科研費 - 石黒 澄衞
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トマトの胚形成における胚と親組織のコミュニケーション機構の研究
研究課題/研究課題番号:22H02645 2022年4月 - 2026年3月
科学研究費助成事業 基盤研究(B)
石黒 澄衛, 丹羽 智子
担当区分:研究代表者 資金種別:競争的資金
配分額:17550000円 ( 直接経費:13500000円 、 間接経費:4050000円 )
動植物問わず、受精卵から始まる細胞の分裂と分化が決まったパターンで進行して胚を形成する。これは胚自身の遺伝子にプログラム化された自律的な事象である。しかし、胚形成が親の体内で起きるほ乳動物や植物の場合には、胚と親組織の間には何らかのコミュニケーションが存在すると考えるのが自然である。本研究は、実験材料としてトマトを用い、植物においてこの胚と親組織とのコミュニケーションに関わる分子の実態を明らかにすることを目的として実施する。特に、胚が作る分子を同定し、それを親組織が受容するしくみについて解明する。
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トマトの胚形成における胚と親組織のコミュニケーション機構の研究
研究課題/研究課題番号:23K23908 2022年4月 - 2026年3月
科学研究費助成事業 基盤研究(B)
石黒 澄衛, 丹羽 智子
担当区分:研究代表者
配分額:17550000円 ( 直接経費:13500000円 、 間接経費:4050000円 )
動植物問わず、受精卵から始まる細胞の分裂と分化が決まったパターンで進行して胚を形成する。これは胚自身の遺伝子にプログラム化された自律的な事象である。しかし、胚形成が親の体内で起きるほ乳動物や植物の場合には、胚と親組織の間には何らかのコミュニケーションが存在すると考えるのが自然である。本研究は、実験材料としてトマトを用い、植物においてこの胚と親組織とのコミュニケーションに関わる分子の実態を明らかにすることを目的として実施する。特に、胚が作る分子を同定し、それを親組織が受容するしくみについて解明する。
前年度に引き続き、ゲノム編集で作出したジャスモン酸合成遺伝子SlOPR3の欠損トマトの解析を進めた。slopr3のヘテロ株は1/4の割合で変異遺伝子をホモに持つ異常種子を形成する。その種子中の胚の構造を詳細に解析したところ、球状胚の形成まではほぼ正常に進行するが、そこで発達が停止し、心臓型胚以降の構造を作ることはなかった。SlOPR3遺伝子のプロモーターにGFPを連結してトマトに遺伝子導入すると初期胚の時期を中心に胚での発現が観察された。以上の結果から、胚自身がジャスモン酸を合成すること、そのジャスモン酸が胚の初期発生に重要であること、さらに、それぞれの胚が合成するジャスモン酸はその胚のみに作用し、同じ果実中の他の胚の発達を促進することはないことが明らかになった。ただし、ジャスモン酸受容体を欠損するslcoi1のホモ胚の発達は正常に進行することから、ジャスモン酸はいったん胚以外の組織で受容される必要がある。
slopr3をホモに持つ異常胚の構造を詳細に調べるため、マーカー遺伝子の利用を試みた。表皮細胞のマーカーであるAtML1-GFPの発現は球状胚期のslopr3異常胚の表層の細胞のみで観察され、異常胚においても表皮のアイデンティティの獲得は正常であることが確認できた。一方、胚内部の細胞の極性や維管束組織の発達の指標となるAtPIN1-GFPの発現を観察したところ、正常な球状胚では一定の細胞極性の確立や維管束予定組織での発現増大が観察されたが、異常胚ではそのいずれも観察することはできなかった。以上の結果から、ジャスモン酸合成ができない胚は表皮のアイデンティティは獲得できるものの、胚全体の極性が確立される段階で決定的な異常が生じていると推察された。
SlOPR3-GFP遺伝子を利用したこの遺伝子の発現解析で期待以上の明瞭なデータが得られたこと、AtML1-GFPやAtPIN1-GFPを用いた解析でも明瞭な結果が得られたことから進捗状況としては順調である。シロイヌナズナよりも大型で細胞層が多いトマトの種子でこれらの遺伝子の発現を観察するにはいろいろな技術的工夫が必要であり、それを確立できたことが大きい。加えて、種子や胚を用いたトランスクリプトーム解析やSlOPR3の誘導発現系を利用したslopr3のオンデマンド相補株の作出にも着手しており、それぞれ次年度の成果として見込んでいる。
計画段階で予想した以上に胚形成の異常が発達の初期から始まっていることが明らかになってきた。この段階はシロイヌナズナでも十分に理解が進んでいない段階であり、トマトに限らないより一般的な初期胚発生の問題として位置付けられる可能性がある。ジャスモン酸(あるいはそれに応答して生成する二次成長調節物質)が胚発生をどのように制御しているのか、鍵となる遺伝子は何か、引き続き解析を進めたい。 -
遺伝子と自己組織化にもとづく花粉エキシンの立体構造の構築機構とその力学的特性
研究課題/研究課題番号:21H00365 2021年4月 - 2023年3月
