大学院工学研究科

2025/03/24 更新
博士(工学) ( 2002年6月 東京工業大学 )
学士(工学) ( 1995年3月 東京工業大学 )
水理学
砂防・河川工学
水資源・水工学一般
その他 / その他 / 工学@土木工学@水工水理学
流域圏の環境保全
河川の物質輸送と生物一次生産
気候変動の影響を踏まえた河道地形・植生動態解明
河道管理技術開発
名古屋大学大学院工学研究科・教授
2015年4月 - 現在
国名:日本国
名古屋大学大学院工学研究科准教授
2006年4月 - 2015年3月
国名:日本国
名古屋大学大学院工学研究科講師
2004年4月 - 2006年3月
国名:日本国
東京工業大学工学部助手
1997年11月 - 2004年3月
国名:日本国
東京工業大学工学部文部技官
1996年4月 - 1997年10月
国名:日本国
東京工業大学 理工学研究科 土木工学専攻
- 1996年
国名: 日本国
東京工業大学 工学部 土木工学科
- 1995年
国名: 日本国
土木学会
国際水理学会
応用生態工学会
国土交通省水管理・国土保全局・気候変動を踏まえた治水計画に係る技術検討会 委員
2018年 - 現在
団体区分:政府
国土交通省中部地方整備局安倍川流域委員会 委員長
2018年 - 現在
団体区分:政府
内閣官房国土強靭化推進会議 委員
2023年7月 - 現在
団体区分:政府
国土交通省・社会資本整備審議会・社会資本メンテナンス戦略小委員会 委員
2017年 - 現在
団体区分:政府
土木学会レジリエンス確保に関する技術検討委員会 委員兼幹事
2017年 - 2018年
団体区分:学協会
環境システム優秀発表賞
2012年 土木学会環境システム委員会
現況河道の状態把握を起点とした堤防の侵食・洗掘破堤危険度評価手法の実践的開発 ~2019年10月洪水による千曲川での被災事例を検討対象として~ 査読有り
戸田 祐嗣, 岩崎 理樹, 溝口 敦子, 磯部 良太, 鈴木 克尚, 坂野 アイカ, 中島 由以佳, 田中 規夫, 藤田 光一
土木学会論文集 80 巻 ( 7 ) 2024年7月
Zhu, R; Tsubaki, R; Toda, Y
ACTA GEOPHYSICA 72 巻 ( 2 ) 頁: 1097 - 1112 2024年4月
ALB測量データと単木解析手法による河道内樹木密生度の推定及び水理解析への活用 査読有り
周 月霞, 戸田 祐嗣, 溝口 裕太
土木学会論文集 80 巻 ( 16 ) 2024年2月
A MECHANICAL ANALYSIS OF RIPARIAN TREE DESTRUCTION DURING THE SIMULTANEOUS EFFECT OF FLOOD AND STORM 査読有り
Yuexia ZHOU, Yuji TODA
Journal of JSCE 12 巻 2024年2月
EVALUATION OF GROYNES INSTALLATION AT THE VULNERABLE BANK OF A BRAIDED RIVER 査読有り
Md. Zakir HASAN, Yuji TODA
Journal of JSCE 12 巻 2024年2月
水理公式集例題集 査読有り
土木学会水工学委員会水理公式集例題集編集小委員会( 担当: 分担執筆 , 範囲: 第6編流域圏環境(6.4))
土木学会 2024年12月 ( ISBN:ISBN978-4-8106-1091-8 )
環境保全・再生のための土砂栄養塩動態の制御
池田駿介,菅和利,岡本峰雄,戸田祐嗣,大澤和敏,赤松良久,惠小百合,大久保あかね( 担当: 共著)
近代科学社 2014年10月 ( ISBN:978-4-7649-0466-8 )
全世界の河川辞典
高橋裕(編集委員長)( 担当: 共著)
丸善出版 2013年7月
シミュレーション辞典
日本シミュレーション学会編( 担当: 共著)
