科研費 - 寺崎 一郎
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研究課題/研究課題番号:24K21528 2024年6月 - 2027年3月
科学研究費助成事業 挑戦的研究(萌芽)
寺崎 一郎
担当区分:研究代表者
配分額:6370000円 ( 直接経費:4900000円 、 間接経費:1470000円 )
熱電材料とは、電子の熱電現象を利用して熱エネルギーと電気エネルギーを相互に変換する機能性材料のことです。従来、熱電材料は半導体をベースに開発されており、半金属は 熱電材料としては問題外とされてきました。半金属には負の電荷をもつ電子と、正の電荷をもつホールが共存し、典型的な半金属では熱電効果が相殺するからです。しかし半金属では、電子・ホールの移動度が極めて高く、2つの伝導率が極端に違う系は優れた熱電材料になりえます。本研究ではどのような半金属が優れた熱電材料となるかを実験とマテリアルデータベースの共用によって明らかにします。実際の物質系としてはセレン化物と酸化物で開発を行います。
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研究課題/研究課題番号:22H01166 2022年4月 - 2026年3月
科学研究費助成事業 基盤研究(B)
寺崎 一郎, 中村 文彦, 岡崎 竜二
担当区分:研究代表者
配分額:17420000円 ( 直接経費:13400000円 、 間接経費:4020000円 )
本研究では、モット絶縁体Ca2RuO4において、電流印加で生じる非平衡定常状態を特徴付ける特性時間を、巨大電歪効果、電界効果、3次高調波などの新規な実験手法によって明らかにします。そ
のために名古屋大学、久留米工業大学、東京理科大学の研究グループが、それぞれの強みを活かしつつ、互いに相補的な活動を展開します。これらのグループの連携によって、「定常」状態における「時間」を調べることにより、非平衡定常状態の研究に新たな視点を提供します。また、電場・電流による格子巨大変形についてはCa2RuO4がピエゾ素子の100倍以上の応答を示すことから、その社会実装に向けた素子開発の指針も提案します。
本研究では、モット絶縁体Ca2RuO4において、電流印加で生じる非平衡定常状態を特徴付ける特性時間を、巨大電歪効果、電界効果、3次高調波などの新規な実験手法によって明らかにする。
第1年次は研究体制の確立が主な目標であった。年度の成果を議論するために3月にZoomでミーティングを行い、今後の研究方針について意見交換を行った。
寺崎は、中村から提供された試料を用いて面直方向の電歪効果の電流依存性、温度依存性を精密に計測した。また、参照物質としてVO2の単結晶成長に挑戦し、良質な単結晶を得た。現状では、微量のアルミニウムがボートから混入しているものの、非線形伝導や電子相転移は文献結果を再現している。これまでCa2RuO4に適用してきた赤外温度計を用いた非線形伝導の電流密度依存性の計測、そこから見積もられるエネルギーギャップの電流依存性はCa2RuO4とよく似ていた。ところが予想外であったが、VO2では現状では電歪効果はほとんど見られなかった。Ca2RuO4との詳細な比較を次年度行う。
中村はCa2RuO4表面に電気二重層トランジスター構造を構築し、数ヶ月以上に渡る電界効果を計測し、5ヶ月程度でほとんど金属化することを見出した。また、金属インジウム、VO2、Ca2RuO4について示差熱分析や示差走査熱量分析を行い、掃引速度の相転移依存性を観測した。その結果、Ca2RuO4の相転移が極めて異常であることを見出した。
岡崎は非線形伝導を示す分子性導体において2端子法による3次高調波の周波数依存性を詳細に測定し、論文に出版した。Ca2RuO4にこの技術を適用するために測定系を4端子に拡張することを試みている。
