科研費 - 湯川 宏
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プロチウム障壁成長コントロール因子の解明で実現する高耐久集合組織制御型水素分離膜
研究課題/研究課題番号:21H01658 2021年4月 - 2024年3月
科学研究費助成事業 基盤研究(B)
南部智憲, 戸高義一, 湯川 宏, 松本 佳久, 小俣 香織
担当区分:研究分担者
5族金属ベースの水素分離膜は高温で長時間の運転時において,水素透過能や耐久性の低下への懸念がある。また研究代表者らは近年,延性-脆性遷移固溶水素濃度(DBTC)が存在する一方で,巨大ひずみ付与加工により水素透過能は飛躍的に向上し,DBTCも高水素濃度側に移動することを発見した。
本研究では「DBTCの発現機構」を解明し,高圧アロトロピー組織制御によって結晶粒を超微細化したバナジウム等の5族金属の水素透過能と耐久性向上に有効な結晶粒界(GB)構造を見出して,マリアージュ(調和による効果)によって化合物相を形成しない温和な運転条件下で作動可能な革新的GB構造を有する水素分離膜の創製を目指している。
本研究はバナジウムなど5族金属のDBTCの発現メカニズムを解明するとともに,水素透過能と耐久性向上に有効な結晶および粒界(GB)構造を見出して,マリアージュ(調和効果)によって温和な運転条件下で作動可能な膜の微細組織・構造を得ることである。当該年度の実績は以下の通りである。
水素の空間配置の解析については,J-PARC/MLFの中性子高強度全散乱装置(NOVA)の試料ホルダーの耐熱・耐水素圧力性の改善をさらに進め,300℃で400kPa以上の耐熱・耐圧を担保した加熱ホルダーが完成し,機器安全審査を受審して実験に可能な状態となった。しかしながら,新型コロナウイルス感染予防の対応にて出張制限があり,加えてJ-PARC/MLFの運転再開の延期も重なり,中性子散乱測定は翌年度実施となった。一方で評価対象試料で比較材のタンタルについては熱処理条件を再検討し,加工歪や欠陥の影響を低減した上で,水素圧力-水素濃度-温度(PCT)測定装置を用いた水素化速度試験を実施し,平衡水素圧力条件も見出した。
水素ガス透過の可視化と結晶粒組織解析については,NIMSで先ず純バナジウム板の構造解析を行った。EBSD解析の結果,1μm以下の微結晶であることから水素透過測定に適した試料とするための熱処理を行い,結晶粒サイズを試料厚(100μm)以上とした。薄板が破壊されない圧力領域で水素透過測定を行ったところ,これまで計測の最適化を行ってきたステンレス鋼と比べて水素の拡散が速い反面,透過量は少なく,計測パラメータの再調整が必要であることが分かった。
バナジウムへの巨大ひずみ付与では200nm~500nmの結晶粒サイズへの微細化が可能なこと,これら試料の水素透過係数がバージン材に比べて2.2~3.3倍の高い値を示すことを明らかにした。また,水素溶解度は焼鈍し試料と大きな差異が無いことをPCT測定で確認した。
新型コロナウイルス感染拡大防止に関する所属研究機関の対応について,国内移動制限が発出され,NIMSのオペランド水素顕微鏡用いた可視化実験については出張が出来ず,代表者の直接的な観察実験は叶わなかった。しかし研究協力者による予備観察実験が遂行でき,観察プロセスは年度内にて確立されたため,この判断とした。中性子散乱測定ではメンテナンス期間が延長され,割り当てられたビームタイム期間でのJ-PARC/MLFへの出張による中性子散乱測定にも支障が出たが,次年度当初に再度ビームタイムが割り当てられており,大きな支障は無いと考える。
このように当初予定していた当該年度の研究計画において,全体的には僅かに遅れ気味ではあるが,総合的には目標達成に向けて努力しており概ね順調に遂行出来ている。その具体的根拠は,下記の通りである。
①評価対象試料のバナジウムと比較材のタンタルについては,熱処理条件を再検討し,加工歪や欠陥の影響を低減した上で,水素圧力-水素濃度-温度(PCT)測定装置を用いた水素化速度試験を実施し,平衡水素圧力条件も見出した。②水素ガス透過の可視化と結晶粒組織解析については,NIMSで先ず純バナジウム板の構造解析を行った。EBSD解析を行ったところ,1μm以下の微結晶であったため,水素透過測定に適した試料とするための熱処理を行い,結晶粒サイズを試料厚(100μm)以上とした。薄板が破壊されない圧力領域で水素透過測定を行ったところ,計測の最適化を行ってきたステンレス鋼と比べて拡散が速い反面,透過量が少なく,計測パラメータの再調整が必要であることが分かった。
