科研費 - 戸丸 信弘
-
研究課題/研究課題番号:24H00055 2024年4月 - 2029年3月
科学研究費助成事業 基盤研究(S)
津村 義彦, 東城 幸治, 竹中 將起, 内山 憲太郎, 森 英樹, 戸丸 信弘, 阪口 翔太, 百原 新, 陶山 佳久, 松井 哲哉, 石濱 史子, 後藤 晋
担当区分:研究分担者
我が国の森林生態系の成立過程を解明するために日本の全ての気候帯を代表する多数の樹種と森林昆虫を対象として、統一的なMIG-seq解析を行い、遺伝的多様性、遺伝的地域性、分岐年代推定などを明らかにする。また全種の遺伝結果を類型化する。種間や種内集団間の分岐年代については種分布モデルや化石情報から補正を行い、正確な分岐年代の推定を行う。本研究で得られる全ての結果を統合的解析により遺伝的地域性等のパターン化・種間関係の詳細な解明を行う。産地試験林も活用して種分化などに関わる遺伝子の探索も行う。これらを通じて日本の森林生態系の形成過程を明らかにして、地球温暖化などによる将来の森林生態系の姿を予測する。
-
研究課題/研究課題番号:23H00337 2023年4月 - 2026年3月
科学研究費助成事業 基盤研究(A)
陶山 佳久, 北村 系子, 津村 義彦, Worth James, 内山 憲太郎, 青木 裕一, 戸丸 信弘, 岩泉 正和, 高橋 大樹, 逢沢 峰昭, 玉城 聡
担当区分:研究分担者
日本産針葉樹を対象として、これまでに個々の研究者が収集して従来技術により分析してきたDNAサンプルを集約する。また、これまでの未着手種・地域分を新規・追加採取し、日本産針葉樹全種(39種)のほぼ全分布域を網羅する。これらから次世代DNA分析技術により高精度・高解像度な遺伝的多様性情報を取得してデータベースを構築するとともに、それらの個別解析・統合解析を実施する。統合解析では、共通評価軸によって各種の遺伝的多様性を種間比較する。また、地域集団の情報を全種で重ね合わせ、日本列島における日本産針葉樹の遺伝的多様性・分化の分布パターンを視覚化して統合解析する。
日本産針葉樹の遺伝的多様性の全体像を明らかにし、その情報を森林遺伝資源の有効活用と保全に活かすとともに、他生物を含めた日本と世界の生物地理の理解へと発展させるための研究を進めた。具体的には、我が国における主要林業樹種および主要植生構成種である日本産針葉樹を対象として、これまでに個々の研究者が収集して従来技術により分析してきたDNAサンプルを集約し、それらの分布地等の基礎情報をとりまとめる作業を進めた。また、これまでの未着手種・地域分を新規・追加採取した。その結果、新規に収集したサンプルを含め、合計約13000個体のDNAサンプルもしくはDNA抽出用の組織サンプルを集約した。さらに、それらのうち一部については、次世代DNA分析技術により高精度・高解像度な遺伝的多様性情報を取得して、それらの個別解析を実施した。特にビャクシン属の複数種(シマムロ、オキナワハイネズ、ハイネズ、ネズミサシ、ミヤマネズ群)については、それらの基礎解析をほぼ終了した。一方、モミ属の3種については旧来の分析手法ではあるものの、それらの分子系統地理学的な解析を行い、原著論文として発表した(Uchiyama et al. 2023)。そのほかデータベースについては、その前段階のDNA情報解析ツールのパッケージ化をほぼ完成させたほか、データベースの基本的デザインについて調整を進めた。さらに、地域集団の情報を全種で重ね合わせ、日本列島における日本産針葉樹の遺伝的多様性・分化の分布パターンを視覚化して統合解析する方法については、その主要データの算出手法について検討を進めた。
研究開始当初に把握していた個々の研究者が保有するDNAサンプル約19000個体分のうち、およそ6割のサンプルを集約することができた。残り4割についても、ほぼその所在を確認することができ、今後の集約の目処がたっている。また、これまでの未着手種・地域分として、ビャクシン属とマキ科の樹種を中心として採取を進め、種によってはその採取をほぼ完了することができた。個別解析についてもビャクシン属の複数種を中心として進めることができ、ほぼ解析を完了した。そのほか、旧来の技術を用いたデータ解析をまとめ、原著論文として発表した。