研究代表者と2人の研究分担者は順調に研究環境を整備し、各自が成果を出しつつある。中村は熱分析装置に温度変調システムを組み込み、多様な掃引速度における熱分析を可能とし、インジウムやVO2の一次相転移を計測できた。岡崎は高調波計測システムを用いた強相関電子系の非線形伝導現象を計測に成功した。研究代表者はCa2RuO4の電歪効果の計測に成功し、その再現性や様々な条件での計測を行った。得られた結果は予備的実験の結果を再現している。また3年次以降に展開するVO2の結晶成長に成功し、その化学的評価や基礎輸送現象の測定を終えた。その結果、3年次の研究を前倒しして開始できた。詳細な結晶構造解析を行った結果、得られた単結晶には微量のアルミニウムが混入していることがわかった。これは用いたアルミナるつぼからの混入と思われる。この混入により特徴的な単斜晶の結晶が得られている。これらの結果を考慮して、研究はおおむね順調に進展していると判断した。
コロナ禍も概ね収束し、研究も日常が戻りつつある。今後は対面での意見効果を行うとともに、関連研究者を招待したミニ研究会を企画してゆきたい。実験については1年次の研究を進展させつつ、それぞれの物性の特性時間の抽出を行いたい。Ca2RuO4とVO2は、ともに同じような温度で、構造相転移を伴う金属絶縁体転移を示す系だが、相転移の振る舞いを非線形伝導で調べると違いが際立ってきた。今後、両者の比較から強相関系の非線形伝導の特徴を抽出したい。電歪効果としてはCa2RuO4は従来のピエゾ素子の10倍の応答を示すのに対し、VO2ではほとんど電歪が見られない試料があり、試料依存性が大きい印象を得た。まずは再現性、試料依存性を明らかにすることが必要である。本年度はアルミナるつぼを用いて作成したために微量なアルミニウムの混入があった。次年度は、まずはプラチナるつぼを用いて結晶成長を行い、より純良な試料の作成に挑戦する。 -
教育DXによる理数の学びシステムの開発と評価:学びの質の変革を目指して
研究課題/研究課題番号:22H00085 2022年4月 - 2026年3月
科学研究費助成事業 基盤研究(A)
安野 史子, 根上 生也, 川添 充, 西村 圭一, 寺崎 一郎, 中村 泰之, 菅原 義之, 中川 正樹
担当区分:研究分担者
本研究は,理数教育において,デジタルの特性を活かしたデジタル教材(評価問題を含む)を学びの中に取り入れ,リアル空間(人間の思考を含む)とデジタル空間の融合となる「学びのシステム」を設計,実装し,このシステムを利用した実践を通して,性能の評価までを行い,子どもたちの探究的な学びや創造的な学びの促進,強化,向上を目指す。最終的には,このシステムを用いた実践を通し,授業設計も含めた学びの質的変革を目指す。
本研究は,理数教育において,デジタルの特性を活かしたデジタル教材(評価問題を含む)を学びの中に取り入れ,リアル空間(人間の思考を含む)とデジタル空間の融合となる「学びのシステム」を設計,実装し,このシステムを利用した実践を通して,性能の評価までを行い,子どもたちの探究的な学びや創造的な学びの促進,強化,向上を目指す。最終的には,このシステムを用いた実践を通し,授業設計も含めた学びの質的変革を目指すものである。
研究代表者,研究分担者,研究協力者で研究委員会を組織し,海外の関連研究者からも,研究計画・方法に対する助言を得たりしながら,研究プロジェクト方式で研究を推進している。本年度は,数学班5回,物理班4回,化学班5回,システム班1回の会合を開催し,数学班・物理班・化学班では,具体的に,デジタル教材の作成・検討及びその実践活用について議論を行った。
また,その中に含まれるコンテンツのログの取得及びその活用方法についての議論やログ取得のプロトタイプの作成も行っている。
海外の動向調査として,フランスのリセでの視察調査を行った。ドイツの研究協力者と頻繁に,動的幾何ソフト(Dynamic Geometry software: DGS)の埋め込みからの操作ログや変数取得についての検討をし,サンプル作成に着手した。
