科研費 - 寳珠山 稔
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慢性感覚障害とその評価に関する脳ネットワーク機能異常の検出と慢性疼痛評価法の開発
研究課題/研究課題番号:20K07881 2020年4月 - 2025年3月
日本学術振興会 科学研究費助成事業 基盤研究(C)
寳珠山 稔, Bagarinao E.
担当区分:研究代表者
配分額:4290000円 ( 直接経費:3300000円 、 間接経費:990000円 )
持続的なしびれや疼痛など、他覚的評価が困難な自覚的慢性疼痛の病態を明らかにし適切な治療法を見出すことは、疾患や研究手法を問わず永年の課題となっているものの、未だ解決に至っていない。本研究では、慢性疼痛としての自覚的感覚障害を生じている脳機能状態と機能異常を非侵襲的に検出することを目的とする。本研究ではMEGとEEGでの検出を比較検証することにより、一般臨床での脳活動からの感覚障害評価手法も開発呈示する。本研究成果は、自覚的症状の定量的客観診断手法となるとともに、慢性感覚障害の病態を明らかにすることで治療に関する情報を提供するものと期待される。
2023年度には,疼痛患者および健常者の脳磁図および脳波の測定を蓄積し,病態に対応した解析手法を開発した.すでに本研究事業の成果として報告した神経接続性の研究(国際学術雑誌2編)に加え,新たな解析手法を取り入れた.近年脳神経のシナプス伝達からネットワーク機能までのレベルで神経機能制御の中核的要素となる興奮-抑制バランス(E-I バランス)の視点から,脳波および脳磁図の中心的神経数理モデルである neural mass models(NMMs) を基にした脳活動のアルファ波の envelope 解析を行った.解析手法は,NMMs を構成する興奮性および抑制性の二次微分式の要素となる時間についての二次微分項に着目し,アルファ波の envelope の二次微分値の比について機能障害を有する認知症,および慢性疼痛患者の脳波について解析した.いずれも結果は国際専門誌に投稿中である.
Sano M, Hoshiyama M (corresponding author) et al. Analysis of the alpha activity envelope in electroencephalography in relation to the ratio of excitatory to inhibitory neural activity. PlosOne (under review).
Sano M, Hoshiyama M (corresponding author) et al. Envelope oscillation of alpha activity in patients with complex regional pain syndrome. Heliyon (under review).
Osumi M, Hoshiyama M et al. Resting-state Electroencephalography Microstates Correlate with Pain Intensity in Patients with Complex Regional Pain Syndrome. Clin EEG Neurosci. 2024 Jan;55(1):121-129.
Iwatsuki K, Hoshiyama M et al. Chronic pain-related cortical neural activity in patients with complex regional pain syndrome. IBRO Neurosci Rep. 2021 May 13;10:208-215.
研究期間中には,課題「慢性感覚障害とその評価に関する脳ネットワーク機能異常の検出と慢性疼痛評価法の開発」内容の達成とともに,新たな脳機能評価方法が見いだされ,脳波および脳磁図のバイオマーカーとして広く普及が期待される.
見出した解析手法は,一定測定時間内におけるアルファ波のエンベロープの正・負の二次微分値の比率は,健常者で一定の値をとり,脳機能異常領域ではその比の値が異常となる.これまで脳波などの電気的脳活動は,周波数と振幅といった時間経過に基づく解析が中心であった.本手法は計測時点ごとにかかる神経活動の増減加速度(振動子モデルでの加速度)の割合が機能異常では崩れることをあきらかにした.脳領域ごとに評価が可能であり,認知症の病型別,慢性疼痛との相関領域,うつ病の程度との相関領域など,がすでに検証済みであり,順次論文化を進めている.
開発された手法は数理モデルとの整合性も認められ,これまでにないバイオマーカーとしての期待がもたれる.この点において,期待以上の成果が得られたものと評価した.
コロナ禍で進捗が遅れたものの,その間,解析モデルを公開データ(オープンデータセット)で検証するなど,成果に向けての研究を旺盛に遂行した.期間の延長が認めらえた2024年度には更に複数の論文成果が見込まれる(現在執筆中).
