科研費 - 市來 淨與
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大規模構造における初期磁場の役割の解明と宇宙再電離期における初期磁場探査
研究課題/研究課題番号:24K00625 2024年4月 - 2029年3月
科学研究費助成事業 基盤研究(B)
市來 淨與, 吉浦 伸太郎, 吉田 直紀
担当区分:研究代表者
配分額:18460000円 ( 直接経費:14200000円 、 間接経費:4260000円 )
宇宙には様々なスケールで磁場の存在が確認されており、力学的に重要な役割を果たしているが、その起源、特に大スケールにおける磁場の起源は明らかになっていない。本研究計画では、宇宙論的な磁気流体数値シミュレーションを用いて、宇宙の構造形成の歴史における宇宙初期磁場の影響を明らかにする。これまでの研究とは異なり、初期宇宙磁場から生成される宇宙の密度ゆらぎ・ガス加熱を初期条件として取り入れることにより、宇宙晴れ上がり期から、宇宙再電離期・現在の宇宙における大規模構造まで、無矛盾に数値シミュレーションを行う。同時に低周波望遠鏡(MWA) の宇宙再電離期の最新データの解析を進め、初期宇宙磁場の痕跡を探る。
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大型電波望遠鏡SKAで切り拓くアクシオン暗黒物質探査 国際共著
研究課題/研究課題番号:21KK0050 2021年10月 - 2025年3月
科学研究費助成事業 国際共同研究加速基金(国際共同研究強化(B))
浦川 優子, 市來 淨與, 北嶋 直弥
担当区分:研究分担者 資金種別:競争的資金
本事業では、次世代の電波天文学を牽引する大型電波望遠鏡SKAを想定し、アクシオンの新たな探査方法を確立する。アクシオンは、現在の宇宙の約30%を占める未知の物質、暗黒物質、の有力な候補であり、本事業を通じて暗黒物質の正体の解明に迫る。SKAの予測解析に加え、現在稼働中のJVLA/VLBAのデータを用いた解析を行い、SKAの科学観測開始前に我々の手法を確立し、次世代電波観測において、独自の存在感を発揮する。
本研究の目的は、電波観測を通じて暗黒物質特にその代表的な候補であるアクシオンの痕跡の網羅的な探査を行うことである。2023年度行った研究は以下の通りである。
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代表者浦川は、デルタN形式を拡張することで宇宙論的揺らぎの大スケールにおける時間進化の新規計算手法を開発した(to appear in Physical Review Letters)。これにより重力波やゲージ場の時間進化及びそれらが曲率揺らぎに与える影響を容易に見積もることが可能となった。我々が開発した拡張されたデルタN形式は、暗黒物質の候補である暗黒光子や原始磁場生成機構などを議論する際に有用となる可能性があるため、本研究の推進につながる成果と考えられる。
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暗黒光子は暗黒物質の候補の一つでありアクシオンとの相互作用を通じて生成されることが知られているが、通常その生成機構では大きな結合定数が仮定されているため、その模型構築において困難が伴う。分担者北嶋はアクシオンのポテンシャルによっては、大きな結合定数を仮定しなくても暗黒光子が効率よく生成できることを指摘した (Kitajima & Takahashi 2023)。また(Kitajima & Nakayama, 23)では宇宙ひものダイナミクス及び暗黒光子生成をシミュレーションにより解析し、地上重力波干渉計及びパルサータイミング観測による重力波観測を通じた暗黒光子の痕跡の検出可能性を指摘した。
当初は予期していなかった方向性で進展があったため、研究計画に沿った方向性についてはやや進捗が遅れている。また代表者浦川が2023年7月から2024年3月まで産前産後休暇及び育児休暇を取得したことも計画遅延の原因となっている。
アクシオン暗黒物質の非線形の構造形成を議論するには高度なシミュレーションが必要となる。2023年9月よりN体シミュレーションの専門家である秋津一之氏を博士研究員として雇用し、研究の推進をはかっている。 -
研究課題/研究課題番号:21H04467 2021年4月 - 2026年3月