日本産針葉樹を対象として、これまでの未着手種・地域分の新規・追加採取をさらに進める。サンプル収集を終えた樹種についてはMIG-seq法を用いてゲノムワイドなSNP情報を取得し、日本産針葉樹各種の遺伝的多様性と分布変遷として以下の個別解析を実施する。
①種内および地域集団の遺伝的多様性・近交度の評価・比較、②種内地域集団・個体間の系統解析・遺伝的集団構造解析、③集団動態推定、④生態ニッチモデリングによる分布変遷推定
また、個別解析で実施した各種の遺伝的多様性情報をとりまとめ、種・雑種・地域等の特定が可能な次世代DNAバーコーディングシステムの構築をすすめる。さらに、これらの遺伝的多様性情報に関するデータベース構築を進める。 -
集団・比較ゲノミクスアプローチを用いたブナとイヌブナの集団の歴史と適応進化の比較
研究課題/研究課題番号:23H02252 2023年4月 - 2026年3月
科学研究費助成事業 基盤研究(B)
戸丸 信弘, 鳥丸 猛, 内山 憲太郎
担当区分:研究代表者
配分額:18980000円 ( 直接経費:14600000円 、 間接経費:4380000円 )
ブナ属のブナとイヌブナは分布域が異なり、これは環境適応性の差異を反映していると考えられる。本研究では、イヌブナを対象としてゲノムレベルの遺伝解析を行い、種内の進化を明らかにして、すでに研究が進められているブナの結果と比較する。また、両種のゲノムを比較して、種特性としての環境適応性の差異をもたらした自然選択の解明を試みる。以上から、種としてのブナとイヌブナの成り立ちを集団の歴史と環境適応性から理解することを目指す。本研究は、樹木の進化を明らかにするだけでなく、地球温暖化に対する樹木と森林生態系の脆弱性とレジリエンスを評価し、それらの保全策を検討するための重要な知見を提供すると期待される。
-
集団・比較ゲノミクスアプローチを用いたブナとイヌブナの集団の歴史と適応進化の比較
研究課題/研究課題番号:23K26945 2023年4月 - 2026年3月
科学研究費助成事業 基盤研究(B)
戸丸 信弘, 鳥丸 猛, 内山 憲太郎
担当区分:研究代表者
配分額:18980000円 ( 直接経費:14600000円 、 間接経費:4380000円 )
ブナ属のブナとイヌブナは分布域が異なり、これは環境適応性の差異を反映していると考えられる。本研究では、イヌブナを対象としてゲノムレベルの遺伝解析を行い、種内の進化を明らかにして、すでに研究が進められているブナの結果と比較する。また、両種のゲノムを比較して種特性としての環境適応性の差異をもたらした自然選択の解明を試みる。以上から、種としてのブナとイヌブナの成り立ちを集団の歴史と環境適応性から理解することを目指す。本研究は、樹木の進化を明らかにするだけでなく、地球温暖化に対する樹木と森林生態系の脆弱性とレジリエンスを評価し、それらの保全策を検討するための重要な知見を提供すると期待される。
以下の研究成果が得られた。
(1)イヌブナのリファレンスゲノムの構築
ゲノム配列の取得を目的として、イヌブナの成木1個体から葉を採取して長鎖ゲノムを抽出し、Pacbio社のシークエンサーで得られたHiFiロングリードに、アッセンブルツールhifiasmを適用してコンティグを構築した。次に、コンティグとOmni-C法で得られたショートリードに、アッセンブリツールHiRiseを適用してハイブリッドスキャホールディングを実施した。その結果、アセンブリサイズは約424Mb、スキャホールド数は417本、スキャホールドN50は約53Mb、BUSCO解析におけるコア遺伝子セットの99.1%(Single:95.0 %, Double:4.1%)を網羅する配列が得られた。最も長い配列12本は合計アッセンブリサイズが約408Mb(約96%)となり、イヌブナの基本数(12本)と一致する染色体体スケールのリファレンスゲノムを構築できた。
(2)イヌブナの遺伝的多様性と集団構造および集団の歴史の解明
分布域を網羅する33集団の合計392個体のDNAを用いて、ddRAD-seqでSNPジェノタイピングを行い、384個体から2,579SNPの遺伝子型データを取得した。集団遺伝学的解析を行った結果、イヌブナの遺伝的多様性はブナよりも高いことが示された。一方、集団間の遺伝的分化はブナよりも低かったが、東北(E)、中部(C)、中国・四国・九州(W)に分布する3系統に分かれる集団構造が明らかになった。2,798,254サイト(そのうち50,454がSNP)の配列データを用いてコアレセントシミュレーションを行った結果、鮮新世から第四紀更新世に起きた寒冷化による地理的分布の分断化により、まずW系統とC・Eの共通祖先系統に分化し、その後、さらに後者がCとEの系統に分化したことが推定された。
