科研費 - 水野 亮
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南北オーロラ帯からの観測とモデルに基く高エネルギー降下電子の環境影響に関する研究
研究課題/研究課題番号:24H00751 2024年4月 - 2028年3月
科学研究費助成事業 基盤研究(A)
水野 亮, 三好 由純, 大山 伸一郎, 山下 陽介, 野澤 悟徳, 長濱 智生, 秋吉 英治, 中島 拓
担当区分:研究代表者
配分額:48620000円 ( 直接経費:37400000円 、 間接経費:11220000円 )
地球の環境は、人為的要因だけでなく、多くの自然起源の要因の影響も受ける。本研究は、太陽活動起源で地球に降り込む高エネルギー粒子が、大気組成および気候に与える影響を理解することを目指す。基本となる物理・化学過程は定性的には理解されているものの、粒子のエネルギー分布や降り込みの時空間範囲・頻度などの動態、応答する大気側の影響範囲、時間的な進化など、実際に起きている変化を精確に捉え、因果関係を定量的に理解するための観測データは未だ十分とは言えない。衛星観測、南北極域からの最先端の観測、大規模シミュレーションをもとに、高エネルギー粒子が大気に及ぼす因果関係を定量的に理解し、地球環境への影響を評価する。
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地上電波観測による高エネルギー電子降下機構の解明と地球中層大気への影響
研究課題/研究課題番号:20H01955 2020年4月 - 2023年3月
科学研究費助成事業 基盤研究(B)
土屋 史紀, 大矢 浩代, 西山 尚典, 芳原 容英, 三好 由純, 田所 裕康, 水野 亮
担当区分:研究分担者
磁気圏のなかで加速された電子が双極子磁場に閉じ込められた領域を放射線帯と呼ぶ。放射線帯の電子が地球大気へ降下する現象は、放射線帯の重要な損失過程であると同時に、中層大気に化学的な影響を及ぼすことから、この発生機構の現象の解明は、宇宙物理学・大気化学の双方で重要な研究課題となっている。本研究は、放射線帯電子が中層大気に降下することで生じる電離を検出する地上低周波電波観測を中心に、両分野の研究課題をつなぐ取り組みを行う。低周波電波観測をオーロラ観測・あらせ衛星観測と連携し、放射線帯電子の降下機構の解明を目指す。ミリ波分光観測と連携し、電子の降下が中層大気へ及ぼす化学的影響を実証する。
放射線帯電子は中層大気に影響を及ぼす高エネルギー粒子源として注目されているが、大気降下の発生機構とその大気への影響は解明されていない。本研究は(1)放射線帯電子が大気降下を起こす物理過程、(2)電子降下が中層大気に及ぼす影響、を観測的に明らかにすることを目的とした。電子の大気降下を検出する低周波電波観測と他の地上・衛星の協調観測を実施し、電子降下を引き起こすプラズマ波動として、電磁イオンサイクロトロン波動とホイッスラーモードコーラス波動を同定し、中間圏で電離が生じることを確かめた。昭和基地でのミリ波分光器観測から、2022/7に発生した磁気嵐の回復相に中間圏で数10%のオゾン減少を確認した。
放射線帯に分布する電子が地球大気へ降下する現象は、放射線帯の重要な損失過程であると同時に、地球中層大気に化学的な影響を及ぼす。このことから、放射線帯電子の大気降下現象の解明は、宇宙空間物理学分野と大気化学分野の双方で重要な研究課題である。本研究により放射線帯電子の大気降を引き起こすプラズマ波動が実証的に特定されたことは、今後、双方の分野の研究の繋がりを更に強化するとともに、放射線帯と大気の両方を持つ木星や土星などの研究へ拡張されることが期待される。放射線帯電子の大気への降下は、低高度を周回する衛星への放射線障害を引き起こしうるため、本研究の成果は宇宙天気の観点からの意義が高い。 -
南北両極から探る高エネルギー粒子が大気環境に与える影響の観測的研究
研究課題/研究課題番号:19H01952 2019年4月 - 2022年3月
科学研究費助成事業 基盤研究(B)
水野 亮, 田中 良昌, 野澤 悟徳, 長濱 智生, 中島 拓
担当区分:研究代表者
配分額:17420000円 ( 直接経費:13400000円 、 間接経費:4020000円 )
南極の昭和基地と北極のEISCATサイトからの同時観測により、下部熱圏から成層圏の地球大気環境に関わる分子の変動要因を理解する。特に、高エネルギー粒子の降り込みの影響を他の変動要因と分離するため、多周波超伝導ミリ波分光計を実用化し、複数の分子種の同時観測を可能にする。また、降り込み電子の密度やエネルギースペクトルの情報を得るため、既存のレーダーやイメージングリオメターを用いた観測を進めるとともに、計画後半では新たにスペクトルリオメータでの観測を実施し、イオン化学モデルを含んだ電離圏・熱圏シミュレーションモデルとも比較することにより、高エネルギー粒子降り込み時に生起する素過程を明らかにする。
本研究は、南極域昭和基地と北極域EISCATトロムソサイトの南北両極域からの同時観測により、高エネルギー粒子降り込み(EPP)に伴う成層圏から下部熱圏の地球大気環境への影響を観測的に理解することを目指し、新たな技術を導入し観測情報の範囲拡大とデータ質向上をめざした。