本研究課題は2024年に完結する見込みであるが,更に発展と応用の可能な指標を見出したことにより,期間以後の研究継続も期待されるところとなった. -
研究課題/研究課題番号:19K09647 2019年4月 - 2025年3月
日本学術振興会 科学研究費助成事業 基盤研究(C)
岩月 克之, 下田 真吾, 寳珠山 稔, 栗本 秀, 平田 仁, 大山 慎太郎
担当区分:研究分担者
神経障害性疼痛中枢性感作の病態を解明し、臨床データ、患者立脚型機能評価等を脳機能解析と組み合わせ、客観的な重症度評価を行う。さらに発展させ、一般病院で使用している機器で測定可能なパラメータを利用することにより、臨床の汎用性が生まれる。本研究の目的は、疼痛の種類・重症度別にパターン化可能な客観的指標の解析を行い、最終的には一般病院に還元可能な疼痛評価法およびそのシステムを構築することである。本研究により信頼性の高い疼痛研究の手法が確立でき、病態解明、臨床評価、治療効果判定までが可能となり、疼痛分野における研究を飛躍的に向上できる。
本年度は慢性疼痛患者の中で最も難治性である、複合性局所疼痛症候群の患者に注目して研究を行った。複合性局所疼痛症候群の患者に対し脳磁図検査を行った。30秒間の閉眼安静時脳磁図記録を解析した。サンプリング周波数は1000Hzとし、記録周波数帯域:0.2から100Hzで、心電図と眼球運動のノイズ除去を行った。30秒間に生じたα波の包絡線の経時的変化を算出し、包絡線の二次微分値について正・負をそれぞれ興奮性および抑制性作用とし、全脳78機能領域のα周波数帯閾の活動について、各領域の興奮性と抑制性の比を群間で比較した。健常者群と複合性局所疼痛症候群の患者で差がみられた領域は、島皮質、前部帯状回、楔前部などであった。また複合性局所疼痛症候群の患者が自覚する自発痛の強さをvisual analogue scale(0ー100)で取得し、興奮性と抑制性の比と相関する部位を調査した。その結果、島皮質の興奮性と抑制性の比と大きな相関がみられることが分かった。
複合性局所疼痛症候群患者は興奮性と抑制性の比に変化が生じており、このことは難治化の慢性疼痛の病態の一面をとらえている。複合性局所疼痛症候群の患者が疼痛以外の症状を生じる一因には、脳の可塑性変化の影響を受けている可能性があり、本研究を発展させることで、上肢の疼痛難治化のメカニズム解明でき、さらには複合性局所疼痛症候群における多彩な症状についても説明ができるようになると考えられる。
COVID-19の流行の影響でやや参加登録などに影響が出たが、現在は通常の研究が行える体制になっている。
患者登録、および解析を継続していく -
機能連絡解析を駆使したてんかん外科コネクトームマップと定位的脳波記録による実証
研究課題/研究課題番号:17K10890 2017年4月 - 2020年3月
日本学術振興会 科学研究費助成事業 基盤研究(C)
前澤 聡, Bagarinao E., 渡辺 宏久, 寳珠山 稔, 中坪 大輔
担当区分:研究分担者
焦点性てんかんに対して安静時fMRIやEEG-fMRI、MEGの新規ネットワーク解析を行い、コネクトームマップを作成しSEEGにて検証した。安静時fMRIの複層的解析では焦点側に強いhubを形成し、対側に向かっての促通性の、またDMNへ抑制性の結合を形成して病態に関連する事が分かった。MEGでは修正DS法を開発しEEG-fMRIではsubsecond解析を開発して、ネットワーク的な焦点診断をより正確にした。Hubより各ネットワークへの結合性の強さを示す新しい指標を開発しコネクトームマップとした。SEEGではまたcoherenceを解析で焦点が形成するネットワークを評価可能である事が分かった。
学術的意義としては、焦点性てんかんはネットワーク疾患である、という仮説に基づいてネットワーク的な解析を行う事で、てんかんの焦点、及び焦点より形成されるてんかん性ネットワークを明らかにした事が挙げられる。特に安静時fMRI、EEG-fMRI、MEGといったモダリティは非侵襲的であり、改良を加え新規解析を開発した点は、てんかん患者にとって非侵襲的で有効な検査法が増えた事となり、社会的意義が高い。SEEG(定位的頭蓋内電極による脳波記録)は海外で導入が始まっているが日本は遅れをとっており、その安全且つ有効な手法を確立し日本で最初に示し、更に脳波解析の可能性を示した点も意義がある。 -
多様なmodalityによる振戦の病態解明とFUSやDBSによる病態修飾
研究課題/研究課題番号:17K10891 2017年4月 - 2020年3月
日本学術振興会 科学研究費助成事業 基盤研究(C)
中坪 大輔, 前澤 聡, 寳珠山 稔, 渡辺 宏久, Bagarinao E., 坪井 崇
担当区分:研究分担者