科学研究費助成事業 基盤研究(A)
杉山 直, 市來 淨與, 大内 正己, 高橋 慶太郎
担当区分:研究分担者
宇宙では誕生後およそ1億年頃に、最初の星が誕生したと考えられている。しかし未だこの最初の星を直接観測した例はなく、この「宇宙の夜明け」の時期に、どのように宇宙全体に星や銀河が誕生していったのか、その詳細については全くわかっていない。本研究計画では、宇宙に漂う水素を主な成分としたガスが、最初に誕生した星々からの紫外線によって電離(プラズマ化)する過程を、電波観測によって観測することで、宇宙の夜明けの解明に迫る。具体的には、オーストラリアにある電波望遠鏡群MWAを用い、水素が出したり吸収したりする電波を観測し、その結果を数値シミュレーションと比較することで、宇宙の夜明けの物理過程を明らかにする。
本研究計画はオーストラリアの低周波電波干渉計実験であるMWAに参加し、世界初の宇宙再電離期からの中性水素21cm線シグナル検出を目指すものである。特にすばるHSCのLAEを用いた相互相関、および明るい背景天体からの吸収線(21cm forest)を用いて前景放射の影響を軽減し、検出を目指すことに特徴がある。今年度の研究実績概要は以下の通りである。
昨年度推定した、将来の21cm forest観測を想定したCDMサブストラクチャーの影響を見積もりについて、流体数値計算をもちいて、ガスの加熱、ラム圧や力学摩擦によるガスの剥ぎ取り効果など詳細について計算を行った。結果をまとめ論文として投稿中(Naruse et al., eprint arXiv:2404.01034)である。また、宇宙再電離期の小スケールと大スケールを合わせたハイブリッド模擬データ作成のため、オーストラリアメルボルン大学の研究者と共同研究を開始した。
相互相関関係では、昨年度から行なっているLyα emitterのサンプル構築を続けた。すばるHSCのSSP探査データだけでなく、CHORUS探査データを加えることで、赤方偏移6-7で得られているすばるHSCの主要データのほぼ全てを含めて、サンプルの最大化を図った。これらのサンプル構築を完了し、査読論文誌に出版した(Kikuta et al., ApJS, 2023)。これらと並行して、MWAを用いた宇宙再電離21cm線観測の検討を行った。
加えて、昨年度から引き続き低周波電波望遠鏡MWAで宇宙再電離期の中性水素21cmの検出を試みている。特にRFIなどの雑音や前景放射の除去、較正手法の研究開発を行った。さらに電波望遠鏡を用いたパルサータイミングアレイの研究(Kato & Takahashi, PRD, 2023)や太陽系外惑星からの電波放射に関する観測的研究(Shiohira et al., MNRAS, 2024)を行った。
本科研費による貢献により、オーストラリアで実施されているMWAプロジェクトへの参加が引き続き認められている。相互相関関係では、すばるHSCの広領域深撮像観測が完了し、ほぼ全てのHSC観測データを用いてLyα emitterのサンプルの再構築を行なっている。低周波電波望遠鏡MWAでの観測についてはシグナル検出の障害となる微弱な人工電波を同定するために、観測で得られた時系列データの非ガウス性を利用するアルゴリズムの開発を行なっている。理論面では、21cm線シグナルの小スケールでの精密なモデリングと宇宙論スケールでの大規模構造とハイブリッドで合成する道筋が立ちつつあるところである。最新のMWAデータを用いた解析や、前景放射や人工電波除去アルゴリズム開発、低周波電波と相互相関を取るためのライマンアルファ輝線銀河分布のデータ整備についても論文を出版するなど着実に進められていて、概ね順調に進展しているといえる。
これまでに引き続き、MWAによる低周波電波データの系統誤差の削減とノイズ・前景放射除去アルゴリズムの開発を行い、世界初の宇宙再電離期からの中性水素21cmシグナルの検出を目指す。相互相関の関連研究では、これまでに取り組んできて作成した赤方偏移6-7で得られているすばるHSCの主要データのほぼ全てを含めたLyα emitterのサンプルを用いて、中性水素21cm強度マップとの相互相関研究を開始する。MWAによる中性水素21cm線観測の関係では、データ取得とともに、引き続き前景放射や人工電波除去アルゴリズム開発を並行して行っていく。理論に関する研究では、メルボルン大学の大規模なデータに私たちの小スケールモデルを組み合わせ、再電離期21cm線の精密かつ大スケールのデータ作成を行う。進捗によっては、名古屋大学の大学院生とともにメルボルン大学を訪問し、詰めて滞在して共同研究を推進することも検討していく。 -
