科研費 - 小沢 浩
-
評価軸の多元化と確率評価を用いた企業行動モデルの転換と管理会計技法の再生
研究課題/研究課題番号:23K01668 2023年4月 - 2027年3月
科学研究費助成事業 基盤研究(C)
小沢 浩
担当区分:研究代表者
配分額:4420000円 ( 直接経費:3400000円 、 間接経費:1020000円 )
通常の「業績評価」は、一つの目標を与え、その達成水準を評価します。しかし、実際には、複数の目標を同時に追求することが求められることがあります。本研究は、複数目標を同時に満足させる解を導出するための意思決定プロセスを示します。また、業績評価には、達成水準を評価する方法と、達成確率を評価する方法があります。達成確率の評価は、一般には軽視されがちですが、複数目標を追求するときには、達成確率を評価する方法が不可欠です。また、達成確率の評価では、達成基準の設定が、被評価者(行為者)のリスク態度に影響を及ぼすと考え枯れます。本研究では、これらの検証を通じて、新しい管理会計技法を開発しようとしています。
本研究は、伝統的な管理会計技法に評価軸の多元化と確率評価の視点を取り入れることで、 多様な指標による評価、および、イノベーションやリスクのマネジメントを可能にして、現代にふさわしい技法として再生しようとするものである。また、利益最大化を追求する経済学 的企業観から、多目的・満足化を原理とする組織論的企業観に転換することで、新しい領域 に管理会計の適用範囲を広げようとするものである。
令和5年度においては,研究の基礎となる,多目的を同時に追求する組織における意思決定のプロセスについての概念モデルを整理して,論文として発表した。また,日本経営学会中部部会で報告して,概念モデルについてのフィードバックを得た。学会発表のフィードバックの中に,報告した意思決定モデルによってたどり着いた解について,その頑健性や脆弱性について考えるべきという指摘があり参考になった。今後の研究に取り入れる予定である。
加えて,モデルの一部分である確率評価について,名古屋大学,関西大学,同志社大学の81名の学生の参加を得てピンボードを用いた実験を行った。これは,木製のボードに空けられた30個の穴のそれぞれに,木製のピンをさしてもらい,その時間を計測する実験である。(1)自由な方法でピンを挿す,(2)標準のルールに従ってピンを挿す,(3)平均時間より厳しい目標を設定してピンを挿す,(4)平均時間より緩い目標を設定してピンを挿すの4通りを行い,その所要時間を計測した。仮説は,「平均より緩い目標を設定した場合には所要時間のばらつきが小さくなり,平均より厳しい目標を設定した場合には所要時間のばらつきが大きくなる」というものであり,被験者の個人差を調整した結果,この仮説が検証された。この結果については,令和6年度中に学会で発表し,論文を執筆する予定である。
概念モデルを論文として発表でき,また,実験においても想定通りの結果を得ることができた。ただし,概念モデルは,今後,さらにブラッシュアップする余地がある。また,実験も条件を変えることで,さらに多くの知見が得られることが期待できる。
令和6年度の前半は,実験結果を学会で発表すること,および,論文を執筆することに専念する。その後,ピンボードを使った実験を再設計し,令和7年度に再度の実験を試みたい。今年度の実験では,参加者を(1)動作が遅いグループ,(2)平均的なグループ,(3)動作が速いグループの3つに分け,(1)と(2)では仮説を支持する結果が得られたが,(3)では想定しなかった結果,すなわち,厳しい目標を与えた場合に,より厳しい目標を与えると,所要時間がより短くなる,また,目標が厳しくなるほど分散が小さくなるという結果である。今回の実験では,2つの目標水準についての実験しか行えなかったが,もっと様々な目標水準を与える実験を行って,(3)のグループの所要時間の振る舞いを観察してみたいと考えている。 -
研究課題/研究課題番号:21K01699 2021年4月 - 2025年3月
科学研究費助成事業 基盤研究(C)
高岡 伸行, 小沢 浩, 吉田 高文, 原田 裕治
担当区分:研究分担者
本研究はSRB(social responsible businesses)と同規模同業種の一般企業のビジネス・エコシステム(BES)の組織化パターンの比較分析から,持続可能な経営行動の特徴とその再現方法を検討する。事業・戦略コンテクストの編成に該当する,多様な諸ステークホルダーとの連携から構成されるBESの組織化メカニズムとそのコスト負担構造並びにそれらへの資本構成特性の影響を実証的に分析する枠組みを整理する。中でも持続可能なBES編成の実現性と実効性を担保する鍵要素として「資本コストの寄付効果」の影響や作用の特定に注目する。
