科研費 - 野呂 篤史
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二層潤滑効果を発現する高分子境界膜の自己修復機能と選択的導電性の実現
研究課題/研究課題番号:24K00789 2024年4月 - 2027年3月
科学研究費助成事業 基盤研究(B)
伊藤 伸太郎, 八木 和行, 野呂 篤史
担当区分:研究分担者
電気自動車(EV)では,エンジンの替わりにモータ・インバータ・減速機が一体となった電気駆動ユニット(EDU)が心臓部となる.次世代型EDUでは,その内部の「エレクトロニクスの冷却」と「減速機の潤滑」の二つの役割を,油を主成分とする一種類の液体(EDUフルード)で担うことが要請されている.本研究ではEDUの潤滑における重点課題として,境界潤滑の低摩擦化と電気的腐食の抑制の両立に焦点を絞る.表面吸着性と電気特性を精密設計した高分子添加剤を独自開発して,自己修復が可能な高分子境界膜の界面ナノ構造の制御を実現し,二つの重点課題の解決を目指す.
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強酸性官能基を有した架橋ポリマーからなる無水高分子電解質膜の創製
研究課題/研究課題番号:21K05197 2021年4月 - 2024年3月
科学研究費助成事業 基盤研究(C)
野呂 篤史
担当区分:研究代表者
配分額:4030000円 ( 直接経費:3100000円 、 間接経費:930000円 )
強酸性官能基を有し、かつビニルポリマーをベースとした架橋ポリマーに対し、強酸を浸み込ませて新規無水高分子電解質膜を創製する。プロトン伝導率に関して、無加湿下の無水高分子電解質膜がナフィオン等の加湿系高分子電解質膜を凌駕(>0.1 S/cm)していることを確認する。最終的には無加湿下で高伝導率を示す無水高分子電解質膜作製のための有用な分子設計を提案する。
一般的に、高加湿で高伝導率を示す電解質膜は低加湿でも良好な伝導率を示し、加湿条件に関わらず高伝導率を示す電解質膜が求められている。電解質膜の伝導率は、電解質膜中の酸基密度と強い相関関係があるとされており、高密度に酸基を有する電解質膜開発に大きな関心が寄せられてきた。本研究では、比較的マイルドな合成法である脱保護法を用い、高スルホン酸基密度の架橋ポリ(4-スチレンスルホン酸)膜を合成した。この膜は80℃、90 %RHで0.93 S/cmと非常に高い伝導率を示した。ちなみにNafion 212膜は同条件で0.15 S/cmであった。
燃料電池は二酸化炭素を発生させずにクリーンに発電できるシステムで、重要な脱炭素技術の一つであり、すでに燃料電池自動車(FCV)や家庭用燃料電池コジェネレーションシステム(エネファーム)等に採用されており、本研究成果は、燃料電池の普及に資するものであり、今後行われる燃料電池関連研究に対し、重要な学術的示唆を与えるものである。 -
三成分共重合体型超分子複合体を用いた新規表面の創出と機能材料への応用
研究課題/研究課題番号:16H02292 2016年4月 - 2019年3月
科学研究費助成事業
松下 裕秀
担当区分:研究分担者
ブロック共重合体が作るミクロ相分離構造のうち、各成分が3次元周期を持って配列する三次元共連続構造に焦点を当て、新しい構造構築を進めた。高分子成分にはポリスチレン(S)、ポリイソプレン(I)、ポリ2ビニルピリジン(P)、ポリ4-トリメチルシリルスチレン(T) を用い、アニオン重合で試料のバルク構造を透過型電子顕微鏡とX線小角散乱を用いて観察した。SI 二元共重合体三様ブレンドから二相共連続二重ダイヤモンド構造を、ISP 三元共重合体二様ブレンドから三相共連続二重ダイヤモンド構造を各々作り出した。さらに、STIP 四元共重合体からT/I 界面をGyroid 曲面 とする構造を初めて創出した。
一般にブロック共重合体のミクロ相分離界面は、その曲率を一定にするか、あるいは変化を最小限にするように形成される。本研究では、熱力学的観点からは不利とされる構造を、長さが異なるブロック鎖を混合させる分子設計上の工夫から生み出したことに高い学術的意義がある。また、ダイヤモンド二重ネットワーク構造はフォトニック結晶などの光学材料に有用な構造であることが指摘される一方、Gyroid 曲面はメソスケールの機能表面として利用できる期待が高く、これらの観点から本研究の成果は社会的意義も非常に高い。 -
高伸縮性超分子エラストマーの創製:従来分子設計における盲点への着眼
研究課題/研究課題番号:15K13785 2015年4月 - 2017年3月
科学研究費助成事業 挑戦的萌芽研究
野呂 篤史
担当区分:研究代表者
配分額:3900000円 ( 直接経費:3000000円 、 間接経費:900000円 )