コスミックバリアンスを越えた精密宇宙論の開拓
2018年4月 - 2023年3月
科学研究費補助金 基盤研究(C)
担当区分:研究代表者
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研究課題/研究課題番号:18K03616 2018年4月 - 2023年3月
科学研究費助成事業 基盤研究(C)
市來 淨與
担当区分:研究代表者
配分額:4550000円 ( 直接経費:3500000円 、 間接経費:1050000円 )
現代宇宙論においては、宇宙初期に生成された密度揺らぎの統計的な大きさを、宇宙の様々な時代で測定し、宇宙モデルを決定している。近年ではこの測定において検出器のノイズは問題にならなくなり、むしろ観測する宇宙が一つしかないというサンプルバリアンスが検定力の限界を決めている。そこで揺らぎの統計量ではなく、揺らぎの成長を直接追うことで宇宙モデルの決定ができないかを探った。初期揺らぎの分布をガウス分布であると仮定すると成長による揺らぎの増大と初期揺らぎの大きさが分離可能であること、また銀河団で生成される宇宙マイクロ波背景輻射の偏光を各時刻で観測することにより、揺らぎの成長を直接推定できることが分かった。
宇宙論研究においては、揺らぎの平均や分散といった統計量を観測量として用いて宇宙モデルの決定を行っていますが、これは宇宙が統計的に一様で等方的であるということが暗に仮定されています。これは近代宇宙論では宇宙原理と呼ばれる標準的な仮定ではありますが、本研究は、その仮定を排除して直接的に宇宙の構造の進化を追うにはどうしたらよいか、という課題に取り組んでおり、いくつかの方法を提示したものになっています。 -
研究課題/研究課題番号:17H01110 2017年4月 - 2020年3月
科学研究費助成事業 基盤研究(A)
杉山 直, 市來 淨與, 田代 寛之, 大内 正己, 赤堀 卓也, 高橋 慶太郎, 竹内 努
担当区分:研究分担者
豪州で実施中のMWA計画に参加し、宇宙再電離(EoR)に関する研究を行った。MWAの観測データの自己相関パワースペクトル、および宇宙マイクロ波背景輻射との相互相関スペクトル解析より、EoR中性水素21cmシグナルへの上限を得た。輻射輸送を詳細に取り扱った数値計算から初代天体質量関数と21cm線シグナルとの関係を調べ、21cm線のグローバルシグナルから初代星の性質に迫る道筋をつけた。加えて、銀河と21cm線との相互相関シグナルの理論モデルを構築し、この手法が将来の銀河探査によるデータと組み合わせることで、前景放射を避けてEoR21cm線シグナルを得ることに対し有効であることを示した。
宇宙から届く100MHz帯の低周波電波には、宇宙が誕生してから数億年の頃の宇宙(宇宙再電離期と呼ばれる)の様子が刻まれていると考えられている。本研究ではオーストラリアの砂漠地帯で実施されている低周波電波望遠鏡MWA実験に参加し、宇宙再電離期からの信号の初検出を目指し、理論モデルの構築を行った。近い将来得られる低周波電波の観測データと本研究の理論モデルとを比較することで、宇宙で最初の星や銀河はいつ、どのように誕生したのかという学術的な問いに答えることができるようになると期待される。 -
宇宙初期密度揺らぎの再構築による精密宇宙論の展開
2016年4月 - 2018年3月
科学研究費補助金 新学術領域研究(研究領域提案型)公募研究
担当区分:研究代表者
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宇宙初期密度揺らぎの再構築による精密宇宙論の展開
研究課題/研究課題番号:16H01543 2016年4月 - 2018年3月
新学術領域研究(研究領域提案型)
市來 淨與
担当区分:研究代表者
配分額:4160000円 ( 直接経費:3200000円 、 間接経費:960000円 )
