科研費 - 桒原 真人
-
高輝度パルス電子線を用いた高速オペランドイメージング法の開拓
研究課題/研究課題番号:21H04637 2021年4月 - 2025年3月
科学研究費助成事業 基盤研究(A)
桑原 真人, 桑原 彰太, 石田 高史, 飯田 敦夫
担当区分:研究代表者 資金種別:競争的資金
配分額:41860000円 ( 直接経費:32200000円 、 間接経費:9660000円 )
ナノ電子プローブのパルス特性を発展させ、試料環境と同期した高輝度パルス電子線を応用した高速オペランドイメージング法の研究を進める。これにより、マイクロ秒を超えるナノ構造解析へと高度化することで、高速オペランド計測を介した実動作デバイスの逐次計測を実現し、時間的に変調する外部刺激に対するナノ物質の過渡現象の解明が可能となる。
また、動的なナノ構造解析を通してナノレベルで発現する構造変化を可視化し、局所的な電荷分布やエネルギー緩和過程、相転移などの学理的解明を目指す。さらに、非固定物質の計測を可能にし、生体高分子材料の非破壊、非固定計測を実現し、生体物質の構造機能解明を加速する。
高輝度パルス電子線発生に有望なNEA-PCを用いた電子顕微鏡により、ミリ秒を超える高速オペランドイメージング計測の実現を目指す。
時間変調した高輝度電子線発生が可能なNEA-PC電子銃を電子顕微鏡本体へ搭載することに成功した。これにより、マイクロ秒を超えるパルス幅の電子線を電子顕微鏡にて利用可能となった。
金ナノプレート粒子におけるモアレ縞の時間分解計測を発展させ、フェムト秒レーザー照射による熱膨張を超高速時間分解計測へ展開した。現在までに、熱膨張変化を実空間情報として捉えることが可能となっている。一方、半導体PN接合へ逆バイアス印加しながら電子顕微鏡像観察を実現した。さらに、オペランド計測に光照射の機能を加えることで、光電流を計測しながらの電子顕微鏡像取得にも成功した。これにより、実動作環境における光電変換材料や光半導体への展開が可能となった。また、撮像がナノ秒以下の時間精度で同期計測できること確認し、マイクロ秒以下のナノ計測およびオペランド計測が可能であることを実証した。さらに、電子線強度変調、電子線イメージング機器を同期してシングルショットイメージングデータを取得し、これに主成分分析手法を用いた動的成分抽出をデータ科学的に実施した。この結果、動的成分またはノイズ成分の分離に成功した。この手法を今後の解析手法に適応し、オペランド計測時の電子線量低減などに寄与するか実証する。
電子線損傷を受けやすい高分子結晶材料のニッケルジメチルグリオキシムを用いて、連続電子線とパルス電子線による電子線損傷効果の定量評価を実施した。この結果、電子線に含まれる量子的な統計効果が現れることがわかってきた。他方、生体組織試料に関しては魚類細胞の樹脂包埋条件、電子顕微鏡観察条件を確立し、受精卵細胞における未知の仕組みを解明することに貢献した。この成果は査読付き論文にまとめられた。
当初計画である(1) 高輝度パルス電子源の高分解能電子顕微鏡への搭載、(2) パルス電子線を用いた高速オペランド計測の実現、(3) オペランド計測用試料の作製、(4)ダメージレス計測にむけた電子線損傷効果の検証の4項目は、いずれも当初予定の通り進行している。また、NEA-PC電子銃の電子顕微鏡への搭載に成功したことで、次年度の計画が滞りなく開始できる状態となっている。これら全体の進捗状況を鑑み、順調に進行していると判断される。
前年度に開発した高輝度パルス電子顕微鏡(高輝度電子線パルス発生が可能なNEA-PC電子銃が搭載された電子顕微鏡)を用いて空間分解能とパルス幅の依存性を計測し、マイクロ秒を超える時間分解能が実現されることを実証する。また、前年度に成功した金ナノプレート粒子におけるモアレ縞の時間分解計測を発展させ、その熱膨張過程の局所変化過程を計測し、非平衡状態におけるダイナミクスを明らかにする。また、電圧印加状態の光半導体デバイスの電荷移動観察を実施する。これらを通して、高速オペランドイメージング法が経時変化計測に対して有効であることを実証する。
