科研費 - 杉山 直
-
研究課題/研究課題番号:21H04467 2021年4月 - 2026年3月
科学研究費助成事業 基盤研究(A)
杉山 直, 市來 淨與, 大内 正己, 高橋 慶太郎
担当区分:研究代表者
配分額:41860000円 ( 直接経費:32200000円 、 間接経費:9660000円 )
宇宙では誕生後およそ1億年頃に、最初の星が誕生したと考えられている。しかし未だこの最初の星を直接観測した例はなく、この「宇宙の夜明け」の時期に、どのように宇宙全体に星や銀河が誕生していったのか、その詳細については全くわかっていない。本研究計画では、宇宙に漂う水素を主な成分としたガスが、最初に誕生した星々からの紫外線によって電離(プラズマ化)する過程を、電波観測によって観測することで、宇宙の夜明けの解明に迫る。具体的には、オーストラリアにある電波望遠鏡群MWAを用い、水素が出したり吸収したりする電波を観測し、その結果を数値シミュレーションと比較することで、宇宙の夜明けの物理過程を明らかにする。
-
長波長電波観測による宇宙再電離と磁場研究の新展開
2017年4月 - 現在
科学研究費補助金 基盤研究(A)
杉山 直
担当区分:研究代表者
-
長波長電波観測による宇宙再電離と磁場研究の新展開
研究課題/研究課題番号:17H01110 2017年4月 - 2020年3月
杉山 直
担当区分:研究代表者
配分額:44070000円 ( 直接経費:33900000円 、 間接経費:10170000円 )
本年度は、まず宇宙再電離期の中性水素21cm線観測へむけて、他のシグナルとの相互相関をとることで前景放射の影響を軽減する手法に着目した。宇宙再電離期にあるLyα輝線天体(LAE)との相互相関に着目した研究では、理論シミュレーションを用いて21cm線の検出の可能性を検証した。シミュレーションデータとすばる望遠鏡のデータとの比較から、観測をよく再現できるモデルであることの確認を行った。また、LAE同定には機械学習を用いた方法を考案し、約95%の精度で自動分類することに成功した。現行の電波望遠鏡MWAや将来計画であるSKAで検出できる可能性があることを示した。しかし、相互相関後も前景放射の影響は大きいことも確認した。これらの結果は3本の学術論文としてまとめた。さらに、21cm線と宇宙マイクロ波背景放射(CMB)との相互相関に着目した研究も行い、実際のMWAの観測データとPlanckの温度揺らぎのデータを用いて、世界で初めて21cm線-CMB相互相関について上限を与えることに成功し、学術雑誌に発表した。
次に、近年EDGESで検出された全天域平均21cmシグナルの観測結果にも着目し、原始揺らぎのパワースペクトルや宇宙初期の磁場強度への制限も行った。
宇宙磁場の研究については、初年度に投稿した乱流磁場による偏波解消効果の定式化の研究を完成させ、MWAのデータを使い銀河団外縁の磁場の研究を実施した。研究分担者の赤堀は、パースに滞在し、研究対象のMWAのイメージ解析を行った。その結果、従来のイメージ改善では、当該の観測領域の所望のイメージ品質を得ることができないことが分かった。視野内に非常に明るい点源がある中で淡い広がった放射を検出する必要があり、高いダイナミックレンジを達成しなければならなかった。他にも、広い意味の長波長電波天文の研究を展開し、6件の学術論文を出版した。
次世代超大型電波干渉計SKAの試験機としての役割をもち、独自のサイエンスの成果も続々と出しているMWA計画に参画することができた。その結果、そこから得られたデータと宇宙マイクロ波背景放射の温度ゆらぎのデータの相関をとる研究や、我々日本グループが独自で入手できるすばる望遠鏡超広視野カメラHSCの画像データなどから、SKAやMWAの前景放射除去の可能性を論じる研究など、他では真似のできない独自性の高い研究を活発に進めることができた。
宇宙磁場の研究に関しても、オーストラリア・パースに滞在、実際のMWAのデータを取得し、イメージ解析を行うことができた。現地に滞在することではじめて、従来のイメージ改善では当該の観測領域の所望のイメージ品質を得ることができないことが分かったことは収穫である。