科学研究費助成事業 新学術領域研究(研究領域提案型)
石黒 澄衛
担当区分:研究代表者
配分額:8710000円 ( 直接経費:6700000円 、 間接経費:2010000円 )
花粉の表面はエキシンと呼ばれる殻で覆われている。エキシンは樹脂でできた軽くてフレキシブルな構造物で、雄性配偶体である花粉を保護するのに役立っている。植物の種類ごとに形が決まっていることからエキシンの構造は遺伝子によって規定されていることがわかるが、遺伝子が形を決めるしくみはまだ十分に理解されていない。本研究では、微細で普通の顕微鏡では見ることができないエキシンの形成の初期過程を特殊な方法でイメージングするとともに、形の決定に関与する分子を洗い出し、どのような分子が相互作用しながらエキシンの形を作っていくのかを明らかにする。
昨年度に引き続き、FIB-SEMを用いたエキシンの3D画像の構築を行なった。減数分裂の数日後のシロイヌナズナの葯から小胞子を取り出し、固定、電子線染色ののち低融点アガロースの液滴に封入し、さらに樹脂包埋した。このサンプルを用いてFIB-SEM観察を行い、明瞭な画像の取得に成功した。成熟花粉のエキシンの表面が平滑であるのに対し、発生初期の小胞子のエキシン表面は細かく波打っていた。エキシンは最初は折り畳まれた構造として形成され、花粉の肥大に伴う表面積の拡大に伴って伸展し、平滑な構造になることがわかった。
アラビノガラクタンタンパク質(AGP)遺伝子TPFLAの六重変異体を作出したところ、小胞子の表面に観察されるAGPが減少するとともに、成熟花粉の変形や接着が生じた。TPFLAは花粉壁の発達や小胞子の接着防止に寄与するタンパク質であることが明らかになった。GFPレポーターを用いて各TPFLA遺伝子の発現解析を行い、花粉四分子期から遊離小胞子期の葯で発現が見られることを確認した。
シロイヌナズナのtap35突然変異体は成熟花粉のエキシンの網目が著しい断裂を起こす。原因遺伝子であるTAP35にGFPを連結して発現させたところ、TAP35-GFP融合タンパク質は減数分裂直後の小胞子でエキシンと同じ網目パターンを形成する様子が観察できた。この融合タンパク質はtap35変異体の表現型を回復させることも示された。TAP35タンパク質は形成初期のエキシンに構造タンパク質として含まれ、エキシンの網目構造を維持するのに寄与していると考えらえる。エキシンはスポロポレニンと呼ばれる樹脂でできていることがわかっているが、タンパク質もその構成要素として含まれることが明らかになった。
令和4年度が最終年度であるため、記入しない。
令和4年度が最終年度であるため、記入しない。 -
軽くて強くてしなやかな花粉エキシンの立体構造の構築機構とその力学的特性
研究課題/研究課題番号:19H05362 2019年4月 - 2021年3月
科学研究費助成事業 新学術領域研究(研究領域提案型)
石黒 澄衛
担当区分:研究代表者
配分額:9100000円 ( 直接経費:7000000円 、 間接経費:2100000円 )
花粉を取り囲む細胞壁はエキシンと呼ばれ、軽量かつ頑丈で、外界のストレスから花粉を保護する役割を持つ。この立体構造がなぜ頑丈なのかを力学的に検証し、ドームやカプセルの建築デザインへの応用を目指す。一方、エキシンは植物の種類ごとに構造が決まっていることから、遺伝子によって規定される構造であると考えられる。立体構造を規定する遺伝子とは具体的にどのようなものであるのかを明らかにするため、エキシンの構造が崩れてしまった突然変異体の原因遺伝子を同定してその機能を解析する。特に、発達中の花粉を取り囲むタペート細胞で働く遺伝子に注目して研究を進める。
シロイヌナズナの花粉の外殻構造である網目状エキシンは、例えば膨圧の変化で花粉が収縮したり膨張したりする場合でもフレキシブルに変形し、決して潰れることはなく内部の配偶子を守っている。今年度は収束イオンビーム-走査型電子顕微鏡法(FIB-SEM)を用いてシロイヌナズナのエキシンの微細構造の三次元イメージングに取り組み、サンプルの前処理方法や染色法を工夫することで、ナノメートルスケールの微細なエキシンの構造を立体画像として取得する方法を確立した。今後は力学的強度が低下した突然変異体の花粉の観察を行い、どのような構造変化が起きているかを野生型と比較検討して、しなやかさと強さを持つ構造を作るためにどのようなしくみが働いているのかを解明したい。
エキシンの強度が低下した花粉を作る突然変異体の解析も行なった。今年度解析した突然変異体の花粉は網目サイズが野生型よりも大きくなっており、網状構造を持ち上げる柱状構造の長さがバラバラだったりまっすぐ立ち上がっていなかったりしたため、網そのものも平滑な局面を作れず歪んでしまっていた。原因遺伝子は細胞内小胞輸送の制御因子であり、若い花粉の表面で網の目を作るのに働くキシランなどの多糖の生合成や分泌に影響している可能性がある。実際、キシランの量は野生型よりも減少していた。このことは網の目が大きくなる表現型とは一見矛盾するのだが、キシランが減ったこと以上にペクチンが増加しており、それが大きな網の目の形成に寄与したと推定された。本研究より、ペクチンも網の目の形成に重要な役割を持つことが明らかになった。
