科研費 - 長野 方星
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研究課題/研究課題番号:23H00211 2023年4月 - 2027年3月
科学研究費助成事業 基盤研究(A)
長野 方星, 秋月 祐樹, 小川 博之, 坂谷 尚哉
担当区分:研究代表者
配分額:46930000円 ( 直接経費:36100000円 、 間接経費:10830000円 )
本研究では,これまで有効な手段がなかった「月面長期間滞在方法」に対して,月表面を覆う堆積層(レゴリス)の特異な熱特性を活用した新しい月面長期滞在方法を提案する。そのためレゴリスの超断熱性・蓄熱性発現メカニズムの解明,詳細月面熱環境モデルの確立,熱流体スイッチによる越夜方法の検証を行い,従来の熱制御の延長上にはない新たな周囲環境共生型熱制御法を確立し,宇宙熱制御工学分野の新たな学理創出を目指す。
月の砂(レゴリス)の熱物性(熱拡散率,比熱)を明らかにするため,単粒子ミクロ測定およびレゴリス層マクロ計測が可能な装置構築を行った。また温度依存性も測定できるように装置改良を行った。まず月の模擬砂(レゴリスシミュラント)を入手し,単粒子の熱物性の計測ができるよう加熱方法の検討,レーザースポットの最適化,解析条件の検討を行い,有効な測定ができることを確認した。次に本物のレゴリスを入手し,本測定を適用した。その結果,熱拡散率に真空度依存性があることを確認した。これは,レゴリスに多数のクラックがあり,空気の有無により熱拡散率の値が確認されるためであると考えられる。また,加熱周波数依存性もあることが確認された。これはバルク材には見られない傾向であることから,レゴリスの内部のボイドやクラックの影響が熱拡散率測定に影響を及ぼしていることが考えられる。
また,月面模擬環境での実験を行うための月面シミュレーターの設計検討を行った。チャンバー内に設置されるレゴリス層の幅,高さをパラメータとし,外部熱環境の影響を受けない加熱周波数を明らかにし,サイズの決定を行った。
さらに,熱制御方法として検討しているマルチエバポレータ型ループヒートパイプの設計,製作を行い,熱負荷条件に伴う流動変化,スイッチ性を確認することができた。
研究分担者との研究交流も活発であり,順調であると判断できるため。
構築した熱物性測定法を用いて,種々の条件におけるレゴリス単粒子,バルク層の熱物性を明らかにする。また設計結果に基づく月面模擬装置の構築を行う。さらにループヒートパイプについては,宇宙環境での実利用を想定したデバイスの試作を行う。 -
自律スイッチング熱流体システムの確立に向けたマルチポーラス相界面伝熱機構の解明
研究課題/研究課題番号:23H01612 2023年4月 - 2026年3月
科学研究費助成事業 基盤研究(B)
小川 博之, 秋月 祐樹, 長野 方星, 小田切 公秀
担当区分:研究分担者
将来の深宇宙探査で想定される複雑な熱環境変化に対応するため、自律的な熱流動反転機能を有し、かつ大発熱変動に順応可能な「自律スイッチング熱流体システム」を提案し、宇宙模擬環境での実証を目指す。その実現のため、ループヒートパイプ(LHP)熱輸送技術に着目し、動作駆動源となる多孔体の細孔径・濡れ性に階層性を有するマルチポーラス体を提案し、マイクロスケール赤外・可視観測装置を用いて熱流動メカニズムを明らかにする。次にマルチポーラス体をLHPに適用し、広域熱流束条件下での熱流動特性を明らかにする。さらに、形状記憶合金を用いたパッシブ流動制御バルブを新たに提案し、熱流体システムの自律スイッチング性を実証する。
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自律スイッチング熱流体システムの確立に向けたマルチポーラス相界面伝熱機構の解明
研究課題/研究課題番号:23K26306 2023年4月 - 2026年3月
科学研究費助成事業 基盤研究(B)
小川 博之, 秋月 祐樹, 長野 方星, 小田切 公秀
担当区分:研究分担者
将来の深宇宙探査で想定される複雑な熱環境変化に対応するため、自律的な熱流動反転機能を有しかつ大発熱変動に順応可能な「自律スイッチング熱流体システム」を提案し、宇宙模擬環境での実証を目指す。その実現のため、ループヒートパイプ(LHP)熱輸送技術に着目して動作駆動源となる多孔体の細孔径・濡れ性に階層性を有するマルチポーラス体を提案し、マイクロスケール赤外・可視観測装置を用いて熱流動メカニズムを明らかにする。次にマルチポーラス体をLHPに適用し、広域熱流束条件下での熱流動特性を明らかにする。さらに形状記憶合金を用いたパッシブ流動制御バルブを新たに提案し、熱流体システムの自律スイッチング性を実証する。