コロナ社 2012年2月
Supplement to Advances in Hydro-Science and Engineering
T. Tsujimoto, and Y. Toda( 担当: 共著)
NHRI 2009年3月
巻頭言 大井川の治水と土砂管理 招待有り
戸田祐嗣
雑誌「河川」918 巻 頁: 39 - 41 2023年1月
巻頭言 砂浜の保全・再生のための総合土砂管理対策~土砂の受け手ではなく総合土砂の牽引役へ~ 招待有り
戸田祐嗣
雑誌「海岸」59 巻 頁: 1 - 2 2022年12月
スーパー伊勢湾台風に備える 招待有り
戸田祐嗣
日本災害医学会 2025年3月7日 防災学術連携体
河川維持管理の高度化・合理化に向けた技術開発の試み~堤防の侵食・洗掘破堤危険度評価を例として~ 招待有り
戸田祐嗣
中部河川維持管理技術講習会 2024年12月13日 中部河川維持管理技術者会
気候変動と豪雨災害 招待有り
戸田祐嗣
名古屋西ロータリークラブ 2024年11月28日 名古屋西ロータリークラブ
物理場の予測可能性を踏まえた河川環境目標設定と順応的管理の融合 招待有り
戸田祐嗣
河川生態学術研究会 2024年11月21日 河川生態学術研究会
気候変動による降雨量の増加と流域治水 招待有り
戸田祐嗣
豊田市「流域治水」勉強会 2023年10月13日 豊田市
裸地砂州への植生初期侵入・再萌芽機構の実態把握
2017年4月 - 2019年3月
河川基金
資金種別:競争的資金
洪水営力を極力活用した河川植物の効果的・効率的管理手法に関する研究
2015年4月 - 2017年3月
鹿島財団研究助成
資金種別:競争的資金
洪水流・河床変動解析へのデータ同化手法の導入に関する研究
2015年4月 - 2017年3月
河川整備基金
資金種別:競争的資金
砂成分の流送量および河床存在形態がダム下流礫床河道区間の底生生物生息環境に与える影響の実証的解明~矢作ダム排砂事業の環境影響評価に向けて~
2011年4月 - 2012年3月
河川整備基金
資金種別:競争的資金
河道内植生大規模伐採後の樹林再侵入メカニズムの解明と樹林化抑制手法の開発~天竜川下流域を対象として~
2010年1月 - 2012年12月
河川美化・緑化助成
資金種別:競争的資金
中小洪水時の礫河川のリーチスケール土砂動態の時系列変化の実測
研究課題/研究課題番号:21H01432 2021年4月 - 2025年3月
科学研究費助成事業 基盤研究(B)
椿 涼太, 戸田 祐嗣, 尾花 まき子, 赤堀 良介, 山口里実, 吉村 英人, 周 月霞
担当区分:研究分担者
礫河川は,握りこぶし大や人頭大の大礫とそれより小さな砂礫で河床が覆われている.礫河川では,毎年から数年に一度という頻度で起きる中小洪水時に,大礫は移動しないが,その間を縫うように,指先サイズからそれよりも小さな砂礫が流されていく.洪水中にいつ,どこで,どれくらいの大きさの砂礫が,どれくらいの量流れていくかは,現象が複雑であるため,よく把握できていない.本研究では,河底に設置する圧力変動を記録する独自の現地計測手法を使いこなして,礫河川で中小洪水時に砂礫がどのように流されていくかを解明し,その河床形状が今後どのように変遷していくかを予測するために役立てる.
北海道を流れる十勝川水系札内川をフィールドとし,6月に実施されたダムからのフラッシュ放流にあわせて,ハイドロフォンと圧力変動計測装置・Spheraの二つの計測装置を一セットとして河道内の三箇所に配置して,フラッシュ放流中の土砂移動と河床近傍での圧力変動のデータを取得した.このフィールドでは,粗粒化は進行しておらずフラッシュ放流を含めた中小出水でも,一定の土砂移動がおきている.河川管理者が工区設定を行って継続的に河川環境調査を実施しており,人為的攪乱として水路掘削が行われた工区を中心とした調査を行った.