研究代表者,研究分担者共に本科研課題に関わる個別の業績を産出し,研究成果を国内外に発信し得た。その内訳は著書類が3編,学術論文が1編,学会報告が4編である。それらの内容は,本研究課題の既存の諸成果を総合する理論的枠組み,本課題が注目する持続可能な経営行動を可能にするコンテキスト要因,経営行動との連動性や当該行動が実現し得る企業行動原理や機能化メカニズムを照射に関する成果を提示し得た。また今後の実証分析(とりわけ定性分析)を行う為の分析モデルを精緻化し得た。それによって事例分析およびその蓄積を加速化し得,利持続可能な経営行動の原理や機能化メカニズムの論理の検証活動を促進することに寄与することを期待できる。
代表者と分担者との共同研究実施形式がダイアド的になっており,全員が一堂に会する形式を思うように採れず,研究成果の総合に手間取る事態に陥った為。
期間延長をし,最終年度にあたる本年は共同研究成果を各自単独ではなく,共同研究の成果として,総合し得るよう,オンライン形式を含め,合同研究実施の機会を確保する。また研究成果総合策の一環として,学会等での共同での研究成果発表報告を模索する。 -
パターン認識技術を用いて財務データから企業の定性的属性を読み取る技法の開発
研究課題/研究課題番号:20K20755 2020年7月 - 2024年3月
科学研究費助成事業 挑戦的研究(萌芽)
小沢 浩
担当区分:研究代表者
配分額:5200000円 ( 直接経費:4000000円 、 間接経費:1200000円 )
本研究は、財務諸表の数値や経営分析の指標は、業種ごとに違いがあって単純には比較できないと言われています。もし、そうであれば、逆に、財務諸表を見れば、その企業の業種や戦略が判別できるかもしれません。しかし、そのような試みはこれまで行われてきませんでした。そこで、財務諸表の数値から、業種や戦略などの企業の定性的な属性を読み取る方法を開発しようというのが本研究の目的です。そのために、MTシステムという、品質工学で用いられるパターン認識の技法を使います。まずは、財務諸表から、その企業の業種を特定する方法に挑戦します。その後、戦略や経営健全性なども判定できるように発展させます。
財務諸表は企業の健康診断書とも言われ,その数字から企業の特徴を知ることができるとされている。そこで,パターン認識の技術を使って,財務諸表の数字から企業の定性的属性を判別に挑戦しようというのが本研究の目的であった。パターン認識の方法としては,品質工学におけるタグチ・メソッドのうちRT法を用いる。識別する定性的属性としては,まずは業種の特定を試みた。業種の特定に成功した後は,債券格付け,戦略などの識別にも挑戦する予定であった。
1966年から2004年までの財務データを用いて,様々な業種の識別に挑戦した。その結果,商社,百貨店,電力,大手私鉄,造船,カメラの6業種については,各業種の特徴が明確で,概ね識別に成功した。ただし,期間について,1966年頃には明確に識別できているものが,年を追うごとに業種の区別が曖昧になってしまい,識別の精度が低下してしまう。理由としては,企業の体質自体が変化して業種間の違いが縮小していること,会計制度の変更により財務諸表から企業の属性の違いが読み取りにくくなっていることが考えられる。より精度を高めることに挑戦してきたが,決定的な分析手法を確立するには至っていない。 -
研究課題/研究課題番号:20H01556 2020年4月 - 2023年3月
科学研究費助成事業 基盤研究(B)
小沢 浩, 木村 麻子, 近藤 大輔, 鈴木寛之, 中川 優, 片岡 洋人, 藤野 雅史, 天王寺谷 達将, 井上 慶太, 浅石 梨沙, 諸藤 裕美
担当区分:研究代表者
配分額:17680000円 ( 直接経費:13600000円 、 間接経費:4080000円 )
原価企画は、製品原価の約9割が製品の開発段階で決定するという考えにもとづき、開発段階で原価を低減しようとする取り組みである。これは1990年代に盛んに研究され、現在も再び研究されるようになっている。しかし現在の企業は、90年代とは異なる経営問題に直面している。本研究では、サービタイゼーションとサステナビリティという2つの経営課題に焦点を当てて、製品の開発段階において課題を解決するという原価企画の考え方は、現在の課題を解決するためにも活かされているのか、活かされているとすればどのように活かされているのかを、インタビューや質問票調査によって明らかにする。
原価企画研究が盛んに行われた1990年代から30年が経過して、製造業を取り巻く環境「国際化」「環境配慮」「サービス化」の3つの点で大きく変化しました。そこで、インタビュー等の調査により、原価企画活動の変化を捉えようというのが本研究の目的でした。しかし、2020年以来の新型コロナウィルス感染症の拡大により、研究計画の大幅な見直しを迫られ、「国際化」をテーマから外し、インタビュー調査を質問票調査と文献レビューに置き換えることになりました。国内製造業3,000社を対象として環境配慮に関する質問票調査、一般消費者1,000人を対象とした環境配慮製品とサービス化製品の受容に関する調査を行いました。