コロナ禍により北極域に渡航できず観測研究すべてを計画通りに進めることはできなかったが、南極域昭和基地では多周波ミリ波分光計、スペクトルリオメータを設置し観測を開始した。特に独自開発の導波菅型周波数マルチプレクサを用いた多周波ミリ波分光計は、地上からのO3, NO, CO, HO2の多輝線ミリ波同時観測を世界で初めて実現させた。
北極および南極では、太陽活動に伴い高エネルギーの荷電粒子が地球に降り込んでくる。こうした高エネルギー粒子は空気分子を電離して窒素酸化物を増加させ、オゾンを破壊するなど地球環境に影響を与える可能性が示唆されている。本研究は、観測データが乏しい地球大気の反応を新たな技術により観測的に明らかにすることを目指したものである。電波信号を周波数帯毎に分離して複数の超伝導受信機に分配し、それらの出力を再合成することで4種類の異なる分子の変動を同時に観測できる装置を開発・実用化し、世界初の地上からのミリ波多輝線大気観測を実現させた。この技術は電波天文学などの他分野のミリ波サブミリ波分光にも応用が期待できる。 -
南米SAVER-Net観測網を用いたエアロゾル・大気微量気体の動態把握 研究課題
2018年10月 - 現在
科学研究費補助金 国際共同研究加速基金(国際共同研究強化(B))
担当区分:研究代表者
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南米SAVER-Net観測網を用いたエアロゾル・大気微量気体の動態把握
研究課題/研究課題番号:18KK0289 2018年10月 - 2025年3月
科学研究費助成事業 国際共同研究加速基金(国際共同研究強化(B))
水野 亮, 西澤 智明, 神 慶孝, 弓本 桂也, 長濱 智生, 秋吉 英治, 杉田 考史
担当区分:研究代表者
配分額:17810000円 ( 直接経費:13700000円 、 間接経費:4110000円 )
2023年度は、前年度1月のコロナ禍後初のアルゼンチン・チリ渡航を踏まえ、再始動した共同研究を具体的に軌道に乗せるための研究活動を進めた。
オゾン観測装置群については、10月および2024年3月に水野が現地入りし、ミリ波分光計の再立ち上げを行なった。まず10月の段階で、長期停電ごとに故障していた極低温冷凍機用チラーの分解清掃と不純物を除去するカートリッジフィルタを設置することで、コロナ禍以前からの懸案を解決し極低温冷凍機の長期間安定運転が可能となった。3月の渡航では10月に不具合が見つかった超伝導受信素子を交換し、2020年1月以降4年2ヶ月ぶりに定常観測を再開することができた。相手国側の差分吸収オゾンライダーについては、米国NASAのグループからの技術支援と資金支援を得る合意ができている一方、2023年12月に誕生した新大統領・新政権の政策により文教予算が大きく削減されたため、2023年度前半に故障したYAGレーザーの修理ができず観測再開が困難な状況に陥っている。
ライダー網を用いたエアロゾル研究に関しては、7月に神が渡航し半導体励起レーザと小型屈折望遠鏡光学系を用いた長期間メンテナンスフリーのミニライダーをアルゼンチンに持ち込んでテスト観測を行い、後方散乱係数と偏光解消度が初期の目標通りに取得できていることを確認した。また、アマゾンスモークの観測で重要な観測点となるアルゼンチン北部トゥクマンの国立大学を訪問し、共同研究の新たなメンバー・拠点の開拓とキャパシティービルディングを含む今後の研究計画について議論した。またデータ解析では2019年のコルドバでの観測データで、偏光解消度と風向きの相関から、非球形のエアロゾルが南方からと球形のエアロゾルが北方から輸送されることを明確に示し、それらの発生源が南方乾燥帯のダストと北方アマゾンからのスモークと考えられることを明らかにした。
2020年度からの世界的なコロナ禍により南米への出張が難しくなり計画に遅れが生じた。2022年度からは相手国に渡航できるようになり、2023年1月に実際に渡航し対面での議論を行った。2023年度から具体的な共同研究活動が再始動したが、1年間で2年分の遅れをカバーする成果には至らなかったので「計画よりやや遅れている」とした。
コロナ禍の2年間に、相手国側のライダーデータ解析の主要研究者が他界し、オゾン差分吸収ライダー担当研究者がスウェーデンの研究機関に移籍するなど、相手国側のシニア研究者層が弱体化した。その一方で次世代のリーダーと期待される若手研究者が徐々に力をつけ、そのうちの一人はアルゼンチン気象局の観測ネットワーク部門の責任者として、観測装置の再立ち上げと新たな観測地点や共同研究者の開拓などを通して相手国側の研究組織の増強に尽力している。
コロナ前より観測が停止していたミリ波分光計は観測を再開し、かつ中間周波数帯回路の改良により以前より良好なスペクトルデータが取得可能となった。エアロゾル観測用ミニライダーでは、小型屈折望遠鏡光学系を考案・実装したことで、経時変化の要因となっていた微調整機構を排除し、オペレータのスキルによらず初期の性能を長期間維持できる見通しがたった。また、半導体レーザーの導入によりメンテナンスフリーでの長期安定運用の目処もたった。