現地計測では,地点毎に,ハイドロフォンで取得される2チャンネル (Ch), 96 kHzの圧力変動データ,圧力変動計測装置・Spheraにより得られる3 Ch, 50 Hzの圧力変動データを取得した.2019年から2022年まで4年分のフラッシュ放流に合わせて実施した現地計測結果をもとに,また河川管理者により実施された測量結果も参照しつつ,掘削水路の河床変動と土砂移動状況の分析をおこなった.その結果,水路掘削の直後は河床形状が安定しておらず,局所的な堆積や洗掘が生じていたが,近年は掘削水路の内部はフラッシュ放流中には動的平衡に近い状態であり,大きな河床変動が生じていないことは確認された.一方で,主流部との接合部では河床変動が継続しており,掘削水路でおきる今後の河床変動を検討する上での留意点となっていることが示唆された.
現地計測で得られた圧力変動データから,底面せん断応力以外の情報を抽出するための基礎検討を行うために,数値計算結果と水理実験を用いて,Spheraを含む粗面流れを再現し,Spheraで計測する底面圧力と乱流の関連の検討を進めた.
水理実験では,実河川の礫河床を水路内で再現して通水し,Particle Image Velocimetry (PIV)により,流速分布を取得しつつ,現地調査でも使用するSpheraにより圧力データを取得した.数値計算では水理実験を,大規模な乱流を直接解像するLarge Eddy Simulationを用いて再現した.
流速分布について水理実験のPIVで得た平均流速分布と,LESによる平均流速分布を比較して,LESにより十分実験の流速分布が再現できることを確認した.続いて,数値計算で再現したSpheraで計測される底面圧力と,内部の圧力や流速の相互相関の空間分布を把握して,底面圧力から流況を把握できる空間的な範囲を明らかにした.一方,実験結果からSpheraによる圧力とPIVによる流速の相関関係について,はっきりとした関係は確認することはできなかった.これは,水理実験ではPIVの流速とSpheraによる底面圧力の計測の同期が不十分であったことが要因と考えられるため,水理実験でのPIVとSpheraの時刻の同期方法について改善が必要と考える.
底面圧力が大きいとき・平均的なとき,小さいときという三つの条件毎にLESで得られた流速分布を整理して,圧力の大小に応じたセンサ周りの流況を把握することができた.
これまでの現地調査により,ハイドロフォンの機器浸水が2割程度発生して,データ欠測が生じていた.ハイドロフォンの耐久性の向上をはかり,現地計測での欠測防止を図る.また,Spheraのセンサ周りを金属ワッシャーとコンクリートで覆っていたが,フラッシュ放流による土砂移動で著しい摩耗が生じ,センサ周りの変形により取得データが不安定となっていた.コンクリートの素材変更等により耐摩耗性能を向上し,機器の耐久性とデータ取得の安定性の向上をはかる.
数値計算結果と水理実験を用いて,Spheraで計測する底面圧力と乱流の関連の基礎的検討をさらに進める.さらに,その検討結果をもとに現地計測データの分析を進めて現地河川でおきている流れ・土砂移動・河床変動の相互作用の分析に展開する.すなわち,現地計測結果から,地点毎の土砂移動形態の類型化と,河道網にそったリーチスケール土砂動態の時系列変化として整理する.ここで時系列とはフラッシュ放流の水位上昇期~ピーク期~水位降下期という意味合いだけでなく,経年的な変化も追跡する.
これらの過去に現地で起きた現象の検討結果を踏まえつつ,フラッシュ放流の放流水量を削減しつつ攪乱効果の発揮を狙う方策を提案することを狙う.
中小洪水時の礫河川のリーチスケール土砂動態の時系列変化の実測
研究課題/研究課題番号:23K20968 2021年4月 - 2025年3月
科学研究費助成事業 基盤研究(B)
椿 涼太, 尾花 まき子, 周 月霞, 吉村 英人, 赤堀 良介, 戸田 祐嗣, 山口里実
担当区分:研究分担者
北海道を流れる十勝川水系札内川をフィールドとし,6月に実施されたダムからのフラッシュ放流にあわせて,ハイドロフォンと圧力変動計測装置・Spheraの二つの計測装置を一セットとして三箇所に配置して,フラッシュ放流中の土砂移動量と圧力変動のデータを取得した.このフィールドでは,粗粒化は進行しておらずフラッシュ放流を含めた中小出水でも,一定の土砂移動がおきる.河川管理者が工区設定を行って継続的に河川環境調査を実施しており,人為的攪乱として水路掘削が行われた工区を中心とした調査を行った.