また、サイエンスの成果は、学術論文としてまとめ、査読付き国際学術誌に投稿、当該年度だけで、20本が出版されるに至った。
引き続き宇宙再電離21cm線に関してMWAとの共同研究を進める。大学院生をメルボルン大学に派遣して観測データの取得やデータ解析の習得を図るとともに、相互相関解析のためのソフトウェアを開発する。LAEとの相互相関においては、相関相関パワースペクトルの形が電離光子源の特性に関わることに着目し、相互相関パワースペクトルから得られる情報を理論的に明らかにしていく。同時にMWA phase 2データとすばるHSCのLAEサーベイのデータを用いて、それらの相互相関を解析し、上限をつけることを目標とする。LAEのサンプルに関しては、作成した機械学習をもちた分類器をすべてのカタログに適用することで、従来の結果を大きく凌駕する宇宙再電離期のLAEの巨大カタログを作成し、これをMWAデータ解析グループに提供する。また、MWAデータの自己相関についてはパワースペクトルだけでなくバイスペクトルや1点関数など、多様な統計量についての解析も行う。
また、前景放射の影響が比較的抑えられると考えられる重力レンズ効果と21cmシグナルの相互相関についても取り組む。これまでの研究に基づき前景放射のモデルを作成し、前景放射の有無と、除去後での相互相関のシグナルの大きさを見積もる。
磁場の研究に関しては、昨年度のデータ解析によって、古典的なイメージ解析方法ではMWAの性能を最大限にまで引き出せないことがわかったので、先進的なイメージ解析方法の調査と習得を行い、MWAの実際のデータに適用して結果の改善を確認することを行う。先進的なイメージ解析法の候補として、宇宙再電離研究で用いられている方法(RTS)、またはDD(direction-dependent)自己較正法を検討しているところである。改善後、銀河団外縁部の磁場の研究を実施し科学的成果を得ることを目指す。 -
なぜ宇宙は加速するのか?-徹底的究明と将来への挑戦-(国際活動支援班)
研究課題/研究課題番号:15K21733 2015年11月 - 2020年3月
新学術領域研究(研究領域提案型)
村山 斉
担当区分:研究分担者
本領域では、宇宙の極初期、 また現在の宇宙の加速膨張の物理を解明することを目的とした。本国際共同研究加速基金に関連して、以下の主な研究成果が得られた。本領域の観測、実験研究の国際共同研究を円滑かつ効率的に進めた。若手研究者が中心となり、独立な国際共同研究である宇宙背景放射実験POLARBEARとすばるHyper Suprime-Camのあいだの国際共同研究を成立させ、2つのデータから宇宙構造の重力レンズの物理的相関を世界で初めて検出した(Namikawa et al. 2019)。すばるHSC国際共同研究において、宇宙論パラメータを高精度に測定した(Hikage et al.2019)。
本領域研究の目的は、宇宙加速膨張の原因と究明、また加速膨張に逆らって銀河・銀河団の形成を引き起こすダークマターとのせめぎ合いの理解である。本領域の観測・実験的研究は、宇宙背景放射(CMB)探索、広天域銀河サーベイ、30m大型望遠鏡計画といずれも国際共同研究で進められており、その円滑な推進、国際情勢の確認を目的として分野をリードする著名研究者、若手研究者の招聘を行い、海外ネットワーク形成にも繋がった。また、その活動を通じて関係する大学院生・若手研究者の啓蒙活動・育成にも貢献し、長期的には物理学・天文学の国際社会における日本の存在感を維持・向上させることができた。 -
ダークエネルギーの理論モデル構築とその観測的検証
2015年6月 - 2020年3月
科学研究費補助金 新学術領域研究(研究領域提案型)
杉山直
担当区分:研究代表者
-
ダークエネルギーの理論モデル構築とその観測的検証
研究課題/研究課題番号:15H05890 2015年6月 - 2020年3月
新学術領域研究(研究領域提案型)
杉山 直
担当区分:研究代表者
配分額:45370000円 ( 直接経費:34900000円 、 間接経費:10470000円 )
現在の宇宙の加速膨張を説明するために様々なモデルを考え、その観測による検証について考察した。