本態性振戦などの不随意運動の治療において、非侵襲的な凝固術として、MRガイド下集束超音波治療MRgFUS(MR-guided focused ultrasound)が日本でも可能となった。本研究では、治療後1年後の上肢の改善率が約65%であり、重篤な合併症は認めなかった。また、安静時fMRIによるネットワーク解析により、振戦が重度であるほど、ネットワークの結合性が低下していることが判明し、前頭葉を中心とした高次脳機能の障害も進む傾向にあることが明らかになった。
本態性振戦の病因、病態に関してはまだ不明な点が多く、小脳―下オリーブ核系の機能異常の関与が示唆されているものの、視床Vim核の治療により、どのように改善するか不明である。安静時fMRIによる本研究では、そのネットワーク異常を可視化し、治療による病態修飾の解明に繋がると考えられる。また、本態性振戦は有効な薬剤がなく、振戦が進行するとMRgFUSなど外科治療でしか症状を緩和することができない。高次脳機能障害を伴うことも多く、どのような患者に治療が有効となるかバイオマーカーを確立することで、振戦で困っている患者の助けとなる。 -
脳磁計を用いた安静時および刺激誘発脳活動における脳内神経接続の測定に関する研究
2015年4月 - 2018年3月
科学研究費補助金 基盤研究(C)
担当区分:研究代表者
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脳磁計を用いた安静時および刺激誘発脳活動における脳内神経接続の測定に関する研究
2015年4月 - 2018年3月
日本学術振興会 科学研究費助成事業 基盤研究(C)
資金種別:競争的資金
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高齢者、パーキンソン病患者における抑制系回路の加齢および疾患による変化
研究課題/研究課題番号:15K09350 2015年4月 - 2018年3月
日本学術振興会 科学研究費助成事業 基盤研究(C)
平山 正昭, 中村 友彦, 渡辺 宏久, 寳珠山 稔
担当区分:研究分担者
脳磁図、MRIを用いて、パーキンソン病(PD )患者の痛みに関する研究を行なった.
健常人高齢者と PD での体性感覚誘発脳磁場の測定を行い、反回曲線を測定した。健常人高齢者と PD、若年者の1秒間隔での80msの反回抑制を測定した。被検者には安静仰臥位にて右手首正中神経に電極をあて 0.2ms の定電流で 2 回連続刺激を行い電流推定を行った。反回曲線は、若年者と高齢者で1波2波に有意な差が見られた。また、PDと高齢者では1波2波の反応は、1波の抑制が異なっていた。しかし、2波の反応は同様であった。PD患者では加齢に伴う反回抑制の機構の障害が解離していると考えられた。 -
研究課題/研究課題番号:15K10400 2015年4月 - 2018年3月
日本学術振興会 科学研究費助成事業 基盤研究(C)
岩月 克之, 下田 真吾, 寳珠山 稔, 栗本 秀, 平田 仁, 山本 美知郎
担当区分:研究分担者
手根管症候群で母指と中指刺激で体性感覚誘発脳磁場の推定電流源間距離は短いことが認められた。正中神経の2連続刺激により得られるSEFの回復曲線は手根管症候群で早期の回復が認められ、感覚皮質での抑制的神経活動が減少していることが示唆された。coherence解析で島皮質での周波数対応に差が認められ、脳内の接続性異常を検出することが可能になった。同様にCRPS患者においてVASと皮質間coherence値の相関を解析し、帯状回および島皮質、前頭葉などでVAS値とcoherenceが高い負の相関を示し、脳内の接続性異常を検出した。これらの検出結果と生化学的な結果についての相関解析を行った。
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脳磁計を用いた安静時および刺激誘発脳活動における脳内神経接続の測定に関する研究
研究課題/研究課題番号:15K09349 2015年4月 - 2018年3月
寳珠山 稔
担当区分:研究代表者
配分額:4810000円 ( 直接経費:3700000円 、 間接経費:1110000円 )
安静時および課題遂行時の誘発脳磁活動における神経接続性(connectivity)について脳磁計を用いて明らかにした。研究では、健常人の体性感覚、聴覚、運動の各課題遂行時の脳各皮質領域の接続性を最新の手法を用いて電流分布計算およびconnectivity解析した。病態の解析としては末梢神経障害(手根管症候群)および中枢性疾患(パーキンソン病)を対象に研究を実施した。一連の研究結果は11編の英文専門誌に掲載発表された。本研究によって脳磁場解析手法の確立と大脳皮質接続性の解析から病態の解明に寄与する成果を残すことができた。
本研究は臨床脳波解析に利用可能な手法であり今後の臨床応用が期待された。 -
リアルタイム機能的MRI-脳波同時測定装置を用いた時間的空間的脳内神経回路解析