依然として,学習管理システム(LMS)やそれに付随する既存のプラグインとの関連性から,デジタルコンテンツの操作ログの収集方法の検討に想定以上の時間を要している。また,独自開発のプラグインについても,ユーザ側のOSや端末種類によるテストで,一部の端末で不具合が生じていて,その解消に時間を要している。
ログ収集が一部であっても可能な範囲内で,開発コンテンツをシステムに組み込み,実践調査の実施を目指す。追加のログ収集が可能になった時点で,拡張を行う。 -
研究課題/研究課題番号:23K22437 2022年4月 - 2026年3月
科学研究費助成事業 基盤研究(B)
寺崎 一郎, 中村 文彦, 岡崎 竜二
担当区分:研究代表者
配分額:17420000円 ( 直接経費:13400000円 、 間接経費:4020000円 )
物質に電極を付けて電源に接続し、電流を通電すると電流に比例した電圧が発生する。これはオームの法則として知られるありふれた状態に見えるが、電流・熱・エネルギーの流れがあるために、厳密には熱力学や統計力学が適用できない状態である。それが顕著な場合が、伝導電子同士が強く相互作用するためにオームの法則に従わない物質である。本研究ではそうした物質を対象として、熱・統計力学を拡張できるような基礎実験結果を得ることに挑戦する。こうした物質では電流を流すと結晶のサイズも変わるので、それを応用した素子設計の提案も行う。
本研究では、モット絶縁体Ca2RuO4において、電流印加で生じる非平衡定常状態を特徴付ける特性時間を、巨大電歪効果、電界効果、3次高調波などの新規な実験手法によって明らかにする。
第1年次は研究体制の確立が主な目標であった。年度の成果を議論するために3月にZoomでミーティングを行い、今後の研究方針について意見交換を行った。
寺崎は、中村から提供された試料を用いて面直方向の電歪効果の電流依存性、温度依存性を精密に計測した。また、参照物質としてVO2の単結晶成長に挑戦し、良質な単結晶を得た。現状では、微量のアルミニウムがボートから混入しているものの、非線形伝導や電子相転移は文献結果を再現している。これまでCa2RuO4に適用してきた赤外温度計を用いた非線形伝導の電流密度依存性の計測、そこから見積もられるエネルギーギャップの電流依存性はCa2RuO4とよく似ていた。ところが予想外であったが、VO2では現状では電歪効果はほとんど見られなかった。Ca2RuO4との詳細な比較を次年度行う。
中村はCa2RuO4表面に電気二重層トランジスター構造を構築し、数ヶ月以上に渡る電界効果を計測し、5ヶ月程度でほとんど金属化することを見出した。また、金属インジウム、VO2、Ca2RuO4について示差熱分析や示差走査熱量分析を行い、掃引速度の相転移依存性を観測した。その結果、Ca2RuO4の相転移が極めて異常であることを見出した。
岡崎は非線形伝導を示す分子性導体において2端子法による3次高調波の周波数依存性を詳細に測定し、論文に出版した。Ca2RuO4にこの技術を適用するために測定系を4端子に拡張することを試みている。
研究代表者と2人の研究分担者は順調に研究環境を整備し、各自が成果を出しつつある。中村は熱分析装置に温度変調システムを組み込み、多様な掃引速度における熱分析を可能とし、インジウムやVO2の一次相転移を計測できた。岡崎は高調波計測システムを用いた強相関電子系の非線形伝導現象を計測に成功した。研究代表者はCa2RuO4の電歪効果の計測に成功し、その再現性や様々な条件での計測を行った。得られた結果は予備的実験の結果を再現している。また3年次以降に展開するVO2の結晶成長に成功し、その化学的評価や基礎輸送現象の測定を終えた。その結果、3年次の研究を前倒しして開始できた。詳細な結晶構造解析を行った結果、得られた単結晶には微量のアルミニウムが混入していることがわかった。これは用いたアルミナるつぼからの混入と思われる。この混入により特徴的な単斜晶の結晶が得られている。これらの結果を考慮して、研究はおおむね順調に進展していると判断した。