研究の終了年度を1年間延長し、この1年間で再稼働した観測装置・観測網でデータを取得し、計画の遅れを取り戻し、化学気候予測モデルの改善、エアロゾル輸送モデルによるデータ同化、そして地球観測衛星の地上検証につなげるための質の高い実観測データを取得することを目指す。
オゾンホールの出現前およびアマゾンでのバイオマス燃焼によるスモークの越境汚染がピークを迎える前の夏頃をめどに、水野と神がアルゼンチンに渡航し、ミリ波分光計の整備とミニライダーを含む新たなエアロゾルライダー観測網の再整備を行い、観測を軌道に乗せ、イベントが発生した時にデータの取りこぼしがないように準備を行う。それが最優先課題である。ミニライダーに関しては、まず、首都ブエノスアイレスの気象局本部に設置し、現地研究者に運用方法、メンテナンス方法に習熟してもらい、その後コルドバやトゥクマンなどの現地研究者の手によって北部地域へと順次設置していける体制を構築する。さらに、名古屋大学の持田教授グループと新たに連携し、エアロゾルのサンプリング観測も開始する。ライダーによる光学的な粒子識別と共に、詳細な化学分析データも併せて複合的に解析することで、エアロゾルの特性や輸送に伴う経時変化についても研究を深めたいと考えている。
また、インターネットによる日本からの遠隔管理・制御システムをより一層整備して現地エンジニアの負担軽減を図り安定した長期間運用体制を構築する。データ解析およびモデル関係の研究は順調に進捗している。あとは同化すべき現地の観測データを取得するところが最大かつ最重要の課題である。インターネットを介した日本での準リアルタイムデータ取得を目指す。
本課題の重要な最終目標の一つは、観測空白域である南米地域での観測網を充実させ、地球観測衛星の地上検証に貢献することである。この実現のためには、より安定・頑強な観測システムへの移行と持続可能な観測体制の確立が重要であることがコロナ禍により一層浮彫となった。その実現は、本課題終了後10年20年の長期にわたって、本観測網が地球環境問題の解決に向けて国際的に果たすべき重要な使命でもあると認識し精一杯取り組んでいきたい。 -
マルチビームライダーを中心に用いた精密拠点観測による北極域大気上下結合の解明
研究課題/研究課題番号:17H02968 2017年4月 - 2020年3月
科学研究費助成事業 基盤研究(B)
野澤 悟徳, 小川 泰信, 川原 琢也, 藤原 均, 水野 亮, 堤 雅基, 斎藤 徳人, 津田 卓雄
担当区分:研究分担者
オーロラ帯に位置するトロムソ(北緯69.6度、東経19.2度)にて、マルチビームナトリウム(Na)ライダーを中心に用いた精密拠点観測により、地球大気と宇宙との境界領域に位置する北極域下部熱圏・中間圏に生起する現象の解明を実施した。Naライダーデータを用いたNa層低高度側の高Na密度領域生成機構、25年間のMFレーダーデータを用いた乱流圏界面高度長期変動、フォトメータ観測データに基づく、630 nm 発光時間に関する新たな知見を得た。鉛直風測定精度の改善のため、口径60cm望遠鏡を用いた受信システムを新たに製作し、Naライダーに導入し、鉛直方向に関して従来の3倍の精度向上を達成した。
地球大気と宇宙を繋ぐ遷移領域である、北極域中間圏・下部熱圏(高度70-120 km)における大気変動、大気波動の影響、微量原子密度変動、乱流圏界面高度の長期変動に関する新たな知見を得た。5波長フォトメータによる沿磁力線方向観測を実現し、オーロラ発光(波長630 nm)問題に関する知見を増した。これらは、人類の宇宙進出や、太陽風エネルギー流入による地球環境変動の理解につながる研究成果である。 -
チリ共和国アタカマにおける成層圏・中間圏の水蒸気同位体およびオゾンの観測的研究
2006年 - 2009年
科学研究費補助金 基盤研究(B)(海外),課題番号:18403008
水野 亮
担当区分:研究代表者
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準ミリ波水蒸気分光放射計による中層大気水蒸気・オゾンの観測的研究
2006年 - 2009年
科学研究費補助金 基盤研究(B)(一般),課題番号:18340138
水野 亮
担当区分:研究代表者
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チリ熱帯域における成層圏・中間圏の水蒸気同位体分子のミリ波同時観測
2003年 - 2004年
科学研究費補助金 基盤研究(A),課題番号:15253004
水野 亮
担当区分:研究代表者
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高密度分子トレーサ分子輝線による分子雲コアの進化の統計的研究
1994年 - 1995年
科学研究費補助金 一般研究(B)
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ストリーマ-分子雲の速度場の観測的研究
1993年
科学研究費補助金 奨励研究(A)