菌に注目し、土壌中での鉄酸化過程に微好気性鉄酸化細菌が関与していることを初めて示した。また、非生物的な反応による鉄酸化物とは異なる特徴的な形態の鉄酸化物が一部形成されることを示した。これらの成果は、水田土壌の物質代謝のさらなる理解につながると期待され、環境や食の安全に配慮した持続可能な水稲栽培管理の確立に役立つと考えられる。 -
西アフリカ内陸盆地水田における鉄過剰障害イネ根圏の鉄還元・酸化微生物の調査・解析
研究課題/研究課題番号:17H04619 2017年4月 - 2021年3月
科学研究費助成事業 基盤研究(B)
浅川 晋, 渡邉 健史
担当区分:研究分担者
還元条件下の水田土壌で生成する高濃度の二価鉄により生じるイネの鉄過剰障害は熱帯地域等で水稲生産に大きな被害を与えている。本研究では鉄過剰水田のイネ根圏の鉄代謝関連微生物に注目した。西アフリカ、ブルキナファソのKou盆地の鉄過剰水田圃場の障害発生および未発生イネの根圏土壌、根およびバルク土壌試料を対象に微生物群集の解析を行い、日本国内の鉄過剰障害非発生の通常水田圃場由来の試料と鉄還元・酸化微生物の特徴を比較した。イネの鉄過剰障害発生の有無に関わらず、鉄過剰水田圃場の水稲根圏では二価鉄含量の多さを反映し、鉄酸化細菌に対して鉄還元細菌が優占する微生物群集が形成されていることを明らかにした。
実際にイネの収量低下の大きな被害が発生している西アフリカの内陸盆地の鉄過剰水田を対象に、水稲根圏の鉄還元・酸化微生物群集を調査・解析し、二価鉄を酸化し過剰害軽減への寄与が期待される鉄酸化菌よりも、過剰害の主要因である二価鉄を生成する鉄還元菌が優占していることを初めて明らかにした。この知見は、鉄過剰水田において鉄代謝関連微生物の活性を制御・利活用し、イネの鉄過剰被害を軽減する方策を考える上で極めて重要かつ有用と考えられる。 -
研究課題/研究課題番号:16H05056 2016年4月 - 2019年3月
科学研究費助成事業 基盤研究(B)
村瀬 潤, 浅川 晋, 渡邉 健史, 林 健太郎, 常田 岳志
担当区分:研究分担者
水田土壌に焦点を当てて、酸化還元境界層のゆらぎの実態と微生物群集の応答を解析した。水田土壌表層は過飽和から完全な無酸素状態まで、溶存酸素濃度が極めて大きな変動を示した。水稲根圏でもイネの生育に応じて酸化還元電位が劇的に変動した。水田土壌に生息する原生生物は、好適な酸素濃度あるいは酸化還元電位を持つグループや広範囲の酸素濃度に適応するグループが存在し、酸化還元境界層で捕食者として重要な役割を果たすと考えられた。メタン酸化細菌はメタン酸化に酸素を必須とするものの、嫌気状態に置かれても長期間活性を維持することが可能であった。また、微好気性鉄酸化細菌が表層で活動することが明らかとなった。
酸化還元境界層は、多くの重要な微生物代謝が進行するホットスポットであるが、厚さ数ミリの酸化還元境界層の中での劇的な化学的濃度勾配に応じた微生物の群集や活性の空間分布の詳細はほとんど分かっていなかった。本研究では、酸化還元境界層が大きなゆらぎを有していることを実証するとともに、境界層で微生物がサブミリスケールの住み分けを行なっている実態を明らかにした。また物質循環の鍵を担う微生物群集の境界層のゆらぎに対する応答を検証した。本研究の成果から、酸化還元境界層における環境変動が微生物の生態や温室効果ガスであるメタンの動態に及ぼす影響を微生物サイズの視点に立ったスケールで解析することの重要性が示された。 -
水田土壌のメタン生成過程における硫酸還元菌群集の動態の解明
2014年4月 - 2017年3月
科学研究費補助金 基盤研究(C)
担当区分:研究代表者
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水稲根圏におけるメタンの動態に関わる微生物食物連鎖の構造と機能の解析
2013年4月 - 2015年3月
科学研究費補助金 基盤研究(B)
担当区分:研究分担者
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ヒドロゲナーゼ遺伝子の解析による水田土壌中の水素生成菌群集の生態解明
2012年4月 - 2014年3月
科学研究費補助金 若手研究(B)
担当区分:研究代表者
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節水管理水田土壌中のメタン生成古細菌の群集構造解析によるメタン放出抑制機構の解明
2010年4月 - 2012年3月
科学研究費補助金 若手研究(B)
渡邉 健史
担当区分:研究代表者