科研費 - 加藤 剛志
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空間対称性の破れの制御によるスピン軌道トルクの増強と3次元メモリへの展開
研究課題/研究課題番号:20H02182 2020年4月 - 2023年3月
科学研究費助成事業 基盤研究(B)
加藤 剛志, 大島 大輝
担当区分:研究代表者 資金種別:競争的資金
配分額:17810000円 ( 直接経費:13700000円 、 間接経費:4110000円 )
スピン軌道トルク(SOT)磁化反転は磁性層に隣接する非磁性層に電流を流すことで磁化反転を行なうもので,既存のスピン移行トルク(STT)磁化反転に比べ1/5程度の消費電力で10倍高速に磁化反転ができると考えら,今後のSociety 5.0を支える大容量磁気ランダムアクセスメモリ(MRAM)への応用研究が進められている.本研究は磁性材料に空間反転対称性の破れを人工的に導入することで,SOT磁化反転の高効率化を図るとともに,これを利用した3次元メモリの原理実証を行なう.
本研究では人工的に空間反転対称性を破ったGd/FeCo多層膜,Tb/Gd/FeCo多層膜の構造非対称性とSOT磁化反転臨界電流密度の相関を調べた.膜厚方向に層厚勾配を設けたGd/FeCo多層膜において,サンプルばらつきは見られるものの,層厚勾配を大きくすることでSOT磁化反転の臨界電流密度が低減する傾向が得られた.Tb/Gd/FeCo多層膜において,Tb層厚を増加により実効垂直磁気異方性が増大するにもかかわらず,SOT磁化反転の臨界電流密度が低減するという結果が得られた.Tb層厚増加により膜厚方向の構造非対称性が増加したことが原因である可能性がある.
スピン軌道トルク(Spin orbit torque: SOT)は,Society 5.0を支える大容量磁気ランダムアクセスメモリ(MRAM)の新規磁化反転手法として期待されているが,磁化反転の臨界電流密度の低減が求められている.本研究ではメモリの機能を果たす磁性膜に膜厚方向の空間反転対称性の破れを人工的に導入し,この空間対称性の破れがスピン軌道トルク磁化反転の臨界電流密度を低減する可能性があることを示した.磁性膜の空間反転対称性の破れとスピン軌道トルクとの相関は未解明な部分も多く,今後も継続的に研究を進め,MRAMの飛躍的高密度化,低消費電力化を可能とする技術を探求する必要がある. -
skyrmionダイナミクスを利用した新規多値メモリ素子の提案
研究課題/研究課題番号:17K19068 2017年6月 - 2019年3月
挑戦的研究(萌芽)
岡本 聡
担当区分:研究分担者
本研究では、トポロジカルスピン構造の一つであるskyrmionを利用した新規多値メモリ素子の提案を行うことを目的に研究を行った。まずシミュレーションをベースにskyrimionが安定に生成されるための条件を決定し、その条件の下で磁気ディスクへのマイクロ波を使ったskyrimionの生成・消去手法が可能であることを実証した。次にGdFeCoアモルファス合金薄膜用いた素子を作製し、マイクロ波に対する磁化応答を検出する実験を行った。実験的にskyrimionを確認するには至らなかったものの、マイクロ波による磁化反転など基本動作原理の実証は確認することができた。
skyrmionは近年、大きな注目を集めているトポロジカルスピン構造の一つであり、これを基にした新規多値メモリの原理実証を行った。シミュレーションによって、skyrmionのマイクロ波に対する挙動を計算した結果、磁気ディスク内にskyrmionの生成・消去が可能であることを示すことができた。さらに実験により、マイクロ波応答に対する基本動作原理の確認をすることができた。 -
超短パルス光励起スピン流による電流レス磁化反転
研究課題/研究課題番号:17K18878 2017年6月 - 2019年3月
挑戦的研究(萌芽)
加藤 剛志
担当区分:研究代表者
配分額:6370000円 ( 直接経費:4900000円 、 間接経費:1470000円 )
本研究では超短パルス光によるスピン流生成と磁化反転を観測するために以下の2つの実験:1) 3d遷移金属(Fe)を用いたAu層へのスピン流注入,2) RE-TMであるGdFeCoにスピン流を流入した際の磁化反転を行った.Fe / Au系のダンピング定数のFe層厚依存性からAuがスピン流伝送層として有用であることを確認した.また,GdFeCoへスピン流を注入した際に磁化が感じる等価磁場はGdFeCoの補償組成付近で大きくなること,スピン流はFeCoにトルクを及ぼすことが明らかになった.