コロナ禍も概ね収束し、研究も日常が戻りつつある。今後は対面での意見効果を行うとともに、関連研究者を招待したミニ研究会を企画してゆきたい。実験については1年次の研究を進展させつつ、それぞれの物性の特性時間の抽出を行いたい。Ca2RuO4とVO2は、ともに同じような温度で、構造相転移を伴う金属絶縁体転移を示す系だが、相転移の振る舞いを非線形伝導で調べると違いが際立ってきた。今後、両者の比較から強相関系の非線形伝導の特徴を抽出したい。電歪効果としてはCa2RuO4は従来のピエゾ素子の10倍の応答を示すのに対し、VO2ではほとんど電歪が見られない試料があり、試料依存性が大きい印象を得た。まずは再現性、試料依存性を明らかにすることが必要である。本年度はアルミナるつぼを用いて作成したために微量なアルミニウムの混入があった。次年度は、まずはプラチナるつぼを用いて結晶成長を行い、より純良な試料の作成に挑戦する。 -
研究課題/研究課題番号:20K20898 2020年7月 - 2023年3月
科学研究費助成事業 挑戦的研究(萌芽)
寺崎 一郎
担当区分:研究代表者
配分額:6370000円 ( 直接経費:4900000円 、 間接経費:1470000円 )
室温で強磁性を示す半導体は、次世代デバイスに欠かせない物質でありながら、未だ決定的な物質は見つかっていない。本研究代表者は層状パラジウム酸化物PbPdO2がFeとLiの共置換によって室温で強磁性を示す半導体となることを発見した。しかしこの強磁性はこれまでの理論では全く理解できない。本研究で、強磁性機構の解明とその制御を目指す。
本研究代表者が発見した新しい層状強磁性半導体PbPdO2はあらゆる意味で従来の強磁性半導体と異なる特徴を持つ。この強磁性発現機構を明らかにするため、この系の磁気相図の確立と、単結晶を用いた精密測定を行った。磁気相図は複雑でFeとLiを同時に置換することで強磁性が発現するがFeとLiに最適値が存在することがわかった。単結晶の成長に成功し、層方向の輸送測定に成功しその結果、置換されたFeイオンはアクセプタとして振る舞い、系にホールを供給していることがわかった。また研究の途上で、同じPd系半金属Ta2PdSe6が巨大なペルチェ伝導度を示すことを発見した。
本研究で見出された強磁性半導体PbPdO2は、磁性イオンのFe置換では強磁性を示さず、非磁性イオンであるLiを同時に置換して始めて高温強磁性を示す。これは従来の強磁性半導体と全く異なる特徴であり、強磁性半導体設計の未知の指針があることを示唆している。単結晶の成長と精密測定の結果も、我々の直感に反する異常なものであり、置換されたFeがドーパントとして働くことはこれまでの遷移金属酸化物の化学から、極めて特異である。周辺物質として見出したTa2PsSe6は10 Kで巨大なペルチェ伝導度を示し、Pd系半金属の豊かな物性を示すとともに、低温における新しい熱電変換の可能性を提示している。 -
界面制御による高機能薄膜材料創製 国際共著
研究課題/研究課題番号:19H05791 2019年6月 - 2024年3月
科学研究費助成事業 新学術領域研究(研究領域提案型)
太田 裕道, 寺崎 一郎, 齊藤 圭司
担当区分:研究分担者 資金種別:競争的資金
配分額:7280000円 ( 直接経費:5600000円 、 間接経費:1680000円 )
物質の原子スケールにおける熱伝導や電子伝導を可視化することができれば、新しい材料やデバイス開発に繋がります。本研究では、目に見える大きさのものとは全く異なる熱輸送特性や電子輸送特性を示す原子スケールの特殊な界面を「機能コア」と位置づけ、超精密な薄膜・デバイス作製技術を駆使して機能コアを導入したモデル材料を作製し、相界面における熱輸送特性や電子輸送特性を調査し、巨大機能の発現とその制御を目指します。