研究課題/研究課題番号:15K15338 2015年4月 - 2017年3月
日本学術振興会 科学研究費助成事業 挑戦的萌芽研究
渡辺 宏久, 寳珠山 稔, 森 大輔, 田邊 宏樹, Bagarinao E., 祖父江 元, 伊藤 瑞規, 前澤 聡
本研究では、fMRIと脳波 (EEG) を組み合わせたEEG-fMRIを用い、fMRIの有する高い空間分解能を活かした解析に加え、脳波の有する高い時間分解能生を活かした解析を組み合わせて、ヒトの高次脳機能神経回路や精神症状をサブミリセカンドで観察出来るシステムを構築した。我々の解析方法を用いることで、作業記憶課題を用いた脳活動の観察では、認知課題中に1秒未満で連続的に変化する脳活動を観察可能であった。またてんかん活動を観察しつつ同定した焦点は、手術により確認したそれと良く一致していた。我々の開発した解析手法は、高い空間分解能で1秒未満の連続的な脳活動変化を捉えられる。
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次世代の皮質下機能的脳外科手術の確立を目指したコネクトームマップの開発
研究課題/研究課題番号:26462202 2014年4月 - 2017年3月
日本学術振興会 科学研究費助成事業 基盤研究(C)
前澤 聡, 森 健策, 夏目 淳, バガリナオ エピファニオ, 森 大輔, 藤井 正純, 渡辺 宏久, 田邊 宏樹, 寳珠山 稔
脳ネットワーク画像解析の発展を背景に、安静時fMRIを基盤としDTIの解剖学的連絡とEEG-fMRIの電気生理学的連絡も重畳し、健常大規模データと比較する事でてんかんや脳腫瘍患者特有の“コネクトームマップ”を作成を目指した研究を進め、次の5つの成果を得た。(1)安静時fMRIで言語野、運動野が同定可能である事を示した。(2)新しい言語連絡であるfrontal aslant tractを報告した。(3) てんかんの安静時fMRIより異常結合同定の可能性を示した。(4)EEG-fMRIの新しいsubsecond解析を報告した。(5)術中ナビゲーションで関心領域からの結合性表示プログラムを作成した。
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非侵襲的生理学的手法による大脳内神経伝導に関する研究
2012年4月 - 2015年3月
科学研究費補助金 基盤研究(C), 課題番号:24591292
寳珠山 稔
担当区分:研究代表者
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健常人および神経疾患患者における大脳情報処理能力に関する神経生理学的研究
2002年4月 - 2004年3月
科学研究費補助金 基盤研究(C), 課題番号:14570588
珠山 稔
担当区分:研究代表者
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機能回復過程における大脳機能の非侵襲電気生理学的手法による研究
2000年4月 - 2002年3月
科学研究費補助金 基盤研究(C), 課題番号:12832024
寳珠山 稔
担当区分:研究代表者
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随意運動制御機構の大脳生理学的研究
1998年4月 - 2000年3月
科学研究費補助金 基盤研究(C), 課題番号:10670614
寳珠山 稔
担当区分:研究代表者
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大型及び超小型磁場計測装置を用いたヒト高次脳機能の研究
1998年4月 - 1999年3月
科学研究費補助金 特定領域研究(A), 課題番号:10164246
柿木隆介
担当区分:研究分担者
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脳磁図を用いたヒト痛覚認知機構の研究
1996年4月 - 1999年3月
科学研究費補助金 萌芽的研究, 課題番号:08878160
柿木 隆介
担当区分:研究分担者
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生理学的手法(脳磁図,脳波)を用いたヒト脳機能の非侵襲的研究
1995年4月 - 1997年3月
科学研究費補助金 基盤研究(B), 課題番号:07458215
柿木 隆介
担当区分:研究分担者
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生理学的手法(脳磁図,脳波,誘発筋電図)を用いた随意運動発現機構に関する研究
1995年4月 - 1996年3月
科学研究費補助金 奨励研究(A), 課題番号:07770485
寳珠山 稔
担当区分:研究代表者