将来の深宇宙探査では、熱環境がさらに複雑に変動することが予想され、熱的要求がより厳しくなると考えられる。そこで本研究では、自律的な熱流動反転機能を有し、かつ大発熱変動に順応可能な「自律スイッチング熱流体システム」を提案し、宇宙模擬環境において実証することを目指す。本デバイスの軸となる技術は、幅広い熱流束域に対応可能な広域熱流束ループヒートパイプ(LHP)と、温度に応じてON/OFFが切り替わるパッシブ流動制御バルブである。広域熱流束LHPにおいては、駆動源となる多孔体の細孔径・濡れ性に階層性を有するマルチポーラス体を提案し、マイクロスケール赤外・可視観測装置を用いて熱流動メカニズムを明らかにし、LHPに適用することで技術実証と設計理論確立を目的とする。パッシブ流動制御バルブでは、形状記憶合金を用いることで熱環境に応じた流動制御を実証し、システムに適用することを目的とする。最終的にはこれらを融合し、宇宙熱環境下での自律スイッチング熱流体システムの動作実証と設計理論確立を目指す。
2023年度は、金属三次元積層技術によるマルチポーラス体の試作および基本特性評価、ハイスピード顕微観察装置の構築、自律スイッチング熱流体システムの基本原理を再現したマルチエバポレータ型LHPの構築と特性評価に取り組んだ。第一に金属積層造形により異なる空孔径ピークを有するポーラス体の製作に成功した点、第二に作動流体の一つであるエタノール飽和蒸気雰囲気下の顕微観察において熱伝達特性と核沸騰現象撮像の同時取得が可能となった点が研究実績として挙げられる。さらに、大気環境下での自律熱スイッチング熱流体システムの原理検証に取り組んだ。その結果、手動開閉バルブを用いたマルチエバポレータ型LHPにより、蒸発器(吸熱)と凝縮器(放熱)の機能スイッチング実証に成功し、提案システム実現の見通しが得られた。
本研究は、広域熱流束ループヒートパイプ(LHP)およびパッシブ流動制御バルブの機能を融合することで自律スイッチング熱流体システムを実用化することを最終目的とする。広域熱流束LHPに対しては、細孔径および濡れ性に階層性を持つマルチポーラス体の構築、ハイスピード顕微観察による多孔質体内に沸騰現象の解明が挑戦性の高い課題であり、パッシブ流動制御バルブに対しては、バルブ単体およびシステムとしての熱スイッチング機能の原理検証が課題であった。2023年度は、金属三次元積層技術によるマルチポーラス体の試作および基本特性評価を実施し、部分的に試作に成功したこと、飽和蒸気環境におけるハイスピード顕微観察装置を構築し、健全性確認を実施したこと、自律スイッチング熱流体システムの基本原理を再現した、手動開閉バルブを有するマルチエバポレータ型LHPにおいて吸熱と放熱の機能スイッチング実証に成功したことから、概ね順調に進展していると判断した。
2024年度は、1年目の成果を発展させ、金属三次元積層技術を用いたマルチポーラス体の空孔径分布の制御性の向上に取り組む。多孔質体の積層パラメータを変化させ、複数のサンプルについて特性を評価する。また、1年目のポーラス体製作条件を用いて、熱流動観察用小型サンプルを製作する。本サンプルは、異なる蒸気溝・伝熱面構造のものを複数評価することで、提案システムの実現において重要な「幅広い熱流束域において高い熱伝達特性を示すポーラス構造は何か?」という問いに対する答えを導く。さらに、大気環境下での自律熱スイッチング熱流体システムの検証を継続して進める。今年度は、手動バルブを感温式バルブへと変更し、システムとしての基本特性を取得する。ループヒートパイプの熱輸送量、動作温度、蒸発器・凝縮器の機能スイッチングにおける自律性を中心的に評価し、2025年度実施予定の宇宙模擬環境での有効性検証に備える。 -
研究課題/研究課題番号:22K18858 2022年6月 - 2024年3月
科学研究費助成事業 挑戦的研究(萌芽)
長野 方星, 渡邉 紀志
担当区分:研究代表者
配分額:6370000円 ( 直接経費:4900000円 、 間接経費:1470000円 )
これまで太陽熱入力により制約を受けていた宇宙機の熱設計において,太陽熱を積極的に利用する新たな熱制御方法を提案し,宇宙機熱設計の自由度を飛躍的に向上させることを提案する。具体的には,太陽熱を積極的に吸収し,得られる高温熱源から冷却熱源をパッシブ(電力を用いず,機械的要素もな)に作り出す冷却熱サイクルの原理を確立し,地上で実証することを研究目的とする。
本研究では,これまでに太陽熱入力により制約を受けていた宇宙機の熱設計において,太陽熱を積極的に吸収し得られる高温熱源から冷熱源をパッシブで(完全無電力)で作り出す新しい冷凍サイクルの原理を確立し,その物理モデルを独自に構築した.構築した物理モデルを基に地上で動作する冷凍機の試作機を設計・製作し,性能試験を実施することでモデルの妥当性確認を行った.検証を行った物理モデルを基に,地球の1/6程度の低重力環境である月面において太陽熱入射のみで駆動するパッシブ冷凍機の成立性を確認するとともに基礎設計に向けたデータを取得した.