染色体数に対応するリファレンスゲノムを構築できたこと、また、ゲノムワイドなSNPを用いて、遺伝的多様性と集団構造を解明し、集団動態の歴史を推定できたことから、概ね順調に進展していると判断できる。
リファレンスゲノムを完成させ、それを用いて、再度、遺伝的多様性と集団構造の解明および集団動態の歴史推定の解析を行う。また、適応的遺伝的変異の解明を試みる。 -
研究課題/研究課題番号:21K05643 2021年4月 - 2024年3月
科学研究費助成事業 基盤研究(C)
石濱 史子, 岩崎 貴也, 戸丸 信弘, 竹内 やよい
担当区分:研究分担者
本研究では、気候変動影響予測の改善を目的として、種内の遺伝変異を考慮する予測モデルを構築する。適応的一塩基変異、目視可能な表現形質、中立変異の3つのレベルの種内変異の情報を収集した上で、これらを考慮した布推定モデルを構築し、推定結果や精度を比較することで、各レベルの変異に基づくモデルの特徴を明らかにするとともに、気候変動影響予測の改善に有用なレベルを明らかにする。構築した改良モデルにより気候変動影響予測を行い、種内変異を考慮しない予測との比較により、種内変異が気候変動への応答にどのように寄与するかを評価する。
本研究では、気候変動影響予測の改善を目的として、種内の遺伝変異を考慮する分布推定モデルを構築した。種内の遺伝的変異として、適応的一塩基変異(SNP)、目視可能な表現形質、中立変異の3つを検討対象とし、それぞれについて文献・画像データベース・実測によるデータ収集を行った。収集したデータを分析・検討した結果に基づいて、中立変異を考慮した分布推定モデルとして、分化した遺伝的タイプを区別したモデルや、複数のタイプについて同時に分布推定を行う階層モデルを構築し、過去の気候変化における分布推定や、環境応答の推定精度が向上できることを明らかにした。
分布推定モデルは、生物種の分布範囲と環境条件との対応関係から、生息に適した環境を推定する統計学的手法であり、気候変動影響を含めた生物の分布変化予測に幅広く利用される。同じ生物種でも、地域ごとの環境への局所適応があることはよく知られており、その適応は当然、気候変動への応答にも影響する。そのため分布推定でも種内の適応的遺伝変異を考慮する事例が海外で少数出てきているが、手法的な改善の余地が大きい。本研究では、表現形質、適応的SNP(一塩基多型)、中立変異の3つレベルの種内変異の情報に基づく分布推定手法を開発することで手法の汎用性を高める。 -
環境適応遺伝変異の空間モデリングによる主要高木種11種の将来気候下でのリスク評価
研究課題/研究課題番号:21H02240 2021年4月 - 2024年3月
科学研究費助成事業 基盤研究(B)
内山 憲太郎, 津村 義彦, 戸丸 信弘, 加藤 珠理
担当区分:研究分担者
今後数十年の間に予想される急速な温暖化に対する森林樹木の脆弱性の評価は、森林生態系保全上の喫緊の課題である。そこで本研究では、日本全国に広く分布する森林の主要構成樹種11種を対象に、気候変動に対する樹木の応答を、環境適応に関わる遺伝変異と気候データの空間モデリングを通して明らかにする。また、それらの解析を通して、それぞれの樹種において、気候変動の影響を特に強く受ける地域を地図上で明らかにし、今後の森林管理の指針に資する情報を提供する。
温暖化による樹木種への影響を評価するため、日本の主要な高木種11種の自然集団を対象に、ゲノム全域から抽出した適応変異と、気候変数との関係を空間モデリングの手法を用いて解析し、適応変異の地理的分布を明らかにした。次いで、将来気候下において、現在の適応変異の分布がどこでどの程度乱されるかを予測した。その結果、適応変異を説明する主要な気候変数および自然選択が強く働いている地域は樹種により異なっていた。また、それを反映するように、将来気候下での適応度低下が予測される地域も、分布の南端、北方、低地、系統の境界等、樹種ごとに多様であり、温暖化の影響は樹種によって異なる地域で生じる可能性が示唆された。