コロナ禍の当該年度ではあったが,総合的には事業期間全体(3年間)の2/3を経過した段階で,研究実施計画(全体)に対して,その進捗率が総合的に60%程度であると考えているため,上記の進捗状況(達成度)の区分とした。
本研究課題は当初の計画通り研究代表者が主体的かつ総括して遂行することにしているが,最終年度についても引き続き,研究分担者の名古屋大学湯川助教,鈴鹿高専南部教授および高エネルギー加速器研究機構池田特別准教授の協力を得て共同で実施することになっており,各研究機関の特徴や課題解決に向けた得意分野をそれぞれの研究者が発揮することで,この研究をさらに進め最終到達目標に向かって進めていく予定である。
代表者は分担者,協力者らと常に相互訪問による情報交換を行っており,本研究に関しても連絡調整は十分に行えている状況であるので,これを今後も有機的に活用したい。協力者の豊橋技術科学大学の戸高教授は巨大ひずみ加工を各種金属材料に施してその特異な
現象を発見していることに加えて,学術的裏付けをも検討するこの分野の第一人者であり,引き続き超微細粒組織制御に関する多方面からの協力を頂くことの了解を得ている。巨大ひずみ加工についてはユニークなひずみ付与方法を有する材料加工を得意とする企業の協力も得られることになっている。また,物質・材料研究機構の板倉リーダーはオペランド水素顕微鏡による薄膜透過水素の可視化についての第一人者であるが,本研究課題の遂行に向けての連携拠点推進制度を活用した研究プロジェクトを令和3年度にも計画して頂いた。このように,本研究課題の目標達成に向けて,当該年度もあらゆる手段を講じて研究を進める。 -
B2型金属間化合物における水素固溶体の科学と低温作動型水素透過合金への展開
研究課題/研究課題番号:19H02454 2019年4月 - 2022年3月
科学研究費助成事業 基盤研究(B)
湯川 宏, 南部 智憲, 荒木 秀樹, 浅野 耕太, 松本 佳久, 髭本 亘
担当区分:研究代表者
配分額:17680000円 ( 直接経費:13600000円 、 間接経費:4080000円 )
本研究では、種々のB2型金属間化合物の水素固溶領域における水素溶解特性、水素拡散性、水素透過能、水素占有状態、機械的性質などの基礎的物性を定量評価しそれらを体系化する。Pd-Cu合金の低温域における水素透過能の特異な変化の発現機構を明らかにするとともに、B2構造ならではの特性を理解し水素透過合金としてのポテンシャルを明らかにする。
一連の研究により得られる知見に基づいて、B2型金属間化合物による低温作動型水素透過合金の開発指針を得る。
本研究では、B2型金属間化合物の低温作動型水素透過膜としてのポテンシャルを明らかにし、得られた知見に基づいて低温作動型水素透過合金の開発指針を得ることを目的に研究を行なった。
PdCu合金の水素透過能に及ぼす過剰Cuの影響を調査し、200℃程度の低温域で高い水素透過能を示す合金を見いだした。過剰Cuは水素の溶解と拡散に影響を及ぼすものの、室温域では空孔など過剰Cu以外の水素トラップ作用により水素透過能が大きく低下することを明らかにした。
代表的な水素透過金属膜としてPd-Cu合金、Pd-Ag合金が知られているが、いずれも400℃以上の高温で使用することを前提としていた。本研究では、Pd-Cu合金の組成を検討し、200℃程度の低温域で従来のPd-Cu合金よりも高い水素透過能を示す合金を見いだした。これにより、よりエネルギー効率の高い水素分離・精製を実現し、将来の水素社会に大きく貢献すると考えられる。また、本研究では非Pd系のB2型金属間化合物について検討を行なった。これらの成果は、ロシアなど限られた産地に依存する希少で高価なPdからの脱却に向けた第1歩であると言える。 -
アロトロピー組織制御とDBTC機構解明のマリアージュで実現する革新的水素分離膜
研究課題/研究課題番号:19H02467 2019年4月 - 2022年3月
科学研究費助成事業 基盤研究(B)
松本 佳久, 湯川 宏, 南部 智憲, 池田 一貴