太陽エネルギーは宇宙空間に存在する貴重なエネルギー源であるにもかかわらず,宇宙機熱設計においては排除すべき存在であるが,太陽光熱は有用なエネルギー資源であるので太陽光熱を積極利用した新しい熱制御概念が求められている.太陽熱を用いた直接冷却手法が創出され確立されれば,宇宙機の省エネルギー化,適用可能性の拡大につながるため,宇宙機熱制御工学の体系の変革,ならびに冷凍工学分野への新たな原理提案につながるため研究成果の学術的意義や社会意義は大きい. -
化学修飾ポーラス界面の熱流体物理解明に基づく新しい熱輸送機能発現
2020年4月 - 2023年3月
科学研究費補助金 基盤研究(B)
担当区分:研究代表者
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化学修飾ポーラス界面の熱流体物理解明に基づく新しい熱輸送機能発現
研究課題/研究課題番号:20H02085 2020年4月 - 2023年3月
科学研究費助成事業 基盤研究(B)
長野 方星, 岡 智絵美
担当区分:研究代表者
配分額:17940000円 ( 直接経費:13800000円 、 間接経費:4140000円 )
化学修飾を多孔体に施すことで濡れ性が大きく制御できることに着目し,溶液プロセスによる多孔体の内部まで親水化する手法を構築するとともに,これまで確立されていないナノスケールでの濡れ性・熱伝達性能を評価できる手法を新たに構築する。次に構築した手法を用いて化学修飾キャピラリーの濡れ特性制御メカニズムを実験的に明らかにすることで,化学的濡れ性が蒸発熱伝達に与える影響を明らかにする。さらに,多孔体への浸透圧効果を直接観察し,熱輸送機構への効果を実験的に検証することで,多孔体界面での蒸発熱伝達の理論限界を超える新たな熱輸送メカニズムの創出を目指す。
高性能な多孔体特性および相界面幾何学形状に基づいて多孔体を製作し,熱輸送デバイスに組み込むことでシステムとしての性能を明らかにした。熱輸送デバイスとしては薄型,小型,大型と異なるシステムに基づく最適条件を設定し,指針に基づくデバイス設計,製作を行った。また,新たな多孔体粒子配向制御方法として磁性ナノ粒子を鋳型とした一方向性多孔体製造方法を提案し,異なる樹脂および製造条件で複数の多孔体試作を行った。その結果,磁場の印加条件,磁性ナノ粒子鎖除去条件により多孔体特性が大きく異なることが明らかとなった。また,熱輸送デバイスとして好ましい特性が得られる多孔体製造条件を見出した。
電力を用いることなく熱輸送が可能なループヒートパイプは次世代の熱輸送技術として中毛されている。しかしながら動作原理となる多孔体表面での気液相変化過程は明らかになっておらず性能向上指針も明らかではなかった。本研究は多孔体表面での気液相変化過程の理解に基づく表面改質と幾何学形状最適化により性能向上を図ることに成功した。また,化学的手法による高度に一次元配向した多孔体の製作も試行し,その実現性も検証することができた。 -
宇宙環境下熱流動現象の理解に基づく機能的熱流体制御デバイスの創出
研究課題/研究課題番号:18H01630 2018年4月 - 2021年3月
科学研究費助成事業 基盤研究(B)
小川 博之, 長野 方星
担当区分:研究分担者
宇宙機のミッションの高度化,知能化を見据え,高い熱流束,小型軽量,大きな熱変動対応を満足するため,マルチエバポレータ型ループヒートパイプを主流とする熱流体制御ネットワークのコンセプトを提案し,蒸発器の高熱流束化,凝縮器の素過程理解による基礎学術的成果を元に高性能マルチエバポレータ型ループヒートパイプの構築ならびに宇宙模擬環境での高い熱輸送特性,自律熱制御機能の実証に成功した。
宇宙機ミッションの高度化,小型化に伴い熱制御要求が厳しくなりつつあり,従来のヒータとラジエータによる制御だけでは熱設計が成立しにくくなっていた。そのような状況に対して,本提案では自律機能を有する無電力熱輸送技術ならびにその知能的制御特性を実証できており,宇宙機熱制御の高度化に資する成果である。また本成果は宇宙環境のみならず民生機器の熱マネージメントにも応用できるため極めて意義が高い。 -
非連続繊維複合材のマルチスケール熱伝導分布測定法の開発と繊維配向同定法への展開
2016年4月 - 2019年3月
科学研究費補助金 基盤研究(B)
担当区分:研究代表者
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非連続繊維複合材のマルチスケール熱伝導分布測定法の開発と繊維配向同定法への展開
研究課題/研究課題番号:16H04591 2016年4月 - 2019年3月
長野 方星
担当区分:研究代表者