北海道を流れる十勝川水系札内川をフィールドとし,6月に実施されたダムからのフラッシュ放流に合わせて,ハイドロフォンと圧力変動計測装置・Spheraの二つの計測装置を一セットとして河道内の三箇所に配置して,フラッシュ放流中の土砂移動と河床近傍での圧力変動のデータを取得した.このフィールドでは,粗粒化は進行しておらずフラッシュ放流を含めた中小出水でも,一定の土砂移動がおきている.河川管理者が工区設定を行って継続的に河川環境調査を実施しており,人為的攪乱として水路掘削が行われた工区を中心とした調査を行った.
現地計測では,地点毎に,ハイドロフォンで取得される2チャンネル (Ch), 96 kHzの圧力変動データ,圧力変動計測装置・Spheraにより得られる3 Ch, 50 Hzの圧力変動データを取得した.2019年から2023年まで5年分のフラッシュ放流に合わせて実施した現地計測結果をもとに,また河川管理者により実施された測量結果も参照しつつ,掘削水路の河床変動と土砂移動状況の分析を行った.その結果,水路掘削の直後は河床形状が安定しておらず,局所的な堆積や洗掘が生じていたが,近年は掘削水路の内部はフラッシュ放流中には動的平衡に近い状態であり,大きな河床変動が生じていないことは確認された.ところが2023年のフラッシュ放流前には,掘削水路への平水時の流れがなくなっており,フラッシュ放流での土砂移動もほとんど発生していないことが本研究で確認された.このような傾向を踏まえると,大きな出水による大規模な河床変動が生じない限り,平水時に冠水しない掘削水路への植生侵入が進み陸地化することが示唆される.
現地計測で得られた圧力変動データの考察のために実施している,流れの三次元数値計算と水理実験を用いた,粗面流れを再現と,底面圧力と乱流の関連の検討を進めているが,2022年度は,数値計算上の非物理的な圧力変動が課題となっていた.2023年度には,その課題の解消ができた.
河床変動計算による地形変化の分析について,平面二次元の混合粒径の河床変動計算を実施して,2022年のフラッシュ放流後から2023年のフラッシュ放流前に起きた,比較的大きな河床変動の再現にとりくんだ.現地で確認された傾向を再現する計算条件(境界条件等)が整理できた.2022年中に起きた,比較的大きな河床変動により,本研究で着目している掘削水路と主流の分岐点での,掘削水路入り口の比高が変わり,主流から掘削水路に流れ込む平水がなくなっている.他方,下流では,掘削水路が主流化した区間もある.
2023年のフラッシュ放流の現地計測ではハイドロフォンの高性能化を進め,それに伴いロガーシステムを更新した.その機器変更と,2022年中に比較的大きな河床変動が生じて,河床が不安定化したことが重なり,2023年の現地観測でハイドロフォンのロガーについて3つのうち2つが流失し,1つは回収できたがもう1つは未回収である.このような問題を解消するため,計測機器の設計を更新し,2024年の現地計測に備えている.2023年のフラッシュ放流の現地計測にて,1機のロガー未回収はあるが,それ以外のデータは取得でき,2023年のフラッシュ放流で生じた活発な河床変動にかんする貴重な現地計測データを取得することができた.
以上を総合すると,現地計測および数値計算の課題について解決策がみつかり,調査地点の河床変動も活発化して興味深いデータを取得できており,全体として順調に進展していると考える.
ハイドロフォンのロガー流失対策として,ロガーを機器固定の為のオモリの内部に収納することとし,その為のオモリを設計し鋳造工場で作成することとした.2023年の現地調査では0.5m程度の堆積および浸食が起きた地点で現地調査を実施して,ハイドロフォンのロガー以外の機器は設置場所にて回収できている.ロガー流失を防止することができるはずで,その結果,堆積や浸食が起きる河床でも確実にデータを取得できるようになる.