担当区分:研究分担者
5族金属ベースの水素分離膜は高温で長時間の運転時において,水素透過能や耐久性の低下への懸念がある。また研究代表者らは近年,延性-脆性遷移固溶水素濃度(DBTC)が存在する一方で,巨大ひずみ付与加工により水素透過能は飛躍的に向上し,DBTCも高水素濃度側に移動することを発見した。
本研究では「DBTCの発現機構」を解明し,高圧アロトロピー組織制御によって結晶粒を超微細化したバナジウム等の5族金属の水素透過能と耐久性向上に有効な結晶粒界(GB)構造を見出して,マリアージュ(調和による効果)によって化合物相を形成しない温和な運転条件下で作動可能な革新的GB構造を有する水素分離膜の創製を目指している。
DBTC機構の解明と水素透過能および耐久性の向上に有効な組織や粒界構造を見出すことを目指して研究を展開した。J-PARC/MLFに設置のNOVAを使ってバナジウムやタンタル中の水素の空間配置について,DBTCとの関係を調べた。また水素透過流束の向上に寄与する微細組織状態を把握するため,膜透過した水素の可視化も検討した。
その結果,巨大ひずみ付与法によるbcc-Vの微細組織において,水素透過能についての結晶粒径や粒界面積の感受性は大きくないことを示した。結晶組織は高密度に導入された転位と低角度転位粒界,一般粒界,特殊粒界によって構成されており,これらが複合的に作用して水素拡散に影響を与えていた。
水素が固溶原子として金属中に存在する場合,変形や破壊の様相が変化するため,DBTCの発現機構解明に向けての知見が得られたことの意義は大きい。また結晶粒界は水素のトラップサイトである一方で高速拡散経路としても働く可能性があり,未だに統一した見解は得られていなかったが本研究の遂行によりその理解が進んだ。
本研究はVなどの5族金属水素分離膜の高機能化と機械的性質の飛躍的改善を狙ったものである。即ち世界をリードする我が国の将来の水素製造・精製技術の進展に画期的なブレークスルーをもたらす材料開発であり,本研究の成果は燃料電池を基盤とした水素エネルギー社会構築に向けた工業技術として即座に展開可能である。 -
チタンと鉄の中の合金元素近傍の局所格子歪解析とマルテンサイト変態への格子歪の影響
研究課題/研究課題番号:19K04991 2019年4月 - 2022年3月
科学研究費助成事業 基盤研究(C)
森永 正彦, 吉野 正人, 湯川 宏
担当区分:研究分担者
金属中に原子サイズの違う合金元素が入ると、合金元素近傍の母金属格子に局所歪が導入される。この格子歪エネルギーの大きさは、熱エネルギーに匹敵する。従って、局所格子歪は、温度とともに変化する多くの合金の性質(例:強度、相安定性)に影響を及ぼす。それ故、局所格子歪の大きさを求めて、合金の性質との関係を調べることは重要である。
本研究では、チタン合金と鉄合金中の局所格子歪の大きさを、最新の計算方法を用いて初めて決定する。格子歪の成り立ちについて基本的な考え方を創出するとともに、両合金に現れるマルテンサイト変態の開始温度と局所格子歪の関係を調べ、合金設計の新しい指針を導出する。
金属中に原子サイズの違う合金元素(M)が入ると、合金元素近傍の母金属格子に局所歪が導入されることは昔からよく知られている。本研究は、2元系のチタン合金と鉄合金の中のM近傍の局所格子歪の大きさを、擬ポテンシャル法を用いて初めて計算している。
計算された局所格子歪の大きさは、Mや結晶構造とともに大きく変化する。チタン合金と鉄合金のマルテンサイト開始温度(Ms)は、Mの周りに生じる局所格子歪と相関があり、局所格子歪は、これら両合金のマルテンサイト変態の進行を抑えるように働いている。
合金中の種々の合金元素近傍の局所格子歪の大きさを系統的に決定した最初の学術研究である。また、マルテンサイト変態は金属材料学の中核をなす変態であり、本研究成果は、実用上も重要な鉄合金やチタン合金の設計と開発を行う上で重要な知見を与える。 -
水素透過金属膜における新パラダイムの構築と低温作動型合金膜の最適設計への展開
2015年4月 - 2018年3月
科学研究費補助金 基盤研究(B)
湯川 宏
担当区分:研究代表者
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バナジウム系水素透過合金膜の機能活用による革新的アンモニア合成法の創成