2017年度は宇宙の密度揺らぎの初期パワースペクトルの再構築を行った。宇宙マイクロ波背景輻射温度揺らぎ観測衛星WMAPのデータを用いた我々の先行研究において、初期揺らぎパワースペクトルの多重極ell=120付近に、べき型のスペクトルから有意に外れた特徴的な振動の存在が指摘されている。揺らぎの起源として有力な候補であるインフレーションを考えると、シンプルなインフレーションモデルではこのような振動現れないと予想されるため、このようなパワースペクトルの詳細な解析はインフレーションモデルへの制限として有益なものである。本研究では、新しく公開された観測衛星PLANCKのデータを用いて解析を行った。WMAPとは独立な観測衛星のデータを用いることで、人工的なノイズ起源である可能性を排除するとともに、WMAP衛星では得られなかった詳細な偏光揺らぎのデータを用いることで、独立な検証を行うことができる。
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マルコフ連鎖モンテカルロ法を用いた詳細な解析により、以下のことを明らかにした。
1.WMAPのデータ中に発見した特徴的な振動をPlanckのデータにおいても同じスケールに存在すること。
2.温度揺らぎのデータだけでなく、偏光揺らぎのデータにも同じスケールに同じ周期の振動があることを確認した。ただし、偏光揺らぎのデータは温度揺らぎのデータから示唆される振幅よりも小さな振幅を示唆している。
3.WMAPの解析時には、この振動を考慮することにより他の宇宙論パラメタの推定値が大きく変わることがあったが、PLANCKのデータではより小スケール側のデータで宇宙論パラメタが決定されているため、大きく推定値が変わることはないことが分かった。
平成29年度が最終年度であるため、記入しない。
平成29年度が最終年度であるため、記入しない。 -
研究課題/研究課題番号:15H05890 2015年6月 - 2020年3月
科学研究費助成事業 新学術領域研究(研究領域提案型)
杉山 直, 野尻 伸一, 市來 淨與, 辻川 信二, 西澤 淳, 松原 隆彦
担当区分:研究分担者
Planckを中心とする最新の天文観測データを用いてダークエネルギーモデルに対する制限を得た。理論的に動機づけされた様々なダークエネルギーモデルの提案を行うと共に、現在の観測を満足する理論のパラメータ領域を求めた。ダークエネルギーとダークマターが相互作用を持つモデルにおける宇宙論的摂動論を構築し、そのようなモデルは宇宙の構造形成を遅くすることを見出した。宇宙大規模構造に形どられたボイドの数密度やサイズに対するダークエネルギーの密度揺らぎの影響を定量的に明らかにし、Alcock-Pachinskyテストによりダダークエネルギーの密度と状態方程式への制限が偏り無く行えることを示した。
宇宙の構造形成を担うダークマター、そして宇宙膨張を加速させているダークエネルギーの正体は未だ不明であり、天文学から物理学にまたがった大問題である。本研究では最新の観測結果から許されるダークマター、ダークエネルギーの性質を明らかにするとともに、そのような観測の制限を満たすダークエネルギー模型の提案を行った。加えて、将来の観測が見込まれるボイドを用いてダークエネルギーを調査する手法を開発した。ダーク成分の問題解決は最終的には素粒子実験的手法が必要になるが、地上における加速器のエネルギーが上限に達しつつある現在、本研究のような天文学によるボトムアップ型研究は今後もますます重要になると考えられる。 -
電波による中性水素探査を用いた銀河および宇宙大規模構造の起源と進化の解明
2012年4月 - 2017年3月
科学研究費補助金 基盤研究(B)
担当区分:研究代表者
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重力レンズ効果における尤度関数の精密決定
2010年4月 - 2012年3月
科学研究費補助金 特定領域研究,課題番号:22012004
市來 淨與
担当区分:研究代表者
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宇宙論観測で迫る、揺らぎの非ガウス性
2010年
科学研究費補助金 基盤研究(B)
杉山直
担当区分:研究分担者
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宇宙構造形成のおけるニュートリノの役割の解明およびその質量の決定
2008年4月 - 2010年3月
科学研究費補助金 科学研究費補助金 若手研究(B); 課題番号21740177
担当区分:研究代表者