本研究は、環境配慮とサービス化という近年の製造業を取り巻く変化を踏まえて、企業側の対応と、これらに対する消費者の受容動向を調査たものです。漠然とした印象としてしか捉えられていなかったトレンドを、質問票調査によって実証できたことが基本的な成果です。また、環境配慮活動が製品の収益や原価、その他の経営業績に及ぼす影響についても明らかにすることができました。サービス化については、その受容の程度、および、誰に、どのような理由で求められているのかを明らかにすることができました。 -
研究課題/研究課題番号:19H01548 2019年4月 - 2022年3月
科学研究費助成事業 基盤研究(B)
梶原 武久, 小沢 浩, 丸田 起大, 窪田 祐一, 篠田 朝也, 大浦 啓輔, 北田 智久
担当区分:研究分担者
本研究は、原価企画とイノベーションの関係について、フィールドスタディと実験研究を行うことで、理論的・実証的に解明することを目指す。フィールドスタディから得られた知見と実験研究から得られた知見を有機的に関連づけことで、原価企画とイノベーションの間の複雑な因果関係の解明を試みる。
モジュラー型製品開発へのシフトが、原価企画や組織間関係を通じて、イノベーションに及ぼす影響の解明を試みた。モジュラー型製品開発の実施により、原価企画活動の重点が個別製品の原価の最適化から、複数製品で用いられる共有部品の原価の最適化に移行することが分かった。またモジュラー型製品開発の下で原価の全体最適化を図るうえで、多様な要因と原価の複雑な関係性に精通したエンジニアや経理担当者が重要な役割を果たすことが示された。
自動車や電子機器の分野で、モジュラー型製品開発の取り組みが拡がりを見せる中で、日本の製造企業の強みとなってきた原価企画やバイヤーとサプライヤーの間の組織間関係に変化が迫られている。本研究の研究結果は、モジュラー型製品開発によるイノベーションを促進するための原価企画や組織間関係のあり方に示唆を与えるものとして、学術的にも実務的にも大きな意義を有するものである。 -
研究課題/研究課題番号:18K01817 2018年4月 - 2024年3月
科学研究費助成事業 基盤研究(C)
趙 偉, 小沢 浩, 小室 達章
担当区分:研究分担者
本研究は、国際合弁企業を調査対象として、長期的視点での組織間関係における知識移転のダイナミクスを考察するものである。第1に、トヨタとGMの合弁企業であるNUMMIのトップ層へのインタビュー調査から得られた定性的データを基に、親会社トヨタのグローバル事業展開への影響を分析した。第2に、NUMMIにおける労働協約書の時系列分析を通じて、トヨタ、UAW、元GM労働者との関係性を描き、技術システムと協調的な労使関係の構築プロセスを考察した。第3に、山岸(1998)の「信頼の解き放ち理論(信頼理論)」を援用し、NUMMIにおいて「高コミットメント×高信頼」の労使関係が実現されたという仮説を導き出した。
本研究の技術的意義と社会的意義は以下の通りである。第1に、組織のアライアンス能力を把握する上で、国際合弁企業での経験がその後の組織間関係や海外進出における労使関係の形成の基礎となっていることを指摘した。この視点は、国際合弁企業の形成要因や維持に関する既存研究には見られない新しい視点である。第2に、本研究グループにしかないNUMMIの「労使契約書」と膨大な一次資料を用いて、労使の信頼関係の形成プロセスを明らかにし、国際合弁企業における労使関係を「信頼の形成」という観点から分析した。第3に、既に終了した合弁事例を長期的な視点で分析することで、国際合弁企業の経験を整理し、その持続的な意義を提示した。 -
原価企画能力の研究:技術情報の蓄積と処理に注目した技術者視点からのアプローチ
研究課題/研究課題番号:17K04048 2017年4月 - 2020年3月
科学研究費補助金
小沢 浩
担当区分:研究代表者
配分額:2600000円 ( 直接経費:2000000円 、 間接経費:600000円 )
本研究の成果は、2つある。1つは、原価企画において、設計段階で見積もられた原価と実際に発生した原価の間に違いが生じる2つの原因を明らかにしたことである。過去の経験から蓄積されたデータの外挿によって将来の原価を予測する時に生じる「外挿による錯誤」と、限定的な条件の下でしか要求された品質が確保されない部品を使う場合に、環境のばらつきによって、製品が品質を満たせなくなる「品質設計の脆弱さ」である。もう1つは、多目標を与えられた状況で、エンジニアが設計解を導出するときの思考方法を示したことである。多次元の目標に、新しい変数を加えることによって、関数を変化させ、設計解の存在確率を高めることができる。