室温においてガラス状であるブロック鎖と非共有結合性官能基を有する溶融ブロック鎖からなるブロック共重合体から、高伸縮性を示し、かつ強靭である超分子エラストマー(非共有結合エラストマー)を調製した。 超分子エラストマーは、非共役結合性官能基を有さない従来型のブロック共重合体熱可塑性エラストマーよりも優れた力学特性を示した。溶融ブロックへの非共有結合性官能基の組込みは、高伸長性と強靭さを同時に示す超分子エラストマーを調製するのに有用であることが分かった。
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研究課題/研究課題番号:25248048 2013年4月 - 2016年3月
科学研究費助成事業 基盤研究(A)
松下 裕秀, 高野 敦志, 川口 大輔, 野呂 篤史
担当区分:研究分担者
ブロック共重合体分子の一次構造を反映させた分子デザインから新しい構造を創出した。Polyisoprene(I), Polystyrene(S), Poly(2-vinylpiridine)(P) を成分とした、線状ISP共重合体ブレンドから、1)断面が四角の正方充填柱状構造、2)5配位ドメインを持つ新規構造を得た。また、Poly(4-hydroxystyrene)-b -PMMA (HM)とP が短い ISP 星型ブロックのブレンドから、PとH 間の水素結合を利用してナノポーラス構造を得た。さらに、SP 二元共重合体にイオン液体を加える手法で特定の可視光を反射するフォトニック膜を創製した。
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研究課題/研究課題番号:25620172 2013年4月 - 2015年3月
科学研究費助成事業 挑戦的萌芽研究
野呂 篤史
担当区分:研究代表者
配分額:4030000円 ( 直接経費:3100000円 、 間接経費:930000円 )
疎水性成分-疎水性成分ペアのジブロック共重合体からでは作製の難しかった構造周期20nm以下の微細構造を、超強偏析系成分ペアのジブロック共重合体から実現した。成分ペアとしては、成分の元素組成が単に異なるだけではなく、化学的性質も大きく異なる撥水性成分-親水性成分(具体的にはポリペンタフルオロスチレン-ポリアクリル酸)ペアを用いた。このような成分系は超強偏析系として機能し、重合度の小さなブロック共重合体(具体的には全体重合度が40程度)でもナノ相分離構造を発現し、構造周期10nm以下の微細ナノ構造を作製することができた。
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高分子自己組織化と浸透圧膨潤を利用した超分子フォトニックゲルの創製
研究課題/研究課題番号:24685035 2012年4月 - 2015年3月
科学研究費助成事業 若手研究(A)
野呂 篤史
担当区分:研究代表者
配分額:25220000円 ( 直接経費:19400000円 、 間接経費:5820000円 )
不揮発性の物理ゲルである超分子イオンゲルの調製法を応用して、水素結合を駆動力としてプロトン受容性官能基(具体的にはピリジル基)を有するジブロック共重合体薄膜にプロトン性イオン液体を浸透させ、ブロック共重合体薄膜を膨潤させることで不揮発性の(超分子性)フォトニックゲル膜を作製した。フォトニックゲル膜の内部構造を電子顕微鏡、超小角X線散乱で観察し、フォトニック結晶特性(反射特性)も確認した。また混合イオン液体を用いることで、膨潤度を制御し、反射光波長も制御した。酸添加による反射特性制御、温度や電場による反射特性制御も実現した。
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研究課題/研究課題番号:23655213 2011年 - 2012年
科学研究費助成事業 挑戦的萌芽研究
野呂 篤史
担当区分:研究代表者
配分額:4160000円 ( 直接経費:3200000円 、 間接経費:960000円 )
メタマテリアル創製への道筋を示すための実験を行った。 ポリスチレン-ポリビニルピリジンブロック共重合体と水酸基で被覆された半導体ナノ粒子とを混合することにより均一なナノハイブリッドを調製した。また同様のブロック共重合体と金属塩とからなる均一なナノハイブリッドを調製し、水浸漬による金属塩の選択除去によってナノポーラス薄膜を作製し、空孔再修飾も行った。さらに高圧下での可逆的付加開裂連鎖移動重合により高分子量ブロック共重合体を合成し、可視光を反射するフォトニック膜を得た。
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ABC3成分共重合体のジャイロイド構造とナノポーラス/ハイブリッド物質の設計
研究課題/研究課題番号:22245038 2010年 - 2012年
科学研究費助成事業 基盤研究(A)
松下 裕秀, 高野 敦志, 川口 大輔, 野呂 篤史
担当区分:研究分担者
