科研費 - 粕谷 英樹
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固形癌に対するCAR-T、ウイルス療法の併用による新規免疫療法の開発
研究課題/研究課題番号:21H02999 2021年4月 - 2024年3月
科学研究費助成事業 基盤研究(B)
粕谷 英樹, 直江 吉則, 松村 繁
担当区分:研究代表者
配分額:17420000円 ( 直接経費:13400000円 、 間接経費:4020000円 )
本研究は、腫瘍溶解性ウイルスとCAR-T細胞との併用でより強力な癌免疫療法を確立することを目的とし、T細胞の集族を向上させるケモカインRANTESとT細胞誘導標識抗原とを同時に発現する次世代型腫瘍溶解性ウイルスを開発することによって、CAR-T細胞を意図的に腫瘍に集簇させ、これに派生する以下の問いに解答を得ることで医療に貢献すると共に、幅広く研究者に有益な学術的情報を提供する。
本研究は細胞療法や免疫チェックポイント阻害薬が十分な効果を発揮できないアンメットメディカルニーズ難治固形癌の新たな治療法を開発することを目的に、癌抗原とケモカインを同時に搭載した次世代型腫瘍溶解性ウイルスと標識癌抗原を認識するCAR-Tを新たに創造することである。昨年度、野生型HSV1のg34.5遺伝子座にCMVプロモーターにより発現するヒトMesothelin(MSLN)を導入した腫瘍溶解性ウイルス作成した(HSV1-MSLN)。このウイルスは感染した腫瘍でMSLNが発現することを確認した。また、ヒトMSLNに対する一本鎖抗体にCD28膜貫通領域、さらに、CD3細胞内ドメインをタンデムに結合させたレトロウイルスベクターを作成、マウスT細胞に感染させ、ヒトMSLNに対するCAR-T細胞を作製した。このCAR-T細胞はMSLN発現細胞と共培養することにより活性化することを確認した。本年度は、HSV1-MSLNとCAR-T細胞の併用効果をin vivoにおいて評価した。HSV1-MSLNは担癌マウスに投与しても体重減少を起こさなかったことから、安全性は高かった。マウス皮下にマウス膵臓癌細胞Pan02を移植し、腫瘍の大きさが100mm3の大きさに達した時点でHSV1-MSLNを腫瘍内に投与した。その後CAR-T細胞を腫瘍内に投与し、腫瘍の増殖を経時的に測定した。その結果、HSV1-MSLN単独ならびにHSV1-MSLN/CAR-T細胞併用は腫瘍の増殖を著しく抑制した。しかし、HSV1-MSLN/CAR-T細胞併用はHSV1-MSLN単独よりも強い抗腫瘍効果を発揮したが、HSV1-MSLN単独でも強い抗腫瘍効果を発揮したため、優位な併用効果を確認することが出来なかった。
ヒトMSLN発現腫瘍溶解性ウイルスとヒトMSLN認識CAR-T細胞を併用することにより、in vivoにおいて強い抗腫瘍効果を確認することができた。
本年度は抗原発現腫瘍溶解性ウイルスとCAR-T細胞の併用効果をin vivoで確認できた。今後、併用治療がウイルス単独治療より優位な効果を発揮するかどうか、ウイルスの投与量、投与スケジュールを検討し併用効果を確認する予定である。また、より強い併用効果を発揮するためにウイルスにCAR-T細胞を腫瘍内に誘導するためのケモカインを搭載する。 -
研究課題/研究課題番号:18H02691 2018年4月 - 2022年3月
科学研究費助成事業 基盤研究(B)
松村 繁, 粕谷 英樹, 直江 吉則, 一ノ瀬 亨
担当区分:研究分担者
腫瘍溶解性ウイルスは、免疫抑制的な癌微小環境を劇的に変化させる。膵癌に特徴的な癌組織の固さは、腫瘍細胞が引き込む癌関連線維芽細胞および間葉系幹細胞による。HSV1自然変異株である腫瘍溶解性ウイルスC-REV(HF10)によって間葉系幹細胞を標的とするかを試みた。腫瘍溶解性ウイルスは弱毒化株であるため、正常細胞に感染できるものの増殖はできない。正常細胞である間葉系幹細胞に対するC-REVの感受性を、癌細胞株と比較検討したところ、C-REVは間葉系幹細胞にも感染、増殖できた。マウス膵癌皮下腫瘍モデルにおいて、間葉系幹細胞を腫瘍内投与した腫瘍にC-REVを投与すると、間葉系幹細胞を減少させた。