2015年4月 - 2017年3月
科学研究費補助金
湯川 宏
担当区分:研究代表者
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高圧アロトロピー組織制御による水素分離膜の創製と低温作動シナジー合金膜への応用
2015年4月 - 2018年3月
科学研究費補助金 基盤研究(B)
松本 佳久
担当区分:研究分担者
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金属化合物の化学結合のエネルギー表現と水素貯蔵化合物の量子設計への応用
2013年4月 - 2015年3月
科学研究費補助金 基盤研究(C)
森永正彦
担当区分:研究分担者
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高純度水素精製用5族金属系合金膜の機能設計-耐水素脆性と水素透過能の向上にむけて
2012年4月 - 2015年3月
科学研究費補助金 基盤研究(C)
湯川宏
担当区分:研究代表者
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水素分離膜のコンビナトリアル高温耐久性評価法の構築と固溶水素脆性遷移機構の解明
2012年4月 - 2015年3月
科学研究費補助金 基盤研究(C)
松本佳久
担当区分:研究分担者
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長期耐久性能を向上させるパラジウム系水素透過合金膜の機能設計
2011年4月 - 2014年3月
科学研究費補助金 基盤研究(C)
南部智憲
担当区分:研究分担者
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化学結合のエネルギー表現に基づく鉄鋼の水素脆化機構の解明と量子合金設計への展開
2010年4月 - 2013年3月
科学研究費補助金 基盤研究(C)
森永正彦
担当区分:研究分担者
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錯体水素化物でのリチウム超イオン伝導-その機構解明と新材料創製
2009年4月 - 2012年3月
科学研究費補助金 基盤研究(A)
折茂慎一
担当区分:研究分担者
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金属水素分離膜のAEウェーブレット解析による構造ヘルスモニタリングと脆化機構解明
2009年4月 - 2012年3月
科学研究費補助金 基板研究(C)
松本佳久
担当区分:研究分担者
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Nb-W系水素透過膜合金の機能設計 -長期間水素透過における耐久性向上にむけて-
2008年4月 - 2011年3月
科学研究費補助金 基板研究(C)
南部 智憲
担当区分:研究分担者
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金属酸化物の化学結合のエネルギースケールでの表現と量子材料設計への展開
2008年4月 - 2010年3月
科学研究費補助金
担当区分:研究分担者
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5A族金属系水素分離膜合金の機能設計 -高い水素透過能と耐水素脆性の両立-
2007年4月 - 2010年3月
科学研究費補助金 基盤研究(B)
湯川 宏
担当区分:研究代表者
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金属系水素分離膜のハイブリッドその場膜強度評価法の開発と固溶水素脆化機構の解明
2007年4月 - 2009年3月
科学研究費補助金 基板研究(C)
松本佳久
担当区分:研究分担者
水素透過その場で膜試料の強度を評価する方法の開発を行う。本研究における5A族金属系水素分離膜の機械的性質の評価方法を確立するための要素技術の開発研究
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B-H系錯体水素化物の機能設計マップ -基礎物性からエネルギー関連機能への展開-