まず、ダークエネルギーが、スカラー場の真空エネルギーによって担われている可能性について、通常の場合に行なっている空間の曲率を平坦に仮定するという制限を設けず、一般の曲率の場合について宇宙マイクロ波背景放射の温度ゆらぎの最新観測であるPLANCK衛星の結果を用いて、制限を与える一連の研究を行った。
次に、ダークエネルギーが流体のようなダイナミカルな性質を持つ場合について検討を行った。この場合には、宇宙の大規模構造を反映してそのエネルギー密度に空間的な揺らぎを伴うことが予想される。そこでダークエネルギーの密度揺らぎがボイドの数分布、およびサイズ分布に及ぼす影響を解析的に評価した。
さらに、ダークエネルギーの代替となる修正重力理論についても検討を進めた。新たに考えたモデルとしては、 F(G) 重力模型にラグランジェ乗数場を導入したもの、スカラー場の高階微分を持つ模型とF(R)重力理論を合わせた模型などである。また、展開半径というものを拡張重力理論で求め、模型に対する観測的な制限を求めた。更に、ツァリス統計と拡張重力理論の関係を考察し、その統計性に基づく模型の構成、宇宙項の量子的な問題を解決するために位相的場の理論の模型を考察したほか、磁場中や粘性流体中での重力波の伝播を研究し、宇宙論的な制限について考察した。中性子星合体からの重力波の伝搬速度が光速と矛盾がない、という観測事実から、それと矛盾しないスカラーテンソル理論に基づくダークエネルギーモデルを新たに構築し、その観測的な兆候を明らかにする研究も進めた。また、スカラーベクトルテンソル理論に基づく宇宙論、特に線形密度ゆらぎの従う基礎方程式と安定性の条件を一般的に導出し、その結果をダークエネルギーの物理に応用した。
これまで、順調にダークエネルギーに関係する研究成果をあげることに成功してきている。今年度も、様々なモデルを提案、それらを観測的に制限することに成功してきた。
査読付き国際学術誌に22本論文を発表し、またそれらの多くが国際共同研究であることなど、研究成果という点を評価軸とすれば、極めて順調に推移してきていると言えよう。
最終年度となる2019年度は、これまでの研究をさらに進め、またまとめとなる国際会議を開催することを検討している。
具体的な研究内容として、まず、近年提案されたバリオン音響振動の新しい観測量が修正重力モデルや時間変化するダークエネルギーモデルにおいて、どれほど安定した観測量として用いることができるかについて精査する。
次に、拡張重力理論について、拡張重力に現れるスカラー粒子がダークマターとなる可能性からの検証、重力波の伝播の違いによる検証、宇宙の大規模構造形成による検証を行う。ダークマターについてはF(R)重力以外の拡張重力理論についても考察を行う。重力波の伝播についてはこれまでにスカラー・テンソル理論、F(R)重力理論、粘性流体理論について調べてきたが、他の様々な模型における伝播についても明らかにする。宇宙の大規模構造の非摂動論的研究についても繰り込み群的な手法を取り入れる。これらの知見から、アインシュタイン重力理論の背後にある量子論との整合性を持つ重力理論についての手掛かりを得る。
さらに、スカラーベクトルテンソル理論のダークエネルギーへの応用に関する研究、特に理論の観測的な兆候について精査する。そこでは、理論的に有効な模型の絞り込みを行い、さらに今後得られる重力波の最新の観測データと、宇宙背景放射、大規模構造、重力レンズ、さらに超新星などのデータを用いた統合的な解析を行い、モデルの選別を行っていく。それに加えて、これら宇宙の加速膨張のモデルをブラックホールや中性子星のような強重力天体に適用し、理論の兆候を重力波の観測から探る可能性について研究していく。 -
宇宙磁場の生成と構造形成に及ぼす影響
2013年4月 - 2017年3月
科学研究費補助金 基盤研究(B)
杉山 直
-
銀河分布を用いたダークエネルギーの研究
2006年4月 - 2012年3月
科学研究費補助金 特定領域研究
杉山 直
担当区分:研究代表者
-
初期天体形成と背景放射
2005年4月 - 2009年3月
科学研究費補助金 基盤研究(C)
杉山 直
担当区分:研究代表者