本研究で派生的に検証し報告したSTING経路と腫瘍溶解性ウイルスの知見は、新規治療法の提案につながった。2’3’-cGAMPは天然のSTINGアゴニストであるが、様々なSTING アゴニストが世界中で開発競争を繰り広げている。腫瘍溶解性ウイルスとの併用療法は報告されておらず、今後臨床研究されていく可能性がある。 -
iPS細胞技術を用いた新規腫瘍浸潤T細胞のTCR塩基配列決定
研究課題/研究課題番号:17K19696 2017年6月 - 2019年3月
挑戦的研究(萌芽)
直江 吉則
担当区分:研究分担者
マウス腫瘍に浸潤している腫瘍特異的な細胞障害性T細胞を回収し、山中因子を導入することにより、抗CD3刺激無しで増殖する細胞集団を得ることが出来た。これら細胞はTCRからの刺激無しで増殖することからiPS細胞と判断した。また、得られた増殖細胞からDNAを抽出し、TCRbの遺伝子再構成を確認したところ、調べた全ての増殖細胞においてTCRb鎖遺伝子は再構成していた。以上のことから、抗CD3刺激無しで増殖する細胞はT細胞由来であることが示唆された。また、ヒト末梢細胞障害性T細胞を用いてiPS細胞の樹立を試みたが、樹立効率が低かったため、今後、培養条件の検討を行い、樹立効率向上を試みる。
本研究により、腫瘍に浸潤したT細胞にin vitroで山中因子を導入しiPS細胞の樹立に成功した。このことから、iPS細胞化したT細胞は無限増殖能を獲得することにより、個々のT細胞のクローニングが容易となり、腫瘍に浸潤した個々のT細胞のTCRを同定することが可能となった。この技術を利用することにより、新規がん抗原ならびにがん抗原を認識するTCRの探索研究が進むと考えられる。 -
研究課題/研究課題番号:16H05413 2016年4月 - 2019年3月
科学研究費助成事業 基盤研究(B)
粕谷 英樹, 小寺 泰弘, 駱 晨虹, 珠玖 洋, 藤井 努
担当区分:研究代表者
配分額:17420000円 ( 直接経費:13400000円 、 間接経費:4020000円 )
HF10は扁平上皮癌細胞株SCC7に対して強い抗腫瘍効果を示した。さらに、PD-L1抗体と併用において相乗的な抗腫瘍効果を認められた。次に腫瘍にどのような免疫細胞が浸潤したか検討した。その結果、HF10ならびにHF10/抗PD-L1抗体併用群で投与腫瘍においてT細胞、マクロファージ、NK細胞、樹状細胞の浸潤が高率に認められた。一方、非投与腫瘍においてはT細胞の浸潤が高率に認められた。このことから、HF10およびHF10/抗PD-L1抗体併用群で腫瘍への免疫細胞の浸潤が認められ、これら免疫細胞の浸潤が併用効果増強に関与することが示唆された。
本研究により、腫瘍溶解性ウイルス治療により、多くの免疫細胞、特にT細胞が腫瘍に浸潤し、腫瘍を攻撃すること、さらに、腫瘍溶解性ウイルスと免疫チェックポイント阻害剤である抗PD-L1抗体の併用により腫瘍の増殖を著しく抑制する有効性が明らかになった。このことから、臨床において従来の治療にないHF10と抗PD-L1抗体併用の新たな治療法の可能性を提案することが出来た。 -
HF10ウイルスの抗腫瘍効果における新たな免疫因子の役割
2016年4月 - 2019年3月
科学研究費補助金 基盤研究(B)
粕谷英樹
担当区分:研究代表者
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革新的な腫瘍抗原ウイルスとTCR遺伝子改変T細胞の併用療法の開発
研究課題/研究課題番号:16K15611 2016年4月 - 2018年3月
科学研究費助成事業 挑戦的萌芽研究
粕谷 英樹, 駱 晨虹
担当区分:研究代表者
配分額:3380000円 ( 直接経費:2600000円 、 間接経費:780000円 )
本研究は、癌特異的抗原を発現するように遺伝子改変した腫瘍溶解性ウイルスHF10とウイルスが産生する癌抗原を認識するTCR遺伝子改変T細胞の組み合わせによる新規治療法の開発を目的とした。癌抗原発現細胞の樹立やT細胞の殺細胞効果の確認など着実に研究の準備を進めた。ウイルスの遺伝子組み換えにおける新たなゲノム編集技術の有用性を検討したところ、相同組換え効率の向上と遺伝子改変ウイルスの純化に非常に適した技術であることが分かった。今後は、この技術を用いて癌抗原遺伝子導入HF10の開発を進め、抗原特異的TCR遺伝子改変T細胞との併用療法の基礎データを蓄積し、臨床応用の可能性を探る。