本研究は、原価企画という、製品開発段階において原価低減を図る取り組みを対象としている。これまで、製品開発のマネジメントについては、組織やルールづくりに焦点が当てられてきたが、本研究は、開発プロセスにおける技術者の思考パターンに焦点を当てた。それによって、開発時の原価見積を誤る仕組みと、原価以外の多様な目標が与えられている中で、全ての目標を満足させる設計解を導きだす仕組みを示すことができた。 -
CSRアプローチの企業利益最大化の戦略的意思決定パターンとそのメカニズム
研究課題/研究課題番号:16K03808 2016年4月 - 2020年3月
科学研究費補助金
高岡 伸行
担当区分:研究分担者
本研究は社会的責任ビジネスの経営行動のメカニズムとそれを主導する意思決定原理の探究を課題としている。従来CSRは経済的利益と矛盾すると捉えられてきた。その矛盾を克服し,両者の橋架を,CSRを考慮・実践する企業利益最大化を図る株式会社形態企業における経営行動と捉えている。
こうした理解を,新古典派経済学の企業観、それを前提とした経営戦略論の諸枠組みに基づく利益最大化の経営行動の論理との比較から,展開し,社会的責任ビジネスの経営行動の特性を浮き彫りにしている。
本研究は社会的責任ビジネスという捉え方の構築に際して,企業論,戦略論,そしてビジネス・モデルの考察を中心とした経営管理論と関連づけCSR論を再考している。それによって経営学研究におけるCSR論の体系的な系譜づけの枠組み整理に寄与した点が本研究の学術的意義と考える。
その過程において営利・非営利ハイブリッド型法人制度を含め,ベネフィット・コーポレーションやソーシャル・ビジネス等,社会的責任ビジネスの制度設計の検討を行っている。新たな法人形態のみならず,株式会社形態の企業による社会的責任ビジネス展開の制度上の改善点の示唆は社会貢献型の事業体の設計や実践の議論に対する本研究の貢献になり得ると考える。 -
原価企画における原価作りこみエラーの発生メカニズムと解決方法に関する研究
2016年4月 - 2019年3月
科学研究費補助金 基盤研究(B)
梶原武久
商品企画や製品開発段階においてライフサイクルコストを作り込む活動である原価企画について、近年、原価を効果的に作り込むことができないという問題が実務において頻発している。本研究では、原価作り込みエラーの発生状況を記述した上で、その発生メカニズムと解決方法を明らかにする。
-
原価企画における原価作りこみエラーの発生メカニズムと解決方法 に関する研究
研究課題/研究課題番号:16H03680 2016年4月 - 2019年3月
科学研究費補助金
梶原 武久
担当区分:研究分担者
製品開発段階のコスト・マネジメント手法である原価企画に関して、目標原価を達成できない、開発段階での原価見積もりが製造段階での原価と大きく乖離する、あるいは製造段階で原価が変動するなどの現象を原価作りこみエラーと名付け、その原因と解決方法を明らかにした。本研究では、モジュラー型製品開発が原価作りこみエラーを軽減するための有効な解決策となること、その実現に原価企画や組織間コスト・マネジメントの刷新が求められること、その際、原価担当者のコスト知識が重要な役割を果たすことを明らかにしている。
日本企業の競争優位の源泉となってきた原価企画について、それを学術的に研究し、国際発信することが日本人研究者に求められている。ただし、既存研究の多くは、原価企画の実務の記述に終始しており、学術研究としての深化や国際発信が遅れている。本研究は、経済学や心理学など社会科学の基礎理論をベースに、原価企画が抱える課題やその解決法を解明するものであり、国際的にも大きな学術的な意義を有するものである。加えて、原価企画の実践に関して実務が抱える喫緊の課題にフォーカスしており、多くの実践的示唆を提供している。 -
生産形態と行動規範・業績評価法の適合に関する研究:工学と会計学の融合に向けて
2009年4月 - 2013年3月
科学研究費補助金 若手研究(B)
小沢 浩
担当区分:研究代表者
ライン生産やセル生産など,生産形態が異なると,それに合わせて作業者の働き方も変わらなければならない。そして,作業者の働き方は業績の評価方法に大きく影響される。そこで,生産形態と,作業者に求められる行動規範,それを導く業績評価法の関係を明らかにしようとする。
-
ライン=セルの生産形態決定モデルの定量化と生産形態の移行に関する事例研究
2006年4月 - 2009年3月
科学研究費補助金 若手研究(B)
小沢 浩
担当区分:研究代表者
-
セル生産の実態調査、作業実験および分業論とセル生産の整合的理論化
2003年4月 - 2005年3月
科学研究費補助金 若手研究(B)
小沢 浩
担当区分:研究代表者