令和2年度が最終年度であるため、記入しない。
令和2年度が最終年度であるため、記入しない。 -
研究課題/研究課題番号:18K06281 2018年4月 - 2023年3月
科学研究費助成事業 基盤研究(C)
石黒 澄衛
担当区分:研究代表者
配分額:4420000円 ( 直接経費:3400000円 、 間接経費:1020000円 )
花粉の表面は微細な立体構造で覆われている。これはエキシンと呼ばれ、花粉を保護する軽量かつ頑丈な構造である。エキシンの立体構造は植物の種ごとに固有であることから、遺伝子が規定する構造であるといえる。本研究では、シロイヌナズナが作る網目状のエキシンがどのようなしくみで作られるのかを調べた。その結果、キシラン、ペクチン、アラビノガラクタンなどの多糖がエキシン形成初期の花粉の表面に規則的に配置されることを見出した。これらの多糖は発達中のエキシンの表面や空隙(網目)に存在すること、これらの多糖を作れない突然変異体はエキシンの構造が崩れることから、多糖がエキシン形成の鋳型として働くことが明らかになった。
本研究の意義は、生物が遺伝情報に基づいて種特異的な形を作るしくみの一端を解明したことである。生物の形作りにおいても、エキシンのように細胞の外に特定の構造を作るという現象は珍しい。細胞外に分泌された多糖が脂質性高分子化合物を成形する鋳型として働くという、これまで知られていなかったメカニズムが明らかになった。背景にあるのは分子の自己集合と自己組織化であり、直ちに応用展開できる成果ではないものの、自律的な組織形成に基づいた有用構造物の生産に資する基盤的な知見である。 -
花粉表層の立体構造エキシンの形態を決める細胞壁多糖の鋳型機能とその構築機構
2015年4月 - 2017年3月
科学研究費補助金 新学術領域研究
担当区分:研究代表者
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花粉母細胞の減数分裂時に見られる特異な細胞質分裂のライブイメージング
2012年4月 - 2014年3月
科学研究費補助金 挑戦的萌芽研究
担当区分:研究代表者
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ジャスモン酸生合成の傷害誘導機構の解明
2009年8月 - 2012年3月
科学研究費補助金 特別研究員奨励費
石黒澄衞
担当区分:研究代表者
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花粉表層構造の形成機構とそのゲノム障壁における機能の研究
2009年4月 - 2011年3月
科学研究費補助金 特定領域研究、課題番号 21024004
石黒澄衞
担当区分:研究代表者
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メリステムから花器官への変換を制御する因子の研究
2009年4月 - 2011年3月
科学研究費補助金 特定領域研究、課題番号 21027016
石黒澄衞
担当区分:研究代表者
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シロイヌナズナを用いたエキシン形成機構の解析
2007年 - 2009年
科学研究費補助金 特定領域研究(公募,A01),課題番号:19043008
石黒 澄衛
担当区分:研究代表者
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花粉の成熟と飛散に重要な雄しべの細胞のオルガネラの発達と分解
2007年 - 2009年
科学研究費補助金 特定領域研究(公募,A01),課題番号:19039014
石黒 澄衛
担当区分:研究代表者
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ジャスモン酸による開花の制御機構の研究
2005年 - 2006年
科学研究費補助金 特定領域研究,課題番号:17027011
石黒 澄衞
担当区分:研究代表者
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雄しべの分化に伴うプラスチドの分化機構の研究
2005年 - 2006年
科学研究費補助金 特定領域研究,課題番号:17051013
石黒 澄衞
担当区分:研究代表者
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花粉表層構造の形成と稔性獲得に関する分子遺伝学的解析
2004年 - 2006年
科学研究費補助金 基盤研究(B),課題番号:16370020
石黒 澄衞
担当区分:研究代表者
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高等植物のペプチド性リガンドと受容体分子に対するSHEPHERDタンパク質の役割
2003年 - 2004年
科学研究費補助金 特定領域研究,課題番号:15031213
石黒 澄衞
担当区分:研究代表者