配分額:17420000円 ( 直接経費:13400000円 、 間接経費:4020000円 )
本研究により炭素系複合材料に内在する3 次元の熱伝導異方性分布を,マイクロおよびマクロスケールで高精度かつ迅速に測定できる手法を開発し,複合材料のマルチスケールでの熱伝導率異方性分布評価技術を確立した。また,本技術を非連続繊維型複合材料の繊維配向同定に活用し,従来にはない熱伝導率分布と繊維配向性分布を非接触で迅速に同定できる技術とその解析理論を構築した。
近年自動車などに応用が期待される熱硬化性炭素系複合材料は繊維の分散に偏りが生じうるため,その分布を非破壊で迅速に検知できる手法が求められている。本研究では独自の熱拡散率分布測定手法を確立し,本手法を複合材料の配向同定法に応用することで,従来の技術にはない非接触式配向同定法の創出に貢献した。 -
光交流式ヘテロダイン干渉法の提案と宇宙用超低熱歪材のナノスケール熱的寸法安定評価
研究課題/研究課題番号:16K14509 2016年4月 - 2018年3月
小川 博之
担当区分:研究分担者
高度な熱歪設計を達成するため,線膨張係数と熱拡散率を同時に計測する手法を新たに提案し,その実現性を検証した。光ヘテロダイン干渉法と周期加熱法を融合した新しい装置を新たに構築し,物性が既知の単結晶シリコンにより高精度線膨張係数測定の有効性を確認した。CFRPの線膨張係数の温度依存性を明らかにするとともに,アルミニウムの線膨張係数,熱拡散率の同時測定を行い,高い精度での測定を実証した。
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金属絶縁転移に伴う熱特性変化を応用した宇宙機多機能熱制御デバイスの創成
研究課題/研究課題番号:15F15378 2015年11月 - 2018年3月
科学研究費助成事業 特別研究員奨励費
長野 方星, PARK DAEIL
担当区分:研究代表者
配分額:2300000円 ( 直接経費:2300000円 )
宇宙機用のパッシブな熱制御デバイスとして、金属絶縁体相転移物質に着目し,その放射率可変機能、熱伝導率可変機能、蓄熱機能の三つの機能を有する多機能熱制御デバイスを一つの材料で実現することを最終目標として研究を行った。二酸化バナジウム(VO2),ペロブスカイト型マンガン酸化物(LSMO,LPMO)等を候補材料に選定し,試料の製作方法を確立するとともに,各種熱物性値を独自の熱物性計測装置で明らかにした。また,さらに高い熱伝導変化特性を付加するために,メソポーラス物質(SBA-15, Santa Babara Amorphous)を付加した試料の作製を行った。また,VO2の課題である高い相転移温度点を下げるため,タングステンをドープすることで相転移温度が20℃以下まで低下させることを試みた。最終的にはVWO2とLSMOの二層構造による多機能熱制御デバイスを考案し,熱伝導率可変機能と蓄熱機能はVWO2に,放射率可変機能は放射率変化が0.4以上有するLSMOに持たせる構成を提案した。
安定した特性を有するVWO2を製作方法を確立するため,放電プラズマ焼結法により,焼結温度,バインダーの配合量をパラメータとした試作を行った。次にX線回折,真密度測定,相転移温度計測により最適製作条件を同定し,VWO2バルク材料の製作に成功した。さらに熱伝導率,放射率,比熱を測定し,相転移温度11℃,蓄熱量11J/g,熱伝導率変化量4.85倍となる優れた特性を実現した。一方放射率測定においては,リード線からの熱損失等の影響で測定精度に課題が残った。
29年度が最終年度であるため、記入しない。
29年度が最終年度であるため、記入しない。 -
三次元熱伝導率・放射率分布同時計測法の開発と機能的複合材ラジエータ設計への応用
2011年4月 - 現在
科学研究費補助金 若手研究(A)
担当区分:研究代表者
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マルチセンシングプローブを用いた異方的熱電性能物性同時測定
2009年4月 - 2011年3月
科学研究費補助金 若手研究(B)
担当区分:研究代表者
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周期加熱環境下におけるスマート熱制御手法に関する研究
2008年4月 - 2011年3月
科学研究費補助金 基盤研究(C)
担当区分:研究分担者
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吸放熱スイッチング機能を有する宇宙自律熱制御ループシステムの研究
2006年9月 - 現在
科学研究費補助金
担当区分:研究代表者