[1] 無駄に捨てられている廃熱を電気に変換する「熱電変換材料」が注目されているが、これまでに発見されたテルル化物やセレン化物は熱・化学的に不安定で、毒性元素を含むものがほとんどであった。本研究では、空気中、600℃においても安定で、テルル化物に匹敵する特性を示すBa1/3CoO2を発見した。
[2] 電気スイッチにより熱流をコントロールする熱トランジスタが注目されているが、これまでに発表された熱トランジスタは液体を用いているため実用化に向かないという問題があった。本研究では、世界初となる全固体電気化学熱トランジスタを実現した。
【学術的意義】 機能コアの考え方をうまく利用することで、物質の熱伝導率を制御することに成功した。得られた知見は、熱電材料の更なる高性能化や、熱トランジスタのオン/オフ比改善に繋がるものである。
【社会的意義】 高温・空気中で使用可能な熱電変換材料が実現したことで、火を使った際に発生する廃熱を電気に変換することが可能な技術に繋がる。全固体熱トランジスタが実現したことで、廃熱を使った熱のディスプレイなど、人間の目には見えない赤外線を情報として利用することが可能になる。 -
研究課題/研究課題番号:18H01173 2018年4月 - 2022年3月
科学研究費助成事業 基盤研究(B)
寺崎 一郎, 堀田 知佐, 安井 幸夫
担当区分:研究代表者
配分額:17160000円 ( 直接経費:13200000円 、 間接経費:3960000円 )
本研究代表者は2017年に新奇なスピン液体候補物質Ba3ZnRu2O9を発見した。本研究では、このスピン液体を実験と理論の両面から調べた。実験的には、小さい比熱の異常と、中性子回折による磁気反射を100K以下で見出した。これは非常にかすかな磁気秩序があることを示す。さらに我々は、磁気秩序と液体的にゆらぐスピンが共存していることをμSRで明らかにした。その意味でこの系は他のスピン系にはない基底状態を持つ。理論的に我々は、この状態が2次元反強磁性ダイマー三角格子の理論でもサポートされることを明らかにした。また非磁性不純物の置換による弱強磁性の発見など、新しい磁気相も発見した。
磁性体の研究は物性物理学の王道である。我が国においては本多光太郎先生以来の長い伝統を持ち、世界的にも優れた成果を発信している分野である。本研究はその伝統に連なるものであり、磁性の源となるスピンがペアで3次元格子を作ったとき、どのような磁性が生じるかを実験的・理論的に明らかにした。本研究を通じて我々が見出した状態は、液体のように揺らぐスピンと、きちんと向きが固まって固体のように振る舞うスピンが共存した状態である。これはこれまでに知られていない新しい磁気基底状態であり、磁気物理、統計物理、固体量子論の進展に貢献できる成果である。さらに、乱れを導入することで、弱い強磁性相が生じることも発見した。 -
直流電場・電流:強相関電子系の新しい制御パラメータ 国際共著
研究課題/研究課題番号:17H06136 2017年5月 - 2022年3月
科学研究費助成事業 基盤研究(S)
前野 悦輝, 中村 文彦, 寺崎 一郎, 菊川 直樹, 吉田 鉄平, 岡崎 竜二, 鈴木 孝至
担当区分:研究分担者 資金種別:競争的資金
配分額:520000円 ( 直接経費:400000円 、 間接経費:120000円 )
強相関多体効果の本質を顕在化させる新しい制御パラメータとして直流電場・電流の有効性を明らかにするため、主に定常電流下の非平衡状態が創り出す新現象を探求するとともに、その機構の理解を深めた。
ルテニウム酸化物Ca2RuO4を主な研究対象にして、電流によるモット・エネルギーギャップの減少や、新奇な熱電現象・格子変形を明らかにし、サーマル・イメージングによる構造一次相転移に伴う局所温度分布や相分離分域構造も明らかにした。これらの研究では、電流による試料のジュール発熱の効果が非常に大きいため、その中で正確な計測をするための実験プロトコルの確立にも注力した。