固着性の樹木種は、生育環境への遺伝的適応を起こしている例が多く、その背景には環境応答に関わる遺伝変異(適応遺伝変異)が存在する。この適応遺伝変異は、樹木種の保全や利用を考える上で重要であるが、その実態はほとんど明らかになっていない。本研究では、日本の主要高木種11種の適応遺伝変異の地理的分布を初めてゲノムワイドに明らかにした。この結果は、広域に分布する樹木種の環境適応を理解する上で極めて有用な情報である。また、本研究では将来気候下での各樹種の適応度低下を実際の地理空間上で予測しており、これは温暖化緩和策や保全計画の立案のための基礎情報として利用可能である。 -
研究課題/研究課題番号:21H04732 2021年4月 - 2024年3月
科学研究費助成事業 基盤研究(A)
津村 義彦, 永松 大, 小林 元, 内山 憲太郎, 戸丸 信弘, 本間 航介, 吉田 俊也, 後藤 晋, 久本 洋子, 高木 正博, 森 英樹, 廣田 充, 種子田 春彦, 飯尾 淳弘
担当区分:研究分担者
地球温暖化などの環境の急激な変化に樹木がどのように応答するかを明らかにするため、ダケカンバの天然分布域全体の11 産地から集めた種子を用いて、世界的に見ても大規模なダケカンバの産地試験林を北海道から九州までの11 箇所に設定した。ダケカンバは主に森林限界周辺の寒冷地に分布するために、温暖化の影響を特に受けやすく、実際にどの程度の温度上昇で生存や成長ができなくなるかは不明である。これらの産地試験林では、樹木の成長と形態形質や光合成関連などの生理形態形質の調査、DNA 解析、遺伝子発現解析を行い、形質の環境適応の程度とその遺伝的支配の強さを明らかにし、地域環境に適応的な候補遺伝子の検出を試みる。
ダケカンバの天然分布域全体から11産地の実生を用いて、大規模な産地試験林を全国11箇所(植栽地)に設定した。その結果、高緯度の集団ほど、高い樹高とSLA、広い葉面積、早い芽吹きを示した。南限集団は他の遺伝的多様性が低く、遺伝的に異なる集団であった。南限の集団と森林限界に近い高標高集団は共に成長などが悪く、前者は遺伝的多様性減少に伴う近交弱勢の影響で後者は自然淘汰の影響が考えられた。遺伝情報から南限集団のダケカンバはほぼ全ての個体が2倍体であった。また植栽地間の比較から、生理特性の産地変異は光合成よりも水利用特性で大きく、成長の悪い産地ほど葉の水利用効率が高いことが明らかになっている。
本研究は地球温暖化に樹木がどのように応答するかを調査するために、亜高山性樹種であるダケカンバを分布域広範11箇所から収集し、全国の温暖な11箇所に産地試験林を設定した。この試験地を用いて3年間、11産地のダケカンバの成長、生理特性、遺伝的特性を調査した。その結果、高緯度の集団ほど、高い樹高とSLA、広い葉面積、早い芽吹きを示した。南限集団の紀伊半島や四国のダケカンバは遺伝的に極めて脆弱であり、地球温暖化が起これば最初に衰退や絶滅が危惧される集団であることが明らかになった。これらの成果から各地域集団は遺伝的に分化しており保全の重要性が明確になった。 -
研究課題/研究課題番号:20H03027 2020年4月 - 2023年3月
科学研究費助成事業 基盤研究(B)
戸丸 信弘, 鳥丸 猛, 内山 憲太郎
担当区分:研究代表者
配分額:18070000円 ( 直接経費:13900000円 、 間接経費:4170000円 )
最新の集団ゲノミクス研究の手法を用いることにより、集団の歴史を推定することだけでなく、これまで困難であった適応進化に関わる遺伝子を探索することも可能となった。本研究では、この手法を用いて、日本列島に広く分布し、落葉広葉樹林の優占種であるブナがどのように進化してきたかを明らかにすることを目的とする。本研究は、樹木の進化を明らかにするだけでなく、地球温暖化に対して、樹木や森林生態系をどのように保全していくのかという課題を検討するための基礎データを提供すると期待される。
日本列島に広く分布し、冷温帯落葉広葉樹林の優占種であるブナを対象として、集団ゲノミクスの手法を用いて、リファレンスゲノムの作成、遺伝的多様性と集団遺伝構造の把握、集団動態の歴史推定、および適応進化に関わる遺伝子の探索を行った。種内には3つの集団系統(日本海側、太平洋北東側、太平洋南西側)による明瞭な集団遺伝構造が存在し、それは主に中立進化の帰結であると考えられる。一方、集団系統の間には気候勾配に関連した多様化選択による適応的差異が生じていることが示唆され、これは適応進化の結果である可能性がある。