一方、STEM検出器下部に設置されたイメージングセンサを用いたSerial-NED法または4D-STEM法により、通常のSTEMイメージングに比べ像コントラストの向上が得られることを確認する。その後、電子線をパルス化し、コントラスト向上やダメージレス観察の時間特性を評価する。また、魚類生体組織の微細構造観察を実施し、損傷に至る時間を算出し、電子線パルス幅を損傷時間以下に保った計測を実施することでダメージレス観察が実現されることを実証する。 -
光と物質の一体的量子動力学が生み出す新しい光誘起協同現象物質開拓への挑戦
研究課題/研究課題番号:18H05208 2018年4月 - 2023年3月
科学研究費助成事業 特別推進研究
腰原 伸也, 石川 忠彦, 沖本 洋一, 東 正樹, 林 靖彦, 羽田 真毅, 桑原 真人, 宮坂 等, 小野 淳, 石原 純夫
担当区分:研究分担者 資金種別:競争的資金
30フェムト秒(fs:1fsは1000兆分の1秒)の時間分解能を持つ、スピン偏極電子回折観測装置を構築・活用して、電荷・結晶構造・スピンという3 つの量子自由度が絡み合って生み出す物質の性質(マルチフェロイクス)の超高速の変化(相転移)を観測することに成功しました。これによって、物質と励起光が強く結合する過程(量子光誘起相転移)を介して、マルチフェロイック特性が100fs以内に制御可能であることが実証されました。得られた知見から、巨大な負の熱膨張を示す新物質開発や、外部の環境に感応する磁性体、光で酸素原子の移動が制御される遷移金属酸化物等の、想定外の発想の拡張による成果も達成しました。
30fsの時間分解観測が可能、かつ電子のスピン偏極も可能な電子回折観測装置の開発に、世界に先駆け成功しました。この装置を用いて、幾つかの無機・有機結晶群で、電荷と結晶構造(強誘電)、スピン(磁性)が、実際に光励起で100fs以内に一気呵成に変化することを世界に先駆け確認しました。得られた知見から、新しい超高速光メモリー、光演算デバイス材料群の開拓に加えて、巨大な負の熱膨張を示す新物質を生み出す等、想定外の発想の拡張による成果も達成しました。 -
研究課題/研究課題番号:18H01884 2018年4月 - 2022年3月
科学研究費助成事業 基盤研究(B)
内田 正哉, 齋藤 晃, 桑原 真人
担当区分:研究分担者 資金種別:競争的資金
本研究の目標は、電子ビームのもつ軌道角運動量を測定する方法を開発し、その応用研究を行うことであった。まず、「ダンマン渦回折格子」ベースの測定器開発を行った(Noguchiら, Phys. Rev. Applied, 2019)。開発した「ダンマン渦回折格子」測定器は軌道角運動量スペクトルの同時取得が可能である。測定法の応用の一つとして、電子ビームがナノサイズ磁性針を通って生じる軌道角運動量の測定を行い、軌道角運動量スペクトルの測定に成功した。また、軌道角運動量をもつ電子ビームを入射ビームとして用いる収束電子線回折法を新規に提案し、実証した(Saitohら, Microscopy, 2022)。
本研究の学術的意義は世界で初めて研究代表者が生成した電子ビームの軌道角運動量(Uchidaら, Nature, 2010)が、電子ビームに普遍的であることの実証に資する軌道角運動量測定器の開発および測定法の開発を行ったことである。さらに、電子の軌道角運動量の測定によって磁場分布などの種々の物理量の取得できること、応用に役立つことを実際に示したことである。本研究は電子ビームや電子顕微鏡での応用にとどまらず、光・中性子・原子、あるいは素粒子物理分野へも大きなインパクトを与えている点で社会的意義が大きいと思われる。 -
コヒーレント偏極電子プローブを活用した次世代スピン分析法の開発
研究課題/研究課題番号:17H02737 2017年4月 - 2021年3月
科学研究費助成事業 基盤研究(B)
桑原 真人, 肖英紀, 石田 高史, 長尾 全寛
担当区分:研究代表者 資金種別:競争的資金