定常電流による物性制御は、電子間の相互作用の強い物質の本性を活かしたものである。「直流電場・電流」という新しい制御パラメータで、従来実現出来なかった電子状態を誘起できる可能性を拓いたことの学術的意義は大きく、熱電エネルギー変換の新機構などへの応用にもつながる。近年、固体への光照射後の高速緩和現象の研究が著しい発展を遂げているが、定常電場・電流による非平衡定常状態への注目度も増している。現象を正確に把握するうえで必須となる、電流による試料のジュール発熱の精密計測と抑止対策について、本研究で培った実験プロトコルが普及すると期待できる。 -
パラジウム酸化物におけるエキゾチック超伝導とスピンギャップレス半導体の探索
2015年4月 - 2017年3月
科学研究費補助金 挑戦的萌芽研究
担当区分:研究代表者
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光ドープされた伝導体の電子輸送特性
研究課題/研究課題番号:26287064 2014年4月 - 2018年3月
寺崎 一郎
担当区分:研究代表者
配分額:16380000円 ( 直接経費:12600000円 、 間接経費:3780000円 )
本研究の目的は、酸化物絶縁体に光を照射することによって伝導体を創りだし、その伝導パラメタを精密に計測し、光ドープされたキャリアの輸送特性と微視的機構を明らかにすることである。
具体的には、我々はZnS、ZnO、SrTiO3、CuO、La2CuO4、CuFeS2など様々な絶縁体に可視から紫外領域の光を照射し、光伝導率、光ホール係数、光ゼーベック係数などを定量的に計測し、光ドープされたキャリアの輸送特性を明らかにした。特にSrTiO3では量子常誘電性により熱起電力が遮蔽されることを明らかにした。ZnOにおいては、薄膜、単結晶、多結晶で光ゼーベック係数は同じ値で飽和することを見出した。 -
非平衡状態の創りだす強相関電子系の新現象
2014年4月 - 2017年3月
科学研究費補助金 基盤研究(A)
前野悦輝
担当区分:研究分担者
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面共有酸素八面体を持つ超伝導酸化物の探索
2013年4月 - 2015年3月
科学研究費補助金
担当区分:研究代表者
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量子スピンが引き起こすマルチフェロイック相の新奇物性の探索
2010年4月 - 2012年3月
科学研究費補助金 特定領域研究
安井幸雄
担当区分:研究分担者
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電荷クラスターグラスの創製とその機能の制御
2009年4月 - 2012年3月
科学研究費補助金 基盤研究(B) 21340106
寺崎一郎
担当区分:研究代表者
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有機導体θ型BEDT-TTF塩における電荷秩序の競合と巨大非線形伝導
2005年4月 - 2009年3月
科学研究費補助金 基盤研究(B)
寺崎一郎
担当区分:研究代表者
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異常磁気伝導を示す量子物質の開発
2004年4月 - 2009年3月
科学研究費補助金 特定領域研究
寺崎一郎
担当区分:研究代表者
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Bi系高温超伝導体母物質の良質単結晶作製と電荷ダイナミクスの測定
2002年4月 - 2003年3月
科学研究費補助金 特定領域研究
寺崎一郎
担当区分:研究代表者
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高温超伝導体母物質を含む銅酸化物絶縁体の誘電率
2001年4月 - 2005年3月
科学研究費補助金 基盤研究(C)
寺崎一郎
担当区分:研究代表者