数値計算結果と水理実験を用いて,Spheraで計測する底面圧力と乱流の関連の基礎的検討をさらに進める.さらに,その検討結果をもとに現地計測データの分析を進めて現地河川で起きている流れ・土砂移動・河床変動の相互作用の分析に展開する.すなわち,現地計測結果から,地点毎の土砂移動形態の類型化と,河道網にそったリーチスケール土砂動態の時系列変化として整理する.ここで時系列とはフラッシュ放流の水位上昇期~ピーク期~水位降下期という意味合いだけでなく,経年的な変化も追跡する.
これらの過去に現地で起きた現象の検討結果を踏まえつつ,フラッシュ放流の放流水量を削減しつつ攪乱効果の発揮を狙う方策を提案することを狙う.
気候変動への段階的適応のための河道地形・植生の中長期動態予測
研究課題/研究課題番号:20H02257 2020年4月 - 2025年3月
科学研究費助成事業 基盤研究(B)
戸田 祐嗣, 尾花 まき子, 椿 涼太, 周 月霞
担当区分:研究代表者
配分額:17550000円 ( 直接経費:13500000円 、 間接経費:4050000円 )
河川工学分野における気候変動への段階的な適用策を構築するため,本研究では気候変動影響を考慮したうえで河道地形と植生繁茂動態を数十年(10~30年程度)の時間スケールで予測できる技術を開発することを研究目的とする。この目的を達するため,(1)過去から現在に至る河道地形・植生動態の中長期実態分析,(2)既に気候変動の影響が現れつつある近年の大規模出水後の地形・植生動態変化の実態把握,(3)数十年スケールでの河道地形・植生動態予測モデルの開発,および(4)開発されたモデルを用いて将来気候条件へ遷移していく中での段階的な河道地形・植生繁茂を予測する。
河川工学分野における気候変動への段階的な適用策を構築するため,本研究では気候変動影響を考慮したうえで河道地形と植生繁茂動態を数十年(10~30年程度)の時間スケールで予測できる技術を開発することを研究目的とする。この目的を達するため,(1)過去から現在に至る河道地形・植生動態の中長期実態分析,(2)既に気候変動の影響が現れつつある近年の大規模出水後の地形・植生動態変化の実態把握,(3)数十年スケールでの河道地形・植生動態予測モデルの開発,および(4)開発されたモデルを用いて将来気候条件へ遷移していく中での段階的な河道地形・植生繁茂を予測する。
2022年度は,過去から現在に至る河道地形および植生動態の中長期実態分析として,植生繁茂とそれに伴う河道地形の変化が生じている長良川において,1960年代から2010年代までの水位・流量データ,航空写真,河川横断測量,レーザープロファイラデータを収集し,河道地形,草本,木本別の植生繁茂状況変化等を分析し,長期的な河道地形,植生繁茂状況の変化を実証的に明らかにした。
また,長良川の実態分析に基づいて,河道地形,植生動態を予測する平面2次元浅水流・河床変動解析に植生動態モデルを統合した数値シミュレーションモデルの開発を行った。特に2022年度は,植生動態モデルの汎用化に取り組み,植生の初期侵入,洪水による破壊モデルを平面二次元流れ・河床変動モデルに組み込んだ。また,平面二次元流況解析と河床変動解析により,対象河川の冠水頻度,河床材料移動頻度解析を実施し,植生立地基盤の物理環境特性を類型化した。
サブテーマ(1)に関連して,長良川を対象とした過去から現在にいたる河道地形・植生動態の実証的把握を実施し,大規模な洪水前後の植生の流出特性が把握できている.人為的な植生伐採,河道掘削に関するデータも入手し,自然営力以外での植生変化に関しても実態把握が進んできている.また,数値解析のための入力地形・入力植生を整理し,解析の初期条件として活用している.
サブテーマ(2)に関して,気候変動の影響が表れつつある近年の洪水前後の河床地形,植生動態の変化については,ALB測量による面的なデータを収集し,植生流出特性の詳細把握が進んできている.
サブテーマ(3)の数値解析モデル開発について,植生動態モデルの開発もおおむね概成し,モデル検証のための数値計算も実施済みである.
サブテーマ(4)については,将来の気象変動条件下での洪水外力の取り扱い方について,分析を開始している状況である.
以上のように,当初の予定に沿った成果が上がっており,順調に進展している.