2006年4月 - 2009年3月
科学研究費補助金 基盤研究(A)
担当区分:研究分担者
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アルミニウムとエルビウムを共添加した二酸化チタンからの異常発光現象
2006年4月 - 2008年3月
科学研究費補助金
森永正彦
担当区分:研究分担者
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電子密度分布に基づく水素貯蔵材料の統一的理解と量子材料設計
2005年4月 - 2010年3月
科学研究費補助金 基盤研究(S)
森永正彦
担当区分:研究分担者
原子間の凝集機構の新しい表現法を開拓し、水素関連材料の材料設計のための知見を得ることを目的に計画。これまでに、水素貯蔵材料の電子密度分布の解析を行い、原子間の化学結合の普遍的な関係があることを見出した。また、ペロブスカイト型水素化物MMgH3(M=Na, K, Rb)を合成し、その脱水素化反応を明らかにした。さらに、エネルギー密度解析により、水素化物中の水素の原子化エネルギーを求め、原子間の化学結合を定量的に評価している。
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金属化合物の電子密度分布からみた化学結合の成り立ちと凝集機構の新しい表現
2002年4月 - 2005年3月
科学研究費補助金 基盤研究(A)
担当区分:研究分担者
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限界電流法による新しい水素透過能センシングデバイスの開発と5A属金属膜の特性評価
2002年4月 - 2004年3月
科学研究費補助金
湯川 宏
担当区分:研究代表者
水素透過膜合金の基本特性である水素透過能を、直接かつ高精度に測定するための新しい水素透過能センシングデバイスの開発を行った。本装置は、Na-OHとK-OHの溶融塩電解質と水素透過膜の電極からなる電気化学セルで構成されている。純PdおよびV-Ni合金の水素透過能測定を行い、その有用性を確認するとともに、種々の4d遷移金属元素を添加したNb-M二元系合金について水素透過能の測定を系統的に行い、Nbの水素透過能に及ぼす合金元素の影響を明らかにした。
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軽元素修飾による局在量子構造と材料設計
2000年4月 - 2005年3月
科学研究費補助金 特定領域研究
担当区分:研究分担者
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分子軌道法による水素吸蔵合金の水素占有サイトの解析とそれに基づく合理的材料設計
2000年4月 - 2002年3月
科学研究費補助金 奨励研究(A)
湯川 宏
担当区分:研究代表者
水素吸蔵合金中の水素の占有状態を明らかにするために、種々の水素吸蔵合金中の水素の電子状態を計算した。一連の計算により、既存の水素吸蔵合金には、原子間の結合次数の比と化学組成の間に関係があることが明らかになった。さらに、低水素圧PCT装置を開発し5A族金属であるBCC型バナジウム系合金の水素化特性に及ぼす合金効果を系統的に調べた。
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電子論による水素吸蔵合金の理論的な特性予測とそれに基づく新合金の設計と開発
1998年4月 - 2000年3月
科学研究費補助金 奨励研究(A)
湯川 宏
担当区分:研究代表者
種々の水素吸蔵合金の電子状態をDV-Xα分子軌道法により計算し、特に水素が入る小さな金属多面体に注目して原子間の化学結合の解析を行った。一連の計算より、水素吸蔵合金の安定性は、水素化に伴う結晶構造の変化と水素の周りの原子間の化学結合によって統一的に理解できることを明らかにした。
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プロチウム障壁成長コントロール因子の解明で実現する高耐久集合組織制御型水素分離膜