配分額:17550000円 ( 直接経費:13500000円 、 間接経費:4050000円 )
コヒーレントスピン偏極電子線を収束プローブビームへと応用し、低加速走査電子顕微鏡における色収差低減効果を利用したナノスピン電子プローブの実現に成功した。また、マルチフェロイック材で発現する磁性ナノ構造の計測を実現し、ピコ秒の時間分解能での時間分解計測に成功した。これにより薄膜における局所磁化状態の緩和過程や相転移などの学理的解明が可能となった。他方、時間・空間のコヒーレンスとスピンを考慮した強度干渉実験によりスピン効果を実験的に実証し、スピン偏極電子線の新しい利用方法を示すことに成功した。これにより、量子効果も含めたスピン/時間分解電子顕顕微法が新たに切り開かれた。
本成果は、量子効果も含めたスピン/時間分解電子顕顕微法の道を切り開いたものであり、次世代スピンデバイス開発や先端磁性材料の高度化の促進が期待される。また、物質中の素励起や光誘起現象の過渡現象、さらにはスピン緩和過程の同定等により、省エネルギー材料や光エネルギー変換材料への寄与が可能となる。本手法は、次世代メモリの動的観察のみならず、鉄鋼材料の磁性状態解析、高効率モーター開発のためのレアメタルフリー永久磁石材料やスピン流を用いる新しい情報デバイスの開発に広く応用されることが期待できる。このように、次世代の電子線応用分析機器の発展を可能にした点は、産業への波及効果を十分内在するものである。 -
量子もつれ状態にある2電子の生成および量子干渉現象に関する実験的検証
研究課題/研究課題番号:17H01072 2017年4月 - 2021年3月
科学研究費助成事業 基盤研究(A)
齋藤 晃, 桑原 真人, 谷村 省吾
担当区分:研究分担者 資金種別:競争的資金
半導体フォトカソードに構造化光を照射し、振幅および位相に特定の構造をもつ電子線を生成する電子銃の開発を行った。空間位相変調器をもちいて特定の強度分布をもつ構造化光を生成する光学系を構築し、電子顕微鏡装置に搭載した。開発した光学系により生成した構造化光をフォトカソードに入射し、電子線が生成することを確認した。またスピン偏極電子をもちいた強度干渉実験を行い、スピン偏極率±80%の電子線では、スピン偏極率0%の場合に比べて、アンチバンチングが起きることを見出した。このほか、量子干渉効果とベル不等式の破れを記述する理論の構築および弱値が起こるしくみの解明等を行った。
スピン偏極した構造化電子を生成する電子銃を開発し、その電子銃を搭載した電子顕微鏡を開発した。この電子銃は構造化光の波面をそのまま電子線に転写して構造化電子線を生成するため、回折格子や位相板を使う従来法で問題となっている高次光や吸収による損失はなく、またダイナミックに波面制御が行えるため画期的な波面制御技術および電子顕微鏡技術を与える。今回観察したスピン偏極電子の強度干渉におけるアンチバンチング現象は電子のフェルミ統計性を示すものであり、これにより量子力学の根本原理が検証された。また光の制御により電子線を制御するというアイディアはまったく新しい電子顕微鏡装置のデザインを与えるものである。 -
コヒーレント偏極電子線による時間相関測定
2015年4月 - 2017年3月
科学研究費補助金
担当区分:研究代表者
-
非線形光学効果を応用したスピン偏極量子ビーム源の開発
2013年4月 - 2016年3月
科学研究費補助金 若手研究(A)
担当区分:研究代表者
-
スピン偏極パルスTEMの開発とナノスピン解析への応用
2012年1月 - 現在
科学研究費補助金 基盤研究(S)
田中信夫
担当区分:研究分担者
-
高輝度フォトカソード電子源の高効率化とコヒーレンスの応用
2010年4月 - 2012年3月
科学研究費補助金 若手研究(B) 22740157
担当区分:研究代表者
-
超低エミッタンスビームを実現するカーボンナノチューブ-スピン偏極電子源の開発
2005年4月 - 2007年3月
科学研究費補助金 特別研究員奨励費 H17-7615
担当区分:研究代表者