2023年度も,サブテーマ1~3の過去から現在に至る植生動態の中長期把握,近年の洪水による植生動態調査,数値モデル開発を実施する.特に本研究においては,近年の洪水前後での実測データが,植生動態の把握,モデルの検証・開発の両面で重要であることから,引き続き,サブテーマ(1),(2)の現地調査を実施し,実証データの充実をはかる.
サブテーマ(3)について,近年の洪水災害の激甚化の影響により,大規模・広範囲の植生伐採や河道掘削が実施されていることから,人的な植生・河道地形管理の効果をモデルで適切に再現できているかを検証し,モデルの汎用化と実用化をはかる.
2023年度以降はサブテーマ(4)の将来気候での洪水流量変化を考慮した数値解析の実施に徐々に重点を移していくため,将来の気候変動時での洪水外力シナリオについて,現況流量に変化倍率を乗じる手法と,d4PDFの将来気象データから典型的な将来洪水波形として適切なものを選択し使用する手法の両面で数値解析を実施し,気候変動による将来の河道地形・植生動態の変化傾向を明らかにしていく予定である。
気候変動への段階的適応のための河道地形・植生の中長期動態予測
研究課題/研究課題番号:23K20258 2020年4月 - 2025年3月
科学研究費助成事業 基盤研究(B)
戸田 祐嗣, 尾花 まき子, 周 月霞, 椿 涼太
担当区分:研究代表者
配分額:17550000円 ( 直接経費:13500000円 、 間接経費:4050000円 )
気候変動の影響を考慮したうえで河道地形と植生繁茂動態を数十年の時間スケールで予測できる技術を開発する.この目的を達するため,過去から現在に至る河道地形・植生動態の中長期実態分析,近年の大規模出水後の地形・植生動態変化の実態把握,数十年スケールでの河道地形・植生動態予測モデルの開発,および開発されたモデルを用いた将来気候条件へ遷移していく中での段階的な河道地形・植生繁茂の予測を実施する。
河川工学分野における気候変動への段階的な適用策を構築するため,本研究では気候変動影響を考慮したうえで河道地形と植生繁茂動態を数十年(10~30年程度)の時間スケールで予測できる技術を開発することを研究目的とする.この目的を達するため,(1)過去から現在に至る河道地形・植生動態の中長期実態分析,(2)既に気候変動の影響が現れつつある近年の大規模出水後の地形・植生動態変化の実態把握,(3)数十年スケールでの河道地形・植生動態予測モデルの開発,および(4)開発されたモデルを用いて将来気候条件へ遷移していく中での段階的な河道地形・植生繁茂を予測する.
サブテーマ(1)に関連して,長良川を対象とした過去から現在にいたる河道地形・植生動態の実証的把握を実施し,大規模な洪水前後の植生の流出特性が把握できている.人為的な植生伐採,河道掘削に関するデータも入手し,自然営力以外での植生変化に関しても実態把握が進んできている.また,数値解析のための入力地形・入力植生を整理し,解析の初期条件として活用している.
サブテーマ(2)に関して,気候変動の影響が表れつつある近年の洪水前後の河床地形,植生動態の変化については,ALB測量による面的なデータを収集し,植生流出特性の詳細把握が進んできている.
サブテーマ(3)の数値解析モデル開発について,植生動態モデルの開発を行い,モデル検証を実施した.長期にわたる植生動態解析において,年最大洪水を対象とした河床変動・植生流出予測と洪水期間以外の植生動態解析を実施することで,実河川での砂州地形,植生分布範囲等をおおむね再現できることが確認された.
サブテーマ(4)については,将来の気象変動条件下での洪水外力の取り扱い方について,分析を開始している状況である.