腫瘍溶解性ウイルス療法は感染を拡大させながら大量の癌細胞を殺傷し、腫瘍抗原に対する免疫抑制環境を改善することにより、腫瘍抗原特異的な免疫を誘導する。その後の抗腫瘍効果はIn situ Vaccinationとしての抗腫瘍特異的免疫によると考えている。抗腫瘍免疫反応を高めるため、我々は腫瘍抗原遺伝子をHF10に導入し、ウイルスに導入した腫瘍抗原が通常含有量よりも大量に腫瘍内に発現する事を利用して、腫瘍抗原に対してウイルス抗原と同じ強い免疫反応を引き起こし、MUC-HF10によって免疫抑制環境が改善する事と相まって遺伝子改変T細胞療法のターゲットへの精確性、効率性を高める点に新たな着想がある。 -
革新的な腫瘍抗原ウイルスとTCR遺伝子改変T細胞の併用療法の開発
2016年4月 - 2018年3月
科学研究費補助金 挑戦的萌芽研究
粕谷英樹
担当区分:研究代表者
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腫瘍溶解性ウィルスHF10吸着化リンパ球による新規治療法の開発
2013年4月 - 2016年3月
科学研究費補助金 基盤研究(B),課題番号:25293275
粕谷 英樹
担当区分:研究代表者
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腫瘍溶解性ウィルスによる新規消化管癌治療法の開発
2011年4月 - 2014年3月
科学研究費補助金 基盤研究(C),課題番号:23590922
森 義徳
担当区分:研究分担者
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トリプルアレイ法を応用した新規がん関連遺伝子の同定
2010年4月 - 2013年3月
科学研究費補助金 基盤研究(C),課題番号:22591427
野本 周嗣
担当区分:研究分担者
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EGCGによるAP-1を介した肝細胞癌発生抑制に関する研究
2010年4月 - 2013年3月
科学研究費補助金 基盤研究(C)
藤井努
担当区分:研究分担者
EGF 遺伝子導入マウスの肝癌組織を採取したところ、c-jun の発現が増加し, AP-1 の活性が上昇していることが示された。また、同マウスに EGCG を経腹膜投与することにより、肝細胞癌発生が抑制された。これは、我々が以前に示した in vitro の結果を、in vivo で実証する結果となった。さらに、切除したヒト肝癌組織のシグナル伝達経路を検討したところ、c-jun 活性が高発現しているものは低発現群より無再発生存率が有意に低いことが示された。
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リンパ球ヒッチハイク法による抗腫瘍ウイルス療法
2009年4月 - 2012年3月
科学研究費補助金 基盤研究(C),課題番号:21591662
粕谷 英樹
担当区分:研究代表者
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肝転移腫瘍に対する腫瘍溶解性ウィルスの血管内投与法の開発
2008年4月 - 2011年3月
科学研究費補助金 基盤研究(B),課題番号:20390354
中尾 昭公
担当区分:研究分担者
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癌組織の血管新生、転移における変異型p53-FGF-1経路の影響
2007年4月 - 2009年3月
科学研究費補助金 基盤研究(C),課題番号:19590386
野本 周嗣
担当区分:研究分担者
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単純ヘルペスウイルス変異株(HF10)を用いた癌治療
2004年4月 - 2007年3月
科学研究費補助金 基盤研究(B),課題番号:16390358
中尾昭公
担当区分:研究分担者