研究課題/研究課題番号:21H01658 2021年4月 - 2024年3月
科学研究費助成事業 基盤研究(B)
南部 智憲, 松本 佳久, 湯川 宏, 戸高 義一, 小俣 香織
担当区分:研究分担者
Pd触媒を表面に被覆したV系合金膜は水素分離膜として優れた機能を発揮するが、運転中に分離性能が徐々に低下し、やがては機能喪失するという深刻な問題を抱えている。本研究では表面Pd触媒とV基材との界面に形成されるプロチウム拡散の障壁を機能喪失の主要因として捉え、V基材の結晶方位に依存して変化するプロチウム障壁の成長メカニズムを解明し、結晶方位制御に基づいた高耐久性Fe添加V合金膜の設計へと展開する。高圧ねじり(HPT)加工が創り出すナノ結晶組織を敢えて再結晶化させる逆転の発想により、圧延加工では製造不可能な優先方位(110)集合組織に配向させる新規組織制御技術を創出し、V系合金膜の長寿命化を図る。
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ハイドロジェノミクス:高次水素機能による革新的材料・デバイス・反応プロセスの創成
2018年4月 - 2022年3月
文部科学省 科学研究費助成事業 新学術領域研究
担当区分:連携研究者 資金種別:競争的資金
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希土類化合物の化学結合のエネルギー表現と水素貯蔵材料設計への応用
研究課題/研究課題番号:16K06711 2016年4月 - 2019年3月
森永 正彦
担当区分:研究分担者
変化に富む物性を示す希土類化合物(酸化物、ホウ化物など)の電子構造を計算し、原子化エネルギーを用いて化学結合を表すことを試みた。原子化エネルギーの考え方を水素貯蔵材料の探索に応用し、非金属元素を含む新規なマグネシウム化合物を設計した。希土類金属のガドリニウム(Gd)を含むMg-Gd-Si系合金において、その水素化物がMgH2とGdH2に分相しないマグネシウム化合物があることを見出した。分相しないことにより脱水素化反応も起こりやすくなるので、ケイ素(Si)は、水素貯蔵マグネシウム合金にとり有用な非金属元素である。
希土類化合物の化学結合を基に、現在の重要課題である水素貯蔵材料の開発への新しい設計指針を提案している。電子レベルからの合金設計は、水素貯蔵材料にも有用である。 -
高圧アロトロピー組織制御による水素分離膜の創製と低温作動シナジー合金膜への応用
研究課題/研究課題番号:15H04148 2015年4月 - 2018年3月
松本 佳久
担当区分:研究分担者
高圧アロトロピー組織制御で薄膜化した5族水素分離膜の創製とシナジー効果による低温作動合金膜の耐水素脆性改善を行うため,水素透過性能評価に加えて水素環境中におけるin-situ SP(C)試験による延性-脆性遷移水素濃度解析と耐久性評価,超微細結晶粒による特異な物性の発現機構の解明を目指して研究を展開した。
その結果,5族金属にHPT加工を施すことで平均結晶粒径は数100nmとなり,超微細結晶組織が形成されることを確認した。また熱処理によって,ランダム粒界の存在比が増えていくが水素透過係数は粒径依存性が見られることから,結晶粒界が水素の高速拡散経路として機能している可能性がある。 -
水素透過金属膜における新パラダイムの構築と低温作動型合金膜の最適設計への展開
研究課題/研究課題番号:15H04144 2015年4月 - 2018年3月
湯川 宏
担当区分:研究代表者
配分額:16640000円 ( 直接経費:12800000円 、 間接経費:3840000円 )
本研究では、水素透過金属膜の分野に、『水素の化学ポテンシャルに基づく新しい学術体系』を構築することを目的に、水素溶解特性と水素拡散性に及ぼす諸因子の影響を「水素透過能の統一的表現」に基づいて定量的かつ系統的に整理した。
Pd系合金膜で見いだされた低温域での水素透過能の特異な温度依存性の起源を、新たな視点から解明するとともに、水素透過能と耐水素脆性に優れた低温作動型のV系合金を設計するための指針を示した。
新たに設計したV-Fe合金は、300℃の低温でも水素脆化することなく、PdあるいはPd系合金膜の5~10倍の高い水素透過流束を1000時間以上にわたって安定して維持した。