サブテーマ1「過去から現在に至る河道地形および植生動態の中長期実態分析」については,長良川中流域,天竜川下流域を対象として,1990年代から現在に至るまでの航空写真,衛星画像,UAV画像の分析を実施し,期間中に生じた洪水による河道地形・植生分布の変化を定量的に整理・把握しており,本サブテーマの目的はほぼ達成できた状況にある.サブテーマ2「近年の大規模出水後の地形・植生動態変化の現地調査」については対象河道における河道横断測量データ,レーザープロファイラデータ,ALBデータによる地形変化・植生分布の変化を分析し,洪水による植生の破壊箇所,洪水後の再侵入・再繁茂箇所を明らかにできており,サブテーマ3のモデル開発に用いるための現地調査が実施できた状況にある.サブテーマ3「数十年スケールでの河道地形・植生動態予測モデルの開発」については,サブテーマ2の成果に基づいて植生動態モデルの開発を行い,流れ・河床変動解析モデルへの組み込みを終了するとともに,開発されたモデルを用いて過去の洪水流量を与えた解析結果とサブテーマ1の実河川での植生分布の比較を行うことでモデルの検証も終えた状況にある.研究最終年度には,当初の予定通りサブテーマ4「将来気象条件へ遷移していく中での段階的な河道地形・植生繁茂の予測」を進める予定となっており,当初の予定通りおおむね順調に進展している.
近年の洪水による植生動態調査について,特に本研究においては,近年の洪水前後での実測データの取得が,植生動態の把握,モデルの検証・開発の両面で重要であることから,引き続き,サブテーマ(1),(2)の現地調査を実施し,実証データの充実をはかる.
サブテーマ(3)について,近年の洪水災害の激甚化の影響により,大規模・広範囲の植生伐採や河道掘削が実施されていることから,人的な植生・河道地形管理の効果をモデルで適切に再現できているかを検証し,モデルの汎用化と実用化をはかる.
2024年度はサブテーマ(4)の将来気候での洪水流量変化を考慮した数値解析を重点的に実施する.将来の気候変動時での洪水外力シナリオについて,現況流量に変化倍率を乗じる手法と,d4PDFの将来気象データから典型的な将来洪水波形として適切なものを選択し使用する手法の両面で数値解析を実施し,気候変動による将来の河道地形・植生動態の変化傾向を明らかにしていく.
治水安全と生態系保全の相互影響関係を考慮した樹林化河道の最適管理戦略
研究課題/研究課題番号:20H02261 2020年4月 - 2023年3月
科学研究費助成事業 基盤研究(B)
宮本 仁志, 戸田 祐嗣
担当区分:研究分担者
日本の多くの河川で経年進行する樹林化に対して、本研究では、近年頻発する豪雨災害に鑑み、「早急に対処しなければならない樹林化」と「残しておいても大丈夫な樹林化」を合理的に判別する新しい河川技術の開発を行う。まず、現地観測によって樹林化河道の消長過程を実証的に調査し、樹林化現象が顕在化する空間スケールとその経時変化特性を検討する。次に、観測事実から得られた樹林化特性を用いて解析モデルによる分析を行い、対象河道の治水安全性と樹林化傾向の相互影響関係を確率的に評価する。そして、その結果から河川水系各所の河道に優先順位をつけ、治水安全の観点から戦略的に河川を管理するために最適となる工学的手法を提案する。
本研究では、樹林化した河川の管理手法に関して、現地観測データの分析手法と解析モデルの開発を検討した。観測データ分析では、ドローンによって樹林化河川の経年変化調査を行い、深層学習による精緻な河川地被状態の自動判別モデルを開発し、洪水後の礫河原維持・樹林化再生の素過程を定量評価した。解析モデルでは、決定論的モデルを用いて洪水流による河道地形・植生変化や人為的な伐採後の植生回復状況を再現し、確率論的モデルを用いて洪水規模の違いによる樹林化傾向と治水安全評価の分析を行なった。
日本の多くの河川では1970年代までは10%であった樹木面積が2000年には20%に増加し、全国的に河川の樹林化傾向が顕著である。この河道樹林化は、洪水の流下能力を低下させ、下流で流木被害を引き起こし、平常時の砂州生態系を変質させるなど、河川環境管理上で様々な課題を呈している。本研究の成果はこの課題に対し、最新のドローンとAIによる河川モニタリング手法を開発し、数値解析モデルによる河川生態系・治水安全度の経年変化に対する分析技術を開発したものであり、最近毎年のように頻発する豪雨水害の現状を鑑みると、地球温暖化に適応的な安全・安心の社会発展に資する学術的・社会的意義がある。