本研究は超短パルス光誘起スピン流による磁化反転に挑戦するものであり,これまで電流のみで可能であったスピン流磁化反転が光を用いても可能であることを示す萌芽的な研究である.今回,Auという材料がスピン流伝送に有用な材料であること,希土類-遷移金属合金であるGdFeCoでは補償組成付近でスピン流による磁化反転が容易に行えることが分かった.今後,これらを組み合わせ,ポンプ光照射によるGdFeCo膜のスピン流磁化反転が可能となると考えられる. -
巨大スピンホール効果を利用した微小領域の磁化制御とGMR磁気センサへの応用
研究課題/研究課題番号:17H03249 2017年4月 - 2020年3月
岩田 聡
担当区分:研究分担者
巨大磁気抵抗効果と磁歪の逆効果を利用した歪みセンサの開発を行なった。高感度かつ環境磁界による影響のない歪みセンサを実現するためには,磁化自由層の磁化方向を交流的に変調して,外部磁界の影響を取り除くことが有効であることを明らかにした。次に電力消費を低減するために,スピンホール効果を利用して磁化方向を制御する素子の開発を行なった。センサ素子は,スピンホール効果を発現するTa/FeCo,スピンバルブ膜および,両者を交換結合する反強磁性NiO層から成る構造とした。スピンホール効果によるスピン流により磁化自由層の磁化反転が観測され,スピンホール効果による磁化自由層の磁化方向制御の可能性が示された。
本研究で開発を進めた歪みセンサは,マイクロサイズに微細化できることから,これをアレイ状に配列した触覚センサへの応用が考えられる。ロボットの指先の繊細な感覚をフィードバックすることを可能とする触覚センサは,介護ロボットなどにおいて求められている機能である。 -
電界によるスピンダイナミクス制御と電界アシストスピン流磁化反転の開発
研究課題/研究課題番号:16H04328 2016年4月 - 2019年3月
加藤 剛志
担当区分:研究代表者
配分額:16770000円 ( 直接経費:12900000円 、 間接経費:3870000円 )
本研究では磁気ランダムアクセスメモリの新たな磁化反転手法として研究が進んでいるスピンホール効果を用いた磁化反転において,CoやFe超薄膜にHfO2/MgO絶縁層を介して電界を印加し,超薄膜のスピンホール磁化反転の電界印加効果を調べた.また,電界印加時,スピン流注入時のスピンダイナミクスを調べた.Co超薄膜の保磁力は電界によって43 %/(V/m),スピンホール磁化反転の臨界電流密度は20 %/(V/m)と大きな値が得られることを確認した.保磁力やスピンホール磁化反転の臨界電流密度の電界効果は絶縁層の成膜条件に大きく依存することが確認された.
スピンホール磁化反転は磁気ランダムアクセスメモリの高密度化,高速化に有効な次世代の磁化反転技術として期待されているが,磁化反転の臨界電流密度の低減が求められている.本研究では電界という電力消費の少ない方法でこの臨界電流密度が大きく変調されることを示し,基礎,応用両面において重要な成果が得られたと考えられる.また,この臨界電流密度の変調は絶縁層の成膜条件に大きく依存することも明らかになり,今後,成膜条件の最適化により更に大きな電界効果が得られることが期待される成果も得られた. -
電界による磁気スイッチングと超低電力メモリデバイスへの展開
2012年4月 - 2014年3月
科学研究費補助金
加藤剛志
担当区分:研究代表者
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磁性流体を利用した柔らかいエネルギーデバイスの開発
2011年4月 - 2013年3月
科学研究費補助金
岩田聡
担当区分:研究分担者
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ナノ磁区構造を利用した磁気トラップ型光触媒デバイス
2009年4月 - 2010年3月
科学研究費補助金
岩田聡
担当区分:研究分担者
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スピントンネル効果を利用した集積化磁気センサーの研究
2005年4月 - 2008年3月
科学研究費補助金 基盤研究(B)(2)
岩田 聡
担当区分:研究分担者
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フェリ磁性体を用いた熱アシストスピン注入磁化反転
2005年4月 - 2007年3月
科学研究費補助金 若手研究(B),課題番号:17760251
加藤 剛志
担当区分:研究代表者
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スピン注入固体磁気メモリの研究
2004年4月 - 2007年3月
科学研究費補助金 基盤研究(A)(2)
綱島 滋
担当区分:研究分担者
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トンネル障壁を利用したスピントランジスタの研究
2002年4月 - 2005年3月
科学研究費補助金 基盤研究(A)(2)
岩田 聡
担当区分:研究分担者
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微細加工した交換結合二層膜の磁区構造と磁化過程
2002年4月 - 2004年3月
科学研究費補助金 若手研究(A),課題番号:14702034
加藤 剛志
担当区分:研究代表者
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低磁界で書き込み可能な固体磁気メモリの試作
2001年4月 - 2004年3月
科学研究費補助金 基盤研究(B)(2)
綱島 滋
担当区分:研究分担者
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積層フェリ磁性膜の微細加工と高密度記憶素子への応用
2001年4月 - 2003年3月
科学研究費補助金 基盤研究(B)(2)
綱島 滋
担当区分:研究分担者
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強磁性/反強磁性界面のナノ領域のスピン構造とその制御
2000年4月 - 2002年3月
科学研究費補助金 基盤研究(B)(2)
岩田 聡
担当区分:研究分担者
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二重トンネル障壁におけるスピン偏極電子の輸送現象
1999年4月 - 2001年3月
科学研究費補助金 基盤研究(B)(2)
綱島 滋
担当区分:研究分担者
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MBE成長したNiFe/MnPtエピタキシャル膜の交換結合
1999年4月 - 2001年3月
科学研究費補助金 奨励研究(A),課題番号:11750259
加藤 剛志
担当区分:研究代表者
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スピンバルブ探針を用いることによってスピン偏極トンネル電流の検出は可能か
1999年4月 - 2001年3月
科学研究費補助金 萌芽的研究
岩田 聡
担当区分:研究分担者