ポリ(イソプレン-スチレン-2-ビニルピリジン)(ISP)とポリ(4-ヒドロキシスチレン)(H) から、水素結合を介して3相からなる二重ジャイロイド構造を構築し、酢酸処理により水素結合を解離させて H 成分を除去する手法でナノポーラスネットワーク構造を得た。また、ポリ(スチレン-4-ビニルピリジン)(S4P) の 4P ブロックに塩化鉄を配位結合させたハイブリッドから周期構造を作ったのち、試料の超薄切片を水に浸漬する方法でシリンダー状のナノポーラス構造とした。同じポリマー種からなる共重合体に対して、表面を有機物で被覆した半導体ナノ粒子を作用させ、ミクロドメイン中に半導体ナノ粒子を規則配列させた。更に、表面処理した金ナノ粒子に2種類の高分子鎖をグラフトし、このハイブリッド物質から相分離界面に金ナノ粒子が規則配列した周期構造を構築した。
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熱応答性超分子イオンゲルの調製と構造色スイッチング機能の発現
研究課題/研究課題番号:21750217 2009年 - 2010年
科学研究費助成事業 若手研究(B)
野呂 篤史
担当区分:研究代表者
配分額:4680000円 ( 直接経費:3600000円 、 間接経費:1080000円 )
両末端官能性高分子と多官能性高分子(擬似架橋剤)とをイオン液体中で混合することにより水素結合性超分子イオンゲルを調製した。擬似架橋剤の濃度を濃くしていくと、ある濃度でゲル化した。水素結合性官能基化学両論比がつり合うとき、最も応答性のよい熱可逆性超分子イオンゲルが得られた。さらに擬似架橋剤の官能基数を増やしていくと、擬似架橋剤濃度が等しいにも関わらずゲル化温度が上昇した。溶媒のない環境下での水素結合性超分子ポリマーゲル作製も試み、これを実現した。
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超分子型複合高分子の階層的秩序構造とマクロ相分離ダイナミクス
研究課題/研究課題番号:18068008 2006年 - 2010年
科学研究費助成事業 特定領域研究
松下 裕秀, 高野 敦志, 川口 大輔, 野呂 篤史
担当区分:研究分担者
水素結合・イオン結合・配位結合等の非共有結合を用いて異種高分子を結合させ、超分子型の種々の複合高分子を構築した。ブロック共重合体/ホモポリマー、ブロック共重合体/金属塩では、系統的なモルフォロジー転移が見られ、ブロック共重合体/ブロック共重合体ブレンドでは階層的な周期構造を呈した。また、水素結合で繋いだ共重合体は、温度の上げ下げで水素結合のオン-オフが見られ、ドラスティックかつ可逆的な構造変化が実現した。さらに、ガラス転移温度が低い二つの高分子を水素結合でつないで疑似網目を作る手法で、超分子型ゲルネットワークを構築した。
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研究課題/研究課題番号:17651066 2005年 - 2006年
科学研究費助成事業 萌芽研究
松下 裕秀, 野呂 篤史, 高野 敦志, 松下 裕秀
担当区分:研究代表者
配分額:2000000円 ( 直接経費:2000000円 )
異種ポリマーの末端を非共有結合で結びつけると、共有結合で結び付けられた「ブロック共重合体」には見られない、外場環境に依存した「可逆的会合解離可能」な新たな分子構築ができると考えられる。我々はこの分子構築の結果できる分子集合体を「ブロック型超分子」と名づけ、このコンセプトを実現すべく実験を行った。具体的には2種類のポリマー末端を水素結合でつなぎ合わせることによって「ブロック型超分子」の調製を目指した。
まず前年度に開発した「ヌクレオチド末端を有するポリマー合成法(Biomacromolecules 2005,6,2328-2333.)」をヒドロキシル基末端ポリマーに適用し、2種類の相補的オリゴヌクレオチド末端ポリマーを合成した。具体的には末端に3つのチミジンユニットを持ったポリ(4-トリメチルシリルスチレン)(PTMSS-T3)と末端に3つのデオキシアデノシンユニットを持ったポリスチレン(PS-A3)を合成した。末端導入率は^1H NMRで決定し、ほぼ定量的に導入されていることを確認した。これらのポリマーを1:1でブレンドして溶液中での挙動を^1H NMRを用いて観察したところ、2つのポリマー末端間で水素結合が生じていることを示すイミドプロトンピークの低磁場シフトが観測できた。一方、溶媒キャストフィルムの電子顕微鏡観察によって、ラメラ状のナノ相分離構造が確認できた。またX線測定でもナノ相分離構造形成に由来する回折ピークが見られた。ゆえにバルクにおいてブロック型超分子を形成させることに成功した。
さらに上記のブレンドに水素結合阻害分子(低分子量)を投与したところ、溶液中の^1H NMR測定においてイミドプロトンピークが高磁場側へシフトし、水素結合の阻害が確認された。バルクにおいてもX線散乱によってナノ相分離構造の消失が確認されたことから、阻害分子を加えることでブロック型超分子の形成を阻害できることが分かった。これらの成果をまとめて論文・学会(高分子学会、アメリカ化学会)で発表した。