本研究は、森林樹木における種内の中立進化と適応進化を理解することに寄与すると考えられる。また、近年、急激な気候変動に対する生態系やそれを構成する生物の存続が危惧され、様々な生物の適応ポテンシャルを明らかにするための集団ゲノミクス研究が行われている。本研究は、現在起きている急激な気候変動に対する森林生態系と森林樹木の脆弱性とレジリエンスを評価し、それらの保全策を検討するための重要な知見を提供すると期待される。 -
研究課題/研究課題番号:17H03830 2017年4月 - 2020年3月
科学研究費助成事業 基盤研究(B)
戸丸 信弘, 石田 清, 中川 弥智子
担当区分:研究代表者
配分額:15210000円 ( 直接経費:11700000円 、 間接経費:3510000円 )
シデコブシの自生地周辺にはコブシは分布しないが、植栽個体や逸出した個体が存在することがあるため、両種の間で交雑が生じている可能性がある。この交雑を介してシデコブシの絶滅リスクが高められている恐れがある。本研究では、国内外来種コブシとの交雑が希少種シデコブシの存続に及ぼす影響を評価した。調査の結果、種間交配によって雑種が形成されていること、さらにシデコブシと雑種の戻し交配によりコブシからシデコブシへ遺伝子浸透が生じる可能性があること、コブシや雑種からの送粉により繁殖干渉を受けて純粋なシデコブシの種子数が減少することなどが明らかとなり、コブシはシデコブシの存続に悪影響を及ぼすことがわかった。
樹木の遺伝子汚染を明らかにした研究はあまり見当たらない中で、様々な技術・手法を用いてシデコブシとコブシの交雑がもたらす遺伝子汚染の可能性を指摘した点に学術的意義が見出される。
東海地方の湧水湿地では落葉広葉樹が芽吹く前に、シデコブシの美しい花が一斉に開花し、早春の里山を彩る。シデコブシは湿地保全をアピールする象徴的な種である。コブシとの交雑がシデコブシの絶滅リスクを高めることが明らかになったため、コブシを安易に植栽することやコブシが逸出することの危険性を社会に知らしめることは、シデコブシの保全に繋がるだけでなく、象徴種であることから樹木の外来種問題や関連する問題を社会に周知するよい機会にもなる。 -
ブナ林の断片化がブナ集団の遺伝的多様性と繁殖に及ぼす影響
2013年4月 - 2016年3月
科学研究費補助金 基盤研究(B)
戸丸信弘
担当区分:研究代表者
-
ブナ集団における適応的遺伝子の探索と生態的意義
2008年4月 - 2011年3月
科学研究費補助金 基盤研究(B)
戸丸 信弘
担当区分:研究代表者
-
針葉樹の雑種苗の分子識別と起源推定
2007年4月 - 2010年3月
科学研究費補助金 基盤研究(B)
津村義彦
担当区分:研究分担者
-
葉緑体ゲノムのSNPを用いたブナの分子系統地理学的・環境適応的研究
2007年4月 - 2010年3月
科学研究費補助金 基盤研究(B)
高橋誠
担当区分:研究分担者
-
フタバガキ科の系統地理学的研究と産地識別のための塩基配列データベースの構築
2006年4月 - 2010年3月
科学研究費補助金 基盤研究(A)(海外学術調査)
津村義彦
担当区分:研究分担者
-
湿地林を構成する希少木本種の繁殖と更新に及ぼす遺伝的荷重の影響の解明
2006年4月 - 2009年3月
科学研究費補助金 基盤研究(B)
石田清
担当区分:研究分担者
-
絶滅危惧種シデコブシの保全を目指した遺伝子流動と近交弱勢に関する研究
2004年4月 - 2006年3月
科学研究費助成事業 基盤研究(B)
戸丸 信弘
担当区分:研究代表者
-
アマゾン川流域およびギニア高地における木本植物の進化と木部形態形成
2003年4月 - 2006年3月
科学研究費助成事業 基盤研究(A)
福島 和彦
担当区分:研究分担者
-
森林生態系の維持機構に関する個体群統計学・分子集団遺伝学的研究
2003年4月 - 2004年3月
科学研究費補助金 基盤研究(C)(1)(企画調査)
山本進一
担当区分:研究分担者
-
分子生態遺伝学的手法による森林動態に関する研究
2002年4月 - 2005年3月
科学研究費補助金 基盤研究(A)
山本進一
担当区分:研究分担者
-
メソスケールでの森林現象動態モニタリング技術の基盤確立
2001年4月 - 2004年3月
科学研究費補助金 基盤研究(A)(2)(展開)
山本進一
担当区分:研究分担者